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2021/01/01 12:00:00

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投稿作品一覧

共謀

あの乱層雲は正犯であり雨は従犯である

あろうことか彼らは折り畳み傘を所持していた

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▓▓▓▓の報復主義

・攻撃を受けたら、必ず倍返しにすること。
・攻撃をしたら、必ず倍返しにされる前提で行動すること。

報復主義的生き方の実践は、たったこれだけだ。

さあ、始めよう。新しい生存戦略。

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美しい

夕日を見ながら私が紙になると
妻は薄い私の身体を
一枚一枚
シュレッダーにかけていく
紙はシュレッダーするものよ
と妻は震える手で淡々と私を
回転する歯の方に押し込んでいく
細断された紙片は風に乗り
どこかに運ばれ
そのどこかでもっと小さな
繊維や粒みたいなものになるのだろう
これが君と見る最後の夕日か
そう思うと紙のように
思い出までもが薄くなって
視覚も嗅覚も透明になっていく
最後に君の首筋の匂いを嗅ぎたかったな
それは言葉になったのだろうか
私は私がいなくなった後の
夕日と妻のシルエットを想像する
美しい

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お父さんが欲しかったもの

息子はもうすぐ十八歳になる
お父さんは
とてもたくさん話すだろう
もういいが、
といってビールを注ぐだろう

お父さんは息子と
お酒を飲むのが
夢だった

でも産まれたのは娘二人で 
だから、まだ5歳の息子に
ビールの泡を飲ませようとして
母に怒られていた

お父さんはなぜ
男の子がほしかったのか



お父さんのお葬式で
「あなたがつつみさん?」
と、会社の方に声をかけられた
私が引きこもってしまっていた時期
父は仕事の後、いろんな人に
相談していたと
いうことだった

すごく遅くに
仕事から帰ってきても
特に私を気にしてないようで
そんなことより
とても疲れていた

そのくらいから
言葉にはしないけど
なにかにつけて
手紙を書いてくれた

そこに全てが綴られていたんだと
やっといま気づく
お父さんが欲しかったもの

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静かなかたまり


扉がみえたらね
あれほど追いかけっこしたのに
よーいどんっで
扉がみえたらね
ぼくったら月なんかすっかり忘れて
ひとりお家に帰る
さようなら

月といっしょに
僕はうちにかえる
よーいどんで駆け出して
電線の五線譜
月は光る音符
夢中で走ると息がみだれて苦しくなった
冷たい息の通りみち
少し喉を鳴らしてみると
掠れた音が小さくでた
足を止めれば
この夜の白熱灯
ぼくを追い越して
ひとりぼっちにしたりしない

ふりかえると
扉がみえて
ぼくったら
いつもうっかり月なんか忘れて
さよならも言わないで、
僕は
ひとりうちに帰る

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美しくなる

突然世界は美しくなる 
建物のヘリがほぼ垂直に空間を伝う 
横切る電線が直線的で少し撓んでいる 

驚きで胸が震えた

隅から隅まで何もかもが 
突然美しい 
鳥が鳥の形となり 
一瞬一瞬モノの配置を置き換える 
一切から名前が消え 
役割が消え 
感情が消えて 
感覚をはかる目安に変わる

音が流れるが音源が剥がれ落ちている 
小料理屋の換気扇から 
嗅いだことのない匂いが流れてくる
と思った途端、そんな店は何処にもない

今このとき 
太陽電池の羽を開いた人工衛星が 
センサーとカメラを地上に向けている 
衛星は既に機能を停止し 
もはや何のためでもない何かが 
世界の一部となって僕を見ている

何もかも 
美しい

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トイレと水筒と私

 水筒の中に水が入っていてそれを飲みます。
 ごくごくごくごく
 なんだこれ、しょっぱいぞ!これはおしっこだ。
 俺の水筒におしっこを入れたのは、誰だー!!
 ぽわぽわぽわぽわー
 過去編
 ジョジョジョジョジョー
 現在に戻る
 そういえば昨日水筒におしっこを入れました。答えは私でした。
 おしっこを水筒にする私を見て、トイレが嫉妬して泣いていました。
「全く!私ってやつがいながら...ぐすんぐすん」
 そんなトイレがいたのに、私は寝ぼけていて慰めもしなかったのです。私は、なんてやつなんだ。トイレというやつがありながら水筒におしっこをして...。罪悪感で胸がいっぱいになりました。もう遠足を楽しむ気分ではありません。
「先生!僕はトイレというやつがありながら、水筒におしっこをしてしまいました。トイレは悲しくて泣いていました。早く謝りに行かなければいけません。」
「おおそうですか。そうですか。でもね、それくらいのこと、意外と気にするほどではないかもしれませんよ。トイレに感情はありません。」
「トイレに感情は、ありまあああす!!」
 私はそう叫び家に向かって突き進みました。
 ぴちょぴちょ、ぴちょぴちょ
 床は水浸しです。やはり、泣いています。
「トイレすまなかったー!!」
 ガチャッ!
 トイレの部屋を開けると、何やら転がっています。これは、サンポール!トイレ用洗剤です!そして中身は空っぽです!
「まさか!飲んだのか!これを!!全部!!!!」
 トイレには水が溜まって、ぴくりともしません。
「吐き出せ!吐き出せー!!!!」
 がちゃがちゃがちゃがちゃ
 私は水流し用の手すりを必死に動かしました。
 ガチャガチャガチャガチャ、ガチャガチャガチャガチャ
 ついにトイレは、動きませんでした。
 トイレは、自殺しました。
 お線香を炊きました。
 私の涙とトイレの水が混ざり合い、ロマンティックでした。

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夜から

二つ
瞳が
落ちる

墨汁
かと
瞬けば

血が
転がる

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自由になりたい

自由になっていいわけないじゃん

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ぎもん

❶なぜあなたの発話内容には、いつもあなたしかでてこないのか。でも、一方で、"わたし"を通さない問題意識などあるだろうか。

❷主語を自分にしか設定できないのは、未熟なのではないか。でも、一方で、インターネット上の語りとはそういうものではないか。無限の私語りの集積がインターネットではないのか。

❸上に反論。インターネット上には私語り以外にもあらゆる語りが存在する。しかし語る際に、わたしという意識を通して問題設定をするため、やはりわたしを通さない語りはないのではないか。

❹それなら時刻表とか、説明書とか。

ここで力尽きました。思いついたらまた書きます。

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金貨と目薬(4)

<新しい流れ>
「ねえ、達也~大きな川って、どれくらいの川が合わさっていると思う?」
加賀見 陵介との仕事の後、モデルとしてメディアに出る事も控え気味にしている琴李だったが
ジムでのトレーニングは続けていた。
夜の仕事も増やす事もしなかったので、ジムでのトレーニング後に予定を入れずに武内の部屋で
シャワーを浴びてトレーニングの成果など他愛のない話しをするのが常と成っていた。
達也の部屋の洗面所から聞こえる琴李の声は下手をすると独り言のテンションだったが
達也は聞き逃す事なく返事を返すのだった。

「美味しい皮のタレの組み合わせ?」
「今日のトレーニングに身が入っていないと思っていたら、お腹が減っていたのかよ。」
シャワーを浴びてスッピンの呆れ顔で達也を睨みながら
「焼き鳥の皮の話しなんかしてないわよ。川・都内に流れている大きな川の話しをしているのよ。」

達也は琴李とは肉体関係は無かったが、琴李がスッピンで接してくれる事に優越感を感じており
肉体関係を持つ事でプラトニックな琴李を失う事を恐れる様に夜を共にしても体を求める事はしなかった。
「川?川がどうしたんだよ?川なんかに興味を持っていたか?」
琴李も体を求めて来ない達也の前では心からリラックスが出来て自然と相談がしやすかった。
「陵介との仕事で水の流し方は解ったのだけれど、大きな流れにするにはどれくらいの流れが
必要かなと考えていたら自然と口から言葉に出ていたのよ。」
深水の言葉に戸惑いながらも
「なに?加賀谷さんとの仕事に不満というか満足出来ていないのか?」
深水は、冷蔵庫から持って来たビールをコップに注ぎながら
「達也、新しい流れはアナタと考えているのよ。協力してくれるわよね。」
唾を飲み込む代わりに注がれたビールを一口飲み込んで
「琴李がジムに来た時から、琴李の夢を応援すると決めている。」
グラスのビールを一気に飲み干して深水は武内に話し始めた。
「次はね・・・・」

「編集長、次はスポーツウエアで切り込んで行きたいと思っているのですが、
モデルにと考えている男性も決まっているので会って貰えますか?」
前回の企画熱が冷めない内に動きたいと言う深水の意気込みとモデル男性が来ていると言う段取りの良さと
前回同様に深水の名前は出さない条件で企画の話しが進み加賀見と武内と深水を交えた打ち合わせする事と成った。
~つづく~

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深淵を見下ろす

ゆっくりと渦巻くその中心には
底が見えぬ深淵が形成されてゐて
何故か私はそれを見下ろせるのです。
まるでそれはヰリアム・ブレイクの詩篇の
幻視の世界に呑み込まれたやうな世界だったのです。
ブレイクがabyssと呼んだであらう其処には
苦悶するネブカドネザル王のやうな獣人で犇めき合ひ、
存在の呻き声ばかりが腹の底に響き渡るのです。

その深淵は、しかし、私のみを呑み込まず、
それ以外のものならば何でも呑み込むのでした。
私はそのabyssを覗き込みながら、
何故に苦悶する獣人ばかりが其処に犇めき合ってゐなければならぬのか不思議なのでありました。
何故なら苦悶は私も同様にしてゐて、私こそはabyssにゐるべきものだった筈なのです。
それが私はそのabyssから疎外され、
独りabyssを見下ろしてゐなければならぬことに大層不満だったのです。
これは、しかし、私が傲慢だったのでせう。
私の苦悶は、abyssに犇めき合ふ存在に比べれば全く取るに足りぬもので、
どうでも良かったのかも知れません。
然し乍ら、私の苦悶は、私に大きく関はるものに違ひなく、
決してabyssに犇めく獣人に引けを取らぬものと思はれたのですが、
まだまだ私は未熟者で、abyssに下れぬ存在なのかも知れないのです。
それはある意味で哀しいもので、
天地逆転した考へ方なのですが、
私こそabyssの住人でなければならぬといふ焦燥に駆られるのでありました。

つまり、私の思索はまだまだabyssに犇めくものたちに比べれば浅薄でしかなく、
私の存在の位置がまだ、その渦巻く深淵には足一歩たりとも入れぬものでしかなく、
つまりは、私なんぞは虱にも匹敵すら出来ぬ存在と言うことなのです。
これには臍を噛む思ひなのですが、
しかし、そのabyssは決して私を受け容れないのです。
このまま未来永劫当事者になれぬ私は、
世界外でしか存在出来ぬ哀しい存在でしかないのです。
直截に言へば私なんぞが存在する事自体が烏滸がましいことだったのです。
とても哀しいです。

はらはらと頬を流れる涙は、
その深淵へと零れ落ち、
abyssは大雨となり大水が出て、其処で犇めき合ってゐた苦悶する獣人は悉く水没するのです。
たちまち溺死するものたちにより死屍累累となり、abyssは阿鼻叫喚の世界へと一変してしまったのです。
何て事でせう。
私の涙が死に死を呼ぶとは。
呻き声は更に大きくなり、
何だか其処は芥川龍之介の『蜘蛛の糸』の世界へと変貌したのか、
私に助けを求めてゐるのです。
これではいけないと私は左腕をそのabyssに投じたのですが、
abyssに生き残ったものたちは私の手へと我先にと先を争ふのですが、
哀しい哉、私は非力で羸弱なため、たった独りの存在しか引き上げられないのです。
其処で引き上げようとしたのですが、吾も吾もと独り引き上げようとしたものの身体にしがみ付くものが続出したのです。
それでは私は引き上げられません。
しかし、よくよくabyssをみてみると唯、独り水没しながらも思索に耽り、
私の手などに目もくれぬものがゐたのです。
私は足先に力を込めて右腕を放し、
さっとそのものへと伸ばして引っ捕まへては、瞬時に引き上げ、
さうして、私は左腕を偶然近くに転がってゐた斧で切り落としたのです。
痛みで私は更に泣きくれて、
また、切り口から噴き出す血もそれに混じって
abyssは血の雨の大水で地獄の様相を呈したのです。

私はたった独りの思索に耽るもの以外を選別してしまったのです。
何て傲慢な事でせう。
私は血が噴き出す左腕の血を止めるために切り口のところを口と舌とで紐できゅっと縛り付け、
然し乍ら、痛みで涙は止まらなかったのです。
さうしてabyssは更なる大雨が降り、abyssのものたちは全て水没して死んでしまったのです。
すると深淵の渦は急速に回転速度を上げて、しゅっと何処へか消えてしまったのです。
かうして私は無数の死を背負った存在となり、
一方で私が引き上げた思索者は、終ぞ私には目もくれず、只管自身に耽り続けるのでした。

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旧世紀末少年

解答者は現れないまま
30年も手付かずの宿題を解く為に、
絶版にされた成長神話や
詠み人知らずの安全宣言を、
もう一度なぞる価値はあるの?

実在するのかなんて知らない、
それでも、
誰もがその肩越しに
同じ神様の息遣いを聴いていた時代を、
羨みたくなる愚かささえ罪なの?

'平和'や'安心'は、
ずっと僕らのそばにあって当たり前の存在だと、
いつからそんな思い違いをしていたの?

これだけ溢れた街なのに
何か足りない僕らはつまり、
気絶しそうな口調の話し言葉で、
夜通し喋りまくる火花だ。
吹き消されそうな種火に、
萎びた体をぶら下げて歩く明晰夢だ。
そんな僕らの、
うたた寝みたいな人生を切り裂いて駆け抜けてく、
悩み多きハイティーンの不気味な暴走を讃えるのは、
疲労を忘れさせる
劇薬的な人工甘味料と、
不整脈のようなサイキックビートに貼り付く企業広告、
凄まじい物量で循環する情報、
疑念、熱意、冷笑、正義。
そんなものとすれ違うだけでもう、骨が軋む音がする。

大通りを歩く夢破れた背中、
解体現場の足場から差し込む斜陽、
砂上の楼閣を飾る
プロジェクションマッピング、
緑地整備区画の土だけが
その移ろいを見つめ続けている。
焼け爛れた栄光が幾万と眠る
貨幣経済の瓦礫を更地にし、
踏み固めようとした都会人の
赤錆びた血潮の匂いを漂わせ、
不穏な靴音を受け止めてきたコンクリートにうずくまって
僕らは今夜、
誰の祈りの墓標になれるだろう。
大人がぶちまけた好き勝手の皺寄せと片付けに追われて、
'自己中心の世代'だと揶揄されながら、
一生の時間を
時代の帳尻合わせの為に吹き飛ばして生きた、
母の輝きと父の背中は、
一服の暇さえ許されずとも
僕らを育て上げた。
それでも、
古き良き人々がいずれ僕らに明け渡す社会は、
あなたたちがその先頭にいた頃よりも
ずっと禍々しい。

そんな時代の汚れた空気を
胸いっぱいに吸い込んで、
貰い物の自由を有り難がる世界は今日、
'12:31'
時刻表通りに滅びるはずだった
人類史の新しい千年紀。
2000番目の空に生まれた僕は今も、
ゆりかごの囚人。
もしもこの国が歴史の、
どこか大切な分岐点で、
選ぶべき道を間違えたのだとしたらそれは、
熱病的な活気の泡に飲まれて
'有限'を捨てた、あの遠い夏の日...

'永遠'が待つという方角へ舵を切った先が
こんな世界だったとは。
裏切られた口々から
失望が噴き出す。
断を下した男の名前を
誰も覚えていない、
この椅子取りゲームにあぶれた僕はせめて、
ひときわ目立つ
矢印の向きに従っておこうか。

参加者の頭数は
最盛期をとうに過ぎ、
1億2000万人分の
最後通告は一斉送信され、
僕らは聞いてしまった。
聞いていた話とは違う事実を、
突きつけられてしまったんだ。
自由席には人数分の用意がない事、疲れた誇りの受け皿の不足と、
僕らではもう
どうにもならない現実に。

ーーー敵も味方も隣り合って
手狭な生活は続く。
酸欠状態に喘ぐ右脳をなだめ、
左脳で吐き出す言葉の殺傷能力は、意味を失くした優しさの代わり。

そんな風に武器を握った青年たちの破裂と
砲撃開始の号令でようやく、
未来世紀の始まり?

有識者曰く、

「どう見ても終わり」

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遠雷

通り雨 夏が加速する

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ヒコーキ耳の詩

鳴けない猫がいる
そいつは雨ふりの日曜日に
一匹暮らしの部屋で
無口な犬の真似をしながら
愛されたいとただ願っているんだ
年老いてくさいお前の倫理観で
その猫をなぐるな

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[ゐ]躄-ゐざり-

まるで飽和したみたいで
己を正すことさえ出来ないくせにさ
楓の木の液から流れ出でるもの
みたく、
垂れる膿が衣類を固める

感覚のない棒切れふたつ
引きずって
削れていく瘡蓋が脆い

漆塗りの船で
輪軸を這わせ
この道をいく
泥濘に挟まった
車夫が
泣いてくれた

暑い日差しの後の雨水がぬめりを帯びて嫌いだ
畳んだ足の蒸れっけ、
特に膕が六月なんだと囃し立ててるみたいで
擦ると黒い、煤垢が煎じずとも剥離する

木板を繋いで
綱を引かれる
反り道を滑走する
あの風を知るものは
あっしと、あっしの近しいものだけだ

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サマーノイズ

やっと
夏が来る
夏は好きだ
いや大好きだ
降りそそぐ雷鳴
耳をつんざく蝉の声
世界を白く遮断する夕立
空高く弾け飛ぶ打ち上げ花火
どれもこれもが大音量で
わんわんと泣き叫ぶ
私の声をすべて
掻き消しては
無にかえす
安らかさ
ゆえに

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報せ

よい報せってぇのは


いつだって
いつも


一歩遅れてやってくる


だからさ
だから


そんなに焦って
出ていかなくっても
いいんでないかい











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俳句短歌誌『We』第21号(2026.3)掲載「ヱビスクドール」より

遠なれば勿忘草になる人形

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純粋れんこん

天丼の『てんや』で
五三八円の天ぷら生ビールセットを頼んで
僕はちょっと呑んでいる

このセットでは4品選べるので
海老
いか
れんこん
いんげん
を、注文した
財布には七二〇円しかないから
これっきりだ

いか天を食う
柔らかくて
青春の味だよな、と思う
ミルキーで
中学生っぽい味だ

次にいんげんの天ぷらを食う
少し、グリーンな気分になる
ブルーではない、グリーンな気分だ

それから海老天を
尻尾の先まで食う
天ぷらと言えば、海老は主役だ

学生時代、父が連れて行ってくれた高級な天ぷら屋で
カウンター越しに海老の踊り食いが出てきて
ためらっていたら
もぞもぞ動いた
生きているのだ

びっくりした僕を父は楽しそうに眺めていた
どうにかそいつの身はやっつけたが、
千切るまでビクビク動いてた
父は頭と尻尾も、上手に割って片づけたが
僕には頭と尻尾は食えなかった
店主は黙って皿を下げ、父と目配せして
食い残した頭と尻尾を
からりと揚げて、無言のまま
再び出した

以来、僕は
海老のてんぷらは
尻尾まで食わなければいけないものだ
と、思っている
付いていれば、頭も食わなければいけない
人生には
逃げ場のない高級店で
頭と尻尾しかない海老天を
食べなければならない時もあるのだ
しかもそれが美味かったりするのである

いろいろあったものだが
何だかんだ言っても
あの頃の僕に
親父は親父なりに優しかったのだろう

最後に、れんこんを食う
れんこんには何の思い出もなく
ただ
れんこんの味がした
旨かった




(2024.10.20「焔」初出・2026.7.5改稿)

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歪なパッショ

雨に濡れた感情が
項垂れて泣き出した

言い訳は未練に閉じ込めて
ネオンの海を泳いで渡る

夜の街は衰弱し
もう 瀕死の状態

闇に隠れてするキスは
魔力的快楽の味がする

喜びも悲しみも
七色の海苔巻きにして
パック詰めにした

アルコールに毒された眼は
まるで
三途の川を渡る猫

風のおいはぎは
ナフタリンのにおいのする背広を
奪い取ろうとする

寂しいなんて
夜の帳が下りれば
暗闇と一緒
闇に飲まれて他人に変身


水に浮かべた黒い涙

変色した心が
花のように散っていく

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へみんぐうぇい


 
  はみんぐうぇいへみんぐうぇい

    へみんぐうぇいはみんぐうぇい


とても高い
空の部屋において
ときに椅子から身を乗り上げ
窓をわずかに開き
ひとり顔をのぞかせては
空言の
お念仏のように
くりかえし吐き捨てられた
言葉はひらひらりと舞い落ちて
アスファルトを行き交う
通行人たちに踏みつけられ
チューインガムみたいにぺたんこになり
街は汚れた
晩節のあなたは痛々しく
滑稽で惨めだった

男は皆孤独の道をゆく者だなどと
弱い者を叩く強者の仕草を繰り返し

今、求められるリーダー
一番にふさわしいあなたを謳う
世は、イエスと傾き

白く輝かしい歯をむき出しにする
終日秋の陽のような歪むにぶい笑い
武器兵器と握手を交わし
  海の王者と追っかけこ
  俺だけの世界のなかで完結し
  勇ましく豪語してみせた  

 へみんぐうぇいはみんぐうぇい
  
 はみんぐうぇいへみんぐうぇい

ところで
ご存知だったでしょう
きっとどこかで
聞こえてきたでしょう
非正規世紀生気精気性器西紀盛期正気と
見知らぬ流氷の果て
たどり着いた者たちの声を うたを

海中を優雅に舞う
天使とも呼ぶ
頭の先をぱっくりと開き
獲物を捉えて生きる凶暴な
水のように透き通る生命
小さな存在たち
わたし自身
かつてそうだったのです

とてもつめたい茫洋とした世界
拠り所など見つけられないままに
わたしは
わたしの赤い心臓を守ったのでした
赤い心臓の鼓動を確かめていたのです

 へみんぐうぇい とはなんでしょう
 はみんぐうぇい でしょうか
 はみだしている のでしょうか
 はみんぐあうと したのでしょうか
 かみんぐあうと のはみんぐでしょうか

    へみんぐうぇいはみんぐうぇい
  
  へみんぐうぇいはみんぐうぇい


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心の休憩

いつからだろ
人を見ているだけで
怖いと
思うようになったのは
いつからだろ
泣きたいのに
泣けなくなったのは
いつからだろ
笑いたいのに
笑えなくなったのは
きっと
一度や二度の出来事じゃない
小さな傷が
重なって
心が
身構えることを
覚えただけ
怖くなったのは
弱くなったからじゃない
守り方を
覚えたから
泣けなくなったのは
感じていないからじゃない
溢れすぎて
閉じてしまっただけ
笑えなくなったのも
心が死んだわけじゃない
安心できる場所を
探してる途中
だから
泣ける日も
笑える瞬間も
ゆっくり
戻ってくるよ
心は
壊れたままじゃない
ただ
疲れて
休んでいるだけ

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鉄格子の中に描かれた炎の文字


主観的なピアノが燃え上がり 焼け跡から一個の鉛の卵が転がり出る 卵は清潔な接吻を受けて客観的な鉄格子となり その内部では角笛の音を立てて炎が大きく動いた 無病の鳥たちは目玉を焼かれ叫びながら天文学的な夜を遍歴し 鉄格子は溶けて地獄のような地表を露呈し 幽閉されている巨大な黄金の家畜が屋根の上を浮遊する無数のナイフについて予言した ガラスは不純にして妖艶 数世紀隔てて樹木はペリカンとしての比喩を生きる そうだ 比喩は鮮明な迷宮で馥郁たるアポロンの車輪の季節のもとで醜く腐り落ちた両腕を またたく浴槽で擦るマッチ箱のようなこの狡猾な青空のような 主観的なピアノを忘却したのだ ひとりの男が裸体となり永遠の煙突に飛び込むとき リズムを得た崇高な認識は ひとりの男が裸体となり切り株の黎明において切り刻まれた雑木林の夢となって死ぬるとき この感覚と模倣と 絶え間ない認識の雨は 鉛の卵を無数の赤く滲んでいる火の中へと投げ入れた 君はペリカンと契約した棘の刺さった少年 君はアイリスの心臓と不思議な木陰を流れる水を盗み飲み白骨化した少年 君はピアニストではない 君は主観的な狼狽の水晶だ そして 奇妙な形の夢の中の田園を旅する少年なのだ 悲劇はそれ自体がカボチャの花弁 そして 予言された無数のナイフのように美しい無数の頭のない僧侶たち もはやいかなる歯槽膿漏もシャンデリアを否定しない 死滅しやすい水のしたたりが またもや客観的な鉄格子を濡らしていく このマッチ箱の矩形の臓物に招かれた無病の鳥たち けたたましくオルガンの声で啼く鳥たちは墜落し 鉄格子の内部の炎は隆盛を極めた アラビアの馬たちが曳いていく黄金の悲しみの家畜の死骸 風景は生存し 比喩はこうして死んだ リズムを得た大工たちが瞑想しながら行く 海に浮かぶ主観的なピアノの蓋がひとりでに開き燃え上がり 憂鬱な眠りのような時間が一瞬たゆたったのちに 焼け跡から一個の鉛の卵が転がり出る 卵は宇宙の清潔な血の一滴のように光る 顔は罅ひとつなく幽閉され 角笛の音が黒い羽毛として空間に浮き上がった

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モリ・マキコの小説


むかしモリ・マキコという
作家がいて
ぼくは
その人の単行本を
Amazonやなんかで探して
古本を
買っていた

内容はもう
驚くほど覚えていなくて
ただテクスチュアというか
独特の孤立感
あるいは冴えた
厭世的な感覚は覚えている

ぼくは大いに感心したし
いい作家だなあ
孤独を
センチメンタルじゃなく
怜悧なイマージュで
描いているんだなあ
と思ったものだ

何とはなしに
今一度
モリ・マキコを読みたいなあと
思うのだが
残念なことに
ぼくは今の家に引っ越してくる際に
ほとんどの本を
処分したのだ

古本で買った絶版本
手放したらもう手に入らないかも
という本は
なるべく残すようにしたのだが
錯乱していたか
なんだか知れないが
処分してしまったようで
蔵書の中から
見つけられない

ああ残念だな
モリ・マキコ読みたかったな
引っ越してきてから
何度か
そう思う夜がある

思うのは
いつも夜なのである

これを書いているのも
深夜2時だ

サー・ネヴィル・マリナー指揮
アカデミー室内管弦楽団
演奏の
モーツァルト
交響曲第40番ト短調
第3楽章の
メヌエットを繰り返し聴きながら
書いている

暗い影の線描が追いかけ合いをし
重なりそうになるところで消え
また波の揺れ動くように
生起する

電子的なプロジェクターの映す影の
虚無のようでもあるか

この音楽と
モリ・マキコの小説には
共通したものが
ある気がする

ぼくは普段は
瞑想しながらシュルレアリスム的な
ものを書くのが
日課みたいになっているのだが
今日は
そんな風に書けない日だな
と思ったのだ

それで何となく
アンドレ・ブルトンや
バンジャマン・ペレの詩を読み
瀧口修造や
飯島耕一を読み
パスタを食べ
ビールを飲んだ

それで不図
モリ・マキコのことを考えた

……赤黒く熱を持った腫瘍が脇腹のあたりにあり
男はそれが次第に大きくなり
目と鼻と口が現れるのを知り……

ある日その腫瘍は語る……ぼくが、ぼくが、可愛い羊だった頃の
前世の話なのだけど……

男は
俺は単独者なんだよお!
単独者!
単独者だ!
と叫び腫瘍を引きはがそうと努力する……

腫瘍は
鋼のようだ
男の爪は割れる
血が流れる……

違う。そんな内容では
断じてなかった

しかし小説のタイトルは「単独者」であったように
思われる

あの人の作品は
良かったよなあ

また
読みたいなあ

ただそれだけ思った

そして特に設計図なく
これを書いている

いつもは
詩を書くときは
スタイル

構造を
かなり意識しているけれど
今日は
それが億劫だったのだ

なんか
疲れているのかな……

メヌエットは何周目か
わからぬくらいになっている

13時からまた12時間くらい
働かないといけないから
そろそろ寝よう

まぶたを閉じて
息を吸って
息を吐いて……

薄暗い空間を
無数の影の浮遊物が
追いかけ合う
フーガ
フーガ

発光するものは
なんだろうか

部屋の明かりを消していても
目を瞑ると
何となく仄かに
ふわり
発光するものは?

フーガ
フーガ

そしてモリ・マキコの小説の
手触りだけの
記憶


(2026.07.05  02:20頃)

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しあわせ




「永遠なんてかなしいのかな。
   終わりのほうがしあわせなの?」


「こわくなるから僕たちは、
 そういうことにしたんだよ。


 きっと神様もね。」


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氷雨に向かう途中の一枚のガラスの窓に
何が書かれていたか


人間は不意打ちされ
古い土地に水が流れる


透明になれ
本よ
透明になれ
両性具有の死刑囚


水の上を持続して進む教会がある
茨の頭をし
瑪瑙の肉体を持つ司祭が
手を振っている


氷雨に向かう途中で青ざめていくのは
愚かなことだ


一枚のガラスの窓には
何が書かれていたか

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何ニモナレズ

何ニモナレズ
何モノニモナレズ
文豪ニモ詩人ニモ成レヌ

ミンナニデクノボートヨバレ
ホメラレモセズ
クニモサレズ
サウイフモノニ
ワタシハナリハテタ

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回転しない木馬

遊園地に「回転しない木馬」があった
妻と娘が乗り
僕が写真を撮ることになった
バーにおつかまりください
というアナウンスの後にブザーが鳴り
回転しない木馬が
回転し始めなかった
妻と娘が同じ場所から
笑いながら手を振っている
僕もシャッターを切りながら
時々手を振って応える
長かったり、長くなかったり
そんな一生のうちのほんの数分間
みんなで笑って
みんなで手を振る
終了のブザーが鳴るまで
夢中に家族であり続ける

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梅雨のある日

生ぬるい風が地面を這う
呼吸が頬に纏わりつき
抱える洗濯物を全て放り出し
縁側の下敷きになって
死んでしまいたい

スリッパを履き
廊下伝いに階段を上がる

物干し場に着くと
明るく 高らかに
誰かが歌を口ずさんでいた
よく見ると私で
簡単なことを学んだ

人生は 裏表だと
干し終えると表から
宅急便ですと声が聞こえる
見下ろすと
暗い縁側の下から
私が「はいはい」と
出てゆくのが見えた

裏は隙間で
次にいつ私を殺すか
機会を狙っている

風はついに雨に変わって

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 6

草待ち:ずいぶん遠くのほうで

ずいぶん遠くの方で
誰かを思うのが好き


バーゲンプライスのある本屋で
ポエトリー&ハーツ
と書かれたペーパーブックに目をやりながら
これは これは
ずいぶん遠くの誰かが
すぐ側によってきて
助けてくれなければ
とても とても
キャッシャーまでは持って行けない



買いそびれて
帰る家並みのきれいに刈り込まれた芝生は
幼い頃のフェンス沿いの日々を
眩しくも
優しく思い出させて
「日曜の朝」
とか
「日曜の陽射」
なんかの歌詞の意味が
目の前に確かに放り出されていて
自転車をこぎながら
一人で笑ってしまう


芝生の脇のいくつかの
オオバコやタンポポしか数えるものもないのに
ひとこぎ進む度に
君を通り過ぎた気がした








「花束と折り鶴が少しだけ風に揺れる、ように」より
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https://youtube.com/shorts/9-IodLQpBWE?si=-vbgnfLUOv3h-JM_

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野糞



小雨降る
丑三つ時の
ひっそりとする
国道沿いから
崖下へつながる
ごみだらけの
砂利の小道を進み
高く生い茂る
鋭い茎を揺らす
草叢にまぎれて
裸の尻をひろげた

ひねり出た
排泄物の
臭気立ち昇る
湯気の中
とぐろを巻き
闇と交わい
やがて
半屈みの
足元を周り込み
どろどろの
体をひきずり
草叢の奥へと
崖を下った先の
民家の窓の
灯りとともに
うねりながら
消えていくものを
見守っていた


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 1

 2

八月

「クーロンで泳ぐ熱帯魚は死んだことがないんだよ。

死んだことを自覚するための
     うつつが
            わからなくなる街だから
  死んだって
               思わないんだって。

「夢の中で溺れてしまえば
 死んでしまうよね?

「溺れるような夢を見る方が悪いって。」

また誰か
蝉を知らず知らずのうちに
踏み殺してしまったようだ

僕も君も
似たような寝汗をかいている

よせあえば焼き殺してしまうほどに
ふれあっている部分がやわい。

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墓滅入り

丁度五年前、
夜勤明けの其の足で
中原さんの墓を見に行つた。

吉敷川の
干上がつた川底に、
小石小石小石小石小石小石小石小石小石小石
小石小石小石小石小石小石小石小石小石小石
小石小石小石小石小石小石小石小石小石小石
小石小石小石小石小石小石小石小石小石小石
を、掻き分けて、辿り着く、
住宅地の禿げた一画に
中原さんの墓は在り
その石肌はなめくじのやうに
てらてらと青白く光つていた
花筒はとうに涸れているし
其処で、
私が好きな花を巧く答えたとて
中原さんは
きつとちつと舌打ちするのでせう

旧小郡驛方面から
観光機関車の汽笛
幽かに、

中原さんの墓は在るだけで
あのひとつのものは
解らなかつた

私が失職する前の
他愛の無い出来事である。

https://i.imgur.com/UAQzgl4.jpg

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大志

歳上の女性を墜とし
その女性となん十年も切れずに
こっちも腹の脂肪が気になりだす頃

こんなおばさん、まだ縛ってくれるんだ

なんて言われてみたい

そのときにはもう
すっかり調教が済んじゃってて
いや
色っぽいお姉さんの頃に
もう調教は済んじゃってて

いつもおばさんを縛っている縄は
なん十代目かがもう真っ黒で
股が当たるところなんかそれだけじゃなく
なんかテカテカ光っちゃってて

プレイ前
そんな辺りに鼻を寄せると
おばさん
耳の先まで真っ赤になっちゃって

何やってんの! やめなさい!

なんて

だけどまだ縄十代目の頃は
お姉さん口調がまだまだ強く
咎めるように
キッと睨んできたりもしてるんだけど
縄二十代目の頃には
なんかなよなよしてきちゃって
三十代目の頃は
シクシク泣きだしちゃったりなんかして

おばさんは
臭いくらいのほうがいいんだけど
いや
臭けりゃ臭いほどいいんだけど
でもその頃にはこっちだって
以下のような社交辞令が
言えるようになってたらいいな

おばさんはいい匂いだよ。
いつでも、どこの匂いでも……

縄三十代目の頃には

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昨日は昨日の夢
夜の光
高い場所で演じたら
祝福された
ああ
光だけだ
夜は覆されて
僕になる
裏錆びた岬の灯台に
一人君は入るのだ
僕は待っている
君と分かち合いたい
夜があるから

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うさぎ

扉が開くと…

そこには、黒目がちで

つるんとした丸い目のうさぎがいた 

捕食される側で、常に警戒しているのか?

少し怯えて見えるが


それはそれは はかなげな瞳

それはそれは 健気な瞳

声も上げず

文句も言わず

弱々しい目つきで

辺りをきょろきょろ見渡している

つぶらな瞳で わたしを見つめ返すうさぎ

このうさぎをそっと引き寄せたい

守りたい…そう思った

でも

勝手にはかなげだと思っているのはわたし

勝手に健気だと思っているのはわたし

勝手に弱々しいと思っているのはわたし


すると

うさぎは言った  

ぼくは、じぶんの足でちゃんと立っているし

びぶんの足でちゃんと歩いています


これはきっと

わたしが

わたしの弱さを

わたしの儚さを

重ねて見ていただけ


うさぎはうさぎらしく生きている

無防備な目つきで

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object.



  𝚘𝚋𝚓𝚎𝚌𝚝.𝗼𝗯 𝗷𝗲𝗰𝘁


 人の手
 に依る。
 風雨の蒼に堆積した
 埃を払う
 木肌
 に触れる

 涼しげな冬
 の絵に
 雪が降っている
 窓の外には
 いつもの
 静かな朝

 すずしい
 水が囀る
 蛇口から
 おちる水滴、波紋
 雨宿り、
 してゆけば、よいのに
 昨日、
 駅まえを歩いた。

 あまやどりしても
 よいのに
 うちみずのあびない
 よいあくびのするところ
 ねこの草のね
 みえ隠れする
 葉にそよぐ
 ゆびさき


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三回

このまま夜を見届けようと
自分の胸を撫でながら
深呼吸を三回だけ

私の星が
ドクドクと波打つ心臓と
共鳴している

現実からの逃避
混じり合う矛盾
飲み込んだ言葉

無邪気に通り過ぎる電波の声を
同じようにできたならと
羨んだりもする

宇宙の理に従うのなら
選んだ道の全ては
遥かなる創造のステージ

大切にしている場所へと
遠回りしても
必ず辿り着かせる

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疲れ果てた週末
ざわついた水面のままに
身を横たえた

息は短く 浅く
自身を慈しむ そんな気持ちさえ
揺れる水面からは 見えない

ほんの数時間
目が覚めてしまう
もとより 眠れてもいない



灰色の薄明るい空の下
雨は止んでいた

ベランダに椅子を 広げ
張り付いた身を  沈め
見上げる視界には 一面の薄光


曖昧な輪郭
自身に触れる

ただ あることを
在ると 自覚するように
滲む水面に ただ 触れる

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 4

ほんとうにしんでしまう人

服を買ったり
誰かと会う約束を
していて

いつも
誰かの心配をしている

町内会の集金とかは
早めに済ませるけど
洗濯洗剤や
シャンプーなどの
買い置きはしない

いつも、自分は
そんなことはないと思っていて
少しだけ、ほんの少しだけ、
が積み重なっていることに
気づかないまま

いつも、
やたらと元気なひと

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最後の散文詩 言葉の花束

 

 自分の過去に押しつぶされそうになったとき、ただひとり、布団かぶって寝よう。後悔するのであれば「ごめんなさい」といって、ちょっとチャーミングでいた方がいいだろう。そもそも息を吸う、吐くということができるというのが奇跡だと思う。わたしが憎む相手にとって、あの態度をとらせる理由があるはずだと考える。戦いの場にわざわざ出向くことは単純こころを傷つけにいっているだけだと思う。そもそもこう、知識があるということが相手より、上に立つ材料にしてしまっている。努力はすべきだがこの努力は叶える目標のための努力なのだろうか。あの人は悪いひとだと決めて自分の世界を狭くするのか広くするのか考える。まずこれをやりとげたいという覚悟がなければ体の方が動かないんだけれど。でも「がんばっても失敗する」その固定観念が栄光をそもそも邪魔している可能性がある。いろいろ遠回りしてきたけれど結局答えは自分の中にありました。しかしひとに遠回りをしない方がいいとも言えません。自分自身恵まれている点に気づいているのに、なぜ感謝のこころが起こらないのだろうか。それも良い悪いで判断するのでなくそもそも十人十色なような気がする。信じるとはなにか。これがそもそも人によって違うんだ。私が信じるものと相手が信じるものが違うのに、なぜ私は私の信じるものを妥協してきたのでしょうか。信じつづける、ということがそもそもむずかしいというのならば、なぜわたしはその日々のタスクを信じ、こなしているのか。そしてたとえそれがひとに見られていなくとも悪いことをすれば自分のこころが傷つく。罰則がないからといって自分を傷つける悪いことはしない方がいいだろうな。禁煙薬があるからという理由で煙草を喫うことを正当化するのをやめたほうがいいけれど、欲ばり、あれもこれもやってみたいと思うことは素敵なことだ。人はそもそも不完全だと思うけれど、しかしそれを自由に生きるさまたげにしてはいけない。怒ったり、傷ついたり、そんなことが人生におこらないわけがなくそれはそもそもわたしの責任ではありません。そして、足りないものを足しあうことで実現することがあります。自分の足らないところを伝えようとして詩を書く。ただたんに言葉の花束を捧げているのではありません。ここにこころをこめます。どんな言葉でさえなにか明暗があるとしてその明るい色だけを信じた方がいいだろう。わたしはこの、こめひとつぶの味に感心しないでどうしてミシュラングルメの味がわかるのだろう。そしてあのスティーブ・ジョブズの最初の成功がいたずら電話だったことを今思い出します。


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さようなら

愚かな女でした。
あなたに優しくされるたびに想いは集っていきました。
でもあなたの眼中には私はなかった。
貴方を好きになったことが間違いでした、

好きという感情が分からないと言っていたのに。
空っぽの大好きって言葉がどれほど私を傷つけたでしょう。
あなたが私に大切な友達と言うたびどれほど私はすり減っていったでしょう。

都合のいい女とはこういうことなのですね。、か

貴方を好きになったことが間違いでした。

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 2

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いろ

「いろ」と名乗ったわたしは灰色
雨のよな無色透明の灰色
白と黒のあわいにある
無限にひろがる灰色でありたい
かなしみを包み込むよな
無色透明の灰色で

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 2

 2

雷鳴

「澄みたるは、老年の如し」
と、若きニゴリテルは言いました
「私は、ニゴリテル。平和な時間時代
その一瞬一瞬の暇と退屈を精神の安寧者たちと、共に過ごす
精神の疲弊と荒廃から、やがて欲望は膨れ上がり
発散解消が上手く得られぬまま、悲壮が私を蝕み
勝者たちが、私の時間を搾り取る
憧れの淑女、キヨメテルは多くの男性の羨望の的」

「染み渡るは、腐敗臭の如し」
と、同居人のクサリハテルは言いました
「俺は、クサリハテル。忙しい戦争の時代を生き抜いた
その一瞬一瞬の、争いとトラウマからくる傷跡を、同じ仲間たちと共に過ごす
精神の充足と、欲望の満足。肉は、血沸き賑わい
税は、国民が私の代わりに払う。喜悦が私の頬を緩ませ
敗者たちと、楽園の時間を過ごす
憧れもなく、永遠に続くオナニーが私の心を癒す」

「響き渡るは、快晴の狼煙」
と、老フザケテルは言いました
「オイラは、フザケテル。出来の悪い息子を精神病院にぶち込んだ
後は、自分は妻と忙しさと楽しきを国に保証された年金生活
その一瞬一瞬の、平穏と無事の世界を心ゆくまで、堪能する
良心の欠乏と、永遠の快楽。妄想は膨れ上がりて
天国へと続く理想と夢へ、私を連れていく
勝者敗者関係なく、皆私に身をひれ伏す
憧れはとうの昔消えていった、鬱陶しき先人たちよ」

それを天から見下ろす、シゴイタルが見て言いました。
「私の名前は、シゴイタル。天からの裁きといつかお前らを、シゴイタル
所詮この世は弱肉強食のサバイバル。勝った者達例外なく、ミナイバル
人生経験を雄弁に語り、女を孕ませ、女は抱かせ、けしからんサバイタル
不埒娘と、淫乱熟女たちめに、拳銃を突きつけ、マナーをいつかオシエタル
良心が作る地獄と、それを信じぬ天国野郎ども。イカサマ達に、人生というものをマナンダル
勝者敗者なき福祉国家日本を米国式資本主義の世界に、いつかトビコマセタル
そんで持って言葉の遊びの合間に、雷と天誅の用意をイソイダル
いつかヒライタル、我リサイタルに、マネイタル」

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雨の日の読書

初夏の若葉を艶やかに濡らす緑雨
窓から見える石畳の路地は
街灯に照らされ雨に煙る
さらさらと紙が擦れる音が
胸の奥にある澱を溶かしていく
温かな余韻を反芻しながら
濃紺の栞紐を垂らした
深く息を吐き再び日常へ回帰する

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お弁当

冷めてもなお
美味しく
食べられるように
工夫してある

ずっと隣にいて
手を差し出す私は
そんな簡単で
いいんだろうか

よく
わかってるつもりでも
私は 勝手に
今日が最後かもと
叫びそうになって
箸を止める

信じるのが
なぜこんなに
難しいのだろう

冷めても美味しい

お母さんは
そのことを言わなくて
少し微笑みながら
蓋を閉める

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わたしがわたしでいっぱい

わたしはぎゅうぎゅうの
かんづめ
わたしはわたしで
あふれんばかり

わたしの(ニンゲン)うつわは
さだまってなくて
るーるもない
むげんだいでうちゅうより
はてしないって
だれかがいうけど

そんなのしょせん
だれかのいうことでしか
ない

わたしはわたしでいっぱいで
きょうもぎゅうぎゅうの
あふれないように
ひっしのひっしのひっしっし
はしたない、な

こんなひもそんなひとも
たぶんどこにでもいるんだろう
おーけー、おーらい、おーる、おっけー

いつかわかりあえたなら
ななめむかいにすわってほしい
ときどき へらってわらいあって
おいしいカフェ・オ・レなど
のめたらいいな

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いないとね

いないとね
なんだかね

みまちがい
するたびに

さびしいよ
どこかしら

いたならね
やっぱりね

あたりまえ
だったこと

うれしいよ
ほんとうに

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にぎりめし

定期的に
死にたくなると
おにぎりをにぎる
あたまのなかで

ぎゅっぎゅっぎゅっぎゅりりぎゅっ
ぎゅー
せいさんかくけいに
にぎりしめていく

「なんでもないけどなんだけど
御一人様って言葉も
ファミリーサイズっていうのも
なんでもないからこそ
ひっかかって好きになれない」

何気ない会話ばかりおもいだして
「で?」
「だから?」
「へー」
「あっそ」
ひとことがまきついてくる

きょうもSNSで
死にたいは溢れるし
「悲しいお知らせ」は
途絶えない
「ハッピーが届かないのは
受け取らないからです」
「この世は鏡」
聞き飽きた台詞を言いながら
ゴミ箱に紙くずと一緒にまるめて
捨てる 以上

ぎゅっぎゅりり
おにぎりをにぎる
あたまのなかでだけ
そしたら いつのまにか

わたしゃあ おなかがへったわ

といいはじめるから

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