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2021/01/01 12:00:00

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投稿作品一覧

◽️プチストーリー【おじいちゃんの誕生日】(作品No_02)

僕のスマートウォッチがもうじき明日を刻もうとしている
家に着く頃には、もう明日だ
最近、最終電車で帰ること多いなぁ
今日仕事行ったら、今日帰りたいよ
明日に帰るなんて、軽いタイムトラベルだよ
ふぅ
彼はマンションへと帰る途中だった

タッタッッタ
歩く自分の足音が聞こえる

足音にもう1つ音が重なった
ブルブルブルルルルル
うん!?
なんかスマートウォッチの振動がいきなりし出た
うん?なんか設定してたっけ?こんな時間に
暗い道で立ち止まり、

画面を見ると

『おじいちゃんの誕生日』

と表示されていた。僕の名前だ。
だけど、ちょっと待った!そりゃ仕事疲れしてるけど鏡を見ても流石におじいちゃんは切ない。
、、、あー、そっか。明日は僕の誕生日だったんだ。
それすらも頭から追い出されていた。
僕は家に辿り着く前の道で明日になり、誕生日を迎えたのか、、、周りには誰も見えない
にしても、僕は自分の誕生日出るように設定してたかな???しかも、おじいちゃん、、、
、、、、帰ろ

と歩き出そうとした矢先

ブルルルルルブルルルルル
またスマートウォッチが振動し僕が歩くのを引き止めた

え?自分の誕生日を2回通知設定?もしかして。どんだけ自分が好きなのよ。え?
と、画面をみたら、なんだかさっきと違い文字が流れてる。

『おじいちゃん、言い忘れたことあった。若い時から無理したの良くなかったって言ってたよ。おじいちゃん大好き。お小遣い貯めて、お母さんに頼んでタイムメッセージを送ってもらいました。長生きしてね。お外で遊べたらいいな』

なんだこれ??女の子の声だ。聞いたことない声。でも、なんかほっておけない声。後半少し声が滲んでいたような。

ピー
タイムメッセージは以上です。返信もお受けできるメニューを注文されてます。この後のブザー音の後に、スマートウォッチに話しかけて下さい。

僕の理解のスピードなんてお構いなしに、いきなりクイズ番組の回答席に座り、参加させられてる気分。え?まってまってまって

ピーーーーーー

「え、えーと、こちら、おじいちゃんでないおじいちゃんです。誕生日祝ってくれてありがとう。祝ってもらったの何年振りだろう。僕の健康を心配してくれてありがとう。そーだな、女の子を安心させたいな、えーと、」

「とりあえず、明日仕事行ったら、明日帰るからね。そこから始めるね。」

ピーーーーーー

(了)

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ポテチが一番おいしかったとき



父ちゃんが子どものころはな
じゃがいもばかり食べてたんや
なぜならそれしかなかったんや

母さんがあんたを産んだとき
わたしは二十歳やったわ
お見合い結婚てわかる?

仕事を終えさっぱりして
おでんをつまみにしながら
熱燗で晩酌を嗜む父のそばでぼくは
ソファに寝転がっていた
母は台所で夕飯を作っていた
ぼくはポテチを食べていた
なぜならおいしかったから

誰もが貧しかった頃の食料事情
幼いながらに感じ取ってはいた
どこか遠いお話のようだった
なぜならなにも知らなかったから
空襲の中で生まれた子であったこと
まだ戦争のせの字も知らなかった

ぼくはポテチを食べていた
笑いながら食べていた
他人事のように聞いていた
今は生きてはいない人の言葉を

あれからすっかり大きくなった
いろいろなおやつを食べてきた

ポテトチップスは買わなくなった
自分で作ることを知ったから

食べたいならじゃがいもをスライス
そして
フライパンに油をひき焼き上げる

香ばしい匂いを放つ
焦げ目が付けば止め
軽く塩をふりかける
熱々をつまみにする
贅沢を味わえるから

山のおじさんは月のカールを漕ぎ夜の海へ消えた
かっぱのえびせんはいつしか種類が増え止まらなくなった
黒い雷もいつのまにか垢抜け轟かなくなった
なぜか突然きのこたけのこが和解を果たした
ぼくは台所でじゃがいもを切っていた

価格が少しづつ上がっていた
ぼくは驚かなかった
ぼくはぼくのポテチを食べている



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新婚

初めて住んだ 築四十年の
古いマンションの
畳の部屋は 西日に焼けて
何か 香ばしい匂いがした
隅には 
黒い四つの四角形があって
それは 爛れた皮膚を
思わせたから
わたしはそこに
白い敷物を乗せて
見て見ぬ振りをした
 
部屋に入るたびに
わたしは草原を思い出した
乾いた風が 草木をなびかせ
わたしは香ばしい風を
長い灰色の鼻から吸い込んだ
 
わたしは 
ほんしつ的に象だった
ぱおんと一声 
高い声で鳴いてみたかった
 
遠くで誰かが
わたしの名前を呼んでいた
夫であるようでも
よく知らない人のようでもあった
しかし 
つよい声をもっていた
 
わたしはまだ
大地を駆けていたかった
わたしのからだは 
若くて
こんなに力があるのだから
せいかつなどとは無縁の
わたしの草原は
のびのびとそこにあった
 
ある日 
白い敷物が
はがされていた
こんなもの邪魔だろうと言って
夫が外したのだ
 
「この方が清々する」
 
わたしは草原を失った 
黒い四つの四角形が
わたしを見ていた

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shidan

遠い森の中
色とりどりの鳥たち
麗しくよくとおる声で
さえずりあつて

私は立つ
酢漿草の上
何も聞こえてこない
ただ遠くで森が揺れてゐる

変わらぬ森の深さ
知らない風の記号に
新しい鳴きかたを
鳥たちが試しだす

私は蹲う
落雁色の空の下
新しくはないやりかたで
又同じみぞ筋を掘りなおす

https://i.imgur.com/la2ngxV.jpg

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羊と兎をめぐる冒険

走る車の窓からの夏の光はさびしい
センチメンタルやエモーションではなく
あれらはもっと暗い地点にある光
愛されて育った人と同じ言葉を持てず
冷やかし以外で使ったことがあまりない
汎用の形容も嘆息も使いたくないのに
他者を見るときまなざしが泥のように深い
ご先祖様のセックスと蛮行の連続でできた
心と身体は文章題の点Pと点Qだ
大人は汚いと真顔で言う中年は危ない
わめくガキは嫌い わきまえた若者も嫌い
家の黒い雌羊として生まれて生きて
どこにも属すということができない女に
いいんだよと簡単に言ってくれる人は
まもなく女を寝室に引っぱり込むだろう
社会は複雑怪奇な森林の類であるらしく
ここでは善良な市民も一羽の肉食の兎だから
きょうもひと口ずつ食べられている

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ゆれて



 さざなみの揺れるてのみぢか
 けだかき雲の なかったことに
 ゆめ ゆま ゆめ ゆみ 
 ゆるし

 ゆるされるもの
 ゆるされざる人

 ゆれる ゆらぐ けしきに


  海を揺れていた、頃
  遥かな、波の。
  少し 揺蕩う、青の
  揺らいでいるのは
  ミトコンドリアの(幻視)
  貝殻や藻屑と ともに
  深く、海の底まで


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宵境

黄昏に
影から生まれ
宵闇へ
滲む境目
音も無く啼く

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愛と幻想

一本の斧の煌きに僕は生きている
世界の夜のその星の輝きを弾きながら
すうっと冷たく澄んだ刃のために

生きている

僕は束の中の一本
一本の斧を構築するがための
何本もの結束の
儚いたった一本

ただそれだけであろう

その儚さの塵たちも
そっと身を寄り添うならば
やがては何にも折れなくなると

そう知っているのだから



斧があった
柄が何本もの魂の構築の
そんな斧があった

そこにこそ人間時代の愛と幻想のその高貴は存在しうる

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主張強め日記 6月8日 貸し本棚サービスの狙いとか

昨日、貸し本棚サービスをローンチさせて頂いた。以前、生成AIだけでラフに実装したものを一度公開し、一定の手応えを確認した上で、改めて作り直してのリリースである。すでに10近い本棚が作られていて、ありがたい限りだ。


着想のもとは、町の本屋にある。詩集を置いている本屋は、大型書店を除けば一部にしか存在しないが、そうしたこだわりの強い、町の小さな本屋には、貸し本棚を設けているところがある。読書家や作家が、利用料を支払い、自分の趣味を一棚に並べて披露しているわけだ。あれをオンラインで、しかも無料でできるなら、一定の需要があるのではないか。そう感じたのが出発点だった。


貸し本棚にこだわった理由は、はっきりしている。ネトスト機能や開示請求機能といったギャグ機能の案もあったし、AIを使った別機能の案もあった。その中で貸し本棚を選んだのは、コミュニティの強化と、経済的な仕組みづくりを、ひとつの機能で両立できると踏んだからだ。


まずコミュニティの面で言えば、互いの読書遍歴を見せ合うことは、文芸投稿サイトにとって直球の交流だと思っている。CWSには、コミュニケーションそれ自体を目的に群れたがる人は、正直なところ少ない。CWSでの交流へのニーズは、暇つぶしの雑談や馴れ合いというより、もっと学びに近い何かを指している気がする。誰が何を読んできたかを知ることは、その人の書くものを読み解く手がかりになるし、自分の次の一冊になることもあるだろう。貸し本棚は、学びの交換を起こす装置としてポテンシャルがあると感じた。


念のため対比として言っておくと、マナー無視、罵倒上等の「硬派」を看板に掲げる場は、異質な人間を排斥する方向で罵倒を撒き散らしているだけで、結局は気の合うごく少数と馴れ合う方向に向かいやすい。極道だのアウトローだのと冠した場が、いかに緊張感のない馴れ合いに終始する傾向があるか、食傷している人も少なくないだろう。CWSのユーザーが求めているのは、そういうものではないと思う。


次に経済の面。あけすけに言うと、本棚から本が買われれば、運営にアフィリエイト収入が入る。ただし、これを私たちのポケットマネーにするつもりはないし、サイトの維持費に充てるつもりもない。サーバー代もAIの利用料も、CWSにかかる費用は今後も全額、私が負担する。そこは私の負担でよい。では収入をどこへ回すのか。答えは再投資だ。具体的には、出版事業をより手広く展開する原資にしたい。コミュニティから生まれたお金を、コミュニティのために使う、という一本の流れである。


詩や文学で飯が食える時代ではない。それでも、プラットフォームとして経済が回る仕掛けは、いろいろと試していきたい。利用料の類は、これまでも今後も、どんな形であれ投稿者に求めるつもりはない。感謝してほしいとも思わない。その代わり、運営者として十二分に偉そうにさせてもらっていると感じている。


その偉そうついでに、ひとつお願いをさせて頂きたい。本棚を作り、それを各自で宣伝してもらえれば、この小さな経済はまわりはじめる。サイトの活動がさらに広がっていくよう、力を貸してもらえるとありがたい。

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批評・論考

ユーカリのキ


一気呵成に言い聞かせ
木々の隙間から覗く輝かしき世界
双丘と大海原と大木がせめぎ合う

舌先で味わう塩味と
法華経の理が
鯨の背に乗って吹き晒す

例えとしての虹が
滝のように流れ落ちれば
もうもう縁もたけなわ

彫り込まれた世界で
飲み込めない玩具
網に掛かるは雁字搦め

輝いた一瞬
残るは一生

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かさぶた


ずいぶん長いことご無沙汰しておりました
その後お変わりございませんか


いつぞやは大量のクスリを飲んでしまい
あなたやたくさんの方々に
大変な心配とご迷惑をお掛けしてしまいました


人生はそうカンタンに タンジュンには
終わってはくれないものですね
なんてね
いやはやこれは ブラックジョークと
受けとめてやっていただければ幸いです



生まれてこのかたずっと 
家族というものについて考えています
家族団らんとか あたたかい家庭とか
そういったものが本当に存在しているのか
あんなのはただ 物語の中だけの
絵空事でしかないのではないかと
私には思われて仕方がないのです
考えがひねくれすぎかもしれませんが
いまだ 考えてしまうのです



いったいどういう育ち方をすれば
あんなふうになる なってしまうものなのでしょう
何を見て聞いて触れて感じたれば 
あんないい加減な大人子供が出来上がるのでしょうか
絶対にあんな大人にはなるつもりはないしなりたくもないですが
自分もやがてはそうなってしまうのでしょうか
いやもうすでにそうなってしまっているのでしょうか



できることならこの躰を流れる血液まるごと全部取り出して
洗濯機でジャバジャバ洗い流してしまいたいですよ
あんな人間の血がこの躰の隅のすみまで走っているなんて
考えただけで そら恐ろしくてたまらないのです
夜な夜な 髪の毛を引きずり回される夢を
ぶん殴られ蹴り飛ばされる夢を
家中の物というものを投げつけ破壊
あの壊れる音を
何度も何度も繰り返し 再生してしまうのです
いずれ間違いなく つま先から腐敗していく
そんなどうしようもないクズの血が流れている私だから
きっとみんな その匂いを嗅ぎ分けて
誰も寄り付こうとしないのではないか
そんな考えなくていいことまで考えてしまうから
ホントまったくもってやれやれなのです



いつだって自分の気持ちはどこかへ置いてけぼりのままで
しょうがないしょうがない
だってこれが私だもの
しょうがないよ しょうながい
そんなふうに今までずっと 
言い聞かせ続けて生きてきましたが



だけど本当はもうとっくに 
うすうすと感づいてもいるのです



思い出したくないのに思い出してしまうから辛いのだと
ずっとそんなふうに思ってきたけれど
本当はそうじゃなくて  そんなことなんかじゃなくって
そいつによって沸々と湧き上がる感情であったり
心が拠り所を失ってしまったり
どこへもぶつける宛もなく
結局は自分に向けるしかないやり場のなさだったり
眠ることさえ怖くなってしまったり
思い出すことによって何度も何度も痛めつけられていたんだということ
かさぶたをひっぺがえすのはなにも
てめぇの爪ばかりじゃ 決してないんだということ


つらい記憶がフラッシュバックしてしまうのは
もうしょうがないことなのです
思い出すつもりじゃなくても出てきてしまう
そんなの当たり前のことだったのです
たとえて云うなら 子供のころに習った掛け算の九九
繰り返し繰り返し復唱しては覚えていった
要するにあれと同じようなことなのです
経験してしまったんだもの
強く強く刻みこまれてしまったんだもの
忘れろと云われることのほうが無理な相談というものなのです




殴られた記憶が いまの私を殴りたおす
蹴り上げられた記憶が いまの私を蹴り散らす
酷い言葉が いまの私の存在を脅かす



もうええでしょ もう十分でしょ
縛り付けてるその重い足かせ 
そろそろ外してもいい頃よ



あの頃の痛みを思い出してつらいんじゃない
記憶の刃先が斬りつけるのは
まぎれもなく いま現在のわたし



まったく何かの罰かなにかのように
自分を痛めつけることに熱中していたのです
しあわせになることは罪なことだと
どこかでそう思い込もうとしていた
いや そう自分に押し付けようとしていた


つまりは 今度は私自身が
わたし自身を弄り倒していじめていたのです




しあわせになるのに 罪も罰も
遠慮も会釈もいらないのにさ




そんなふうに思ってしまう思考のくせみたいなものが
知ってか知らずか いつの間にかついてしまったんだって
最近になって ほんのちょっぴり
解って 解りかけてきた気がして




ずっと自分が大キライでした
愛を求めて伸ばした手は撥ね付けられ
歩みよろうとすれば近寄るなとばかりに壁をつくられて
何をしても 何もしなくてもいつも余計者扱いで
どこにも拠り所のない自分が
大キライでした
もてあましてばかりいました
消えてなくなってしまえばいいと
ずっとそう思いながら生きてきました






だけど今日宣言します
私はわたしを引き受ける覚悟を
どんな情けない自分も
決して見放さない覚悟を


ここに決めました、と













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アンシエー マタ ヤーサイ


県立病院前バス停で見知らぬ女性に声をかけられて
よくよく 顔をよくよく見てみれば
あの色黒で歯のやけに白かった娘じゃないか

こんなに色白でスマートになるならば
あの日の体育館の裏で
うん と頷いていたらよかったか なんて


 アンシェー アンシェー マタヤー サイ
 アンシェー アンシェー マタヤー サイ
 サーターテンプラー屋ぬお嬢さん

 アンシェー アンシェー マタヤー サイ
 アンシェー アンシェー マタヤー サイ
 帰る場所は もう この島じゃないんだろう




コザのそば屋で偶然会った
小学校からの友達も
たまの休みで帰ってきてたさ と言う

もうすっかりナイチャーになったねえ
と言うと お前は
顔をまっ赤にして 島酒 あおった


 アンシェー アンシェー マタヤー サイ
 アンシェー アンシェー マタヤー サイ
 ナイチャーって言ったのは 悪かったさ

 アンシェー アンシェー マタヤー サイ
 アンシェー アンシェー マタヤー サイ
 またくぬ店で くぬ酒ぬ続きを




この齢にもなればしかたもないが
元気だった友の一人が急におじいに呼ばれ
ニライ・カナイに行ってしまった

馬鹿がつくほど優しくいつも笑っていた
残されたふたりの天使も父親に似るのだろう
笑顔の似合う娘に育つだろう


 アンシェー アンシェー マタヤー サイ
 アンシェー アンシェー マタヤー サイ
 清明ねえ巡いやびら

 アンシェー アンシェー マタヤー サイ
 アンシェー アンシェー マタヤー サイ
 七月ねえ降ってぃ来うよお




我侭言って大分休みをもらったけど
明後日からは仕事に戻るさ お父
明日の朝の飛行機に乗るさ お母

昔の詩人のように風を待つこともなく
いつもの生活に戻れるのだけど
僕の帰るべき場所はどこなんだろう

さあ


 アンシェー アンシェー マタヤー サイ
 アンシェー アンシェー マタヤー サイ
 我 生したる 父母

 アンシェー アンシェー マタヤー サイ
 アンシェー アンシェー マタヤー サイ
 我 生したる 縁ぬ島


 アンシェー
   マタヤー サイ
 







(読み方と個人的な解釈)
************************************
アンシェー マタヤー サイ=それじゃあ また です
サーターテンプラー=サーターアンダギー
ナイチャー=内地人
ニライ・カナイ=島に幸をもたらす神の住む場所、理想郷
島酒(シマザキ)=泡盛
清明(シーミー)=旧暦三月の吉日、墓前に供物をし、その後、共食する(中国の風習)。
巡(ミグ)いやびら=巡りましょう
七月(シチグァツ)=旧盆(旧暦七月)
降(ウ)ってぃ来(ク)うよお
我(ワン)生(ナ)したる


https://youtube.com/shorts/7DUtXmYqGe8?si=rMeikGKMPSXhtw8R
https://youtu.be/XdNQjtbEYMw?si=mpudE0r8mbhT_OtR

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歩道橋

こんなに揺れただろうか
足に感じるのは
歩道橋の階段の揺れ
 
あの頃は
駆けだして昇ったから
感じなかったのかもしれない
 
今は
急ぐ必要もない
ゆっくりと階段を昇る
 
こんなに近かっただろうか
眼下を走る車が
大きく見える
 
あの頃は
遠くに見える信号から
どの車が先にこの下を通るのか
友達と賭けをしていた
 
道路を渡るために
今は
止まることはない
 
こんなに手すりは低かっただろうか
階段の滑り止めのゴムが
欠けている
 
降りきって振り返る
ただ
剥がれた水色が
灰色になっていた
 

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不倫

高ぶる私の香りに貴方の香りが
纏まり付いて来る
唇に伝わる野暮だけれど柔らかい感触
絡み合う舌だけが
落ちてゆく底知れぬ恋情の中で
現実への扉をまさぐっているかのように
相手の舌を押し戻しながら別れを告げる
貴方が帰った部屋の残り香が
私の知らない 知らなくて良い 彼の顔を隠す様に
火照った私の心を抱きしめる

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Q&A

先生 密室の恋に愛はありますか?
私たちはサイバー空間の書庫のなかで
つめたい床に裸のお尻を押しつけながら
信頼できない語りをとかした
コーヒーらしい飲み物をくっくっと
くっくっと飲んでいますけれども
私はなんだか眠くなってきたような
そういうような気がするのです
そして今夜の夢には
とてもうつくしいリリスがでてくるけれど
朝になればきっとあなたの赤ペンで
痛々しいまでに塗りつぶされて
先生が私を欲しがる男の人ではなくて
お父さんだったらよかったと思うでしょう
さっきあなたが後ろ手に閉めたドアの
向こうになにがあったかは
もう忘れてしまいました
それがあなたとあなたのさびしさの
悪気のないいちばんの望みだから

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necrographaim


2020年8月、レバノン首都ベイルートの港湾地区にて爆発事故が発生した。過去に貨物船から押収され、処分が出来ないまま港の倉庫に放置され続けていた大量の硝酸アンモニウムの発火が原因とされる。爆発のエネルギーは凄まじく、非核兵器によるものとしては史上最大級であり、その猛烈な衝撃波は爆心地から数百キロ離れたキプロス島でも観測されるほどだった。死傷者七千名以上、住居を失った者は三十万人にも及び、湾岸地区は文字通り瓦礫の山と化し、爆心地にはとてつもなく巨大なクレーターが穿たれた。
付近にあった穀物倉庫もまた、爆発により著しく損壊した。貯蔵されていた大量の穀物が崩れた壁のあいだから溢れ、港湾区域一帯に散乱した。やがてそれらは発酵し、腐敗し、その臭いに釣られてか、爆心地付近にはおびただしい数の鳥の大群が棲みつくようになったのだという。

私はその映像をたまたまテレビで目にしたのだった。
崩壊した倉庫から鉄骨や鉄線が骨や臓器のように突き出し、その隙間からこぼれだした穀物が内臓や体液のように外側に溢れていた。まるで巨大なしかばねがいくつも転がっているかのような廃墟群を、たくさんの鳥たちが覆い、地表をおぞましい数の黒点が蠢きながら埋め尽くす。互い違いに囀りあいながら、重なりあいながら、はぐれまぐわい、まるでひとつの意思を共有するようにうねる集合体!



小学校の頃、クラスに普通ではない男の子がいた。といっても、何がどう普通でないのか、は誰も知らなかった。知らされていなかった。会話が出来ず、コミュニケーションを図ることが難しかったが、それ以外は、特段暴れたりすることもない、とにかく物静かな印象の子だった。そう記憶している。
一部の男子はその子を揶揄ったり、虐めることに執心していた。謗るだけでなく、殴ったり蹴ったりする者もいた。しかし彼は、そんな仕打ちを受けてもやや顔を顰める程度で、呻き声ひとつあげず、どんな時でもその視線はいつもぼーっと宙を泳いでいた。その反応が面白いのか、(あるいは癪に障るのか、)男子たちの蛮行はしだいにエスカレートしていった。

ある日の数学の授業中のことだった。若い女教師が黒板に向かってチョークで数式を書いている最中、数人の男子たちが目配せしあったかと思うと、彼の真後ろの席の男子が彼の膝裏を思い切り蹴り上げた。べちっと肉のぶつかる音がして、クラスメイトたちはちらとそちらを一瞥するも、誰も声を上げず、上げられず、大半は気まずそうに彼から目を逸らした。しかし逸さなかった者もいた。彼が、痙攣でも起こしているかのようにぷるぷると全身を震わせていたからだ。彼はかっと目を見開き、勢いよく立ち上がったかと思うと、突如、学校中に轟くほどの凄まじい声量で絶叫しはじめた。金切り声とも唸り声ともつかない音だった。みんな一斉に彼を見やった。が、あまりに突然のことだったので、生徒はおろか、教師ですら戦慄したように固まっていた。怒りとも悲しみともつかない表情で叫び続ける彼。しかし数瞬ののち、クラスのあちこちからざわめき、嫌悪の声、嘲笑が起こりはじめ、ハッとした顔で我に返った教師が、しばらく自習時間にします、と告げると、なおも絶叫するその子の手を引いて教室から出て行ってしまった。ほんの、数瞬。

しばらくして落ち着いた彼はすぐにまた元の物静かな子に戻った。
それから叫ぶ彼を見ることは二度となかった。
きっとあのとき飛び散ってしまったのだ。



幼い頃から重度の吃音症だった。だから、他人と会話することが少し苦手だった。言葉を聞き取ってもらえないことより、言葉を聞き取れなかったということを、気まずそうに謝られるのがなにより辛かった。感情を表に出すことも苦手だった。感情が乗れば乗るほど、言葉がつっかえ、震え、崩れていく。まるで激しい流れを何かに堰き止められているかのように、行き場を無くした言葉は、逆流し、内臓の奥でうねりをあげる。それが苦しくて、どうしようもないので、なるべく感情と遠いところにいようとつとめた。自衛のための所作。

幼い頃に父を亡くし、女手ひとつで育ててくれた母が再婚相手を連れてきた時も、その男性となかなかうまく喋ることができなかった。どうやらこれから父となるらしい男性に対し、どういう感情を、どういう言葉を向ければ良いのか分からず、なんとか口を開くが、喉には何かつよく透明な膜が張っていて、そこに引っかかった言葉が弾き返されてしまう。いつも身体の奥の方で、放たれなかった熱が、蛇のようにわだかまるのを感じていた。

継父の実家に連れて行かれたときも、やはり上手に喋ることができず、俯いたままじっと母の背に隠れていた。挨拶をしなさいと言われ、いくつかの定型を口に出してみるも、うまく言葉を紡げず、出来ないことを意識すると余計に呂律が回らず、自分がどこに立って何を話しているのかだんだん分からなくなる。そっと継父とその母の顔を窺うと、彼らは私にとって見慣れた表情を浮かべていた。怒っているのか悲しんでいるのか分からない、ばつの悪そうな、宙ぶらりんの顔。それからは頑なに口を閉ざした。いっそ喋らない方が、いっそ喋れない方が、誰にとっても都合が良いのだ。

継父の頼みで、結局その日は泊まっていくことになった。母と二人、廊下の突き当たりにある和室をあてがわれた。夜更け、ふと尿意を感じて目を覚まし、母を起こさぬようにそっと部屋を抜けトイレに向かうと、廊下の途中にあるダイニングから、かすかな光と声が漏れていた。こっそり聞き耳を立てると、どうやら継父とその母が、自分たちのことについて小声で話しているようだった。でもねあの子、なんて言ってるのか全然聞き取れないし、何考えてるのか分かんない顔してて、こう言うとあれだけどね、気味が悪いのよ、なによりあの腕の痕…と不快そうに囁く継父の母。



掻いても、裂いても、
もっと深く、
皮膚の、真皮の内側に蠢くもの。
たくさんの粒々がうねり、ぶつかり、溶融しながら、どろどろと粘性をたもち、渦を巻いている。

私は何も言わなかった。そのときも、それからも、何も言わず、何も言えず、口を開けば吃音が、まるでかすれた喘鳴のように漏れ、言いたかった、言葉よりずっと手前の音だけが溢れ、だから何も言わなかった。そして、だから誰も、何も聞いてはこなかった。

蓋を閉じたミキサーのように、内側でひたむきに攪拌されていく、臓腑や体液、言葉、あるいはもっとおぞましいものたちの溶液で、身体が浮腫のように膨れ上がっていく。ぬるい膜の中で、蠢く澱、発酵し、腐敗し、それでもなお形取る、死蛹、

しかし、
あの港の映像を見た時、気づいたのだ、
こうして、たたえるうちに、
たとえるうちに、
とうに溢れていたのだ、

地表を汚すつぶつぶ、に、飢えた鳥が群れる、剥き出しの骨の、隙間から、饐えた臭いの穀物をこぼし、放棄された、瓦礫まみれの地平に、仰向けに転がって、ついばまれる、


見上げる、実をあげる、

空、





今日も雨が降っていた。昨日も、おそらく明日も。この街には年中雨が降るから、人々は傘を差さない。むしろ、雨に濡れることこそが彼らのよろこびであった。この街特有の、激しく、そしてひどく冷たい雨を彼らは慈雨と呼んだ。毎日、彼らは欠かさず雨に祈る。日が昇ると外に出て、一様に濡れ、笑い、手を繋ぎ、輪を作りながら歌い、踊り、日が暮れるまでゆっくりと回る。その所作そのものが、雨乞いの儀式のようでもあった。

この街の外側からやってきた僕は、雨に濡れない。何故か、雨粒は僕をすり抜けていってしまう。自分の体を水が通り抜けていくという感覚は不思議なものだったが、なにせ毎日雨が降るのだ、この街で暮らすうちにその感覚にすっかり慣れてしまった。雨に濡れないものだから、次第に外に出るのが億劫になって、やがて僕は部屋に篭るようになった。日が昇るたび、窓の外から雨音を掻き消すほどの楽しそうな歌や笑い声が聞こえてくるのを、ただ耳を塞いで過ごした。

この街では、人々は身体の中に文字を孕むという。それを孕んだ者は次第に腹が異常に膨れていき、やがて肉が弾けて内臓が飛び出す。あふれた内臓の表面には文字のような腫瘍が走っており、そこに刻まれた言葉から、彼らは自らの起源や役回りを読解する。僕にはいまいちぴんと来なかったが、人々はきまって明け方、その文字を指でなぞり、日の出と共に家を出て、出会った人と、挨拶をするように互いに刻まれた言葉を反唱し、それから手を繋ぎ、鈍色の雨の中、ひたすら輪になって踊った。踊り続けた。腹からこぼれ出た内臓をひきずりながら。

街の外側から来たという僕は、しかしそれ以前の記憶がない。なぜ僕がこの雨降りの街にやってきたのか、あるいはなぜ連れてこられたのか。何も分からない。だからこそ僕は、この肉の奥に隠された言葉を読みたかった。確かめたかった。どこから来て、どこへ行くのか。しかし、僕の腹は一向に膨れる兆しを見せず、雨に濡れることすらできず、僕はこの街で一人、気が遠くなるほどの時間を半ば幽霊のように過ごしていた。

やがて僕は、短い物語を書くことに没頭するようになった。ひきこもっているあいだ、退屈凌ぎとしてなんとはなしに始めたものだったが、どこかで、ものがたる、という行為になにか強く惹きつけられるような気がした。ひとつのセンテンスを書きあげるたび、僕は外からの雨音や、歌、声すら届かないほどの深みへ沈んでいった。文字と、文字と、文字が、手を繋ぎ、くるくると回転し、ひとつの連なりをつくる。まるで奔流のような、ささやかで激しい儀式。しかし、逃避する僕を嘲笑うように街に降る雨はしだいに激しくなっていった。空を覆う雨雲は徐々に厚みを増し、昼はどんどん暗くなっていく。

呼応するように、人々の歓喜の舞もいっそう激しさを増していった。息を荒げ、半ば叫んでいるかのような声で歌い、手と手を硬く握りしめ、髪を振り乱しながら踊るさまは、祈りというよりもむしろ怒りに見えた。そのうち、黒雲に覆われた空の向こうから軋むような音が聞こえてくるようになった。激しい雨音、地響きのような叫び、彼らはひたすらに身体をうねらせ、そのたびに、繋がった内臓がびちゃびちゃと地面に打ち付けられる、



夢を見る。
たくさんの腕が重なり、揺れ、花のように蠢いている。誰のものとも知れない腕の群れは、それぞれが異なった腕と結びつき、絡み合い、手を重ねている。(まるで祈っているみたいに?)それらの指は奇妙にくねり、宙に文字を描きながら何かを示そうとしているようにも見えた。誰に読まれることもなく。

一瞬とも永遠とも思えるような時間、僕はずっと腕たちの動きを眺めていた。そこに何かの意図を見出そうとした。やがて僕はその中に淡く光る腕を見つける。ほっそりとしていて青白く、若い女性のか細い腕のようにも、老人の痩せこけた腕のようにも見える。僕はその腕をそっと持ち上げ、両手で手を包み込んで、他の腕たちと同じように祈りのポーズを組む。そして祈ろうとする。しかし出来なかった。分からなかった。いったい僕は何に祈るのだろう。いったいこの腕たちは何に祈っているのだろう。(ここに脳はないのに?)

包み込んだ手の中で、指が蠢き、
僕の掌に文字を書いている────



────しかし何を、と、そこで僕は筆を止めた。いつも、結末を描こうとすると決まって手が止まってしまうのだった。終わりなど誰も知らないのに、どうやって描くというのだろう。途中まで書いた紙をぐしゃぐしゃに丸め、屑箱に投げ入れようとしたが、とっくに箱は握りつぶされた紙で溢れていた。部屋には物語となるはずだったくず紙が散乱していた。

そのとき、陶器が割れたような音が聞こえたかと思うと、すさまじい轟音と共に部屋の天井が弾けるように吹き飛んだ。見上げると、空を突き破り、巨大な腕が天から伸びてきているのが見えた。先ほど紙に書いたものと同じ、若い女性のものにも、老いた老人のそれのようにも見える細い腕。腕がゆっくりと指を揺らしながら、手招きするように空を掻き回すと、ぐるぐると渦を撒くように厚い雲に穴が空き、そこから蒼穹と太陽が顔を覗かせた。眩むような光が一筋の柱となって街を貫き、雨だまりに反射して街全体がきらきらと発光している。まるであたり一面に星を散りばめたようだった。

腕はなおも手招きのような、攪拌のような動作を続ける。指が艶かしくしなり、少しずつ腕の動きは激しくなっていく。だんだんと地表から強い風が吹き上がり、葉や、石や、木片などが空に向かって巻き上げられていく。人々は目を細め、いつものように手を取り合って、輪を描き、踊り始める。激しさを増していく風。腕は大仰な手振りで空を掻き回す。怒声をあげているかのような彼らの歌が、叩きつけるような足踏みが、地面を小刻みに揺らしている。猛烈な暴風が、大樹を根こそぎむしり取り、家々を引き裂くように抉り取り、雨水を竜巻のように巻き取り吸い込んでいく。人々は固く手を繋ぎながら、踊りながら、歌いながら、一斉に地面から足を離し、腕が招く空へ向かって飛び込んだ。まるでそれが、いにしえからのしきたりであり、ものがたるための役まわりであるかのように。腹部からはみ出した内臓をプロペラのように躍動させ、いくつもの人々の輪っかが、旋回しながら、臓腑に吊られるようにして空の中に吸い込まれていく。役割を知らない僕だけが愕然とその光景を見つめていた。彼らは雨の中で歓喜に踊りながら、雨ではなく、晴れを乞うていたのだ。

僕の部屋のくしゃくしゃの紙屑が暴風に煽られ青空へと巻き上げられていく。未完の物語たちが、それでも祈りであった物語たちが、その一編一編が、塵や瓦礫などと共に眩むような陽光の中に溶けていく。風はさらに強くなる。それなのに、なぜか僕の身体だけはまったく風を受けていない。風が触れていない。この凄まじい風は、僕をすり抜けながら、この街から僕以外のあらゆるものを吸い上げようとしていた。

人々の肉の輪が次々に昇天していくなか、僕はポケットの中の、ずっと執筆に使ってきた万年筆を握り締めていた。遂げられないのならいっそ、と、僕はそれを逆手に持ち、少し躊躇してから、思い切り自分の腹に向かって突き刺した。そのまま捩じ込み、引きちぎるように力一杯上下に動かす。上手く開かなかったので何度も何度も突き刺し、捻り、捻る。血が吹き出したが不思議と痛みはなく、しかしとにかく熱い。熱を堪えながら、空けた穴に強引に両手を突っ込み、無理やり押し開くと、ついに僕のお腹はぶちぶちと音を立てて弾け、そこからどす黒い血飛沫が上がった。僕は意を決して、開かれた自分の腹の中を覗く。そこには骨と窪んだ肉の器があるだけで、なにひとつ中身が、臓器が詰まっていなかった。ただ、なにかの存在がさっきまでそこにおり、それが今まさに熱い血の飛沫と共に腹から吹き出して空に吸い込まれていったような、なんとなくそんな感覚があった。僕は呆然としながら、まだ熱の残る腹の中にそっと手を入れる。腹腔の上の方の壁に何かの文字が刻まれているような気がした。しかし何もわからない。いや、確かに何かの形が彫ってあるのだが、それを文字と認識できない。

いよいよ街の全てがほどかれ、見えるもの、見えないもの、そのさかいで位相をえがき、ものがたる、隔たりのすべてが、輪郭をなくし、空の先へ消えていく。巨大な腕に、汲み上げられていったものたちの、悲鳴とも歓声ともつかぬ叫びが、いくつも響き、よろこびの歌の旋律となって和音する。雲ひとつない快晴のした、僕だけが、何にも招かれず、何も宿さず、干涸びた身体を持てあましたまま、澱みなく澄んだ空と、まばゆい逆光の中にいつまでも立ち尽くしていた。



あのとき、
埋められたまま、
掘りおこすことのなかった、
できなかった、
すくいの、井戸より、
どうかすくうように、すくうように、
あなたがたはよろこびをもって、
祈るようにくむ、祈るようにくむ、


‎מים (水を!)





ち、ちち、ちちち、と、とりが、みとり、み、みずに、すみ、みすみの、すみの、すぼみの、まの、まにまに、まくの、まくまの、まなこの、みと、の、まわり、に、みに、みまわり、に、つまり、につまる、あつまる、まる、まって、つまって、は、はまる、まるは、はて、てん、まつ、は、はは、はてては、まち、まる、ち、ちる、ちるちる、ちち、ちる、ちちる、ち、あう、ちりあう、ああ、ふれた、あふれた、ありふれた、なかみの、たかみの、かみの、みなの、みなのみの、みのまわりの、みなみの、のに、て、にえ、てん、かく、てんかく、かく、てんをかく、えんを、かく、えんかく、をかく、えん、を、かんする、を、えんかん、する、えんか、する、そる、そって、そして、そうして、そう、うつ、うつろう、うそを、つろう、うお、おう、しし、うおうし、うも、もう、うもう、とり、おとり、の、とおり、とりを、とりちがえ、とが、たがい、ちがい、とだえ、たがった、いい、たかった、いとが、ちかい、ちを、かち、うがち、ちちかえ、ちを、かえ、ち、にて、ちににて、ちにく、くちに、こぼれ、くち、ここに、これ、あれ、あふれ、ああ、ふれ、あき、ふれ、きにふれ、きぶれ、ぶれ、あめ、ふれ、あふれ、ふね、ゆれ、ゆうれい、ゆられ、うれい、ゆる、ふゆ、ふゆう、し、ふうは、し、しは、はう、はうる、はゆ、はる、は、はは、ははは、な、はな、はなつ、はつの、なつ、なえぐ、なえ、なぐ、つなぐ、えつなく、えげつなく、なく、なくなく、いな、いななく、いなくなく、ない、くえ、ない、くえず、えずく、すを、すく、えを、すくえず、うずく、えん、かく、えんをかく、えんかくを、えがく、えが、えがき、えんを、かんし、えんかん、かく、しかく、かくし、かくして、かん、かく、は、かくう、か、くうか、うか、か、かく、くる、くるう、ね、うねり、ねり、うね、うねり、うねる、ねる、うねる、うで、


 

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お子様よ! 

お子様よ!
キミは毎日ステキに元気いっぱい
キミのエナジーはますます宇宙を膨張させている
手にとるようにわかる健やかなキミの成長
お日様の降り注ぐ部屋で駆けまわるキミに注がれるママの慈愛の眼差し
それはまったく祝福すべき黄金の幼年時代
だがキミの優雅な日常がボクには悩ましい
お子様よ!キミは真上二階のお子様でボクは真下一階のオジサンだ
キミのギャロップはドラム・ソロ
キミのジャンプは頭の上で破裂の爆弾だ
弟とそれに時々ママも交えてキミたちったら、部屋の中
毎日トランポリン、来る日もサーカス
年中サッカー、いつも無邪気な運動会
おお、お子様よ!お子様の母上よ!
ボクの頭脳はヒート・アイランド、臨界、爆発寸前だ
お子様よ!キミはボクから静謐な日々を奪う
お子様よ!キミはボクから閑雅な生活を取り上げる
廊下ですれ違うママと一緒のキミはとても可愛いお坊っちゃん
お子様よ!二階の天使で王子で至宝のキミは
一階この部屋では悪魔で魔王でタイラント
ボクの頭脳をブンブンさせる電気ドリル
ハリケーン叩き続けるキミのティンパニー、バスドラム
オジサンのココロは炸裂して飛んで行っちゃうぞ
けれど家賃滞納中の失業者にはオオヤさんも味方せぬ
だからオジサンは天井に向かってそおっと叫ぶ
シズカニシヤガレ!コノガキ!
キミの人生は今はじまったばかり
さあ、お子様よ!ひろびろとした地球の広場で遊べ!
そして無産のオジサンにも安眠を与える大きな人間になってくれたまえ
でも怪しいオジサンがうろついているからかな
この世紀
公園にはもう誰もいない

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ぼくはセカイを心中させたい

 ぼくのお家は救われたいこと座です。量産されたスーサイド&スーパーマーケット。みなさんと購入する、ぼくを贈る希死念慮ゼリー。くにゅくにゅのあひるが天井で溶けてゆく。伽藍堂の団欒にキザな言葉で書き殴る。



 いぢめだっていえない曲の数数を破壊するために生まれてキた、ぼくの身体ハ中学生。コンパクトディスクの裏側に指紋をつけて、カッターナイフで音楽を切り刻む。お財布から取りだした校歌で、ミネラルウォーターを購入し、髪の毛のいっぽんいっぽんまで、みずに浸して感受性と閉じこもる。



 薔薇肉のアルバイトしているやつって、おまえかって、ぼくに聴いてきたラブレター。ギターの隅に火をつけて、ハートでお願い燃やしてやるよ。



 罪悪感・罪悪感・罪悪感、コロコロでしごかれた、ぼくの青春。バイブレーターでさざめく森が、とてもうる星やつらだぜ。



 ライオンのフリしてやってきた蝉の抜け殻に恋をする。賜物みたいな恋がしたい。くにゅくにゅのあひるの溶けた玄関の時計に右肩を押しつけて、ぼくをみつめるきみはセカイだ。



 サア、扉を開けてください。ぼくのお家は救われたいこと座です。きみを残して,「きみ」を「きみたち」に変えてやるよ!



 はっと息をした瞬間、きみの泪が、ぼくに押し寄せてくる(ぼくは知った!),罪悪感・罪悪感・罪悪感、そんなものはどこにもない(知りたいだけ、ぼくは知った!)!



 ただし、ただしくやってやる(滴ることで、死を知ること、雨がみんな、教えてくれた!)!




 知りたいだけ、ぼくは知った!

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生き物エレジー 

それ以上でも、以下でもない事実がある。多く相談者と相談相手の関係において、 相談者の方が相手を見ている。しかし、後者の立場的優位性から、もっと言えば力の論理から多くその認識に誤解は生まれる。かくして相談者の多くが相手が充分に話を聞いてくれないと外で不平をもたらす事になる。相談相手からすれば力の論理で言えば立場上自分に分がある事は自明のことなので、外で何を言われている か?  知ったことか?  嫌なら最初から私を尋ねなければいい、となる。しかし、相談者からすれば相談する相手を選ぶ自由はそれ程広くないという事実がある。相談者の選べるカウンセリング相手は訪問先を訪ね、自分が指名したわけでもない、 訪問先が選んだ人間である。健気にも彼は初めて面会する相手に取り敢えず信頼す る姿勢を見せる。が、実際は誰もが(本来それで正解だが)遠慮がちに言っても本音では誰一人初めから無防備に信頼は寄せていない。カウンセラーが初めに確認したいのは相手が自分に信頼を寄せているかという事。又、実際はこちらが先決だが、相手が相談主として信用するに足るかという事。そう、こちらの側も本音では 用心深い。相手が用心している様子。簡単に他言出来ない実情をベラベラと語る様 子。丹念に見分け、ひどい話かも知れないが、態度の上でも舐めてかかる場合も多 くありうる。相談主は一方では信頼しているからこそ話しているという姿勢を見せ ながら、一方では内心不信を抱えている。その不満がストレートに出てしまう相手もいる。 
「お開き! 信頼しないなら出て行って貰おう」 
とは、ならない。役職上、自分が信頼出来る相手であることをお金を出して訪問に来た相手に示すことが必要だ。辛抱と忍耐。しかし、実際はやり取りを続けるには どこかで双方が折れて妥協するしか無いのだ。相談主からすれば選択肢はそう多く 無い。相談相手からすれば 
「お前の代わりなら、幾らでもいるよ」
が本音である部分も多いが、その幾らでもの中のパーツの一部を簡単に手放す訳に はいかない。パーツが連なって全体がある。パーツを疎かには出来ない。こう言っ た現実を内包し、無意識の下に包み隠しながら問題解決のために融和を装う。それが嫌なカウンセラーとそのカウンセラーの態度を嫌がる病者。しかし、立場上相互依存的にお互いを求める間柄である以上、カウンセラーは当然のこと、繕うという、本来健常者が常識的に出来ていることがどんな病んでいる状態であれ、病者にも求められる。現実的には双方が時間との闘いである。カウンセリングに天国を期待し てくるのは病者の社会的意識の低さを表しているに過ぎない。社会で一端の成功を修めた人間がそんな人間を見下すのは仕方がない。が、それを踏まえた上で、現実的なこの世に避けられない課題として病理があり、自分も含め病を抱え、 その課題の解消法を探るのがカウンセリングの仕事だ。決して愉快犯的に覗き見趣味として他人の心を覗くことをこの世界の信条としてはならない。多くの医者がその点で大きな勘違いを犯している。それをどんな病者も当人達よりみている。一方で当人達は医者より自分を見れているだろうか? どんな人間も鏡以上に自分を見る事は出来ない。それがこの世界の持っている他に類を見ない奥深さだ。 『医者が語ると患者が黙る』 患者の多くは実生活において、受け身を強要されていることで悩みを抱えているものが少なくない。彼ら彼女達から言葉を引き出し、受け身から解放し、他人に対し、積極的な姿勢と与える力を持たせる。これが私が仕事上一つの指針としているものだ。殆どの人間は人の話を聞けてない。又は、充分に聴ける人間が一人でもい たなら、恋人の破局はないだろう。好きで付き合った同士でも解ってもらえない事 が原因で別れるものだ。双方の同意の形をとるものもあるだろう。どちらかに倫理的な問題を問えるものもあるが、つまるところ根本的な原因は我々は一つではない と言う事だ。元は一つだったかも知れない。もうそれはずっと前のことだ。その時の記憶について詳細に言葉で掘り起こして語れる者はいない。医者は音楽を聴くようにじっと耳を攲(そばだて)て、どんな不協和音であろうとも患者の話す言葉の 一つ一つを心に止めようと努める。しかし、実際は私にだって時間がある。カウンセリングを大回りしている間、全ての病者の悩みを心に留める?  だから、ペンが ある。筆記したものを読み直せば、病者の対処すべき問題について、幾つか思い当たる事がある。思いがけない発見。宝石箱のようなとまではいかないが、まぁ、仕事を通してそれが、その人の抱える問題を通して人生という不可解なものを考える手掛かりになる事だってある。好ましいにせよ、好ましくないにせよ、医者は患者の本当に望んでいるものについて目覚めさせ、理論立ててそれを認識させる。するとうまくいけばどんな未熟な人間でもヨチヨチ歩きでもどうやったら歩けるか? と言う意識は向かうようになるだろう。健全な人間ならそこへ向かって自然と歩い ていくようになる。医者がすべき事はその手助けをする事だけだ。大抵の医者は多 くの悩みを聞いている内にどこかで 
「よくもこんな下らん話をダラダラと出来るものだ」 
と思うものだ。その通り、貴方と私は違う。私と彼も違う。だから、彼の味方をする義理は職務上の建前でしかない。好ましくない政治的主張も大概ある。ダメな医者ほど己(おの)が価値観でそれを否定し、患者の意識を自身の好ましい方向に捻じ曲げてしまう。時には、政治的にきわどいテーマを持ち出し、同意を求めてくる患者もいる。中には賛成出来るものもある。が、簡単に同意する訳にはいかない。 簡単に判子を押す訳にはいかない。一歩社会に出れば誰でも、印鑑証明書のように立場上、慎重に言葉を選ぶべき発言がある。危ない話を持ちかけられそうになることもある。性的誘惑を思わせるものも。穴に落ちる前に私はそっと相手に分からぬタイミングで見えない位置に忍ばせてある録音テープのボタンを押す。テープは危険が去ったと分かった段階で消去する。つまり、悪用したり、うっかり第三者の手に漏れなければこちらに落ち度はない。それを道徳的に許せないと言う議論はお話にならない。こっちは危ない道に誘い込まれるかも知れないのだ。どんな職業でも、特に教科書を自分で作っていく必要があるような独創性を自らに課し、かつ社会の晒し者にされかねない道徳的な危険性を秘めている職務において、そこへ向かおうとしている人間は地雷を踏まないよう、しっかりその道の法律について勉強しておく必要がある。決して感情論では法律は動かない。
 「正しい事は全て法律で保障されている」
 歴史的に未開の人間でなければ赤面せずにはいられない発言だ。文面上のことが有事に対し、万能でない事は体系的な知識を持った人間なら自明のことだ。法律とは勝ってきた規則だ。大声では言えないが、中にはとんでもない悪法だってあるかも 知れない。歴史的にみれば確かに今日で悪法だったと定説になっている法律も少なくない。イヤ、この国においてまさかそんな筈は......そうです、そうです、その通りです。しっかり自分を守るための弁解もお忘れなく。結局道徳的な感情論を持ち 出してくる輩の多くが、歴史的に群衆の中で勝ってきた論理、つまりは力の論理、数の論理をあてにしているのだ。自然淘汰を賛美するダーウィン的世界観の持ち主が持ち出すクロマニヨン人の勝因や恐竜が滅びた理由。サッカーの試合のように、 滅びた理由について考え、それを反面教師にして生き延びようとする。しかし、滅びた者達にスポットを当て、彼らの悲劇と没落の物語を描こうとする人間がいたっ ていい。そんなモノはなんの役にも立たないじゃないかって?  なら、貴方は永遠に風のように時期が来れば自然淘汰されていく人生指南書を追い続けていればいい。買っては捨て、覚えては忘れ、飲み干し、吸収してはすぐ何も残さずに捨てていく営みを繰り返す人間が一人でも多くいることは、常に新しい新商品を売り込みたい業界人にとって好都合なのかも知れない。偉大な人物が勝ったことなど一度も無い。イエスキリストに信者が求めた事はなんだったか?  それは天国と地上の苦しみからの救いという禁断の木に生った甘い果実である。
 「私は多くを許した。しかし貴方達は殆ど全てを許さないどころか、私が大切に育 てた樹木に生えたリンゴやバナナを根こそぎ奪い取った。しかし、それでも私は許 すだろう。それでも貴方達は私から奪うつもりか?」 
若しかしたら、イエスが十字架の上で磔にされた姿でこう語ったとしても、その声に真摯に耳を傾けたいと思う人間は少ないのかも知れない。チャールズチャップリンは晩年進歩的なSF映画を疎んじた。ジョンレノンは晩年 
「僕は50年代の人間なんだ」 
と、十代の頃出逢い、生涯愛して離さなかった原始的なロックンロールへの想いを語り、その後の音楽シーン全般において、生演奏のものでさえ事前に録音したものに合わせて歌う瞬間、失われてしまうものがある。と録音技術の飛躍的向上による音楽の人口化について否定的な見解を示した。立川談志はもう、寄席の客の好むものがおれの時代のものと変わっている。と嘆きながらもう飽きた、と言葉を残して生涯を閉じた。私の尊敬する人物に時代と価値観の落差を唱えず亡くなった人間は一人もいない。勝つのはいつも、迎合上手な群れだけだ。その群れというものも、 個人と言う実体を持たない架空の概念としての群れのことであり、つまり勝った人間など一人もいない。正しいものが勝ち、劣ったもの、間違ったものが敗れるなど嘘だ。多くの理不尽な死に様を終えた人々がいる。アフリカに生まれた子供達。何も間違ってない。アフリカに生まれたと言うだけだ。それを自然淘汰と言うなら、 自然淘汰に正義を求めるのは土台無理があると言うものだ。アメリカにアメリカ人は一人もいない。いるのはヨーロッパ人だけだ。日本に日本人は? 和服を着てい る者も、パンよりご飯を好む者も、洋菓子より和菓子を好む者も全てではなけれ ば、ジーパンに巨大なコークとケンタッキーフライドチキン、おっと、ポップコー ンもお忘れなく。勝ったか? 負けたか? 知ったことか!! 

「なんかどうでも良くなっちゃったんですよねえ」 

(「よく分かってるじゃないか」
と答えて笑いを取りたいが、相談主に未だ熱が 残っているのを察知し、深刻な波長に合わせるべきか未だ探りを入れている)
 「逆に言えばどうでも良くないと思ってる方がしんどくない?」 
「嗚呼、そうですねえ」 
(ソフトな言い方に変えてみる。まずまず好反応だ)
「どうでもいいことを一所懸命やると下らないになるよね?  下らないを一所懸命やるとバカバカしくなる。脱力する。これでいいじゃない」
「うーん......」
(少し重い沈黙が生まれる。お安い御用だ)
「もうちょっと、こう......」
 (「分かってる。意味を求めてるんだろ?」と答えたいが、しばし待つことにする) 
「真剣になってる人に同調しすぎちゃって疲れちゃってる? みたいな?」 
「ハァ......嗚呼......ですかねえ?」 
「まぁ、優しいんだろうねえ」
(返答を待つ)
「………」 
「大義とか正義がないと崩れてしまうものがある。それはどうでも良くない。支柱として足場を支えている訳だ。つまり経済とかお金であるとか、みんなそれはどうでも良くないよ」 
「うーん......ですねえ......」
 「ホラ、猿が高い山に登ってさ。バナナの取り合いするでしょ? それが出来なかったら悔しい。でも、それで悩むのは違うと思うな」

「(笑)」


「ホラ、そこは脱力するとこよ(笑)」

「...........でも......」(しばしの沈黙の後、彼が切り出す)

「ウン......」

「でも、もうちょっとなんかこう......ウーン......」 
「例えば、一定量真剣気味になりすぎる人というのはいて、例えば自分が見くびった相手から面倒な態度を取られる事はその人間にとって好ましくない訳だ。どっちが本当に舐めてるかっていうと自分じゃない。相手だよ。こっちは相手以上に礼儀を守ってる面がある。だから相手が自分を見くびるとしたらそれは相手が田舎者な んだよ」

「ハァ、それは先生のぉ......」
 「プライドとか、矜恃っていうのは大事なんじゃない? ただ、それが何に支えられてるかって考えてみるといい。頭を下げる相手がいて、成り立つ面があるでしょ? じゃあ、頭を下げてる人間はなんだ? とか他人を押しのけてそれを当然の権利と思ってる人間はどうか? とか考えたらさ。不満を持つよりどうでも良くなれるっていうのはある意味で幸せだよね。誰だってどうでも良くなりたいんだから」

「先生、それは......」 
「どうでも良くなって、こうやって椅子に仰け反ってブァーってやりたいよ」 
「ウーン......先生! ぶっちゃけすぎじゃないですかね?」
 「そうかなぁ? じゃあ、例えば私が貴方をむやみやたらと褒め称えたとしよう... どう思う?」

「うーん、なんか......怪しいな......とは......」 
「ケーンゼン! 正解! つまりなんか目的があってそのために利用するための餌と思う。これが上下が逆だと割りかし普通だ。日常自然に起きてる現象だが、そこには内心不安だから相手を立てると言う面がある。字句通りに受け取ったり、相手の主張する意図通り受け取らないのが通常のコミュニケーションだ」 
「ハァ......」
(「オチはない」とは直ぐには口に出さない)

「.......話のオチはない!」
(出しちゃった!) 
「(笑)」

「(笑)」 
「ハハハ、今日はちょっと喋り過ぎましたね。オチって言うのは一つの結果ですよ。試合で言えば中継後の世界です。誰だって終えた後より向かっている時が一番楽しい。山道を登って考えた結果を望むのではなく、山道を登って結果が出ることを期待して登っている瞬間が楽しいのです。後は裏切られた、いい結果悪い結果は、代償として又恩恵として副残物でしかない。副産物を第一に考えるなら、楽しくはないが、楽な人生を歩めるでしょう。SNSで知りたいことを調べれば直ぐ答えが出 てくる。納得出来ない答えだと思える人は山道を登る可能性を持った人間です。熱湯沸かして3分で答えが出る。正に即席ラーメンの世界。俺たちはもっと旨いラー メン出してるよ、とテレビが呼びかけ、ラジオや出版社は、オレならアンタをもっと酔わせることが出来る。とびきりの密造酒だ、と胸を張る。ラーメンだろうと旨い酒だろうと、始終腹に溜め込んではち切れんばかりの人生も悪くない。ただ、たまには自分の足で一歩踏み出す人生。それも悪くない。今の時代、パソコン画面上でいいねボタンを押せば『トモダチ』の世界です。トモダチの定義も随分幅広く、 また控え目になりましたよ。僕らが幼い頃は友達と言ったら夏になったらカブトムシを捕まえに一緒に誘い、冬になれば雪玉を投げ合って雪だるまやカマクラを作 り、やっとこさこぎつけてお互いトモダチと呼び合える仲と認められるようになったものですが。三十過ぎたら、健全な人間は社会に出てひとっこさお金を稼ぎにドサ回りを続けなきゃいけない。つまり遊んでる時間なんてないんだから昔のトモダチシステムは重荷になり、今のシステムはとても便利です。相手がそれを認めてく れる好都合は逆に言えば怖さでもある。コミュニケーションの一つの彼岸のカタ チ。それは別れです。ピッ! とボタンのスイッチを押せば僕らは直ぐ離れてしま います。友達も友情も恋人だって、人の絆はいつだって脆く儚いものでした......」

私は周期的な乱れから昼間の内に酔いが回ってカウンセラーから巫女の魂を受けて まるで講談師へと変貌してしまったようだった。私は一人唸っていると動揺する相談者の前でそのまま涙を溢れ落とし、私が私自身に課していた完璧にコントロール された世界から解放されると

「きょ、きょうはもう、時間が来たカラァ」 
ティッシュで涙と鼻水をグシュグシュと音を立てながら拭く私に相談者は動揺する 様子を見せると

「分かりました。では、今日はこれで失礼します」
去り際に彼は相談が始まって初めて私の目を見つめ、微笑を浮かべると
 「先生、先生とは良いトモダチになれる気がします」 
彼が本気でそう言ったのかは分からない。相談者がバタンとドアを閉めた後も、私はひとしきり泣いていた。ヤレヤレ、これではどっちが相談者で慰められているか、分からない。私の仕事への向き合い方もまた反省点が浮かび上がる。どんなに一時 (いっとき)完璧に見えても、そこから愚かさがこぼれ落ちない理念などない。守れない約束ならしない方がいい。ちゃんとしたかった。でも、出来なかった。世間 がそうさせてくれなかった。世の中が私を作り、同時にいつだって私の思うような 私にはさせてくれなかった。 
「そんなの当たり前じゃないか。一人で生きているわけじゃないんだし」
 みんなが笑ってくれるから、自分を好きになれるんだ。
 「一所懸命やってる。ちゃんとしてる」 
嘘だ。一所懸命やろうとしてる。でも、出来ない。それが真実だ。分かってるのに、どうしてそれで良いとハッキリ言えないんだろう。思えないんだろう。それを認めてくれる人ばかりじゃないからかも知れない。 
「合わせなくても、良いんだよ」 
合わせなくても良いなら、合わせずに許してくれない人がいることも知って欲しい。いや、これ以上涙を流す訳にはいかない。男として涙を拭いて立ち上がる時だ。しかし、時にこう、小休止も必要なものだ。例え、その小休止が側から見えて 惨めなものに見えても、闘う人間の小休止とは本番と違い、不恰好で惨めで、そんなものだ。少し、気持ちが落ち着いてきた。徐々にトンネルの向こうからローからハイへ私を引き戻す光が差し込んでくるのが見える。でも、まだ少し乱れた鼓動が 収まらない。思うように出来なかったこと。どうしても思うように出来なかった自分。時折、走馬灯のように記憶が蘇る。穴から抜け出たいといつも思い、抜け出たと思って喜んでいると、不意打ちに合い、穴から抜け出た筈がまた同じように穴の中にいることにいつも気づく。穴の先が穴なら、そこへ差し込んだ光は私になにを指し示していたんだろう? 愚かである。私も、私を作った世界も、私を疎むもの も、そして歓迎するものも。その愚かさの全てが笑いになり、憎しみになり、人生の機微を教え、全ての喜怒哀楽を象ってきたのに、その中で揉まれながらも時に疲れを口にし、ハーフタイムを求めれば手に入ることばかりじゃない。それなのに、 まだ私は目の前にぶら下がる人参を求めて自分の尻に鞭を打って歩を進めようとしている。そして、私にはそんな私の今まで歩んできた人生の全てが、時に人目を気にすれば恥ずかしい程に、狂おしく、愛おしい。私は今まで決して立派な人間では なかったのに、立派であろうとすら本音では望んでこなかった。私は私の愚かさを、呪うべきだろうか? 誰だって同じように愚かだ。いや、同じようにじゃない。星の数ほどある人それぞれ千差万別の愚かさを抱えている。自分達と種類の違う愚かさを指摘して嘲る人々の群れ。立派なこと。これも反吐がでるくらいつまらないこ とだ。不器用で、何をやってもダメで不出来で、それだからこそ愉快だ。私の理想の死に方は路上で反り返る大ガエルの間抜けな死に面だ。間抜けで愚かなことをやって笑い者になる手段は幾らでもある。いつか吉原のほとりにある名前は事情あって言えないが、湖の上で一升瓶を脇に浮きながら豪快な死に方をしたいものだ。どう死ぬか? 大事な問題だが、生前私を嫌い、いびり倒した人生の先輩方も、やっぱりアイツは愉快な奴だったねえ、と代々語り草になるような痛快極まる死に方をしたい。『天才バカボン』の赤塚先生の死に様は犯罪的に愉快だった。私にしんみり共感を寄せていた人はこれを聞いて怒るかもしれない。バカ言っちゃいけな い。生前、散々いびり倒しても死んだ時笑ってくれる人の方が楽しい人に決まって る。そう言えば、あの人達も時折人間味のある顔を見せた。私はそれを見る度、内心ガッカリしたものだ。散々いびられてもどこかであの人たちのどこかに私の抱え ている弱さへの理解と愛情を時折感じたものだ。散々いびり倒してもどこかで私を愛していたなら、少しは泣くかもしれない。そうしたら人生は何て素晴らしいもの だったんだろうと全てを肯定できるだろうに。オイ、そんな泣くなよ。生前アンナにいびったオレが死んだのが内心寂しいのかい? えっ? ここで泣かなきゃ女が 廃れる? 格好つけんな、ブスのくせに! どいつもこいつも忌々しい連中だ! やっぱりだから、オイラは未だ死ぬのヤーメタ! 
「ポチャン」
 と湖になにかが落ちる音を響かせ、さて、この音はなんの音でしょうか? と問いかけ、私の人間の感情の機微に纏わるとりとめのない話を締めさせて頂きます。 

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一滴の醤油から始まる世界




 君は死んだ瞬間に、
全69巻のコミックスとなって、世界中に飛び散った。
古本屋、探し回って集めた60冊。
残り9冊で君をもう一度、生き返らせることができる。

私は君大学、君学部、君研修室の生徒だったから、
君の事なら何でも知ってる。
君の奥歯にはスイッチがあって、
噛みしめるたびに、新しい星が夜空に一つ生まれる。
君の奥歯が削れて無くなったのと引き換えに、今夜も満点の星空。

人工衛星が私の上に落下して来た瞬間、
体の半分がメカになったから、
はずむ心をアンインストールして、
今日の気だるさ、ダウンロードする。

この世界のバグを取り除く新法案で、
私は次のアップデートで消えることになった。
私の記憶を失った君の記憶の中には、
空白が生まれて、そこからは、
セブンスターの副流煙の香りがする。

『残り1冊で君を復活させられるのに』って所で、
私は政府に処分されて、
君と私は、銀河鉄道の線路に生まれ変わる。

それからはずっと、君と手を繋いでるみたいで嬉しい。
 
 「21年間も、遅刻して、ごめん」
 
遅れてきた恐怖の大王が、
謝罪しながら、世界を終わらせる。
演技でイったフリしてる、不思議の国のアリス。
スワイプしまくって、世界を吹っ飛ばす。
 
眼球の受信料、払い忘れて、
視界全部に、
スクランブルが、かかってる。
味覚障害のミシュランは、
ドッグフードに五つ星を付ける。
 
テレパシー使える、温泉芸者が、
宛先不明の郵便物を、相手の脳に直接、宅配。
心がまだ、君を好きなまま、フリーズドライしてる。
 
本当は、
シャボン玉になるはずだった私は、
誰かに触れられただけで、
弾けて潰れる。
何もしないで、今日が終わった、
命の節約家。
季節を食べる、虫たちのせいで、四季が消滅した後の世界。
 
シザーハンズと、同じ博士に作られた、
全ての指が、ハサミの女の子。
全身を埋め尽くす、QRコード。
全てが怪しい、出会い系サイトに繋がる。
 
銀河鉄道で発生した痴漢事件。
外に逃げ出した加害者は、
たまたま横切った、隕石にしがみつく。
 
プーさんが、いつも上に着てる、
赤いシャツ脱ぐほどの熱帯夜。
 
肉眼で、見えるようになった永遠は、
空気コーヒーのような、水色をしていた。
 
捜査一課に配属された、天才バカボンの本官は、
繋がった眼球から、ビームを出して、
全ての雲を、クリーム色のピストルに変える。
 
人類全員が、
楽器に変身できるようになった世界で、
私は三絃しかない、
アコースティックギターに変わる。
 
 『絶滅した生き物を、一日一種類だけ復活させることができる能力』
今日は大雨。
生き返らせたプテラノドンの下、同じ速度で歩く雨宿り。
 
『今まで人生で、人とすれ違った回数がわかる能力』
「全く要らないなあ」と思っていたら、0って表示された君が現れる。
「ねぇ、君は今までどこにいたの?」
 
次の日起きたら私は、君の家のベランダになっていた。
洗濯物干してる君を、下から見上あげた瞬間、
人間の姿に戻って、君と一緒に落下していく。
 
何にもチャージしてないPiTaPaと衝突して、
中身が入れ替わる。
私の魂は、PiTaPaの中にチャージされて、
それを君が改札に当てた時、
世界の全てを狂わすバグが起こる。
 
酸素に触れる君は、
私が吐いた吐息を蝶々結びにして私に返す。
 
 
 ケチャップ工場の爆発のせいで、
全部が真っ赤に、染まったこの街。
 
生クリーム、宙に浮かび上がって、雲の居場所を奪った。
 
閻魔大王が、休日にしてるファッションは、
ジェラートピケ 地獄支店で買ったやつ。
 
自分自身を自動操縦に切り替えて、勝手に街を歩く。
次に意識を取り戻したのは、奈良の大仏の手の平の上。
 
排水溝に吸い込まれた、私の影。
取り返すために、下水管の中を旅してる。
 
両肩から常に、BB弾発射してる私は、
エアガンの生まれ変わり。
夜は、青空のサーバーダウン。
ルイージマンションクラスの事故物件。
明日の太陽は、私がジャンケンで出した手の形になってる。
 
巨大乾電池、背中に埋め込んでもらわないと、
動けない、私の恋人。
神様がサービス残業して作った、新しい生物。
革命失敗した、ナポレオンが、
夜逃げするために呼んだクロネコヤマト。
 
神様が飼ってるブルドックの、歯型が付いた惑星。
世界を圧縮したみたいな、口の中。
 
ジェットエンジン搭載してる、
仮死状態になった白雪姫は、
眠ったままこの世界を爆走する。
 
 人類は、『ざわざわ』、『もにゅもにゅ』のどちらかに分類されて、ざわざわに分類されたスナックのママは、名探偵コナンと同じ薬を飲んで、姿が子供になってしまい、しゃがれた声で聖歌隊に混じる。
 
私はもにゅもにゅに分類されて、
今日から輪郭が無くなるの事になって、
地べたに落ちていく目と鼻と口は、
地球を新しい輪郭に変える。
 
手に入れた水面の上を歩ける能力、初めて役に立ったのは、噴水の上に乗って、飛んでった風船キャッチした時。
だけど両手がUFOキャッチャーの手だから、掴んだ風船をすぐに手放してしまった。
 
青空は脱皮した地球の抜け殻。
鼻をぐるぐると回して、上に来たときに、くしゃみを放ったら、上空に吹っ飛んで、私の鼻水が飛んでる鳥を撃ち落とす。
 
水道水に生まれ変わるための100の方法を、
全てクリアーした時に気付いた事。
 
水はこの世で唯一、触る事の出来る愛。
 
 

未来の物が買える未来Amazonで買った地球儀は、人間の形をしていた。
 地球はこの先、人の形になるみたい。
 
千手観音が1000個の魔法のランプ同時にこすって、
1000体のランプの魔人をこの世に放った。
一体につき3つまでの願い事は、合計3000個叶えられる。
 その千手観音が、3000個目に願った事。
 「地球を、こぼした液体の形になるようにして下さい」
 
ヘクトパスカル操作できる能力で、
地球全体の湿度を上げて、ミストシャワー発生させる、演奏会。
 
逆再生コンチェルトの途中だったから、
 今まで流した涙全てが、 逆流するみたいに、目の中に戻って、
 膨らんだ涙腺の中には、 世界で一番小さな湖が出来る。 
 
指揮棒か片手に、次に演奏するのは
『神様が地球作る時に、 出した騒音のサウンドトラック』
 
雨じゃなくモルヒネを降らせて、
傷だらけの地球の痛みを和らげる。
 
ビタミンCをこぼした瞬間、地球はレモンの形に変わった。
 今から私の血液落として、人間の形になるか試してみる。 
タッチの差で甲子園に住む魔物の血液が地球にぶつかる。
 
地面にコケたら地球が、キャッチャーミットの形になって、
私はその中にキャッチされる。
 
 これは〝死んじまえ〟から始まるラブレター。
 
巨大化した初音ミクがツインテールで、
ぶっ壊したビル。
 
消防車完食したガッちゃんが出した、
赤色の大便。
 
世界中の地面がタイプライターに変わり、
道行く人が踏んで生まれた現代詩。
 
巨大なピンボールマシーンの中に入れられた地球。
バウンドするたびに、世界の終わりが訪れる。
 
炭酸まじりの血液。トランポリンで跳ねて爆死。
枕元に立って、君の顔に落とした涙。
 
トイザらスから、
一生出られなくなったマフィアは、
おもちゃのピストルで今日も殺し合い。
 
 機械じかけの私は、背中のゼンマイ巻いてもらわないと動けない。
 
体中にスイッチ。
来世、自販機に生まれ変わる準備が、もう始まってるみたい。
 
閻魔大王に抜かれた舌が、メルカリに出品されてたから買い戻す。
おかえり私の愛しいスプリットタン。
 
体の一部分だけ透明人間になる薬で、顔面が透明になった指名手配犯は、時効まで逃げ切れそう。
 
生まれ変わったら何になるか決める面接で、
神様と大喧嘩して気づいたらなってた、
テトラポット。
 
でもね、えっと、あのね、うん。
 
太陽に暮らしてた時期があるから、
全身が今も燃え続けているの。
 
天国の病院を脱走した天使は、
右の翼が取れそうになってる。
 
ほっぺたには凍りついた涙、へばりついたまま。
 
 
終電逃した神様が始発待つ間に作った、
新しい生き物は、エレキギター片手に、
世界一悲しい歌を歌う。

月の裏側にある街で、
マッチングアプリ起動したら、
ものすごい数の、リトルグリーンメン。
迎えに来るUFOは、アダムスキー型。


幽体離脱して、空から自分の後ろ姿を見たら、
あんな所に寝癖ついてる。

スキップ機能付きの走馬灯で、
飛ばしまくった学生時代の全部。

ペットボトルロケット
MADE IN NASAで、
たどり着いてた惑星は、幽霊になった地球。

エイプリルフールについたウソ全部、
現実に起こる世界で、
「ママは生きてる」って言ったら、
生き返ったママが、
後ろから私を抱きしめてくれた。

私はマバタキするたび、タイムスリップする。

江戸時代→安土桃山→原始時代。

ティラノサウルスの小さな両手に、握り潰されるような恋だった。

Wi-Fiに触れると、死ぬ体だから、もう地球では暮らせない。

コーヒーからのぼる煙に乗って移動する、
世界一脆弱な筋斗雲。

ティッシュペーパーで包み込んだ天国。

潔癖症の神様が、バイキンマンに恋をした。

ルシファーはキスする時の顔で、世界を滅ぼす。


この千里眼で見える、君の前世全部。

エジソン、ゴッホ、アインシュタイン。

君が一人ぼっちで作り出した宇宙。

透明人間の腐る音がした。
ベティ・ブルーの、えぐりとった眼球が、
巨大化して生まれた新しい惑星。
句読点を、心臓に付けられたような恋。

2000年ぶりに復活した、
アダムとイブが、
素っ裸のままデートする、
渋谷スクランブル交差点。
大統領暗殺計画の首謀者は、
世界一IQの高いエリマキトカゲ。

両乳がチェーンソーになった彼女とハグして、
胴体貫かれて死んでった、
彼の亡霊を、中に閉じ込めてるおにぎりは、
神様の眼球を、ナメた時の味。
ため息と一緒に抜けた魂は、
君の心臓の外側を、
餃子の皮のように包み込んだ。

未来から来た人は、血液に微炭酸が混ざってる。
海に触れた瞬間、
サイコメトリー能力が発動。
脳裏に広がる、
地球がまだ出来たばかりの映像。


電話ボックスから、
一生出られない呪いのせいで、
永遠に立ったまま頼む、Uber Eats。
「奇遇ね、私、
点字ブロックの上から永久に出れないの」

人生のエンドロールは、君の名前で溢れてんだ。


シンデレラの魔法がとける寸前、
PM11時59分59秒で、時を止める。
ニュースキャスターが無言のまま浮かべた笑顔。
今日は何の事件も、起こらなかった一日。



私は絶望高等学校を、首席で卒業出来るくらい、 昔から絶望していた。 人生開始数秒で上げた白旗。
ある日、地球と衝突して中身が入れ替わる。 そこから私の中身に地球が入って、 ずっと自転を繰り返してる。 眼球の裏側に書いてある、 人間の取り扱い説明書は全1ページ。 そこにはこの一文だけが書いてある。 『人間全員が地球依存症』
それ以来、私は止まったままの観覧車に暮らしてる。 頼んだウーバーイーツ。 背中に羽根生えた配達員が届けに来てこう言う。
「ご注文、『地獄の食べログ 3・5以上を取ってる店で、必ず出される、閻魔大王が抜いた舌のシチュー』で間違い無かったでしょうか?」
新しい恋人は未完成のまま終わった作品の続きを、 あの世に行って描かせる幽体離脱編集者。 手塚治虫の新作漫画の続きは、あの世にしか売っていない週刊少年ヘブンで連載している。
話したこと全てに、 テロップが出るようになった世界で、 君と口喧嘩した後、 たくさんの悪口が私の部屋の床に落ちてる。 起きたら姿が文庫本になっていた私の恋人。 ページを開いたら、 私への愛が何ページにもわたって、綴られていた。

神様が雇ったペンキ職人が、 色を塗り忘れたもう一つの地球に暮らす、 全てが白色の世界の中を生きる白色の私から送られて来たテレパシー。
「キティーちゃんが戦死して財産分与で大量のオーバーオールを相続したの」
私は顔面取り外してそこに、パトカーのサイレンを埋め込んだ。朝が来ても君と過ごした部屋、永遠と赤色に染めながら、テレパシーに返信する。
「今度、そっちの世界に引っ越そうと思う。荷物は一冊の文庫本だけ持って」
そっちに行って一番最初にやる事はもう決まってるの。
まだ白色しかない世界に、 一滴の醤油を垂らす。


アイスクライマーが、
ハンマーで吹っ飛ばした、
雪だるまの顔面が、
君の新しい顔面になる。

ピーターパンが考えた、成人式襲撃計画。

足音がマシンガンの乱射音になったから、
図書館司書の仕事は解雇。

妊娠10ヵ月のロボコンが運ばれた、
分娩室から聞こえる機械音。

人の輪郭を消す消しゴムのせいで、
顔のパーツが、宇宙空間を漂う。

背中についた巨大なゼンマイ、
巻いてくれないと動けない、
この屋敷のメイド達。

&の形に折り曲げられた体。

天国にイタズラ電話かける。
「ハロー、マザー・テレサ。
今日はどんなパンツ履いてるの?」

水中でエレキギター、
アンプに繋いで全ての魚たち、
感電死させる。

銀河を掃除するルンバが、
宇宙の中を、
さまよっているから、
今日も星一つない空。

デートの最中に、
「ごめんね。
私、もう死んでるの」って、
彼女は言い出して、
その体ごし、
透き通って見える向こう側では、
十字架も、ニンニクも、
平気なバンパイア。
人が、あんま来ないバス停に、
体をくくりつけられている。


朝の天気予報。
「今日は人間の死体が降ってくる日です」

外からは、人の体が、
地面に、叩きつけられてく音色。

明日の街は、臭そうだな。
明日の道路は、歩きにくそうだな。

コーヒーメーカーで作られた、
ウェディングドレス。
オレンジジュースの失敗作。
愛の形を、こわす液体。


「世界に、
切り取り線を入れるのが、
私の仕事なんだ」
マグニチュードの担当医。

モンスターズ・インクのマイクみたいに、
眼球が、
一つだけになったから、
今夜は、満月を、
イチゴ柄に変える。
ストロベリー・ムーン、
アーンド、
その下に、
チョコレートクリームパフェ。

「電卓の全てのボタンを、
同時に押してごらん。
それが、この世界を終わらせる、
スィッチになってる」

ケータイ電話の電源が、
勝手に落ちて、
そこから暗黒。

雨の中に混じって落ちてくる、
神様の涙。

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宮沢賢治の「歯ぎしりしつつ、行き来して」ってのも、七音、五音なんだよ@しろねこ社賞推薦文

推薦対象

さじ
by 尾崎ちょこれーと


 私は何か、もう自分の中で、詩、というものを書く、という事から、詩というものを、読む、という事に興味が全く移ってしまったように思う。
 今までのインターネット上での活動の経験もあって、詩を読む、閲みする、その過程で学ぶ、という事は貴重な体験だったのだと思う。


ネット詩、ありがとう。


 そうしてネット詩平等論に至ったわけだけれど、しかし、私の「好み」その今まで経てきた経験の過程を踏まえて、「ああ、今、この方の詩は凄く良くわかる」というのがある。

 比喩、圧倒的テキストボリューム、序破急、ナンセンス、フォマリスム、本歌取り、シュール・・・。
もう何でもありと言った世界の中で、ああ、この人の作品は何か自分の詩の把握が近しい、と、思うことがある。


そこで尾崎ちょこれーとさんなのですけれど、難しい事を書けば、この方の音律
日本語のリズムの把握の近さ、という点でわたしは勝手、近しい位置にいると思う。


はじめて尾崎ちょこれーとさんとコメントやりとりしたとき、彼女は確か
「毎朝、遺書を書くように詩を書いています」とあっけらかん、に言っていた。
言っている事と、このあっけらかん、の差に最初は戸惑ってしまった。


そうして、CWSの方に来てコメント付けをする中で、尾崎ちょこれーとさんの作品にふれて音律的に「こうこう、こういう事ですよね」とコメントしたのだけれど、何か、その返信コメントにも「あっけらかん」がしっかり入っているような気がした。

その「あっけらかん」に細かな分析をコメントするのも、無粋なような気がしてだから、もう「イイネ」でいいのじゃないかと思っている。


「音律は詩の命だろ!」


 誰かのいつかの怒号が聞こえてくるような気がするが、そうなのだ。音律は、詩の命だ。
 しかし、すべての方がそれに賛同されて、みんな、音律を意識した詩を書きはじめたらおかしい。
 突っ込んで書けば、五、七、五、七、七、という短歌を三遍くりかえして並べたら
 それは自由詩になるが、じっさいそう書かれている方もいらっしゃるがそれでいいのだろうか。それでもいいのだけれど。
 こう、うーん、とまたぐるぐる考えている内にまた、「あっけらかん」としてればいいんだ、と思った。


 日記としての詩の在り方、詩とは本来プライベートな試みの筈で、それを公にするというのはどういうことなのか。
 そうして、詩人、多すぎる問題、という事を考えても、新陳代謝の問題も考えていかなければならない。
 私の書きたいようなことは、尾崎ちょこれーとさんが、黙々書いてくれるだろうという期待というか安心を勝手している。


 そうしてnote.comというサイトもあるが、その近々、海外の方が読めるよう仕様が変わって
 AI自動翻訳されるのですけれど、そのとき、「日本語としての音律」は多分死んでしまう。


 このCWSも先進的なサイトとして、そうなるかも知れない。
 でも、「このひとがいいなー、と思ったら推薦すればいいよー」とラフに教えて下さった人がいたから。

 尾崎ちょこれーとさんの詩の貴重性を重んじ、書籍化を推薦します。

 宜しくお願い致します。


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【小説】ココアのせい(原稿用紙3枚)

 女友達の透明な頬にあかいぬくもりがふわっと浮いて、僕は思わず手の甲で触れていた。彼女は猫舌で、缶のココアをふーふーしている最中で、上目遣いに僕を見た。その目にはっきりと、なに? という疑問が見て取れた。僕はそっと手を下ろす。

 ねえいま鳥肌たった?

 ううん、と彼女は首を横に振った。

 そっか。ねえ、エッチしたい

 え、意味わかんない。何がどうしてそうなった?

 女友達はいつもの調子で言った。そう、こういうところが好きなんだ。僕たちはついさっきまで性とは離れた場所で感情を通わせていた。けど僕は不意に女友達に性欲を感じて、一度感じてしまうともう、あと戻りはできない。いまここが人が多い公園のベンチでよかったと思う。

 ダメ、かな? 鳥肌立たなかったなら、生理的にありってことでしょ
 勇気を出して言ってみる。

 ダメじゃないけど、なんでしないといけないかわかんない

 女友達はそう言ってココアをすすった。彼女が口を離した缶の、凹みに残るココアが目について離れない。
 僕はたぶん性欲で視野が狭くなってる。彼女の言うことは真っ当だと思う。でも僕は落ち込んだ。彼女はもっと落ち込んでいるかもしれない。失敗したなと思う。

 ごめん

 と謝った。女友達は小さく首を振った。もう視線は合わない。
 女友達が着る、僕のオーバーサイズのパーカーの肩にホコリが付いているのが目に留まり、手を伸ばす。彼女はさっと肩を引いた。ベンチから立ち上がって、ココアの缶を差し出した。僕は缶を受け取った。冷たく、空だった。

 あのさ、
 と言ったとき、女友達がかぶせるように言った。

 なかったことにはできないから

 うん。わかってる

 その上で、なに?

 男女の友情は存在する?

 しない。
 彼女は考える間もなく答えた。

 さっきまでしてた。けどもう存在しない。そうなってもいいかもってずっと思ってた。けど違った

 ごめん

 別に。そうゆんじゃないから

 女友達は僕の手からココアの缶を奪い取った。ポコポコ缶を鳴らしながら地面を見ていた。

 わたしたちっていっつもどうやってバイバイしてたっけ

 彼女が誰にともなく言った。僕は思い出そうとして、思い出せなかった。

 ほんと、どうやってバイバイしてたっけ

 わかんないからはい、これ

 ココアの空き缶が胸を押した。女友達が背中を向けて歩いていく。僕はいま思い出していた。また明日って僕が言って、彼女が二度と会うかって顔をしかめて言う。僕らのお決まりのやりとり。僕は口にしたくなかった。

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キリストなめんな

 ぼくはいぬがキライです
 キがつくとうしろにいる
 ぼくの視界にはいってくる
 ハイッテ合図でえさをくう
 あとずさりしながらもほえている
 檻のなかでは襲いかからん勢いで
 隠れてたべてとぼけてたべる
 いぬのずるさが我慢ならない
 いぬのあたまにバケットかぶせて
 そのうらだんだんとたたいてゆく
 いぬとぶたがダッキライな漫画
 作者は首を吊ってしんぢゃった
 メカニカルな心臓のように
 光りかがやくいぬのひとみ
 かれらの目のなかで処理された
 セカイにぼくも生きているのだ
 キライなやつはしなない
 ずぶといからしなないと
 さけんだあとのICUで
 目が覚める前にみた世界
 この世には存在しない白さのなかに
 どなたかいらっしゃる再生したぼく
 命は生きたがりの天才だ
 シンぢゃえなんて二度と
 ゆうな
 イキロ
 キ真面目くそ真面目ま正直
 ぼくはばかで救われている
 かみさまの御心は
 宇宙よりひろいよ
 抱きしめろ精いっぱいおのれの腕で
 おまえごとぎゅーっとして離すなよ
 ぼくに欠けた従順な愛をお持ちだ
 いぬを好きな人間が変態に想える
 くそう撫で撫でくそう撫で撫で
 いつまで続く撫で撫でもう嫌だ
 撫で撫で撫で撫で撫で撫で撫で
 いぬの愛は何様ダァ?
 くそう撫で撫で撫で!

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愛    (E.E. カミングス   purer than purest pure)


どんな純真よりも純真で
囁きながらさらに囁く

余りに(無邪気の故に大きくて)
何でも受け容れたあの瞬間
熱意に溢れた栄光の、これ
以上の奇跡はあるまい

子供っぽくも真剣に
聖なる花よ

遙かなる遙か未来の
さらに向こうからの巡礼者。
しかもすぐにも寄り添う
人が新たに思い出す夢に似て

燃やすのは冷たく鐘が
いとも些細なるに触れるのは
その時までのこと

(永遠に)連れだっているのは(今)
光るその影
自身の愛の。僕らとは誰?
君も僕も死にやしないのに

そしてすべて世界は、沈黙が
始まる前は星





カミングスの詩集『XAPIE』所蔵の3つ目の詩。この詩集、すべての詩には題名はなくて単にそれぞれに番号が振ってあるだけであるが、内容からここでは「愛」とした。正直、内容を把握するのに困難を覚え、ネットに落ちていた分析を参考にした。最初は何も参考にせずに読み、意味が分からずに再度再再度読み、訳してみては手に負えずに何度も諦めた。ネットの分析を読んで、そうかそういうことかとある程度見通しを立て、それでも訳せそうにないなあと思っていたのだが、ふとある瞬間にすべてが通じてスラスラと七割程訳せた。そこから後はどうにかこうにか訳すことができた。不思議な体験であった。読書百遍義自ずから見るという言葉があるが、翻訳でもそれに似たことがあるのですね(もっとも、訳し終えてこうして投稿した後のいまでも、実はよくわかっていないところはあるのですが、それはナイショ)。

愛というのは最も純真なるものよりも純真であり、囁きよりもさらに小さな囁きである。とはいっても、愛はか弱いものではなくて、無邪気でとても大きいものである。しかも心のきわめて広いものであり、どんな奇跡よりも奇跡的なるものである。愛は子供っぽくもあれば同時に実に真面目なものでもある。聖性を帯びているのではあるが、しかも花のように生き生きとしている。はるか遠い未来からやって来るものであるが、それでもすぐにも人の側に来てくれるものである。愛はあたかも人が思い出す夢のようにはかなくもあるが、しかも新たに思い起こされる力強さもある。愛は炎のように燃えるかと思えば氷のように冷たくもある。そして最も些細なるものに触れる。さらに、愛は永遠にあるかと思えば絶えず今と共にもあり、輝かしいが影のようでもある。愛はその人自身であるのだが、また我々でもあるが、その我々とは何者なのかはちょっとわからない。愛に終わりはなくて、僕たちは愛し続ける限り、君は死なないし僕もまた死ぬことはない。すべて世界は囁くような愛が始まる前は沈黙であったのだが、その沈黙は実は星だったのである。ざっと、そんな解釈となろうか。愛の讃歌であるのだが、この愛をカミングスは実にモダニズムの詩人ならではの表現方法で歌い上げている。

愛の讃歌というと、私は新約聖書にあるパウロの言葉を連想する。カミングスには信仰心があったのかどうか、私はまったく詳しくないのだが、少なくとも愛の讃歌とも呼び得るこの作品には宗教的信仰心があるとも解釈できる。そのためなのか、作曲されてある種の讃美歌として歌われているようである。私に言わせれば、この作品は文法的にきわめて破格であるので、それにメロディーを載せて歌にするなんざ、どんなもんだろ?って思うのですが。

https://www.youtube.com/watch?v=M641uDGvV5E&list=RDM641uDGvV5E&start_radio=1






purer than purest pure
whisper of a whisper

so(big with innocence)
forgivingly a once
of eager glory, no
more miracle may grow

—childfully serious
flower of holiness

a pilgrim from beyond
the future's future; and
immediate like someone
newly remembered dream-

flaming a cooly bell
touches most mere until

(eternally)with(now)
luminous the shadow
of love himself:who's we
—nor can you die or i

and every world,before
silence begins a star

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六月の朝

雨はすっかり上がったのに
雲はいまだに敷きつめられて
いまも少女は夢見心地で
遙かな空は群青色で

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白の紫陽花

梅雨晴れ
久しぶりに顔を見せた青空
太陽に誘われるように外へ出て
よく行く神社へと赴く

六月に入って 夏越の祓の
飾りがされていた

まだ制服を着ていた頃
君とここに来て
茅の輪をくぐった後に
些細なことで言い合って
泣かせた事を思い出した

何だったかは
忘れてしまったけれど
なんて考えていると
『そういうところ』と
声が聞こえてきそうだ

声の主が待つ家に
帰る途中ふと思いついて
君の好きな紫陽花を
花束にしてもらった

白色の紫陽花 

きっと君になら伝わるから
それが
とても嬉しいような
少し恥ずかしいような

『おかえり』を聞くまで
あと五分
むずがゆいような照れを
隠せないまま 歩いている

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BAR「Creative Writing Space」

ニーズがあるやらないやら、まったく見当がつきませんが、
毎度おなじみの思いつきで、BAR「Creative Writing Space」を開業いたしました。

皆様にお使いいただけなければ、すぐに閉店いたします。
電脳空間の片隅にある、吹けば飛ぶような小さなBARでございます。

一杯引っかけた体で雑談していただけるスペースをイメージしています。
「Talk」がさほど機能していないことも踏まえ、もっとカジュアルに使っていただけたらと思っています。


【ルール】
・ワンドリンク制です。必ず何かお飲み物をご注文してからお話しください。ノンアルコールでも構いません。
・お代はいただきません。もしスペースコインをお支払いになりたくなったら、他のお客様に奢ってあげてください。
・酔っ払いすぎにはご注意くださいませ。

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批評・論考

人間

太古の昔から、戦争の神様はいたけど
反戦の神様はいないから
戦争に反対する人間を讃えよう

悪と戦うのは正義だとか
防衛は侵略じゃないとか
そんなことを言う神様を見捨てて

良い戦争とか、悪い戦争とか
敵とか味方とか関係なく
戦争に反対する人間を讃えよう

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文学、文芸、などなどについて(言葉の定義に限って)

界隈に言葉の混乱があるようなので、言葉の定義に限って少し私見を述べたいと思いました。
とはいえ以下は私の個人的な雑感です。

文芸とは文章芸術の事じゃないっすかね。芸術には大衆芸術も前衛芸術もあれば、現代芸術とかアングラ芸術とかいろいろあるので、文芸にも当然ながらいろいろなのがあるだろうな、と思います。
用例を紹介しますと、私は学生時代、「白山文芸」というサークルに入ってましたが、うちは文芸なんで純文学は禁止だ、なんて事を述べた部員は見かけませんでしたね。また、純文学の新人賞である芥川賞の登竜門として、文學界、すばる、文藝、群像などが知られてますけど、それらまとめて五大文芸誌と呼ぶのが普通で、五大文学誌とは言わないんじゃないでしょうか。

そして文学とは、文または言語を対象とした/あるいは文または言語を用いた研究・実験・探求及び学問の事を指すと思います。こちらは作品の事を指す場合もあり、その場合の作品とは、純文学作品、児童文学作品、古代叙事詩、官能文学作品など、いろいろでしょうね。

なので文学と文芸に二分するというのは、賛成できない分け方なのですけど、それじゃあ純文学の対義語は何で、どういう区分なの、と云うと、私見では以下です。

純文学とはノンジャンル文学の事であり、対義語はジャンル文学です。
ジャンル文学はSF小説、ミステリー、少女文学、その他いろいろですね。
カーレースとちょっとだけ似てるかも知れません。F-2レースでは車体の規制に決まりがたくさんあって、ほとんど同じような車で競い合いますが、F-1は開発力や資金力の許す限り、そしてドライバーの能力の限り、車の性能は上限なしです(とはいえ規定はありますが)。
ジャンル文学はミステリーならミステリーのルールが、百合やおいなら百合やおいのルールがあり、ある程度似たような作品が作られ、読者は枠には安心してその枠の中での百花繚乱や独創性を楽しむわけですが、純文学はノンジャンルですから何でもありであり、方法の開発まで作品の価値の一部です。だからこそ最も刺激的だったりもします。
なので純文学愛好者もいるわけですが、私見ですけど、それは根性とか魂とかの問題ではないです。ジャンル文学もノンジャンル文学も芸術であり、入魂の労作も世紀の傑作も、どちらにもあると思います。

で、詩はどうかというと、定型詩はジャンル文学なのではないか、と、一応は考えられますよね。でも怪しい。もしかしたらノンジャンルなのかも知れません。
口語自由詩は作者がこれは口語自由詩だと言うのでしたら、ノンジャンル文学でしょうね。
だって自由と名乗ってるのですから。
エッセイはおそらくジャンル文学で分野のフォーミュラーがあり、戯曲はノンジャンルなF-1文学なのでは、と私は思うけど、それぞれ専門的な話なので、それぞれの専門家さんに聞きたいところです。

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批評・論考

つきなみ怪談 二匹になった

これは、亡くなった叔父の家を片付けた時の話です。

 叔父には子供がいなかったので、葬儀が終わった後、親戚が集まって遺品を整理することになりました。家は古く、物も多かった。誰が何を持っていくか適当に決めながら片付けていたんですが、その中に一本の掛軸がありました。床の間に掛かっていたものです。かなり埃を被っていて、誰も興味を示さなかった。叔父の親友が、

「ああ、それか」

 と窓を開けながら言いました。射し込んだ光に眩しそうにしながら、

「あいつ、昔から大事にしてたな」

 そう続けました。私は以前からこうした古い物に興味があったので、

「じゃあ、もらおうかな」

 と言った。すると他の親戚も、助かる、それ持ってってくれ、という感じで、ほとんど押し付けられるように貰い受けることになりました。その時、おばが、

「お兄さん、あれ猿の絵だって言ってたねえ」

 そんな事を言ったのを覚えています。黒っぽい絵でした。何が描いてあるのかはよく分からない。言われてみれば猿にも見えるような気はしたが、そう言われなければ分からない程度でした。眺めていると後ろの方で、

「でも一度、手放そうとしてたんだっけか」

 と誰かが呟いていた。ただ、その日はもう遅かったので、詳しく話を聞く事もありませんでした。そのまま掛軸は家に持ち帰り、居間に掛けてみることにしました。

 その夜です。電気を消しても、どこか落ち着かない気分で、しばらくそのまま座っていました。水でも飲もうか、と腰を上げたとき、視線のようなものを感じたんです。部屋のなかはいつもと変わった様子はありません。窓の方、なんとなくそう思いました。見ると、カーテンが僅かに開いて月明かりが射し込んでいる。近寄って外を見ると、庭に何かが立っていました。ぎりぎり外灯の光が届く辺りに、人影のようなものがある。最初は誰かが侵入したのかと思いました。ところが違った。
 猿、としか言えないなにか。人間ほどの大きさ。庭の真ん中に立ち、こちらを見ている。ただ、それだけです。動きもしない、鳴きもしない。ただ、じっと立っている。遮るようにカーテンを閉めていた。
 早朝、覗いた庭には影も形もありません。見間違いかとも思いましたが、次の日も。その次の日も。雨の日も、いました。庭木の横に立っていることもあれば、窓のすぐ下にいることもあった。

「ああ、今日もいる」

 ふ、と呟きながら、見ているともなく見ていた。掛軸は朝が来る度に、穴が開くほど見るのですが、変わったところはありませんでした。

 ある夜、縁側のすぐ向こうに立っていました。ガラス越しに顔が見える距離です。確かに見た。なのに、その顔を思い出そうとしても何も浮かばない。猿、のように見えた、としか思い出せないんです。それから骨董を扱っている古道具屋を見つけて、持ち込むことにした。

事情は話しませんでした。

 ただ、

「遺品でもらったんですが」

 と言って引き取ってもらいました。その夜から猿、としか言えないなにかは現れなくなった。ところが、一か月程してその店から電話がかかってきたんです。いつでもいいから、店に来れないかという。数日後、散歩に出ると気がつけば店の前に立っていました。

 店主は私の顔を見るなり、

「あれ、おたくの叔父さんのだったんですね」

 と言いました。知っているのかと聞くと、十年以上前、同じ掛軸を持ち込んだ男がいたという。特徴を聞くと叔父そのものでした。

「じゃあ叔父も手放そうとしてたんですか」

 私がそう聞くと、店主は少し黙りました。それから首を振りながら、

「良いのか悪いのか分からないとか、なんとか」

 と言ったんです。私の様子を窺うように、間を置いて店主は続けました。

「でも結局、持って帰ったんですよ」

 理由を聞いても分からないという。叔父は掛軸を引き取り、その後、二度と店には来なかったらしい。帰宅してから、私は遺品として受け取っていた段ボールをもう一度調べました。
 叔父の写真が何枚も出てきました。若い頃のものです。その中に、庭で撮られた一枚がありました。叔父が笑いながら立っている。その足元に黒い影が写っていました。
 それから写真の裏に、叔父の字で一言だけ書かれていたんです。

『二匹になった』

 それから何年も経ちます。掛軸はどうなったのか。あの写真は何処にやったのか、よく覚えていません。叔父が店から掛軸を持ち帰った理由は何だったのか。

そして、あの写真が撮られた時点で何が二匹になっていたのか。

私には、それが分からないままです。

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 2

 2

人生は死を知らぬ間に

僕は墓から生まれた
成人の身体のまま生まれ直した
己の一生に終止符を打った後
再び生まれ直した

僕は一回生きたことがあった
だからほとんどのことは知っていた
ほとんどのことが誤りで
ほんの少しのことが正しそうだと感じていた

でも墓地の柵を乗り越えて小路に出た時
僕は生にまつわるすべてのことを忘れた
誤りと
正しそうなこととを

ちょうど東に日の出が起きた
なぜか痛みを伴いながら二足歩行を思い出し
おまけのように日本語をだいたい思い出した
まるで生とはそれだけのことであるかのように

眼前にあらわれる物事の一々について
僕は判断を迫られ
道を選択せねばならなかった
一回生きたことのある経験は甦らなかった

会う人々はみんな決まって僕を非難した
「基本のなっていない奴だ」と
そして生活の基本を僕に教え込もうとした
挨拶の仕方や仕事の仕方やお金の使い方などを

しかし僕の成長ははかばかしくなかった
まったく何も身につかなかったと言っていい
人々は次第に僕にうんざりし始め
相手にしなくなるばかりかいじめる者もあった

僕は自分はもうダメだと意識することができた
誰にも生きる権利があることは知った
けれど僕はすでに生きた上に死んだ経験があった
帰ることのできる墓があったのだ

人生は死を知らぬ間の一回だけだ
もう一度生まれ直し生き直すことはできない
だから僕は夜闇のうちに自分の墓に帰って
何も悔やむことなく永遠の眠りについた

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 4

インセスト

燃えさかる神殿
花冠の代わりに灰で目をふさがれた子どもと
知恵多き老醜の神
神は毎晩 子どもの名前を間違えて呼び
子どもは返事をするたび少しずつ消える
しかしやがておとずれる終末の夜に
砕かれた鏡の一片が神の心臓に埋められる
「私を忘れないで」
神は狂い 国家はすべて灰になり
焼け跡にはガラスの花が咲く
花嫁の誰も知らない名のもとに

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内容証明

わたしもね、あなたに嫌われたいと思って、こんなことをしたわけじゃないの。
あなた、最近、おかしいなと思って。でも、言い出せなくて。言い出せないわたし自身も、悔しくて。
でもね、わたしもね、寂しかったんだよ。それだけはわかってほしいの。

わたしがあなたと一緒になったころと比べて、最近、あなた、おかしいなって思った。
これは、わたしがあなたとずっと一緒にいたから、だから、気付けたことなの。
でもね、はっきりと口にだすのって、やっぱり怖くって。

だから、あなたに気付いてほしかったの。わたしは、あなたのことを大切に思ってるよって。傷つけたかったとか、嫌なことをしたかったとか、絶対そんなんじゃない。

***

あなたがわたしを好きなよう
に、わたしもあなたが好き。
それだけなの。それだけが事
実。だから、あなた、もう、
こんなことは止めて?止めて
くれたら、わたしも、あなた
のお話をちゃんと聴くことが
できるから。でもね、いまの
あなた、怖いの。だから、話
せない。ぜんぶを話しても、
分かってくれないんだもの。
だから、話せない。やっぱり、
かわっちゃったのかな、わた
したち。もう、もとには戻れ
ないのかな。でもね、私たち
、色んなことがあったじゃな
い。そのとき、ふたりで乗り
越えてきたじゃない。それで
も、ダメなのかな。わたしじ
ゃ、だめなのかな。あなたが
わかってくれたら、きっとわ
たしたち、やり直せると思う
の。一から、うぅん、ゼロか
らやり直したいなって、この
ことがあったから、やっと思
うことができた。これって、
凄く嬉しいことだと思っちゃ
う。でもやっぱり、あなたが
変わってくれないと、わたし
、ダメかもしれない。わたし
も変わるよ?約束する。でも
ね、それだけじゃダメなの。
ふたりでやり直したいって、
本当にそうしたいなら、やっ
ぱりふたりで変わっていかな
くっちゃ。ねぇ、ごめんなさ
いしよ?

***

・僕がおかしい
・僕はおかしいって、言い出させない
・僕は悔しがらせた
・僕は寂しがらせた
・僕がおかしい
・僕は怖い
・僕は気付けていない
・僕は怖い
・僕は理解出来ない
・僕は話させない
・僕は変わった
・僕は元には戻れない
・僕はダメだ
・僕は解らない
・僕は嬉しくない
・僕は変わらない
・僕はダメだ
・僕はダメだ
・僕は変わらない
・僕はごめんなさい

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「信用」としてのクリエイティブ・ライティング

「あなたのけつあなを、見せてください。」

えっ、驚きましたか。そうですね、驚くと思うんです。私も、付き合いたての彼女にこのようなことを要求されると、同じような表情をすると思います。
ただ、私としても、何の理由もなくあなたに、このような恥ずかしい行為をお願いしている訳ではありません。
一旦、私の話を聞いてもらえませんでしょうか。

私は、かつて多くの女性と付き合い、そして、何度も裏切られてきました。裏切り方は多様で、他の男の腕に抱かれているところを目撃したり、或いは酷い言葉を投げかけてきたり、FURLAのバッグをプレゼントした翌日に連絡が取れなくなったこともありました。
彼女たちも、最初はそんなことをするような酷い人間ではなかったんです。でも、一緒に歩んで、言葉を交わすたびに、彼女たちの締めていた扉の鍵が緩んでいくのでしょう。何をしてもいい、何をしても許される、笑って見過ごしてもらえるという安心感を、与えてしまっているんです。
皮肉なことに、私の与える安心感や居心地の良さ、やさしさ、そういった善の影響を受けることで、人は簡単に悪の道に足を踏み入れてしまうのだとわかりました。
もちろん、私とて完璧な人間でないのは重々承知しています。私にだって当然ながら失敗があり、相手を怒らせたり、不愉快な気持ちのまま不満をため込んだりさせてしまうこともあったことだと思います。でも、だからといって、心の底から「信用」している相手のこころを踏みにじるようなことをする理由にはならないと思うんです。

当然ですが、あなたもどうせそうなのでしょう、といいたい訳ではありません。このような私と付き合ってもらえるなんてそれこそ夢のような話です。でも、いえ、だからこそ、あなたには悪の扉を開けるような人には、なってほしくないのです。

私は考えました。どうすれば、人は悪の道に走らなくなるのか。それで、一番あったのは、私とあなただけの秘密、ほかの人には知りえないようなことを共有することで、初めてお互いがお互いを「信用」して、素晴らしいパートナーになれると。そう思い至ったのです。

でも、お尻の穴じゃなくても…いいたいことはよく分かります。別にけつあなじゃなくともいい、例えば、SEXでも全然構わないじゃないかと。確かにそうかもしれません。SEXとは本来他人と他人を結び付け、新たな生命を生み出す神聖な儀式のはずですから、その関係に本質的な疑いを向けるのは間違っているんじゃないかと。そう仰りたいのでしょう。確かに、生命体の考えとしては間違っていないのかもしれません。ですが、こと人間においては、その前提はいとも容易く崩れ去ります。例えば不倫は?浮気は?ワンナイトは?世の中にはたかだか数千数万円のお金を得るために、簡単にまんこを差し出す女性が大勢います。そこに、はたして恋人として「信用」に足る何かを得ることは可能でしょうか。残念ながら、SEXでは不十分なのです。

ふたりの秘密をはなしてみるとか…ええ、当然その線の反論があることは予測済みですよ。二人の秘密ですか。それは、本当に二人だけの秘密なのでしょうか。その担保は?保障は?非常にもどかしい現実ですが、お互いに話した秘密を、本当に私以外の誰にも話していないという確実性が存在しません。
もちろん、けつをおっ広げてけつあなを他人に見せたことがないという保障もまたないじゃないか、という考え方も可能です。が、確率が違います。そもそも、お互いの秘密を話すと決めたとして、相手がどのレベルの秘密を話してくるのかがグレーゾーンになっています。これでは、「信用」もへったくれもありません。その点けつあなは、よほどアブノーマルなプレイをしていない限り、わざわざ自ら見せることなどほぼありません。イギリスのSex by Numbersという団体の調査結果によると、アナルセックスですら全年代20%以下。ましてや、けつあなを見せる行為などその中のさらに数%となると仮定すると、その特異性は証明可能です。

でも…ええ、言わなくともわかりますよ。AV業界では、少数ながらけつあなを見せる商品があるじゃないかと。仰る通り、SOD、ナチュラルハイといった大手メーカーを筆頭に、そのような製品が実際市場で販売されています。ただ、振り返って考えると、当然ながら出演した女優は、その行為をすることそのものが仕事であって、給料が発生しているのです。誰が無償で、そのような恥ずかしい行為をするものでしょうか。つまり、金銭の授受なく、自らけつを広げてけつあなを見せつける行為そのものが、「信用」を確信させるということが逆説的に証明されるのです。

でも、私、そんなつもりで…まだ何か反論があるのですか。勿論あなたが悪いわけではない、あなた以外の人に破壊された「信用」の藻屑が、今あなたに降りかかっていることを私は理解しています。しかし、それはあなただけではなく、私にも同じことが言えるのです。あなたを私は「信用」したい。けつあなを見せることがそのための最適な方法であることが、今確かに証明された。それなのに、あなたは未だにパンツを穿いたままだ。これがいったい何を意味しているかというと、あなたは、私に「信用」されなくとも構わないという意思表示に他ならない。そうなのでしょう?だって、私がいて、あなたがいて、他に誰もいなくて、今、この空間はあなたと私だけの秘密だ。私はあなたを「信用」したいといっているにすぎない。その最も最適な方法を、今あなたに提示したに過ぎない。そして、低劣で愚かな反論しかせず、まともな別案を提示するでもない。今まさに、あなたは私を裏切ろうとしている。


裏切るってことはどういうことかな。私はあなたにわたし、あなたを信用できません。きちんと説明し、あなたはわたし、あなたを信用できません。それを否定できない。否定できないってことはわたし、あなたを信用できません。、当然受け入れる以外の方法がない。ここまではわたし、あなたを信用できません。わかるよね。わかっているのに、けつあなをわたし、あなたを信用できません。見せられないってことは、私に「信用」わたし、あなたを信用できません。されたくないってことだよね。わたし、あなたを信用できません。だって、私に「信用」されたいという場合においては、けつあなをわたし、あなたを信用できません。見せる以外の方法がないことが証明済みわたし、あなたを信用できません。だよね。証明済みのはずの理論を否定するってことは、わたし、あなたを信用できません。そうか、数学ができないんだ。わたし、あなたを信用できません。証明問題って解いたことある?ほら、中学生くらいにわたし、あなたを信用できません。試験の問題で出題されてたやつ。あれなんだよね、結わたし、あなたを信用できません。局、あれをきちんと学んでいなかったってことだよね。大丈夫、私はわたし、あなたを信用できません。低学歴のカスでも支えられるよ。だって、私は優しくて、うっかり、わたし、あなたを信用できません。あなたの悪の扉をあけそうになるくらい色んなことを許してきた人間だから。証明っていうわたし、あなたを信用できません。のはね、一度証明されたら、それを覆すことはできないわたし、あなたを信用できません。の。科学じゃないの。科学は、いくらでも覆される可能性がわたし、あなたを信用できません。あるよ。でもね。数学はそうじゃないんだ。あなたは今、わたし、あなたを信用できません。私の立脚した考え方に反論できなかったよね。つまりわたし、あなたを信用できません。、少なくともわたし、あなたを信用できません。この場においてはわたし、あなたを信用できません。、私の説がわたし、あなたを信用できません。証明されたわたし、あなたを信用できません。ってことなんわたし、あなたを信用できません。だ。ということわたし、あなたを信用できません。は、そ

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とん、とん、とん

今ここで、包丁を持っているおかあさんを後ろから蹴り上げたらどうなるか、ずっと考えているんだ。だから、僕はおかあさんの後ろにずっと立っています。ごめんなさいおかあさん、でもね、僕本気じゃないんだ。僕だっておかあさんのお腹から産まれた、れっきとしたおかあさんのこどもだよ。だからね、おかあさんなら、僕のことだって全てわかるはずでしょ?
だから、僕はおかあさんの後ろにずっと立っています。まな板を叩くおとがとん、とん、とん、とまるで木魚のように反復して、ごうごうとうねる風の音に消えていくんだ。おかあさんは僕のすべてを知っているんだ。だから、なんで僕がおかあさんの後ろでずっと立っているのか、僕のおかあさんならわかって当然なんだよ。

今ここで、包丁をリズミカルに動かすおかあさんの頭を思い切りはたいたっていいんだ。だから、僕はずっとおかあさんの背後を見つめ続けています。おかあさんは僕が悪いことをしたときに、すごくいっぱい叱ってくれたんだよね、とても感謝しています。僕がほしいものは半分くらいはただで買ってくれたし、僕がいやがることも半分くらいはしないでいてくれたんだよね。そういえば、僕のお年玉ってどこかなぁ。
とんとんとん、とリズミカルに叩かれるまな板に合わせるように、僕の足先もとんとんとん、とリズミカルに振動して、ごうごうとうねる風の音に消えていくんだ。だから、僕はおかあさんの後ろに立っています。おかあさんは僕の前に立っていて、僕からはおかあさんの顔がよくみえないけれど、おかあさんは違うんだ。僕がいようがいまいが、或いは永遠の常闇に沈んだ絶望の中ですら、僕がいつも笑っていることをしってるんだよね。

おかあさんはとんとんとん、とリズミカルにまな板を叩き続けているから、僕はついに両方の足でとんとんとん、と足先をリズミカルにバウンドさせてふぅ、ふぅ、と呼吸を荒くしているんだ。今ここで、包丁を持っているおかあさんを後ろから蹴り上げたらどうなるか、ずっと考えています。
だってさ、考えてもみてごらんよ。おかあさんにとって、僕は人生のすべてといってもいい。なぜなら、おかあさんはずっと、何十年も文句ひとつ言わず僕の世話をし続けていたんだから。そんな僕が、今ここでおかあさんを後ろから蹴り上げたらどうなるのか、ずっと考えています。だって、僕は今もなおずっと、おかあさんの後ろに立ち続けていて、おかあさんもずっと、僕の前に立ち続けているのだから、僕はおかあさんに何をしようと文句の言えない立場なんだよ。そうでないなら、今すぐに踵を返して、その持っている包丁で僕の脳天を貫けばいいだけだ。何も難しい行動が要求されているわけじゃないんだから、児戯に等しいはずなんだけど、おかあさんはなんでしないのかなぁ。

照明をつける暇もなかったキッチンは次第に太陽の恩恵から離れて、薄暗い地下室のようになりました。とんとんとん、と木魚のように反復する音だけが、僕とおかあさんを繋げています。或いは僕とおかあさんには、その程度のつながりしかなかったのかもしれないね。だから、僕はおかあさんの後ろにずっと立っていて、おかあさんは僕の前に、ずぅっと立ち続けています。おかあさん、やっと僕はおかあさんのことを深く理解できそうになってきたんだよ、きいてくれる?おかあさんにとって、僕がどういう存在なのかというのを実は勘違いしていたみたいなんだ。

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こうするしかなかったんだ

全てを捨てないと
この地獄は終わらない

楽しかったこと
好きだったこと

それらはいつの間にか地獄に変わっていた

過去の自分に縛られて
捨てようにも捨てきれない

一度離れようと思索するも
戻るときの苦労は目に見える

なら全て捨てるしかない

この地獄から解放されるためには

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ポストモダン焼き(郵便弟論)

郵便ポストに弟を丸めて入れる
イカ焼きのつもりで 
マヨネーズをもたせてある
空腹でも三日はもつだろう
少しは反省すればいい

ポストのなかで 
弟が マヨネーズをなめている 
世間をもなめている 
切手じゃあるまいが

おれが入ってなきゃ
たこ焼きでさえ 
タコ入りにはならんやん と 
変な関西弁で吠えている

実家は北海道にある
イカ焼きといえば
輪切りのアレだったはずが
まるで 葉書にソースと
マヨネーズを塗っている

弟には郵便論がわからないし
すべての書簡は青のりで
黒塗りにされてしまう

「多分やけど 
たこ焼きにキャベツを入れたものから 
検閲されてんねんで 俺ならそうするわ」

弟があって 兄があり
誤配を前提に 北海道より
4日はかかって 大阪に着く
訛りがあって 誤配が生じ
切手を貼って 白飯を食って

道頓堀 ぬかるむ泥ソース 
さながら白封筒のスーツを浸し 
カーネルの肩を抱き 2ショットをキメる
弟は 投函されたまま 開封を待つ

親指を立て 漸く届いた故郷が
弟の口を借り なまらうめえ といった 

母語がとどき
父も泣いたが

おれは 許さない

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 5

 5

コヨーテの唄

森を棄てたやつらは バカだぜ
きのうだ 明日だ 嘆いてら
朝陽と笑い 月に出逢う
それだけでいい
それだけで

森を棄てたやつらは マヌケだぜ
上だ 下だ くだらんぜ
群を生かす
それだけでいい
それだけで

森を棄てたやつらは 阿呆だぜ
夢の兎を 追いかけて
きょうの糧は きょう喰らえ
それだけでいい
それだけで

うまれ堕ちた その日から
数を追いかけ
数に追われる
ネズミだぜ

コヨーテは荒れ野を駆ける
目のまえだけを けんめいに

遥か遠く
北アメリカの大地から
かすかに
遠吠えが 聴こえた

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エッセイ ポエムについて


 「文化事業、白洲次郎」と事あるごとに呟いていたら、文化事業ってなんなんすかって言われた。白洲次郎って誰なんですかって言われた。俺にとって文化事業ってのはただ単にこれはもう、今、散文を書いて投稿する事と、そうして、三十冊はある妻のキャンパスノートのポエムを整理、編集すること、そうしてディスコードで、ちゃちゃっとチャットする事である。
 田んぼに向かい、破傷風の事について調べ、今、虫も触れない小学生を、来年あたり泥まみれにしてやろうかな、とか考える事が俺にとっての文化事業だ。

 そうして白洲次郎といえば日本の敗戦処理に携わった人物であり、吉田茂のイソギンチャクとも揶揄されたのだけれども、彼は無相荘という住まいに閉じこもり、ともかくひたすら畑仕事、そうしてやっと敗戦となってから対アメリカとの交渉に赴き「あなたの英語は素晴らしいですね」と言われては「あなたは英語を勉強した方がいいですね」と、アメリカ人に言い放った人物である。


 そうして、俺はエミネムが流行っていたとき、高校生だったけど、今になってラップというものに興味関心を持ち、ともかく「文化事業、白洲次郎」と押韻してみた。意味わからん、と言われた。ぎゃふん。


 全然話は変わるけれど、今、賃貸の、これは住宅に、二人暮らし。長男なのだけれど、まあ子供に恵まれず、しかし今年の十月、わたしはしっかりとこれは自分で自分を蔑むわけではなく、ほんとうに伯父さんになるらしいのである。ともかく、毎朝、正信偈を唱え、何故ならば、浄土真宗の現世利益として、こどもがすぐになくなることをふせぐ、ということがあるからである。そうして足どりは、山へ向かい、分け入って、スマホで、ディスコードに通知がないのか確認しつつ、それからもう、いいでしょう、というころ下山する。すっかりお腹も空いている。


 家にかえり、パラパラと妻のキャンパスノートに向かい、それをパソコンのWORDに打ちこんでゆく。「ともかく余分なところを削れ」いつか先人の詩人に教わった事を念頭に、妻の詩を編集しては打ちこんで、それで、まあ妻も満足しているようなのであるが、それって本当にオリジンなポエムなのであろうか?


 確かに妻の筆致は荒く、感情任せでぐしゃっとしているといえばぐしゃっとしているがそれを、単純「綺麗」に収めてしまうということ。
 印刷してしまうということ。まとめるということ。何かここのところで本来の詩の在り方と間違っているような気がしてきた。


 資本主義においてはすべてのものに何か価値が見出されてゆく事が前提化されている。なんでも。


 そうしてそれは詩も例外ではなく、だから、タイムラインでは、こういう詩が本来的なもので、わたしの書いている詩こそ、認められるべきであるという主張がたえまなくされている。その主張はすべて作品への価値を上乗せする意図がある情報なのです。


 ここで思う。まず、この、妻の詩を、私の目線でもって、それは編集工学という視点でもって、編集しているのだけれど、それって一種の「犯罪」を犯しているような気がしないでもない。 ある人が書いていた。


  私が最高の詩を書いたのならば、それはそっと海へ流そう。



 主張、デモクラシー、文化事業、白洲次郎、みんな素晴らしいと思う。
 しかし妻のポエムをせっせ、編集する、私は心底、悪人であろうと自覚する。ほんとうに悪人なんですよね。


 0

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 3

 12

水飛沫、木漏れ日

雨のかわりに
ホースを思い切り
引っ張り
水まきする
枯れかけた
カタバミのために

黄色い花と
青い鞘に触りたい
触れると同時に
指先が痺れるのがいい

目を離した隙に
シジミチョウが
ひらひら

 50

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 9

 4

メイド服

 僕が通りを歩く時
 メイド服姿の少女を見かけた
 みそ汁が喉から上がってくる
 びっくり!
   壁にメイドの絵を描いてみた
 さてと
 あの子は一体
 会社勤めをしているのかね?
   社長に報告
 社長も見かけたらしいね
 他の惑星の子かしらね

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 2

 3

梅雨

煤けた鉛色の空が泣いている

ぼろぼろと
大粒の涙を流して

厚い雲のハンカチでも
とても拭い切れやしない

昨日
あんなにはしゃいでいた風も
今日は別人のように無口
誰とも何も話そうとしない

華やいだ
新緑の景色には似合わない
病んだ風景だ

雨だけが
他人事のように
黙々と時間を食んでいる

何時の間にか
空の憂鬱が
私の胸に映っている

こんな日は
ただ黙って
俯いた季節と一緒に
心まで濡らしていたい



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あこがれ

見捨てないでと口走る私は
さびしいと言えるあなたの
すこやかな心にあこがれて
透ける翼の鳥になってしまう
遠いところへ行きたい
すがりつく惨めさを
誰にも見られないところへ
ひとりでとんでいることが
恥のしるしではなく
洗いたてのブラウスのような
切ないよろこびになるところまで

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アルファベットスープ

太陽がQの形で沈んだ日
私は夜遅くスープの底から引きあげられた
身体より先に不思議が口内で殖えていた
Qはたえまない炭酸の泉で
Aは遅れてやってくる無音のくしゃみ
ときどきQの尾を気管のなかに飼った
声になる前にそれらは紫色の植物に変身して
若い肺に絡みついた 答えようとすると
群衆の指が無数の言語で折れはじめる
カウントダウン ダウン ダウン
咀嚼しきれなかったマカロニが
舌と歯の隙間で溶けるふりをしている

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フラクタルなきみと私たち

せんだっての落雷で
うすむらさきの丘の若い樹木が
真っ二つにスプリットされた
裂傷の内側には名付けようのない光の粒が
びっしりと呼吸している
枝たちはお互いの行き先を知らないまま
空を分けあい
それぞれ葉脈は生の記憶を薄く見つめあうし
丘を流れる川も石に触れて変わる音がある
ここに聴く者がいなくても
水は音のかたちを撫でながら
遠くへにじんでいくものだ
川はいくつもの枝葉をくぐり抜け
やがて見知らぬ海の心臓をやさしく震わせる

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ランドン

ランドンは三〇年前に植物の精神を両肺に移植し、
それ以降は羊たちと目を合わせることがない。


「どうして、ランドンは、サンドイッチに魚を入れないの?」


不可解なのは、
ランドンが便座を
すぐに殴って破壊することだ。

鏡に零れ落ちる砂粒
のクラリネット演奏に実ったイチジク
から伸びる影のめくれあがった
粘液の季節
それは油絵具
による修正のような斜線、
直線が細かく入るのだが
ランドンの恋愛遍歴
もそれに似て掻き消された細長い直線
が、ややカーブした突き当たり、
そこには一匹の虎猫
など寝ていれば良いのだがというような
吐息
その消えつつも残りつつある温度
にも似たような
存在であったようだ。

油絵具のカタマリが、
ボソボソと話した。

ランドンが落下する。
それはキンモクセイが満開になった夜のことだった。

夜の木は素早い煙のようにして、
廃墟に唇で吸い付く。

急がないで。讃歌は、いくつもの恋物語と、
トカゲと調律師を、
乾いた脳を横断する臨時的なこのモダニズムに、
接続してきた。

五年から三〇〇〇年の間だったような。

「どうして、ランドンは、ソーセージに、
ハチミツをたくさん塗らないの?」

鳴り響くサイレンに合わせて
ビャッ!
ビャッ!
と喚きながら
契約したと主張する恋人たちは、
この波間、
あるいはこの武器庫の火になり得る誕生日も、
いつかはランドンのようになるのだと、
ニセの声を用いながら
話した。

石灰の激怒、
お気に入りの空、
エーデルワイスのような
カボチャ頭の痩せ細った他者たち、
どうして
本質的な恐怖以前の議論を、
支配者の小径が
求めるのか。

村の人はランドンの靴しか見たことがない。
雨の皮膚を剥いで作った、特別な靴だった。

不可解。

「どうして、ランドンは生まれる前の体毛、
美しい少年の昼間の類型的な真実を、
骨をしゃぶりながら、
凝視し続けるの?」

ランドンは一〇〇年前に死んだ。
遠い雷を聞いて、
その瞬間、一匹の黒焦げの犬になっていた。

ランドンは、ヨーゼフ・ハイドンの交響曲を部屋で聴く。彼の目、
彼の引き攣る習慣。

一〇〇〇年前のランドンは、いまよりも少しだけ
饒舌だった。

「どうして、ランドンはミニトマトと対談しないの?」

以上が、ランドンの人生の物語である。
ぼくは、鉛筆にオイスターソースをかける。

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カンパネラ・ラ・そは奇声の踏切


妖しくゆらめく蜃気楼と投げてみるが、
そのようなものを見たこともなく、
見た人に、
会ったこともなく

そは奇声の踏切
そは引力のカンパネラの

、だったか、朝に起き上がり息を吸い込んで窓辺に行き、外を見れば砲車台が、

このモノローグを原稿用紙に書いてください、書いて、そして、読むことなく、妖しくゆらめく炎のうえにかざし、そして、呪詛の声の反響する家のなかを歩きながら、歌をうたい、撮影してください

、だったか、炎天下にさらされたバリケードの父のその青春時代とはそのような「感じ」のものであったか。実際に聞いてみることもなく、東京で長いバケツに顔をつっこんでいますよー、などとは、いまさらながら、言えることもなかろう……。

夜になると
ポンポコポン ポコッポンポン
一聴すれば可愛らしくもある太鼓の
ふさふさと毛の生えた乳母車が
通過し
、なればこそ奇声であるか、わずかに透明な白刃の
影絵の肉体
影絵の
泡だ……

このモノローグを原稿用紙に書いてください、書いて、そして、読むことなく、ラ・カンパネラの指の動きを、見せてくださいませ、さもなくば踏切の、ああ、ああ、という、それはいつでも居心地の悪そうな内面の死角の鳥の声であったか。

そは奇声の踏切
そは引力のカンパネラの

鮮烈なる旅人の時代錯誤
鮮烈なる破裂した美術館の臓物の赤黒いしぶきの
鮮烈なる濡れた階段を
這いながら
うぐへ
うぐへ
うぐへ……ああ、ああ、これが内面の死角の朝霧であることかと言いながら。

寓意を持って下流で叫ぶのは誰?
それもまた妖しくゆらめく蜃気楼などと言うが、
実際に見たことのない
また、
見たという人に会ったこともないのだ。

ある作品の冒頭に書かれた自律神経の幻視体験のカンバスが気にかかり、その作品の非常に丁寧に隠された「死者の余白」とも言うべきもの、

果樹園に参ってアフリカの果実になって養分を吸う……

しかし、死者の自律神経とは?
その問いは奇声か。

今日は絶対に外には出ない。部屋にこもりバロウズの本を読んでいた。牡蠣の空、牡蠣の空……これは自動記述ではないのだ。舌が伸びてツナ缶を食べた。どうして外に出ないのか、と言われるが、どうして家にいないのか、とは言われたことがない。牡蠣の空だ。まさしくそうとしか言いようがない。

自己主張のほとんどない肉眼と対話した
今日の夜は
不思議な感動があった……臭い部屋で横たわっていると……アレキサンダー大王の、美しい、裸体の腋下の毛深い……その矛盾する言葉の強調された、裸体の軍隊、世界最強を誇った……毛深い軍隊……煙幕と汗と肉の吠える表現の霊魂が引用された……
でも……

ミミズとオケラが出会ったらどうなるかしら
あたしはもう死んだから
白黒写真の歌をうたうわよ!
ペパ! 入射角!
ペパ! 火の布で濡れた異常者のダイヤ!
ペパ! サーモスタットの死刑台!
ミミズとオケラ
靡く空中楼閣……

そは奇声の踏切
そは引力のカンパネラの

ボロボロになった機械から
ぬらぬらと流れ出る
オリエンタルな滑走路!
あ モーツァルトが笑う!
あ 遊ぶ心臓の感覚体系だ!
不思議な常識がある。
それは連絡された七五調の西洋人が
いまからでも
山陰で巨石群の飛翔を見たいと
必ず宣い、古代的な山岳の犬が
それを
歴史の機械だよ
あたかもレンタカーに乗るヘルメットの仏教徒みたいにだよと
さらに重ねて
宣うのである。

路上でカンパネラを弾く指の動きをしていた。損なわれた壁からニュッと出て来た人物が、その指の動きを見て、そは……と言おうとしたため耳を塞いで逃げたのだ。

走る。コカ・コーラを飲みながら、口から黒く流しながら……。

死んだ馬はゾッとしながら走る、
死んだ馬は不吉な日記を書く少年が好きだ。
たまらなく
好きだ。
あ モーツァルトが石に囁く!
あ 爆裂した窓辺の陶酔!
いまからでも自己模倣を経験し自身の乳房を切り刻み暗礁の上で歌舞伎スターのように絶叫しよう。
オリエンタルな滑走路を渡る機械が飛沫を浴びて怒り狂い
新鮮で嬉しいくらい狂った、
田園の日記を
読むのだ。

このモノローグを原稿用紙に書いてください、書いて、そして、読むことなく

、声を荒げることなくタマリンドの表皮に触れると、
自分がわかりますか。自分の、

路地の奇声降りしきる
そは引力のカンパネラの……妖しくゆらめく蜃気楼……それは見たこともなく、また、見たという人に会ったこともなく、

うぐへ
うぐへ
と言いながら真剣な顔で寓意を読み取ろうとしている……

そは奇声の踏切
そは引力のカンパネラの

自律神経の死者……

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午前4時


ねないといけない。
ねないといけない。
ねないといけない。

トントントン

「はぁい、どなたでしょう。」

「わたくし、『明日』という者でございます。
あなたの家で『今日』を匿っているという噂を耳にしたものでして。」

あぁ、まずい。

「そうですか。生憎わたしはひとりですし、ここにはだぁれもいませんよ。」

「では、上がらせていただいてもよろしいですか?」

「いえ、散らかっていますので、少々お待ちくださいな」

ふとんの中に、小さく『今日』がうずくまっている。
追い出すなんて、できっこないのだ。

いっしょにふとんに潜りこむ。

ドアの隙間から『明日』のひかりがのぞいている。

ねないといけない。
ねないといけない。
ねないといけない。

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フラグ・メンツ(現代詩手帖 落選につき皆様による批判を受け付けています)

約束を違えた襟の ボタンひとつを
なおす術さえ 教わらなかった子ども ら

各々の部屋に埋葬されている、だと。

私はそれが許せなくて、ドアを叩いた 

ぶよぶよに腫れ上がった 手旗信号 届くか

拳骨が見えて 内側はあばかれる
諦めているのはわたしなのに
この生き物ときたら痛覚さえないとは

外縁で折り合いをつけなくては
内側から食い破られてしまう

侵入者を 腿を 腕を 抓っていたのは
私の手ではなかったのか と
少しは疑え。語りの主体は誰

きみという 可変のシェルに籠る
居留守がばれ続けている

不在と書いた 白旗を立てた この領地を
所有したくない と思った、感情の数だけ身体を割いた という口上を自己防衛に使った それは三人称でも転用可能か検索した
とメモした 紙片は虚しく空調にはむかった

フラグメンテーション 
齧ったトーストのかけらで 
構成されたような具合の身体性 
ばらついたまま あさましい欲望を余すもの

ナイフにこびりつく
バターが不快で 漆喰を塗る音が不快で 
飛び出してしまいたい。

うちなる他人のものとして
切り離して責任を逃れたのはだれ?
あと何度かはこの問いを再起していい筈だ

芯を食いにいけばいい 芯を立てればいい
そして常に すり替えればいい

喉元で正せ 襟とただせ 
編集時の差異こそ本懐ともてなせ
口がふえたごとに 噤まれるとされど 
スレッド数など比例しない

すっぱい葡萄の 枝まで食えばいい
実感を握って 痛覚を得よ わたしの氷を わたしの陣地に 取りに行かないと 
手も足も増えるんだ そらみたことか
盛大な離反 しかし コアなどあると思ったか

断片たちから名前を選べ
断片化された名前を選べ  

あるいは 選ぶな

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朱い鯨

大海原で溺れていると思っていたら
ちいさなまあるい金魚鉢でした
自分をザトウクジラだと思っていたら
ちいさなちいさな朱い金魚でした

溺れることさえ叶わない
水面から顔を出し
鯨の気持ちで息継ぎをする
ちいさなちいさな朱い金魚でした

ちいさな水面を泳いで泳いで
大海原に出たと思ったら
そこは雨上がりの空を映した
浅い水たまりでした

ちいさなちいさな朱い鯨は
空を見上げて笑いました

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