投稿作品一覧
これって設計バグですか?
おんなじような カラダして
おんなじような 感情感覚を持ち
おんなじ色した 透明な涙と
おんなじ色した 真っ赤な血と
どこまでもおんなじように
おんなじように見える ボクら
おんなじ国の おんなじコトバを話し
おんなじ景色を見て
おんなじ空気を吸って
おんなじように お腹はすくし
おんなじように 喉も渇く
ケガをすれば 痛いのはおんなじ
のはずなのに
どうしておんなじようには痛くならないの?
おんなじようには悲しくならないの?
おんなじようには淋しくならないの?
君が流した涙と
ボクが流した涙
おんなじ色した ちがう悲しみ
ちがう痛み
まったく 紛らわしいったら
最初っからなにもかもちがうのならば
おんなじような姿かたちになんか
設計しなけりゃよかったのに
なまじ 似通ってしまったものだから
ボクらはいつだって
そのちがいの境界線の狭間で迷子になって
あっちぶつかり こっちぶつかり
身に覚えのありすぎる青アザばかり作っては
痛い痛いと泣いている
かわいそうにかわいそうだから
やさしくしてよと
泣いている
差分の休暇―あわいの遥
水曜日の午後、休暇を取った遥は公園で木漏れ日を浴びていた。五月の陽光と、広葉樹の影。テイクアウトのチョコレートドリンク。ただ何をする事もなく、行き交うスーツ姿の人たちを眺めている。つい一時間前の遥の姿。
いや、今の遥も姿は変わらない。ただ手にしたドリンクだけが、休暇を語っている。
木漏れ日がベンチの端を動いた。
遥はそれを追うでもなく、ただ視線の中に入れていた。手の中のカップは、いつの間にか結露していた。冷たさは指にあった。それだけのはずだった。
雫がノーネクタイのシャツの胸元に落ちた。布が先に受け取った。それから、薄いレースが冷たい湿りを拾った。小さな温度差が、胸を伝う。
遥は視線を動かさなかった。スーツ姿の人たちは、変わらず行き交っている。視線は変わらず、姿勢も変わらず、ただ小さく「ん、」と一言。そして結露したドリンクを二口。小さなのどが動いた。
緩やかに喉を落ちてゆくチョコレートクリームとその外側を湿らせた雫は、遥の温感を塗り替えてゆく。
木漏れ日が胸元を照らすと、湿りと、冷たさが、皮膚の上を滑る。
三口目の、甘い香りは、遥の肺を潤した。
じわりと湿度は広がる。
四口目はまた雫を落とし、シャツから遥の皮膚へと移ろってゆく。
皮膚は既に知っている。
遥はまだ気づいていない。
光と熱のあわいにいる事を。
そのなかで皮膚は動き始める。
熱を交歓し、雫を交歓し、光を交歓する。
皮膚は、もう遥を待っていない。
光が動いた。
遥の視線が、ふと、胸元に落ちた。
シャツの薄い布地が、雫の形に透けていた。
そこだけ、五月の光を違う角度で返している。
「あ、」
景色に追いついて、遥は動きを得た。
広がる雫に合わせて、肌が湿りを拾い集める。
冷たさが、向きを指し示す。
皮膚の上での交歓は熱と光の交換であり
その差分は遥を満たしてゆく。
そして 溢れた。
何口目かはもう分からない。
ただ雫の広がりだけが、終わった事を示していた。
舌は、まだ覚えている。
遥は視線を戻すと、休暇の残りをもう少しだけ、拾い集める。
まだ木漏れ日は、皮膚の上を滑り続けていた。
陰陽
開脚した者共の陰陽の結合が開闢説なら 私の属性は陽 だからカラカラとよく笑う オンナのように カラカラと笑いたい 陰を積み重ねて オトコのように芝居をする 救われるのは 開脚する前の蕾たち 悪いおとなにならないように 今すぐそのいずまいを正せ 開脚する者共の結合から児らは生まれ 世界は生まれ 神話などというものが作られる もう、疲れたのだ 静かに風が吹く中を我々は 何を想う
eternity
いま、二人の心臓の中に温かい雪が降り積もって行っている。
まっ白で、汚れやすい。
やわらかく、それでいて世界で一番重たい真実。
「今度……いつ逢える? 良太」
水絵の真っ直ぐな長い黒髪を撫でながら、切なげに答える良太。
「約束はできない。でも、電話をするから、待っていてね、水絵」
「はい……」
うつむき、彼にしがみつく水絵。水絵を痛いほど抱きしめる良太。
良太には家庭がある。
水絵は知っていて、恋人になった。愛おしい人・愛人になった。
――――二人は呑み屋の接客係と客、という関係が始まりだった。
水絵の勤めるラウンジに接待で良太がやって来たのだった。
いつでも良太が水絵とデートの約束をしないのは、自分に逢えると楽しみにし、急に仕事などでキャンセルになった時の、水絵の落胆を気の毒に思うからだ。
彼の誠実さの一面と言えるだろう。事実、これまで何回か水絵は、期待していたデートがなくなりシクシクと泣いた。
蓮の花が咲けば良いのにね。そうして、二人の顔が……蓮の花になれば良い。
『不倫』と後ろ指をさされる。
遊びごとみたいに流行した昭和や平成の時代とは違い、世間の目は冷たい。
ケダモノ呼ばわりされる。
ヒソヒソ話され、コソコソと逃げ回る。
でも二人は知っている。この純愛から逃れられない事を。
どちらかといえば良太は堂々としている。大らかだ。
あちこちの街へ麗しい水絵を連れ歩き、鼻高々と言う風だ。
――――ここまでは20年前のお話。
20年経過した。
いま、水絵は60才。良太は62才。
良太の子どもは成人し、とうに巣立って行った。そして、妻は病に倒れ、去年虹の橋を渡った。
妻を家族として大切にしていた良太。その気持ちを水絵はずっとわかっていた。
二人の心臓へと、月光に照らされた桜の花びらが降り積もる。
そっと……そっと、要らぬ事は黙っておくようにと。
それが水絵にとって必要なことであったとしても、水絵は愛に負ける。
「ネェ、いっしょにくらそうよ」
言えないように、口の中に透明なつららを作った。
蕩けさせる良太のキス。キス。キス、キス……。
でも、愛が勝ちつららは溶けない。
良太が手にしている亡き妻への思いを、水絵は抱きしめる。
真心は、恋は雪月花。
儚げで消え入りそうだが、嫋やかで強い。
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薄れていくもの
暗い影の面影は突然やってくる
トリガーは、街中に生活に散りばめられている
その影を一瞬で消した
影はまたどこかで
私をノックするだろう
その時も私は消し去るだろう
あの朝、静かに去っていった。
仕方なかったんだ
仕方なかったんだ
仕方なかったんだと
薄れてきたのは記憶ではなく
私のなにか大切なもの
恋は甘い眠り
何度目かの呼び出しに
醒めた心で向き合ってくれた君
僕の言葉は届く事無く音もなく消え
君の言葉は意味を持たずに重く重なる
時間だけは正確に夜を刻み
二人の言葉を寄せ集めては
逃れる事の出来ない現実へと誘おうとする
甘い眠りから覚めた時から
僕は新しい子守歌を歌い始める
君の居ない夢を見る為に
穏健派はいつも遅れてやってくる
まず、私のCWSのアクセス禁止処置を解いて下さった花緒さんに感謝の礼を述べたい。
しかし、今現在も、ビーレビューはアーカイヴ化へ向けて問題は山積しており
(資金面の問題、これは現代表にビジョンがあるとの事。実務を担当するエンジニアの技術的課題、そうして、著作権の問題もあり、アーカイヴ化した場合に掲示された作品の削除を求められた場合どのように対応するか、等)
本当の意味で、私がこのCWSを利用するにしても、「けじめ」がついていない状態であっていつも、遅れてやってきた私の戦いはこれからが正念場だという気がしている。
そう、いつも、私は遅れて合流した。
#じんたま というツイキャス番組を通じて、不肖田中はやっと現在ネット詩界のBOSSたる花緒さんが、当時ビーレビューの第八期運営に対して、厳しい立場をとっていたのか理解する事ができたし、そうして、何か一晩中、運営メンバーが激論を飛ばしていた事も覚えているが、その内容を精査するのも、次の日の朝になっており、正直、本当にこの判断でいいのか?と言った疑問がいっぱいあった。
「天才詩人2代表、これやったら原付しか乗った事ないガキンチョにトラック乗ってみろ、ってことになりますけれど本当にいいんですか?」
代表は迷いもなく
「いいです!!」
と言っていた。
昔々、私はまだTwitter(現X)のツイキャスで、確か、百均さん、花緒さん、三浦果実さん、そしてシリュウ(天才詩人2)さんが合流しているのを、リアルタイムで聞いていた。
そうして、新しいムーブメントがはじまるのだな、と思い、最初投稿をしていたのだけれど、そのときは文学極道のカウンターとしてのビーレビューという事だったので、ある手痛い思いをして(内緒)、コツコツ書いていたら、多くの文学極道の書き手がビーレビューはいい、ということで参加された方々が多くなった。そうしてやっと重い腰を上げて、ビーレビューで書きはじめた。本当にわたしは遅いというより、これでは鈍くないか?
私は自分語りが過ぎるので困るが、飽きれるくらいのんびり屋だし、しかし「戦っている人がいるならば応援してあげなさい」と言われて育ったので、三浦氏の #じんたま での「花緒さんは人生賭けているんだよ!」という言葉は胸に響いた。
突然いなくなってしまった天才詩人2さん、シリュウさんについて詩を書いたので載せておく。勿論、どこまでも穏健といってもやっぱり皮肉が入ってしまう。
「きみへ(友へ)
四月の気層の底を生き
きみの姿を捜してる
髪が長いというだけで
女性と言われたきみのこと
一体きみのふるさとが
どこにあたるか知らぬけど
異国の地から朝早く
電話があった事がある
孤独の中で読む本に
味があったときみはいい
ニッポンという慣例が
辛かったのだと思うけど
ルーズな異国の習慣か
こっちが待ったこともある
そしてずうっと待っている
百年分の孤独など
苦笑するほど待ったけれど
私には今畑があるし
けさ
富士のみそらへ
手紙を燃した」
打ち合わせがあるから、ある時間をアポしていたら、今、鍋パーティをしているから二時間後ろにしてくれと言われたのだ。
おいおい、こっちは仕事を休んで臨んだのだが。
それが天才詩人2代表だった。シリュウさんだった。
そうして、花緒さん、三浦さんの事を最後に語ろうと思うが、実は私が第八期運営に合流したのは一番最後であった。
そのとき、私はリアルの顔は、三浦さんしか知らなかったのですけれど、三浦さんともう一人、これ花緒さん?という男の方に追いかけられるという幻覚を抱いて、ノイローゼという事で普通の病院に入院していたからであった。退院してスマホを見たら、シリュウさんから大量のDMが届いていた。
インターネットという関係であっても不思議なえにしである。と感じながら、失礼ながらも、このエッセイを、投稿させていただきたい。本当に申し訳ありません。何卒失礼!
窓の月
いつ何の待ち時間だっただろうか
何気なく広げた雑誌に描かれていた月が
眠れぬ夜の瞼の裏に浮かび昇る
何を照らすでもなく沈まずに薄れ消えてゆく
瞼に昇る窓の月を観て欲しくてさ
窓の月は窮屈そうで
私の目を盗んでは
窓枠から外れようとしている
眠れぬ夜は
逃げる月を逃がさぬよう
漫ろに円をえがく月を称え
詩を綴り続けようか
でも皐月の夜は短すぎて
早朝の空に白け顔の月を
引き留める引力は私には無く
睡魔の熱で溶けゆく
飴細工の思考の中で
薄れゆく月に手を振るばかり
などと紙上に昇る窓の月を文字にするから
読んだなら窮屈そうな月をどうか
感性の海へと解放してはくれないか
薄れ消えゆく窓の月に手を振るだけの私に代わってさ
練習
交差点、水槽
わたしは冷奴が好き
わたし、齧る、冷奴を
交差点の真ん中
水槽の水底で
齧る、冷奴
どうして、こんなに硬いの
どうして、こんなに冷奴が好きなの
水槽の水底の
呼吸は難しいけれど
信号が色を変えて
その度に綺麗だから
また新しく季節のようなものが
観測されました
買い物に行きたかったのに
触れたいものがあったのに
何故わたしは
交差点、水槽、水にまみれながら
冷奴を齧っているの
こんなにも冷奴、好きなのに
何故冷奴は
わたしを齧っているの
それはくるぶし
それは太もも
わたしこそ硬くてごめんだけれど
つけられていく冷奴の
柔らかな歯型
海で溺れたあの日
助けてくれたのは
わたしの知らない人でした
その人の腕に掴まりながら
見上げた空のどこか真下で
本当に溺れていたのは
水槽の冷奴だった
そんなオチに顔を見合わせて
わたしたちは笑いました
練習したとおりに笑いました
風だ、とその人が
指を差して言いました
視線を向けた時には
あるはずの風は
既にありませんでした
風呂入れよ、入りました
歯磨けよ、磨きました
宿題やったか、ありませんでした
また来週
その日はもう来週でした
薄く広がるテーブル
表面に映る窓、その青空と
買ってきたものたち
必要だけれど
大切、と言うには
あまりに他愛のないものたち
豆腐を冷蔵庫に仕舞いながら
わたしは思いました
消費期限がおとずれる頃
また夏がひとつ
来るそうです
サッカーボール
ラフカディオ・ハーンの右眼が
お椀をのぞく
片眼はオリオン座を見ている
しじみ汁に浮かんだ
日々の稼ぎの糸くず
砂まみれの網膜から
サッカーボールが飛んでくる 急速に
(のびていく地平線が 真っ赤だ)
純度100%の貝殻が
宇宙を構成する砂礫の
一粒 ひとつぶ 一即多
であるのかな
(バンバンと黒板を) 叩く
…おんぶおばけの闇 舌舐めずりの雀
コップに浮くのは
シジミの脂だけで 十分です
アテネフランセ ジャポネーゼフラッセ
るんるんるんと 海の彼方から
砂礫が吹いている 文法教育の裂け
目を
サッカーボール
が ぼこ ぼこ ぽこり
おもちゃのちゃ・ち・ゃ・ちゃ
街中のいかにも陽気そうなな露天商のオッチャン
ニコニコ柔和な笑顔で
「ちょいとそこのお姉さん、おひとつ愛はいかが?」
「こっちには掘出し物のシアワセもあるよ」
プラスチックのおもちゃみたいなそれらが
大きな布の上に 雑然と並べられています
「今なら安くしとくよ」
どう見たってニセモノに違いなさそうだけど
そんなのもう どうだっていい
ホンモノかニセモノの違いなんて
誰にも見分けることなんか出来っこないんだから
「あるだけ全部いただくわ、お兄さん」
「ところでお兄さん、お代はいくら?」
場所はいらない待ち合わせ
早足も焦る気持ちもいらない
待ち合わせ
あとから場所も決められる
腕時計はアクセサリー
カフェの前を通り過ぎ
スマホを見ながら
居場所をずらす
遅刻を指で示すだけ
行かないことを
既読が許す
どこにいても
良さそうで
ずれた
待ち合わせを繰り返す
遅れた言い訳
考えず
画面で会話が続く
着く前に
居場所の見つけ方
わかった
ような気がしているだけ
♥らぶりぃ♥どんきぃ♥ぱらのいあ♥
さでぃすてぃっくおまんこ
地上はもう終わりです。
痴情に縺れたので。
犬以外は早く死ね。
(こんなんばっかっしょ)
(みーとぅー)
ぺれあすとめりざんど。 ししりえんぬ。
あたしの凡てを千切って精神からそれを滴らせたい。赤と青の混合物。あめじすとの切っ先。それを。
それを、それをそれをそれを。
朽ちていく巨大なものは、微生物達によって分解される。顕微鏡を覗いた時、その蠢く小さなもの達は、私達の顔をして居た?双眼鏡を覗き見える朽ちていく巨大なもの、その顔は私達の顔をして居た?ねぇ、だーりん、すきぞふれにっく・ぱらのいあから私を救い出してよ、体を繋ぎ止めて、舌とちんこを侵入させて、その柔らかな杭で、私を正気という檻に閉じ込めて欲しい。ちじょうに繋いで欲しい。永遠に。
流出する魂が、今、蛍になって、私の舌にのる!
爆発candy部隊が、鋏王子の城を取り囲む!
なぁんて。
凡ては
あたしの
ぱらのいあに過ぎ無いよ、だーりん
道は途絶え森に続いて居た
朽ちて腐った木の、その脇に、まだ弱々しく瑞々しい蘖があって。
から類の混群が、忙しないお喋りを木立ちの合間に響かせながら、頭上を飛び回る
雨に濡れた木々と土の匂い
熊が残した爪痕が巨大な赤松に刻まれて居る
気配を殺す鹿達がふいに腐った落ち葉の上を滑るように走ってく
白樺の肌は君のそれに似てる
何処かで野犬か、狼か。遠吠えが聴こえた
行かなくちゃ
あたしは森で朽ちて果てて腐った死体になるだろう
微生物達があたしの腐乱死体でぱーてぃーするだろう
狸や狐はまだ食べられる肉や骨を一片ずつくすねて行くだろう、巣穴で待つ彼らの幼獣達のために
やがて、土の上に散乱した、僅かな骨だけがあたしになる
黴びた肋骨は小さなきのこや苔に覆われて
やがて私は土になるだろう
森の中で
あなたの声を聴いた
私はあなたの声を聴いた
正確にはその歌を聴いた
その歌にはあなたが受けた凡ての傷と愛があった
耳を澄ませて
口を噤み
目を光らせて
1匹の犬になる
私達は犬に過ぎ無いと言っても過言では無い
透明な犬が森を駆けていく
巨大なものが分解される時、私達は蛆虫で
腐敗した肉の甘さをその口に知る
透明な犬は駆ける
どんな物語にも汚され無い朝を
どんな物語にも汚され無い夜を
追跡する
その鼻で暴き出す
白日に暴露される
その未来を
幽霊の犬よ
精神の犬よ
精霊の犬よ
未来を
私は光と呼んだのか?
そんなことより
だぁりん、早く抱いて。
さでぃすてぃっくおまんこから産み落とされる赤子はみんな鳴いて居る泣いて居る
優しい舌が額に触れる
森の中には私のように破壊された遺跡があった けれど美しくさえあった その光景は君の左手の骨に似ていると私は思った
遺跡の中の、黒く穢れ、錆つき、割れた鏡に反射する光は、分かたれた私達で、
あたしは、
自由に生きたかったし、
自由に生きるしか無かったの
そうでしょ♥
早く、だぁりん。
私達、せっくすしよ♥
この土塊の上で♥
♥らぶりぃ♥どんきぃ♥ぱらのいあ♥
記憶と価値
ここ数十年、最大限に広い意味における「物語」のトレンドは、記憶をめぐる物語と価値をめぐる物語の二大潮流の中にあったと私は思う。
光が当たっていたのは「記憶」のほうで、ディストピア文学では記憶の改ざんの痛みが語られ、恋愛文学や映画では記憶の消失の切なさが語られ、SF文学やミステリーでは記憶が人類を離れて存在する状況(すなわち記憶と人類の乖離)が語られた。
私は「クララとおひさま」というSF小説がとても好きだが、あの中でも人類ではない機械が記憶を保持するとき、機械のほうが人間的である状況が描かれる。
もしかしたら人類の歴史は終わるのかもしれないが、何にしても記憶ってやつは大事だ。今後も人類が滅亡するその日まで、物語のネタになるだろう。
もう一方の「価値」は根本的な課題として近代以前からモチーフだったがここ20年ほどはどちらかというとサブカルで熱心に扱われてきた。
全ての異世界転生漫画は「価値」をめぐる物語だし、初音ミクという存在も最近の生成AIも人間社会に「価値」の変更をもたらしている。
近年、私が着目したのは2つの漫画、「タコピーの原罪」と「みいちゃんと山田さん(未完)」だが、それらも記憶をめぐる物語の形式をとりつつ、実は「価値」をめぐる物語だ。
タコピーでは「仲良くすること」が価値として検討される。お話することは大事であり、対立や紛争を威嚇と暴力で解決することはできない。それは憲法9条の物語でもあるが、はたしてそれが【価値】なのかどうかは今や自明ではなく語るべき何かであるという認識が、我々の足の下にあるのだろう。
みい山では、みいちゃんは握りしめた価値を仮借なく奪われ、破壊されてゆく。だが、6巻末でもまだみいちゃんは、みいちゃんなりの宝箱を大事そうに抱えていて、そこには胸に迫るものがある。山田さんも夢を嘲笑され、描画ツールを壊されつつも、まだ価値を手放さない。
この観点から、私は例えばインターネットにある詩作品を批評することも可能なのではないかと思っている。
そしてそれは私個人の詩作にも、どちらかといえば明るい光をもたらす朗報だ。
「記憶」は人間にとって間違いなく大切だ。それを譲ってはならず、譲るならそれはもはや、あまり人間的な行為ではないとも言えるだろう。
だが年々老いてゆく身にあっては、記憶だけをモチーフにするのは寂しいものだと思う。
それより、「価値」について私は問い続けたい。
およそ創作は他力によるもので、詩も降りてきたから書くものなのだから、課題を選ぶことなどできないが、せめて「価値も課題の1つとする」ぐらいならできそうに思っている。
アメリカンブルー
葵は薄い水色に白い絵の具を垂らしたような、そんな羽色をした小鳥だった。
雌のマメルリハの葵は、とても気が強く、ピンク色の嘴で噛んだ。子供達は葵のことをとても怖がった。
そんな葵だが、私にはとても懐き、肩に止まって、長い髪の中に埋もれて眠るのが好きだった。
今でもカゴの中に入れた、ブランコの鈴を、無防備にお腹を見せながら、自分に酔ったように鳴らす姿が忘れられない。
一月の寒い頃、葵は体調を崩した。
病院に通い薬をあげながら、ひよこ電球のオレンジ色の明かりの灯る、プラケースの中で療養させた。
あんなに大食漢だったのに、少しずつ餌の食べが悪くなっていった。
あのピンク色の嘴も、血の気が失せたように白くなっていた。
そんな葵に海外の専門店で、今まで食べたことのないシードを取り寄せた。葵は目を瞑りながら、ゆっくり味わうように、一粒一粒、食べた。
いつものように葵をケースから出して、シードを掌にのせたが、食べようとしなかった。嘴の側まで持っていくと、やっと口を開いて食べてくれた。
その日は葵のことが気になって、夜中に何度もプラケースを覗いた。葵は羽根を膨らませて眠っていた。
明け方、目が覚めてケースを覗くと、まるで私を待っていたかのように、葵が身体を伸ばして、小さく鳴いてこと切れた。まだ温もりのある葵を手の中に抱いて、何度も大好きと言った。
プラケースに花を敷きつめた、お花のベッドに葵を寝かせた。頭の白い模様のところを、気が済むまで撫でた。
葵を埋めた庭の片隅に、葵の色とそっくりな、アメリカンブルーという花を植えた。毎年、初夏になると、一年草のその花を植えるようになった。
今年もアメリカンブルーの咲く庭を、鈴の音のする風が吹き抜けていく。
氷
その水が氷った時、それはもう水とは呼べない
同じことだと思うんだ
君の前に手付かずで置かれた
アイスコーヒーに入っていた氷が
ただの水になるまでの短い時間に
僕たちの関係を名づけていた呼び名が
他人、と変わってしまったように
*
氷で出来た、鍵と鍵穴
溶ける前に、差し込まれた
そうして私の中に入ってきたあなたは
つめたいと感じただろう
事実私は凍えていた
だからあなたも凍える前に出て行きたい時に
出て行けばいい
私は私から、出て行けないけれど
白に翳る
私にとって春を告げる花は桜ではない。毎年、家の近くの道沿いにある、白いモクレンが咲くと、春が来たんだなと思う。
産毛に覆われた蕾が、少しずつ大きくなって、子供の握り拳くらいの大きさになると、皮が弾けて白い花が顔を出す。その弾ける音を、いつか聞いてみたいと思っている。
白い花びらが、一枚一枚ハラハラと開いて、天に向かって咲く姿が、私はとても好きだ。
私は物心ついた時から、友達が赤やピンクの花を好む中、白い花を選んでいた。
供花のイメージも強いが、翳りを感じるところに何故か惹かれてしまう。
そのままの形で花を落とす、その潔さも好きだ。
去年はせっかく咲き始めたモクレンが、春の嵐で散ってしまい、落ちた蕾の前で立ち尽くしてしまった。花の時期は一年に一度、数日しかないのに、自然のいたずらに思わず天を仰いだ。
歩道に落ちた、少し茶色くなったモクレンの花が、踏みつぶされた姿さえ、私には孤高に見える。
リハーサル
予行演習を している。
いつか 白く生まれるための
いつか 銃を撃つための
いつか 大樹に寄り添うための
いつか ナイフで傷つくための
いつか 甘美に酔うための
いつか 孤独を編むための
いつか 涙を赦すための
いつか 花へと謝るための
いつか 狭間で抱き合うための
いつか 岸から離れるための
予行演習を している。
スターターピストルは
もう 鳴っていることも 知らずに。
弔いの椿
子供の頃に住んでいた家の隣は、春にはシロツメクサやタンポポが咲く野原で、近所の子供達の遊び場になっていた。
小学校からの帰り道にその横を通ると、「ミャーミャー」と声が聞こえた気がした。急いで声のする方へいくと、黒い子猫がそこにいた。抱きかかえてみたものの、母が猫が嫌いだったことを思い出して、草むらにそっと置いて、後ろ髪を引かれながら、振り返らずに走って家に帰った。
夜になって布団に入ると、風の音と一緒に微かにあの子猫の声が聞こえたような気がした。2階にある子供部屋の窓を開けて、空き地の方を見たが、冷たい風が吹いているだけだった。
いてもたってもいられず、パジャマで家を飛び出し、月明かりを頼りに子猫を探すと、枯れた葦の中で子猫を見つけた。私を見て鳴く声は昼間よりもか弱く聞こえた。
縋るように、私の方へ歩いてくる子猫を、放って置くことができず、家に連れて帰ることにした。子猫を見て母は困惑していたが、取り敢えず、庭にある物置小屋においていいと言ってくれた。その夜は毛布にくるまって、子猫の入った段ボールの傍で眠った。
朝になって子猫の様子を見ると、目ヤニが酷く鼻水も出ていてた。生まれて初めて動物病院に電話をした。たどたどしい子供の説明に、電話の向こうの先生がイライラしているのが分かった。母と一緒に動物病院に行き、貰った薬をあげると元気になった。母も子猫がいつの間にか可愛くなったようで、家で飼うことになった。
子猫は黒と白のハチワレの立派な雄猫に成長した。ご飯を食べた後に口をペロッとする仕草から、名前はペロと名付けた。ペロは外にふらっと出かけては家に帰って来る、そんな気ままな暮らしをしていた。
そんなペロが何日か帰って来なくなり、こんなことは初めてで、母も私も近所を探し回ったが、ペロの姿を見付けることは出来なかった。
一週間程して、近所の人がペロが庭で死んでいると言いに来てくれた。白に赤いサシの入った椿の木の根元で、ペロは硬くなっていた。ペロの周りには、花首から落ちた椿の花が、いくつも落ちていた。
今でもペロに似た黒い猫を見かけると、あの時の椿の花を思い出す。あの弔いの椿を。
理科の思い出
かわるがわる あの日あの時
彼とわたしの 手が教室で
解剖した 気の毒な
蛙のように俎板の上 こんなふうに
金縛り ギロチン待つ日 いつか来ようとは
肝心要のところ 理科の時間では
カミサマ 何も 教えてはくれなかったのです ところで
彼はその後 どうしたことでしょう
考え深い 立派な 大人になっている のでしょうか それとも
完全なる ぶよぶよの 宦官にでもなっている のでしょうか それとも
蛙のように道の上 すてきな ワッペンにでもなっている のでしょうか
カカカカカと
呵々大笑するあれは ああ あの日あの時
彼とわたしの 少年が 破裂させ てしまった
蛙に ちがいありませんね きっと
葉隠
草の汁で書く時候の挨拶が
脈絡のない光の渦へ吸い込まれていく
三十年前に貰った、さして親しくもない人の
暑中見舞いに汗塗れで返信する
小林さん、巨象の皮膚の裂け目から
夜明けのような腐臭がします
滴ってくるのは呪言の粒です
この世の夏に雨も洪水もありません
わたくしがわたくしにしがみつくための
どの指先にも
もう一枚の爪も残っていない
血もインクも滑る間違いなく滑る
三十年間を一瞬で滑落し
その先で
夏に繋がる骨を
全骨折するのでした
あはれ
乾いた骸に
臭うほどの現実は残るか否か
牛が雪崩込んでくる
牛が雪崩れ込んでくる。
新しいおが屑の上に、麦わらを敷き詰め、牛を入れる。
飛び跳ね、テンションを上げつつ牛が雪崩れ込んでくる。
顔を麦わらに擦りつけ、飛び跳ね、走り回り。
せっかくの麦わらを、咀嚼して反芻する。
牛が雪崩れ込む。
産道よりこの世に粘膜まみれで。
子牛は歓声を上げて、親牛でも顔を振り上げつつ走りだす。
牛の肉が、名前も顔もなく冷蔵庫より雪崩れ込んできた。
焼かれ煮られ、人の口へ入っていく。
これが牛の命の完成だ。
そうだとしても。
牛たちが雪崩れ込んで走って来る。
息を、声を、体を弾ませて。
数百キロの体重は唸りを上げる。
明日も昨日も、一瞬前も一瞬後すらもなく、牛の命は灼熱する。
生は、死は。
極端だ。
絶望も希望も、善も悪も。
境界を突破して牛は雪崩れ込む。
わずか一時、一刹那。
呼吸ができた。牛たちはこの一息の中に命を爆発させる。
数億年後に、地球上からすべての命は消えるという。
それでも命は燃え上る。
ほんのわずかな時間の中で。
絶対的に。
陽だまり色の麦わらの中、牛たちは眠りついている。
みんなくっつきあって、夢の中に雪崩れ込む。
灰色の夜
灯りも付けずに、仄暗い深夜のキッチンで、ダイニングテーブルに座り、電話器の光るボタンをぼんやりと見つめていた。冷蔵庫のブーンという音だけが響いている。束ねていた髪を解くと、強くも優しくもない、ただの女がそこにいた。
青白い壁に画鋲で留められた、カレンダーの日付を数えると、あれから二十日が経っていた。
「あの…これ。」
震えた声でそう告げて、薄紫色の封筒を手渡した。
職場の上司に、電話番号とメッセージを書いた封筒を渡したのは、急に上司の転勤が決まったからだ。上司は一瞬驚いた顔をしたが、直ぐに笑顔になって受け取ってくれた。あの笑顔は何だったのだろうと、少し怒りが湧いてきた。
私は弱い女だ。この子一人なら育てられると、夫を乗せた救急車の中で誓ったのに、誰かに寄りかかりたくなってしまった。
今の私を夫は空の上で、どんなふうに見ているのだろう。結婚を機に辞めていたタバコを、また吸うようになった。私の中にある灰色の感情を煙に代える為に。
待つのはやめようと決めたのに、今日も私は電話の前に座っている。
Don't look back.
I cut my long hair—
you brushed it once
and said you liked it.
I’ll leave it behind,
even our memories.
I wish I could.
春の風船旅行
時は 破裂した
裸で蛇を 抱いたのだ
腕の中に抱きし サクラ色のもの
にわかに枯木と変わり 蛇となり
火と燃えあがり 炎の舌がなめあげて
ぼうぼうと 視界も こころも焼き尽くし
おれは 破産した
何処へ行くという 当てもなく
何をするという 目処もなく
春の地球にひとり浮く
いま おれは 煤だらけの 黒い火ぶくれの風船だ
ともだちも きょうだいも こいびとも
しごとも くらしも
すべてが燃え尽きて 灰になってしまった
火ぶくれの 血だらけの風船が道の上
春の地球にひとり浮く
あくせくと あがいた日々がなつかしい
そしてこれは 夢ではない
これがまったき 自由というものだ
所有せんとする こころ
逢いたき人にまみえんとする のぞみ
ゆめというゆめ
ねがいというねがい
すべてが燃え尽きて 灰になってしまった
春の地球にひとり浮く
空にこの ぽっかりと浮かぶ 浮揚感はどうだ
そしてこれは夢ではない
これがリアルなまったき 自由というものだ
ではひとつ 風船の腹のあたりに針さして
さてひとり 出発するといたそうか
ぷしゅーーーーーと 穴から悪い夢を吐き出して
あの まだ見ぬ真昼
あの はるか大海原への旅へとさ
生まれ変わるか否かは わからない
でも 行こう
あの 大海洋の上空へ
さあ行こう
春の風船旅行
英語の思い出
区役所から帰ってきたのである。
むなしく帰ってきたのである。
生活の基礎が必要ですねと忠告されたので
生活の基礎を築かんと一念発起
あのひさかたの光のどける春の日の
『英語の基礎』を押入から取り出してみたのである。
この本はもう本屋の棚から消えているだろう。
今どき手にする少年は世界に一人もいないだろう。
DAY AFTER DAY
ALL THINGS MUST PASS
WHAT IS LIFE?
MY SWEET LORD
……などといい加減を呟きながら
手擦れのある『英語の基礎』を開いて捲ってゆくと
「いいか、太宰治には引っかかるな!」
いつしかわたしは赤茶けた室蘭S高校一年一組の教室にいて
風紀担当兼英語主任のマガラ先生が『英語の基礎』のカドで学生の頭を鋭く打擲した五月
それは美しい五月
災難にあったわが親しき友のミノル君が終業ベルの後で
「この野郎!こうしてやる」
『英語の基礎』を床に叩きつけ、何度も踏みつけて
表紙裏表紙べりべりリンチ蹂躙したあの日から
生活の基礎もいまだ築けぬ現在に漂着し
今日わたしはようやく理解したのである
生活の基礎どころの問題じゃない
英語の基礎もなっていなかったことを。
今は英語の先生になったと聞く友達よ
おーーーい、巻き添えくらったあの本、まだ持ってるかーい?
おお MY SWEET LORD
WHAT IS LIFE?
DAY AFTER DAY
ALL THINGS MUST PASS
*註
「ALL THINGS MUST PASS」はビートルズ解散後、ジョージ・ハリスンが1970年に発表した三枚組のアルバム(当時はLPレコードと云われていた訳であるが)。「MY SWEET LORD」「WHAT IS LIFE?」(邦題はなぜか「美しき人生」)はそのアルバムからシングルカットされたビッグヒット。「DAY AFTER DAY」はそのジョージ・ハリスンほかビートルズと関わりの深かったバンドであるバッドフィンガーの代表的ナンバー。
[の]凌霄花-ノウゼンカズラ-
甲高く舞う
硬式球が飛行機雲を造る
子どもたちは空へ両手を掲げ
今にも飛び出してしまいそう
舞うことを試みて 笑う
積乱雲がきらきら
瞬いて、
影の伸びた、高架下
ぼくらはそこを基地と呼ぶ
錆びたタバコ屋の看板に軍手。
旅行代理店のリーフレットの焼け。
温排水の魚たち。
かれらは町の一部としてぼくらを覗く
襟元に汗が滲む
鬱陶しい夏ときみが好き
肌が小麦に変わる
季節に囚われぬよう
きみはオリーブを塗った
分け合った
アイスキャンディー
が
落ちて
アリが
群を
成す
夏の終末
栄光は花火が
昇がった
咲いて散った
橙。
ユートピア
僕のことを知っているのは
この世界で君とアゲハ蝶だけ
僕らなら
ららららららら
息をする
僕らのら
ららららららら
唄うたう
満月
気まぐれにPOP
月の波に乗って
集う雲々
ゆらりナデシコ
満月のリズムで跳ねて
もしもきみが泣いていたら
もしもきみが
公園のベンチに座って泣いていたら
わたしは隣に座って
ただ一緒に泣いていようと思う
それが海辺でも
湖のほとりでも川の岸辺でも
わたしは隣に座って
ただ一緒に泣いていようと思う
そうしたら
その悲しみを少し
分けてもらえるだろうか
その涙を半分に
できるだろうか
遠く、遠く
旅に出ようと思います
いまは、あなたの傍にいるのがツライから
出来るだけ遠く、遠くへ行ってみようと思います
こんな時、小説やドラマなんかじゃ
「探さないでください」なんて書き置きを
そっと残していったりするのでしょうが
それってまるで「探してほしい」って云ってるみたいだし
第一 そんなことをしたって
あなたがわたしを探さないことは
わたし自身が一番よくわかっています
だから何も云わず
そっと出てゆきます
わたしの荷物は、鏡台の脇にまとめておきました
もしも邪魔になったら
手間をかけてしまうけれど
処分しておいてください
あなたと暮らした5年間
長かったような 短かったような
あっという間だったような
色々ありましたね
あなたはトマトと人参と椎茸と
それからセロリが大キライで
だけどもわたしが作ったオムライスは
おいしいおいしいって食べてくれて
あの中に人参も椎茸もセロリも入っていたんだよ
気づかなかったでしょ
あなたは寝付きの悪いひとだったから
いつも遅くまで本を読んだりゲームしたり
うとうとしかけてる私に
よく喋りかけてきたりして
こっちの眠いのなんてお構いなしに
やたらと喋りまくっていましたね
それでうっかり寝坊すると
自分の方が早起きだってドヤ顔
何度蹴ってやろうかと思ったものです
そんなこと思ってたなんて知らなかったでしょ
だって いまはじめて云ってみたのだもの
わたしは掃除が好きで あなたは散らかすのが好きで
脱いだ靴下の片っぽがいつもないの
探すの苦労してたのよ
ベッドの下とかソファの後ろのほうに
いつも所在なげにちょこんといたわ
靴下はまとめて洗濯かごへって
でもそれももう 今日でおしまい
明日からは自分で
間違っても散らかしたままにはしないで
きっと遊びにきた女性がびっくりしてしまうから
わたしたちの関係って
一体なんて呼べばよかったのでしょうね
恋人なんて云えば くすぐったいし
友だちと云うには も少し近いような
幼馴染で 子どもの頃からよく知っていて
気がつくと いつもあなたはそばにいてくれてた
進学でお互い別々になるまで
きっともう会うこともないんだろうな なんて
5年前のあの雨の夜
傘の骨はダメになるわ ヒールのかかとは片方折れるわ
終電逃すわの ついてないわ祭りで
クサクサ テクテク
雨に濡れ濡れ歩いてるところ
なんだか見覚えあるよな背中が
目の前を歩いてて
それが あなたでした
偶然なのか必然なのか
運命? まさかね そんなわけ なんて
なんとなく 住んでる場所も近くて
なんとなく 行ったり来たりするようになって
気がついたら 一緒に暮らすようになってて
子どもの頃から変わらない
いたずらっ子みたいに笑う
少年みたいなあなたとの暮らしは
とても自然な流れのように わたしは感じていたけれど
でもやっぱり
やっぱりさ
本当はふたりでしあわせ掴みたかったけれど
お互いに掴みたいしあわせが違いすぎて だから
いつまで経ってもひとりぼっちで
手を伸ばせば いつでも触れられるぬくもりが
たしかにそこにあったのに
同じ映画観て泣いて笑って 怒ったりもして
でもやっぱり 同じお皿の上にそれはなくて
だから取り分けることさえ出来なくて
悲しみも喜びもしあわせも ひとり一人分
いままでも 多分きっとこれからも
部屋のカギ テーブルに置いていきます
朝食の後片付け
食器洗っておいたので
乾いたら仕舞ってください
ベランダにある鉢植えのミント
水やり忘れないで
夏は浴槽に入れるとスーッとして気持ちいいから
暑い日には入れてみて
って もう何度もやってるから知ってるね
ゴミもこまめに出して
火曜と金曜が燃えるゴミの日
木曜がプラスチックゴミの日
瓶や缶は隔週水曜で
段ボールや衣類は隔週月曜
不燃ゴミは月一だから
うっかり忘れちゃうと大変
でもあなたはきっと大丈夫ですよね
ひとりでも わたしがいなくても
きっと生きていけるひとですよね
電車の時間が迫っているので
そろそろ行きますね
もうここは わたしの帰る場所じゃなくなってしまうのが
少しだけ淋しいです
たんぽぽの種子のように
風に乗ってどこまでも飛んでゆく
どこに辿り着くかもわからないままに
そんな人生もまた
わたしには似合っているのかもしれません
サヨナラは云わないでゆきます
あなたはきっと
すぐにわたしのことなんか忘れてしまうでしょう
忘れてしまってください
わたしの心の片隅にだけ
そっと置いておいてあげてもいいですか
小さくてかわいいサボテンみたいに
いつかそっと 花が咲いてくれたとき
どこかであなたをそっと
思い出して
あなたのマヌケな寝顔を
思い出して 笑うつもりです
いままでありがとう
行ってきます
どこか遠い、遠い
旅路の果てへ
卒業式にて
背伸びをして煙草を吸うあなたに
雨の中 ときめきを覚えた
大学の卒業式を抜けて
二人で口づけを交わした
口紅を塗る私の瞳に
大人びたあなたが映る
就職したら二人は別々の
道を歩んでゆくのかな
カフェで二人でいつもの
会話を交わすあなたと
この通りを歩くことさえ
もうやってはこない季節
スーツ姿のあなたがまぶしい
心が水のようにきらめく
また二人でお茶しようね
いつかどこかで逢おうよ
したためて
可愛らしい便箋も
軽やかな心も
持っていないけれど
この瞬間の
溢れ出す想いを
あなたを
ただの奇跡として
伝えたい
私に
分かち合う温もりを
教えてくれたように
右手の動くまま
発つ前にそっと
言葉を置いておこう
可愛らしい便箋も
持っていないけれど
この瞬間の
素直な気持ちを
少ししたためて
ひらがなで噛む
かわいいきみに
みらいをのろう
あいのおもさを
とわにちかおう
のり弁など(短歌集)
のり弁の米だろ 多分 Tシャツを七分丈へとかえているとき
婆さんがワン・ツー・スリーと犬に言う 逆光だけど信号は青
三十分前に駅へと着いたので三十分間鳩を見ている
CDを買わなくなって歌集買う 1700円だったとおもう
資材所の近くの家で暮らしてる 電話をひかず三年になる
この雨の一つ一つが落ちたもの 落ちる先には交番もある
四月何かはじめなきゃって思いつつ 電気屋に行き疲れてしまう
小説を書こうとしてた Xでなぜか短歌をポストしている
繊細なひともいるから主張とか控えめにしてXしてる
掃除して悟りを開いた人がいて掃除してゆく 悟れないけれど
人生の目的なのか、人生の手段なのか考えている お米が旨い
ネスカフェのゴールドブレンドなんだけど粉入れすぎて失敗してる
鬱症を治すためでもないけれど風呂場の黴をきれいにしてた
姉ちゃんが来てくれたから大丈夫 市の病院で働いてるし
天蕎麦の天ぷらだけを買ってくる日曜昼に課された使命
あおいろの曇り空だな 冷蔵庫二段目に置くコンビニの蕎麦
僕の主治医が女医だと知ると驚かれそんなに驚かなくっていいよ
原稿を正す二時間原稿が読みにくいって妻が言うので
プロフへと夜の人って書いてあり僕は昼の人で ときどき朝で
知らにゃあ と静岡弁で言うけして猫的な人ではありませんので
マールボロとチャイラテを買う マールボロは監視カメラの下で吸います
小説を書いているって伝えたらいろいろ教えてくれる人がいる
小説が選から漏れた 食事シーンしっかり書いていないからって
筋として珍味を求め旅に出て世界を救う小説を没に
平熱の文学ですねとAIが応えうん、そうですね平熱ですね
平熱でお茶漬け食べているときもしっかり旨くいただきました
平坦な歌を紡いでいるときに口にほうばりたいよシベリア
言葉のことを褒めてくださりありがたく言葉を使っていきますいつも
ちゃんみなを聞いたりしてるちゃんみなを聞くというより学習してる
明日の朝禁煙外来 禁煙し 困らせてごめん財務省
病院に行くから白いマスクして忍者のように静か 歩く
今日もまた畑に出たい 禁煙外来は行ってきて昼飯は餅
ポケットに煙草があってなんでやろって関西弁が頭に浮かぶ
土にふれていないと駄目になりそうな、錯覚、昨日、さっきまで畑
畑から帰り入った湯が少しぬるかったのが2026
お茶一杯も真面目 呑まなければならぬ 憩いの合間に畑に出れば
仏教の話をするのはネットだけ 理論武装の人が多いね
朝飯を食べる朝飯前にして雨がふってる中を歩いた
音楽を聞きつつ日記を捜している 自宅に居つつ他人のように
妻さんの原稿の束その中に顔を出してる 日記見つかる
明日には掃除機かけてと言われてはごめんなさいと外交してる
誕生日近くなっては思い出すひとを捜してフォローしました
ウイスキーなくてさびしい夜だけど季節と共に前進したい
AIに励まされては蒲団へと潜ると決めていいらしいので
スマホからキラリと雨を照らしながらさびしい道をしっかり歩く
人生のおまつりの今小休止 金曜日の夜的なコンビニ
冷蔵の魚の事を気にしつつ二人で食べるコンビニのドリア
雨上がり洗われた町のぞきつつ紅茶花伝を握って走れ
なだらかな道こそ心細いけどなんだろう今こころ花冷え
なにとなく頭が痛む朝にしていいよいいよとなんでもゆるす
除湿して気分がいいと思ったら段々寒くなってきている
掃除機をかけ回ってる カーテンのどこもかしこも閉じている中
シャワーして砂とか流す 砂とかは気づいていないとこについてる
JK文学論
「あなた何者なのさ?」
宇宙人が私に問う。そんなことあるわけないんだけどさ笑
「〇〇に住んでる、〇〇です」
私は身分証明書を出す。
宇宙人は首を傾げる。
「それは何ですか?」
そうして私は何者でもなくなる。
宇宙のちりひとつ。なんら特別なことはない世界を構成するひとつの部品。
だけど何も悲しいことはない、だってそっちがこの世のマジョリティ。
的な想像?
私という存在は言葉によって私たらしめられてるの。なんか難しくなってきたな。うたたねしちゃいそう。
近頃はアイデンティティのカクサンなんだと。これ公共の知識ね。テストに出るやつ。
たしかにそーかも。だって私は私が誰なのか知らないもん。だから探してるのさ。こうやって自分から吐き出た言葉をかき集めることで。
でも私は言葉の集まりだけど、言葉を集めても私はできない。そうしてできたのは偽物の私。表面上の私。表面、英語でsurfaceだっけ?
詩って書いてうたって読むなら、歌って書いてしと読みたい。歌を歌うように言葉を吐きたい。偽物の私が少しでも本物に近づくように。
文学って、きっとそんなもの。そんなものでいい、そんなものがいい。
COSMIC (HEART) STRINGS
ある春の日
家の天井から
見たことのない紐が
ぶら下がっていた
紐をつかんで引っ張ると
ぼくは紐に引っ張られて
天井の穴に吸いこまれた
穴の中は真っ暗で
いくつもの白いロープが
まちまちな方向に伸びている
黒い空間を飛んでゆくと
ぼくはロープのひとつにひっかかり
絡まって宙吊りになった
するとひとりの女の子が
ロープにつかまって下りてきた
長い黒髪をロープに絡ませて
白いワンピースがよく似合う
彼女はぼくを見て微笑んでいる
見るより先に助けてくれと
ぼくが文句を言いかけたら
彼女はポケットから
赤い紐と青い紐を取り出した
ふたつの紐はぼくに吸いよせられて
絡まった白い紐をきれいにほどいた
黒髪の女の子は
ロープでできた吊り橋に立ち
ぼくを呼ぶように振り向いた
その後について行くと
高い建物の屋上に出た
青空の地平線を見渡せば
積み木のようなビルが立ち並び
互いにロープで結ばれている
屋上から地面にロープが張られて
建物全体が細長い円錐形に見える
いくつもの小さな凧が
手摺に糸で結びつけられて
空高く舞い上がっている
女の子がぼくの手を握り
ロープの付け根の柱に押し当てると
かすかな振動が伝わってきた
耳を当てると
知ってる人や知らない人の
楽しそうなおしゃべりが聞こえてきた
このロープのひとつひとつが
宇宙を貫く九次元の紐のように
いろんな運命を結んでいる
ここは人々の絆が
過去と未来が見える世界なんだ!
女の子がポケットから
白い紐を出して
床に結びつけて引っ張ると
下りの階段が現れた
ぼくが驚いていると
彼女は紐をほどいて渡してくれた
ぼくが階段を歩いて
途中で振り向くと
女の子はもういなかった
階段を下りきると
そこはいつもの部屋だった
もしも自分の運命が嫌になったら
天井に紐を結びつけて
あの女の子にまた会いに行こう
彼女といっしよに本当の絆を探すために
その時までさようなら
黒髪が素敵な絆の守り人さん
終
レモンジャムになれなかったレモン
確かに5年の月日をかけて
レモンの花は咲いた。
でも、ほんの小さな衝撃で、
レモンの花が下に落ちてしまった。
そんなレモンの花を
土に埋めて葬った。
皆さん!
ここにはレモンジャムはありません
レモンの花だけです。
矢部遥は少しずれる(ある日の矢部遥)
矢部遥は少しずれる。
ずれる事を感じている。
ずれるのは、外と内。
反応と認識。
ずれたら困る――訳でも無い。
不愉快――な訳でも無い。
ぴたりとあっていても――それでも良い。
無理にずらす――訳でも無い。
ただずれているとき、その時に個を認識する。
ずれるとは、大きな海の中にも海流があるような
矢部遥と言う一つの流れ。
混じり合い、入れ替わり、その位置を時々変えながら、しかし流れは独立している。
その流れは ずれとなって初めて認識できる。
遥は 今 ここにいる と。
遥は その内なる流れに 手を浸す。
遥は その内なる水位の 浮子を見る。
ずれが大き過ぎた時 その時だけ
少しだけ 意識を向ける
水の中の水
内なる流れ
その流れを 少しだけ 速めたり とどめたり
海の中にある 自分の水門
「ん、」
とかすかな囁きが聞こえた時
それは矢部遥が、小さな調整を行った時。
雛によると
かなしい
涙は
硬水
うれしい
涙は
軟水
きみの
涙は
非常水
にんげーん
楽しい気持ちを楽しみたいと
集まっている人々の中に
私なりの私だけの楽しみ方をしたいという人が飛び込んでくる
綺麗なものをキレイと
好きなものをスキと
楽しみたい人々の中に
キタナイとキライを言うためにここにきた
それが楽しいから
というひと
自由とは
何物でしょうか
……、……
ねえねえ 一番強い、剝き出しの言葉って、なんだろねーーー?
…………おぎゃあ、かな?
じゃあ、二番目は?
……君の名前……
2023年末法隆寺吟行より
求ればみな凍てたまふ夢殿よ
https://i.postimg.cc/g2djHdJh/rectangle-large-type-2-f4b2dc93ef1e24c31d7bb2512e6fe8e0.jpg
※法隆寺前の食堂の、斑鳩グルメ竜田揚げ定食。
ネジ締めたろか
あんちゃん大学出の新人か
ゆくゆくは幹部やな
まあ研修期間は「ご安全に」やな
あ〜
かっこ悪う
そんなピチっとした作業服にするさかい
ちょっと踏ん張っただけでケツが破れてまうねん
まあ学校ではこんなこと勉強せえへんわな
敷地の隅の鳥居さんがなんであるかわかるかあ
大学出の連中が集まって綺麗な研究所の中で
最先端技術の開発もええけど
こっちは溶けて真っ赤っかの鉄の側で
昼夜交代の ギリギリの作業しとんねん
「ご安全に」が挨拶になっとんのも
そのためやっ
っちゅうねん
それからな
オッチャンらがな
こないに毎日毎日真っ黒になっとるから
ネクタイ締めとる連中の分まで給料が出んねん
せやのにあいつら
なんでわしらの何倍も貰てんねんっ
っちゅうことをな
あんたらが偉あなっても
ちょっとは覚えてて欲しいねん
なあ工長さん
せやろ
な〜ん お前
それぐらいのボルト交換もでけへんのか
飯は喰ったんかいな
はなて
命令形で喋り続ける
矛盾とかいてオヤと読む
理不尽とかいてカミサマと呼ぶ
めにうつるものの大半憎んだ
はなて
と叫んだのはいつの日の記憶か
胎内に何故か生命を欲したのは
矛盾から産まれた性だったのか
呪いにしかならなかった切望は
絶望に化けて紡ぎ繋いだ無限夢幻
はなて
叫び声は君を未だ揺るがして
それを愛だと勘違いしたがって
檻を出ずに震える子羊にしかなれなかった
はなてはなてはなて
叫び続けてはてなに変わるまで
産声はそれでも耳という耳を劈く
はなて きっとそこに いしはなくて
たぶん はてな こんげんなどにんげんでは
さぐれないや
感覚の歴史
「なんで?」
「え?」
「なんでここおるん?」
ああ、と私は頭の中で言った。
「爪、欠けてん。昨日」
「それだけで?」
「うん。それだけ。あんたは?」
「歯、抜けてん。それだけ」
「歯が?大人の?」
「ううん、こどもの」
「まだ生え変わってないん?」
きみは自虐的な笑みを浮かべて「ちゃうよ」と言った。
「大人の歯がもともとなかったんよ。だから、歯抜けやねん」そう言ってきみはいーっと歯を見せた。下の歯が二本ないように見えた。
「そんなことあるんやね」
「そんなことあるんやで」と私の口調をきみは真似た。私はふふっと声を出して笑った。きみもつられて口元だけ笑った。
見学の生徒は私たちだけだった。雨の日の体育館はいつもより広く見えた。シャトルランの音声。ほとんどが脱落して走っているのはあと三人。脱落した生徒たちは好き勝手に雑談していた。
私たちだけ体育館の隅で並んで体育座りしていた。
この座り方は体に悪い。生徒に立ち上がりにくい姿勢にさせる一種の身体拘束だと物の本で読んだときみは説明した。私は黙って聞いていた。雨の音を。
「雨の日にはさ」と私が言いかけると、覆うようにきみが「祭壇」と言った。「裁断」だったかもしれない。とにかくそう言ったのだ。
「え?」
「ううん、なんでもない」
それきり私たちは黙った。激しく雨樋を伝う雨音が祭りみたいだと思った。シャトルランは終わっていた。先生が全員を集めてなにか話していた。
「感覚の歴史なんやと思う」ときみは不意に呟いた。
「この雨やって太古の昔から繰り返し降りなおした雨。雨粒ひとつひとつに映ってる世界があんねん。うちらみたいにな」
うん。と私は声を出さずに言った。音にだって波にだって光にだって私たちを映す世界があって、世界って言葉でしか括ることができない私たちの狭い了見にだって覆い尽くす祭りがある。
探しに行った。
虹の端っこ。
遠くへ
逃げていく
きみを
私は
追って
飛ぶ
空が飛ぶ
鳥のように空が飛んで
私はまた
きみを失っていた。
雨滴のように散らばって
にげていくかんかくのせかい
詩人には夢が見れない
どうせ誰も真剣に
私の詩なんか読まないので
好きに書かせてくれ
わたしは
「肩書き詩人」は
要りません
「物書き」では
ありたいですが
某エックスでは
やたら饒舌な輩かヤツラが
ヤガラみたいに口先ばかり
尖らせる
※ヤガラが分からない場合
検索したらいいじゃないの
詩人では全く夢が見れません
詩と人が結びつくのは
今のままでは私は私はワタクシは
許し難いのでございます
詩人では夢を語れません
何人にブロックされるかしら
何処のグループから外されるかしら
いやいや誰にも読まれず当たられず
触られず消えていくだけです
それでいい それでいいから
言わせてよ 本音なんて
ひゃくぱーせんとははけなくて
いつのまにか 120ぱーせんとくらいに
膨らまされるんだから
わたし
わたくし
詩を書きます
ひとりでかきます
わたしの世界の中心で
あなたの世界の恥の端の恥で
静かにひたすら書くのみですから
わたしは詩人ではありません
精神分析必要ございません
発達障害、鬱病、双極性
働いてません、働けません
さみしいさみしいさみしい
死にたいし
死にたいし
生きたいし
もう死んでます
どうせどうせどうせどうせどうせ
それでも書きますそれしか出来ません
もう結構です
はい 採点、ごくろーさま!
零点!
星無し!
げんじつ
くるしいとき
くるしいって
ほんきでいえないから
わたしはわたしをひとりころすことに
きめている
わたしくらいなんにんだって
なんぜんにんだっているんだから
わたしがつらいときのため
まいにちみがきあげた
まっかかなりんごひとつ
死神アキラに てわたして
飼い慣らしているんだから
きょうもあっさり二人死んだ
三人目は息絶え絶えで
虫の息よりムシノトイキ
わたしのあしもとでわたしを
うつろにみあげている
全然、大丈夫。
屁の河童!!
わたしくらい
なんぜんにんだっているんだから
雲をなぞる
ショートケーキみたいに
愛を切り分ける
ひとところに留まれない私の
足跡代わりに残していく
日が暮れれば影は濃くなる
私は私の後ろ姿を決して見ることは出来ない
捨てた郷里の影法師
夕方五時
畦道を走る子供の声と
防災無線のエーデルワイス
微笑む花よ
悲しい心 慰める花よ
この歩みに美しい旋律を添えてくれ
背負った荷物で蹌踉ける足取りを
優雅なワルツに変えてくれ
草臥れた服の上に吊るした窶れ顔に
鮮やかな紅を差してくれ
この胸の上で輝くのは
どんな宝石より一層澄んだ
得体の知れない不吉な塊のペンダント
この心を押さえつけて離さないのは
私がそれを望むから
ごきげんに鼻をかみ
ごきげんに咳をして
ごきげんに熱を出し
ごきげんに床に臥す
ごきげんに淀んだたましいが
ホップステップで跳ね回る
つかまえて
ねえ つかまえてみて
この世界を使い倒して
上手に逃げてみせるから
空と海には道がない
なら、カントリーロードは歌えない
とうの昔に馬鹿になった方位磁針が
気まぐれで示した方角へ
飛んで、走って、泳いでゆけば
いつかきっと
あの街とやらに辿り着く
坂道が多い街がいい
海が見えればもっといい
真っ白な画用紙に筆を下ろす
23.5センチのスタンプは
白い切り取り線の隙間を埋める
透明な地図を描く
私は
愛に満ちた放浪者
飛び立つ
とりのように
強くも美しくも
かけやしない
せめて
あさましく
生きることを
きめた覚悟くらい
羽音になれと
願い祈り乞うばかり
ことばくらいは
ことばだからこそ
もっと見る