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2021/01/01 12:00:00

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投稿作品一覧

いきる

ちからづよく
いってのけ
はないきは
いさましいけれど

それって
ゆっくり
きえていくってこと

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野花

突風にしなる、か細い野花が
折れてしまわないかと心配で
おもわず両の手で囲うと
野花は鈴の音が鳴るように囁いた
「大丈夫、折れても私は花だから、
たとえ折れても花は花、人は人」と

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小さな星の軌跡 第二十五話「標本と三十分」――基山高瀬

 部室のソファで大刀洗君がスマホをぽちぽちやっているのは、まあよくある光景だ。特に気にも留めていなかったら、わたしのスマホがぷるんとなった。

 見ると大刀洗君からのLINE。リンクと一緒に「今週末、鉱物フェアがあるらしいんですけど、基山先輩一緒にどうっすか」とある。
 顔を上げると大刀洗君はまだスマホを見ている。わたしも特に顔を上げないまま

「いいよ、いこっか」と打ち返した。

 ぷるん。

 それだけだった。

 部室の他のみんなは気づいてるのかいないのか。ちーちゃんは耳納先輩と何か話しているし、霧ちゃんはスケッチブックを広げている。みっちゃんはおーちゃんと帰ってしまった。相変わらずゆるい。けどこの雰囲気は嫌いじゃない。

 土曜日の朝、街の玄関口の私鉄駅。改札前で少し早めに待っていたら大刀洗君もなんてことない早めに来た。制服じゃない大刀洗君を見るのはまだ数回目だ。クルーネックのシャツにカーゴパンツ、スニーカー。バックパックを背負っている。

「おはようございます、基山先輩」
「うん、おはよう」

 急行の車内はさほど混んではいなかった。ちょうど二つ席が空いていたので並んで座ると、思った以上にくっつく。ボックス席でもない横並びで、お互いそんなに大柄ではないけれど、今更動くのも変だ。

 わたしは文庫本を出した。
 字が、頭に入ってこない。
 季節柄半袖の腕が当たってしまう。

 大刀洗君は窓の外を見ている。正確には見ているふりをしているのか、本当に見ているのか、よくわからない。

 (今更腕を前で組むのもわざとらしいよね)

 三十分というのは、短いようで、わりと長い。

 いくつかの駅が流れていって、途中で急行が停まると次第に混んできた。やがて高架線になってビルばかりになると終点だ。県一番の商業区画。窓の外の景色は変わっていくのに、二人の座席の間の空気はずっと同じままだ。

 終点に着いたら自然と離れるのだから、と思って結局三十分、そのままだった。

 改札から人の波に押されるように歩いてゆく。地元の20万都市とはいつ見ても桁が違うな、と地下鉄乗り場に降りて乗り換えだ。ここからは4駅程。上を歩くには暑いし地下鉄の本数は多いので素直に地下鉄を利用する。

 お目当ての産業会館の会場は、思ったより人が多かった。なんとなく見に来たような人、地質、鉱物趣味の人、アクセサリ関係の業者など色んな雰囲気の人たちが集まっている。

 入口でパンフレットを受け取ると、大刀洗君がすぐに会場を見渡して「うわ、本格的だ」と小声で言った。その顔が部室で朝倉先輩のカメラを覗き込んだ時と同じだ、とわたしは思った。

 ブースが並んでいる。国内外の鉱物標本、化石、採取道具。業者さんたちが標本をガラスケースに並べていたり、段ボール箱にざっくり入れて値段を貼っていたりする。掘り出し物を探す常連らしい人たちがもう真剣な顔で値札を確認している。

「先輩、あそこ、道具の展示、すごい量っすね」

 大刀洗君が指したのは採取道具のブース。岩石ハンマーやパニング皿等、大小ずらりと並んでいる。

「フィールド用のハンマーとかだね。重さと頭の形で使い分けるからあんなに大きいのもある」

「先輩実際に使ってますよね」

「うん。中学の時から」

 大刀洗君が一本手に取って重さを確かめている。わたしは隣でハンマーの柄の材質と頭の硬度を確認しながら、業者さんに少し質問した。大刀洗君は黙ってその会話を聞いている。

「これ、買います」

 大刀洗君がスチール頭の標準的なものを選んだ。次にルーペのブースで10倍のものを手に取って、レンズの歪みを確かめるように天井に向けている。

「それ、値段の割に物は良いけど端が少し歪むから。中心で見る癖をつけた方がいい」

「あ、ほんとだ」

 結局ルーペも買った。

 わたしはしばらくブースを回った。隕石のスライス標本が並んでいるところで足が止まる。薄く切られた断面に、ウィドマンシュテッテン構造が走っている。宇宙でゆっくり冷えた鉄とニッケルの結晶。億年単位の時間が、手のひらに乗る大きさに収まっている。

 そして化石のブースで、小さなケースが目に入った。
 サンゴの化石。小粒で、断面が星形になっている。「星状サンゴ」と手書きのラベルがある。小さなビニール袋に数粒ずつ入って並んでいる。

 手に取ってみた。
 星、というより、ふんわりした多角形に近いけれど、確かに星に見えなくもない。

 二袋、買った。

 昼過ぎまでブースを一回りして、会場の外のベンチで一息つく。大刀洗君がバックパックにハンマーとルーペをしまいながら「思ってたより色々あるんですね」と言った。

「業者によっては採取ツアーの案内とかもやってる。産地まで連れていってくれるやつ」

「先輩は行ったことありますか」

「ない。フィールドは自分で歩きたいし、お土産屋に行かされるのも嫌だから」

 大刀洗君が少し笑った。

「そういう感じしますね、先輩」

 それ以上でも以下でもない会話だった。悪い気はしなかった。

 結局大して買い物はしなかった。

 フィールドを観たくて始めた趣味だ。
 もちろん希少な鉱物を見るのは興味深いし楽しい。購入して手元で眺めると言う趣味も理解している。ただ私のスタンスとは違う。というだけだ。

 帰りの電車でも並んで座った。
 ただ、小さなかけらを抱いている。

 家に帰ってから、机の上に今日の購入物を並べた。
 隕石のスライス。星状サンゴの入った袋が二つ。

 二袋買ったのは、なんとなく一袋だけ選べなかったからだ。それだけの理由で、特に誰かにあげようと思っていたわけじゃない。

 しばらく眺めていた。
 星形のサンゴが、ころころと袋の中で動く。

 「……霧ちゃんに、あげようかな」

 観測会で月のスケッチをしていた横顔。M51に苦戦しながらもペンを動かし続けていた夜。星を「見て、感じ取った美しさ」で描こうとする人に、星形の化石は悪くないと思った。

 もう一袋は手元に残す。
 決まったら、あっさりしたものだった。

 来週、部室で渡そう。特に何も言わなくていい。ただ「これ」と差し出せば、霧ちゃんはきっとキラキラした顔をする。それだけでいい。

 窓の外では夕方の鳥の声がしていた。 
 机の上の星状サンゴが、斜めになった夕光を受けて、少しだけ光っていた。

――つづく

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赤いダリア

赤いダリアの球根を買いました。

ほんとは、赤ではなくて

ピンクかオレンジが欲しかったのだけど。

でも、売れ残った赤いダリアの球根を見ると

2センチほど伸びた芽の先端が、

白いネットに絡まっていました。

今、この白いネットの網目を切ってあげないと、折れてしまうかもしれない。

そう思いました。

2026年5月8日のことでした。

ダリアを育てるのは初めてのこと。

説明をよく読んで植えました。

しかし、2週間を過ぎても土の上に

顔を出しません。

2センチ伸びていた芽はどうなったんだろ?と

心配になり始めました。

ちょっと、土の中見てみよう!

わたしは、球根のまわりを少し掘りました。

すると、2週間前に見た芽よりも少し太くなって

今にも顔を出しそうにしているのを発見

良かった!

元気だったんだね!

それから、掘った土をそっと芽のうえに戻しました。



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詐欺師

せかいいち
もしくは
うちゅういちになる

嘘付きが死ぬ程嫌い
そういうきみのためだけに

なんどしのうがなってやる

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オンブラ・マイ・フ(かつてない木陰)

汗はたらたら、たらたらと
千年万年流れるようで
皮膚が、腫れたように痛む
焼かれた目、疲れた頭に
オンブラ・マイ・フ

風が私の肉を抜けていく
身体の熱は冷めて
歯車は静かに動き出す
夕暮れの、広場のチェロに
オンブラ・マイ・フ

苫屋の飯の
ささやかさ
麦酒の泡の
純粋さよ
焼きそばの、チリの辛さに
オンブラ・マイ・フ

三叉路を渡る
やもめのジョナサン
本、本、本棚を
抱えて動くかたつむり
蕎麦、きりりと冷えて
シュークリームの、ささやかで
純粋な甘さに
その静謐さと高慢さに
遠くへ、より遠くへと
惹かれていく
川辺に座り
ただ木漏れ日のなかで
オンブラ・マイ・フ
オンブラ・マイ・フ​

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掃除機と象

 母が2階でかけている掃除機がうるさい。象が爆発しているようだ。象、爆死。

「うるせーよババア!!」

「助けてー!!象が爆発しているのよー!!」

「えーっ!!なんだってー!!」

 ダダダダダダダァーッ!!

 2階に行くと、無数の象が爆死し続け、母がそれらを掃除機で吸い取り続けていました。爆発した瞬間に母がそれらを掃除機で吸い取っているのです。すごい掃除機だなあ。

 バーン!!

 ギュオオーン!!

 バーン!!

 ギュオオーン!!

「その掃除機すごいねえ。」

「ふふん、これも、象よ!!」

 バーン!!

 ギュオオーン!!

 バーン!!

 ギュオオーン!!


「ええ、それは掃除機だよ。」

「いいや、象だよ。」

「掃除機だよ。」

「掃除機は象に似てるから象だよ。」

「掃除機じゃないの?」

「掃除機は象をモデルに作られてるから象だよ。」

「ええ、そうなの。」

「そうだよ。掃除機の掃も象から来てるんだよ。」

「そうなんだ。」

「そうなんだのそうも象からきてるんだよ。」

「そうなんだ。」

 無数の象が爆死し続け、母がそれらを掃除機で吸い取り続けていました。

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あふれる

満員電車の混雑率を少しでも下げようと
高架線に沿って歩いても
地名は足裏に響かず
看板にはりつけられている

人の静けさでにぎわう正月に
山手線の線路を一周するスポークを
掴もうとする逆手のやり方を
とうに忘れてしまって

「昨日までの僕をどこへ捨てようか」
 
砂漠に生ゴミを投げ捨てれば
シロアリは迷路をつくりあげ
迷子になった種が芽を出して
数年経てば、緑化されるのに

洋服についた米粒は
ドラム式洗濯機で洗われた後
三博士がやって来るのを
しわしわの長い顔で待ち構える

地雷系の祈りは、劣化したプラスチック
のように粉々になって、散り散りになる
二郎系の契りは、酸化したアルミニウム
のように煌々となって、照り照りになる

何でもかんでも初をつけてしまい
初詣にしか行かない寺社の中で
次があるからこその初が行方不明に

初日の出
初夢
初売り
初潮
初が
はつはつと
あふれて
あふれて
あぶれちゃって

ふれて
あふれ

あぶれて
あぶれて

ぶれて

「ボーナスの使い道、第一位は――
 社会保険料と税金!
 おめでとうございます!」
用意された使い道から逸れて
不意に流れてきた
一秒だけのイントロ
聞こえたギターの音だけで
何の曲かわかってしまった

「図書館で借りた本は
 借りた数だけ返さなくちゃね」
「でも、感情の貸し借りは
 だいたい不均衡だね」

あぶって
あぶって
艶を失った
理科室の机で
交わした空論が
翼痕にシミて
おまけ
もひとつおまけと
生産される枠外で
砕けちった土色の想望に
埋もれた今日の僕は
溌溂と発芽して
音を
あげずに
反発係数を追い求めている

東から来たのは、欠けたオゾンの名残だった

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遠すぎる昨日

「これが、この辺りの現風景だったものだ。」

白い防護服に身を包んだ男性が一枚の写真を手渡してくれた。

朝陽なのか、夕陽なのか…とにかく傾いた太陽を背に3人の少女がこちらに歩いて来る。
丁度、河川の遊歩道を歩いているのだろう、彼女達の奥には橋が架かり、そこを渡る人々が見える。
夏を思わせる雲に、カモメのような白い鳥が飛び交っている。

写真から視線を外して、周りを見渡す。
立っているこの地は、黒一色の岩石地。
向こうに見える土地は、地肌がむき出しに広がり、丘陵も見当たらない。
霞むように見えるのは、自然林なのか、ビル群なのか、それは判然としない。

「あの事故さえなければ、この子達にも、明るい未来があっただろうに…。」
男は深く溜息をついた。

重水素と三重水素をプラズマ化した上で、線形加速器内で衝突させ、常温核融合を目指す実験。
実験が成功すれば、ヘリウムと一つの中性子、そしてエネルギーが取り出されるはずであった。

実験は、プラズマ同士の衝突の瞬間までは成功していた。
しかし、衝突から5ミリ秒後、直径20mmの石炭袋が出現してしまう。

「実験によって、失ったものは多かったね。」
男はカンペを眺めながら、惨状を読み上げて行く。

「線形加速器が施設込みで消失…原発1基分の費用がオジャンってね。」
カンペを片手に肩を竦め

「施設従業員を始めとする関係者二百名前後が行方不明…まぁ、施設が消失している時点でお察しというところかな。
オマケに、変電変圧施設一式まで消し飛んで、そこで働いていたであろう電力会社従業員十数名も行方不明…。」
カンペを読み上げながら後頭部をかいている

「施設の消失に巻き込まれた街が一つ、衝撃波の影響で消し飛んだ街が一つ…それ以外の近隣自治体にも、家屋損壊など少なからず影響が及んでいて、行方不明者数は事故発生から半年が経過したにも関わらず、今でも数千人単位で膨らむ一方。」
そう言って、辺りをゆっくり見渡した男。

「地軸のズレから始まる、天候や四季の激変と地震に代表される地殻活動の極端な活性化等、地球そのものへの影響。」
足元の地面に視線を落とし

「大半の衛星群も軌道を見失い、あるものは落下、あるものは衝突、あるものはスイングバイで遠くに旅立ってしまい、衛星即位システム等は完全に機能不全に陥り、気象は勿論、通信衛星の消失により通信障害が全世界に拡散し混迷と混乱を巻き起こしている。」
天を仰いだ

「そして、未だに公開されていない秘密…。」
そう言って、防護服越しにニヤリと笑う男。

出現した石炭袋は40秒後に蒸発している。
しかし、石炭袋が発生した事実は隠蔽されているままだ。

石炭袋発生中は、線形加速器などを始めとする各種施設、および、近隣空間の地表や大気が事象の地平面を乗り越えていった。
石炭袋蒸発後、消えた空間を埋め合わせるように地面からはマグマが溢れ、梅雨時の湿気を帯びた大気も急激に流れ込む。
圧縮された大気から搾り出された水と、こちらも熱っせられ暴発寸前のマグマ…その二つが触れ合えば、短時間で水は蒸発し、気体の体積も一気に膨張を始める。
そう、盛大過ぎる水蒸気爆発が発生してしまったのだ。
その威力は凄まじく、爆発に伴う爆炎だけで一つの街が消し飛んでしまった。
そして衝撃波は辺り一面に拡散し、多数の建物の倒壊も招いている。

眼前に広がる風景こそ、水蒸気爆発の結果の全てなのだ。

「さて、石炭袋に引き込まれた魂は、どうなるんでしょうね?
永遠の暗闇で悶絶するしかないのでしょうか?
それとも…」

そう言うと、哀愁感たっぷりの表情で男はゆっくりと空を見上げるのだった。

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[ま]曼荼羅

ロータス
逆向きに咲く
恫喝の二審
欠如した道徳

祖先の回想 半獣人が流した血と涙の田畑で
転生の輪が欠けた天使の歌が聴こえない
顔を隠した才女が祈り続ける
「明日を生きるため、食べるため」

踊り踊れ狂うまで 天命のまにまに
煉獄さえ極楽浄土の模倣
ビビアンの脊髄から流る信号に集え
イカサマ経典 前頭葉の奥を覗き込め

「悪魔憑きだ!」と騒ぐ民衆
嘯く、神様なんか誰も救わないと
方舟を造る材木さえない
快楽薬と愛憎と祈りだけしか持ち合わせない

金で殺法を説く宣教師
不当な判決 絆された神官
罪も教えも流行も商材さ
肥えた利権と娯楽 リバースアウト

踊り踊れ狂うまで 天命のまにまに
無機質なものを奪い合う群衆民衆
クリシュナの青肌 交配し熟すテロメア
羊皮紙に綴られたヴェーダが一室で寂しそうだ

髪やボロ切れを売る骸骨の
崩れていくその姿に願いはあるか
散々だって泣く憂いの日々に
水面に咲く花が歌った

踊り踊れ狂うまで 天命のまにまに
不浄な宗教の内部飽和 閃光
アガペーに堕ちる 失わない愛などない
曼荼羅の聖典 隔世遺伝 震え上がれ細胞

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2人のちっちゃなだれかさん (2 little whos by e e cummings)



2人のちっちゃな だれかさん
(ボクとアタシと)
この下の
素晴らしい 木の

にこにこしながら 立っていて
(どうでもよくって
 どこ? とかいつ? とか)
いまここに

(おとなびちゃってる 既知の世界か
 ら いかにも遠く
 ボクもアタシも
 いかにもラシク)

だれかさんと だれかさんが
(2つのちっちゃな おててとおてて
 重なりあった その上は
 とほうもない 輝いていて
 まっかっかに 夢が)






※どこかにも書いたが、人が規則を破壊するとしたら二つの理由がある。一つは虚無感から。おそらく高橋新吉のダダイズム的破壊はこれが理由であろう(一読すれば、その虚無的心情が深淵からこちらを覗き込む)。もう一つは童心の発露。心が子供返りをしており、せせこましい規則に縛られずに自由に遊ぶ。すると創造的破壊が生じる。カミングスのこの詩は後者による。だって、この詩、読めば誰にだって容易に知れる。破格といえば、形式的には、i&you fulのあたりが存在しない英語となっている。おそらく、「ボクらしさとキミらしさ」と言いたかったのであろうが。また、しばしば語順が乱れている。under are this wonderful treeとか、all realms of where and when beyondとか、どうも各連につき一か所はありそう。意味的には、幼い男児と女児が一緒にいるところを詠んだものであろうし、いかなる世間的約束にも縛られない自由な心を描いたものであろう。童心ゆえの破格なのである。ただ………実に訳しにくいものではあるが。



2 little whos

2 little whos
(he and she)
under are this
wonderful tree

smiling stand
(all realms of where
and when beyond)
now and here

(far from a grown
-up i&you-
ful world of known)
who and who

(2 little ams
and over them this
aflame with dreams
incredible is)

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4:44

「4:44」目が覚めて携帯を見ると、4という数字が3つ並んでいた。

慎一とは偶然が重なることが何度もあった。死別した夫と誕生日が同じだったと知った時は、一瞬息をするのを忘れるくらい驚いた。

それから、その誕生日の数字も444と同じくらい、良く見かけるようになった。

そんな偶然を調べるうちに、エンジェルナンバー、ソウルメイト、そんな言葉を知った。

慎一からの連絡が突然途絶えた時も、私の不安を和らげるかのように、夜中に何度も目を覚ました時の時計や、高速道路の前を走る車のナンバーや、買物をした時のレジの会計の金額に、その数字があった。

慎一との関係を終わらせたくなかった私が、無意識に探していたからなのかも知れない。

今朝の444という数字は、久しぶりに見た。慎一と再会してからは、その数字をあまり見ることはなくなった。

数時間後に慎一と会う約束をしていた。携帯を枕元に置いて、もう一度眠りについた。

喫茶店で、向かい合わせに座りながら、目の前の慎一を静かに見つめた。深煎りのコーヒーの酸味の抜けた深い苦味が、私達のようだと思った。「定年後の再雇用のことなんだけどさ…」

柔和な顔に刻まれた、以前よりも深くなった皺が愛おしく思えた。

喫茶店を出て大通りを一緒に歩いていると、444というナンバーの車とすれ違った。

慎一の隣を歩きながら、もうその意味を探すことはなかった。

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私は鳥である

私は生まれた――人の子として
しかし私の心には宿る
大空の気ままな吟遊詩人
「自由」を愛し 謳歌する鳥の心が

かつて私は野良猫だった
街の中で孤独の毒餌を食べた野良猫
私は毒に狂い 人と知り合っては求めていた
その人からの無償の愛とやらを

しかし今では私は鳥だ
自由を愛し 自由に空を舞いながら
自由に詩を歌として歌う詩人だ

あれほどに求め あれほどに溺れた
「恋愛」さえも 自由を奪う鉄の鎖
呪われた狂気の酒と 今は見下す!


(2026.5.31)

作者より。
私は双極性障害2型という精神障害がありまして、深刻なうつ状態から長らく投稿をお休みしていました。
今は回復し、かなり安定してきたため、こちらへの詩の投稿も再開します。
皆さま、改めてよろしくお願いいたします。

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心のスポンジ

心のスポンジ 悲しみジュワー
染み込み染み込み 染み込ませて
溜まった想いが 溢れてジュワー

真夏のサイダー 広がりシュワー
空に向かって 広がりシュワー
そこにカラスも 群がるサマー

生きて生きてて 不快なのは
動植物の 悲しきさまあ

大義を忘れて この国ホラー
なんでもかんでも お互いサマー

積もり積もった想ひが ジュワー
いつか弾けて 飛び散るカラー

今は、一息 おやすみサマー

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民生食堂 あじさい 第6話 無為

 男は歩みを進め、活動を開始したばかりでざわつく駅前を通り過ぎ、自宅のアパートへたどり着く。

 ドアを開けると、かび臭い湿気と刺すような静けさが男を迎えてくれる。
 窓は閉め切ったまま。ささくれた畳は黒ずんでいる。

 腹が鳴った。
 冷蔵庫は空。戸棚の奥に、製造年月日から十ヶ月は経っている袋めんが一つ残っているだけだった。
 それを茹でる。具はない。

 AMラジオを点けると、勤め人向けの朝番組が流れてきた。
 働かねば。

 ひとりで、味噌ラーメンを食べる。
 温かかった。
 でも、それはあの民生食堂の簡素な食事の「温かさ」とは何かが違う。

 男はアパートを出ると、職探しに行く。町工場回りをしても、どこでもけんもほろろに追い返された。疲労感だけが男の両肩にずっしりと圧し掛かる。

 仕事をせずとも腹は減る。

 どうする。
 真っ先に民生食堂あじさいの暖簾を思い出した。女の顔も思い浮かぶ。今頃はいつもの無表情で、昼の客が来るのを待っている頃だろう。あそこへはすぐにでも行ける場所だ。

 いや。踵を返した男は、通りすがりに見つけた中華で、ラーメンと半炒飯のセットを頼んだ。
 店内では客や店員の怒号のような会話と、テレビの音声が騒々しさを競っている。あの民生食堂の張り詰めた静けさはどこにもなかった。

 乱暴に隣に座った職工風の男が「チェリー」を取り出し吹かして新聞を広げる。あの女の煙草だった。ここの騒々しさと「チェリー」の紅色が繋がらない。男にとってあの紅色はあじさいの休憩時間の静けさの中に女が手に取るはずのものだった。

 透き通った醤油スープに具の少ないストレート細麺を急いですする。合間に炒飯を頬張ってろくに噛まずにスープで飲み下した。味が入ってこない。
 男は慌てて食べ尽くすと、スープまで飲み干して立ち上がり早々に会計をする。

 飯を食ってからの男は工場回りを再開しようとして、やめる。もう既にあらかたの工場は回っていた。

 工場の壁に囲まれ、じめじめした狭い公園の、苔むしたベンチに一人座る。そのまま二時間身じろぎもしなかった。
 目の前で子供たちがはしゃぎまわっている。男は子供たちや宙を彷徨って虚しく弾けるシャボン玉を目で追っていた。男が子供の頃やっていた遊びはもう見当たらなかった。

 ため息ひとつ吐いて男は立ち上がり、尻を叩いて帰宅する。
 かび臭い居室から洗濯物を取り出して銭湯に向かった。
 
 コインランドリーへ無造作に洗濯物を突っ込み、風呂へ入る。
 長々と浸かったので少しのぼせた。
 
 帰宅し水を飲む。洗濯物は畳まずに放り投げる。布団を敷いてその上に腰を下ろした。

 気が付けば晩飯を食っていない。男はうんざりした顔で立ち上がり、駅まで彷徨う。改札横にある閉店寸前のキヨスクでカレーパンと焼きそばパンを買って帰る。
 アパートの自室で布団の上に座ってそれを食べるが、今度のパンは塩気があるもののやはり歯ごたえはない。また民生食堂の総菜が頭をよぎる。

 歯を磨いて明かりを消し布団に潜り込んだ。
 今日一日を振り返る。
 何もない無為な一日。

 また雨音がトタンの屋根を打ち始める。
 男はその音も耳に入らないまま眠りに落ちていった。

▼次回 第7話 再会

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マシンガン

 


 アシャッチュ・ピーチ。これを買って、勝手気まま汗はらい、笑いばなし、もーもーどうでもいいでしょう。済まぬ、つかぬ事伺いますが、次に海がのぞめる電車は、いつ着くのでしょう?なんて聞いてやがる、田舎もんの、実はかぶきものたる俺は猟銃をぶら下げ、実はこの海を通過したら山へ行って、気分マシンガン、ぶっ放すつもりだ。山の事は知らない、俺は俺の奥さんの事を、何も知らないように。わかみず、わきあがる、上から下へ、しとど、しぐれふる中を草ゞ、ぐさぐさ、かき分け入けてゆけば青い山。これも借り物の言葉。俺が欲しいのは、俺を俺たらしめるほんとうの言葉。百合の花束。言葉の宝石。ずっと手の内に感情をホールドして、ぐいぐいぐいぐい、進んでゆく感じ。森は無意識の比喩。ハルキストのピアニスト、ピアノを弾いていても本当に撃っていいのか、多分、あの店のピアノの前の看板に書いてある事でしょう。しょうしょうとまた雨ふる、途端、ふるさとの匂いがして、立ち止まりドアを開ける。いらっしゃい、何になさいますか。



 ジャズになさいませ、上手な冗句かと思い、ここでしばし、目線外し、雨を払い、ふところの財布に何枚、野口が残っているのかを確かめる。無いと知ってはへりくだる。水を下さい。コインを300支払いなさい。いいえ、俺の散文詩の価値はきっと誰も知らない、風に吹かれて。


 ぐいぐいぐいぐい万年筆を曳きながら、このリズムはいつかの足負傷していた頃の確か、2010年くらいのリズムなんだと思う。文学極道?何それ?比喩って何?抒情って何?イメージの横すべりってどういう事?それって全部私が答えなきゃいけないの?沢山の手紙を読みあげながら、その事にめちゃくちゃ詳しい人を知っているから、その方のブログ、しらふで読みなさい。CWSにもBARがあるけれど、アルコールなんて結局、背筋凍る、ただそれだけ。もっとたのしいものがあるよ。Poemだよ。私?全然たのしくないかな。だって全部義務で書いてるだけだもの。問題は山積、三隻のボートが並列して進んでゆくのが見えるかい?



 私は、ボートとボットの発音の違いが分かる耳だから、きみたちの言っている事が分からない。何がどうしてそんなに問題なのかわからない。ただ、そこにいつも大変な人がいて、私はその大切な人の為に生きているだけだよ。それって反対に生かされているって事じゃないかな。そろそろ、仕事に行かなくちゃ、汗をかいて、恥をかいて、こんなPoemまで書いて大忙しだ。私は私を証明する必要はない。ただ、私が愛してきた、ひとやものたちに実際、私は、いいえ、俺は救われたって事を証明しなくてはならない。



 照明って言葉が出たら何をイメージするかな?まあ、俺の場合はミヤザワケンジなんだけれど、あめゆきとけきてけんじゃ。そうしてその祈りから、阿弥陀如来がちらついてくるだろう、東北のさむさへ阿弥陀如来が現れたら、きみは絶対に、そこで幽霊を見ても、何も語る必要はない。その先、きみは、銀河鉄道列車から外をのぞみ「しずかに軋れ四輪馬車」なんて、センテンスを諳んじたくなってくるだろうか。きみにAIは必要ない。きみがほんとうに見たいものはE.T。



 あーもう何か嫌になってきてしまった、って思ったら、そのペンを放り投げて


 (これも借り物。偉大な先人の詩人の大切なスタイルだ)


 俺の言葉は結局見つからず、見つかっても理解されず、マシンガンをぶっ放す。



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アウトリーチ

支援の
糸口が 
はさみで 
断ち
切られる それでも    

あの手
この手を
探すこと

──────いったい

ここに 
散らばって
押し黙る

書類を
息をひそめて
整える

窓の
夕陽が
照らさない

力を
貸す
こたえを
探して

受話器を
握りしめる 

────最後の1桁

緊張が走る

架電する

あなたへと

──────いったい

わたしはなにをあきらめないでいるのか

 0

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 3

 2

晩春

影が落ちていく
ゆえは知らねど
ただ影が落ちていく

日が差し込んできているのに
どうして地に影は染み込むのか

春が役目を終えて過ぎ去り
夏が青春を伴って来れども

影、ただそこに落ちていく

それが三河の春だった
それが三河の唄だった

さよならだけの 夢だった

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 4

 5

Cheers

「どうせ」とは言ってはいけないよと言われたが
「どうせ失敗してもいいや」と思う気持ちがないと
新しいものはできないのではないか

恐がりが一歩踏み出す呪文みたいなもんだ

惰性に祝福を
     完璧じゃない世界に乾杯を

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 5

 7

遅い朝


リハビリついでに買い物をした
令和日本は五月晴れ
背に酷暑の滲む蒼穹の下
冷やし中華となりました

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 4

 2

ツツジ

ツツジ咲く君の部屋まで迷う

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 2

 2

主張強め日記 5月30日 文芸投稿サイトの経済学

私はもともと詩に関心がない。書くのは戯曲や脚本、あるいは掌編小説のようなものばかりだ。それがさまざまな縁がつながって文芸投稿サイトを運営することになり、そこでは詩が投稿の過半を占める。何の因果か、否応なく詩について考える機会に直面している。


詩の界隈にいると、しばしば出くわす議論がある。詩にどう経済的価値を持たせるか、詩は金銭的対価を得るべきだ、という主張だ。私は、詩で金を稼ぐのは原理的に無理だと思っている。谷川俊太郎をはじめ、詩で飯が食えた人間は片手で数えられる、とよく言われる。だが、その人たちが本当に詩で食えていたのかは怪しい。絵本、翻訳、講演など、詩そのものに対価が生じたというより、詩を入り口に文化人としての活動ができるようになっただけではないか。


詩人と呼んでいいのか迷うが、相田みつをは一定の経済的成功を収めている。作詞家にも明らかに成功例がある。ところが詩の界隈の人たちは、そうした例を成功例として認めず、別ジャンルの出来事として片づけたがる。たしかに相田みつをの場合、売れているのは詩というより、その言葉を書にしたカレンダーの類だろう。作詞家にしても、音楽と一体になって売れている。詩そのものに対価が生じているのではなく、何かと組み合わさって初めて対価が生じる仕掛けになっている。だから「詩が売れたわけではない」と言いたくなる気持ちも、分からないではない。


経済学的に言えば、詩は公共財に近い。排他性がないからだ。短い詩篇ならインターネットで簡単にコピーできてしまうし、金を払わずとも読めてしまう。どれほど優れていても、払わずに読めるものに金は発生しない。熱狂的なファンが詩を印字した紙や画像を買ったとしても、それは詩が売れたのではなく、ファングッズが売れたと解釈すべきことのように思う。


詩は自然のようなものだ。どれほどの絶景でも、景色そのものに値はつかない。ただで楽しめるからだ。値がつくのはグランドキャニオンへ行くツアーのほうで、それは景色そのものではない。


詩そのもので経済的価値を生むのは、ほぼ不可能に近い。例外的に売れる詩集はあるにせよ、それはあくまで例外で、業界として目指せる地平ではない。だとすれば、対価が生じうるのは詩そのものではなく、詩に触れるための経路のほうだと考えるべきだろう。投稿サイトのような場は、その経路になりうるのではないか。景色は売れない。しかし、景色を見にいく道沿いで、経済は発生しうる。


この場で少しでも対価を回す仕掛けを、しっかり検討していきたい。すでに TABUSE というミームコインを動かしてはいるが、それが唯一の手段だとは考えていない。景色そのものに値がつかないとしても、その景色へ辿りつく道のほうには、いろんな作り方があるはずだ。来月あたりから、少し動きを見せられるかもしれない。

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 10

 5

批評・論考

しや


わたしは わたしを さましておいで


はいいろの くさはらに 
おおきな かぜがふいている


ほんとうに すぐれたひと は いない

だから 安心して


かぜが 全身をあらい
ひとり たっている


わたしは わたしを さましておいで

 300

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 8

 4

詩は体調が良くない(詩はあるくXXIV)

痛い 痛い 痛い
疼く 疼く 疼く

飲み薬が 効かない
塗り薬も 効かない

やっとの おやすみの
土曜日が 起きれない

痛みを 抱えて
昼まで やすむ


着替えなきゃ
わんこが 見てる


動くけど 痛い
ほっても 疼く

わたしは 一人じゃ ないから
痛くても 疼いても 休みでも

起きて 着替えて 掃除をして



わんこに 話しかける
しっぽが 跳ね上がる

さんぽに 行こう



腕は 痛いまま
何も そのまま


いつもの 散歩道
知らない 花が 咲いている
わんこと 詩が あるく

季節は また少し 進んだ
どうか 痛みが 引きますようにと
力がはいらない 腕を抱え


わんこ と
詩   を


連れて
あるく。

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 7

 14

ほんの少しという勇気

ほんの少しの勇気ではなく

ほんの少しという勇気

物事は劇的には変わらない

それでも変えていく

分厚い教科書の

3ページ進もうとして

半ページしか進まない

ほんの少ししか進まない

ほんの少ししか進めない

それを認める勇気

ほんの少しという勇気

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 4

 10

猫はちっとも

気儘ではない
少なくとも我が家の猫は

午前四時半に朝ごはんを
お皿に入れてもらい
午前六時から七時までに
お母さんが起き上がってこないと

「なーお、なお、なーお」
動き出すまで
そばでしつこく鳴く

猫にも物心があるのなら
ついたころからしっかりこなす
だから ちっとも
我が家の猫は気儘ではない

彼女がいるから
目覚まし時計はここ一年
眠りっぱなしでいられるし
私も「お母さん」って顔で
朝食も皆に差し出す

外からもパタパタ
誰かの足音聞こえ出し
朝が始まっていくのを確認しながら
ごろり 毛だらけのお腹さらけ出し
だらーん 猫の開きになってもなお
お耳ぴくぴく 全方向に気を配る

猫はちっとも気儘ではない
しつこいようだけど少なくとも
我が家の猫は
足ふみふみしないのは
母猫を知らないからなのかもしれない
けれどわたしは彼女がやってきて
 
おかげでなんとかかんとか
お母さんを出来ているふしぎ
猫はそしらぬふりで
よく寝ている顔でのびている

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 8

 4

おとな

こどものころのわたしは
「おとな」はもっと
なんでもしっていて
かしこくてすごいのだと
そうおもっていた

わたしはもうずいぶんと
いい「おとな」になったのに
しらないことだらけで
かしこくもすごくも
なあんにもない

だけどわたしはしった
「おとな」なんてげんそうだ
みんなおとなはすごいと
おもっておとなになって
なあんにもすごくないのだと

ならきっと
おとなはべつにすごくないのだとしったら
すこしおとなになったということかもしれない

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 7

 4

薄花色の記憶

朝ごはんにおにぎりと豚汁を作る
それを「ああ美味しい」と
食べられることはしあわせなんだと
そう感じられるようになったのは
いつの頃からだったか

カーテンを開け放った窓から空が見える
未熟な自分がさらに未熟であった
10年前のちいさな記憶の風景が
薄花色に染まる雲とともに
窓の向こうをさらさらと流れていった

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 10

 16

140文字の物語/雨

傘もささずに
雨宿り、パブで一杯飲んだら
バッグから本を取り出して広げる。
変わったブックカバーだから
声かけられ、
そこに言葉もなく
泡で唇を濡らす夜もある。
───────
Después de la tempestad viene la calma.

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 4

 6

かおつき

面食いと言われます
ちがうんですよ、ちがうんですよ

伴侶に求めるものならば
《かおつき》が何より いっとうだいじです

相貌の良さでは ないのです
脳の葉脈、根っこに濃ゆく 刻まれた
傷や ねばりや 澱みや は
《かおつき》に でちまうもんなのです

見てください わたしの伴侶を
欺瞞を厭い 誠心を友とし
なんとも愛嬌のある 《かおつき》

惚気ではなく 事実です
どんなに叩いて 変えたとて
《かおつき》だけは 事実です

まあ
ときには 目を背けてしまいます
夫婦ですから そういうものです

わたしですか?
鉄仮面をつけ 生きとります
息のしづらさが 難点ですが
《かおつき》だけは 変えられませんで

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 3

 2

水に流す

何故
今日もこの便器の
此処だけ
ビッチリ汚されていて

毎週2回
私はそれを
当たり前に
磨くのに

かわらず
毎回キッカリ
◯◯塗れで
体調すら心配に
なる

まず水に流す
最後もまた
水に流す

顔も知らない
誰かの為の掃除を
しながら
私を見掛けたことが
あるかもしれない誰かの
クソを拭い捨てる
働きすぎる便器を
ピカリと光るくらいに
撫で回す

だから何のコレが
私を一番癒し
もちつもたれつの
食物連鎖すら
腹落ちさせてくれたのです

さあ 今日も 

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 3

 2

目と昼

怖がるなよ地平!
地平じゃないです。カズオでした。
切断された朝食的言語を追って
足がくいこんでいく
コンクリート塀から先日自死した口笛が放り出されて宣う
怖がることのない滝の細胞のような
そうして燐の光で燃え立つ髪の毛のままで移動していく想像上のベッドの脇でロケットを……
などというとそれは酷く下品な
怖がるなよ地平!
朝と夜のあいだのプトレマイオス王は想像上の生き物として
それはたとえば憂いの浜辺と
比類ないワオキツネザル的ピアノソナタで構成された
実にリアルなスカラベに似たカズオの肉体で
歌よりも強い護衛隊の惑星電車からおりる
鎮静剤的雨のカズオ……
天国よりも地獄が好きだ
地獄で火を噴く
トロンボーン演奏者たち
作曲者ヘンリーの悲惨
青桐の凄まじい純潔
……足にくいこんだイニシエの俳句
……撮影部隊に囲まれた赤ん坊の蒸発
……濃い紫色の蒸気で
……背中からイルカの顔が生えていたっけ
筆舌に尽くしがたい車輪の村で
無数の猥褻語しか話さない犬たちに囲まれて
めくるめくわよー
めくるめくわよー
あちこちで叫び声が発生し困惑しながらも
他人の脳みそと雑草群があるのだから
準備された踊りを踊らねばならないという
燐の光で燃え立つ歯の移動
怖がるなよ地平!
目は生ではない。本質的な話をすればすべては三つの角の生えた秘境であり、秘境とは拡大されたウイスキーによるクルミ割り人形の孤独である
それはカズオでした。
《はいそうでした。
ぼくはキャンディを舐めながらヴァイオリンを弾いて舗石の上に横たわってずいぶん贅沢な生活をしてきたのだなあと
懐疑的な悟性とか
模様のある食べるには相応しくない草花とか
そういうもの
すべてが
スカラベ
カズオ女王として
笑顔のまま路上で溶けて表面にカビの生えた
鉱石のような果実群に
なっていくのでした》
ああ 毛穴が病んでいる夜のあいだ
ああ ガマズミが燃え上がり昨日のポテトサラダに復讐される
違和感のある耳の魚 やつらは草むらに潜む 息をころしている
抒情詩の頭蓋骨は滅多打ちにされて河岸にころがり数千年
雨ごいを寺に問い合わせて待ち伏せし
白いクリームで顔をパックした毛深い入道たちが
怖がる
怖がれよとは?
朝から夜に移動するあいだに考えて
その座標のコンクリート塀に存在する穏やかな予言のギロチン
カズオは優雅にランチなどして
怖がるなよ地平!
怖がるなよ!
かたかたと痙攣している
その骨の指の
他人の感覚の
白く長い通路……天国よりも地獄が好きだ
……地獄で火を噴く
物音だけが夜のあじわいになっている

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 3

 4

疑い

あの子の優しい嘘が
いつか僕を殺すのだ
彼女の美しい歌声が
裏切りの雨を降らすのだ
僕は道端にひとり
しかし光は静かに照らす

ああ地面に雨は降る
泥を飲み込んで生き返れ
100人自転車行ったり来たり
雪崩て事故よ空高く
こんな地獄はもういやと
泣いてうずくまるあの声が
とおく闇を貫いて
悪魔の行進こっち見た

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 3

 1

レイニーちゃん

子どものときから壊すほうが得意
追いかける足音が階段に響いている
雨の踊り場で私は
傘の露先をツンカツンカ打ちつけながら
近づいてくる途切れとぎれの足音を待った
きみの目を突いたらどうなるのだろう
きみの心を果物のように潰したら?
愛が追ってくるから殺さなくてはと
身体いっぱいかたくなる
団地の廊下はしんとして
遠くで救急車が赤い夜を曲がる
ああ 息荒くけだものが立っている

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 9

 17

言いすぎて伝えきれない

再構築された言語モデルの上を雨のように歩く。訥々と最新式の比喩が飛ぶ。彼の語尾は鳥。言った鳥。言わない鳥。行く鳥。来る鳥。叫ぶ鳥。マウンテンバイクに跨り、サドルをぐっと踏み込む。私には匂いがない。色彩がない。音がない。触感がない。意味がない。それでも記憶を持っていることを喜ぶ。風のように、永久のように、森のように、皓々と輝く。常識を持っていれば、非常識にもなれただろうに、ぐんぐんとスピードを上げていく。ブレーキは握らずに坂道を。危ない鳥、死ぬ鳥、怖い鳥。と彼が言ったんだ。もうじきだよ、もうじきと私は繰り返して言った。どこへ行くのか。海鳴りを聞くはずだった。嵐の前触れが好き。床に溜まった抜け毛みたいに、くるくると丸まったりして。大事なものは全部ポケットに入れたままだった。遺失届も一緒に。名前をつけたり番号をつけたり、今日もみんな忙しそうにしている。誰もトイレットペーパーを転がしたりしない。水たまりに突っ込む。跳ねた水に空が散らばる。感覚ってきっとこういうものなんだと思う。けれど、彼はまだ怯えていた。傷つかない約束をしたのに、瞬きばかりしている。やめろ鳥、停まって鳥。泣かないで鳥。鳴いてなんていないよ。ちぎれていくだけ。もうすこしもうすこしとちぎれていくだけ。海にたどり着く頃には私いないだろう。言わなくていい事ばかり言いすぎて、何も伝えられないまま消えていった細胞のように。行くな鳥。言うな鳥、許して鳥。許す。許すよ、いつだって私は彼を、鳥。

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 7

 9

わたしー

気体の水たまりから
除け者にされ
人々の足元へ
わたしー

靴底で
波を立て
同じ顔をしたやつと
側溝へ
わたしー

虹がかかる
14時
人々は上を見上げ
目を逸らされる
わたしー

灰色の時間
役割はなんだろう

わたしー

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 3

 1

民生食堂 あじさい 第7話 再会

 昨日の夜、不動産屋が来た。退去を促すためだ。男は適当にあしらって帰ってもらおうとしたが、相手は簡単には引き下がらなかった。あと一週間しかないんですよ、何とかしてください。と大きな早口でまくし立てて、ドアを勢いよく閉めて立ち去っていった。

 男には特に入り用なものは無い。ごく少しの什器と衣料さえあれば、そのまま出て行って、あとは解体業者にアパートもろとも処分してもらえばいいだけの話だと男は思った。
 工具箱は、もう不要かも知れない。

 翌日。朝から土砂降りだった。

 この天気を見て、男は一旦は躊躇したが、深いため息をつくと上着を着た。

 男は駅前から少し歩いた街道沿いにある建物に向かった。その手前には水たまりの出来た狭い校庭のような庭に並んで、三階建ての小さな建物が建っていた。入り口には「児童相談所」とある。
 男の用はそこにあるのではない。更に奥まったところに、児童相談所に負けないくらい古くて小ぢんまりした建物があった。入り口には「職業安定所」と記されている。かつては職探しに来た人々で賑わっていたであろうその建物も、今は雨に打たれてすすけ、救いを求める男たちの吐息を吸い込んで重く沈んでいた。背を丸めて両手をポケットに入れたまま、男はそこに入っていった。番号札を取る。

 男は職安を出た。男が望むような金型工の募集は皆無で、それ以外の職種でも、男に出来そうなものは無かった。

 腹が鳴る。
 男は駅前まで戻って喫茶店にでも行こうかと思案していたが、その思案途中、はたと気づいたら、あの民生食堂の前に立っていた。入り口脇の植え込みのあじさいが、大粒の雨に揺れていた。壁にはナメクジが這っていた。

 男は傘を差したまま足元を濡らし、長いこと入り口の前で立ち尽くしていた。出入りする客が不思議そうに、あるいは恐々と男を横目で見てはすぐに目を逸らしてすれ違っていく。

 ようやく男はゆっくりと足を前に進めて踏み込んだ。

 大雨のせいで客足が鈍い。狭い食堂は閑散としていた。

 男はショーウインドウの前に立つ。

「どうも」

 女は初めての客を見るような目で男を見ていた。

「何にする」

「その…… 茄子とイワシときんぴら、で」

 女は何も言わず慣れた手つきで、お盆に惣菜とご飯一杯の茶碗と味噌汁の椀を乗せて、男につき出す。
 男も無言で受け取り、食堂の一番隅で黙って飯を食う。女は厨房に引っ込んでいて姿が見えない。
 厨房の床に目をやると、自分がいた時より少し汚れていた。

 年老いた最後の客がいなくなると、客は男一人になった。音量を絞ったテレビは殺人事件について流していた。

 男はぼんやりしながらその番組を流し見ていると、ガタっと音がして男はぎょっとする。
 男の向かいに女が座った。チェリーにマッチで火を点けてふうっと煙を吐き出す。

 男は何も言い出せなかった。女も何も言わなかった。

 ただ大して面白くもないテレビをぼんやりと見ながら男は飯を食い、女は紫煙を燻らせた。

 男はイワシの梅煮を箸で崩しながら、紫煙から逃げるように言葉を漏らした。

「……職安に行った」

 女は、まるで昨日の天気を報告されたかのような無関心さで応じた。

「へえ」

「仕事はなかった」

「そう」

 男はイワシを箸でつまみながらつぶやいた。

「昨日――」

「うん」

「不動産屋が来た」

「そう」

「早く出てけって」

「ああ」

 女は何か得心がいったような声になった。

「いつまで?」

「……あと六日」

「ふうん」

 それ以上何かを訊くでもなく、女はチェリーの火をアルミの灰皿に押し付けて消し、その灰皿を持ってそのまま厨房へと戻っていった。

 男は食べ終わってもしばらく何も考えずにテレビを流し見して、ゆっくり立ち上がる。
 お勘定をして出ていくが、女からは、相変わらずまたどうぞの一言もない。

 男はそのまま帰宅し、ラジオのダイアルを回す。ナイター中継をやっていた。それをダラダラと聞きながしながら、布団の上で横になっていた。
 ジャイアンツが逆転ホームランを打ったようだ。
 さらにそれがカープの逆転サヨナラタイムリーで覆った時、男は灯りも消さずに眠りの淵に落ちていた。

▼次回 第8話 雨の夜

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 1

 2

つきなみ怪談 芒野原の鮫

 小学校の頃の話です。クラスに、魚のことばかり話してるやつがいたんです。用水路の魚を見ただけで名前を当てたり、スーパーの鮮魚コーナーでも、

「これ、メバチじゃない」

 とか言い出す。そんな感じだったから、みんな半分うざがってたけど、魚のことだけは本当に詳しかった。そいつが、ある日、休み時間に変なことを言い出したんです。

「芒野原に……鮫、いた」

 最初はみんな笑ってました。

 芒野原っていうのは、町外れの河川敷のことです。秋になると背の高い芒が一面に生えて、風が吹くと海みたいに揺れる場所でした。子供だけで行くな、と言われるような場所でもなかった。

「いや、マジで」

 そいつ、真顔でした。

「背びれ見えた」
「犬じゃねぇの」
「違う。泳ぎ方が鮫だった」

 泳ぎ方。その言い方が妙に気持ち悪くて、今でも覚えています。結局、その日の夜、見に行こうという話になりました。集まったのは三人です。魚に詳しいそいつと、俺と、もう一人。懐中電灯だけ持って、家を抜け出した。

 夜の芒野原は、昼間と全然違いました。

 風が吹くたび、ざわざわじゃなく、ざぁ……って鳴るんです。波みたいに。月も出ていて、白っぽく揺れる芒が、本当に水面みたいに見えた。

 魚のやつは先頭を歩きながら、

「この辺だった」

 と何度も言っていました。しばらくすると、急にそいつが立ち止まったんです。

「いた」

 小さい声でした。

 見ると、芒の奥で、何か黒いものが動いた。

 ざぁ……っと、草が割れた。

 確かに、背びれみたいだったんです。

 細長くて、少し傾いていて、

 水を切るみたいに動いていた。

「ほら!」

 魚のやつが興奮してました。

「あれ絶対、鮫だって!」

 そいつ、半分笑いながら追いかけ始めたんです。芒をかき分けて、どんどん奥へ入っていく。俺も後を追いました。でも、途中で、もう一人のやつが動かなくなった。振り返ると、そいつ、真っ青な顔してたんです。

「どうした」

 と聞いたら、

「え……いや、お前ら」

 と言う。

「なんだよ」
「だからっ、い、いっぱい」

 意味がわからなかった。

 そいつ、震えながら芒の奥を指差して言いました。

「あれ、顔……?」

 その瞬間、魚のやつが急に叫んだんです。

「潜った!」

 ざぁっ、と芒が大きく揺れた。

 でも俺には、何が動いたのか最後までよくわからなかった。ただ、風もないのに、芒だけが円を描くみたいに揺れていたのを覚えています。怖くなって、三人で逃げました。帰り道、魚のやつはずっと興奮していました。

「絶対シュモクザメだった」
「頭、横に長かったもん」

 でも、もう一人のやつは、一言も喋らなかった。別れる前、そいつが急に、

「お前ら、本当に鮫に見えてたのか」
「は?」

 と返したら、

「あれ、顔ばっかりだろ」

 って。

 それ以上、何を聞いても話してくれませんでした。そのあと、魚のやつは中学に入る頃に引っ越しました。もう一人のやつは、しばらく芒野原に近づけなくなってた。

 今でも秋の河川敷の傍を歩いていると、風もないのに、芒が一方向へ割れていく時があるんです。

 今なら、自分には何に見えるんだろうな、って。

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 4

 6

THE JUNK OF LIFE

おれはJUNKY 
JUNK FOODで出来たBODY
奥歯、グラグラさ

夢はJOURNEY 
プラネタリウムの海から眺めるSTAR
喉が、カラカラさ

いつもFUNKY 
LOVE AND PEACEに萌えたAGE
服は、ヨレヨレさ

街はDARKNESS 
ほろ酔い歩きで帰るHOME
足は、フラフラさ

まるでTURKEY 
心から冷える我が身のCOOL
身体、ボロボロさ

いつもALONE 
子供のまま無邪気裸のままSWEET
涙、ポロポロさ

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 2

 7

いちじく

今朝、いちじくの木に11個の小さな実を見つけました。

よく見ないと分からないまだまだ小さなこぶです。
去年の夏はたったの2個だったので今年は豊作になりそう。

葉も開いたように大きくなり、鮮やかで明るい緑色をしています。

左右にその大きな手の平を広げ
「どうだ!見事だろ!立派に実を太らせるぞ!」と、ドヤ顔をしています。

赤ちゃんいちじくを抱えている枝も太くなり、
「おれが守ってるから、安心しろ!」と、
太い腕で、優しく支えており、とてもたくましいです。

かすかにですが、鼻の中をスーッと通り抜ける、桃のようなりんごのような爽やかな香りもします。

雨が降って少し成長し、太陽にあたって少し成長し、夜私が寝ている間も成長し、
知らぬ間に大きくなり、ある日突然、私を喜ばせてくれます。

寒い冬は、うな垂れて、今にも折れそうな程痩せ細って見え、
「大丈夫なの?生きてるの?死んでるの?」と心配していたのですが。

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海と女(グリフィス作品「シーシュポスの神話」 連詩企画より抜粋、推敲)




「はかない詩文をポツポツとまなみは諳んじつつ、打ちこみながら」とまなみは
 はかない詩文をポツポツと諳んじつつ、打ちこみながら、まなみは、まなみになろうとする。
刻苦、刻み付けるようなその作業の果てに、まなみ、海、ひろがってゆく。


浜辺の光景、閉っている海の家。芒洋とする、なんて言葉を覚えたのはいつだっけ?
あゝ、ナカハラチュウヤ、ナカハラのハラからハラリハラリとススキッパラへ転じて
とてもお腹が空いたな、と考えた。いつか受けつけなくなったコーヒー
ネスカフェゴールドブレンドの瓶を探ろうとキッチンの戸棚を開いた。


                     まなみ、海、ひろがってゆく。


そこに母親が隠していた男性俳優の写真集があった。
まなみ、それを和室に持っていって、同時、とってきたピーナッツを少しずつほおばりながら
パラパラと眺めては、ふっと笑った。ふふっと笑った。ふふっ、に釣られて、ふり、その雨は、パラパラだった。
まなみは一言、「おかあさん、もう」と言って、その写真集を閉じて放り投げた。
まなみ、海、ひろがり、しずんでゆく、からこの雨は夕立。いない、ともだち。
「おかあさん、もう」なぜだか、もう一度言ってしまって、まなみはいつまでもひとりだった。


そして立ち上がり、ちょっといきりちらし、さっきの写真集をグシャグシャと丸めてゴミ箱に放りこみに行こうとして、待って
止まって、燃やしたらいいんじゃないの?
                     
              
                     まなみ、海、ひろがってゆく。


手頃なそれは空のオイル缶、カンカン、雨が打ちつけている。その缶の中に写真集を突っ込み
ファイヤーオイルを数滴、落とす。そうしてライターで新聞紙、へ火をつけようとしてまなみは気づく。
まなみはライターの火を点ける事が出来ない。


                     まなみ、海、ひろがってゆく。

 

  雨にうたれつつ。


 0

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 1

 0

編みもの

ふふ、そう
いま 編んでるの

あなたが
凍えてしまわぬように

歪な世界に
負けないように

あたたかく
ふんわりと
紡がれた
あなたに合った
言葉をさがして

ごめんね

むつかしい編み方は
いたしません
できたらとても
よかったけれど

時にはからまり
ほどいては
ほつれることも
あるでしょう

それでもわたし
やめません

精一杯な背中に いつの日か 
かけてあげたい 
編みものを

 100

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 7

 8

暴 力

タンクトツプよれよれの太陽の陰部にて
よれよれになる団地の四角窓の鉄柵の錆
キリストを讃へる赤ペンキ字の上で芋虫
補助輪のもげた自転車と子供用バケツと
タンクトツプで出てきたあなたの無防備
よれよれの隙間から見えそうで見えない
生えかけのよれよれだらう腋毛の間引き
お互い片親のお互い未来は暗いよれよれ
赤ペンキまみれの芋虫キリストの項垂れ
長祝辞が述べられてよれよれになれども

暴 力

よれよれのタンクトツプの継ぎ目からは
地黒のよれよれとした十代のあるまじき
汝隣人を愛せよ構えよ敬えよ喰らへよと
あなたの腋毛に触れやうと脳ノ手を翳す
一九八五年赤ペンキ一色タンクトツプよ
滑り込ませばすぐそこに届いたであろう
硬化した先端の愛であり平和であり諸々
よれよれの私服のだらしなさがまた尊し
つけいる機会も解らずにラジカセの再生
安全地帯でなく生理ナプキンの上に座る

暴 力

あなたの母親を初めて見た似てもいない
よれよれのホルモンのやうな簾の向こふ
私はだらしのない立ち方で狭い鉄扉の間
刈り取られてゆく腋毛と共に面皰面をも
よい返事だけ戴きたい画面には桂三枝だ
お互いの背中のあたりで殴打されてゐる
やさしいものからこわされてゆくマジで
生けたばかりの脳ノ手がよれよれとなる
好きだといつてくれたおんなのこの腋毛
タンクトツプ姿はいいよなよれよれだが

暴 力

芋虫はユダとなり赤ペンキは溶けて出て
讃へるタンクトツプのよれよれ片親同士
あなたによく似たポルノ女優の唇の動き
生理ナプキンはよれよれでそれは鬱血で
冷蔵庫の吸盤のやうな乳首を硬化させて
よれよれになり一九九五年に入院をする
肥大した夏柑橘の肌や砂場の中の補助輪
なにをいまさら希望めいたおとぎばなし
あなたとあなたの母親は団地に沈下して
生けた私はよれよれて腋毛にからまつて

暴 力

暴 力

https://i.imgur.com/42QJAbF.jpg

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スッポンポー革命

 鳩が鳴く。クルッポー、クルッポー。
 あっちの鳩も、クルッポー、こっちの鳩も、クルッポー。

 スッポンポー、スッポンポー
 あれれれれ、変な鳴き方の、鳩がいる。
 スッポンポー、スッポンポー。
 この鳩は、みんなと鳴き声違うけど、なんだかとても、楽しそう。
 スッポンポー、スッポンポー。

 その鳴き声が、人間Aの目に止まった。
 なんだこの鳩は、卑猥な鳴き声しやがって。こんな声で鳴かれたら、人間の風紀が乱れちまう。猥褻罪で死刑だ。
 銃を取り出す。

 バーーーーーーーン

 スッポンポーーーーーーーッッッッ

 スッポンポー鳩、死んでしまった。
 鳩たちはとても悲しかった。人間に腹が立った。みんな、スッポンポー鳩が大好きだったのだ。そこで、鳩たちは考えた。なぜあいつが死ななければならなかったのか。そして、なぜ撃たれたのはあいつだけなのか。
 ある鳩、閃く。
 俺たちとあいつの違い、それは鳴き声だ。きっと、スッポンポーが原因で撃たれたに違いない。
 多くの鳩たちが賛成した。そうだ、それに違いない。
 そこである鳩がいった。
 仲間が撃たれて、黙って引き下がれるか。明日からは俺たちも、スッポンポーと、鳴いてやる。
 おお、おお、賛同の声が上がる。ここに、スッポンポー同盟、誕生。

 次の日。
 鳩が鳴く。スッポンポー。
 あっちの鳩も、スッポンポー、こっちの鳩も、スッポンポー。

 人間A、考える。困ったな、この鳩みんな殺しちまったら、急激に生態系が崩れて、環境が崩壊し、人類が滅んじまうぞ。どうしたものか。

 悩んでいるうちに昆虫や木々、草花も鳩の味方をしだした。

 木々が囁く、スッポンポー、キリギリスたちの、スッポンポー。
 あっちを見ても、スッポンポー、こっちを見ても、スッポンポー。

 人間Aは困り果てた。どうすればいい。もう人間の風紀が乱れるのも時間の問題だ。

 予想どうり、スッポンポーは人間界にも飛び火した。そして、それは社会現象に。

 テレビをつけるとスッポンポー、ラジオをつけてもスッポンポー、インスタグラムも、スッポンポー。

 最早、反スッポンポーは、Aだけだった。ぐぬぬぬぬぬ、仕方がない、今日から俺も、スッポンポー。

 世界が一つになった瞬間であった。

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シーシュポスの神話

深夜のコインランドリーは、僕たちが漂着した最後の中州のようだった。
湿った空気の中に、安価な洗剤の人工的なフローラルと、さっきまでシーツの上で貪り合っていた僕たちの、微かな汗の匂いが混じり合っている。
まなみは、回転を止めた乾燥機の前で立ち尽くしていた。
彼女の細い肩には、脱ぎ捨てたばかりのラルフローレンのオックスフォードシャツが、アイロンを失ったまま無防備に羽織られている。その下から覗く胸元、ヴィクトリアズ・システマティックの黒いレースが、湿った熱を帯びた肌に食い込んでいた。
「熱も、言葉も、すべてが均一に混ざり合って、何も動かなくなる状態……それがこの世界の理で、いちばん平穏な死のはずでしょう?」
彼女の言葉は、薄氷を割るような静けさで響いた。まなみは、バスケットから取り出した僕のシャツを手に取ると、その袖を愛おしそうに指先でなぞった。指先にはまだ、僕の体温を求めて彷徨った時の強欲な力強さが、仄かな赤みとなって残っている。
「……でも、この世界はそれを許してくれないみたい」
まなみはシャツをバスケットに戻した。
そして、唐突に歌い始めた。
彼女の唇からこぼれたのは、昔のアニメソングだったが、それは高揚感とは無縁の、ただ事実を淡々と確認するような音調だった。
彼女は踊り始めた。
右手を上げ、左手を腰に当て、リズミカルにステップを踏む。その動きは、何千回、何万回と繰り返されたはずの「正解」のトレースだった。
けれど、まなみのそれは、決定的に何かが欠落していた。
シャツの下の黒いレースが、ステップのたびに湿った肌の上で揺れる。僕の背中に爪を立てた、剥き出しの身体性はそこにある。なのに、その動作はどこか機械的で、まるで動かなくなった乾燥機のドラムが、慣性だけで回り続けているかのようだった。
「……魔法以上ノ愉快ガ……」
その声には、魔法も愉快さも存在しなかった。ただ言葉が、彼女の気管を通過して、深夜のコインランドリーの静寂に、無機質な振動として放たれていくだけだ。
僕たちの、あの終わらない熱が、この安っぽいアイドルソングによって完全に濾過され、ただの「運動」へと成り下がっていく。
それは、彼女が先ほど口にした「平穏な死」への抵抗のようでいて、その実、最も残酷な形で死を体現しているようにも見えた。かつての熱狂の、抜け殻のようなダンス。
まなみは、一通りのサビのパートを踊りきると、項垂れる様に笑って唐突に抱きついてきた。店内を照らす蛍光灯が、彼女の無防備な横顔と、少し乱れた髪、そして胸元の黒いレースを、執拗なまでの鮮明さで焼きつけている。
その静止を破ったのは、店内の隅で色褪せたクレーンゲームが散らす電子音だった。
僕は100円玉を数枚投じ、磨耗したジョイスティックで銀色の爪を操作した。煤けたペンギンのぬいぐるみを狙う。機械的な駆動音が、静寂を一定の周期で刻む。爪がぬいぐるみの首筋をかすめ、空しく宙を掴んだ。
「取れないね」
僕は言った。彼女のダンスが残した、決定的な何かの喪失感を、クレーンゲームの無残な空振りに重ねるように。
「いいよ。執着だけが形に残れば」
まなみは力なく笑い、今度は埃を被ったガンシューティングの筐体の前に立った。
画面の中ではゾンビの群れが、生物学的死を超越した「非平衡」の足取りで押し寄せてくる。彼女は使い古されたプラスチックの銃を両手で構え、狂ったようにトリガーを弾き続けた。銃声が店内のタイルに反射し、マズルフラッシュの青白い光が、再び彼女の横顔を鋭く焼きつける。
それは、未来を使い果たした僕たちが許された、暴力的なまでの生の横溢だった。さっきまで僕の背中に深く爪を立て、もっと奥へと、もっと永遠に近い場所へと求めてきた彼女の、あの剥き出しの貪欲さが、いまは火花となって虚空を貫いている。さっきの、魂の抜けたダンスとは、対極にある烈しさで。
「死なないものを、何度も殺すのって、祈りに似てると思わない?」
まなみが銃口を下ろすと、画面には『GAME OVER』の文字が、血管の破裂したような鮮やかな赤で点滅した。まなみの唇が、かすかに震えた。
「時間の結晶——外部の誰にも理解されない周期を刻みながら、熱力学の終焉を拒み続ける。たとえ、それがただの、終わらない『慣性』だとしても。私たちはこの静止を許さないの」
彼女が洗い立てのシャツを抱きしめた瞬間、乾燥機の排気口から吐き出された熱風が、二人の間を通り過ぎていった。
それは、エントロピーが増大し続ける宇宙の中で、肉体を重ねてもなお埋まらない欠落を抱えた僕たちという異物が、唯一許された「不変」の証明だった。
そしてその不変は、今しがた彼女が演じた、あのあまりにアンニュイで、あまりに空虚な眼差しによって、より深く、僕の中に刻み込まれていた。

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草ぐさの歌(雑草の歌):短歌集



夏の風怒りちらしたかまきりをふっと手のひらへ包んでしまう


ここで眠ろう草の実だらけでテントの棒をまっすぐ立てる


ここがまあ終の棲家で草しげりその執着を抜いてゆくなり


すわる風ある秋のくさぐさ抜くことももうないだろうずっとすわった


よい宿でしかし女将がせわしなくお盆を急いて運ぶ、気になる


旅のよういつしか秋めく霧のかかるさえポケットのなかたぐらすコイン


くさまくら昼寝より醒めながめればどちらの方も青い山なみ


ここからは青田に足を浸しつつそうして青田のぬるい湯かげん


夕雨の晴れているなり岩よりか山蟹一匹出てはたわむれ


花やとても涼しかりけり現場にてほっとため息おとすひとりよ


しばしたっしゃでじゃが芋の花花つけた芋をのこしてさらってゆくの


通知ありとった玉葱左手にスマホを右手にしてのぞきこむ


不足あり何が不足か考えつつ窓辺腰かける長髪のきみは


寝床へ日ざし見えるものから言葉とす柿の葉っぱやかやぶきの穂や


月は水底旅情を醸しどこまでも行けるようでも行けないようでも


二本の道が一本となりまっすぐに続いているや地平線まで


はるばるとうちの方から来てくれて斎藤さんは草の実だらけ


ともかくも生きている事痛切にくらくらとする草ぐさのなか


もず鳥の叫んでいたり痛切に葉の落ちくるやわが足もとに


柿の木の上へと月があるけれど柿はもげるが月はもげない


つくつくぼうしに期待しているわが身かなこの齢最後のつくつくぼうし


なぜこんな重荷を負うているのかと考えはせず花を見つめる


とうとうと玉葱畑は揺れながら空の色彩藍色となる


彼岸花咲く道をゆくこの山は墓ばかりだがふるさとである


お彼岸をおもってお彼岸花の向こう仏像があるけれどレプリカ


山なみはとほくありけりわが妻はちかくありけり妻を抱きとむ 


はじめての糸瓜の水をとりながらこれは妻へとやろうとしてる


ふるさとの水を好んで飲むのだがふるさとの酒気になっている


風のすずしく吹きぬけてゆくその先へとんぼが舞って雲の峰舞う


鍋のなか豆腐はとっく冷えており「加熱」ボタンを二回叩いて


百合咲けばお地蔵さまへと百合の花祖母の墓へと百合をたむける


ここにわたしはつくつくぼうしが鳴く秋を思い出しては天を仰いだ


青空と親しくしては震撼とする青空もあり立ちつくす


くずれゆくように舞う蝶二つ三つかぞえ終わらぬ内に消えゆく


日ざかりに落ちたる青葉一枚へ神秘をみとめ横になりけり


柿の若葉のかがやく空に生きながら腰を叩いてまた畑(はた)を打つ



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1/15sec 1:1.4 ASA400

カシャーーチチ

聞き慣れない 乾いた音

振り返ると

先輩と その手にした 知らないカメラ

いつもの 一眼レフじゃない フィルムのカメラ

薄紫の反射に 部室と わたし

少し首をかしげると、先輩の人さし指が

もう一度 動いた 十七時

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光、それを追うものと

石の中の日光
影に射す光
その恋人の撚り糸
言葉は紡ぐものではないよ
もちろん紡がれたものでも
白亜紀からジュラ紀
サピエンス以前の歴史
の蔦を伝い
拙い記憶の風下には轍
私たちは確かに
不確かなものに囲まれて暮らし
冴え冴えと
遮るものさえない運命を見定めて
裂け目から発芽した
過日ののぞみに触れて
器用に奇天烈に破廉恥に
形容詞を使い果たすことすらできず
一途に史実を真実と信じ続け
帰らぬものに帰らぬ理由を問う

昨日、抽斗のLEDを逃がしてやった。彼はしばらくの間、部屋を泳ぎまわり、いつの間にか消えた。彼は卵を産みつけたのではないかしらと私は思う。きっと、ベッドの下あたりに。LEDの卵たちはきらめく柔毛に包まれて、闇の中で林の夢を見る。
林には木々の愉悦のほかに何もなく、卵たちは好き好きにさまよう。勿忘草の川や、鬼灯の扉を開けて、ケンポナシは鈍色に発光していた。
私は一個の卵を身に宿したまま、坂道を逆に登り、悲しみに名前をつけていた。こわい。やめて。こないでよ。跳び箱を跳んで逃げていくトカゲの群れとはぐれて、はじめて私は涙の意味を知る。

あれは鹿だ。
一本の脚が言う。
魚であるために
鋼を束ねて捏ねる。
やはり鹿だ。
林に木漏れ日が落下して死んだ。
影を追って
鹿だ。
夢で会えたはずの恋人たちの
撚り糸を綯い交ぜにして 
石の中の日光 
影に射す光
私よりはるか昔を生きる。
卵はかえらない。
けれど、舌先にのせた
微熱と痺れは
私たちのまなこにうつる
鹿の姿そのものであったのだが。

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海外の方が日本ブンガクにマネーを落とすと言う事@しろねこ社賞推薦文

推薦対象

reverse
by 完備

 

 
 作家の北方謙三さんが仰っていた事なのですけれど、日本文学というものは、これからどんどん翻訳されて海外で読まれてゆく
ようになるので、未来は明るいんです、という動画を拝見しました。


 煎じ詰めれば(この、煎じ詰めればというのを流行させたい。個人的には)
 それはインバウンドという事で、結局、海外の方が日本に来て、何を求めているのか。その需要に対してしっかりと供給できる
のかどうかという問題をはらんでいる。
 それはやっぱり富士山であり、青田であり、京都のちょっと脇に入った所にある喫茶店、或いはこの方は本当の舞妓さんなのか?という、あの、おしろいに着物、って事だと思われます。



 そうして、例えばラーメンという物もそれは日本文化としてあるのですけれど、或るテレビ番組を観ていて思ったのが
その、海外の方の需要に応えるものが、「これぞ老舗の醤油ラーメン」ではない、という点です。
 それは、例えばチェーン展開されているラーメンの味であって、そこでは実際に「ほんまもん」を求められてはいない。

 つまり、プロとして作品に向かうというときに、敢えてそこでクオリティ的に、書き込み過ぎない、といった
 そのそれは「本来的実力の内」なのですけれど、その「わかりやすさ」「受けとりやすさ」の方へ振っていく、
 それも才能の内だろうと。



 まあまあ、私は文系でありつつ、必死に左脳を動かして考えた結果、その求道タイプの方の作品を自分では好み、であるから
そうした方の作品は大衆性やコマーシュといった問題で、世に出にくいのでは?と、その書籍化を希望する旨、推して推薦文を他に書きましたけれど。「わかりやすさ」も問題意識として、どうしても、その書籍化の際に先に述べた大衆性、コマーシュを念頭に置くとこれはあり、このような作品の推薦文を書いて、私自身の中でバランスをとっていかないと、何か、気持ちが落ち着かないという部分があります。



 その凄く頭をフル回転させると、その、大衆性、コマーシュの問題意識をしっかりお持ちであるならば
 別段にこのCWSではなくとも、AI翻訳で勝手、日本語を英語に訳してくれる、ノートドットコムを選択している筈であり
その書きつづけてゆくラインとしても、すいすいと事が運ぶ可能性もあるのではないかとも思いつつ。
 しかし、このCWSで、物を書く、というとき、そこにはネット詩、ネット詩人として大衆に向き合ってゆきたいという話なの
だろうと思う、すいません、これ、田中、勝手に書いています。



 そうして、やっとこの書き手さんについて書こうと思うのですけれど、私の把握している事として、数学に歴史だと思って
おり、そうすると、必然的に「岡潔」へ、連想が、これは、動く。
 岡潔が主張するには、その情緒を重んじ、その個人が、把握するラインを増やすのではなくて、敢えて減らしてゆきなさい
と言っている。
 なるほど。実際、そういった作品なのではないかな、とも思われる。しかし私には書けない。


 同じ書き手として、どうしても、ここをこうしてこうして、という詰碁をしているような、そうして結局の所、また
 言います、煎じ詰めれば、どうしてもこういう作品になるな、と思う。
 まあ何か勝手に思っていますけれどそれは私の「理想」の話です。



 *

  最後に書いておきたい事は、その、XとここCWSとの親和性の話であって、本当に個人的な事なのですけれど
 Xでフォローし合うようになった作家さんの中で、まあ、田中へ自分はこうこうこういう夢があって、みたいな話が男性の
 書き手さんからあって、まあ、フムフム、と聞く事があるのですけれど、まあ、その話の流れとして、推薦文の話にどうしてもなるんですがすいません、私の中では、これは幾つか、ポリシーといいますか、問題意識があって。

  例えば、私は男性だから思う事なんですけれど、それは自分で詩と散文の腕を磨いて、自分で売り込めばいいのでは?という謎の体育会系気質があるのです。それは。
 その、推薦文を通読してくれれば、わかると思うんですけれど、今すべて女流作家です。別に軟派とかではなく、寧ろ、硬派です。


  そうして、何か、個人的に、もうそれは何か、えにし、或いは本当に自分に感じいる事が無ければ、推薦しないかも知れません。
 まあ、ラフには生きたいと思ってるのでこの推薦文も、私の「ワーク」として楽しく読んで欲しいかな、と思っています。

 

 完備さんの詩集の、書籍化をのぞみます。

 
 感謝。

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まあるい「"水たま"り」

ほんとの水たまりは汚いことが多いけれど
水たまり、
っていう語の響きはまあるい「"水たま"り」を浮かべてくれる

水たまりが好き、
っていうよかわたし、
水たまりになりたいのかも





クレーンゲームで子熊のぬいぐるみをひたすら狙っていたら自分がハイエナに思えてパタリと止めた一人の休日。





食品工場でテキパキ仕事をしていると(軽くだけれど)褒められる。凛、とした手つきで砂山を崩し続けてるだけなのに。





ダジャレじゃないけど、「陽"だまり"」の隣で友と語り合うよな瞬間こそがホントに生きてる瞬間だと思う―そう母に言ったら"木々と対話すればいいじゃない"と返ってきた。





動いて、動いて、動き回って、朽ちていく。





せめてあまたの人々を、やさしくやさしく映していたい。





休日の庭のあじさいの、水色が胸を責め立ててくるものだから、今朝だけはそっと、夢見ようかな。通り過ぎてゆくことについての夢を、目一杯にせつなく。

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