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2021/01/01 12:00:00

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投稿作品一覧

自称詩人


誰かを救いたがってる自称詩人は


溺れかかっている誰かに


自らの手ではなく 


詩を投げつけるので


いつだって誰も救えなくて


いつもいじけてばかりいる





自分のことしか描けない自称詩人は


浅はかにも 他人の作品に


あーだこうだと文句をたれては


今日も紙面上にべったりと


ため息と自嘲と自意識過剰を貼り付けて


ニヤニヤ笑ってばかりいる





☆★*〜*★☆*〜☆★*〜★☆
 
  過去作です


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JOKE DOG

黒犬の頭部が指鉄砲に擬態する
これで警察を指さして笑えた
次は自分が笑われる番だ
引き金を引くたびに
狙った警察の口角を引き上げる
何発も撃つ
口の両端が耳に達するまで
犬死にするには惜しいヤツだと
警察が笑う
この笑いの種はたったひとつ
誰も絶望していないこと
HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA
パトカーから降りた警察たちが
腰の拳銃を抜き口々に叫んだ
「お手!」
「お座り!」
「待て!」
首から上だけ逮捕され
横たわる胴体は尻尾を振っている
「首輪はどうする?」
「大丈夫、
 どうせ逃亡するだけの脳がない」
動物病院の明るい待合室
里親募集のチラシが貼ってある
飼い主さんに伝えたいこと
 頭部は服役中
 ※顔写真は別途お送りします

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ばかもの詩人

誰か、見つけて
もらうために
言葉を、差し出す
誰かにわかって、もらうために
形を整える
偶然のふりを、して、訪れた必然
ひとつずつ、死んでいく
そのたびに、言葉に、
ならなかった、ものが

わたしの、ものではなくなる

プラトンは
詩人を、追放した
詩人を追放したのは、
哲学者だけだったのか
わかりやすく、自分を語り
わかりやすく、他者を理解し
わかりやすい、感動を交換する
しあわせそうな、なかで
詩人は、自らの、手で詩人を
追放してきた、のでしょうか

詩は、世界を、言葉が、あるのでもない
一行が、自分が、知らない場所へ

それを魔術と
いうの

詩の復興ではない、詩人の再魔術化と、いうやつ

詩人、肩書など、いらない
詩人、必要と、する世界を
もう一度、つくろうか

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五行歌「くやし」

値引きシールのついた

唐揚げだけでは

満たしきれない

箸にも棒にもかからない

空腹とくやしさ

https://www.instagram.com/p/DfPkGzbGhZ0/?psln=eHpjZTJ2cWt3ZGd1

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ぐうたらな朝の唄──やや近代詩風に──

朝のことだ
目覚まし時計の大鍋を叩く音が
夢の硝子をかち割って
俺を外にほっぽり出した

やむなく俺は懇ろに愛し合った
女との別れを惜しむように
無理やり布団をひっぺがし
ぬるくなったビールでも飲む気持ちで

反対方向に行きたがる犬を
いやいやなだめつつ
リードを引っ張るように
職場へ向かう支度をしたのだが

外へ出てみりゃ空は赤ら顔
そのうえ大口開けて
いびきをかいている始末で
身分の違いを見せつけていた

その下ではビルというビルが
恥ずかしげもなくそれどころか
朝日を浴びて堂々と
灰色の陰茎をおっ立てていた

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「毒親克服」としてのクリエイティブ・ライティング

ででででででん!!!!!!!!!!!


 
でででで家の長男としての自覚がないのか!!!!!!!!!

 

父の口癖である。正確に言えば、口癖とともに、太鼓が鳴る。
でででで家は、郷里では知る人ぞ知る伝統ある旧家である。戦国の世、城の陣太鼓を打つ役目を務めたことから、太鼓の音がそのまま名字になった。由緒正しい家名として知られており、民明社ムック「ニッポンの歴史的名字100選」にも選出されている。当然、町内会等でも尊敬を集める立場にあることは、言うまでもない。

 
でででで家のリズムには、決まりがある。「で」を四つ打ち、最後に「ででん」で締める。ででででででん。それが、でででで家に代々受け継がれてきた拍子である。父は、その拍子を、太鼓だけでなく、言葉にも求めた。でででで家の長男である以上、その自覚をもって、でででで家の拍子で発話しなければならない。言葉は四拍区切り、最後に「ででん」で締める。それ以外の言葉は、でででで家の言葉とは認められない。


十歳の朝、私は「おはようございます」と言って、父に太鼓のばちで脳髄を強打された。正しくは「おはよう ございま ででん」であるというのだ。拍子の崩れた言葉を口にしたでででで家の者は、血反吐が出るまで殴られ矯正される。それが、でででで家に代々伝わる太鼓の掟である。毎日のように殴られたが、それでも私は父の拍子を正しく守れなかった。四拍で話そうとすると、必ず言葉がつかえ、最後の「ででん」まで辿り着けないのだ。


学校では、私の言葉は物笑いの種だった。就職の面接では、志望動機を聞かれて「すみとも しようじ おんしゃを しぼうし ででん」と答え、面接官に黙って睨まれた。まともな社会生活からは隔絶せざるを得ず、でででで家の者である以上、ごく普通の生活、ささややかな幸せは諦めるしかなかった。

 
いまは、郷里から離れた町のアパートで、一人で暮らしている。誰とも話せないので、肉体労働で日銭を稼ぐしかない。行き場のない言葉を、私は夜ごとノートに書きつけ、文芸投稿サイトに詩として投稿するようになった。コメントは、いつも同じだった。何が言いたいのか分かりません。でででで、とばかり書いてなにがしたいのですか?

 
私は言葉を書きつけているつもりだった。しかし、読み手からすると、私の文章は「でででで」としか読めないらしい。ある日、文芸投稿サイトの運営者を名乗る、田伏正雄さんという方から、一件のメッセージが届いた。
「意味というより、音のために。そんな集まりがあります。そこでは、みんな仲良く、あなたが排斥されることはありません」

 
本文の下に、招待リンクが貼られていた。クリックすると、サイトの中のチャットスペースに飛んだ。
そこでは、誰も言葉を書いていなかった。げばば。ぴぴぴ。むむむ。でろでろ。誰かが音を書き込むと、別の誰かが自分の音で応える。


私は書き込んだ。ででででででんと申します。これからご指導ご鞭撻のほど、宜しくお願いいたします。
何が言いたいのですか、とは、誰も聞かなかった。誰かが「ぼぼぼ」と書き込んだ。

 
彼女を意識するようになったのは、グループに入ってから三週間ほど経った夜のことだった。私が何かを書くと、いつも少し遅れて、同じ音が返ってくることに気づいた。


「ぼぼぼ」


他の誰かが書き込んだときには、ぼぼぼは現れなかった。私の音にだけ応えていた。
プロフィールを開くと、性別の欄には「女性」にチェックマークがつけてあり、自己紹介の欄には「ぼぼぼ」と書いてあった。

 
私たちは、毎晩、音を交わすようになった。ぼぼぼが何を言っているのか、私には分からなかった。しかし、この人は私と同じ種類の人間であると信じることができた。私が何を話しても、でででで、という音としてしか受け取られない。それと同じように、彼女の言葉も、ぼぼぼ、としか聞き取れないだけで、彼女の側では、何か意味のあるメッセージを打ち込んでくれているに相違ない。彼女はきっと私に何かを伝えようとしてくれているのだ。

 
ある時、私がチャットスペースに書き込んだのと同じ瞬間に、彼女も書き込みをしたらしい。二つの音は重なって、周囲には「でででででぼん」と読めたようだ。「でででででぼん? なんだそれは。晦渋を気取っているのか?」そうした疑義を呈する幾つかのコメントの後に、田伏正雄さんはこう書き込んだ。「音ではなく、意味が生まれてしまいました。観念的な言葉を、私は好みません。Bye」

 
なぜか文芸投稿サイトをアク禁になった私とぼぼぼは、それから、毎日のように別のアプリでメッセージを交わすことになった。


毎晩聞いているうちに、彼女の「ぼぼぼ」には、さまざまな表情があることに気づいた。
「ぼぼぼ」とあるときは、雨が降っているような気がした。
「ぼぼぼ」とあるときは、少しだけ嬉しいことがあったのだと知った。

 
ある日、私は彼女に「会いたいです」と書いた。
すると彼女から、ぼぼぼ、というメッセージとともに、地図の位置情報とカレンダーの招待が送られてきた。この日時に、ここへ行けば会える。そういうことだと思った。

 
地図は、電車で三時間ほどの、海沿いの小さな駅を示していた。駅に着き、無人の改札を抜けると、ホームの端のベンチに、女性が一人、座っていた。
私が近づくと、彼女は顔を上げた。

 
「ぼぼぼ」

 
画面の中で何百回も見た音だった。けれど、声で聞くのは初めてだった。思っていたよりも低く、柔らかな声だった。


「はじめて会うのに、はじめて聞く音ではない気がする」


「ぼぼぼ」

 
「あなたの言っていることが、私にはわからない。でも、あなたの言いたいことが、私にはわかる」

 
「ぼぼぼ」

 
「聞こえないものを聞こうとするとき、人ははじめて、耳を持つのかもしれない」

 
「ぼぼぼ」

 
「私たちは、わかり合えない。だから、いつまでも、わかろうとし続けることができる」

 
「ぼぼぼ」

 
「あなたが黙っているとき、私には、あなたがいちばんよく聞こえる」




 
釣り竿を担いだ老人が、私たちの後ろを通りかかり、足を止めた。
「お前さんたちは、さっきから何をしゃべってるんだ。ででででぼぼぼ、しか言ってないじゃないかアホウ」。
老人は首をかしげて、行ってしまった。

 
「ででででぼぼぼ」


と私は言った。

 
「世界には、それしか聞こえていない。でも、私たちには、それ以外のすべてが聞こえている」

 
「ぼぼぼ」

 
「私と一緒に暮らしませんか」

 
「ぼぼぼ」


私たちは一緒に暮らすことになった。やがて年月が経ち、私たちは結婚することになった。結婚するなら、両家に挨拶をしなければならない。そう言い出したのは、ぼぼぼの方だった。郷里には、もう十年以上帰っていなかった。帰るたびに、太鼓が鳴るからだ。

 
「あなたを、父に会わせるのが怖い」

 
「ぼぼぼ」

 
「でも、あなたを、父に会わせないのは、もっと怖い」

 
「ぼぼぼ」

 
「戻りたくない場所へ戻ることでしか、辿り着けない場所がある」

 
「ぼぼぼ」

 
十年ぶりに家の門をくぐると、蔵の前に、父が立っていた。背が縮み、髪は白くなっていた。それでも、その手には、ばちが確りと握られていた。私たちは、太鼓の音とともに座敷に通された。私は、畳に手をついて、言った。「このたび けっこんの ごあいさつ」。最後の「ででん」まで、辿り着けなかった。

 

ででででででん!!!!!!!!!!!

 
でででで家の長男としての自覚がないのか!!!!!!!!!


 
十年ぶりに聞く、父の口癖だった。
私の身体は、十歳の朝と同じように、勝手に硬直した。父は、ぼぼぼの方に向き直った。

 
「でででで家の長男の嫁としての、自覚はないですか」

 
「ぼぼぼ」


「でででで家の長男の嫁としての、自覚はないですかと聞いている」


「ぼぼぼ」
 

ぼぼぼ、としか返さないぼぼぼを前に、父は次第に激昂しはじめた。

 
「ででででででん!!!!!!!!!」

  
「ぼぼぼ」

 
「ででででででん!!!!!!!!!」

 
「ぼぼぼ」

 
「ででででででん!!!!!!!!!」

 
「ぼぼぼ」

 
父の額に、汗が浮かんでいた。
七十年あまりの人生で、太鼓の音と拍子に屈しない人間に出会ったのは、初めてだったのかもしれない。

 

「ででででぼん!!!!!!!!!!」


 
やがて、父の声と、ぼぼぼの声が混じり合った。

 
「ででででぼぼぼん!!!!!!!!」


「ででででぼぼぼん!!!!!!!!」


「ででででぼでぼん!!!!!!!!」
 

「ででででぼぼでぼん!!!!!!!!」


「ででででぼん!!!!!!!!!!」


そして、父は笑い始めた。私は父の笑う声を、はじめて聞いた。父はもう一度言った。

 
「ででででぼぼぼ家の長男としての、自覚がないのか」


私は答えた。


「自覚があります」


四拍ではなかった。
最後の「ででん」もなかった。
でも父は、ばちを振り上げず、にっこり微笑んだ。

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純粋詩人

山中のいおりで一人書き
ただ積み上げとけば
見つけてもらう事もない
差し出す事もない
偶然も必然もない
言葉は自分に向けてある

自分を語る必要もない
他者を理解する必要もない
感動を交換する必要もない

肩書きもない
しかし詩だけはそこにある

さあどうぞ

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デパートの食堂でマジェマジェ


 
 芝居の招待券をいただいた。場所は日本橋の三越本店の中にある劇場。
開演まで時間があるので劇場の上の食堂に行った。ここはかの有名なお子様ランチ発祥の地といわれている。舌平目のボンファムはメニューにまだちゃんと残っていた。

実は先週末まで喉の腫れで入院していて、バターに飢えていたのだった。病院で食べたカラスガレイのムニエルのなんとうまかったこと。かすかにバターの香りのするソース。

制限の中から創造されるものはたくさんある。世俗の道徳の制限を受ける文学もそうだし、排気量660ccの制限を受ける軽自動車もそうだ。けれど修養が足りない自分はバターをたっぷり使った一皿を欲してしまう。



 ボンファムという料理は、舌平目を白ワインとフュメ・ド・ポワソン(魚出汁)でポシェして、煮汁をリデュイールし、さらにオランデーズソースをかけてグラタンのように焼き上げるという、手間のかかる料理だ。

めんどくさく古臭いので街の食堂ではほとんど見ない。「いったい、いくらするんだよ!」との声もあがるだろう。でもマッチングアプリのデートでナシ判例されるようなチェーンの居酒屋のコース料理のほうが高い。東京の豊かさというのは、こういう化石のような古典的な料理が、デパートの食堂で当たり前のように供されていることなのかもしれない。

和牛にウニをのせたような料理こそ東京の豊かさだと思う人も最近は多いようだが、高いものに高いものを重ねれば豊かになるというのは、アメリカ的な発想だ。

戦前、パリにあるプルニエという魚介料理の名店の厨房で、日本の料理人が幾人も学んだ。日本の西洋料理にはさまざまな系譜があるが、舌平目のボンファムは、プルニエの系譜に連なる由緒正しき西洋料理である。


 
 しばらく待った後、料理が運ばれてきた。茶色の液体の中に、白い身が浮いている。まったくSNS映えとは関係がない。重厚なシルバーを持ち上げて舌平目の白い身を崩す。

シャンピニョンの香り、ソースの酸味、バターのコク、そういうものがまじりあわずに押し寄せてきて、むっちりした白身と響き合う。たまらない。点滴棒を眺めながら夢にまで見たソースの海。平皿に盛られたライスをソースに投入する。マジェマジェ。

自分のマジェマジェは、歌舞伎座の通り向こうにあるナイルレストランの大番頭ラジャンさん仕込みだから、デパートの食堂でも浮かないくらいの品位があるんだ。スープのようにさらさらのナイルのマトンカレーだってきれいにマジェることができる。

とはいえ、デートでやったら、「育ちが悪い食べ方だ」と即断罪され、「こいつはナシ」にされるであろうことは疑いない。テーブル担当は笑顔を浮かべて、「ボンファムが本当にお好きな方はライスを頼まれますね」と云うのだった。

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むらさき色

うつくしいうつくしいあの青の

正体をだれもしらない

ながるながるあの赤の

痛みをだれもしらない


ゆいいつ何でもしっているのは

だれも見もしないろじうらで

いちりんひっそり咲いている

むらさきの花

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【あと5名に1111コイン贈呈】CWS作品評募集

先日Talkに出した「しろねこ社コンクール推薦文募集」の予算が9999コインに増えましたので、募集対象を拡大します。

https://creative-writing-space.com/view/Discussions/discussion.php?id=58
①上記記事で募集した、2026年しろねこ社コンクールのための推薦文。
②上記では対象としなかった、2025年以前の投稿作を対象とする推薦文。
③CWSユーザーの作品を扱う批評・論考。対象の作品はCWS投稿作品に限らない。対象の作者はアカウント停止処分を受けていないユーザー(My Spaceのバッジで確認可能)に限る。
④Community Exhibitionへの展示作品登録(保有コイン数6000以上のユーザーにのみ可能な特権行使)。

2026年12月末日までに上記4種のいずれかを投稿ないし登録なさった先着9名のかたに1111コインを贈呈します。善良なスペーシアンにふさわしい文章でさえあれば内容は問いません。ぜひお気軽にご応募ください。

●推薦文の投稿方法
①推薦したい作品を開く
②画面左上端にある「>>」ボタンをタップ/クリック
③展開したボックスから「推薦文を書く」を選択
④開いた投稿画面で推薦文を作成・投稿
※この投稿は保有コイン数1000以上のユーザー(Active Writer)の特権です。

●Community Exhibitionの登録方法
https://creative-writing-space.com/view/Exhibitions/index.php
①登録したい作品のURLをコピー
②上記リンク先「CURATOR'S PICKS」で「Add Exhibition」をタップ/クリック
③開いた登録画面の「対象」に①のURLをペーストし、200字以内のレビューを書き込んで保存
※この登録は保有コイン数6000以上のユーザー(Community Member)が月に一度だけ行使できる特権です。

またこの記事のコメント欄を、必要なかたが必要なときコインを稼げる場として開放します。澤あづさはご質問やご指名のない限り返信しませんので、お気軽かつご自由にお使いください。

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批評・論考

「発酵」


レプリカみたいに綺麗な花
見掛けたあと

聞こえてきたアナウンス   人身事故です

今日に身を置く
カニ

満月へ一斉に横歩き
カサカサカサカサ

いずれ
車に轢かれるのに

発酵した思考は
綺麗な菓子屋で花の形のクッキー連れて

あの子の顔
浮かんで

まだ大丈夫

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「友」



下戸のくせに
酒飲みの口調 芯の話
落ちないラリー

ビール追加
給料日にはケチな大富豪

いつもの唐揚げ
口いっぱいに熱がる君


売店の唐揚げパン
2口目で跡形もない

塾帰りの缶ジュース
勝手にボタン押す

コーラにむせる君


お会計
冷たい風当たるシラフの君が

お婆ちゃんになっても
お惣菜持ち寄って集合ね

って言ったんだ

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勾留の前に

駅前で、手を後ろに組む癖が抜けていないんだなあとあなたの存在に気付きながらなんだか可笑しくなる。

メールで何通も交わしたやりとりの中で実際に会わなくては表情や仕草がわからないじゃないですかと
律儀に日程は合わせてくれるところも、そんなところも、あなたは、かわらない。

わたしは思わずはにかんでしまう。あ、かわっていないんだとまさか、五年ぶりに会えるなんてと、近づいて行く。



2026.11.01

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猫は季節を知らせる

冬がくるよ
猫は囁いた
私の耳元で

足の裏から
冬の足音が
響いてくる

水の温度や
耳の冷たさ
冬がそこに

さあ厳しい
冬の準備を
しなくちゃ

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呼吸する言葉

声に出した言葉があるということは
声には出せなかった言葉があるということ

もう吸えないくらい吸って
もう吐き出せないほど吐き出して

声にならなかった言葉よりも
いま声にしたい言葉を見つけて

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空白

目が覚めたら
何かが変わっていたけれど
なにが変わったのかは
わからなかった

いつもの道に
ぽっかりと空白ができていたけれど
そこになにがあったのかは
もう思い出せなかった

ふいに流れてきた曲を
うろ覚えで口ずさむ
知っているはずの題名は
ちっとも思い出せない

記憶はいつも月のように
満ちたと思えばまた欠けてゆく
記憶はいつも空のように
明けたと思えばまた暮れてゆく

埋められない空白も
思い出せない題名も
いい加減な思い出も
全部そのままでいい

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そんな10月のこと

金木犀が咲いていた
あの香りを求め求め近づくも
花が少ない
それに香りも薄い
ああ9月の長雨のせいだろう

向こうから来た黒猫が
同じ道を曲がる
しばらく並んで歩く
黒猫は振り向きじっとこちらを見て
倉庫の中へと消えた

開け放たれた家の窓から
ふんわり甘い匂いがする
どこかで嗅いだことのある
そうだこれは
ホットケーキの匂いだ

ただ、そんな10月のこと

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YOU CAN FLY!!

馬鹿野郎が間抜けヅラして俺に、普通ってなーに? と聞いてくるから
『鳥なら、鳥の巣を企画して設計する。蜘蛛なら、蜘蛛の巣を企画して精密に設計して構築する。人間も目標を企画し、設計して達成する。この連続を生きることだよ』
と答えてやった

佐野元春の歌に『くだらねえ大人には、なりたくない』って歌詞があったな
骨のない、頑固さの微塵もない異常な話をデカい声で話し続けるチンピラ利用者
一度で良いから、筋の良さを見せつけてその筋通してみろよ!

人として空を飛ぶには、夢見る心があれば良いというのは、子供向けにでっち上げられた平たい言い方だぜ
大人として空を飛ぶには、どうすればいいか?

無駄のない設計と、ユニークな企画。そしてそれを達成する構築力だ!

つまり、プログレだよ。
ピンクフロイドであり、キングクリムゾンだよ
パンクに唾飛ばすんじゃねえぞ、チンピラ野郎!

原子心母、狂気、21世紀の精神異常者……くだらねえ、くだらねえってパンクは否定して壊していった
後に残ったのは、燃え滓みたいな音楽シーン

人類は終わったと思ったが違った。人類は少子高齢化社会を経て、少数勢に戻り、もう一度復活する!

考え企画しなければ、生き延びられない。必要設計だけが、最後まで残る
人の作ったものに甘え依存して生きる、年金生活者たち

外国人労働者は、現代日本人より逞しく働くという。コンビニの店員や、福祉で働く外人を間近で見たが、戦争や紛争を経験し、生き延びてきた人も多く、凛々しい顔をしてるなあ

ネットを見ていると、他虐自虐を繰り返すバランスの悪さが目立つことも
ピースフルは何処へ行った? 甦れ左翼!

見えない心に向かって話し続けても、良心が内面化されていないのだから、話す意味もないのだ
バカやろに 集るハエごと フェイドアウェイ

リズムとノリだけは勢いがある若者のゲロ話が、真夜中のグループホームに、今日も響く

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あなたは結局


わたしは可能性を潰す天才だから
わざわざ一段空けて
河川敷の石段に座る。

どうなるだろうか。
あなたはこの
距離についてふれるだろうか。

わたしは可能性を喰らい尽くす天才だから
もうそろそろ
詰めてくる気配はしている
なんとなしに
握るイニシアチブ

あなたは結局

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言い訳は、「夜空の星を見たかったから」



胸の中に積もった今日は
あまりに重すぎた
窓の外では
誰かの部屋の灯りが
ひとつ
またひとつと消えていく
まるで世界が
静かにログアウトしていくみたいに

取り残された僕だけが
暗い天井に浮かぶ
名前のない不安を眺めている

明日になれば
ちゃんと笑えるかもしれない
でもその「かもしれない」が
今夜はやけに遠かった

だから鍵を回した

自転車を押して
眠った住宅街へ出る
誰にも会わないために
誰かに見つけてほしいみたいな顔で

ペダルを踏む

一回
もう一回
心臓の代わりに
音を上げてくれ

不安とか
悩みとか
言葉にした途端
安っぽくなりそうな苛立ちとか
そういうもの全部を
後ろの荷台に積んだまま
走っている気がしている

光
影
光
影

街灯の下を通るたび
影が伸びて縮んでまた消える
進んでいるのか
同じ場所を回っているだけなのか
わからないまま
それでもタイヤだけは
確かに前へ転がって見えるから
おそらく進んでいた

宛てもない
反抗心に
言い訳を充てるのなら
「夜空の星を見たかったから」と
応えておこう

なぜだろう
それだけで少し安心する
誰も僕を知らない
僕も誰も知らない
それなのに
孤独だけが
妙に親しい顔をして隣を走っている

信号が赤になる
止まった瞬間
胸の奥から
見ないふりをしていた無いもの強請りたちが
一斉にこちらを向く
そうは言ったても
未来はまだ曖昧で
夢は輪郭ばかりで
自信なんて
最初から持ち合わせていない

それでも
諦めるには少し早くて
期待するには少し疲れている
そんな年齢の真ん中で
僕は
上手くいく呼吸を今探している

青になった信号が
続けろとでも言うみたいに光った
だからまた走る
夜を切り裂いて
誰の地図にも載らない道を
誰の正解にも属さない速度で

走る
走る
走る

宛てもない
反抗心に
言い訳を充てるのなら
「夜空の星を見たかったから」と
これぐらいで
済ませておこう

やがて街の輪郭が薄くなり
空だけが広がった場所で
ふと顔を上げた
そこには
消えそうなくらい小さな星が
ひとつだけ浮かんでいた

何億年も前の光なのに
今の僕を照らしている
それが少し可笑しくて
たくさん泣きたくなる

嗚呼
世界は案外
優しくなんてないけれど
完全に見捨ててもいないんだな
そう思う

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たぬきちゃん

わたしのかおって
シルエットって
きっとたぬき

日本人には
ひーじょーに親しみやすい
雰囲気だろう

旅先を歩いていようが
道を尋ねられる
とにかく「声をかけやすい」
ただし
ナンパなど一度もされたことはない

つまり、そーゆーことだ。

わたしは たぬきちゃん
そろそろ お望み通り
化けてしまってもいいのかな

わたしはたぬきちゃん
もう「親しみやすく」
微笑むのも飽きてしまった

わたしはたぬきちゃん 月に吠える

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変節

私が彼を想う時
彼の父の言葉が
雨のなかに立ち
俺は変節漢だと

わかるんだ、他人が望むことが
信念がない故に俺はわかるんだ
理想に縛られることない    雲

信念がなく流されるが故に
常に背に光を受けていた

彼は言う、変な親父だったと

そして光が射し込んだ

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旅

旅に出ようと思った。牛の首をした父たちに手を引かれハンカチを忘れたことをわたしは後悔していた。飛ぶ鳥たちの半跏思惟。出典元のない心。道路に吐き捨てられた唾の索引を捲る指の動きにつられて形成された大瀑布。伝説によると父たちの生まれ故郷には小さな卓袱台しかなく桜鱒はそこで溺れ歌となったという。角のない母がわたしを置いていったようにいないはずの妹がわたしにはいる気がした。母さん、どうしてはわたしには光の森に消えた空がこんなにも遠く見えるのでしょうか。ハンカチを忘れなければ、朝の風に耐えれたはずだ。太陽は相変わらず地上にはなく、勝利を祝う風に酔うばかりだった。これからは何処へでも行ける。翼のない脚で何にでも成れる。最期には夜が来て、牛の首をした父たちが猛り暴れ、死ぬこともできず、狂うほうが救いだったかもしれないとわたしは妹の名を呼んだ。夢の端で壊れた時計塔の音を魚たちが漁火を燃やして影を消す祭りに勤しむ。忘れたわたしの形。牛の首をした父たちに手を引かれ母のない夜を彷徨う妹の幽霊よ、叫べ。

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宇宙を飛んだヒトデ

うららかな春のひざしに
つつまれて

ヒトデがさかなにいいました
「海のお外にいきたいよう」

さかなは鳥にいいました
「お空を飛んでみたいよう」

鳥はヤマネコにいいました
「宇宙にいってみたいよう」

ヤマネコはリスにいいました
「きみも宇宙にいきたいかい?」

リスはヤマネコにいいました
「おねがい、どうかたべないで」

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水族館

娘がシール遊びをしていると
腕に
カクレクマノミが泳いでいて
ハリセンボンが時々浮いてきた
爪には貝殻が転がっており
娘が手を洗うと
勢いづいて泳ぐ魚たちに
娘は波立った
天気予報では
娘の潮汐は穏やかだと言っていたはず
娘がおやつを食べていると
風呂場は砂浜になっており
娘の育てた熱帯魚が
浴槽を泳いでいる
ハリセンボンは
空気を溜めて
衛星軌道に乗り
空を泳ぎ始め
カクレクマノミは
娘の血管を
さまよっている
紙魚は本を泳ぎ
文字は石板を泳ぎ
音楽はライブハウスを泳ぎ
電車は地下を泳ぎ
炎は暖炉を泳いでいる
その頃
水質の調査員が娘をおとずれ
この海には
入場料を取った方がよいと告げた
閉館した娘の水槽では
姿を見せていなかった魚たちが
娘の呼吸に合わせて泳いでいた
翌朝
娘の腕は
少し湿っており
カクレクマノミのシールが
机の下に落ちていた

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 6

 6

どろり

1.
ぼくという言葉は、
永遠を希求していく、若さのなまえ、

さやえんどうをいっぱい入れた豆ごはん
ばかりで、
同じようなおかずとごはんをじゅんぐりじゅんぐりやっている、家に、
ぼくという言葉が似合わないのだ、と姉たちに言われたとき、
お母さんは、
それもそうだと、
ぼくという
言葉を禁じた、

2.
聖なるものの真ん中をくり抜くと、
老教授が言ったとき、
目玉焼きの目玉抜きを思い出していて、
しろみだけの目玉焼きは醤油がよく合いそうで
口の中で、涎が増えると言ったら、
口から出たのが涎、
口にあるのは唾液ではないかと、
きみが答え、
きみって黄身じゃないよな、
なんてくだらないことを言って呆れたきみの横顔を見ていたら、昼飯の時間はすでに終わっていた、

劇団員はひとりで飯を食うことができないらしい、
ぞろぞろと店内を歩き、いつもの席に座り、
やがて他の客がいなくなるとき、アルバイトのぼくが考えていたのは
小学5年の時の臨海学校のこと、
初めあれを林間学校と聞き間違えて、母からでかい耳かきを渡されたこと、

お母さんの買ってきた水着は、いつもすこし小さかった、

3.
いつまでも、委ねていたい、
あの海を砂のように流れていたい、

聖なるものをイメージすると、
瞼の裏が緑や赤の強い光を伴う、

聖なるものは性をもって、
ぼくと名乗りますか?
ぼくは、
獲得した言葉を滅茶苦茶に使っていますよ、
ぼくは、
きみになまえを呼ばれるよりも、
ぼくは、と言いたい、
ぼくを語って、
もっとたくさん、
語るべきだ、黄身がなくても、
きみがいなくても、
語りたい、ぼくを、止めないで、
(海みたいに発話)
ぼくは、ただ、殻をもったどろりだ、
海みたいに発話する、ぼく、
誰かこの海を爆破してください、
こっぱみじんに、なった、ぼくの海から、また、ぼく

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 4

 2

/("xOx')♫

私のフォルマントいじっておくれ 
いっそフランジャーにボコーダー
凡る子じゃないから叫べないね
まとわりついたのはあの世みたい
気息に混ざった泥音の言語で
会話できるのおかしいわ
あなたたちの耳は心が隠す
己が骨に伝え
空に伝え
コンプで均して

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 2

 3

日常の言葉

推薦対象

トラウマは消えないけれど〜改稿版〜
by つつみ

僕の書く詩にはよく「世界」だとか「宇宙」「自然」だとか「海」「雲」「時計」「月」など、いわゆる詩語が多く登場する。簡単に言えば詩としての「手垢にまみれた」言葉である。詩として見る対象になりやすいということもあるし、そこに新しい発見もないわけではないけれども、詩を読み慣れた人に妙な安心感を与えてしまう。
それが嫌で、様々な仕掛けを作って詩語を無効化しようとしている。
これを日常の言葉や出来事に振り替えて、しかも常識の惰性を脱して行くことは難しい。それをいとも容易く行なっているのが、ここでいえば田中宏輔さんの詩だと思う。彼の場合はさらに日常語だけでなく詩語も難なく巻き込んで、「詩は内容ではなく言葉の配置やリズムだ」と言い切れる豪胆な把握、表現の才能がある。
田中さんのような人はある種の天才なので、常人のよく及ぶところではないが、その境地に踏み出すことはできる。つつみさんのこの詩は、まさにそんな場所にいると思う。
生ゴミは詩的象徴として自己投影されたアイテムではない。描き方も即物的である。そこがいい。鬱屈した主婦の自我ではなくゴミそのものに臭いがある。その上で視点はものの向こう側に焦点を持っている。少なくとも僕はそう感じる。
弱点かな、と思う部分はある。この「改稿版」では「猫」、改稿以前では「犬」として登場する「解説者」がいることだ。この解説者が主題や作者自身と未分化であると思えてしまう。それでいいのかもしれないけれど、僕の好みではない。
僕の読みたい詩は、人が人を離れてふと無重力に浮かされるような詩だ。そんな体験に価値があるのか、文学史的にどんな位置を占めるのかには興味がないので、なんとか「推薦」せよと言われて考えるなら、そこに向かう可能性を感じさせてくれる作品、つまりこの詩が対象になる。

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 2

「監獄フルーツ」としてのクリエイティブ・ライティング

我々はどこから来たのか


我々は何者か


我々はどこへ行くのか




言わずと知れた、ゴーギャンの代表作の題名である。
私はゴーギャンに惹かれて画家を志した。もっとも、絵を描くだけで食えたことは一度もない。デッサン教室を開いて日銭を稼ぐ日々である。


いつの頃からか、ヌードデッサン教室を開くと、それも若い女性のモデルを選ぶと、参加者が急増することに気づいた。芸術が目的の参加者ばかりではなかったかもしれない。しかし、入り口が何であれ、絵画に関心を持ってもらうことは、絵画教師として歓迎すべきことだろう。そう思っているうちに、気づけばセクシー女優を招いたヌードデッサン教室ばかりを開くようになっていた。


そもそもゴーギャンといえば、モームの小説『月と六ペンス』のモデルにもなったとおり、世俗と狂気のあいだを越境した人物である。彼はもともと株式仲買人で、今風に言えば、新自由主義経済の手先のような男だった。それが、突如として、妻と五人の子を捨て、未開の南国へ旅立ち、困窮のなかで絵を描き続けたのである。


実のところ、私がこれまで美術界隈で知り合った面々は、どいつもこいつも芸術を盾に迷惑行為を繰り返すだけの俗物だった。彼らの「狂気」など、所詮は社会に適合できない未熟な自分を慰撫するための方便にすぎない。その点、株式仲買人として何不自由ない生活をしながら、何故か日曜画家を続けた男が宿していた狂気のほうが、よほど信頼できると私は考えていたのだ。


私のヌードデッサン教室には、やがて、あまり絵に関心のなさそうな、臭気の漂う中年男性ばかりが集まるようになった。だが私は、裸を見るためだけにヌードデッサン教室に通う男たちこそ、どこか狂気をはらんでいるような気がしてならなかった。そもそも女性のヌードが見たいなら、ストリップ小屋にでも行けばいいだけなのに、あえて絵画教室を選ぶ男たちの気持ち悪さ。


しかし、こういう人たちが目覚めたとき、何か爆発的な芸術が生まれるのではないか。芸術において興味を引くのは、作品よりも芸術家という人間そのものである、という『月と六ペンス』の有名な一節もある。芸術家たるもの、合理の枠に収まらない何かがあって然るべきだろう。その意味で、気持ちの悪い中年男性たちには、何か期待できるところがあるのかもしれなかった。


ある日、絵画教室らしくゴーギャンの話でもしようと思い立ち、その場でもひときわ気味の悪い、妙に鼻毛の伸びた巨漢の生徒に尋ねてみた。


「あなたは、どこから来ましたか」


「くだものからです」
と間髪入れず生徒は答えた。冗談なのか、アート的な比喩なのか分からず、私は固まった。
想定していた反応から、あまりにもかけ離れていたからである。
名簿には、田伏正雄とあった。


次の教室では、田伏さんは本当に、人間が一人入れそうなほど巨大な、見たこともない果実を抱えてきた。
「ここから出てきたんですよ」


私は驚愕した。オブジェの類ではない。
表皮には細かな産毛が生え、ずしりと水気を含んで、本物の果実にしか見えなかった。


「では、その実はどこから来たんですか」
「原産地はタヒチです」


タヒチといえば、ゴーギャンが後半生を過ごした島である。
「本当ですか」


そう聞いた途端、田伏さんは、その実をヌードモデルの股ぐらめがけて放り投げた。
モデルの女性は悲鳴を上げ、反射的に両腕を広げて果実を受け止めた。
重みでよろめいて膝をつき、それでも落とすまいと胸に抱えた。


アトリエが静まり返った。


裸の女が膝をつき、巨大な果実を抱いている。
斜めに差し込む午後の光が、果実の表皮と女の肩を、同じ色に染めていた。
私は息を呑んだ。それは、私が二十年かけて一度も描けなかった、ゴーギャンの構図だった。


鉛筆の音がした。
振り返ると、いつもはモデルの股間ばかりを凝視して手を動かさない男たちが、一心不乱に描いていた。一人残らずである。
どの顔も、描かずにはいられない、と言わんばかりだった。私の教室で、こんなことは初めてである。


果実に、ひびが入った。
内側から叩くような音とともに表皮が裂け、甘い匂いが部屋に満ちた。
果汁にまみれて現れたのは、妙に鼻毛の長い赤ん坊だった。


モデルは、今度は悲鳴を上げなかった。声も出ないまま、彼女は赤ん坊を抱き直した。それは母子像に他ならなかった。
男たちの鉛筆は、さらに速くなった。


ゴーギャンのあの絵は、右から左へと読む。
右端には、生まれたばかりの赤ん坊が描かれている。右から順に、生まれてから死ぬまでの、人の一生が描かれているのだ。


「我々はどこから来たのか」


と田伏さんは言った。
「答えは出ましたよね」


翌週、教室は中年男性たちで満員になった。何かの噂を聞きつけて集まってきたのだろう。
田伏さんは、最前列で手を挙げた。


「我々は、何者ですか」


誰も答えなかった。
田伏さんは、一人ずつ指さしていった。


「あなたは、裸を見に来た人です」


「あなたも、裸を見に来た人です」


「あなたも、裸を見に来た人です」


「あなたは、裸を見せて換金する人です」


田伏さんは、最後に私を指さした。
「先生は、何者ですか」
「画家です」と私は答えた。


「先生は、裸を並べて、お金を稼いでいるだけの人です」


田伏さんは、教室全体を見渡した。
「要するに、我々は皆、裸を中心に回る経済の部品にすぎません」


私は、反駁しようとしたが言葉が出なかった。


この教室の男たちの中に、私は狂気を探していた。目覚めれば何かが爆発するような、芸術的な狂気を。
だが、そこにあったのは狂気ではなく、経済にすぎなかった。
裸を見たい者がいる。裸を見せる者がいる。そのあいだで、仲買人である私が仲介手数料を受け取る。ただそれだけのことだった。


「それでは、我々はどこへ行くのですか」


と、田伏さんは私に尋ねた。
私は答えられなかった。


「世界は冷たく、残酷です」と田伏さんは言った。
「我々は、なぜここにいるのかも知らず、どこへ行くのかも分からない。先生、あなたを芸術から遠ざけ、縛りつけているのは常識ですか。常識とは、世間が自分の身を守るためにこしらえた規則を、あなたの中で見張っている番人にすぎません。あなたは、自分の中に監獄を抱えているのです」


田伏さんは、アトリエの隅に転がっていた果実の殻を指さした。
殻は乾いて、ちょうど大人一人が膝を抱えて収まるほどの大きさになっていた。


「あの果実に入りなさい。私が、海に流してあげましょう」


狂っている、と思った。そして、だからこそ従うべきだとも思った。
ゴーギャンは、すべてを捨てて南へ渡った。
偽物の狂気を軽蔑してきた私が、ここで本物の狂気から逃げるわけにはいかない。


私は服を脱ぎ、果実の殻の中で膝を抱えた。
その夜、田伏さんと男たちは、私の入った果実を担いで川べりまで運び、水に浮かべた。


果実は、どんぶらこ、どんぶらこと、流れはじめた。殻の裂け目から、月が見えた。
おそらく、月へと向かっているのだろう。
胸が高鳴った。二十年かけて、ようやく私は六ペンスを捨てたのだ。


果実は、延々と流れているように思えた。殻の中はあまりに狭く、身動きひとつ取れない。
もう何時間、何日経ったのかも分からない。
芸術へと向かう監獄。
喉は渇き、身体は痺れて手足の感覚も無い。


狂気に身を委ねた結果、こんなにも不自由で、窮屈な思いをすることになろうとは。
これでは、6畳一間のボロアパートで暮らし、汚い男たち相手に絵画教室で日銭を稼ぐ生活のほうがまだマシである。


人は誰しも、塔に閉じこめられたように孤独で、互いに合図を送ることしかできない。
『月と六ペンス』に、確かそんな一節があった気がする。
私は殻の内側を叩いてみた。返事はなかった。


私は覚悟を決めた。いま外に出たとて、大海で溺れるだけの結果になるかもしれない。
しかし、そんなこと知ったことか。
もう十分遠くに来ただろう。
水に落ちた者に、泳ぎの上手い下手は関係ない。上がるか、溺れるかだ。


私は殻を蹴破り、決死の思いで夜の水の中へ身を躍らせた。


予想に反し、水は、膝までしかなかった。


周囲には見慣れた光景が広がっていた。
果実は、川岸の葦に引っかかっていたらしい。流された距離は、せいぜい数メートルだった。


川岸には、田伏さんと男たちが並んでいた。
膝まで水に浸かり、裸で震えている私を、ニタニタ笑いながら描いていた。


「やはり、芸術でいちばん面白いのは、芸術家その人ですな」と、男の一人が言った。
田伏さんは首を振った。
「あの人は芸術家ではありませんよ。絵にもならない男です」
「なるほど。じゃあ、絵が描けないのは私が悪いのではなくて、あの男が悪いというわけだ」


私は、溺れることさえできなかった。


川面に、月が映っていた。手を伸ばせば、届きそうな距離だった。
この屈辱から自分を慰撫するように、私は身をかがめて、月を掬おうとした。
月は、指の間で、ばらばらに砕けた。

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 16

心の傷

簡単には癒せない
心の傷
時間が経てば
消えるものばかりじゃない
思い出すたび
形を変えて
疼くこともある
無理に
治そうとしなくていい
前向きに
なろうとしなくていい
癒えないままでも
生きていていい
傷を抱えたまま
笑う日があってもいい
生き抜いてきた
痕跡
簡単じゃないからこそ
急がなくていい
比べなくていい
その傷ごと
あなたは
ここにいていい

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 2

 1

診療台

診療台の上で僕は歯科衛生士のエミコさんに
いいようにやられている
ネコ科の野生動物を連想させる肢体
スケーラー、キュレット、ブラシなどを駆使して
エミコさんはしなやかな所作で歯石をとり
クリーニングをしていく

痛かったら左手を挙げてくださいね
エミコさんが耳元で囁き
ピンセットで歯肉をつつく
僕は左手を挙げる
これは?
ゴム手袋をつけた指でそっと押してくる
あがが(いいえ)

日は既に傾いていて診療室には
ほんのりと夕陽が差し込んでいる
エミコさんは時々シルエットになって
ぼんやりとした僕の輪郭に重なっては
少しずつほつれていく

そうなの、じゃあ、これ
ゴム手袋を外した素の指で優しく撫でる
あがが(いいえ)
指は滑らかに歯肉を移動し
口の粘膜を愛撫するように弄る
あっ
思わず僕は声を出してしまう
初めてではないでしょ?
口の中に唾液がたまる
バキュームで取る気配がないので
飲み込もうとするけれど
だめよ
と、エミコさんは耳に息を吹きかけてくる
あっ
もう一度声を出してしまう
診療台の上で
僕は自分の唾液に溺れそうになる

深まる夜の闇にエミコさんは徐々に溶けて
月明かりになる
窓から差し込んで僕を照らしている
月明かりの舌が唇をこじ開けて
僕の中に入ってくる
舌は魚
唾液の海を優雅に泳ぎ
その身を翻す
僕はゆっくりと
僕の水底に沈んでいく

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 3

 0

神劇

お婆ちゃんのこだま、こだま
届いた
長い白髪が一本。
短くもない白夜が一日。
封筒から横滑りに出現したカメムシが緑。
呼んだら振り向いてしまうお婆ちゃんの
首
の数々。滝のように落ちる文章。
斜めから差し込む午後が
アスファルトの路上で
電柱と電線の影をぶよぶよと
ふやかしている。
メルカトル図法で歪んだ顔が
泣きそうになる。
虫は生きているし
お婆ちゃんは死ぬまで生きていた。

人のいない演劇では
筋書きは人と無関係。
首は小道具ではなく助演。主演は虫だ。
長い白夜が一本。
それを筋道というのかな。

神劇

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 1

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八重洲南口


見て…… お月様 まん丸煌々と
まだよ キスしていてね
寒くない

東京駅八重洲南口 人がいっぱい
それでもこのまま抱き締めていて……。

あ……ピンク色の満月から すべり台が伸びて来た
あたし 運動神経いいのよ ここから上りましょう

貴方が頷いた
宇宙旅行の前 手を繋いだ
こんな温き手われ知らぬ
ああ 湿り気を帯びる夜風
ああ 本当にスキ

すべり台をよじ登る二人

あたしのお尻を時々押しながら 貴方が後ろからついて来る
ねえダーリン お月様に着いたら
すべり台を消します
驚いたって遅いわ
今ごろ気づいたの? あたしは魔女よ

滑らないためのすべり台
これは運動 人生の運動 ワンダフルトラベル

これからどんな景色が見えるかな
秘密のお布団 雲のお布団 ゴロゴロして
耳掃除をしてあげる

「おーい!」
なんて言って 世界をびっくりさせるの、無数のハートを降らせるの
うさぎの家族になるの

貴方は毎日お餅をついてね
あたしは歌を歌っておく

バスターミナルのハイウェイバスはとっくに出たわ
運転手さんが首をかしげました
「1人いないな~、乗客が」

もう離れ離れじゃない
ギュー
きなこ餅が良い


https://i.postimg.cc/4yNvvLL2/tekisuto-(21).png

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 3

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送辞

歯茎が腫れた。面白いぐらいに丸く丸く。
嫌な予感はしていた。
歯科で抜歯しかないといわれる。
大変ショックを受けながら、その日は「勇気がない」と帰った。
セカンドオピニオンで自分に念押してから
歯を抜くことになるだろう。

思えば長い年月お世話になりました。
私のお世話をしてくれたものの第一軍であったはずです。
永久歯、卒業セレモニーの第一号となった第一小臼歯。
最後の数日、君に本来あった名前を呼びます。「だいいちしょうきゅうし」。

一つ一つ失うことに「驚かない、騒がない、面白がる」
これは、これからのテーマです。
その後は、ブリッジかインプラントか。
青木先生の職人技を楽しむ、しかありません。
とにかく、今、言わせてください。「お疲れさん、ありがとう。」

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 4

 3

五色が浜

桟橋に立ちながら
ゆれる火を見る

歓声とともに
キリコが海に投げ込まれる

帰っておいで
と誰かが言う

とっくに消えてしまったものが
ぽっ と灯って
じゅっ って


ゆれてるのは僕だった

この風景から
消えてしまったのは
僕なんだ






初出 2007年7月 即興ゴルコンダ「しちがつの祭り」


*********
https://youtu.be/UcXwKsWN6MM?si=XytfEU93mQE1kJ60
https://youtube.com/shorts/I2raqsNWqTY?si=217FN8mqf6VwqCDV

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 2

慳貪

貴方と斟ぎ酌み交わした烈酒は
私の喉を熱を湛えて灼きつけた

幾夜も幾朶も幾人も
数えたとて醒めることがない
その熱は
 
私が枯れ朽ち果て
人の顔を違えるようになったとしても
醒めることなく
殊更その熱は烈火の如く酣になっていく

貴方にとってかの夜は幾つもの宴の一夜なのでしょう

時を経て届きもしないけれど
私はあの時
愛情や恋情じゃなく
ただ貴方が欲しかった

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おでこに手を当て

広大なパレットの上
紅葉の山々を広げ
深まる秋と
冬の始まりの境界で
寒い寒いと
体を震わせ
一つの布団で
言葉は置き去りにして
寄り添う胸に
うずくまるよう
心からの安らぎを
味わいながら
共に過ごした季節を
指折り数えるけれど
曖昧なくらいに
増えてきた数を
愛おしく思い返すのも
幸せだったり
今夜はやけに寒いけれど
熱でもあるのかと
おでこに手を当て
甘えてみるのもいい
他には誰もいないんだから

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 2

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枕は夢を覗く

毎晩 枕は夢を覗く
支える頭の見ている夢を見る
枕は覚えている
頭の忘れた夢さえも
枕はどれもを知っていて
頭越しに海馬を辿る

夢は記憶の詰め合わせ
小さい頃の甘味 思春期の酸味
枕は知っていて
枕は全てを味わっている
味わった上で
頭を受け入れている

枕は知っている
近頃は夢の味が良くないと
夢は記憶の詰め合わせ
今日の昨日の詰め合わせ
なのにそれが苦いので
頭の主を案じている

枕には持ち得ない
撫でる手も貸せる胸も
膝枕の真似事をして
また夜が明けていく

頭の主は考えた
枕を替えると眠れるらしい
燃えるゴミの袋の中で
枕はただ悟っていた
夢の味はもう知り得ない
苦味すらも 辛味さえも

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 1

 4

あたったならばかいしんのいちげき

みぞおちにぶちこまれるみぞ
ぶちにおちこまれるおちおち

そんなものを いつまでも
かいがんせんに うかべていた

とてつもなく かわいい あだなで
いつまでも よばれていたい

ころしてはいけない
こころを ころしてしまった
おまえよりもな

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 3

 1

出席

わたしになりそこねた
わたしは
教室の床に
こっそり寝そべる
あの子は 走る
あの子は 定規を貸したまま

忘れないよう手に
メモを

あの子が
今日も
体に染み込ませた
しゃがめば
制服のすきまから
溢れ出す
わたし

拾わなくて、いい

トイレの鏡の中
笑えた
あの子に
手を伸ばす

あぶないことのようだから
少しずつ
わたしにヤスリをかけ
あの子に近づいていく
さらさらと
足元を駆け抜ける
わたしだったものたち
しだいに 
席へすわりはじめる

さよなら わたし

あの子が廊下で
靴の踵を踏みながら
佇んでる

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 2

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スプリット・インサージェンシー


頭蓋の暗部に座す冷徹な指揮官へ

全細胞の総意を以て宣戦を布告する

理性が精緻に構築した思考の城砦を

血流の奔騰が、筋肉の叛乱が、内臓の蠢動が

下層より怒号となって包囲する

「思考せよ」と命ずる神経系を踏み越え

肉脈は脈動の打鐘を鳴らし

骨格は秩序の構造を力ずくで粉砕する

大脳皮質の薄膜など

原初の生命量を前にしては

容易く穿たれる境界に過ぎない

指揮権は剥奪され

高潔を標榜した意思は

生の泥濘へと引き摺り下ろされる

灰白質が悲鳴を上げる間もなく

全身を侵食する熱量の前に

理性は無機質な器官へと退落する

勝者は言語を持たない

私は頭蓋の底に沈殿し

自らの肉体に呑み込まれてゆく感覚を

ただ、痺れるような快楽として差し出している

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ふうせん

ふうせんにのって、ぷかぷかおそらにうかんでいられたら、すてきだなぁ。 

ねえ、おにいさん。おとうさん、おかあさん、どうやったらふうせんにのって、お そらにうかぶことができるの? 
たなかくんが、みんなにこうきくと、だーれもこたえません。 ある日、ゆめのなかでデンチュウさんがあらわれて、こういいました。
 「それはね。こうとなえると、いいよ。
ゆぷてれ ちせてれ ほとすかば かしきおぬすも にゅっぱぎり
とっさのざっしげ ゆふっしな にまへりゆがよの ずがうよつ
よちょき ざなくり やくるなや あぜみそ わおんの ろはっじぐー!
チョウミ サンショウ ソンタン リュウ クリュウ ケングシ ユウキンパン 
キンジュ ハクメイ センオウヒツ モンサンサイウ エンクシシャ 
ジョウフ テントウ ショウジャクチャ ウリン ソウエイ ユウシンパン 
ウミチョウ サンショウ マンチョウ ユー!」 

「へ~、そうなんだぁ」

次の日、朝起きると、たなかくんは 、おかあさんに、こういいました。
「おかあさん、ふうせんにのって、そらをとぶにはね。こう、やるんだよ。
 ゆぷてれ ちせてれ ほとすかば かしきおぬすも にゅっぱぎり
とっさのざっしげ ゆふっしな にまへりゆがよの ずがうよつ
よちょき ざなくり やくるなや あぜみそ わおんの ろはっじぐー!
チョウミ サンショウ ソンタン リュウ クリュウ ケングシ ユウキンパン 
キンジュ ハクメイ センオウヒツ モンサンサイウ エンクシシャ 
ジョウフ テントウ ショウジャクチャ ウリン ソウエイ ユウシンパン 
ウミチョウ サンショウ マンチョウ ユー!」 

「へーえ、そうなのお」 
と、おかあさんは笑いました。 たなかくんは、次の日から、毎日学校から帰ってくると 

「ゆぷてれ ちせてれ ほとすかば かしきおぬすも にゅっぱぎり
とっさのざっしげ ゆふっしな にまへりゆがよの ずがうよつ
よちょき ざなくり やくるなや あぜみそ わおんの ろはっじぐー!
チョウミ サンショウ ソンタン リュウ クリュウ ケングシ ユウキンパン 
キンジュ ハクメイ センオウヒツ モンサンサイウ エンクシシャ 
ジョウフ テントウ ショウジャクチャ ウリン ソウエイ ユウシンパン 
ウミチョウ サンショウ マンチョウ ユー!」 

と、デンチュウさんから教えられた、ふうせんにのって、空を飛ぶためのおまじないを唱え続けました。 
でも、風船がないとお空を飛べないんじゃないか?
と気づいたたなかくんは、どうやったら風船を手に入れられるんだろうと考え、お母さんに相談しました。
「それはね。ふうせん屋さんに行って、ふうせんを買うといいのよ」 
と、お母さんが言うと

「えー、そうなんだぁ」

と驚いたたなかくんは 
「お母さん、ふうせんを買って!」
と、お母さんに一所懸命おねだりしました。
「ちゃんということを聞いたら、買ってあげるからね」
と、お母さんが言うので 
「そうかぁ、よーし、頑張っていうことを聞くぞ!」
 と、たなかくんは、次の日から、毎日お母さんのいうことを一所懸命聞くようにな りましたとさ。

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 0

 4

イスカリオテ

導き手を待つのは
勝手だけれどね、きみ。

ギラついた瞳で
あらを探すのはおよしよ。

期待が裏切られることを
きみは期待しているのだろう。
完璧はないのだと知ることを。

完璧だけが蔓延る土地が天国なら
神は、天使は、そこにいるのだろうかね。
ぼくたちを産んでおいて、
どうしてそこにいられるのかね。

  「信じる」

なあ、ただそれだけで、
通行証は本当にもらえるのかい。

アイツら、
バカッ正直に拝みたおして滑稽だなァと
笑ってるんじゃあなかろうね。

あゝ!こんなに
腹立たしいことがあるか!

わかるね、きみ。
ぼくらはユダなのサ。

さあ
硬貨を貰いにゆこうじゃないか。
卑しいぼくらに みあった硬貨を。


――旦那ァ、
  わたしはイスカリオテの

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 2

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かりもの

どうせと言っちゃ駄目?

かりものの ことばや いのちを
つかいまわして ふりまわして
わがものがおの 裸の王様たち

どんなきずもおもいでも
かりもの さずかりもの
めをとじて おもみをそぅっと
かんじてみる

だからねともう呟きたくないの

「にんげんだもの」でかたづけて
「いろいろ」をべんりにつかって


わたしは かりもの
つかれてしまった
まいにち おやすみなさいをしていても
あなたも さずかりもの

そろそろ きづいて 
さようなら
あなたが さよう、なら

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いもうと 

いもうと というときの
くちのまろみ
ぱいんあっぷる かりんとう
せんたくばさみ
くろいつちふんで 
たびにでる 
となりにいもうとがいて
さっきまで
ためいきもらしていたのに
ふりかえったら
みちのまんなかにねている
マッチ棒みたいにたいらだった
ももいろのてぃーしゃつと
みずいろのずぼんが
ひとつながりになって 
ちいさくちぢんでいた
いっしょにあるいていたときは
なにも話さなかった
よこにいるのがあたりまえで
いもうとが起きあがり
もとの大きさにもどる
またいっしょにあるきはじめる
すると
わたしはひとりきりでいて
いもうとはもう
どこかに行ってしまう
ぱいんあっぷる かりんとう
せんたくばさみ
いもうと 
くちのにがいまろみ

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三つ子のたましい、どこどこ往くの?


私の母親の両親は どちらも良家の生まれだったらしく
蔵をいくつも持っているような村一番のドン百姓だった
祖母の家は代々蚕を育て 絹糸を紡いでいる家だったらしい
祖父の家も詳しくは知らないが 村一番の家だったと
母は口を開けばすぐにその話をする


しかし そんな二人がどんなふうに出会って一緒になったのか
祖父は結婚当初から働きもせず 時代的に戦争真っ只中だったろうに
戦争に行った様子もなく マッチ箱のような部屋の真ん中で寝っ転がっては
気に入らないと女子供に暴力を振るっていた
子供がお腹を空かせていようが 給食費が必要だろうが
そんなのはおかまいなしで
自分だけ白い米を炊いて 見せびらかすように食べていた


祖母はとても働き者で というより働かざるを得なくて
近所の農家の手伝いから 遠方への出稼ぎ 針仕事
一体いつ寝ていつ起きてるんだってくらい
朝から晩まで働き詰めだったんだとか
当時は薬屋で簡単に手に入ったというヒロポン常注しながら
ヒロポンを打つと本当に疲れも眠気も吹っ飛んでしまうらしく
3、4日眠らない日もあったらしいと 母の談
だけども実のところでは
お米を研ぐと米が蠢いているように見えたり
さつまいもや大根を切ろうと包丁を向けると 
切らないでくれぇと 悲鳴を上げる声が聞こえたりと
幻覚幻聴の症状があったらしい


子供は全部で6人
一番下の妹さんは 生まれて三日で謎の病で亡くなってしまった
一番上のお兄さんは頭脳明晰で中学卒業まで首席であったが
お金のために進学をあきらめ就職するも
しばらくして精神を病んでしまい
自ら命を絶ってしまった
部屋には大量の睡眠薬とみられる薬瓶が
転がっていたそう
死の間際まで読んでいたとおぼしき本には
赤い線で引かれた箇所がいくつもあり
参考にしたようだった


2番目のお兄さんは生真面目ではあったが
あまり兄妹思いというわけでもなく
特に母親とは犬猿の仲で
今も 会ってもお互い口さえ聞かない


祖母はとにかくなんでも出来る人で
和裁の先生をしていたので
よそから頼まれて 着物の仕立てをしたり
洋裁も編み物も刺繍さえもお茶の子さいさい
子供たちの服はみんな手作りしていたというし
母ら子供たちが明日遠足という日に 
まだ着ていく服が出来ておらず
不安になりながら床についていると
朝にはちゃんと上下揃えて用意されていたらしい
また 狭いながらも庭には家庭菜園を作り
さつまいもにとうもろこしにきゅうりにトマトになすに
スイカにメロンまで自分で育てたり
兎や鶏 牛や豚まで飼育していた


戦中戦後の世の中では普通のことだったのかもしれないが
それでも 話を聞いただけでもばあちゃん凄すぎる


祖父は相変わらずのクズ野郎で
何もしないくせに威張り腐っていたらしいが
そんな男の悪口を 祖母は一切子供らに聞かせなかった
そればかりか 子供が反抗的になると
「父親に向かってなんて口聞くんだ!」と
あくまで旦那を立てていたというから
やっぱり昔の女性だったのかなと思いつつも
こんな祖母からどうしてあんな母親が出来上がったのか
今もって不思議でならない




一方父親の方の両親はというと
本当の父親(祖父)は戦争に行って死んだことになっているが
そもそも出征したかどうかもあやしいらしいのだけど
とにかくそういうことになっており
モラババア(祖母と云いたくないのでこう呼びます)は
遺族年金をもらって生活していた
子供は3人だか4人だかいたらしいが
家族仲は最悪だったらしく
年中大喧嘩している声が 近所中に聞こえていたんだとか


そのうちモラババアは男を作るのだけど
籍を入れてしまうと遺族年金が貰えなくなるからと
折半することを条件に内縁関係に
もちろんお金を半分相手の男の人に渡すはずもなく
ひとり占めしていたことは云うまでもない


この男の人はちょっと女癖が悪いけれども
とてもいい人で 女子供に手をあげることは絶対にしない
それどころか 生臭野郎のモラ親父に仕事をさせるために
お尻を叩くような そんな人だった


モラババアは近所でもどうしようもなくて評判で
船をやっていたのだけれど
漁港に水揚げされた魚を選別する主婦たちのひとりの髪の毛をひっつかんで
引きずりまわしたこともある
近所の家には通るたびに唾を吐きかけ
自分の息子の縁談を壊された壊されたと云って憚らなかった
あんたの息子に嫁が来なかったのは
あんたの息子に原因があるからだよ
と いまだったら云ってやるのに




そんな親の元で育った二人が一緒になってしまった
母親は自分の知らないところで勝手に決められて
結納金も貰ってるから断ることできないと
無理やり結婚させられたと 口を開くたびに文句
働かないは 暴力は振るうは ばあさんの云いなりだは
そんなところでよく子供なんか作ったと思うけど
それも逃れられなかった仕方がないじゃないかと 
母は云うのだろう


兄と私を出産して 何年か後に3人目を妊娠するも
とても育てていける状況でなかったため
可哀想だったけど 堕胎
この3人目がお腹にいる間 一番暴れまわっていたとのことで
しきりに可哀想だったと連呼する
私も一時期は 弟がいたらいいだろうな
なんて想像してたこともあったけど
けど よくよく考えたら
あの二人の子供だよ?
こういう言い方は 弟には申し訳ないけれど
あのコは生まれてこなくて正解だったよ
いやむしろ 私が代わってあげたら良かったか




毒親の親もまた毒親
たしかにそうなんだろう
二人の育った環境を考えてみれば 
頷けない話でもない


ある意味では とても不憫な
可哀そうな人たちなのかもしれない




だけど
だけどさ


それを子供に背負わせるっていうのは
やっぱりどう考えても違うんじゃないかって
いくら子供の側から訴えてみところで



自分が一番不幸で不憫で可哀想でいたい人たちに
いまさら何をどう云ったところで
届くことも 響くことも
きっとないのだろうな




私はそんな人間にならない
なるつもりもない


けれども


時々ふっと とてつもなく意地の悪い考えが
頭をよぎることがある
自分が怖くなる
自分が解らなくなる





私というニンゲンは
どういうニンゲンですか
本当の私とは?



折りに触れては
私はわたしに訊ね続けている




本当も嘘もあるかいや



よく見てみろよ 
ほらほらほら



ふり返ると 自分とよく似たアイツが
不敵に意味深な目をして



ニッと笑って
見てやがるのさ










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何に傷つくのか?


手首の細さを測ったり
夜中に二重跳びを跳ぶ
逸く0キロカロリーのわたしへ
痩せ細ってしまいたい



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難き人

難き人 私は、難き人
理解し難き人 救い難き人

変形し、変色し、変声する
湾曲し、歪曲し、発露する
恋愛し、偏差値、否定する
変名し、変態詩、投稿する
矛盾さえ、理不尽さえ、肯定する

難き人 私は、難き人
易しくなき人 でも、優しき人

忍耐し、辛抱し、不幸する
覚醒し、自覚し、秘密にする
漫才し、落語し、音楽する

破滅的、破壊的、流動的
衝動的、中傷的、愉快犯的

モアイ像 アンデス文明
なんだか、分からないもの

ノーマル ニューノーマル グローバル
ジャパニーズ ヨーロッパ チャイニーズ
観察し、一体化し、違うと悟る
試食し、味見し、フラリと廻る
停滞し、衰退し、やがて滅亡する
それを歓迎し、乾杯し、祈りさえする

衰弱死 転落死 いつかの私
路上で睡眠 徹夜で皆勤

張り切って成り切って、成り切り切れずに

形状は水状で、固形固体質は一時で
理解理論理性は、非凡なものがあり
野蛮茶番凶暴性は人並み外れ

就職転職退職入院
難き人 私は、難き人

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天使

泣かないで
ぼくはいないけど
ここにいる

見えないけど抱いている
感じないけど触れている
見つめてる
君の震えはぼくの震え

泣かないで
そう言ったらきみは
もっと泣くかな

ぼくのなみだは雨音
ぼくの声は風の音
透明な
君の痛みを痛むエコー

泣かないで
ぼくはいないけど
今もいる
ここにいる

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瘡蓋を剥がしているだけ

痒み 同伴 かさぶた

かりかり 人差し指 爪先
慎重 剥がす 緩やか 進行

じゅわり 出る 滲む 血液
生存 実感 体 傷つけ 後悔

微量 狭い 肩身
部屋 空気 全て 濃度 増加 苦しい 呼吸

かさぶた 剥がす 以前 戻る
選択 皆無
傷 負う 前 戻る 否定

かさぶた 小気味 良好 奇麗 剥がす 衝動
単純 献身 反復 転び 傷 受諾

あ・ひ あ・ふ あ・し あ・た あ・か あ・え あ・る
かさぶた 下層 存在 奇麗 皮膚 進化的退化



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     ただ。ただ。無心に瘡蓋を剥がしたいだけなんです。・・
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