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2021/01/01 12:00:00

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投稿作品一覧

Cream soda

本当はドリンクバーになるはずが手違いで人間になってしまった私の血液はクリームソーダで、唾液はコーヒー。

だから私とキスし続けた君は、カフェイン中毒になる。

元々君は警察官で、『超能力課飛び降り自殺止め署』に配属されたエスパー。

飛び降り自殺者救うために、地球上の全ての地面、パンケーキに変える。

そのパンケーキをアリが食い尽くしていって、地球が消滅して行ってるから、全員火星に引っ越して、今じゃ君と私、二人だけしか暮らしていない。

地球最後の二人になった私達は、素っ裸でバイクにまたがって世界中を走り回ってる。

暇な時は死んだ人と電話が出来る死者とのテレフォンのサブスクに入ってるから、ノストラダムスに毎日電話して「この嘘つき」って言ってから切るの。

ある日、君が永久にクリームソーダしか飲めない病気になった日に、世界中からクリームソーダが消滅して、一生何も飲めなくなった。

「私の血液があるから安心してベイビー」

地球がもうすぐ無くなりそうね。
今じゃ4畳半の広さに、二人で暮らしてる。
「君はどうして地球に残ったの?」
「君こそなんで?」私達の答えは同じ。
君と二人きりになりたかったから。

君は夢の制作費が無くなったみたいで、最近夢を見なくなったらしい。

もうすぐ夢になる寸前の、胎児の状態の夢を脳みそから抜き出して君の前に差し出すと、手のひらの上で夢が始まって、その夢の中で君と私、手をつないで草原を走ってる。

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愚か者の大愚痴

あなたとの共通点だった涙も、もう意味のないもの、役立たず。
それでも私が大きな自己嫌悪をするときはきまってやって来る。
人が怖い、正直あなたと会うのも怖い。
とにかくもう
人に好かれようとして空回りするような
自分を大切にしきれなくて、いつも自己中って思われるような
嫌われたくないのに嫌われることに慣れようとしている嘘つきなような
そんな自分の愚かさ加減に呆れて、4にたくなる。

どうしたらそんな自分に折り合いが着くのだろうか。
答えは多分、自分しか知らないのに
誰かにきいてもあてにならないのに
考える脳みそと直感がまるで足りてない。

苦しいから飲んだ錠剤に

「今日は早く眠れますように」

そう願いを込めたけど、もう少し考えたい。
もういっそ、海外でも行けばいいのかも。
でも、怖い。

怖がりも、完璧主義も、何もかもやめたい。
だけど、こんな自分でもなにかの役に立つんじゃないかと思って

こんな詩を書いている。
書き続けることは、生きることのような氣がしてきた。
生きることは優しさと、誰かが歌っていた。

こんな私はどうせまた誤解され続けると思うけれど
優しいって思ってもらえるだろうか。
それは、自己顕示欲でも認証欲求でもなく
だれかを助けられた証拠になるだろうか。

いつか、ちゃんと優しい人間になりたい。
性格の悪い自分から、脱皮したい。

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[お]オールナイト・シンドローム

後天的端麗 浮ついて低迷する気取った幽霊
千鳥足で走ってる夢の中、Fiction connection horn鳴るセンターにアイラインを走らせて今日も惑わす放蕩

楽天的療法 過った用法容量を破り捨てて
淋病を患ってハイター、Session diction 笑えないdirty jokeにデキストを砕く夜が好きさ ダーリン

転換性の愛憎が私の首にぶら下がって
チョーカーの号が合わずに青痣を産んだ
伸縮性の免罪符をあなたのエサとトレードして
混ざり合う濃度の高い 曖昧に我爱你

眩いヘッドライトをスポットライトに踊らされるの
眠らぬ街で美しく着飾り肉を食らった愛欲の亡者
わたしをわたしだと誰かに認めてほしかっただけ
手首に涙腺を造るわたしを生み出したtokyo City

本能性健忘症 貶めて罵り合うチャンネル2番
美味しそうに食べる食わせ物 Influencer Ripper Creator
ただ時間の穴を埋めるだけの娯楽の更新を待つ囚人
お気に入りに塗り潰される gold fave 魯鈍 溶けた時間とアイロニー

電脳的な言葉にわたしの意思を委ねて
いいコになれないあのコのこと愛してほしい
感情的な態度でわたしの居場所を奪い去った
エライあなた方のための巣 蒙昧いらない子

気怠い身体をかなぐり捨てて羽を広げ光に群がる
眠らぬ街で醜く囀り肉に集う承認欲求の鵺
愛して愛して 誰かのためのものになりたくないだけ
屑を愛して削られるわたしを生み出したtokyo City

割れた液晶に指をふって
処方箋のみたいな人たちと集う路地裏
「かわいい女の子」のままで死にたい
痛いほど愛されなかった街で

眩いヘッドライトをスポットライトに踊らされるの
下だらぬ街で嘘に塗れて腐肉を貪るかわいいわたし
わたしをわたしだと誰かに認めてほしかっただけ
そんなの今さらどうでもいいから

気怠い身体をかなぐり捨てて羽を広げ光に群がる
眠らぬ街で馬鹿な優しい肉に出会うための夜
大好き大好き なんて言葉が繰り返し宙を舞うだけ
騒がしい夜がただ好きなだけのわたしを生み出したokyo City

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何も楽しくない

僕は詩を捨てた。
高校生の時から書き続けてきた詩を切り捨てた。

35歳になった今、遅すぎる決断と言えるだろう。

詩が僕の全てであると錯覚した。

それはなぜか? それ以外に何もなかったから。

何もなかった。

詩を書くことで、僕は何かを成し遂げているような気がしていたし

そして評価してくれる人もいるから、何かを成し遂げたような気分の後押しをしてくれる。

YESもNOも、僕の詩から生まれたものだと思うと、どんなに些細な反響であっても、

僕に繋がっているという感覚が孤独感を紛らわせてくれた。

何者でもない自分を直視するのが怖くてたまらなかった。

ただ単なる現実逃避と知りながらも、表現者になったような高揚感に突き動かされてきた。

ネット詩人。こんなにダサい言葉があっただろうか。

いやいや、ちゃんと受け入れよう。ネット詩人、すっごくダサい存在だからね。

たまに凄まじい作品が投稿されたりするけども、実のところ僕は否定的な心情を隠し持っている。

田中宏輔さんとか、誰でもいいけど凄い作品を書かれる方が、誰でも容易くアクセスできる掲示板に投稿すんなよって僕は思う。

だって、そういう凄まじい作品はキラキラと輝いている宝石のようなもので、

寝転がりながら見つけるようなものじゃないんだよ、本来は。

苦労して苦労して、やっと見つけたものであるべきじゃん、というのは僕の勝手な思いだけどさ。

こんな簡単に0円で読めちゃうと、もったいないなーと思う。

凄い作品は、掲示板に投稿しちゃだめだよ。

あーこの作品、掲示板じゃなくて、どっかの本で偶然見つけたかったなと思う。

何だか話がコロコロ変わるようだけども。

ああ、そうだ。僕は詩を捨てたんだ。

正確に言えば、ネット詩を捨てたんだけどね。

じゃあ詩誌に応募でもするのかって言うと、全然やらないよ。

ああいうのはもっと歳を取ってからでいいと思うし、応募しなくても後悔しないからね。

何で僕はアホみたいに齷齪と詩を書き続けたのだろう。

友達がいなかったわけじゃない。彼女だって途切れたことはない。

詩の魔力に取り憑かれたんだろうな。

詩を書き続けて、書き続けて、後悔しないのだろうか。

何のために詩を書いてきたのだろう。

創作に集中している間、周囲の人に寂しい思いをさせてまで、

タバコを吸うように書き続けてきたのはなぜだろうか。

詩人だから? 詩人なんて言葉、煙のように覚束ないじゃないか。

そもそも詩人を本気で目指しているなら、詩誌に出すべきじゃないか。

一度でも真面目に詩誌を読んでみて、その詩誌のレベルの高さを直視するべきで、

それはつまり、ネット文芸投稿掲示板のレベルの低さも同時に直視するってこと。

自分がなんでネット文芸投稿掲示板に身を浸しているか?

同レベルだからだよ。落ち着くんだろう、そこが。

レベルの高い人は、きちんと自分のレベルに合った場所を選ぶものだよ。

便所の落書きの美しさ云々を語る前に、掃除しろよってな。

とりとめがなくなってしまったな。いつもこんな感じだ。

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ぽたぽた焼き


たまねぎを切るときは
目にしみてしょうがないけど
冷蔵庫に入れて冷やしておくか
切るときにコンロの火をちょっとつけておくだけで
涙が出にくくなるように


ふきんを使っても 輪ゴムを巻いても
固くて開けられない瓶のふたが
ふたのまわりをちょっとあっためてやるだけで
簡単にパカっと開けられるように


生きていくためのコツみたいなものも
きっとあるって あたし思うのよ





生まれた環境がほんの少し違っただけで
幸と不幸が分けられてしまう
それで人生すべてが決まってしまうのならば
神様 生まれる前に殺してくれたらよかったのにと
いまさらそんなことを云ったってキリがない



愛情過多で嘔吐し続ける人もいれば
愛はおろか 衣食住さえまともに与えられずに
自分を痛めつけずにはいられない人もいる
傍から見れば 一見どんなに幸福そうにみえても
みんなそれぞれ なにかしら抱えて生きている
どんなに足しても掛けても つきまとう物足りなさ
割っても割っても割り切れずにもてあましてしまう感情
それを人は 淋しさといい 
悲しみと呼んでいる




生きることに正しいも間違いも本当はないんだけれど
人はひとりではとても脆くて弱い生き物だから
持ってる人をうらやみ 持っていない自分を憂いて
何が上で何が下とか 安心材料ばかり欲しがって
そんな自分がたまらなくかわいそうでかわいそうで仕方なくって
いじけて不貞腐れて こんな人生いらねえやなんて
半透明のゴミ袋に入れてゴミの日に出そうとするも
それが燃えるのか燃えないのか あるいは粗大ゴミ扱いなのか
粗大ゴミなら有料で いくらかかるのかなんて考えてるうちに
結局出せずに 溜まっていく一方だったりしてさ
ホント どうしていいかわかんないったらありゃしない



でもさ でもね
たまねぎを切るときの裏技とか
固い瓶のふたを開けるためのコツとかみたいに
生きていくためのコツがあったって不思議じゃないわけで
人生を切り開く缶切りみたいなのがあるんなら
すべてをあきらめたふりして逃げてる場合じゃないなって
そんな缶切りがもしあるのなら
これはもう なにがなんでも探すしかないって
探すしかないっていうのはつまり
生きてくしかないってことだから
もう四の五の云うのはやめにして
そろそろ本気で生きなきゃなってさ




……な~んて
なんだか真面目くさい話になってしまったわね





それより そんなこと考えてたら 
なんだか急に お腹がすいてきちゃったわ
寒い日が続いてることだし 今夜は久々に
トマトシチューでも作ろっかな





☆★**★☆**☆★**★☆**☆★**★☆

 ぽたぽた焼きの袋の裏にあった、おばあちゃんの知恵袋
 あれ好きだったんだけど、久しぶりに買ってみたら
 子どもの遊び、にかわってました^^;
 イラストのおばあちゃんもリニューアルされたみたいでした(^_^;)

 それにしても、トマトスープをよく作るわたしです(^^)







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鈍行列車

六駅さきから はるばる
運ばれてきた 錠剤

これがねこなら
不穏な思いやりであるところ
錠剤であれば 安心

くっきりと白いカラー
りっぱな見ため

たぶん もう
誰かの おくすりに なることもない

旅が訪れるだろう

手をふるよ 錠剤
楽しんで 錠剤

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ズレの累積

二月に入って、朝の空気が一段冷える。
庁舎に入り、コートを脱いで席に着く。

内線が鳴った。
「白石さん、昨日の件なんだけど」
総務課の担当者だった。受話器を肩に挟み、机の端から該当する資料を引き寄せる。
「前提は、昨日お伝えしたとおりです」
一瞬の沈黙のあと、相手が言った。
「それが、うちの課にはその認識が来てなくて」

画面を見つめたまま、短く息を吐く。
「わかりました。こちらで整理します」

電話を切り、別部署に確認を入れる。
「なるほど、そういうことですね」
「失礼しました」
「いえ」
受話器を置くとき、プラスチックが軽く鳴った。

昨日確認したはずの文言。共有したつもりの前提。
少しずつ、噛み合っていない。

間に入ると、話は先に進んだ。修正と再共有は、その場で済ませた。

「白石さんが把握してるなら大丈夫ですよね」
そんな言葉が、自然に飛び交うようになった。

反応は返さない。

昼前、福祉課で短い打ち合わせをした。事実関係を確認し、文言を整える。
「ここは、正確にしておいたほうがいいと思います」
その修正で、話はいったん止まった。別の部署の確認が必要になったからだ。
「じゃあ、午後に持ち越しですね」
誰かがそう言い、打ち合わせは終わった。

廊下の冷気を感じた瞬間、声がかかった。
「白石さん、判断もらえますか」
資料に目を通し、頷く。
「この形で進めてください」

誰も異を唱えない。
判断は、そこで止まり、そのまま先に流れていく。

午後の会議では、説明役になる場面が増えた。
「白石から説明してもらおうか」
立ち上がり、資料を手に取る。説明は簡潔で、誰かを否定しない形に整えられている。
会議は予定より早く終わった。

廊下に出たところで、上司が声をかけてきた。
「最近、助かってるよ。細かいところまで見てくれて」
「いえ」

夕方、ようやく席に戻ると、机の上には朝よりも多くの書類が積まれていた。
どれも、関わった案件だった。
一つ手に取り、内容を確認する。修正した箇所に、赤ペンの跡が残っている。

時計を見る。もうすぐ定時だった。

仕事は、まだ回っている。
ただ、
白石がいないと回らない部分が、
少しずつ増えている。
その事実は、
まだ整理されていなかった。

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周回軌道

これまで生きてきた中で
一体どれだけの分岐点に立ってきただろう
どれだけの選択肢があったというのだろう



もしもあのとき 違う途を選択していたら
いまとは違う生き方ができていただろうか




     目の前に巨大な壁がありました
     その先へ進んでいくためには 
     どうしてもその壁を越えないといけません
     しかし 運動神経皆無で高所恐怖症のわたしには
     とてもその壁をよじ登ることは不可能です
     果てさて 困ってしまいました
     近くにはしごのようなものはないかしら
     もう少し わたしでも登れるくらい低くなっているところはないかしら
     ウロウロ ウロウロ 右往左往と立ち往生ばかり
     そのうちに抜けられそうな場所を見つけ出します
     良かった助かった
     高い壁をよじ登ることもしなくて済んで
     これで先へ進んで行くことができます
     できるはずです



     その巨大な壁をうまいこと回避できた気になって
     壁の向こうのその先へ
     進んで行けてるような気になって



     あるとき ふっと気づくのです
     眼前には 相変わらずあの巨大な壁が
     まるで嘲り笑うかのごとくに立ちはだかっていることに



     ずっと抜け道をみつけた気になっていたけれど
     うまく壁を越えられた気になっていたけれど
     それはただ そんな気になっていただけで
     実はずっと ただその巨大な壁の周辺を
     ぐるぐる ぐるぐる
     廻り歩いていただけだったということに




もしもあのとき 違う途を選択していたら
違う人生が待っていただろうか
いまよりもう少しマシなふうに生きられていただろうか



たとえどんなに いまとは違う途を選択したとしたって
結局まわりまわって
いまいる同じ場所に辿り着いているんじゃないだろうか
たとえばそう あの巨大な壁の周辺を
ただぐるぐるぐるぐる 廻り歩いてただけだったように



人生って いろんな選択肢の中から
自分で選んできたようにもみえるけれど
本当はそうではなくって
けどきっと そのときそのときで
それを選ぶより他に方法がなくって
選ばされ選ばされてきた結果
いまいるこの場所に辿り着いたんじゃないだろうか




どの道この道 所詮は周回軌道




そういうのをだから
つまるところたぶん



運命って呼ぶんじゃないかってさ






☆★***★☆***☆★***★☆

 なにを選んでも選ばなくても 
 きっとたどり着いたのがいまの自分なのだから

 そんなに自分を責めなくっていい
 否定しなくっていい

 そう思うのです




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心臓をチュッパチャプスにした十二秒



全ての地面が、人間の皮膚と同じ素材になった世界で転がったら、君と抱き合っていた時の事思い出す。

真夜中、黄色い信号が点滅した回数分、君は増殖する。

今朝目覚めたら、君だらけになってた部屋。
君だらけといる間は、羊毛フェルトに包まれてるみたい。

守護霊が骨折したから、守護霊クリニックに診せにいく。

診察結果は全治2ヶ月。

「それまで私が、守護霊を守ってあげる番ね」

私のクローン工場から脱走者がたくさん出たらしい。

空中には、私私私私私私私、空は私だらけ、全員撃ち落としたミサイル。

今日、私はたくさん死んだ。

私、全員の墓。私も死んだら、そこに埋葬される。

ベートーヴェンの生まれ変わりは、今じゃユニクロの店員。
試着室に溜まったハンガー。
カチカチして演奏した交響曲第十番。

滑走路の亡霊がずっと私の後ろをつきまとって来る。
私はその滑走路を全力疾走して、空に羽ばたいていく。

ざわめく一秒。
いびつな二秒。
裸になった三秒。
没落した四秒。
ピッチャーマウンドに埋まっていた五秒。
水平線の最前線にいる六秒。
ひとりぼっちの七秒。
二酸化炭素が肉眼で見える八秒。
砂の城に暮らす九秒。
遊園地に置き去りにされた十秒。
真夜中の裂け目から生まれた十一秒。

そして私が、心臓をチュッパチャプスにした十二秒。

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行き先


冬空のスーパーマーケットの駐車場にて、
人待つ間に買ったばかりの花林糖の袋を開ける。

ガラスの向こうにはパノラマの空。
雲があったりなかったり。
風が舞ったり舞わなかったり。

あっ、ヘリコプター。
ブルブルブルブル、威勢よく右の空へ。

あっ、飛行機。
音を立てずに、ひたすら左の空へと進んでいる。

上下に分かれて上手にすれ違った。

あっ、何の鳥だろう?
ちろちろちろり、前から奥へせわしなく。

みんな、どこに行くのだろう。

負けじと花林糖の袋に指を突っ込む。
ポリポリポリ。
喉を緩める。

手には次の花林糖。
やっぱりお茶を飲もうかな。
つまんだ指を袋に戻す。

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匂いの温度

懐かしい匂いがした
足が勝手に止まってた
込み上げてくる再会の熱を
鼻の奥で感じていた

なのに何も思い出せない
匂いの先を辿っても
虚空ばかりが鼻につく

そして刹那が通り過ぎ
いまはその匂いさえ思い出せない

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層を重ねて

一、澱

ちいさな
ちいさな
傷痕は

少しずつ
少しずつ
沈めて来た

だからもう
流れ出る水は
清らかに


 淵の底には
 想いものが
 残り続けて


でもいつか
それすらも

黝の夕暮れにほどけた
朱霞の河霧に潤した

わたしの澱は
縞模様の
堆積岩となって




いつか誰かが
手にするのかも、ね。

ーー

二、地層の調和

​朝の鏡に向かって、わたしは「日常」を着ていく。
薄く引いたアイラインと、丁寧にアイロンをかけたシャツ。
それは、今日という日を誠実に歩くための
わたしなりの、清潔な決意。
​背筋を伸ばして、誰かの言葉に頷き
ふさわしい言葉を選んで、社会の網目の中を泳ぐ。
その忙しなさも、その責任感も
嘘偽りのない、わたしの確かな一面だ。

​けれど。

ふとした沈黙、資料をめくる指先、
コーヒーの湯気の向こう側に。
あの夜の、湿った森が そっと息をする。
​それは、今の生活を否定するためではなく
今を支える、深い土壌として。
​シャツのボタンの下、
あの繊細なレースが、肌に静かに触れている。
小さな胸が刻む鼓動は、
事務所の静寂の中でも、満月の下と同じリズム。
​「ちゃんとやっているわたし」も、
「すべてを晒して震えたわたし」も、
どちらも、地続きの同じ命。

​人混みの中で、ふと足の指を丸めてみる。
靴の中に守られたその足裏は、
あの冷たい木の感触を、今も鮮明に引き出せる。
それは、誰にも見えない、わたしだけの「お守り」

​取り繕っているのではない。
調和させているのだ。
強さと、脆さを。
日々の光と、夜の月明かりを。
​整えられた外側があるからこそ、
内側の熱は、より深く、清らかに澄んでいく。

完璧ではない自分を、
完璧に演じなくていい自分を、
そっと、シャツの下に抱きしめる。
​わたしは、この装いの中で自由だ。

誰にも気づかれない場所で、
わたしという森は、
今も、静かに 息づいている。

ーーー

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愛の詩

時代がほら 諦めたつもりで
輝きを無くしている
ぶつかり合う世の中で
壊れだした人類の心

哀しみに口を噤んで 言葉を亡くさないで
語らなきゃいけないの

愛の詩 愛の詩
愛が好きって 綴っていたい

群衆がほら 理解ったつもりで
愛を軽々しく語っている
其々の思惑を抱いて
渦巻いている僕達の街

誰かの呼ぶ声に 立ち止まらないで
進まなきゃいけないの

愛の詩 愛の詩
愛が好きって 綴っていたい

何度傷付いたら 何度躓いたら
其処に辿り着けるの?
愛の鼓動がまた 弱っていく現代
挫けず貴方と生きていたい

愛の詩 愛の詩
愛が好き 愛が好きって
明日も紡げますように…

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朗読劇:『多面的な愛の解体、あるいは四次元的ショコラの多面体』

男A(アオイ)
男B(コウキ)
女A(ミオ)

【本編】
男A:
(深い呼吸から)
ねえ、聞こえるかい? 僕の胸の鼓動が、「四分音符の限界を超えて、宇宙の終焉と同じリズム」で鳴り響いているんだ。
今日という日は、ただのカレンダーの集積じゃない。
それは、「実存的空虚を埋積するために生成された、多層的な無意識の糖衣状結晶」……すなわち、愛という名の受肉を、私たちが分かち合うための儀式なんだよ。
男B:
相変わらず、君の語彙は「過剰な装飾性を帯びた精神の痙攣」を伴っているね、アオイ。
それは単に、「フェニルエチルアミンという名の神経伝達物質を媒体とした、脳内化学反応の擬似的表出」に過ぎない。
君は、「客観的偶然の理論的構築」と「主観的妄信の感情的噴出」の区別すら、「ゲシュタルト崩壊を起こした認識の地平」に放置したまま、甘美な地獄を彷徨っている。
女A:
(二人を遮るように)
二人とも、静かになさい。貴方たちの対話は、「二元論的対立構造の再生産」に終始しているわ。
アオイ、貴方の求める愛は、「対象を千々に切り刻み、再構築することでしか自己を確認できない、サドマゾヒスティックな認識の病理」。
コウキ、貴方の否定は、「不確実な多面体を直視できない弱者が、論理という名の安価な接着剤で世界を平坦に塗りつぶそうとする、脆弱な自意識の隠蔽」。
どちらも、「不可逆的なプリズムの屈折率を無視した、絶望的なまでの視力不足」なのよ。
男A:
視力不足だって!? 違う、僕は見ているんだ!
パブロ・ピカソが夢見た、「三次元的実在を二次元のキャンバスに断罪し、時間軸さえも一望の中に収めるキュビズムの暴力」を。
この一粒のチョコレートを見てごらん。
上から見れば「義務」、横から見れば「陶酔」、裏から見れば「憎悪」。
これら全ての位相が「同一の時間・空間上に重なり合い、火花を散らすパラドキシカルな多面体」。
それこそが、僕たちの愛の正体……「多視点的同時存在(マルチプル・パースペクティブ・コエグジスタンス)」なんだ!
男B:
(嘲笑うように)
「多視点的同時存在という名の免罪符」か。笑わせる。
バレンタインなんて、「老若男女の感傷を攪拌して収穫する季節的な感傷の搾取」であり、「商業主義という名の大文字の他者に、己の欠落した自尊心を差し出す、滑稽な集団催眠」だ。
君の言動は、「意味のゲシュタルト崩壊を伴う、漆黒の多幸感(ユーフォリア)」を装った、「単なる論理的整合性の欠如」に過ぎないんだよ。
女A:
(重々しく)
いいえ。私たちは今、「不確実な未来という名の断頭台で、互いの首を差し出し合う相互理解の限界点」に立っているわ。
アオイの狂気も、コウキの冷笑も、この「カカオの受肉」という一点において、「幾何学的な虚無を咀嚼して吐瀉した、脆弱な自意識の防護壁」として機能している。
そこにあるのは、「救いなどという安易なカタルシス」ではない。
「冷徹なまでに分解され、再構築を拒絶された、愛という名の醜悪な構造物」だけ。
男A:
(感極まって)
ああ、喉が灼ける!
この苦みこそが、「高密度なカカオの脂質に混濁した、真実へのアクセス権」だ!
僕の脳内では今、「感情のフォルテシモ」が吹き荒れ、「不協和音を伴うフラクタル構造」として僕の存在を解体していく!
僕は、「一つの真実」なんて欲しくない。
「無数の嘘が、矛盾なく重なり合う、その美しい破滅の頂点」で、僕を処刑してくれ!
男B:
……救いようがない。
我々は今、「芸術という抽象概念を過剰に擬態した、醜悪な自意識の露出」の果てに、「言語という名の限界点」に到達した。
「不確実な因果関係を捏造して、自己の存在理由(レゾンデートル)を担保しようとする、あまりに滑稽で、あまりに痛ましい、人間という名の壊れた楽器(インストゥルメント)」だ。
女A:
静寂が来るわ。
「バニラの香りが、私たちの存在の輪郭を白く塗りつぶし、不可逆的な静寂の爆発が、全ての視点を無へと還す前に」。
この一粒を噛み砕きなさい。
それが、私たちがこの「甘美な密室」で、唯一共有できる、「永遠を擬態した一秒」なのだから。
男A:
(満足げな溜息)
ハッピー・バレンタイン。
男B:
(諦念を込めて)
ハッピー・バレンタイン。
女A:
(深く、静かに)
愛という名の、美しすぎる、そしてあまりに発音しづらすぎる、多視点的処刑台の上で。
(完)

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私の妹

私は妹を愛していた。

「お姉ちゃん、クラゲって何?」

愛おしかった。

「海にぷかぷか浮いてる生物だよ」

妹は私の後にいつも着いてきて、慕って、かわいらしい存在だった。だが、私の妹は盲目で病弱でいくつかの臓器が病気に犯されている。妹は体育祭や修学旅行など、イベントはほとんど休まされ楽しむことはできなかった。
そんな妹が移植手術を受けることになった。悪いところは全部取り替える、ということだ。もちろんリスクはある。でも少しでも妹には楽になって欲しかった。世界を見て欲しかった。家族はその手術を受け入れた。

最初の移植は、心臓だった。
手術が終わったあと、私はガラス越しに妹を見ていた。白いシーツの上で、舞香は静かに眠っている。人工呼吸器の音が、一定の間隔で部屋を満たしていた。

「成功です」

医師はそう言った。

「数値も安定しています」

私は礼を言った。

「ありがとうございます、ありがとうございます、ありがとうございます」

声が震えている。安堵しているのだと、自分では思っていた。神様、ありがとうございます。舞香を生かしてくれてありがとうございます。最愛の妹なんです。本当にありがとうございます。

よかった、手術が成功して。まだ心臓だけだけど、舞香が生きやすくなるならそれでよかった。

夜、病室に入る許可が出た。姉は椅子を引きよせ、妹の胸にそっと手を当てた。
 ――違う。そう思った瞬間、私は私を叱った。助かったのだ。生きている。それ以上を望むのは、贅沢だ。そんなこと、考えるな。
けれど鼓動は、どうしても覚えのない速さで刻まれていた。舞香の心臓は、もっと不安定だった。姉が眠りにつくまで、勝手に速くなったり、急に静かになったりした。それが愛おしかった。

「……いや、健康になった証拠ね。前は不整脈も多かったから、違くて当たり前じゃない」

 姉は小さく呟いた。違和感は、慣れれば消える。そう信じることにした。
数日後、妹は目を覚ました。

「お姉ちゃん」

 名前を呼ばれた瞬間、姉は胸の奥がほどけるのを感じた。大丈夫だ。舞香だ。




二度目は角膜だった。

角膜移植だと説明された。
視力は回復する。以前よりよく見えるようになるかもしれない、と。
包帯が外された日、医師が言った。

「光はどうですか」
「まぶしい」
  
妹は笑った。

「誰か分かる?」

妹は部屋を見回し、姉を見た。

「……お姉ちゃん」

ほんの一瞬、間があった。
姉はそれを見逃さなかった。
安堵と同時に、不安が生まれた。

「お姉ちゃんってこんな顔してたんだ〜私と似てるね!私けっこー美人じゃん!」
「お調子者なところは似てないけどね?」

そうだ。舞香は見えるようになったんだ。それでいいじゃないか。舞香は盲目じゃなくなったんだから。舞香が人間らしい幸せな生活を送れるのであれば何でもいい。
 姉はその夜、眠れなかった。自分が細かすぎるのだろうか。生きているだけで十分なはずなのに。翌日から、姉は妹の正面に座るようになった。視線が合う位置。声が一番届く距離。

「舞香、喉乾いてない?」
「ううん、大丈夫」

 会話は普通だった。何も壊れていない。それなのに姉は、安心するために努力が必要になっていることに気づいた。守らなければ。何を、とはまだ分からなかったが、そう思った。



三度目の移植で、声が変わった。

「おはよう」

朝、妹が言った。

姉は返事が一拍遅れた。
音程が少し高い。語尾が柔らかい。舞香の声は、もっと平坦だった。

「どうしたの?」
「……なんでもないわ」

姉は笑った。笑う練習をした。

この頃、私の中で価値基準が変わり始めていた。
以前なら「舞香らしさ」を失うことが怖かった。
今は「舞香が舞香でなくなること」を認めてしまう自分が怖かった。
だから私は、判断を先延ばしにした。
違和感は無視するもの。愛は続けるもの。

「私、前より声高くなった?」
妹が聞いた。

「そうね」
「変かな」
「いいえ」

嘘ではなかった。良いか悪いかは、私が決めればよかった。声は同じだった。少し掠れていたけれど、確かに舞香の声だった。



四度目、皮膚と血液。

匂いが消えた。
幼い頃、熱を出した舞香を抱いたときの匂い。雨の日に帰ってきたときの匂い。病室に漂っていた、舞香特有の匂いが消えたとき、私は初めてそれを失ったのだと自覚した。
それでも舞香は笑ったし、泣いたし、私の名前を呼んだ。記憶は保たれていた。
私たちだけが知っている話も、ちゃんと覚えていた。
だから私は、自分に言い聞かせた。
――舞香だ。
――舞香に決まっている。
そう思い続けることが、姉である私の役目だと思った。

妹の手を握った。

「冷たい?」
「平気」


舞香は生きている。この事実が、私の中で絶対になっていった。変わり変わってしまっても、舞香は舞香だ。



最後の移植は、脳の一部だった。

医師は慎重に言葉を選んだ。
人格への影響。反応の変化。感情の揺らぎ。
私はすべてを理解したふりで聞いていた。
理解していなかったのは、いつから舞香ではなくなるのかという一点だけだった。

「助かりますか」

私それだけを聞いた。

「……はい」

「なら、お願いします」

 恐怖はなかった。迷いもなかった。私は舞香が変わることより、失うことのほうが耐えられなくなっていた。

手術後、舞香は目を覚まし、私を見て、微笑んだ。
でも、その微笑みは、少しだけ角度が違った。
舞香なら、こんなふうには笑わない。
そう思った瞬間、私は自分の考えを押し殺した。
舞香は変わったのではない。私が、変化を拒んでいるだけだ。そう言い聞かせることが、もう癖になっていた。
問いが生まれる前に、答えを与えればいい。
舞香が舞香である理由は、ここにある。
私が、そう決めている。
私は医師に呼ばれ診察室に入った。

「もう、舞香さんの体内には、移植前の細胞は確認できません。遺伝的にも、生物学的にも——元の舞香さんは、もう存在しないと考えるべきです」

私は反論しなかった。驚きもしなかった。どの臓器までが舞香で、どこからが他人だったのか。
私は、その線を引かなかった。
引いてしまえば、愛せなくなる気がしたから。

「それは知っています。ずっと前から」

「後悔……していませんか」

「……してません。舞香が死ぬだなんて、考えられませんから」

私はにこっと笑顔を作り診察室を出た。私は、ただ頷いた。その事実は、ずっと前から私の中に沈んでいた。舞香の病室に戻った。
窓の外を見ていたその横顔は、知らない人のようで、でも確かに私の妹だった。

「おまたせ、舞香。退院まではあと1週間くらいかかるみたい」
「ねえ」
「なあに?」
「……私、誰?」

姉は胸が締めつけられた。私は椅子に座り、舞香の手を取った。温度は、ちゃんと人のものだった。

「……私が愛している人よ」

名前も、過去も、細胞の話もしなかった。
定義を放棄した言葉だった。舞香は、少し考えるように黙ってから、ゆっくり頷いた。

「そっか」

その返事が正しいかどうかなんてどうでも良かった。舞香である必要はない。私が愛せればいい。


退院後、舞香は高校に復学し私も仕事を順調にこなしていた。私は記者をやっていて、あまりにも忙しかったので妹の療養中は休職させてもらっていた。仕事場に戻り、挨拶をする。久しぶりに自分のデスクに座り、パソコンを開く。たまりにたまったメールを確認し、コーヒーを飲む。パソコンにはネットニュースが流れている。

「あ〜、これから仕事するのかぁ…」
「あはは、休職してたもんね。まあゆっくりがんばろうよ」

同僚に声をかけられ、笑顔で頷く。ネットニュースが、流れている。

『都内私立女子南平高校に不審者侵入か』
『教職7人、生徒19人が負傷、1人が意識不明』

私立女子南平高校。舞香が、通っている学校。私はすぐにスマホを取り舞香に電話をした。でない。
汗が滲み出てきた。もう一度かける。汗が止まらない。苦しい。世界の時が止まっているように感じる。

「おかげになった電話番号は現在使われていないか__」

「堂本さんどうした?大丈夫?」
「あっ、あ、大丈夫、です」


忌引休暇をもらったので、仕事はまだまだあとになりそうだ。

舞香の葬式が終わった。私は一人で舞香の顔を見た。

「なんで…なんで……」

どの細胞が誰のものだったのか。
どこまでが舞香で、どこからが他人だったのか。涙が止まらなかった。それが何に対する涙なのか、もう区別がつかなかった。でも今、私は悲しんでいる。

「ねえ、すごく好きだったよ……」

この人が舞香でも、舞香でなくても、この人は私が定義を捨ててまで愛した人だ。

書類には、舞香の名前が書かれていた。
私は、そこに線を引かなかった。最初から最後まで。舞香が誰だったのかは、最後まで、わからないままだった。

それでいいと思った。

私が愛していたという事実だけは、どんな臓器にも、どんな定義にも、交換されなかったから。

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 3

 3

Broken Textbook



算数
Q.1時間ごとに、世界のどこかの空から、900円が降ってくるようになって、私のところに連続で、降り続けた1年間の合計金額は?
A.788万4千円

英語
?の下の点に生まれた君は、ピリオドのふりして英文のラストに居座ってる。下の点を失った?は横に寝転んで、√のふりして生きていくことにしたらしい。

理科
コカコーラのレシピが、飲んだらわかるほどの、絶対舌感を持っている私は、君の汗を舐めた時、人間のレシピがわかった。

社会
2176年に流行したピンボール病にかかった人は、ピンボールのボールみたいに、全ての物にぶつかりながら前に進む。少し前を歩く君の背中のファスナーから、本当の君がこっちを覗いてる。

国語
世界中にあるすべての言葉が消滅して、ゼロから言語が誕生する。一番最初に生まれた言葉は、次の世界の『愛してる』に変わる言葉、『ばばぶぶぶぼー』。その後、『愛してる』って言葉も生まれたけど、次の世界でそれは『親指』って意味になる。だから、「ばばぶぶぶぼー愛してる」は、「愛してる、親指」。

道徳
世界中のピストルの銃口から、咲いた一輪の花。

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 1

 2

とにかく包丁で言葉をザクザク切ります

とにかく包丁で
言葉をザクザク切ります
ザクザク
切った言葉には
ありがとう
さよなら
ひどい
と色々な人の想いがありました

今日も
新宿で
言葉をザクザク包丁で
切っては
お客に出しています

一つ三百円です

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黒魔術師のSide Effects


「私が指をパチンと鳴らすたびに、
半径1キロメートル以内にある、
全ての建物が爆発するの」
そんな君が、渋谷スクランブル交差点の真ん中で、
鳴らした指。

私が「赤」とか「青」って言うたびに、
地球上にある全ての信号機が、その色に変わる。
そんな私が、ひたすら『赤』って連呼して、
世界を停止させた日。

君の血液型は珍しいQ型で、
出血多量死寸前の君に輸血するために、
自分の血液型をO型からQ型に変える、
黒魔術を唱えた副作用のせいで、
私は体内にある全ての骨が、なくなってしまった。

次に目覚めた時、私の体内の骨は復活していて、
その黒魔術を使った副作用のせいで、
君はジグソーパズルみたいに、
バラバラになっていて、
君を復元するために、パズルの天才少女を、
召喚した副作用で、私の姿は自販機に変わる。

「君がキスしてくれたら、元の姿に戻れるの」
って、世界のどこかで、
自販機と全く同じ外見になった私を、
見つけ出すために、
世界中の自販機に、君がした口づけ。

砂漠で人間に戻れた私の周囲には、建物が一つも無いから、君が指を鳴らしても、もう爆発は起こらない。
そんな君の隣で、私は『青』ってつぶやいて、
この世界を前進させる。

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 3

 4

[え]えんとつ屋根の下

赤いえんとつ屋根の下がお気に入り

色えんぴつと画用紙を持ってひろげる

温かいココアとデコボコのクッキーを側に

冬の隣に薪木を暖炉へ焚べる

瑠璃色の陽炎がえんとつ屋根の中を昇る

何億の溶けない雪の一粒がえんとつ屋根を通って瑠璃色へと落ちる

赤いレンガが煤けて、おかわりに飲む珈琲

揺り椅子に座って思い出に浸る

煤けたえんとつ屋根の元でシワをなぞる

今日もここはわたしの特等席

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 2

 4

クロソイド曲線

国境のトンネルを
口下手な父の背中を
後部座席に寝ているふりで

にぎわう峠のドライブイン
見知らぬ町
見知らぬ人々のなかに
いつもとは違う顔の父がいた

ナトリウム灯に
群がるように雪がふる
硬く白い路面に
縦型の信号機に雪がふる

促されるまま
連続するカーブの
残りをひとつ
またひとつ数えて
からだが右左に傾くたび
父と子のぎこちない言葉が
すこしずつ解けだした

今年、父と同い年になる

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 6

 10

シャボン

どこからか
ふつふつと雑音が沸いてきて
キャーッと悲鳴を上げ
誰かの裾を掴まえるが
裾はシャボンでできていて
パチパチと弾ける音ばかりが鳴る

逃げれば先はない
逃げなければ苦しい
ホームの後ろに 
黒い抜け道があると聞いた
腰まで水に浸かりながら歩き
向こう側へ出た人がいる

駅のコンコースには噴水
豚まん店の裏は空洞になっている
水羊羹を売る小さな店は
ときどき 色がちがう

皆、泡のように浮かんでいる

私も真似て見るが
なかなかうまくゆかない

駅の中の本屋から
SOSが聞こえる
だめだった人たちだろうか

走る
手はシャボンで一杯
足が 痛い
雑音が
延長コードのように伸び
その先っぽは、手だ

もう、いいと思う
ここはシャボンの世界

豚まんを買い
するりと改札をぬける

陽射しが伸びてきて
次の闘いが始まる
終わりのない シャボン

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 4

 7

茨の道

僕達は何度でも同じ過ちを繰り返す 
でも太陽の向きによっては 
それが正しい時もあるということを 
君は何も諦めない眼で言い切った 

茨の道を素足で歩くたび食い込む棘を 
注意深く抜く時 
いつかのあの日を思い出す 
再生しすぎて擦り切れた画像の君は 
あの日のままに今日も手招いてくる 

預言者のように 
あの時から今のこの時までを 
君は知った上で諦めてはいけないと 
やがて消え失せるのを拒む強さで 
はかない約束をした 

あの時二人で歩んだ道は 
夏の終わりの温かい砂浜 
君の足跡をなぞりながら 
形を残そうと力いっぱい踏みつけて 
逆光の中で君は確かに笑っていた 

あやふやな記憶は時に鮮やかに 
輝くものだけで君という像を結ぶけど 
それはいつだって一瞬の奇跡のように 
こことは切り離された夢物語に解ける 

僕達は何度も道を誤り 
離れてしまった体熱を探し続けるけれど 
でも太陽の向きによっては 
茨の道はひとりで歩くのが正しいのだと 
いつかの君が呟いた声を今もまだ 
忘れられないでいる 

棘を抜く、痛みと共に

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 7

 2

膝君主制の夜明け(セルフ婚パッション) 短歌連作

える坊と名付けた膝で跋扈する
今日はお前で明日は我が身だ

える坊がタイツ越しにて抗議するここもおいらの顔面だぞと 


膝にさえ据えたヴィジョンと造反の意思があるのにおまえはなんだ

左膝なんて所詮は代名詞える坊様の威光に慄け 


新山(ニーやま)と名乗る右手の肘のくせ朝飯前と配下につけて

痙攣の機序を脳には学ばせる
錯覚こそを正覚と知れ

🥺沼られる膝でありたい君にだけこのマニュアルの初回は無料❣️

頭垂れ高く掲げた膝の皿三々九度の契り結びて

膝枕させてあげないこともない母指の渾名は実はゼクシィ

える坊がマルチばっかのベローチェの低いテーブル頭をぶつけ

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 2

 1

わっか


月のわっかをひっかけて

頭にのっけて笑ってみせた

「あなたの願い、叶えてあげる」

天使になったきみが言う。

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 5

 5

夜 明 け の 扉



し ず か な し ず か な
夜 明 け の 空 に 霧 が か か る
手 に つ い た 絵 の 具 と 同 じ 色
隙 間 か ら 見 え る 古 び た 扉
笑 い た く な い な ら 土 に 潜 れ ば い い
唄 い た く な い な ら 鏡 を 睨 め ば い い
消 し ゴ ム が な い な ら 雨 に 打 た れ れ ば い い
あ け た い あ け た い
扉 の 向 こ う を 見 て み た い
眼 を 閉 じ 両 手 を 伸 ば す
ザ ワ ビ ギ ル リ
佇 む よ う に じ っ と し て い る
土 か ら 芽 が 顔 を 出 す
鏡 に 映 っ た 太 陽 が 微 笑 む
雨 の 代 わ り に 涙 が こ ぼ れ た
そ の と き
扉 は サ ワ ン と 開 い た
眩 し い
明 る い
や さ し い 朝 に
ゆ っ た り と 言 葉 を か け た

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 7

 7

人生劇場

用は足したのですが
ちょうどうちの部屋の若いものがやってきて
口喧嘩をはじめましたので
出るに出られません

原因は私のだらしなさで
その尻拭いを
誰がやるのかともめてるようで
出るに出られません

そのうち仕事の話が痴話になって
そうかこの二人はできていたのか
仕事はきちんとしているので
なんの問題もないけど
とても出るに出られません



大きな声もあげられない状況で
抑えた声はすっかり聞き取れてしまって
そりゃたわいもないことで
湯飲みがひとつ割れる音がした


人それぞれやね 
とつぶやきながらようやく
よいしょと腰をあげて
どんな顔して部屋に戻ればいいのかなどと
帰りに給湯室を覗くと


割れているのは私の湯飲みで
ちょっとだけ救われた


  

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 2

 2

ラジオカセット


ラジオカセットの形をした惑星。

君の足が再生ボタンを踏む。

肺炎のサタンが地獄でした咳の音が聞こえる。


一日に一本、指が増えるようになったから、
一年後には340本になってしまう。

「どうにかしてよ」と言われた、
一休さんの頭の中では、爆音のポクチンが鳴る。


「涙に色を付けられるとしたら、何色にする?」
皮膚と同じ色にして、泣いてる事がバレないようにする。


分度器のように世界が真っ二つになって、
反対側の惑星にいる君に会うためにしたジャンプ。


辿り着いたのは、ラジオカセットの形をした惑星
君の足が再生ボタンを踏む

狼に育てられた子に恋をした奴が、
「ガオーガオー」を連呼した愛の告白が聞こえる。


来世では蚊に生まれ変わりたい。

そうなって一番最初にやりたい事は、
君がしたピースの隙間をくぐり抜ける事。

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trending_up 34

 4

 4

プラネタリウム・テイクアウト・デイズ

地球上の人類全員に、つけられるようになった順位。
政府から届いた封筒には、『あなたが最下位になりました』。

その夜、神様がなくしてしまった、地球を作るレシピを拾う。
そこには『ビックバン大さじ1+アダムとイブ』って書いてあって、
私は自分の脳内で、大さじ1のビックバン起こして、そこに小さな地球を作った。

放課後、あの子に影がないことに気づく。
「私ね、影だけが不登校なの」とつぶやく、
あの子の順位は、11億7601位。

未来の物が売っている、未来デパートで買った、
何でもテイクアウト出来るリュックサックで、
プラネタリウムを、テイクアウトして、
不登校になった、あの子の影に見せに行く。
プラネタリウム・テイクアウト・デイズ。

その帰り道、神様がなくしてしまった、天使の採用試験問題を拾う。
そこに書いてあった質問に答えた瞬間、
私の順位は1位になった。

Q.『人間の平均寿命が3分間になった世界で、君は何して、一生を終える?』

「カップラーメンにお湯入れて、次に生まれた奴に食わせる」

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 4

 4

いい、茶柱

そっと 




口紅を
交互に  
つけて
湯呑を
まわす
唇を
てらす



いい、
茶柱

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 3

 6

青空

きみがきみであるために
太陽は照り
雲はほどけ
空気は澄んでいく

それを
協力と呼ぶのは
少し違う

ただ
きみがいてほしい
それだけなんだ

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 5

 2

往復書簡

魂と魂の繋がりを
いつの間にやら見つけて
思い出せない前世の続きを
噛み締めながら

一歩後ろを歩く駐車場
長い年月が奏でた音を
一つずつ確かめ
澄んだ夜空の月と木星

あなたが居るから
冷たい風も心地良く
ただの私として呼吸をする

沈黙の顔は
晴れて自由を取り戻し
星の導きに寄り添うままに

隠れ蓑は要らない
真の愛に目覚める
来世への魂と魂の繋がり

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 3

 5

放火魔の幼体

やけどをくりかえす
爛れた舌に熱湯を注いで
ほら痛いでしょう?なんて言う
揃えられた前髪と内臓
生まれた毛の無駄遣い
あたらしい香り
きこえなくなった匂い
間違えたらころすよ、なんて言う
きみは牡丹を燃やした
ぼくは灰を拾った
かさぶたに塗ったら
ばらばらと崩れ落ちて
きみの歪な笑顔が恋しくなる夜に
ぼくはライターを弾いて
ぼくを燃やした
死んだ惑星に
咲いた花をころして
ぼくたちはいきる

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 5

 5

無人駅

決まりきった畔道は
ときに頼りない
これからどこへゆくんだろう
鳩尾の問いを
ぷかぷかと
白い息に託して

着いた 孤島
稲のない田に
浮かぶ無人駅
使えるのはまだ きっぷだけ

待ちつつ めくって
14番目の英単語
anxious
そうだ 紙一重なんだよな
いつのまにか
遠くから 波のとどろく音

ゆこうか どこへでも
ぷかぷかと 息をついだ
ウィンドブレーカーの中から

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 5

 3

ふわり

暖かい風と空の中、私はいつかその風になりたいと思うただ一人の人間だった。
最近の生活は少し自堕落で、躁にまかせて勢いを飛ばしすぎた。
なんだかさ、もういいんだと言いたいけど、まだ生きなくちゃいけないと思ったり、そうでもなかったり。
そんな毎日にキスをして、ハグをしてもらって、息をする。


ありきたりな検索窓からのメッセージ、拾って歩くネットの樹海の中。
ふと、目に留まった「まだ生きたい」が芽を出すのを放って置けずに、水をあげてる。
ため息と、そこから眺める、絶景。


魂を死神に渡す前に、あの情景を思い出して、渋って、ドタキャンしたりして。
君だけに届けばいい。そう言い渡してばらまいたチョコレートは、少し苦くて甘酸っぱい。
あなたとさよなら、もう行かなくちゃ。心、置いてかないで、ね。

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 5

 5

輪郭

滴る汗は
宝石で
流るる涙は
絹のよう
あなたの顔を
映し出し
開かぬ眼は
泣き叫ぶ
嗚呼よくよくと
ご覧なさい
かの麗しき
あなたさえ
さらに一層麗しく
冥土の道を
歩みます
もうこの世には
あるまじき
美麗を纏った
あなたには
最後に送る
土産とて
絹を一枚
差し上げましょう
御顔の線を
はっきりと
強調している
輪郭は
今まで見てきた
輪郭の
中でも一層輝いて
私に雨を
降らせるのでしょう

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 5

 3

歓迎されないブランコ

都会の隅っこにある公園の砂浜の脇には、限られたスペースに鍵っ子専用の真新しいブランコがあって、いつも整然と止まっているので僕には歓迎されてないかもだと思ってしまう。
それは僕が憂鬱な顔をして、大きな音も出さずに座っているのを、廻りの人間たちから見れば不信感を引き連れて佇んでいるのだ、と厄介な思い違いをされること。
そう考えているうちに少年たちが鳩をいじめている。その少年たちを怒鳴りつけるからだろうと想像できるからだ。
部屋の中ではGAZAのブランコが愉しそうに揺れていた。
廻りは瓦礫に囲まれているというのに、少年たちの無邪気な笑顔は僕の瞳の中で鳩に舞い上がる。
父親は誰だろう
汚れた衣服で瓦礫の片付けをしている。
母親は誰だろう
水を運んで来ては洗い物をしている。
エルサレムの丘で白い花々が添えられて、食卓はあざやかな色に包まれる。
僕は鍵っ子でもなければ鳶色の瞳で空を飛べることもできないよ。
瓦礫に埋まるテーブルの白い花々だけがあたまを過り、
目の前にあるコンビニでアイスクリームを買った。
夕陽に溶け出して、また朝が迎えにくれば少年たちの無邪気な笑顔は消えていた。





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 4

 5

ティアドロップ・メモリー

地球に迫り来る隕石を、
飛び蹴りで爆破するためだけに作られた私。
生まれた時から右足に埋め込まれたリーサル・ウェポン。
ブランコから着地した時、誤爆して地球は一回終わる。

前世が残留するようになった世界で、
王将の換気扇の生まれ変わりの君は、
顔面に油で汚れた換気扇のプロペラつけて生まれてきた。
ずっと回転し続けているから、
自分がどんな顔なのかも知らないみたい。
 
私は前世がサイボーグだった頃の名残りで、
体から少しだけエンジン音がする。
博士が私に入れ忘れた、人を愛するという感情を、
初めて教えてくれた君。

IQ180の私は、
ある日IQが1秒ごとに下がっていく病にかかって、
180秒後、君に伝える『すき』の2文字に、
私の全ての想いを込める。

君が死んだ時、私が流した涙のしずくは、地球と同じ大きさ。
南極で、号泣した瞬間に凍り付いて、
地球の横にできた、氷漬けのもう一つの地球。

ハンマーに生まれ変わった君を片手に、隣の地球を破壊しにいく。
 
再び、あの世に行く寸前の君に、
「来世生まれ変わるもの決めてくれ」って言われて、『二酸化炭素』って答えた瞬間、
君が混ざった吐息が、口の中から出て来る。
 
 

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 2

 3

paypayと30円

あ、虫だ。

なんか可愛いよね、私のそういうところ。

なんでかな、とても難しい顔をしている…。

最近流行のグミ、凄く美味しかった。また食べたい。

…散らばった君との思い出かき集めて、放っとく。

本当は大事にしたいんだよね…ここだけの話だよ。

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 2

 3

花の理想論

足りないわまだ     分かってるでしょ?
あの蝶から羽を頂戴しなさい
満足しないわ    この姿じゃ
花弁に装飾品をつけましょう

ああ私、ここで死ぬのかしら?
やめてよ、散り際に価値も馬鹿らし
笑っちゃう    承認欲求?
あんなのたかが流行り言葉でしょ

三億年の夢を見ましょう
そのうち誰かが起こしに来るでしょう
近くの朝に雨が降るでしょう
そしたら野原をかけまわりましょう
小鳥みたいに

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 3

 1

地上波へようこそ

マグニチュード6の地震が発生しました。
大きな警告音とともにテレビの画面が途絶えた。
ちょうどFIFAワールドカップの試合を録画している最中だった。
 揺れる揺れる
       揺れは次第に縦から横へ傾き
壁に掛けてあるヒデヨシが落ちてきて、
ヒデヨシが落ちればイエヤスも落ちてきた。
すぐにテレビの中継局に電話をかけた。
 ~おい、わしゃノブナガという者じゃがずっと受信契約しとるモノじゃぞ、早う映るように手を打てや~
衛星放送の受信が途絶えて
しばらくすると雨が降り出した
地上放送へチャンネルを切り替えてみる
変わらず地震の影響を画面に流している
~「マグニチュード6から3に切り替わりました」
というテロップが映し出されていた
なんだ!ここは天国じゃなかったのか
揺れが収まり僕はここで眼が覚めた
衛星放送の画面は信号で
三原色だけが斜めに揺れていた。

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 1

 1

何処までも爆発していく

君が
爆弾になって
真実を告げてまわるから
誰もが爆弾になれると

知ってしまったんだ

町は喜びと悲鳴の大連鎖で
誤爆、誘爆
映画が封切られ
真実のドミノ倒しに

導火線はもう信用できなくて
どれが誰の真実なのかもわからない
町の一番高い場所には天使がいる
なんて、誰から聴いたんだろう

天使が
ハンバーガーを食べている看板
全てを見下ろしながら、神様は
いないからハリボテに穴を開けた

更地の町で
剥き出しの真実に口付けした君に
最期の爆弾が落ちてくる

まるでコメディ映画みたい
爆発オチなんて最低、と遺言が
ジ・エンドの代わりに置かれている



爆弾にも爆弾の真実があるんだ

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 3

 1

回折格子

その二枚か三枚かの舌が造る世界が
あなたには本当なんだとしても
私には無縁の世界で

    窮屈そうな
    言葉たちをほどいて
    その向こうの空を見る

    さよならさえも言えない
    あの人は
    何と戦っていると言うんだろう
    その瞳に映る空には
    青が見えない



暗号なんか要らない
解読の楽しみなんか要らない
論破のための言葉なんか要らない
私には要らない

    今日雪降って消えた
    ことばはとんと降ってこない

    今日雪降って消えました
    ことばはとんと降ってきません
    そんな気持ちだけが
    しんしんと積もっては消えて
    これも恋なんだと笑う
    赤い頬っぺたの頃の君が
    湯気の向こうに消えた

    今日雪降って消えた
    ひざを抱えて眠る者たちに
    降って消えた
    ことばはとんと



その二枚か三枚かの舌が造る言葉が
真実なんだとしても
あなたには真実なんだとしても


   

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「独」

歩けど

歩けど

道はできぬ

それが

「独り」

と云うこと

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【読みにくい朗読劇】CALL MY NAME


ー 本作品は「読みにくい朗読劇」として、劇団BOWにより2026年12月に上演されたものです。ー




男A しかし、こちらの書面に書いてある貴方の名前は大変読みづらいですね。

男B 人の名前に対して読みづらいというのは失礼千万ですな。
   貴方の排外主義的差別思想が垣間見えるようです。

女A そうですよ。
   難民審査を所掌する在留査察専門官として、弁えた発言をして頂きたいです。

男A でも、こんな名前読めないですよ。

女A 失敬極まりない。
   片仮名で振り仮名まで振ってあるじゃないですか。

男B 私が、外国を出自とする者だから何を言っても構わないと
   鷹を括ってらっしゃるのでしょう。

男A しかし、そういわれましても。
   ダリヤ・ビント・アブデュルルフン・イブン・マイヤーム。

男B 違います。
   ダリヤ・ビント・アブドゥルラフマーン・イブン・カリーム・
   バルザーニー・ロジャヴァーニーです。
   人の名前くらいスラスラ言っていただけませんかね?

男A 言えないでしょ。
   中東問題に詳しいとかいうそちらの弁護士の先生なら
   スラスラ読めるのですか。

女A 当たり前です。
   ダリヤ・ビント・アブドゥルラフマーン・イブン・カリーム・
   バルザーニー・ロジャヴァーニーさんです。
   ほら、スラスラ言えるでしょう?

男A ふむ〜。

女A 名前をスラスラ言えるだけじゃあありませんよ。
   例えば、ファルハード・アミール=カミーラーイさんとくれば、南クルド、
   アリ・ハミード=マフムード=ハワラニさんとくれば中部クルド、
   私ほどの人権派弁護士ともなれば名前から出身地を推測することも
   できるようになりました。
   因みに、モハンマド=ホセイン・ベフズァード・サルマストさんとくれば、
   アフガニスタン系の方ですね。

男A 長ったらしい名前の人たちだ。忌々しい。
   どうしてそんな名前の人たちが態々日本で就労したいと
   おっしゃるんだろう。

男B そんな言い方はないでしょう。
   私はすでに難民認定を所掌する法務省出入国在留管理局に連絡し、
   難民認定申請書を地方出入国在留管理局に提出した上で、
   難民審査官との面接を受けるよう慫慂されたところです。

男A 慫慂、だなんてあなた難しい言葉をご存知なんですね。
   それに貴方の風貌はまるでアジア人、いや日本人のように見えますね。

男B ええ、人種としては私は日本人かもしれないのです。
   私は両親を知りません。
   私は施設で育ったんです。

男A 施設っていうのはどちらの施設です?

男B シナン・アブドゥルラフマーン・ハルカット・バルザンジー・シャリーフ、
   アルビール県シャルワナ村にある児童擁護施設で育ったのです。
   両親はもしかしたら日本人だったのかもしれない。
   しかし、私はシナン・アブドゥルラフマーン・ハルカット・
   バルザンジー・シャリーフ、アルビール県シャルワナ村の
   児童養護施設に預けられたが故に、
   ダリヤ・ビント・アブドゥルラフマーン・
   イブン・カリーム・バルザーニー・ロジャヴァーニーなどという名前に…

男A もういいですよ。
   で、貴方はそのシナン・アブドゥルンラフマーンヌ・バルジザンとかいう
   トルコの村で…

女A トルコじゃありません。
   シナン・アブドゥルラフマーン・ハルカット・バルザンジー・シャリーフ、
   アルビール県と言えば、イラク北部にあるクルディスタン地域にある
   行政府ですよ。
   クルド人問題はトルコだけに限られた問題ではない。
   自家薬籠中の物として頂きたいところです。

男A あなた本当に詳しいんだな。

女A 常識ですよ。
   アルビール県といえば、Makhmur Refugee CampやQushtapa Refugee Campが
   有名ですし、バルザニ慈善財団が管理する、
   ロジャヴァ出身シリア難民向けアクレ難民キャンプなども
   知られています。

男A 別に知られてねえよ。
   貴方方の狭い狭い世界で知られている話でしょ。

男B 狭い世界の話じゃありませんよ。
   バルザニ慈善財団管理下のロジャヴァ出身シリア難民向け
   アクレ難民キャンプは国際的に知られています。

男A 知らないって。困るんだよ。
   なんで難民が態々日本くんだりまで来るんですか。
   そもそも日本まで来れる、そんなゆとりがある時点で
   難民じゃないでしょう。
   そういうエセ難民みたいな人たちが西川口だか蕨だかに集まって、
   それを中途半端な知識の芸能人がツイートして、
   連日、日本では大炎上ですよ。
   困っているんですよ。

女A しかし、彼は日本語が話せますよ。

男B そうです。
   私の見た目は日本人のようですし、
   実際、日本の文化に関しては、ずっと憧れを持って勉強してきました。

女A 彼はアニメや漫画だけじゃない、
   真に古典的な日本文化に精通しています・

男B そうなんです。
   私は日本の文化に憧れがあります。
   左義長と神嘗祭の夜に響く能管の音色、
   注連縄を張った瑞垣の奥で、
   御霊会に参列する僧が錫杖を打ち鳴らし、
   花傘巡行の列が御田植祭の道を進み、
   流鏑馬の馬が鶯張りの回廊を駆け抜ける、
   そんな日本の風景を体験したいと思い

女A そうです。
   彼は私にこう言いました。
   御柱祭や花傘巡行の列、管絃祭の舟に揺れる提灯の光、
   瑞垣越しに響く祝詞、そして大祓の茅の輪を潜る人々の
   息づかい……そんな音と匂いに囲まれてみたい。
   その夢を胸に、Barzani Charity Foundation–managed Akre Camp for Syrian refugees from Rojavaを抜け、
   Gawilan Refugee Campの日本政府・UNIDO共同農業支援プロジェクト——
   正式名称は“Emergency Agribusiness Empowerment Initiative for Food Security Enhancement in Erbil Governorate”——
   の認定証を手に、アルビール県マハバード通りの埃を踏みしめながら
   ここまで来たんだ!
   どうです?

男A 確かに彼は日本語も流暢だし、日本文化への造詣も深いようだ。
   おまけに人種としても日本人なのかもしらん。
   しかし、おいそれと難民申請を受け付けるわけにはいきません。

女・男B どうして?

男A だって、本当に難民なのかどうかよく分かんねえじゃん。

女A 難民であることは明らかでしょう。
   出身地を聞いただけでわかりますよ。

男A 貴方はシナン・アブドゥルラフマーン・
   ハルカット・バルザンジー・シャリーフ、
   アルビール県の実情が分かってないんだ。

男A 分かってないよ。

女A 分かってないって、それは難民審査を所掌する
   在外寓居査閲官として職務怠慢でしょう!
   開き直っとるじゃないですか。
   謙虚になれよ!

男A うるさいな。
   分からないものは分からないんだよ。
   分からないものは受け入れられない。
   読めもしない名前の人と共生なんて
   無理に決まってるじゃないか。

男B それは貴方が知る努力、読む努力を
   していないからでしょう!

女A そうですよ。
   まともな国際感覚と知性があれば、
   名前くらい簡単に読めますよ!

男A あーもう、五月蝿い、五月蝿い!
   はい、帰った、帰った!
   はい、しっしっ!

男A あ、もしもし。
   今日も変な難民申請の奴が来たから
   さっさと返しちゃったよ。
   あのさあ、小鳥遊彪雅国家外審庁在外寓居庇護 請審査監理官補佐に
   言っておいて欲しいんだけど、
   百目鬼千颯外務庁庇護請求事案総合審議執行管理参与監理官補佐の方が
   俺なんかよりこのポストに適任なんじゃないかと思うんですよ。
   それか、御厨巽国家難邦庇護条約遵守状況監査執行統括最高審理官か
   月見里糸雨特例在留資格庇護案件総合調整連絡審理執務統括監督官とかの方が
   向いているんじゃないかな。
   とにかくさ、もう読めない名前の奴らと仕事するの
   うんざりなんだわ。
   そう言っといてね。
   じゃ!

               (了)

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小さな星の軌跡 第二十話「もう一人」

 木曜日、二年生になって、数学や理科が一気に分野ごとに専門的になる。天文部にいるし選択科目は地学を選びたい気持ちもあったけど、二のAとBは理系のクラス。物理が必須で化学と生物が選択、地学は無し。で、化学にした。先輩は化学が抜群に得意らしいから教えてくれるかな?
 私立文系のE組に行ったおーちゃんは生物を取ったみたい。みっちゃんは理由は知っているようだ。でもそれは二人の間の大切な事かもしれないので、わたしも特に聞かない事にした。
 B組のたかちゃんも物理に化学。なので理科の授業は一緒の教室だね。

 あっという間に放課後。授業の進み方が一段と早い。先輩は去年部長をやりながらこのペースで勉強していたのかと思うと、ちょっと冷や汗。いやだって、わたしが部長するのが既定路線になっちゃってるし。
 ただまあ、今年は文化祭は無い。我が校は隔年で体育祭と文化祭なのだな。残念だけどちょっとホッとしたような?うーんどうなんだろぅ。

 となりの教室を覗くとちょうどたかちゃんも出てきたので三人揃って部室へ向かう。話題はやっぱり昨日の星乃さんの事。

ち「スケッチが得意って言ってたねえ」

た「おーちゃんの後輩さんですよね」

み「わ、わたしはなんとも……」

 明らかに動揺しているみっちゃんを後ろにお疲れ様でーすと扉を開けると、既に耳納先輩と星乃さんが並んで座っていた。天気図の事を説明していたみたい。
 手持ち無沙汰でちょっと離れた席に座った。別に誰が何処って決まりは無いけど、何となく定位置があって、先輩の隣にこの一年いつもいたのでおしりの座りが悪い。

 ん、入り口の扉が開けっ放しだ。
閉めておこうと立ったところでこちらを覗いている男子。背は高いけどピカピカのボタンに襟章は一年生。

「えっと、ここ、天文部でいいっすか?」

「うん、そうだけど、見学かな?」

「どんな機材があるのか、ちょっと見れますか?」

 いきなり機材を見せろと来たぞ。その前に名を名乗れ。一年坊主め。教育してやる。

「Nikonの10cm屈折赤道儀と、セレストロンの15cmカセグレン経緯台だよ。後は双眼鏡やピンホールプラネタリウムとか、まあなかに入って入って。ちょっと今から天気図を描くから見てくかな?」

 やっぱり優しいおねえさんを演出しておこう。

「あ、僕、気象通報聞いて描けますから」

 なんと生意気なやつめ。いや、天気図描けるとは優良物件なのかな?わたし一人で相手するのもおかしいので、先輩に引き継ごう。

「耳納先輩、一年生の見学希望者ですけど」

みっちゃんとたかちゃんも話を聞いていたようで興味津々だ。

「聞こえていたけど、今日は見学だけかな、ほかの部活にも興味あるの?」

「あ、はい、とりあえず文化部一通り見ようかなっと思って、昨日は生物と写真と見てきたっす」

「その両方の現部長は天文部にも所属してるんだよね、うちの観測会にも顔を出すし、平日もよくここに来るよ」

「あ、そうなんすか?えらくフリーダムっすね」
 
 なんか話かたはざっくばらんだけど理系趣味は強そうな御仁だ。そういえばまだ名前を聞いていないな。

「ねえ、クラスと名前、聞いて良いかな?」

「1のD、大刀洗 隼一:たちあらい しゅんいち、です」

「大刀洗君かぁ、今日は他の部活も見に行くの?」

「無線部に同中の先輩がいるんでそっちも見とこうかなと、4アマでコールサインはありますし」

 えっと、アマチュア無線の事か。さすがに良くわからないなあ。

「じゃあすみません、今日は機材を見せて頂きありがとうございました。あ、そうそう。今部員って何人いるんですか?」

 いろいろリサーチが細かいな。

「兼部も含めて三年生は男子二人女子二人、二年生は女子三人、一年生は今の所女子一人。今日入部届出してくれたよ」

 奥の星乃さんが顔を上げて軽く会釈した。
 大刀洗君も一応「あ、ども」ってな感じで応える。

「部室には大体誰かいるから、入部する気になったら何時でも来てね」
と告げると
「了解っす」
と短く応えてカバンを持って出ていった。

「今日は逃げられちゃったねぇ」
とたかちゃん。

「ずいぶんひょうひょうとしてたね、あちこち見てから何処かはいる感じなのかな」
とはみっちゃん。

「天気図は描けるって言ってたし、無線の免許も持ってるって言ってたよ」

「朝倉が写真部に一人見学に来たって言ってたのがさっきの大刀洗君か。ずいぶん多趣味な感じだね」

「……なんか、嵐みたいに去っていったわね」
 みっちゃんが、開いたままの扉を見つめてぽつりと呟いた。

​「大刀洗君ね。本当に多趣味だな。気象通報も描けて無線もできるなんて、うちの部に来たら、ISS(国際宇宙ステーション)からの画像受信とかも出来るかな?」
 耳納先輩は、ちょっと困ったような、でもどこか嬉しそうな顔でペンを置いた。

​ わたしは、大刀洗君が座っていたあたりに視線を落とす。
 彼が言った「フリーダムっすね」という言葉が、なんだか耳に残っている。確かにこの天文部は、星を愛でるだけでなく、写真や生物、そして人を想う気持ちも混ざり合った、不思議な温かさがある場所だ。
 それを「フリーダム」の一言に収斂した彼の視線に、ほんのりとした気恥ずかしさを覚えた。

 星乃さんがちょっと手持ちぶさたで何して良いのかなって顔だ。わたしから話を振ってみよう。

「星乃さん、スケッチっていつも描いていたりするの?」
するとちょっと顔が柔らかくなる。

「はい、小さなスケッチブックと色鉛筆は持ち歩いています。こんな感じですけど」
と鞄から手のひらサイズの小さなスケッチブックを出してくれた。

 ぱらぱらとめくると、駅前のアーケードや裏通りのお店に飾ってある小物、神社の鳥居に狛犬、何処かのケーキ、色んなものが細かく、特徴を良く掴んだ、でも優しい色使いと雰囲気をまとって描かれている。​

「わわ、すごい丁寧、優しい絵だね」

 星乃さんは、ふふ、と上品に微笑んだ。
「ありがとうございます。ついつい細かなとこまで見る癖がついちゃってしまいました」

​「さっきの、大刀洗さんも、はい。いろいろたくさんの事を見る方なんでしょうね……入ってくれると、賑やかになりそうで、楽しみです」

​ 星乃さんの観察眼に、たかちゃんが「さっすがぁ」と頷く。
「確かに。あちこちの部活を回ってるのも、自分が一番『熱く』なれる場所を探してるのかもね。……ねえ、部長?」

​ たかちゃんが耳納先輩を「部長」と呼ぶ。それは、暗に「もうすぐ交代だね」という合図のようにも聞こえた。

 耳納先輩はゆっくりと部室を見渡す。

​「そうだね。……四月の観測会。もし大刀洗君が入部届を持って現れたら、彼にもちょっと試練を与えよう」

​「試練?」

​「うん。……真冬ほどじゃないけど、冷え込む屋上で夜を明かして、皆で朝焼けを見て、それから――」
​ 先輩はそこで言葉を切って、悪戯っぽく笑った。
 
「皆で銭湯に行こう。あの熱いお湯に浸かれば、新入生も、僕ら三年生も、二年生になった君たちも、みんな等しく『天文部員』になれるからね」

​ 銭湯。
 その言葉に、わたしは思わず星乃さんの顔を見た。
 彼女は「銭湯……ですか?」と少しだけ戸惑ったような顔をしたけれど、すぐに「面白そうです」と頷いた。

​ 定位置を少し譲り、新しい後輩を迎え、自分も新しいステージへ進む。
 おしりの座りが悪いと思っていた今の席も、「わたしの場所」として馴染んでいくのだろうか。

​ 夕日に染まる部室で、わたしは描きかけの天気図にそっと鉛筆を置いた。
 等圧線は、まだ途中。
 でも、その先にある明日へ向かって、線は確かに伸びている。

​「そろそろ片付けよっ。今日は新入生の話題でお腹いっぱいになったね」
 みっちゃんの明るい声に促され、わたしたちはいつものように荷物をまとめ始める。

​ 帰り際、校門へ向かう道。
 自転車を引く耳納先輩の隣を歩きながら、わたしはいつもの様に見上げた。
 先輩は何も言わず、少しだけ視線を返してくれた。

​ 新しい春。

 小さな星々は、また一人、もう一人と、新しい輝きを巻き込みながら、ゆっくりと夜空へ、その軌跡を描いてゆく……。


――まだまだつづく

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月を灯す

共感すればわかるわけないといい

反論すればそんな事聞いてないといい

黙っていれば何も感じないのかといい



だからわたしはわたしの月を灯す

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魂の幽霊・幽霊の魂

御霊についての見解がききたくて、夕飯は外でって言ったのに帰ってきてしまった。夏は暑いのにどうして冬は寒いのだろう、あたしがいてもいなくても。
言葉には魂があります。人には魂がありますし、右手には右手の左手には左手の魂があります。心臓の魂、腎臓の肝臓の十二指腸の魂。釘の魂。金属バットの魂。病の魂。記憶の魂。雨の魂。空の魂。穢れの魂。天使の魂。悪魔の魂。幽霊の魂。魂の魂。魂の魂の魂。
魂続きのこの世の中で毒を持つ海月であるためには海豹や魹のような巨体が必要だと聞いたことがある。
神さまは神格化される前に神さまになってしまって御霊を作ったって言ってた(誰が?)魂。
ほら、雨の幽霊が冬の幽霊のなかで晴れの幽霊を殺しているよ。あっちでは家出の幽霊が家出少女の魂を呼んでいるよ。家事の幽霊はサボりがちで、風呂の幽霊はかびている。枝毛の幽霊やキューティクルの幽霊がヘアピンの魂を抱きとめていて、小声の幽霊が寒い寒いと言い、カンガルーの幽霊とゴリアテの幽霊が闘っているね。厠の幽霊はトイレの幽霊やはばかりの幽霊や泉の幽霊と愛のうたを歌い、あなたともやり直せるような気がしています。
魂はただしい。魂である限り。神さまの幽霊が時間の幽霊と旅の幽霊を連れて逆さまに歩いている頃、地球の魂は長いながい隧道を抜けて隧道の魂を引きちぎって行った。
やっぱりお腹が減ると空腹になるんだね。まだ冷めないうちに味噌汁の魂をひと口いただき、空になった味噌汁の幽霊が地上を離れて魂であることを辞めようともがいて、あたしは腹が捩れるほど笑って笑いの幽霊になって、もうどこへでもいけるとわかってはじめてどこにも行く場所がなかったとわかった。あなたが帰ったのはその時だったと記憶の幽霊が喋り、言葉の幽霊がこの星を覆っていた。

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きみの嘘

嘘は甘い味がする。

嘘の中で本当を探してる。
嘘の中で本当のきみを探してる。
香しい。自分が嫌いだった。嘘は薬だった。
全部嘘で、それが幸せだった。嘘で満たされて安心した。

本当なんてなかった。分からないけど、甘かった。
自分と嘘をついてた。ありのままだと 殺されちゃうから隠してた。
嘘と生活して
嘘と泣いて
嘘と笑って
嘘の自分がそこにいて 
それでいいんだと思いながら本当のきみを探してた。
本当のきみってどんなの。どんな味がするの。
本当って痛くて冷たくて、怖い。嘘に満たされて、嘘が笑ってくれた。嘘は暖かかった。嘘は甘かった。
悲しい嘘
醜い嘘
柔らかい嘘
苦い嘘
信じていたものは全て嘘だった。それでよかった。口の中はまだ甘かった。

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「ドメイン停止考察」としてのクリエイティブ・ライティング

この文芸投稿サイトは5月末で閉鎖になります。
理由はまーくんの足が臭すぎるからです。









 
悪ふざけの投稿と断じるのは容易い。だが、私には単純に切り捨てられない背景があった。


まーくんとは誰か。その人物の足の臭気と、サイト閉鎖とのあいだに、いかなる因果関係を想定しうるか。理由が理由として成立するための論理条件はハナから放棄されている。理由が明記されていながら、理由について考えること自体が忌避されており、私は上述の二行を閉じた文章だと感じた。


あるいはこれを一笑に付すこともできたのかもしれない。
だが、それができなかったことには理由がある。この投稿を行ったのが、ほかでもない「伝説のしこたま詩人」だったからである。


このところ、私が参加している文芸投稿サイトでは、「伝説のしこたま詩人」という謎のアカウントが運営を乗っ取ったらしい、という噂で持ちきりだった。規約やマナーにうるさいはずの場で、彼の横暴だけがなぜか不問に付されていたからである。誰かが注意すれば炎上し、誰かが黙ればそれが「理解」とみなされた。


伝説のしこたま詩人は、あらゆる投稿作品に対して「中々のしこたまですね」といった、意味の判然としないコメントを残す。それを批判した者には、サイト内外で執拗な罵倒が飛ぶ。投稿をやめるまで、あるいはやめた後でさえも、追撃は止まらなかった。批判を許さず、集団で言葉を浴びせかけ場から追放する。その有様は、さながらカルト宗教のようでさえあった。


気づけば、投稿サイトは、しこたま詩人とそのシンパしか残らない場になっていた。残った者たちは、彼の言葉を読み解き始めた。「しこたまの輝きですね」が最上位であり、「しこたまが微笑んでいます」「中々のしこたまですね」「しこたま読みました」「これのどこがしこたまですか」といった順に評価が下されているらしい、という考察まで共有されるようになった。


しかし、しこたま詩人の挙動には逐一、反応するくせに、サイト閉鎖は話題に上ることもない。この場所は、しこたま詩人に気を遣ってまで参加したがる者にとってさえ、すでに閉鎖を惜しむ価値を失っていたのだ。


私はその光景を、強い不快感とともに眺めていた。
私は、自分では真面目にやっているつもりだった。いや、真面目というより、文芸投稿サイトという場に対して利他的であると信じていた。


気合いの入っていない投稿者を見つければ、もっと考えて書けと態度を変えるまで説教してあげた。文芸投稿サイト外で、他の投稿者に軽薄なエアリプを飛ばしている者がいれば、サイト内外で痛烈に批判し更生を促した。ろくにコメントも書かず、配信やツイキャスにばかり熱を上げる者がいれば、放送中に怒鳴り込んだこともある。嫌われる行為であることは分かっていたが、それでも私は空気を読まずにやった。表現者とは、予定調和を壊す者であり、文学とはそのようにして守るものであると信じていたからである。


だからこそ、5月末のサイト閉鎖について、私は深刻に考えざるを得なかった。

しこたま詩人が場を掌握しているとはいえ、創業メンバーの一人がドメインを所有しており、その人物が5月で更新をやめる、という話が出回っていたからである。その人物は、規律やマナーに厳格な制度設計を行った張本人であり、しこたま詩人の振る舞いを強く嫌気しているとも聞いていた。


つまり、この二行は冗談でありながら、予告でもありえた。

理由はいい加減だが、結論は異様なほど強固である。そういう、もっとも食えない構造を宿した宣告だった。


私は創業メンバーの一人であり、ドメイン所有者でもある「花緒」という人物に連絡を取った。閉鎖は本当なのか。継続の意思はないのか。既存のドメインを捨てても、また誰かが新たにドメインを取得すれば済む話ではないのか。何が背後で起こっているか投稿者の立場からは伺い知れないが、しこたま詩人を排斥したいなら、私も協力できる。


しかし返ってきた言葉は、予想外だった。

「最初に言っておきますけど、私は閉鎖に賛成です。あなたみたいな人が跋扈するのは、単純に不愉快なんですよ。軽蔑しかしていないですし。あなたみたいな人って、要は足が臭いだけ、みたいな話じゃないですか」


まったく意味が分からなかった。
不愉快なのは、しこたま詩人ではないのか。私は食い下がった。
花緒は銀縁メガネを掛け直し、少し黙ってから、こう言った。


「私からすれば、しこたま詩人の方がまだ救いがあります。親切な人間には親切を返す。協力する人間を無駄に傷つけない。最低限、その程度のプロトコルは守っています」
そして花緒は続けた。


「あなたはその逆です。協力されると、協力のやり方が悪いと言って相手を攻撃する。貴方には自覚がないでしょう。
例えば、久しぶりに投稿してくれたユーザーに、もっと活動しろと怒鳴り込む。まだ投稿間もない初心の者に、経験が足りないと罵倒し粘着する。それを文学的正しさと主張し疑わない。もっと俺に近い立場に立ってくれと騒ぎ立て、ますます相手を遠ざけてしまう。
平たくいうと、遊んでほしい相手に悪態をつく幼稚園児と同じです。そのレベルの低次元の悪癖に文学という名を与えること自体が、既に文学的ではないのですよ」


私は納得できなかった。
花緒によれば、しこたま詩人は荒らしだが、私のような人間は「運営する責任は引き受けないくせに、支配欲だけが肥大した迷惑投稿者」だという。捨て地を荒らして楽しむ者と、他者に理想を強要する者。そのどちらもが、場にとって迷惑でしかない。


「あなたは、真剣な人間だけが残る場を望み、実際に他者を排斥してしまう。でも、その姿勢自体が既に真剣さから外れていることに気がつかない。貴方に任せれば、しこたま詩人以上に人が減り続け、場が閉ざされていくでしょう」


花緒は一拍おいて、こう言った。
「そして、何もなくなったあとには、あなたの足の臭みだけが残るでしょう。Bye」


私は激怒した。
支配欲をたぎらせ、自由であるべき文学の場に秩序を持ち込んだのはお前だろう。その反動として、しこたま詩人のような荒らしが湧いたのではないか。何の実力もなければ、実績もない。そもそもお前は文学を必要ともしていない。ヨン・フォッセもフォローできていない程度の文学的素養で、ドメインを盾に規律を語る、このポンカス野郎が!


その後のことは、もう考えたくない。
私には、田伏正雄、すなわちまーくんという名の巨漢の友人がいるのですよ。彼の足の匂いをあなたに嗅がせてあげたい。それが私の文学的正しさなんです。花緒は確かに、そう言い切った。私もあなたに輪をかけて利他的なんですよ。銀縁メガネの奥に潜むその目は、もう完全に異常者のそれであった。


それからというもの、私の部屋から、私の持ち物から、あらゆる場所から、足の臭いが立ち上るようになった。どのような手段で、どのような執念によって可能になったのかは分からない。ただ、どこにいても吐き気が止まらなくなった。


私はもう文芸投稿サイトには関わらないことにした。
理由はまーくんの足が臭すぎるからです。

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長万部へ      《散文詩》

長万部へ行こうじゃないか、とミノル君が切り出した。私は感激した。由利徹が来るというのだ。なるほど、そいつぁいい、と賛同し、ついでに八雲で蟹も食って来ようぜ、と新たに提案する。はしゃいで私はコップを呷り、もじゃもじゃ頭のミノル君はセブンスターを美味そうに吸い込んでは煙りを吐き出す。五時半の長万部行きに乗ればいい、とミノル君が云う。先ほど、学校から帰ると学生服脱ぎ捨て酒屋へ赴き、ミノル君の誕生祝いにサントリー・カスタム一本買い求めて戻り、エビセンと南京豆なんかをツマミにずっと飲み続けているのだ。我々は律儀で真面目な学生だ。と云うのは、学生服を再度着用して奴は椅子、私はベッドの端に腰をおろしてウィスキーを飲んでいるのだから。制服の襟には室蘭S高校の校章、Mに錨マークのバッジが光っている。窓の障子を透かして入ってくる日差しは鈍く、六畳ほどの部屋は何か薄暗いのだが、本棚三本もの蔵書が羨ましく、下宿生活が物珍しく、しばしば放課後に私はこの部屋へ別称「しけこむ」と云われる訪問をする。

さあ、行こうじゃないか。ん、出発進行だ。と二人立ち上がり、襖開けて部屋を出ると、覗いていたごとくに突っ立っていた下宿のオバさんに出くわし、あら、ご飯は?とミノル君に問いかけるのに、けっこうです、僕たちは蟹を食べに行ってきますから、とその眼鏡をかけたオジさんのような顔のオバさんに答えるのを聞きながら、玄関の引き戸をがらがら開けて外へ出ると雪。大きな綿のような雪がふわふわスローモーションのようにゆっくりと落ちてくる中、ミノル君のあとを追う。

喫茶店すぷーんふるの前を通り過ぎ、第一ホテルの角を曲がると東室蘭の駅舎が間近に姿を現し、ひゃあ、もう着いてるぞお、というミノル君の声にそちら見やれば、ごおごおと赤黒い煙りを雪空に吹き上げて停車しているのは黒光りした蒸気機関車。雪漕いで、転んで起きて、入口に辿り着き、階段を昇る。悪臭漂うほの暗く長い長い階段を息せききって昇り切り、売店と待合室の前に屯している大勢の中を通り二人改札抜けると、いつもは下りの階段が上りになっている。あれれ、これは本輪西や伊達紋別みたいな造りの駅に変っちまってるぞ、と訝りながらも、汽車はあちらのホームだね、と確かめるや、目の前に屹立するがごとき急角度の階段を昇り始めた。前後しながら二人、ほぼ垂直のその木製の階段をロック・クライミングよろしく昇り終えると左手に回廊があり、様子伺えば床はあちらこちら黒い穴だらけ。中を覗けば立ち昇る機関車の石炭臭い煙りに、わっ、と二人噎せ返り、恐る恐る左足、右足、と交互に擦るように歩き渡り、さあ降りるぞ、と見下ろせば、その数段先のすぐそこから階段が切れている。参ったなぁ、こりゃ、と下を眺めると、階段に赤いシーツのようなカーテンのような布が結わえてあり、それが捩れて縄のように紐のようになったところへ大勢の人たちがしがみついているではないか。しゃーないぜ、と云うミノル君の声に臍を固めて我ら二人も、ぐいっ、と力を込めて紐を掴み、降り始めた。早く早く、汽車が出ちまうよ、そう云ったって、おい、男の頭に靴はないだろ、痛いよ、などとやり合いながらようようホームに降り立つと同時に、ボーーーーーーーーーッ、と汽笛一声かん高く構内に鳴り響いた。残る体力振り絞り、ごおっ、ごおっ、ごおっ、と蒸気の音もの凄く動き始めた機関車のデッキに大勢に混じって飛び乗ろうとしたが、振り落とされてホームにあえなく転落。

ああ、と慨嘆これ久しゅうしていると、スガさーん、スガさーん、こっち、こっち、とホームの反対側から私の名前を呼ぶ声があり振り向けば、ディーゼル機関車三両立ての中から手を振っているメガネをかけた者がおり、客車に乗り込んで誰かと見れば、それは札幌で古本屋をやっている同業のササキ君という友人であり、室蘭へ行きましょう、室蘭へ、古本屋が新しくできたというニュースをキャッチ致しました、かつて誰も見たこともなく今まで知られていなかった幻のとんでもないまったき珍本があるという極秘情報なのですよ、いいですか、見つけた暁には山分けですからね、ともかくそれでぱあーっとやりましょう、ぱあっーと、と興奮の態で話すTシャツ姿のササキ君を横目で眺めながら、前祝いです、と差し出されたカンビール飲みつつ、なんとなんと、でもまあそれもいいかな、と心傾き動かされ、しかしそんな有益な報せをもたらしてくれるとは持つべきモノはああやっぱり友達であることよなあ、といつのまにやら姿の消えたミノル君を捜しもせずに、雪も止んで夏の真昼のように明るい夜を今ゆっくりと走り出した室蘭行きの中、窓の外に流れ行く原油タンクや、美しい黄色やピンクに赤い煙り吐き出す煙突が空高くそびえる工場の連なりを眺めているばかりなのであった……………………
                              















*註 由利徹(1921~1999)は喜劇役者。彼の後期の十八番的な芸に、独特の滑稽な表情で、奇妙な身振りと伴にただ一言、「オシャ、マンベ」と繰り出すギャグがあった。

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