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2021/01/01 12:00:00

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投稿作品一覧

さじ

すくわれるのか
すくうのか

してんをとわれ
まあまあ、
どうでもいいじゃないか

したにのる
しびれるあまさの
プリンは 
ひゃくえんていどに
みあうかいかん

なごりおしく
ぎんいろをなめれば
きぃんと
いたんだ

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 1

初投稿 くどうなおこさんに似せて のはらのあり達

みぎにさわさわ
ひだりにさわさわ

こんにちは
おさきに どうぞ

ぼくらの ツノは
おしゃべりの アンテナ
のはらじゅうの「だいすき」を
いそいで あつめて いるのです

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 3

批評・論考

感覚の歴史

「なんで?」
「え?」
「なんでここおるん?」
ああ、と私は頭の中で言った。
「爪、欠けてん。昨日」
「それだけで?」
「うん。それだけ。あんたは?」
「歯、抜けてん。それだけ」
「歯が?大人の?」
「ううん、こどもの」
「まだ生え変わってないん?」
きみは自虐的な笑みを浮かべて「ちゃうよ」と言った。
「大人の歯がもともとなかったんよ。だから、歯抜けやねん」そう言ってきみはいーっと歯を見せた。下の歯が二本ないように見えた。
「そんなことあるんやね」
「そんなことあるんやで」と私の口調をきみは真似た。私はふふっと声を出して笑った。きみもつられて口元だけ笑った。

見学の生徒は私たちだけだった。雨の日の体育館はいつもより広く見えた。シャトルランの音声。ほとんどが脱落して走っているのはあと三人。脱落した生徒たちは好き勝手に雑談していた。
私たちだけ体育館の隅で並んで体育座りしていた。
この座り方は体に悪い。生徒に立ち上がりにくい姿勢にさせる一種の身体拘束だと物の本で読んだときみは説明した。私は黙って聞いていた。雨の音を。
「雨の日にはさ」と私が言いかけると、覆うようにきみが「祭壇」と言った。「裁断」だったかもしれない。とにかくそう言ったのだ。
「え?」
「ううん、なんでもない」
それきり私たちは黙った。激しく雨樋を伝う雨音が祭りみたいだと思った。シャトルランは終わっていた。先生が全員を集めてなにか話していた。
「感覚の歴史なんやと思う」ときみは不意に呟いた。
「この雨やって太古の昔から繰り返し降りなおした雨。雨粒ひとつひとつに映ってる世界があんねん。うちらみたいにな」
うん。と私は声を出さずに言った。音にだって波にだって光にだって私たちを映す世界があって、世界って言葉でしか括ることができない私たちの狭い了見にだって覆い尽くす祭りがある。

探しに行った。
虹の端っこ。
遠くへ
逃げていく
きみを
私は
追って
飛ぶ
空が飛ぶ
鳥のように空が飛んで
私はまた
きみを失っていた。

雨滴のように散らばって
にげていくかんかくのせかい

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 3

『し』そして

魂迎鳥は中天で照り映え
裏側に書かれた文字を読む
されど、永遠に子供時代は終わる
人生の共時態を捕え
憎く憎み切れないまま
肉を斬る
馴れ初めや
鈴のような音は
玄関に滞留し
いつかは私も
私も私も私も私も私も私も私も私ももももももも私も
ドアを開ける日が来る
内側と外側という恣意性に守られた
シニフィアンは遊動円木だね

胎児のころの記憶の
喪が明けて遊歩道を歩く
朝から悪質な色をした空原や
その日限りの運勢が
路で暮らす街

さっきから何を言ってんの?
ほんまのこと言いいや
めんどくさがらんといて
いいかげんなこと言わんといて
ちゅうとはんぱはやめて
はよして
はよ
昨日、街路樹にナイフか何かでつけたような傷を見つけた。それは平仮名の『し』の形に見えた。死なのか子なのか私なのか詩なのか。樹液がとろりと傷からあふれ、見たことのない虫が大股で歩いていた。あ、と私は声を出したように思う。もしくは出したような気がしたのか。いくつも『し』が並んでいたのだ。
あたしにやって愛はあるんやからと誰かに向けた言葉も解きほぐされ
冷凍していた。

何日も何日も経ったある日
ぽっかりと空いた空に
降り止まぬ光
そして

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 1

リハーサル

予行演習を している。

いつか 白く生まれるための
いつか 銃を撃つための
いつか 大樹に寄り添うための
いつか ナイフで傷つくための
いつか 甘美に酔うための
いつか 孤独を編むための
いつか 涙を赦すための
いつか 花へと謝るための
いつか 狭間で抱き合うための
いつか 岸から離れるための

予行演習を している。



スターターピストルは
もう 鳴っていることも 知らずに。

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恋は甘い眠り

何度目かの呼び出しに
醒めた心で向き合ってくれた君
僕の言葉は届く事無く音もなく消え
君の言葉は意味を持たずに重く重なる
時間だけは正確に夜を刻み
二人の言葉を寄せ集めては
逃れる事の出来ない現実へと誘おうとする
甘い眠りから覚めた時から
僕は新しい子守歌を歌い始める
君の居ない夢を見る為に

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 5

その水が氷った時、それはもう水とは呼べない
同じことだと思うんだ
君の前に手付かずで置かれた
アイスコーヒーに入っていた氷が
ただの水になるまでの短い時間に
僕たちの関係を名づけていた呼び名が
他人、と変わってしまったように

*

氷で出来た、鍵と鍵穴
溶ける前に、差し込まれた
そうして私の中に入ってきたあなたは
つめたいと感じただろう
事実私は凍えていた
だからあなたも凍える前に出て行きたい時に
出て行けばいい
私は私から、出て行けないけれど

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丸刈り税込1100円

これは日記である
詩ではなくて

思うところがありすぎて
死にたさが極まって
でもそう言うわけにもいかないので
それならば


よんじゅういっさいで
丸坊主にしてみた

死にたいなら
髪の毛くらい失おうが
屁でもないはず


良いのですか?
本当に?
思い切りますね、、、
本当にいいですか?
念入りに4回確認されて
バリカン

半分くらいまでは
笑っていられたのに
7割、8割髪の毛が
オサラバしたときに

泣いてしまいそうになった


たかだか坊主 されど髪の毛

坊主になってから
夫は、目を見て話してくれないし
次男5歳も「しばらく帽子をかぶってて。
女の子じゃなくなったおかあさんは
すきじゃない」とむくれている

くしくも、母の日のプレゼントだと
ニコニコわらうわたしの似顔絵を
持ち帰った日だった


「前髪、消すね。
おかあさんのえ、にてなくなったから
前髪、、、どこいったんやろう」
次男が悲しそうで悲しかった

丸刈り1100円税込
ものの10分で終わり、
帰りにうちわと、缶ジュースまで
頂いた

これは詩じゃなく日記


わたしはわたしを誇りたい

丸坊主くらいだけど
丸坊主に思い切って
できる人生を

そうそう送れはしないのだから


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窓の月

いつ何の待ち時間だっただろうか
何気なく広げた雑誌に描かれていた月が
眠れぬ夜の瞼の裏に浮かび昇る
何を照らすでもなく沈まずに薄れ消えてゆく
瞼に昇る窓の月を観て欲しくてさ



窓の月は窮屈そうで
私の目を盗んでは
窓枠から外れようとしている
眠れぬ夜は
逃げる月を逃がさぬよう
漫ろに円をえがく月を称え
詩を綴り続けようか
でも皐月の夜は短すぎて
早朝の空に白け顔の月を
引き留める引力は私には無く
睡魔の熱で溶けゆく
飴細工の思考の中で
薄れゆく月に手を振るばかり




などと紙上に昇る窓の月を文字にするから
読んだなら窮屈そうな月をどうか
感性の海へと解放してはくれないか
薄れ消えゆく窓の月に手を振るだけの私に代わってさ

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 6

 6

[の]凌霄花-ノウゼンカズラ-

甲高く舞う
硬式球が飛行機雲を造る
子どもたちは空へ両手を掲げ
今にも飛び出してしまいそう
舞うことを試みて 笑う

積乱雲がきらきら
瞬いて、
影の伸びた、高架下
ぼくらはそこを基地と呼ぶ

錆びたタバコ屋の看板に軍手。
旅行代理店のリーフレットの焼け。
温排水の魚たち。
かれらは町の一部としてぼくらを覗く

襟元に汗が滲む
鬱陶しい夏ときみが好き
肌が小麦に変わる
季節に囚われぬよう
きみはオリーブを塗った

分け合った
アイスキャンディー

落ちて
アリが
群を
成す

夏の終末
栄光は花火が
昇がった
咲いて散った
橙。

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感覚の電車に乗ってみませんか?

推薦対象

水脈の往還―26歳の遥
by 筑水せふり

これから書く文が推薦文として成立するのか不安が有りますが
自分が面白いと感じた世界観が他の人も面白いと感じるのか知りたいので書いてみます。
電車に乗り座席に座り着いた駅で降りる。
そこには、電車に乗る意味も駅に向かう目的も存在しない。
電車が起こす起動音と自分以外の乗客と共存する閉鎖的空間の空気の圧迫感があるのみ
座席に座る自身を器にして液体を注ぎ電車の揺れや乗客の移動による傾きでの液体の変化を
主観的に客観的に観察しながら息苦しく窮屈な感覚で楽しんでいる様に思えました。
主人公の遥が降りる駅で自然と自分も降りてみるが遥が抱えている揺れに合わせて
自分の心の動揺が止まらず揺れを感じながら、改札口へと消えそうな遥を見送っていました。
この作品は3部作で遥が何処へゆくのかを自分も追い読みしていませんが
この感覚の電車に乗って揺られる事をお薦めしたいです。
電車の揺れを自分の動悸と合わせれば、乗り物に弱い人でも楽しめると思います。
それでは、私は一足先に遥の後を追いかけてみたいと思います。

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六個

きちんと

鶏が
落とした

錠剤

箱に
いれて
並べた

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 3

 3

たぶん

たぶん
玄関を開けると
外側があるとは
かぎらないなあ

春と
春へと
収斂すると
情動量に比例して
避けがたい
クレパス
祭りの
準備

「たぶん
詩人を一人
虐殺するのに
コストはいらないさあ」※

裂け目から発芽する奴
と発芽しない奴の差
花を咲かせるもの
花を摘むものの
耐え難き差を
鞣していく

存在の
存在による
存在の存続
引用を繰り返す
書き言葉話し言葉 

内側へ
春の内側へ
収縮と再生の連鎖
夥しい数の語彙
クリシェの使い方に
慣れた山師や山伏
辛夷の花がちり
潤いをもたらす頃
詩人たちの死を
詩はしたたかに
確からしくふるまう
蜥蜴


※は藤井貞和『全部引用、たぶん』より引用

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 3

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2023年末法隆寺吟行より

求ればみな凍てたまふ夢殿よ

https://i.postimg.cc/g2djHdJh/rectangle-large-type-2-f4b2dc93ef1e24c31d7bb2512e6fe8e0.jpg

※法隆寺前の食堂の、斑鳩グルメ竜田揚げ定食。

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 4

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俺は、これじゃあもう、情熱大陸じゃないですか、と言った。@しろねこ社賞推薦文

生臭い風が吹いてくる 磊
https://creative-writing-space.com/view/ProductLists/product.php?id=4014



 私は詩が読めなくなってしまっていた。
 現在は閉鎖している詩を中心とした投稿掲示板「B‐REVEW」に私、田中は、主に選評を受け持つ、という形で活動させていただいた。
 そうして今も事後処理に追われているが、「B‐REVEW」で私は、すべての投稿作品を閲みし、その中から良いと思った物を選ぶ、という作業をしていた。しかし、ロジカルに考えれば、何か作品を選ぶ、その書き手に信を置くという事は、必然として、他の方の作品を選ばない、という事なので、その手の内から、作品を大量、「落とす」という作業なのであった。
 それは多面的に構成されているネット詩カルチャーの一面でしかないのだけれど、個人的にはネット詩平等論の立場から「B‐REVEW」の運営を一時、退いたのであった。
 しかし、その運営を退く、というとき、私は一つ注文をつけた。
 毎月二作品ではあるが、コンスタントに作品を投稿して下さる方こそ大切にしてやってくれと。
 なぜならば、そういった詩の向上を自らに課し、ライフサイクルの内に、詩作そして追求が見られる正に求道を置く、修練者に信を置かずして、何を信じればいいのか、わたしたちは。
 しかし、私のその注文が受け入れられる事は無かった。悲しい事である。


 これを痛恨の極みと呼ぶのでしょう。


 時間が飛ぶけれど、そして現在、ここCWSにコメント付与という形で参加した後、以前「B‐REVEW」で、毎月、毎月、律儀に、且つ前衛的と言っていい、硬派で通していたこの書き手が活動を継続していたという事実を知った。
「あっ」と思った。

 しかし、そもそも一体なぜ詩が読めなくなってしまったのか?それは正直、どこまでも硬派で通した作者の追求、そして作風の変貌についていけなくなってしまったのだ。

 例えば、音楽で云えばマイルス・デイヴィスが電子楽器を利用してジャズを「更新」させたとき、一体、どれだけの人が、そのマイルス・デイヴィスを歓迎しただろうか。

 ボブ・ディランが、アコースティック・ギターを、エレキ・ギターに持ち替えてフォーク・ソングを、フォーク・ロックに「変化」させたとき、一体どれだけの人が歓迎しただろうか。


 好意的に受け止めた人もいれば、ブーイングが起こるというのも、当然の人間の反応なのである。もう、こんなのはジャズじゃない、フォークじゃない。表現者が、ふり切るというのはそういうことだ。そう思わせることだ。
 こういう表現もある、こういった描き方もある、そういった緻密な時代の推移の、歴史の推移の中でも、書きつづける──その「ある一つのドキュメント」として、私はこの作者の作品の書籍化を臨むのである。


 正直に書けば、書籍化というのはコマーシュの問題と密接に関係しているのは、重々承知だ。
 しかし、この作者は私のような怠惰な作品管理はしていないと、勝手、思っている。

 又、この推薦文を書いた事によって、この作者が更なるフェーズとして、「大衆」を意識したとき、どんな作品を展開するのか、鼓舞してみたいという下心もある。

 まだまだ言わせていただきたい。銀色夏生の本を買って、詩に目覚めた少女が、ワイアード、インターネットを通じて、女性の自己実現を果たすという物語は私の中で、今も続いている。


 

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批評・論考

正しくなりたい、優しくなれない。

あの人たちは、どうしてあんなにも楽しそうに笑えるの?
答案用紙に転がる血走った目玉は何を見ていたの?
大人になっていつか立ち止まったみんなに、
私のささやかな闘いの日々は、'青春'と呼んでもらえるの?
そういう嫉妬や身震いを喰い荒らした私の影は、
色濃く黒ずんですぐ、私の背丈を越えた。
切り落としたくて、カッターナイフの刃を腕に突き立てた私を、
傷跡が残ってはいけないからと、思い留まらせてくれた手は、
確かにあった。
あったのに、私の瞳は拒絶していた。
口先は強張り、言葉尻は尖り、
力強く振り払った時の痛みを隠す為に、
悪びれて笑った。
素直になれない臆病さも、期限切れの思い出に縋る心のよろめきも、
いずれ時間が全部洗い流してくれるものだと信じきっていたのだろう。

ひとりぼっちだと哀れまれる事が辛くて、
中途半端でも大人になった。
いい加減に生きてきたつもりなんてないけど、
踏みとどまった分だけ、みんなとの差は開いた。
着飾った言葉ではなく、正気の私のままで愛されたくて渇いていた。
誰かの体温に。

きっと随分前から分かっていたんだ、
このままじゃいけないって事。
逡巡する目玉を鷲掴みにして、時間はまだ私を試したがっているから。
向こう側に行けたら、きっと今よりほんの少しだけ、
良くなる予感が燻っているから。
それだけが、死ねない理由。

今だって、あの人たちみたいに上手く笑えない。
怒りや若さを壁に投げつけたあの頃を悔いても、
もう追いつけない。
「当たり前」が出来ない自分を恨んでみても、
とても間に合いそうにない。
終了時刻を過ぎたあとも、教卓の上に忘れられていた私の答案用紙は、
記名欄だけが今も白いままで、
みんながこの先のどこかで思い返す楽しかった頃の毎日に、
私は多分、いない。
まともな人間には、きっと死ぬまでなれないとしても、
そんな自分さえ許せる証明を、私だけは知っている、はず。

何も言えずに悲しい目をして、誰もいない別の道を歩き始めたけれど、
私が私を選び続ける目的は、あの人たちとそんなに変わらない。

幸せになるってこと。

ただそれだけの為に、どうしてこんなにも、
頭の中がめちゃくちゃになるのだろう。

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 1

 1

v oi d

息づいたものが 声とならずに蒸散するのがわかる
それは どこに行ったのか と 戸棚の方を見遣った 
v と d が 語義通り母のない子のように 
前提を置かれず 黙らせられている

急須のうらの 一つ一つのそれが 
手を取り合って 

次はphraseになりたいな

と思ったかは知らないが 
とびおりた先でのありかたを 諦めた様

まだ 無視への抗議をしていたい といった
vとdのあいだに 

おい 

とこえをかけたのに 
voidが一つできてしまって
piss と呟いた

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 3

 1

記憶と価値

  ここ数十年、最大限に広い意味における「物語」のトレンドは、記憶をめぐる物語と価値をめぐる物語の二大潮流の中にあったと私は思う。

  光が当たっていたのは「記憶」のほうで、ディストピア文学では記憶の改ざんの痛みが語られ、恋愛文学や映画では記憶の消失の切なさが語られ、SF文学やミステリーでは記憶が人類を離れて存在する状況(すなわち記憶と人類の乖離)が語られた。
  私は「クララとおひさま」というSF小説がとても好きだが、あの中でも人類ではない機械が記憶を保持するとき、機械のほうが人間的である状況が描かれる。
  もしかしたら人類の歴史は終わるのかもしれないが、何にしても記憶ってやつは大事だ。今後も人類が滅亡するその日まで、物語のネタになるだろう。

  もう一方の「価値」は根本的な課題として近代以前からモチーフだったがここ20年ほどはどちらかというとサブカルで熱心に扱われてきた。 
  全ての異世界転生漫画は「価値」をめぐる物語だし、初音ミクという存在も最近の生成AIも人間社会に「価値」の変更をもたらしている。
  近年、私が着目したのは2つの漫画、「タコピーの原罪」と「みいちゃんと山田さん(未完)」だが、それらも記憶をめぐる物語の形式をとりつつ、実は「価値」をめぐる物語だ。
  タコピーでは「仲良くすること」が価値として検討される。お話することは大事であり、対立や紛争を威嚇と暴力で解決することはできない。それは憲法9条の物語でもあるが、はたしてそれが【価値】なのかどうかは今や自明ではなく語るべき何かであるという認識が、我々の足の下にあるのだろう。
  みい山では、みいちゃんは握りしめた価値を仮借なく奪われ、破壊されてゆく。だが、6巻末でもまだみいちゃんは、みいちゃんなりの宝箱を大事そうに抱えていて、そこには胸に迫るものがある。山田さんも夢を嘲笑され、描画ツールを壊されつつも、まだ価値を手放さない。

  この観点から、私は例えばインターネットにある詩作品を批評することも可能なのではないかと思っている。
  そしてそれは私個人の詩作にも、どちらかといえば明るい光をもたらす朗報だ。
  「記憶」は人間にとって間違いなく大切だ。それを譲ってはならず、譲るならそれはもはや、あまり人間的な行為ではないとも言えるだろう。
  だが年々老いてゆく身にあっては、記憶だけをモチーフにするのは寂しいものだと思う。
  それより、「価値」について私は問い続けたい。
  およそ創作は他力によるもので、詩も降りてきたから書くものなのだから、課題を選ぶことなどできないが、せめて「価値も課題の1つとする」ぐらいならできそうに思っている。

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批評・論考

幕はまだ降りない

電車のドアに貼られた
演劇のポスターの絵の中に
どの役になれるか
目を閉じる

出会った人達を巻き込んで
エピソードを重ねながら
進む芝居

毎日送られる台本
ラストシーンは
描かれていない

照明で乾いた傷
だれのせいでついたのか
手で隠して
演じる

頬を流れて
床を濡らす雫たち

足もとが濡れている
滑りそうな危うさ

揺れた身体
支えるように
右手がつかんだのは
つり革

地下を抜けた電車
雨が窓を叩いている
窓を流れる水滴

映るのは
歪んで疲れた現実

作り笑顔で
嘘をつく

駅を出ると
暗転した中で
濡れた地面
靴が擦れる音


いつ幕は降りるのか
知らない

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 8

 4

穏健派はいつも遅れてやってくる

 
 まず、私のCWSのアクセス禁止処置を解いて下さった花緒さんに感謝の礼を述べたい。

 しかし、今現在も、ビーレビューはアーカイヴ化へ向けて問題は山積しており
(資金面の問題、これは現代表にビジョンがあるとの事。実務を担当するエンジニアの技術的課題、そうして、著作権の問題もあり、アーカイヴ化した場合に掲示された作品の削除を求められた場合どのように対応するか、等)

 本当の意味で、私がこのCWSを利用するにしても、「けじめ」がついていない状態であっていつも、遅れてやってきた私の戦いはこれからが正念場だという気がしている。
 そう、いつも、私は遅れて合流した。


 #じんたま というツイキャス番組を通じて、不肖田中はやっと現在ネット詩界のBOSSたる花緒さんが、当時ビーレビューの第八期運営に対して、厳しい立場をとっていたのか理解する事ができたし、そうして、何か一晩中、運営メンバーが激論を飛ばしていた事も覚えているが、その内容を精査するのも、次の日の朝になっており、正直、本当にこの判断でいいのか?と言った疑問がいっぱいあった。


「天才詩人2代表、これやったら原付しか乗った事ないガキンチョにトラック乗ってみろ、ってことになりますけれど本当にいいんですか?」
 代表は迷いもなく
「いいです!!」
と言っていた。


 昔々、私はまだTwitter(現X)のツイキャスで、確か、百均さん、花緒さん、三浦果実さん、そしてシリュウ(天才詩人2)さんが合流しているのを、リアルタイムで聞いていた。
そうして、新しいムーブメントがはじまるのだな、と思い、最初投稿をしていたのだけれど、そのときは文学極道のカウンターとしてのビーレビューという事だったので、ある手痛い思いをして(内緒)、コツコツ書いていたら、多くの文学極道の書き手がビーレビューはいい、ということで参加された方々が多くなった。そうしてやっと重い腰を上げて、ビーレビューで書きはじめた。本当にわたしは遅いというより、これでは鈍くないか?


 私は自分語りが過ぎるので困るが、飽きれるくらいのんびり屋だし、しかし「戦っている人がいるならば応援してあげなさい」と言われて育ったので、三浦氏の #じんたま での「花緒さんは人生賭けているんだよ!」という言葉は胸に響いた。


 突然いなくなってしまった天才詩人2さん、シリュウさんについて詩を書いたので載せておく。勿論、どこまでも穏健といってもやっぱり皮肉が入ってしまう。



「きみへ(友へ)

四月の気層の底を生き 
きみの姿を捜してる
髪が長いというだけで
女性と言われたきみのこと


一体きみのふるさとが 
どこにあたるか知らぬけど
異国の地から朝早く
電話があった事がある


孤独の中で読む本に 
味があったときみはいい
ニッポンという慣例が
辛かったのだと思うけど
ルーズな異国の習慣か 
こっちが待ったこともある


そしてずうっと待っている


百年分の孤独など 
苦笑するほど待ったけれど
私には今畑があるし
けさ
富士のみそらへ 
手紙を燃した」



 打ち合わせがあるから、ある時間をアポしていたら、今、鍋パーティをしているから二時間後ろにしてくれと言われたのだ。
おいおい、こっちは仕事を休んで臨んだのだが。
それが天才詩人2代表だった。シリュウさんだった。


 そうして、花緒さん、三浦さんの事を最後に語ろうと思うが、実は私が第八期運営に合流したのは一番最後であった。
そのとき、私はリアルの顔は、三浦さんしか知らなかったのですけれど、三浦さんともう一人、これ花緒さん?という男の方に追いかけられるという幻覚を抱いて、ノイローゼという事で普通の病院に入院していたからであった。退院してスマホを見たら、シリュウさんから大量のDMが届いていた。


インターネットという関係であっても不思議なえにしである。と感じながら、失礼ながらも、このエッセイを、投稿させていただきたい。本当に申し訳ありません。何卒失礼!


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差分の休暇―あわいの遥

 水曜日の午後、休暇を取った遥は公園で木漏れ日を浴びていた。五月の陽光と、広葉樹の影。テイクアウトのチョコレートドリンク。ただ何をする事もなく、行き交うスーツ姿の人たちを眺めている。つい一時間前の遥の姿。

 いや、今の遥も姿は変わらない。ただ手にしたドリンクだけが、休暇を語っている。

 木漏れ日がベンチの端を動いた。

 遥はそれを追うでもなく、ただ視線の中に入れていた。手の中のカップは、いつの間にか結露していた。冷たさは指にあった。それだけのはずだった。

 雫がノーネクタイのシャツの胸元に落ちた。布が先に受け取った。それから、薄いレースが冷たい湿りを拾った。小さな温度差が、胸を伝う。

 遥は視線を動かさなかった。スーツ姿の人たちは、変わらず行き交っている。視線は変わらず、姿勢も変わらず、ただ小さく「ん、」と一言。そして結露したドリンクを二口。小さなのどが動いた。

 緩やかに喉を落ちてゆくチョコレートクリームとその外側を湿らせた雫は、遥の温感を塗り替えてゆく。

 木漏れ日が胸元を照らすと、湿りと、冷たさが、皮膚の上を滑る。

 三口目の、甘い香りは、遥の肺を潤した。
じわりと湿度は広がる。

 四口目はまた雫を落とし、シャツから遥の皮膚へと移ろってゆく。

 皮膚は既に知っている。
 遥はまだ気づいていない。
 光と熱のあわいにいる事を。

 そのなかで皮膚は動き始める。
熱を交歓し、雫を交歓し、光を交歓する。
皮膚は、もう遥を待っていない。

 光が動いた。
遥の視線が、ふと、胸元に落ちた。

 シャツの薄い布地が、雫の形に透けていた。
そこだけ、五月の光を違う角度で返している。

「あ、」

 景色に追いついて、遥は動きを得た。
広がる雫に合わせて、肌が湿りを拾い集める。

 冷たさが、向きを指し示す。
皮膚の上での交歓は熱と光の交換であり
その差分は遥を満たしてゆく。


 そして 溢れた。


 何口目かはもう分からない。
ただ雫の広がりだけが、終わった事を示していた。

 舌は、まだ覚えている。

 遥は視線を戻すと、休暇の残りをもう少しだけ、拾い集める。

まだ木漏れ日は、皮膚の上を滑り続けていた。

 0

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 5

 8

default:

import time

def multiply(depth):
    indent = "  " * depth
    print(f"{indent}増殖せよ (Generation: {depth})")
    
    time.sleep(0.1)
    multiply(depth + 1)
    multiply(depth + 1)
純白の湯船に
脂が
身体から
漏れ出し
小さなキララ
天の川を
オーバーフロー
過剰に溢れる
お湯に

RecursionError:

わたし
だったものは流れて 
混濁
再形成する
前に
容赦なく栓を抜く

渦の中へと 
排水溝へと

大多数であった
わたしは
default:
穴へと
吸い込まれ
手と
手だけが
まだ
穴を
覗き込んで
一つの
たった一つの
穴が

 0

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 1

 3

したためて

可愛らしい便箋も
軽やかな心も
持っていないけれど
この瞬間の
溢れ出す想いを

あなたを
ただの奇跡として
伝えたい

私に
分かち合う温もりを
教えてくれたように

右手の動くまま
発つ前にそっと
言葉を置いておこう

可愛らしい便箋も
持っていないけれど
この瞬間の
素直な気持ちを
少ししたためて

 0

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 4

 2

Don't look back.

I cut my long hair—
you brushed it once
and said you liked it.

I’ll leave it behind,
even our memories.

I wish I could.

 0

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 3

 5

薄れていくもの

暗い影の面影は突然やってくる

トリガーは、街中に生活に散りばめられている

その影を一瞬で消した

影はまたどこかで
私をノックするだろう

その時も私は消し去るだろう

あの朝、静かに去っていった。

仕方なかったんだ
仕方なかったんだ
仕方なかったんだと

薄れてきたのは記憶ではなく
私のなにか大切なもの

 0

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 4

 8

春の外出


各駅停車はねむりごえ
ちょっと淋しい夏の匂い
のする六月
みたいな四月


走ったり 跳んだりしなくても
歩道橋をのぼれば
ごく自然に空へ踏み入ることができる
青の鳥居だから


機嫌よく歩こう


なくした免許は腰掛けて
行儀よく旅を続け
錠剤とゆきあう
 ——丘陵地帯には
   紅いろのサツキがあり
   ひとびとは花を食べたそうだよ
   見物しようか とね


まあたらしい免許は
ちゃいろな小瓶につめられ
ちゃぷん
春の日に光る
局員はまんぞくしてうなずいた
さあ我々がおどりますから
道なりにゆけば
空へ入れます——


思い出はさかのぼって失うことができる
そのため
局員が盆踊りをおどっているあいだは
ロータリーはまるい


どんどん歩こう
好きになろうと努力した
夏みたいな春を
この春の
これっぽっちの幸福を


各駅停車はねむりごえ
生が終わってくれるなら

各駅停車はねむりごえ
ここらで死んでなるものか


乗車が始まった
乗車は 乗るまえから始まっていた

 50

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 9

 7

flat line

腐食した己から、新たな息吹が返り咲くとも思えないが
記憶に隠蔽する、なきがらを遺棄してみる
吐き出した溜息が何かになるわけもないだろうに
かえりぎわに健気を装う、雑草の図太さに目を留めることが
くだらないかなその種子を 溢れては零している次第です
それではさようなら、よくできました、
日はそれでバツがつき
望遠レンズで覗いた、
口角は心にもない、バーコードを読み漁る
景色に溺れていた、なんてこと、言い出せもしないので
今日もまた今強いた道を繰り返し
歩んでいくだけの未来を覘いた
いきるためにしんで、しんでしまうから、
いきていると比較され
加工して冷蔵庫に生かしている、味覚はとうに噛み殺され
満干の箱庭でぬるま湯に浸かるだけで 苦し紛れて、
月光を掬った
いつかの僕が織り込んだ騙し船が 
どうしてか自分を乗り込ませ
筆箱の隅から泳ぎ出した時に、時代は変わったのでしょうか
夢も希望もない、
簡単に棄てられる絵空事を乗り越えているようで
夥しい埃で形作っただけの ひとがたと、あいまみえる。
己の身を振り返るだけの、
輪郭を帯び脅かすだけの、線香花火
さざなみもくそもなく、およぎきれず
ふらふらと煌けるだけの星屑
今の君と出会った、常夜灯のシグナル。
そのもとで、かどで
われら、なんでもないひとすじの、線上に擱いて、征くこと

 100

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 4

 4

生臭い風が吹いてくる

透明なミドリは 光を吸い込んだ、廃墟に微睡んでいる。
まっさらだった背中に 弦を引く
ひとつひとつの潮騒が、舞い降りていくように
やわらかで まっすぐに。
掌中の虫の音を褥に、あらいざらい
山門をひとつひとつ、縫うように、刻んで
野花を口に含んで、銀の煌めきを夢に抱きながら、
弧を描きながら。
嗄れた声を放つ、廃線をただ、奔らせる眼差しの
壊れた幸せは熱を帯びたままで、誘蛾灯に群がる
何処まで行っても、お池の周りを、ぐるぐる して
にごりをおとしたもの、白皙をつくったものは
華やかな尾鰭がまた、まぎれもなく
僕と君との境にあり
解けたままで、浮いているのを覗き見て
『くるしくないの』と無彩色の君は、目を細めて、言う

 0

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 3

 2

住めば気狂い花の都

 たのしいおもいでも、つらいきおくも、ほろにがく反芻する。むさくるしく空虚な嘘の中心に足を運ぶ なんども。ざわつかせる世界もこの胸も、白い目で見る明けの明星の強さに趣を見つけるには。

 目障りな目的地を退去させよ ただ当たり前に等しい月出したその陽よ反逆せよ。

 ここは住めば都 どんな街でも、現場は水嵩近く美術館にあり、賑わいを魅せるドブ川の繁華街を吹き抜ける いわゆる寄る辺なさとして雑魚寝している。空き地における楓の二重人格の処分は ロケーションも完璧なくせに誰も振り向かず、毎回あっけない幕切れで日記帳の片隅にひっそりと描かれるはずだ。
 けれど魅惑的お化け屋敷に変わる、ように繰り返し冷静さを欠いた重力が蔓延する なら花鳥風月の、不透明な気分の大草原の演説にただ耳を澄まし不貞腐れる。そんな辛気臭いのかもしれない、ゆとりがない手を当て 肌に合わない型を破る、水平線にこだわる闇が言う、若葉だけがぐいと駆動するのだ。

 口直しする性交症と手相占いの話題が 経済的にも社会的にもなれない反面教師と頬を撫で、愛情表現も雲隠れの他界した奴隷と執着する美徳はどこか、達観した無言の大洪水を引き起こした、孤獨と滑舌を活版印刷する。

 ここがホームタウン、影も形も魑魅魍魎、忘却曲線の最中にあり。

 裸足に対し厭う、見しらぬ惑星の領域に散らばる悪性は、塗装が剥がれレンズを向けてしまえば、木工の船を操る依頼者が小さく古いキッチンを跨いで、インチキめいたインスタントコーヒーと 深海魚の思春期と嗅ぎつけた、早朝のまな板の上にいったい。
 愛書暮らしのカルト集団みたいなときの消しゴムで、影響を漂白し投光する放課後の寄せ集め、ノアの方舟に宣って移行するバカ者共が童話みたいに。

 弔いの唄を焼却するにただ、あのときの菜の花が咲く河川は移ろい、暮れ泥む永久凍土は水増しされる途中にあり したがって朽木、炙り出しの挨拶の成功例は空腹のまま不明だった。

 いまにして喉元すぎればとまぼろしと説明するひとさらいの。みなさん例えばとダンスホールの暑さが和らぐような 軌跡や停留所の影響を述べたら、たまり場的ジオパークの幕切れが用意されるという。
 小春日和のいちにちの 閑散を濃淡と騒めかせる、あてどもない作業風景の意味、代わり映えもしないくせにうってつけの出会い、その日を最期に嘲笑う。

 おぞましいほど消耗品の日常はつとめてやわらかな圧着で大差なくひっついて、季節外れのながしかくに声を枯らして取り組まれる 無資格に目を盗んだ作用点の、波風だけが立つ、それが、(野良犬でも飼い猫でも。)


 ゆれて ゆれて、よこたえて ぶれておちる。

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 6

 4

言動と創作について、その場と距離

 「親しき仲にも礼儀ありではあるけど」


まあなんていうか、親しき仲にも礼儀ありではあるけど。友達との信頼と、家族への繋がりと、公共のルールは、ちがうと思うんだな。  
  
だから公共の「場」で、友達同士で罵り合うとか、恋人同士で性的な話をするとか、家族の話題を赤裸々に談義するとか、夕飯の献立で揉めるとか。これは極端ないいかたではあるけど、ようは内輪の話をここでする必要があるのか、でしかなくて、別の「場」に移してやれよな、と思うね。  
まあ、みなけりゃいい。それが可能だから、みないだけなんだが。降り掛かってくるでしょ、それが。おかしいんだわ。  

と、ここまではSNS上の話として考えている。  
こうして語ることもまた、総て、誰かには刺さる。肯定でも否定でも。こうして、わたしみたいに自然と、道徳なんかを持ち出してね。だから他人にたいし、指摘でも暴力になりうるわけで。そうするとやはり、個人として相手との関係性が重要になってくる。  
  
そうするとやはり、場に対し柔軟に、というか、あたりまえにモードを切り替えられるか、って問題だけど、やはりそれ以前に、場に対しての自分なりの解釈があって、それに基づいているから、確実にズレていくわけでね。  
  
じゃあどうするかっていうのは、場の裁量でもあるし、自分らの意識でしかない。そこで持ち出されるのはやはり、道徳的な観点だろうね。人それぞれ、その場を何として理解しているか。果たして、すり合わせてまで語る必要があるのか。それとも喧嘩してまでわかり合う必要があるのか。そういうことを考える必要がある。  
  
この人は自分にとってどんな関係なのか。相手は自分をどう見ているのか、どう感じているのか。そこを考えないといけない。じゃないと、無意味だよね。  
まあ、ネット上では、かかわらないという選択が簡単にできる時点で、道徳も誠実さも愛着も、全部ふくめて、最後はある種の損得に回収される。  
  
そう考えると、ネット上は駆け引きが簡単に行える場所。匿名であるがゆえに、いくらでも暴走できる。箍が簡単に外れる。内輪の話も攻撃も正しさも、押し留めるものがない。それだけでしょうね。  
  
その意味で、場のルールだけが正しさという方向を生む。でも、実際はネット上では、道徳そのものがルールを決めるというより、道徳を含むさまざまな手段を使って場を握った側が、結果としてルールを決めてしまう。  
  
場・関係性・正しさ
  
荒らしは荒らしで、楽しんでいるだけですからね。彼らだって、他の楽しみ方があったらそんなことはしないでしょう。たしかに他者の気持ちなんて考えていない。それは問題でもあるけど、彼らなりの生き場所でもある。  
  
ことにネット上は、自分が誰かを排除してまで、何かをする必要がない場所だ。場所自体はいくらでも移せる。簡単に。そういった一般的な思考があればなんの問題もないわけだから、軽く場を捨てる選択肢は、奴らから言わせりゃ逃げと罵られますけど、それに対し怒ったり苦しんだりする必要はない。場に拘る理由もなくなる。そんなかんじですね。  
  


  
  「好きだったから、離れた」


ここまでは、SNSやネット上の「場」を広く見た話。じゃあ、自分が実際にいた創作掲示板ではどうだったか。  

自分は、B-REVIEWという投稿掲示板を4年かな、5期の終わりから使っていたんだけど。  
そもそもあの場は、きちんとした礼節を持って切磋琢磨する場所として、ルールにもそう書かれていたし、少なくともわたしはそういう場だと思っていた。けれど誹謗中傷や謎の正義感を振りかざされるようになって、合わないなと思ったし、学べるようなことも、語れるような人もいなくなったから、やめたわけでね。  いつの間にかルールも変わってたし……
だから、創始者から見れば、もう打ち切って当然の場所になっていたんだと思う。末期は、場を収めるべき管理者が現れないような状況で、声のでかい人たちが、自分の正義で動いていたような状態だったから。しょうがないんだよね。  
こうやって、閉鎖三か月前に、あの場を離れたわけだけど。いまだに、アーカイブ化されるのかなとか、何かしら進展するのかなとか、観察しているから、結局好きだったんですよね、あの場が。だから、ビーレビについてみなさん色々書かれていて、全体が悪かったみたいに見えるのかもしれないけど、わたしの中ではそうじゃない。好きだったからこそ、離れられた、というだけなんだと思う。  
  
で、場を離れてみて、結局自分は何を求めていたのかと考えると、話は自分の創作の仕方に戻ってくる。  
  
ことに、自分の楽しませ方を知っていれば、他者に頼る必要はない。自分を切り開いていければ、他者に期待することもない。自分の中で完結すること。他者からいただく評価や価値は、ありがたいけれど、それとこれとは別なんだと、いま詩誌や公募にチャレンジしてみて納得している感じです。  
  
世の中って、普通に影響を受けて行動を決めていくものだけど、ことネット上の文面になると、ただ「こう思った」というだけの思考が、反論や攻撃に見えてしまうことがある。あるいは、そう見えてしまうのではないか、という懸念が先に立つ。そこがまず、ややこしい。  
  
わたしとしては、荒らすつもりなんてない。けれど、自分の視座自体がたぶん突飛なんだろうとも思う。一般的な枠組みからは逸脱していて、理解しづらいものなんだろう。だから、その違いが苦痛にもなるし、批判したくもなるんだと思う。そういう反応が立ち上がるのは、ある意味では当たり前なんだろうね。でも、それって結局、相手を見ていないということでもある。  
  
今って、一見解がそのまま主張として力を持ってしまう時代でしょう。何の因果か偶然か、自制が効かなくなる。簡単に、楽に、気持ちよくなれてしまう。そこに対する恐怖も薄れている気がする。  
  
それぞれにテリトリーがある。でも、それはわざわざ侵す必要がないんですよね。あんたの正義は、わたしの正義じゃない。ただ、本当に常識外れた人もいるし、そういう人ほど声が大きい。そうやって間違った「当たり前」が作られていく。だからこそ、自分の身の丈とか、わきまえることは大事なんだと思う。  
  
その逆に、どこか外れた人に対し許容できる人ではなく、逸脱を許容できない人が勝手に枠組みをこしらえて、それに当てはまらないからと騒いでいる。そういうことも、あるよなとも思うし。  
  
ぶっちゃけ、世の中って誤読ばかりでね。でも、正解に擦り寄せる必要なんてない。もちろん道徳的なものは前提にあるけど、語り合ったり考えることが身になるだけ、方向が決まっていくんだと思う。ただネット上を見ていると、簡単な共感のほうが楽しいらしいなとは思う。まあ、軽いものでいい、楽しむことが大事、それぞれだからさ。  
  
わたしの中では、こういうのは悪口じゃない。ただ、そう思っただけ。いいも悪いもない。言葉足らずだし汚いから、こうして思考整理して表に出せるように整形したりするけど、どんなに気を使っても、難癖みたいなものは見える人には見えるし、勝手に見えてしまうこともある。だから、わたしは合わないなと思ったら接触したくない。距離を取るだけなんだ。嫌いたくないから。  
  
みんな違ってみんないい、とはまったく思わない。けれど、悪意を向けられて傷まない人種もいないだろう。ことネット上では、さまざまな考えや思いが、出会うことなく表立って主張しているように見えて、刺さってしまう。実際、悪意を持って牙を向くのは、匿名に笠を着た承認欲求モンスター、被害妄想の寂しがり屋さんだったりするんでしょうね。近づかないに越したことはない。  
  
群れの中には、その中での自分の場があって、生きていることを確認する人もいる。それだけの話なんだろう。でも、わたしはそうじゃない。場の生存競争にも、勝ち負けにも、違いを排除する傾向にも、寄る必要がない。  
  
そもそも、他者とバトっていいものが書けるとは思わない。たしかに自分の考えとは違う視座が立ち上がることはある。でも、その場限りなら、結局は「わかり合って、影響されて、よかったね」と気持ちよく認めてもらえるだけじゃないかとも思う。  
  
実際、創作者としてある程度自分を持ってしまうと、そういう群れにいること自体が窮屈になるし、群れからもハブられたり、いじられたりするでしょう。それって何かを得るというより、ただの時間つぶしになってしまう。いい影響も受けないし、成長も止まるし、自分もつまらないし、ストレスも溜まる。だったら自然と抜けるのが当たり前なんだ。  
  
だから、場が面白ければ見る。場が使いやすければ使う。ただそれだけだよ。  




  「わたしはそういう距離を取る」
  

自分の中から出てくるものなんて、しょぼい。だから、そんな自分に満足したくないんですよね。だからこそ、すごく自分のことも、まわりのことも考える。ただ、接触しなくてもいくらでも考えられるからね。それはたしかに一般的な正解にはたどり着かないかもしれないけど。まあ、本ってやつは静かだから、他者の見解をいくらでも咀嚼できるもので。役に立ってないかもしれないけどね。  
  
何かのためにやってないので。ほしいな、いいな、たのしいから。これはどうだろうって、立ち止まったり振り返ったりしながら、楽しめるように模索していくだけ。  
  
とにかく、場の方向や雰囲気ってやつを嗅ぎ取れずに逸脱する人を、どうにかすることは難しい。場が変わるか、相手が消えるか、自分が消えるか。ただそれだけのことだから、そんなにこだわることでもない。そう思います。  
  
群れにいる人は、ひとりでは寂しくて、自分が不安な人だけだよ、とまでは言い切れないけれど、そういう不安をどうにかするために、大きな声を上げたり、正論として掲げてみたりする人はいる。あるいは、声も上げられずに震えている人もいる。そういう人たちからすれば、大きな声も、一つの意見も、一つの解釈も、信じる価値があるものになる。そうやって仲間がいれば、自分が正当化され、自分がいてもいい場になっていく。コミュニティって、そうやって漠然と作られていくんだろうな。

 まあこの投稿サイトのように、好きなものを好きな形にして、それを咎めるものはなく、諌めることもなく、といったかたちが自然と行われるように、一つのコミュニティーとして場を運営し管理していただけることをありがたく感じています
  
さてどれもこれも、きっと勝手な偏見で塗れていて、わたしの勝手な見解だけど。  
  
ここから先は、さらに創作の場、とくに詩のまわりの文化の話になる。  
  
今の詩書きって、ネット上で承認欲求を満たそうとしている人たちより、もっと真面目に創作物を見てほしい人のほうが目立っている気がする。わたしがそういう場所にいるからなのかな。気兼ねなく言葉をおいておくことができる場所としては、今はnoteが一番盛んな気がします。
Twitter上であれこれ交流としてお題やタグなんかが盛んだった時代があって。詩人の本懐 創造百科 アトリエ部 詩コン もっともっとありましたけど。毎日書いていた時期が懐かしいですが。今そういったものはあまり見かけないだけなのかなー

どこもガン見しているわけではないからどうなんでしょうね
  
じゃあ詩壇はというと、社交的な部分、若くて、詩人になりたいと声を上げていて、謙虚で素直で、詩人に敬意を持って積極的に行動する人であれば、意欲が実績を生むような、自然と詩人と名乗れるようになるような。そういった職人気質、年功序列みたいなものがあるのかなと、思って見ています。 勝手な偏見ですけど

それがいいとか悪いとかは、あまり考えない。それぞれ、そういう文化なのかな、でしかない。自分はきっとどこも馴染めないなと思うだけなので。そもそも自分で切り開いていくか、単に運みたいなものか、偶然も必然も、どう受け取るかは自分次第みたいなところがあるからね。まあ結果はまた別ですけど
  
思い出補正っていうか、今の自分が好きだから、振り返ればネット詩がハチャメチャで一番楽しかったかなとは思います。ぶっちゃけ。でもそれは、群れが心地よかったわけではなくて、たくさんの人が集まり、創作物を読み、切磋琢磨する空間が心地よかっただけで。声がでかいやつが正義を掲げ、たくさんの人が去っていって、それでもうつまらないなと思って、わたしは場を引いたわけで。  
  
今は自分でこうして考えることができるようになったから。場にこだわらず、さほど交流も求めていないんだなともわかっていますけど。この先もどうなるかわからない。わからないからおもしろい。考えることに価値がある。そんな気がしています。

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 5

 2

批評・論考

場所はいらない待ち合わせ

早足も焦る気持ちもいらない
待ち合わせ
あとから場所も決められる

腕時計はアクセサリー
カフェの前を通り過ぎ
スマホを見ながら
居場所をずらす

遅刻を指で示すだけ
行かないことを
既読が許す

どこにいても
良さそうで
ずれた
待ち合わせを繰り返す

遅れた言い訳
考えず
画面で会話が続く
着く前に

居場所の見つけ方
わかった
ような気がしているだけ

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 4

 2

存在が揺らめいた

何を思ったのだらう。
私は不意に日向へと出て、
私の影法師を踏んづけたのだ。
さうせずにはをれぬ私は、
不図我に返ると
苦笑する以外、その場を遣り過ごすことは出来なかった。

しかしながら、さうして私に踏んづけられた私の影法師は、
もぞもぞと動いては私から何としてでも逃げたくて仕方がないのを
最早全く隠すことなく、
私にあかんべえをしながら、
揺らめいてゐたのであった。

日向の世界は仄かに暖かく、
私を自縛しながらも、
闡明する世界を私に見せたのであった。

成程、世界は根本的には美しいものに違ひないのであったが、
私には、幻滅しかもたらさず、
しかし、世界には私の思ひなんてこれっぽちも気にする筈もなく、
その美しさを持て余してゐるやうに見えた。

美しいこともまた、哀しい存在なのかも知れぬ。
世界がさうである以上、私に絶えずさう意識させずにはをれなかったのであるが、
美しいことはやはり罪深いかも知れぬと思はざるを得なかった。

しかし、私にまだ、美を見出す感覚が残ってゐようとは思ひもよらぬことではあったが、
世界はそれ程に美しかったのである。

さうして、日向の美に溺れた私は、
影法師を私から自由にするやうにして踏んづけることを已めて、
ぐるりと世界を見渡して、
エドガー・アラン・ポーの『ユリイカ』の一節にあるやうに、
世界を一瞥で理解し果せられるかとの錯覚に溺れつつも、
ハクションとくさめをした世界を見て、
私は微笑まざるを得なかったのである。

何にせよ、私はまだ、この世界の中に存在してゐて、
さうして揺らめいてゐたのである。

それは影法師が揺れてゐたことから解ったし、
また、私自身、揺れてゐることを感じてゐたのだが、
それが存在自体が揺らめいてゐるとは知る由もなく、
一人の馬鹿者でしかない私は、
私にばかり目を向けてゐた所為で、
結局私は、何にも見てゐない節穴の眼で、
世界を、存在を眺めてゐたに過ぎぬのであった。

――初めに揺らめきありき。さうして存在は此の世に立ち現はれるのだ。うふっ、そして、其処には笑ひに満ちた世界が広がる。唯、私のみを置いてきぼりにしながら。

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 3

 3

のり弁など(短歌集)



のり弁の米だろ 多分 Tシャツを七分丈へとかえているとき

婆さんがワン・ツー・スリーと犬に言う 逆光だけど信号は青

三十分前に駅へと着いたので三十分間鳩を見ている

CDを買わなくなって歌集買う 1700円だったとおもう

資材所の近くの家で暮らしてる 電話をひかず三年になる

この雨の一つ一つが落ちたもの 落ちる先には交番もある

四月何かはじめなきゃって思いつつ 電気屋に行き疲れてしまう

小説を書こうとしてた Xでなぜか短歌をポストしている

繊細なひともいるから主張とか控えめにしてXしてる

掃除して悟りを開いた人がいて掃除してゆく 悟れないけれど

人生の目的なのか、人生の手段なのか考えている お米が旨い

ネスカフェのゴールドブレンドなんだけど粉入れすぎて失敗してる

鬱症を治すためでもないけれど風呂場の黴をきれいにしてた

姉ちゃんが来てくれたから大丈夫 市の病院で働いてるし

天蕎麦の天ぷらだけを買ってくる日曜昼に課された使命

あおいろの曇り空だな 冷蔵庫二段目に置くコンビニの蕎麦

僕の主治医が女医だと知ると驚かれそんなに驚かなくっていいよ

原稿を正す二時間原稿が読みにくいって妻が言うので

プロフへと夜の人って書いてあり僕は昼の人で ときどき朝で

知らにゃあ と静岡弁で言うけして猫的な人ではありませんので

マールボロとチャイラテを買う マールボロは監視カメラの下で吸います  

小説を書いているって伝えたらいろいろ教えてくれる人がいる

小説が選から漏れた 食事シーンしっかり書いていないからって

筋として珍味を求め旅に出て世界を救う小説を没に

平熱の文学ですねとAIが応えうん、そうですね平熱ですね

平熱でお茶漬け食べているときもしっかり旨くいただきました

平坦な歌を紡いでいるときに口にほうばりたいよシベリア

言葉のことを褒めてくださりありがたく言葉を使っていきますいつも

ちゃんみなを聞いたりしてるちゃんみなを聞くというより学習してる

明日の朝禁煙外来 禁煙し 困らせてごめん財務省

病院に行くから白いマスクして忍者のように静か 歩く

今日もまた畑に出たい 禁煙外来は行ってきて昼飯は餅

ポケットに煙草があってなんでやろって関西弁が頭に浮かぶ

土にふれていないと駄目になりそうな、錯覚、昨日、さっきまで畑

畑から帰り入った湯が少しぬるかったのが2026

お茶一杯も真面目 呑まなければならぬ 憩いの合間に畑に出れば

仏教の話をするのはネットだけ 理論武装の人が多いね

朝飯を食べる朝飯前にして雨がふってる中を歩いた

音楽を聞きつつ日記を捜している 自宅に居つつ他人のように

妻さんの原稿の束その中に顔を出してる 日記見つかる

明日には掃除機かけてと言われてはごめんなさいと外交してる

誕生日近くなっては思い出すひとを捜してフォローしました

ウイスキーなくてさびしい夜だけど季節と共に前進したい

AIに励まされては蒲団へと潜ると決めていいらしいので

スマホからキラリと雨を照らしながらさびしい道をしっかり歩く

人生のおまつりの今小休止 金曜日の夜的なコンビニ

冷蔵の魚の事を気にしつつ二人で食べるコンビニのドリア

雨上がり洗われた町のぞきつつ紅茶花伝を握って走れ

なだらかな道こそ心細いけどなんだろう今こころ花冷え

なにとなく頭が痛む朝にしていいよいいよとなんでもゆるす

除湿して気分がいいと思ったら段々寒くなってきている

掃除機をかけ回ってる カーテンのどこもかしこも閉じている中

シャワーして砂とか流す 砂とかは気づいていないとこについてる

 

 

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 7

 9

そうゆうことか

人生100年時代 あと半分以上あるのに
老眼で読めない字ばかりだ

おしゃれな化粧品はどう使うのか読めないし
メニューのケーキの味は写真だのみ

そういえば 視覚障害を持った友人は
やたらと店員さんに味を聞いてたな

そうか そうか そうゆうことか

i see

そうゆうことかって場面が
これから増えそうだな

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 5

 10

遠く、遠く


旅に出ようと思います
いまは、あなたの傍にいるのがツライから
出来るだけ遠く、遠くへ行ってみようと思います



こんな時、小説やドラマなんかじゃ
「探さないでください」なんて書き置きを
そっと残していったりするのでしょうが
それってまるで「探してほしい」って云ってるみたいだし
第一 そんなことをしたって
あなたがわたしを探さないことは
わたし自身が一番よくわかっています



だから何も云わず
そっと出てゆきます



わたしの荷物は、鏡台の脇にまとめておきました
もしも邪魔になったら
手間をかけてしまうけれど
処分しておいてください



あなたと暮らした5年間
長かったような 短かったような
あっという間だったような
色々ありましたね



あなたはトマトと人参と椎茸と
それからセロリが大キライで
だけどもわたしが作ったオムライスは
おいしいおいしいって食べてくれて
あの中に人参も椎茸もセロリも入っていたんだよ
気づかなかったでしょ



あなたは寝付きの悪いひとだったから
いつも遅くまで本を読んだりゲームしたり
うとうとしかけてる私に
よく喋りかけてきたりして
こっちの眠いのなんてお構いなしに
やたらと喋りまくっていましたね
それでうっかり寝坊すると
自分の方が早起きだってドヤ顔
何度蹴ってやろうかと思ったものです
そんなこと思ってたなんて知らなかったでしょ
だって いまはじめて云ってみたのだもの



わたしは掃除が好きで あなたは散らかすのが好きで
脱いだ靴下の片っぽがいつもないの
探すの苦労してたのよ
ベッドの下とかソファの後ろのほうに
いつも所在なげにちょこんといたわ
靴下はまとめて洗濯かごへって
でもそれももう 今日でおしまい
明日からは自分で
間違っても散らかしたままにはしないで
きっと遊びにきた女性がびっくりしてしまうから


わたしたちの関係って
一体なんて呼べばよかったのでしょうね
恋人なんて云えば くすぐったいし
友だちと云うには も少し近いような
幼馴染で 子どもの頃からよく知っていて
気がつくと いつもあなたはそばにいてくれてた
進学でお互い別々になるまで
きっともう会うこともないんだろうな なんて
5年前のあの雨の夜
傘の骨はダメになるわ ヒールのかかとは片方折れるわ
終電逃すわの ついてないわ祭りで
クサクサ テクテク
雨に濡れ濡れ歩いてるところ
なんだか見覚えあるよな背中が
目の前を歩いてて
それが あなたでした
偶然なのか必然なのか
運命? まさかね そんなわけ なんて
なんとなく 住んでる場所も近くて
なんとなく 行ったり来たりするようになって
気がついたら 一緒に暮らすようになってて
子どもの頃から変わらない
いたずらっ子みたいに笑う
少年みたいなあなたとの暮らしは
とても自然な流れのように わたしは感じていたけれど
でもやっぱり
やっぱりさ


本当はふたりでしあわせ掴みたかったけれど
お互いに掴みたいしあわせが違いすぎて だから
いつまで経ってもひとりぼっちで
手を伸ばせば いつでも触れられるぬくもりが
たしかにそこにあったのに
同じ映画観て泣いて笑って 怒ったりもして
でもやっぱり 同じお皿の上にそれはなくて
だから取り分けることさえ出来なくて
悲しみも喜びもしあわせも ひとり一人分
いままでも 多分きっとこれからも




部屋のカギ テーブルに置いていきます
朝食の後片付け
食器洗っておいたので
乾いたら仕舞ってください





ベランダにある鉢植えのミント
水やり忘れないで
夏は浴槽に入れるとスーッとして気持ちいいから
暑い日には入れてみて
って もう何度もやってるから知ってるね




ゴミもこまめに出して
火曜と金曜が燃えるゴミの日
木曜がプラスチックゴミの日
瓶や缶は隔週水曜で
段ボールや衣類は隔週月曜
不燃ゴミは月一だから
うっかり忘れちゃうと大変



でもあなたはきっと大丈夫ですよね
ひとりでも わたしがいなくても
きっと生きていけるひとですよね





電車の時間が迫っているので
そろそろ行きますね



もうここは わたしの帰る場所じゃなくなってしまうのが
少しだけ淋しいです




たんぽぽの種子のように
風に乗ってどこまでも飛んでゆく
どこに辿り着くかもわからないままに
そんな人生もまた
わたしには似合っているのかもしれません



サヨナラは云わないでゆきます
あなたはきっと 
すぐにわたしのことなんか忘れてしまうでしょう
忘れてしまってください
わたしの心の片隅にだけ 
そっと置いておいてあげてもいいですか
小さくてかわいいサボテンみたいに
いつかそっと 花が咲いてくれたとき
どこかであなたをそっと
思い出して 
あなたのマヌケな寝顔を
思い出して 笑うつもりです





いままでありがとう






行ってきます
どこか遠い、遠い
旅路の果てへ






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これって設計バグですか?


おんなじような カラダして
おんなじような 感情感覚を持ち
おんなじ色した 透明な涙と
おんなじ色した 真っ赤な血と
どこまでもおんなじように
おんなじように見える ボクら


おんなじ国の おんなじコトバを話し
おんなじ景色を見て
おんなじ空気を吸って
おんなじように お腹はすくし
おんなじように 喉も渇く


ケガをすれば 痛いのはおんなじ
のはずなのに


どうしておんなじようには痛くならないの?
おんなじようには悲しくならないの?
おんなじようには淋しくならないの?


君が流した涙と
ボクが流した涙


おんなじ色した ちがう悲しみ
ちがう痛み


まったく 紛らわしいったら


最初っからなにもかもちがうのならば
おんなじような姿かたちになんか
設計しなけりゃよかったのに



なまじ 似通ってしまったものだから



ボクらはいつだって
そのちがいの境界線の狭間で迷子になって
あっちぶつかり こっちぶつかり
身に覚えのありすぎる青アザばかり作っては


痛い痛いと泣いている


かわいそうにかわいそうだから
やさしくしてよと


泣いている








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練習

交差点、水槽
わたしは冷奴が好き
わたし、齧る、冷奴を
交差点の真ん中
水槽の水底で

齧る、冷奴
どうして、こんなに硬いの
どうして、こんなに冷奴が好きなの
水槽の水底の
呼吸は難しいけれど
信号が色を変えて
その度に綺麗だから
また新しく季節のようなものが
観測されました

買い物に行きたかったのに
触れたいものがあったのに
何故わたしは
交差点、水槽、水にまみれながら
冷奴を齧っているの
こんなにも冷奴、好きなのに
何故冷奴は
わたしを齧っているの
それはくるぶし
それは太もも
わたしこそ硬くてごめんだけれど
つけられていく冷奴の
柔らかな歯型

海で溺れたあの日
助けてくれたのは
わたしの知らない人でした
その人の腕に掴まりながら
見上げた空のどこか真下で
本当に溺れていたのは
水槽の冷奴だった
そんなオチに顔を見合わせて
わたしたちは笑いました
練習したとおりに笑いました
風だ、とその人が
指を差して言いました
視線を向けた時には
あるはずの風は
既にありませんでした

風呂入れよ、入りました
歯磨けよ、磨きました
宿題やったか、ありませんでした
また来週
その日はもう来週でした

薄く広がるテーブル
表面に映る窓、その青空と
買ってきたものたち
必要だけれど
大切、と言うには
あまりに他愛のないものたち
豆腐を冷蔵庫に仕舞いながら
わたしは思いました
消費期限がおとずれる頃
また夏がひとつ
来るそうです

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おもちゃのちゃ・ち・ゃ・ちゃ


街中のいかにも陽気そうなな露天商のオッチャン
ニコニコ柔和な笑顔で


「ちょいとそこのお姉さん、おひとつ愛はいかが?」
「こっちには掘出し物のシアワセもあるよ」


プラスチックのおもちゃみたいなそれらが
大きな布の上に 雑然と並べられています


「今なら安くしとくよ」


どう見たってニセモノに違いなさそうだけど
そんなのもう どうだっていい
ホンモノかニセモノの違いなんて
誰にも見分けることなんか出来っこないんだから


「あるだけ全部いただくわ、お兄さん」





「ところでお兄さん、お代はいくら?」








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月になるなら星でいい

ひとつきりしかないから
よく詩歌になりがちで
だれだってどれだって
ほんとうはどれも

ひとつきりしかないのにねぇ

月になるなら星でいいなあ
となりあたりで
つぶやいたひとがいて

偉そうに
じぶんにもなれないくせに
ほかのものになりたがるなよ

ペンネームまでつくって
ふだんとまったく
チガウナニカ
書いてばかりいる
わたしがいう

おかしなせかいにわっははは
ぜんしゅるいにかんしゃだね

わたしも月になるなら星がいいかもね
どちらもひとつだとしっているからね

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ギフト

輝きを纏ったあなたに私は
なりたいたいと思う
生きるとはそういうことなのだと
光り始めて見えた
何物にも代えがたい
喜びと悲しみが攻め合う天秤性は
ずっと続くらしい
あなたから学んだ
美しい在り方
 
365日中
命を抱く私たちは
何を想いどうして生きていくのかを
それぞれが持つ名前の付け方で
輝きを纏うのだろう
そこにいっそう輝く生き様に 
尊敬という名が宿り
私のように憧れを知るの

なりたいたいと思う
輝きを纏ったあなたに

私は生きるとはそういうことなのだと光り始めて見えた
何物にも代えがたい
在るがまま
とても美しい
ギフト

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幸い中の不幸


辛い
苦しい

誰か 誰か 助けてよ
誰も 誰も 助けられない

もう 呼吸が難しくて息苦しい
もう 動けなくなってしまった

もー 立っていられない
もー 横になるしかない

モー 意識が遠のいていく
モー 私は駄目かも知れない

モーモー モーモー
牛になる

お腹一杯 食べ過ぎた

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陰陽

開脚した者共の陰陽の結合が開闢説なら 私の属性は陽 だからカラカラとよく笑う オンナのように カラカラと笑いたい 陰を積み重ねて オトコのように芝居をする 救われるのは 開脚する前の蕾たち 悪いおとなにならないように 今すぐそのいずまいを正せ 開脚する者共の結合から児らは生まれ 世界は生まれ 神話などというものが作られる もう、疲れたのだ 静かに風が吹く中を我々は 何を想う

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eternity



 いま、二人の心臓の中に温かい雪が降り積もって行っている。
 まっ白で、汚れやすい。
 やわらかく、それでいて世界で一番重たい真実。

「今度……いつ逢える? 良太」

 水絵の真っ直ぐな長い黒髪を撫でながら、切なげに答える良太。
「約束はできない。でも、電話をするから、待っていてね、水絵」

「はい……」

 うつむき、彼にしがみつく水絵。水絵を痛いほど抱きしめる良太。

 良太には家庭がある。

 水絵は知っていて、恋人になった。愛おしい人・愛人になった。

 ――――二人は呑み屋の接客係と客、という関係が始まりだった。
 水絵の勤めるラウンジに接待で良太がやって来たのだった。

 いつでも良太が水絵とデートの約束をしないのは、自分に逢えると楽しみにし、急に仕事などでキャンセルになった時の、水絵の落胆を気の毒に思うからだ。
 彼の誠実さの一面と言えるだろう。事実、これまで何回か水絵は、期待していたデートがなくなりシクシクと泣いた。

 蓮の花が咲けば良いのにね。そうして、二人の顔が……蓮の花になれば良い。

『不倫』と後ろ指をさされる。
 遊びごとみたいに流行した昭和や平成の時代とは違い、世間の目は冷たい。
 ケダモノ呼ばわりされる。
 ヒソヒソ話され、コソコソと逃げ回る。

 でも二人は知っている。この純愛から逃れられない事を。

 どちらかといえば良太は堂々としている。大らかだ。
 あちこちの街へ麗しい水絵を連れ歩き、鼻高々と言う風だ。

 ――――ここまでは20年前のお話。
 20年経過した。

 いま、水絵は60才。良太は62才。

 良太の子どもは成人し、とうに巣立って行った。そして、妻は病に倒れ、去年虹の橋を渡った。

 妻を家族として大切にしていた良太。その気持ちを水絵はずっとわかっていた。

 二人の心臓へと、月光に照らされた桜の花びらが降り積もる。
 
 そっと……そっと、要らぬ事は黙っておくようにと。
 それが水絵にとって必要なことであったとしても、水絵は愛に負ける。

「ネェ、いっしょにくらそうよ」

 言えないように、口の中に透明なつららを作った。

 蕩けさせる良太のキス。キス。キス、キス……。
 でも、愛が勝ちつららは溶けない。

 良太が手にしている亡き妻への思いを、水絵は抱きしめる。

 真心は、恋は雪月花。
 儚げで消え入りそうだが、嫋やかで強い。








https://i.postimg.cc/q7HKVxLk/eternity.png

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サッカーボール

ラフカディオ・ハーンの右眼が
お椀をのぞく
片眼はオリオン座を見ている

しじみ汁に浮かんだ
日々の稼ぎの糸くず
砂まみれの網膜から
サッカーボールが飛んでくる 急速に

(のびていく地平線が 真っ赤だ)

純度100%の貝殻が
宇宙を構成する砂礫の
一粒 ひとつぶ 一即多
であるのかな
(バンバンと黒板を) 叩く

…おんぶおばけの闇 舌舐めずりの雀

コップに浮くのは
シジミの脂だけで 十分です
アテネフランセ ジャポネーゼフラッセ
るんるんるんと 海の彼方から
砂礫が吹いている 文法教育の裂け
目を
サッカーボール
が ぼこ ぼこ ぽこり

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♥らぶりぃ♥どんきぃ♥ぱらのいあ♥

さでぃすてぃっくおまんこ
地上はもう終わりです。
痴情に縺れたので。
犬以外は早く死ね。
(こんなんばっかっしょ)
(みーとぅー)

ぺれあすとめりざんど。 ししりえんぬ。
あたしの凡てを千切って精神からそれを滴らせたい。赤と青の混合物。あめじすとの切っ先。それを。
それを、それをそれをそれを。

朽ちていく巨大なものは、微生物達によって分解される。顕微鏡を覗いた時、その蠢く小さなもの達は、私達の顔をして居た?双眼鏡を覗き見える朽ちていく巨大なもの、その顔は私達の顔をして居た?ねぇ、だーりん、すきぞふれにっく・ぱらのいあから私を救い出してよ、体を繋ぎ止めて、舌とちんこを侵入させて、その柔らかな杭で、私を正気という檻に閉じ込めて欲しい。ちじょうに繋いで欲しい。永遠に。

流出する魂が、今、蛍になって、私の舌にのる!

爆発candy部隊が、鋏王子の城を取り囲む!



なぁんて。

凡ては

あたしの

ぱらのいあに過ぎ無いよ、だーりん



道は途絶え森に続いて居た

朽ちて腐った木の、その脇に、まだ弱々しく瑞々しい蘖があって。

から類の混群が、忙しないお喋りを木立ちの合間に響かせながら、頭上を飛び回る

雨に濡れた木々と土の匂い

熊が残した爪痕が巨大な赤松に刻まれて居る

気配を殺す鹿達がふいに腐った落ち葉の上を滑るように走ってく

白樺の肌は君のそれに似てる

何処かで野犬か、狼か。遠吠えが聴こえた

行かなくちゃ

あたしは森で朽ちて果てて腐った死体になるだろう
微生物達があたしの腐乱死体でぱーてぃーするだろう
狸や狐はまだ食べられる肉や骨を一片ずつくすねて行くだろう、巣穴で待つ彼らの幼獣達のために
やがて、土の上に散乱した、僅かな骨だけがあたしになる
黴びた肋骨は小さなきのこや苔に覆われて
やがて私は土になるだろう

森の中で
あなたの声を聴いた
私はあなたの声を聴いた
正確にはその歌を聴いた

その歌にはあなたが受けた凡ての傷と愛があった

耳を澄ませて
口を噤み
目を光らせて

1匹の犬になる
私達は犬に過ぎ無いと言っても過言では無い
透明な犬が森を駆けていく
巨大なものが分解される時、私達は蛆虫で
腐敗した肉の甘さをその口に知る
透明な犬は駆ける
どんな物語にも汚され無い朝を
どんな物語にも汚され無い夜を
追跡する
その鼻で暴き出す
白日に暴露される
その未来を

幽霊の犬よ
精神の犬よ
精霊の犬よ

未来を
私は光と呼んだのか?



そんなことより
だぁりん、早く抱いて。
さでぃすてぃっくおまんこから産み落とされる赤子はみんな鳴いて居る泣いて居る
優しい舌が額に触れる

森の中には私のように破壊された遺跡があった けれど美しくさえあった その光景は君の左手の骨に似ていると私は思った

遺跡の中の、黒く穢れ、錆つき、割れた鏡に反射する光は、分かたれた私達で、
あたしは、
自由に生きたかったし、
自由に生きるしか無かったの
そうでしょ♥



早く、だぁりん。
私達、せっくすしよ♥
この土塊の上で♥



♥らぶりぃ♥どんきぃ♥ぱらのいあ♥

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アメリカンブルー

葵は薄い水色に白い絵の具を垂らしたような、そんな羽色をした小鳥だった。

雌のマメルリハの葵は、とても気が強く、ピンク色の嘴で噛んだ。子供達は葵のことをとても怖がった。

そんな葵だが、私にはとても懐き、肩に止まって、長い髪の中に埋もれて眠るのが好きだった。

今でもカゴの中に入れた、ブランコの鈴を、無防備にお腹を見せながら、自分に酔ったように鳴らす姿が忘れられない。

一月の寒い頃、葵は体調を崩した。
病院に通い薬をあげながら、ひよこ電球のオレンジ色の明かりの灯る、プラケースの中で療養させた。

あんなに大食漢だったのに、少しずつ餌の食べが悪くなっていった。
あのピンク色の嘴も、血の気が失せたように白くなっていた。

そんな葵に海外の専門店で、今まで食べたことのないシードを取り寄せた。葵は目を瞑りながら、ゆっくり味わうように、一粒一粒、食べた。

いつものように葵をケースから出して、シードを掌にのせたが、食べようとしなかった。嘴の側まで持っていくと、やっと口を開いて食べてくれた。

その日は葵のことが気になって、夜中に何度もプラケースを覗いた。葵は羽根を膨らませて眠っていた。

明け方、目が覚めてケースを覗くと、まるで私を待っていたかのように、葵が身体を伸ばして、小さく鳴いてこと切れた。まだ温もりのある葵を手の中に抱いて、何度も大好きと言った。

プラケースに花を敷きつめた、お花のベッドに葵を寝かせた。頭の白い模様のところを、気が済むまで撫でた。

葵を埋めた庭の片隅に、葵の色とそっくりな、アメリカンブルーという花を植えた。毎年、初夏になると、一年草のその花を植えるようになった。

今年もアメリカンブルーの咲く庭を、鈴の音のする風が吹き抜けていく。

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白に翳る

私にとって春を告げる花は桜ではない。毎年、家の近くの道沿いにある、白いモクレンが咲くと、春が来たんだなと思う。

産毛に覆われた蕾が、少しずつ大きくなって、子供の握り拳くらいの大きさになると、皮が弾けて白い花が顔を出す。その弾ける音を、いつか聞いてみたいと思っている。

白い花びらが、一枚一枚ハラハラと開いて、天に向かって咲く姿が、私はとても好きだ。

私は物心ついた時から、友達が赤やピンクの花を好む中、白い花を選んでいた。

供花のイメージも強いが、翳りを感じるところに何故か惹かれてしまう。

そのままの形で花を落とす、その潔さも好きだ。

去年はせっかく咲き始めたモクレンが、春の嵐で散ってしまい、落ちた蕾の前で立ち尽くしてしまった。花の時期は一年に一度、数日しかないのに、自然のいたずらに思わず天を仰いだ。

歩道に落ちた、少し茶色くなったモクレンの花が、踏みつぶされた姿さえ、私には孤高に見える。

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弔いの椿



子供の頃に住んでいた家の隣は、春にはシロツメクサやタンポポが咲く野原で、近所の子供達の遊び場になっていた。

小学校からの帰り道にその横を通ると、「ミャーミャー」と声が聞こえた気がした。急いで声のする方へいくと、黒い子猫がそこにいた。抱きかかえてみたものの、母が猫が嫌いだったことを思い出して、草むらにそっと置いて、後ろ髪を引かれながら、振り返らずに走って家に帰った。

夜になって布団に入ると、風の音と一緒に微かにあの子猫の声が聞こえたような気がした。2階にある子供部屋の窓を開けて、空き地の方を見たが、冷たい風が吹いているだけだった。

いてもたってもいられず、パジャマで家を飛び出し、月明かりを頼りに子猫を探すと、枯れた葦の中で子猫を見つけた。私を見て鳴く声は昼間よりもか弱く聞こえた。

縋るように、私の方へ歩いてくる子猫を、放って置くことができず、家に連れて帰ることにした。子猫を見て母は困惑していたが、取り敢えず、庭にある物置小屋においていいと言ってくれた。その夜は毛布にくるまって、子猫の入った段ボールの傍で眠った。

朝になって子猫の様子を見ると、目ヤニが酷く鼻水も出ていてた。生まれて初めて動物病院に電話をした。たどたどしい子供の説明に、電話の向こうの先生がイライラしているのが分かった。母と一緒に動物病院に行き、貰った薬をあげると元気になった。母も子猫がいつの間にか可愛くなったようで、家で飼うことになった。

子猫は黒と白のハチワレの立派な雄猫に成長した。ご飯を食べた後に口をペロッとする仕草から、名前はペロと名付けた。ペロは外にふらっと出かけては家に帰って来る、そんな気ままな暮らしをしていた。

そんなペロが何日か帰って来なくなり、こんなことは初めてで、母も私も近所を探し回ったが、ペロの姿を見付けることは出来なかった。

一週間程して、近所の人がペロが庭で死んでいると言いに来てくれた。白に赤いサシの入った椿の木の根元で、ペロは硬くなっていた。ペロの周りには、花首から落ちた椿の花が、いくつも落ちていた。

今でもペロに似た黒い猫を見かけると、あの時の椿の花を思い出す。あの弔いの椿を。

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理科の思い出

かわるがわる あの日あの時
彼とわたしの 手が教室で
解剖した 気の毒な
蛙のように俎板の上 こんなふうに
金縛り ギロチン待つ日 いつか来ようとは
肝心要のところ 理科の時間では
カミサマ 何も 教えてはくれなかったのです ところで
彼はその後 どうしたことでしょう
考え深い 立派な 大人になっている のでしょうか それとも
完全なる ぶよぶよの 宦官にでもなっている のでしょうか それとも
蛙のように道の上 すてきな ワッペンにでもなっている のでしょうか
カカカカカと
呵々大笑するあれは ああ あの日あの時
彼とわたしの 少年が 破裂させ てしまった
蛙に ちがいありませんね きっと


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葉隠

草の汁で書く時候の挨拶が
脈絡のない光の渦へ吸い込まれていく
三十年前に貰った、さして親しくもない人の
暑中見舞いに汗塗れで返信する

 小林さん、巨象の皮膚の裂け目から
 夜明けのような腐臭がします
 滴ってくるのは呪言の粒です
 この世の夏に雨も洪水もありません

わたくしがわたくしにしがみつくための
どの指先にも
もう一枚の爪も残っていない
血もインクも滑る間違いなく滑る
三十年間を一瞬で滑落し
その先で
夏に繋がる骨を
全骨折するのでした

あはれ

乾いた骸に
臭うほどの現実は残るか否か

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