投稿作品一覧
雨の六月
雨自体には雨粒の法があり
魚は泳いでいきます
私にも語りかけています
鳥は幾羽も同時に
目の前の空間を横切る
波立つ水面は
まるでしわしわになった輝きのよう
鉄塔が遠くに立っていて
電気を送り続けています
山の端は霧にかすんで
今日の日はまるで
六月が目覚めの咆哮を放った
あとみたいに
地上を
漠然と
薄暗がりの中に
置いています
最後の散文詩 Ⅰ
あらためて、昂ぶり、ふる、雨ふるふるさと。涙滲む、沁む、さむざむとしたきみのからだを、抱きとむ、富む趣きの方が通り過ぎる。憎む。ふたりこそ、冷えきっている。比喩、ざらざらとした、比喩。おまえは比喩。おまえはおまえのほんとうを書く事ができない。だが、俺は俺のほんとうの事を書く事ができる。俺はほんとうはおまえのほんとうが書きたい。しかし出来ない。それはおまえの業で、つまりそれが、おまえのARTになるから。くりかえし、くりかえされる言葉が好きだ。ひょうひょう、とか、ひゅうひゅう、とか、さざめき、寒椿、葉のゆらめき、ひかり。お手の物だ。ほんとう、この散文詩も新聞紙へ載らなければならない。それがわたしたちの夢、だった筈で、しかし、もう俺の家は新聞をとる事をやめてしまった。完全に負けているのに、いつの間にか勝っている事がある。かつて俺の身に起こった事を書きつづり、それが根を生やし、いつか花をつければ、そのとき、私は詩を書く事をやめる事ができる。これ以上もう、呪いの言葉を吐きちらし、つばきしつつ行き来し、悩み考え、深く沈みこみ、滴てんてんと思っていたら霰だった、なんてことがもう生活からなくなるという事だ。おーい、おまえ、おまえはほんとうにさびしいのか、おーい、俺、おまえはほんとうに生きたいのか、無味乾燥な味になってきた詩文をとおめに眺めつつ、つつうらうら、ほんとうの所、知ったこっちゃねぇ、で済ませられる話も多かったが、最後くらい、どのくらい、深く彫れるか知れぬが「刻苦」してみようじゃないか。いつか、友が言っていたように苦を刻みつけてやろう。もうそれは怨念であるし、刻んでも、刻んでも、人間はどうしようもない。サナエや、ナフサを皆話しているとき、俺はロシア、ウクライナの小鳥の足がしっかり二本、生えているかという事を考えてしまう人間だから、俺も、どうしようもない。そしてたましい、なんて冷えびえとした言葉を未だ、大真面目に、本気で考えている大馬鹿ものだからしょうがない。こんな詩を読んでも、きっと、こんな愚痴にはきみを救済、馬鹿馬鹿しい、そんな力はないし、それは他のひとの仕事だ。作家性、なんて聞いて、サッカーしようかな、なんてなぜかバスケットボールを買ってしまう人間、そんな人間に対して書いているようなものだ。キャベツがなくなっても差別はなくならない。もう、結構、圧縮入れて書いているけれど、もうもういいでしょうと思うのならば、ここで読む事をやめてくれ。そして職場の中で、あーもう、駄目になりそうな、ってときに、コーヒーを買う為に、130円がないそのとき、思って欲しいことを書く、それは「黙ってけふのわらじ履け」。コスパ、タイパ、俺は猛然と逃げつつ、テキストのつづきを書きつづけている。俺が、挑戦する、というとき、一体どれくらいの人が相手になって組み手を組んでくれるでしょうか。きみが挑戦するというのなら、構わず、後方支援で、頭上から、前方へ向けて、言葉のミサイルをぶっ放してやる。だから安心して、きみはその一本の白い道を懸命、歩くか、走りつづけろ。山に棲んで、ずっとスマホで眼精疲労を気にしつつ、いつも雨雲レーダーや、鼻の湿りで、風の方向性を探っている。ひとり倒れ、ふたり倒れ、なんでこんな事を、私が書いているのか、わからない。因果応報。応答願います、応答願います。ヤバいです。──ハロー、ハロー、わたしたちは「ほんとうに」つながっていますか?
犬小屋をかたづけると、
茶色い綿毛がふわりと笑う。
荒野のひまわり
荒野に一輪
頭を垂れた黄色い花が咲いていた
かつて私がこの花を見た時
輝かしい黄金色をしていた
そして群生していた
太陽に向かい、
何かしらの歓びを
体現していた花だった
色褪せた一輪
私は
私も、荒野にひとり
いつからか足元ばかり気にして
わずかな風にすら顔を背け
自分の影ばかり見つめて歩いて
今はもう
影すらささないほど暗い
荒野に、ひとり
頭を垂れて
ここへ辿り着き
つかれた足を折り曲げて
私は黒ずんだ茎をなでた
枯れるのを待つばかりの
さびしい一輪のひまわり
かつて私にも繋いでいた手があった
あたたかく握り締めていた時は
世界はもっと輝やかしく
私の影は背後に小さく
けれど
その手と手は
少しずつつめたくなり
影は私の正面で大きくなり
うつむいて歩くのが常になり
気がつけば
どうして
いつも誰かに問いかけていた気がする
冷えてゆく手に
うずくまる影に
指の間をすり抜けてゆく風に
どうして
ひとりになるのだろう
ひとりになってしまったのだろう
どうして
こんなところにひとりでいるのだろう
さびしさから逃れたい一心で
歩いて、歩いて
歩くほどにさびしさに近づき
どうして
風が吹く
黄色い花びらが一枚ちぎれて流れた
縹渺と暗い荒野を黄色い花びらが
舞い、流れ、留まらず、空へ
空へ
曇った空をゆく黄色い花びらに目を奪われ
立ち上がり
私は追いかけた
また歩くのか
荒野をひとり
風が目に入る
痛みに涙がでた
歩くのか、
まだ
花びらは曇り空の一点で
ひらり、と
光のように
マリーゴールド
また生えてきた、
って
その草は
新しい仲間だ
あなたが除草した瞬間に
土にたどり着いた
カッチカチのたまごが
新しく芽吹いたもの
死んだ仲間は
ちゃんと死んでいる
花屋で買った苗が
枯れてしまうのは
あなたが金を出したからだ
彼女は育ち方を知らないし
喉に詰まらせているのは
豊富すぎる栄養
花屋に世話をされたことも
彼女はまったく
覚えていないだろう
ドクダミの葉が
アスファルトのヒビから
顔を出す
ここのほうが暖かいことは
誰にも教えないつもり
気まぐれで色をつけた
ユウゲショウが
わたしのほうがかわいいよと
ブロックの穴から
自慢している
あなたの色は
夕暮れになっても
馴染まないよと
そら の
はじめから
あってないようなものを
ほしがるしあわせを
まだもっていてもいいですか
まだまだ
あまったれでいいですか
そらをみて
ときどき
うそぶいてみたり
そのうそに
泣いてみたり
まだまだ
わかぞうでいいですか
まだまだ
はなたれでいいですか
はじめから
あってないようなせかいで
とりのことば
そらのことば
つむぐというきみも
そしてぼくも
まだまだ
まだまだ
そらはそらで
そらはそらで
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Short https://youtube.com/shorts/6KnDYlXF2fo?si=F-G8BsuCRQk3J1ny
Full https://youtu.be/_xhxKbAm4co?si=2pM39fVoQBn24leC
つきなみ怪談 すし詰め
偶には回転寿司もいい。蓮中さんはそう言って握りを口に放り込んだ。意外と剛毅な食べ方をするんだな、と私はガリを噛みながら思った。
「あまりこういう店には?」
「あ、いえ。回転寿司だけでなく握り寿司自体、あまり食べないんですよ。どちらかといえば、押し寿司や柿の葉寿司なんかをよく食べます」
奈良の柿の葉寿司なら私も先日、出張の際に頂いた。葉の匂いが妙に残ってるのが印象的だった。蓮中さんは満員の店内をそっ、と見回して目を僅かに細めて続けた。
「さっき、バスの話がありましたよね」
「あぁ、廃棄予定のバスの中に人がみっしり立ってる……」
軍艦のイクラが運ばれてくる。
「押し寿司って、時間が経つほど馴染むでしょう」
その言葉を聞きながら、イクラを口にする。妙に生臭さを感じて、私は慌てて茶でそれを流し込んだ。
修正版
すし詰め
偶には回転寿司もいい。蓮中さんはそう言って握りを口に放り込んだ。意外と剛毅な食べ方をするんだな、と私はガリを噛みながら思った。
「あまりこういう店には?」
「あ、いえ。回転寿司だけでなく握り寿司自体、あまり食べないんですよ。どちらかといえば、押し寿司や柿の葉寿司なんかをよく食べます」
奈良の柿の葉寿司なら私も先日、出張の際に頂いた。葉の匂いが妙に残ってるのが印象的だった。蓮中さんは満員の店内をそっ、と見回して目を僅かに細めて続けた。
「さっき、バスの話がありましたよね」
「あぁ、確か廃棄予定のバスの……」
私はさっき聴いた話を思い返しながら、茶を啜った。
今日の午後、知人の紹介で自動車販売等に携わっていたTさんに話を伺っていた。水害に遭った車の発火事故等について話していると、
「発火、という訳じゃないんだけどさ」
とTさんが店の窓から道路眺めながらそう言った。
「と、言いますと?」
「ある営業所にいた時にね。残業で深夜になってしまったんだよ。施錠して帰ろうとしてたら」
チカチカ、てね、とTさんは手を開いたり閉じたりしてみせた。
「お客様から預かってる車を置いてる辺りからね」
「まさか泥棒か、なにか」
Tさんもその可能性を考えながら、そちらに向かったのだという。懐中電灯を点けようとした時、またカメラのフラッシュみたいな点滅が前の方で起きた。今度ははっきり見えたそうだ。
「お役御免になって廃棄予定のバス。観光バスだったんだけどさ……」
「それが光ったんですか?」
「いや、どうなんだろう。とにかく懐中電灯をつけてみたんだよ。そしたらさ」
照らされたバスのなかに沢山の人の姿があった、というのだ。それも隙間なくみっちり、と。Tさん、あまりの光景に手にした懐中電灯を、思わず取り落としたという。
「慌てて、灯りを拾い上げて、また見たんだよ。そしたら、バスのなかは空っぽだったんだ」
「そのバスですけど、なにか……」
「いやいや、私が知る限りだけど曰く付き、何てことはなかったですよ。でもね、あのバスにいた人たち」
同じ向きだったんだ。前を向いてね、顔はよく見えなかったけど、あれだけ人が居るのにこちらを見もしなかったよ。そう言って、Tさんは黙り込んでしまった。
そんな体験談を思い返して、呟く。
「……あれ、なんだったんでしょう」
軍艦のイクラが運ばれてくる。蓮中さんは空いた皿を片付けて、端に寄せていく。
「押し寿司って、時間が経つほど馴染むでしょう」
その言葉を聞きながら、イクラを口にする。妙に生臭さを感じて、私は慌てて茶でそれを流し込んだ。
花緒、千切る
まるで
まるで 割れた鏡を搔き集めて出来たような体
そんなはずじゃなかっただろう
君は先っちょがクルンとなった 蕨のような柔らかい蕾だった
だのにこんなに狂っちまって
こっちへおいで
おおよそ誰も、君なんか知りやしない
だってゴミ箱の中で残飯食べて暮らしているんだもの
そんなに傷ついて
ああ オレは偉いんだ 君を憐れむほどにね それぐらい生き延びて来た
君は馬鹿だ 最低だ 屑だ だから死んじゃダメだ
ジメッと今日は蒸すから 淹れ立てのコーヒーに大きな氷を入れて
パキッと音を立ててやる
抱いてやるからこっちへ来い
これまでの奴じゃいけない
丁度いい塩梅にクーラーの効いた部屋でね
タオルケットでくるんでやるさ
絶望すら知らない 自分の名前すら聞いたことがない
君は
神の生贄だ
オレが空を叩き割り
今直ぐ糞なお天道様をぶちのめしてやる
https://i.postimg.cc/hjqh4xC4/Cp-Rz-K1iiu-E48ZXd1779953668-1779954212.png
忘れられないパン
私の小学校時代に食べたパンが忘れられないという面白くもない話しなのですが読んで貰えますか
給食に出るコッペパンが美味しくなくてトラウマでコッペパンが食べられなく成ったという話しではありません。
小学校の社会科見学で行った場所はと聞かれて思い出す場所は、
交通公園等の少し遊び場所が有って勉強にも成る様な所ではないでしょうか、
この話は、社会科見学でパン工場に見学に行った時の話しなのです。
当然、遠足じゃないのでお菓子は持って行けなかったけれど、
給食でなく外でお弁当が食べられて教室で勉強をしなくて良いと言うだけで大盛り上がりでした。
友達とお菓子が駄目でも果物は良いよねとか話しながらバナナやミカンを持って行こうねと約束してウキウキしていました。
当日、バスに乗りパン工場へと向かい、言われたわけでないけれどパン工場の工場長さんだと思っている人に
工場を案内する手順や見学時の注意事項を優しく話して貰っていたのだけれど、
工場見学が始まったとたんにパンが作られる工程の説明よりもパンが焼ける美味しそうな匂いが気に成って
美味しそうな匂いだねとか、流れているパンは何パンかなとか、流れゆくパンの様に工場長さんの言葉も右から左へと流れてゆきました。
焼き立てのパンの香りを身に纏い工場を出る時には何パンが好きかの言い合いで盛り上がっていました。
先生が向こうの広場に集まれと言いながら私達を誘導して、
それに従い広場に集まると工場の人達が
「今日は来てくれて有難う。パンの事を知ってくれて、好きに成ってくれましたか?」と呼び掛けて来て、
それに対して「ハイ!パン美味しそうだった」とか「菓子パン大好き」とか製造に関係ないコメントを大きな声で返していました。
そして、工場からバスへと向かう時に一人ずつパンを貰い。
近くの公園広場での昼食時に食べた工場焼きたてのクリーパンが未だに忘れずに居ます。
勿論、有名ベーカリーのパンの方が美味しいと思いますけれど、
今まで食べて来たパンで一番美味しいパンはと言われたら、
あの時に口にした焼き立てのクリームパンだと答えてしまいます。
舌で覚えた記憶はボケたとしても残るとか、最強クリームパン万歳!
海から山の暮らしへ(短歌集)
燕とびかう旅から旅へうつったが辿りついたは浜辺のベンチ
しばし逢えますまい木の芽をにぎりうしろの女へ告げているわれ
歩きぬく水音のもと下っては光りあふれる海へ出るまで
山深くふきのとうこれ咲いていてみるも無残なわれ影となる
山しづかそして笠ぬぐひとりとてやましい歌とおもいつつ諳んじ
まこと山国、山なみの中のまれつつ苦しい肺より歌ふきにけり
あすはかへろうみどりのさくらながめつづけて日の暮れるなり
柿青く住めばこころの充つ家の青い柿の実ながめつづけて
みごもってよろけるいもの手をとって二人で歩むという夢をみる
これまでにいたところへと行くだけで震撼なぜ死をおそれるわれか
月影のいつかあの月影になるわれはこのよわいにし詩を書きつめる
遺された二つほどだけ熟柿となり雲のゆききに風のゆききに
誰も来ない日とうがらし青く草ぐさの中ひとり見つめて
病めば梅干し赤さ気にしてご飯の湯気がふうっと立って
なんぼう考えてもおなじ事わかりつつ諳んじる牧水一首
こよいもはたらくみんなにして青田の傍をぞくぞく歩む
おちばふかく水を汲んではその水を飲んで呟く「悪人正機」と
寝ては起きては仕事をしてはただふりしきる葉のふりしきり
ひとを待ち缶々の中燃える火がまるであなたを待つようである
そこに茶店がそうして席に腰を落とす空瓶活けた菊の花あり
お日様がのぞきたまいし縁側に横になってはすやすや寝顔
悔いるこころ罪あるゆえ日が照り小鳥の来てはさえずっている
珍しくお豆腐屋さんが町にある買う気はないが店へと入る
枯れてゆく草のうつくしさにすわりうつくしいという語をそそぐ
冬が来てまた歯が欠けてしまうこと煙草の味が悪いということ
米を噛む味もぐらぐらした奥歯たえきれぬから錠剤をふくす
竹のよろしさ朝風のしづくしつつも涙のようで涙ではない
こぼれて元旦の酒をたたえてしかし飲まずずうっと雲を眺めておりし
枯れた木に烏が止まっているからに「お正月なら済みましたけれど」
どこからともなくふりくる木の葉の感傷にふくまれているあゝわがふるさと
しぐれしたしくうつくしい草身のまわりほんとうによく歩いたものだ
そこらへと出ようとおもうなにとなくぶらりとしている雪ふるみのむし
あたたかなれば木あり人ありあたたかなれば海の方へと行こうとおもう
五年やっと住みなれて藪椿いつまでも咲く矜持という語へてんじておもい
あるがまま草の民とし雑草の草一つ一つの歌を聞きつめる
ぬくくなり少し歩けば椿あり山茶花とはもうみわけがついて
よはく
きみのことばが
いきつぎのしかたが
すきだった
祈り
おひさま溢れ、輝いて
「 あたいはお墓へ行く時間 」
月見草はオレンジ色 最後の灯りをともし
通勤の大人や ランドセルを背負った小学生たちを見送りつつ死ぬる
彼らに見送られもしないで 花びらがしぼんで行く
わたし 見ていたの
わたしは見ていたよ
忘れないでね お花さん
時々ね、月見草になった気がするんだ
孤独
あのヒトにとってわたしは一日花かしら?
お花は良いね だって独りぼっちじゃないのよね
次々生まれ その日の宵にゃ綺麗なお着物 また着るの
あのヒトがお菓子の包み紙みたいにわたしをごみ箱に捨てるなら
わたしは じっとしているような優等生
そんなありもしないこと とりとめもなく浮かぶあたしを
早く叱りに来てよ
あのヒトに花びらの薄さを教えたい
あのヒトと 風に揺れたい
あのヒトと頬寄せ合って、朝 一緒に消えたい
https://i.postimg.cc/ZY2sXprN/qiri.png
憩いの午後
穏やかな午後 憩いの時
時間は象のようにゆっくりと
しかし そのような重みはなく
さながら空気で出来た象の歩行のようである
大好きなコーヒーをちびちびと飲んで
これまた大好きな両切りのたばこに
火をつけて 私は思いを馳せていた
過ぎし日の明るい記憶だけに焦点を当てて
たとえば実らなかった初恋の
告白以前 恋を謳歌していた時のこと
あるいはもっと昔 中学時代に
ロカビリーを心の支えにしていたことなど
穏やかな午後 憩いの時
辛い記憶のなかにある砂金のような
キラキラと光る思い出を いま
私は心から大切にし いとおしむ
(2026.6.3)
注
両切り…フィルターのついていない古典的な紙巻きたばこのこと。
家電物語
01
冷蔵庫売り場で火遊びをしている少年のシャツは裏返っていて、肌がまぶしい。
02
扇風機の真似をする君が、今日は朝から羽が壊れて、うまく首が振れない。
03
アイロンの代わりにコンニャクをかけると、誰かが出口で待っていてくれる気がする。
04
生まれてからひたすら乾電池を食べ続けた男が最後の一本を食べ終えると、判定員は悲しそうに「参考記録」の旗を振った。
05
テレビの中から自分の名前を呼ばれている気がして振り返るけれど、まだ家に帰る上り坂の途中だった。
06
冷蔵庫の中から出てきた子供たちが行儀良く列をつくり、中庭でチューリップになって咲き始める。
07
空を飛んで行くドライヤーの群れを眺めながら、化粧の上手くなった君が生まれ故郷の見取り図を描いている。
08
掃除、洗濯、食事の用意など、家事すべてを完璧にこなす家事ロボットが開発され、しかも軽量・コンパクト化にも成功したのだが、唯一の欠点は、それでも全長三十メートルあることだった。
09
砂漠の真ん中で置き去りにされた室外機は、まだエアコンと繋がっていることを疑わずに、ファンを回そうとする。
10
近所の電気屋さんに「タイムマシーン売り切れ」の貼り紙が出てからもう七百年が過ぎた。
11
洗濯機にアメフラシが住み着いたので今日から洗濯物は紫色に染まります、と朝の家族会議で妻は口火を切った。
12
掃除機に鎖をつけて散歩をさせている男の背中から生えている翼は、空を飛ぶには退化しすぎているようだ。
13
ウイルスに感染したパソコンも母は叩いて直してしまう。
14
祖父の愛用していた鉱石ラジオを珍しそうにひと舐めして、オオアリクイは別の蟻塚を探しに行った。
15
このソフト、2と3では使えるゲーム機本体が違いますけどお孫さんはどちらが欲しいと言っていました?と店員に聞かれて、財布のお金を数えているおばあさんの手から落ちた手書きのメモが、人の足に踏まれてくしゃくしゃになっていく。
16
波打ち際の蛍光灯に海ほたるが付着して、やがてかつての団欒のような明りがぼんやり灯るだろう。
17
男は朝起きて電気シェーバーでひげを剃ろうとしたが、顔が無いことに気がついたので、仕方なく歯を磨こうとしたがやはり顔が無かったので、泣こうとしても泣くこともできなかったので、大好きな天気予報を見ることも聞くこともできなかたったので、念のため出掛けに傘を一本持って行くことにした。
18
とある電化製品の取扱説明書は先鋭な思想と美しい文体とで、世界的に権威の高い文学賞を総なめにしたが、製品の方は必要なネジやバネが無いなど欠陥だらけで、さっぱり売れなかった。
19
計算が苦手な計算機は家族が寝静まると、こっそり子どもの計算ドリルで特訓をする。
20
こたつに入ると中は雨降りだったので、人数分の長靴を買いに行くことにした。
21
「ごはんは レンジのなかにあるものを あたためて たべてください」と母親が残していった手紙の空いているところに、少女は今日覚えた花の名前を三つ書いた。
22
写真係の岡田君がカメラと間違えて冷蔵庫を修学旅行に持って来てしまったけれど、同級生はできるだけたくさんの思い出をその中に詰め、みんなで担いで帰った。
23
警察の発表によりますと、凶器は炊飯器のご飯で、口論の末かっとなった妻が夫の背中に炊きたてのご飯を放り込み、全治十日間の火傷を負わせましたが、食べ物を粗末にしてはいけない、と一粒残さず二人で食べたということです。
24
掃除機は空を見るといつも雲を吸ってみたくなるけれど、あそこまでどうやって行けばよいのか、近そうなのに自分だけとても遠くにいる気持ちになる。
25
テレビのような人がいて、人のようなテレビがいて、両方から夏に逝く虫の鳴き声が響き、それでもお互いに理解しあえないことだけが、たったひとつの救いだったんだろう。
26
結婚して初めて二人で買ったのがこのポップアップトースターだ、という父の嘘が、母の一番のお気に入りだった。
27
海に出ない日、海賊は家電量販店で食器洗浄器の実演販売をしているが、そんな時でさえも、むやみやたらに人を傷つけないという海の掟は絶対に破らない。
28
すべてのものはいつか必ず土に還るのだ、と信じて、古くなった家電たちは今日も自分の墓を掘り続けている。
29
炎天下、大型の家電を運ぶ配送センターの青年からアスファルトに落ちた汗の雫は一瞬のうちに蒸発し、明日はどこか他のところで誰かのための雨になるのかもしれない。
30
風に乗れなかった紙飛行機が一機、エアコン売り場の床に墜落している。
31
人々が衣服を汚すことのない世界を夢見て、洗濯機はひとり最終列車に乗った。
blue
十代、青の原液が入った小瓶を持っていた
空に溶かした 海に溶かした
指が 顔が 足が 青く染まっていた
その手で 見知らぬ人に触れた
熱を感じて 引っ込めた
火傷みたいに いつまでもヒリヒリした
跡が残った 入れ墨みたいなblue
少しずつ薄めて 歩いた
薄まっているなんて 知らなかった
どこまでも青く続くのだろうと思っていた
晴れた日の空
深い海の底のblue
ただ早く通り過ぎることを願った
同じ方向を向いた頭
硬い天板に 疲れた肱を乗せて
長すぎる足を椅子の下に折り畳んだ
鴎になりたかった shiro
遠足の朝 交通事故で死んだ
遠いクラスの女子生徒は
アルバムの中で一人だけ 黒い喪章がついた
それを何か特別な印として 何度も盗み見た
今、時が経って青は薄まり
ほとんど見えなくなり
赤い罅割れ あかぎれ
赤ら顔に染まり
髪は少しずつ 灰に変わる
いつまで経っても 鴎にはなれなかった
肌に刻まれたblue の瘢痕が疼く
指で掻く
赤いダリア
赤いダリアの球根を買いました。
ほんとは、赤ではなくて
ピンクかオレンジが欲しかったのだけど。
でも、売れ残った赤いダリアの球根を見ると
2センチほど伸びた芽の先端が、
白いネットに絡まっていました。
今、この白いネットの網目を切ってあげないと、折れてしまうかもしれない。
そう思いました。
2026年5月8日のことでした。
ダリアを育てるのは初めてのこと。
説明をよく読んで植えました。
しかし、2週間を過ぎても土の上に
顔を出しません。
2センチ伸びていた芽はどうなったんだろ?と
心配になり始めました。
ちょっと、土の中見てみよう!
わたしは、球根のまわりを少し掘りました。
すると、2週間前に見た芽よりも少し太くなって
今にも顔を出しそうにしているのを発見
良かった!
元気だったんだね!
それから、掘った土をそっと芽のうえに戻しました。
しっ) (E.E. カミングス hush))
しっ)
ナナシたち
が連れ立って
表に出ているの
は薄暮の頃のこと
が仲良く立ち並ん
で あの木のところに
がみんな明るい闇中に息づいて い
っしょに がゆっくり 一斉に
摩訶不思議にも微笑んで (もし
僕らがしっかり用心せねば 信
じておくれ 君も僕も 迷い込みか
ねない) 皆さん各々 果
てしない しめやかに話
せたり それはもう一
心同体で 奇瑞千万
なる の市民様々
(しっ
※例によって、ネットに転がっている諸説を参考に、自分なりの解釈を交えて、記す。
詩人は美しい時刻に酔い痴れていたが、はっと我に返って、しかしその感動に少しばかり興奮していた自分を抑えるべく、「しっ、静かに」と自分に言い聞かせる。いまは穏やかな夕暮れ時である。そんじょそこいらの庶民が夕風でも浴びようかしらんと表に出てくる。これといった知り合いでもないのに、気がつけば大きな樹の下、互いに近寄り、仲良くベンチに座ったり立ち話をしたりしている。いつしか夕闇が人々を包み込んでいる。話し声も止んで、人々はじっと夕暮れ時を心で楽しんでいる。春宵一刻値千金とでも言うべきか。
元来、黄昏は「誰そ彼」であって、「そこにいる者は誰だろう」というすぐそばの人の顔すら見えない時間帯を指す。そういった頃合いには人ならざる者との遭遇も十分に起こるし、怪異も経験する。逢魔が時と呼ばれる所以である。詩人が「しっかり用心せねば…迷いかねない」というのは、こういった時刻には気をつけねば人外境に足を踏み入れかねないのである。しかし用心さえしていれば、私たちの各々が名もない凡夫であるとしても、それでも「果てしない」存在であり、夕暮れ時の素敵な瞬間を共有して「一心同体」であり、霊妙な瑞相すら帯びており、それこそが真の意味での市民社会の構成員なのである。そういったことを考えると、詩人は最後にまた「しっ」と言って、口を閉じて夕暮れ時を心で享受するのである。
hush)
noones
are coming
out in the gloam
ing together are
standing together un
der a particular tree
are all breathing bright darkness to
gether are slowly all together
very magically smiling and if
we are not perfectly careful be
lieve me you and i'll go strolling
right through these each illimit
able to speak very
softly altogeth
er miracu
lous citi
zens of
(hush
シーシュポスの神話
深夜のコインランドリーは、僕たちが漂着した最後の中州のようだった。
湿った空気の中に、安価な洗剤の人工的なフローラルと、さっきまでシーツの上で貪り合っていた僕たちの、微かな汗の匂いが混じり合っている。
まなみは、回転を止めた乾燥機の前で立ち尽くしていた。
彼女の細い肩には、脱ぎ捨てたばかりのラルフローレンのオックスフォードシャツが、アイロンを失ったまま無防備に羽織られている。その下から覗く胸元、ヴィクトリアズ・システマティックの黒いレースが、湿った熱を帯びた肌に食い込んでいた。
「熱も、言葉も、すべてが均一に混ざり合って、何も動かなくなる状態……それがこの世界の理で、いちばん平穏な死のはずでしょう?」
彼女の言葉は、薄氷を割るような静けさで響いた。まなみは、バスケットから取り出した僕のシャツを手に取ると、その袖を愛おしそうに指先でなぞった。指先にはまだ、僕の体温を求めて彷徨った時の強欲な力強さが、仄かな赤みとなって残っている。
「……でも、この世界はそれを許してくれないみたい」
まなみはシャツをバスケットに戻した。
そして、唐突に歌い始めた。
彼女の唇からこぼれたのは、昔のアニメソングだったが、それは高揚感とは無縁の、ただ事実を淡々と確認するような音調だった。
彼女は踊り始めた。
右手を上げ、左手を腰に当て、リズミカルにステップを踏む。その動きは、何千回、何万回と繰り返されたはずの「正解」のトレースだった。
けれど、まなみのそれは、決定的に何かが欠落していた。
シャツの下の黒いレースが、ステップのたびに湿った肌の上で揺れる。僕の背中に爪を立てた、剥き出しの身体性はそこにある。なのに、その動作はどこか機械的で、まるで動かなくなった乾燥機のドラムが、慣性だけで回り続けているかのようだった。
「……魔法以上ノ愉快ガ……」
その声には、魔法も愉快さも存在しなかった。ただ言葉が、彼女の気管を通過して、深夜のコインランドリーの静寂に、無機質な振動として放たれていくだけだ。
僕たちの、あの終わらない熱が、この安っぽいアイドルソングによって完全に濾過され、ただの「運動」へと成り下がっていく。
それは、彼女が先ほど口にした「平穏な死」への抵抗のようでいて、その実、最も残酷な形で死を体現しているようにも見えた。かつての熱狂の、抜け殻のようなダンス。
まなみは、一通りのサビのパートを踊りきると、項垂れる様に笑って唐突に抱きついてきた。店内を照らす蛍光灯が、彼女の無防備な横顔と、少し乱れた髪、そして胸元の黒いレースを、執拗なまでの鮮明さで焼きつけている。
その静止を破ったのは、店内の隅で色褪せたクレーンゲームが散らす電子音だった。
僕は100円玉を数枚投じ、磨耗したジョイスティックで銀色の爪を操作した。煤けたペンギンのぬいぐるみを狙う。機械的な駆動音が、静寂を一定の周期で刻む。爪がぬいぐるみの首筋をかすめ、空しく宙を掴んだ。
「取れないね」
僕は言った。彼女のダンスが残した、決定的な何かの喪失感を、クレーンゲームの無残な空振りに重ねるように。
「いいよ。執着だけが形に残れば」
まなみは力なく笑い、今度は埃を被ったガンシューティングの筐体の前に立った。
画面の中ではゾンビの群れが、生物学的死を超越した「非平衡」の足取りで押し寄せてくる。彼女は使い古されたプラスチックの銃を両手で構え、狂ったようにトリガーを弾き続けた。銃声が店内のタイルに反射し、マズルフラッシュの青白い光が、再び彼女の横顔を鋭く焼きつける。
それは、未来を使い果たした僕たちが許された、暴力的なまでの生の横溢だった。さっきまで僕の背中に深く爪を立て、もっと奥へと、もっと永遠に近い場所へと求めてきた彼女の、あの剥き出しの貪欲さが、いまは火花となって虚空を貫いている。さっきの、魂の抜けたダンスとは、対極にある烈しさで。
「死なないものを、何度も殺すのって、祈りに似てると思わない?」
まなみが銃口を下ろすと、画面には『GAME OVER』の文字が、血管の破裂したような鮮やかな赤で点滅した。まなみの唇が、かすかに震えた。
「時間の結晶——外部の誰にも理解されない周期を刻みながら、熱力学の終焉を拒み続ける。たとえ、それがただの、終わらない『慣性』だとしても。私たちはこの静止を許さないの」
彼女が洗い立てのシャツを抱きしめた瞬間、乾燥機の排気口から吐き出された熱風が、二人の間を通り過ぎていった。
それは、エントロピーが増大し続ける宇宙の中で、肉体を重ねてもなお埋まらない欠落を抱えた僕たちという異物が、唯一許された「不変」の証明だった。
そしてその不変は、今しがた彼女が演じた、あのあまりにアンニュイで、あまりに空虚な眼差しによって、より深く、僕の中に刻み込まれていた。
モンスーン
ある日髪をといていたら
ぱさりとこころが抜け落ちた
ある日歯を磨いていたら
ぽろりとこころが転げ落ちた
ある日くしゃみをしていたら
あちこちこころが飛び散った
ある日鼻からぽたぽたと
こころが流れて落ちてきた
砂のように粉々に
砕けたこころの欠片たち
ある日空へと舞い上り
すべてモンスーンに攫われ消えた
硬派なサイトに於ける文学と文芸について
6月に入りました。
Xではここ、CWSのポストがあり
「5月は投稿作品数が400作品を超えました!
純文学系の硬派なサイトとしては、稀有な数字ではないでしょうか。」
と、アナウンスされた。
私はもうわりと大人で、眼精疲労の事などで悩んでいるのですが、まあその、昨日、及川まゆらさんとコメントやりとりをして
そうして主に他で書いている所でも、Xでも、私より更に上の世代の方の問題意識という物があり、それがどういった事なのか、一人の書き手として考えた事を述べます。
そうして、それがネット詩、ネット文学、ネット文芸に寄与する事を願います。
及川まゆらさんの文学、文芸の捉え方については多分、もっと深いと思いつつ、私より上の世代から投げられたボールは
「そもそも、文学と文芸は全然違うでしょう」というメッセージに尽きると思います。
煎じ詰めれば、文学というのは実存という事だし、また人生という事だし、また業、という事ことも外せない。
反対に、文芸というのは多分、芸事とかそれは他に、単純な趣味性の範囲の表現なのではないかと思う。
いや、そう大雑把に括れないと思うけれども。
自分の事を語らないとフェアじゃないから書くけれども、私の表現は、ほぼほぼパスティーシュ、文学模倣の表現であってその、模倣先は古典、又は先行世代のネット詩、ネット文芸だと思う。
ジャン・ジュネなんかが頭をちらつきつつ(泥棒日記という本がある)
で、あるからして、まあまあ頑張って書いてきたような気がするけれど、上の世代のボールとして
「あなたはただ盗んで、自分の人生について詰めて書いていないから、駄目なんじゃないの」
という事になっている。
しかし、その模倣先は、現代の「文学」であってはならず、「文学」には固有の、オリジナリティーを重んじる側面があると思われるから、流石に、血を流すように書かれたと思われる表現からその、パスティーシュです、といって、文学模倣はしてはいけないと思っています。それは倫理的な問題でしょう。
そうして、私は本やネット詩を読み過ぎた結果、無意識に、人の文学に手を染めてしまうに「危険」なので
もう、自由詩では駄目なんじゃないかと思っています。
そうして、世代間問題として、その、田中のここは取り入れよう、とか、学ぶ、は「真似ぶ」であって、それは全然良いです。
と思いつつ
(何か、それは私がこういった場で音律だ、音律だ、といっていたらば
それに配慮された作品がグッと増えたような気がする)
要点を押さえれば
何かこの方は、それは印象でいいけれど「文学している方」かな、と思ったらば
それはかなりセンシティブな問題で、パスティーシュとの相性は、きっとすこぶる悪いと思います。
「何を勝手にしているのか」という問題になってゆくから、そこの所の配慮というもの、ケアを、一層深めてゆく必要があると思います。
そうして今現在、自分が重く感じているのは、その文芸という事を追求していっても実際
どこかの時点で文学に、それはしなければならなくなります、という実感は、
これは必ず注意事項として、書いておきたいと思います。
先に述べたことで言えば、Xの純文学系の硬派なサイトです、と。
そうして、数字として考えれば、400というのは素晴らしい事でしょう、と。
数字、という事に関していえば、だから、それは文芸の領域に留まるけれど
まあまあ、パッパと、生産して投げるように投稿される姿勢も、これも「わかります」。
・
しかし肝心の、文学の方になるともうそれは作品発表のタイミングというか
そもそも創作、リリースまでの期間がとても長くなるという現実があって。
真面目に人生という抽象的な問題に向き合って書くのだからそれはもう大変。
しかし、その硬派なサイトを自称している事を加味すれば
むしろ、文学の方。これは文芸の方でなく。そちらの方に価値基準は置かれているのであろう。
それは書いておかないと、と思う。
まあそんな堅苦しく考えずに
「まあまあ、書くの遅いの思ってたけれど、そりゃ自分の人生込めようとしているんだからな」とか
「自分は、文学のつもりで書いていたけれども、人から見られたら文芸かも知れないぞ」とか。
それは十人十色でしょうと。
まあ、ごく個人的な意見ですが、何か感じ入るものがあれば幸いに思います。
岩
でもまたしぬとおもう
明るいものを明るいと
暗いものを暗いと
なぞってすごしたら
さんびゃくろくじゅうごにち
そして朝、
きっとあくびをした
家のない猫も町も君も
昼、
きっとゆめをみた
どこかの森が燃えていて
雨になりたいと思う
夜、
さよならがこわくなる
うまれたらしぬとしりながら
僕も君もしにたがる
ほんのすこし風がふく
本のせなか、写真立て、鏡のなか、
風がふくと知ったのは
ぼく、ひとりになったから
また水底へ落ちるときがきた
そしてそっと、
生きたがるぼくを
誰も知らない
遅い朝
リハビリついでに買い物をした
令和日本は五月晴れ
背に酷暑の滲む蒼穹の下
冷やし中華となりました
今日この一日は (E.E. カミングス this(let's remember)day died again...)
今日この(覚えておこう)一日は、死しては甦り、甦ってはまた
死す。いまや金色、いまや真紅のこの宿命は産む、
橙色の夢、海になりゆく深い淵、
天と地を掛けたものより巨大なものを。一つの焔、
朧ろな記憶の太古から、有りて「有る」魂の背に仄見える――
波のまにまに、灰の心の滅びゆくにつれ
破滅の定めもすうっと消えた。
ひょっとして(誰が知ろうか?)、
永遠の永遠より花一輪が流れ来たのか?
(その間、誰しもゆっくり「すぐ」まで数えるかも知れぬ)
薔薇のローズよ――彼女を見たかい? ねえ、君は(キスして)すぐ「有らぬ」まで数えたのかい? 間違いなんだよ
――だって遥々、無何有郷からやって来たんだ、
(忘れるほどに容易くも)
想像し得る限り最も溌溂とした満月が。
※カミングズの『XAIPE』という詩集の冒頭に掲げられた作品。XAIPE とはギリシア語で「喜べ」という意味だそうな。詩人はギリシア語やラテン語を学んでおり、しばしば詩には古代の言語を交えていたらしい。日本で言えば、万葉集や詩経の言葉をそっと自作に添えるような詩人みたいなものだろうか。
諸説を念頭に私なりに読む。この詩は、死と再生を宇宙論的ヴィジョンの下に詠んだものである。時間の流れはニュートンの言うような均質なものではなく、絶えざる死と再生の繰り返す循環的なものであって、今日と明日が無条件に連続するのではなくて、生き生きとした命の起伏がある。今日という日は死ぬ宿命にあるが、明日という日もまた生じるべく定められているのである。時間とはこの繰り返しなのである。さて、詩人は夕べの海辺にいる。海の色が夕日を受けて金色から真紅、さらに橙色に変わってゆき(実際にそのような色の移り変わりがあるのかどうかは、海辺の民ならぬ私には知る由もないのだが)、やがてあたかも天地が一如となるようであり、万物が海に解けゆくかのようである。それに見入る詩人の心に太古の記憶が疼くのだが、何も想起できない。想起できないにしても、詩人は魂が心の内に太古から有り続けているのをしかと感じる。夕べは夕闇となり、今日はやがて死ぬのだが、明日また生まれるのだから、「破滅の定めもすうっと消え」るのであり、その理由は誰も知らないのだが、明日もまた太陽は輝くのであり、あたかも「永遠の永遠より花一輪が流れ来た」かのようである。今日という一日も生きとし生けるものの命もはかないものであるが、この真理に人はなかなか気づかないものであり、それが「誰しもゆっくり「すぐ」まで数える」と言われる。詩人は薔薇の恋人のローズに問う(roseを薔薇さながらに美しい女性と解した)、太古より様々な姿を取りつつ、絶えず有り続ける生命それ自体(詩人は「彼女」と呼ぶが、これが天にも地にも海にもなれば、我々の魂にも花にも満月にもなるのだ)を見たかい、と。そして、これらはすぐに消え去る(「すぐ「有らぬ」まで数えたのかい?」)と思うのは間違いなんだよ、と諭す。だって、無何有郷(理想郷という意味)にも喩えられる永遠の昔から、命の息吹は常変わらずに送られてきて、「想像し得る限り最も溌剌とした満月が」今宵も見られるのだから。
this(let's remember) day died again and...
this(let's remember)day died again and
again; whose golden, crimson dooms conceive
an oceaning abyss of orange dream
larger than skys times earth:a flame beyond
soul immemorially forevering am-
and as collapsing that grey mind by wave
doom disappeared,out of perhaps(who knows?)
eternity floated a blossoming
(while anyone might slowly count to soon)
rose-did you see her?darlin, did you (kiss
me) quickly count to never?you were wrong
—then all the way from perfect nowhere came
(as easily as we forget something)
livingest the imaginable moon
民生食堂 あじさい 第9話 高架下
嵐が過ぎ去ったその翌日。
男はもうアパートにはいられなくなった。
少しだけ時間をもらって、着られるだけの服を着て、バッグに貴重品を詰め込み、ラジオを持つ。しばらく考えたのち、工具箱も掴んで表に出た。アパートの傍らで呆然と立ち尽くす。
足場を作る作業員の邪魔だと気付いた男は、ゆっくりと歩き始め、狭いアパートの敷地を出る。行く当てなどない。
ため息を吐きながらあてどもなく町をさまよい、工場の壁に囲まれ湿気とガスが充満する公園で立ち尽くし、時間を持て余す。これからについて考えようとするが何も思いつかない。ラジオを点けるがそれはただの雑音として公園内にかすかに拡がるばかりだった。
着ぶくれで暑い身体を冷ますため、高架下にある背の低いモルタルの歩行者用トンネルへ行く。そこは乾いた場所もあり男は地べたに腰を下ろすことができた。
モルタルの冷たさに身体を憩わせる。今夜はここで寝ようか。
今夜。そう今夜。夕飯について考えた。財布の中を覗くとあと一週間は何とかなりそうだ。一日一食なら。
男はモルタルの壁に背中を預け、胡坐をかいたままうつらうつらする。頻繁に行き来する列車の轟音もものともせず、男の意識は遠のいた。
何もかもがどうでもいい。
浅い眠りの中で民生食堂の新じゃがと烏賊の煮物の味が夢となって現れた。
「なにやってんのあんた」
女性の低い声が小さなモルタルのトンネル内で反響した。聞き覚えのある声だった。男は目を細めて声のした方を見ると、そこには自転車に乗った女がいた。前後の自転車のカゴに、買い物籠一杯の食材をつめて溢れそうになっている。
「寝ている」
男はぞんざいに答えた。
「だから、なんでここで」
「アパートを追い出された」
「ああ」
女は合点がいったように短く応じ、それきり黙った。
電車の通過音が、身体をビリビリと振動させる轟音となって、ふたりに覆いかぶさる。
静かになったところで、女は口を開いた。
「うち来る?」
それに被さるようにもう一本列車が通過する。
「なんだって?」
「だからうちくる? って訊いてるの」
「ああ」
男はまた逡巡した。だが、いくら考えを巡らせても答えは出ないことは判っていた。それなら、と男は命を守る選択をした。
「今日だけでいい」
「そう」
女が自転車を降りると、男もゆっくりと立ち上がって、並んで歩く。
「笑わないのか」
男は訊いた。
「何を?」
女の声は怪訝そうだ。
「この格好」
女はいつもと全く同じ声で返した。
「別に」
民生食堂に着くと、女は男に着替えるように、と二階へ行かせる。男は二階の、かつて自分が寝泊まりしていた部屋で、限界まで着込んだ服を脱ぎ捨てて一階へ降りる。自分が使っていた湯呑みを見つけ水を二杯飲んだ。
男は何か手伝おうか、と言おうとして止めた。
互いに黙ったまま、男はテレビや女や食堂内を眺め、女は聞き覚えのある包丁の音を響かせる。
「食べる?」
女が訊いてきた。
「……ああ」
男は答え、茶碗一杯の飯と豚汁と塩気の強い焼鮭で早い晩飯を済ませた。
開店時間が来ると行列していた客が、いつものように隊列を守って入店してくる。いずれも倦んだ眼をしていた。
男はそっと二階に上がり、切り盛りは女に任せた。ラジオでナイター中継を聞いて時間をつぶす。
閉店の時間になると男は一階に降りた。また客席の一角に座ってテレビを流れるままにして眺めている間に、女は片付けを済ませる。
女のあとに男が風呂を浴び、おやすみのあいさつもなく、それぞれの部屋で寝る。
男はとりあえず今日を生き延びることができた。
▼次回 第10話 条件
民生食堂 あじさい 第8話 雨の夜
翌日も男はあじさいに行った。
「職安に行った」
「うん」
「仕事はなかった」
「そう。十円のお返し」
「うん」
会話はそれだけだった。
その翌日も男は行った。
「治部煮と小アジの南蛮漬けと南瓜」
「……」
男は女からお盆を受け取ると席につき、音のよく聞こえないテレビを横目に黙々と飯を食った。
天気予報では今日は晴れる予報だった。
だが、空は急に暗くなり、暴風雨となってしまう。
ほとんどが傘を用意していない客たちは、逃げるように店を出ていく。風に吹き飛ばされそうになりながらも、頭を手や鞄で覆って走り去っていった。傘を持っていた客もかえって吹き飛ばされそうになって、傘を差すのを諦めた。
またもや男だけがポツンとひとり取り残される。
女がテレビのダイヤルでチャンネルを回すと、気象情報をやっている番組を見つけた。大雨洪水警報が出ていた。
「降ってるな」
「ん」
短いながらも言葉を交わす。また男の向かいに女が座って煙草に火を点けたが、男はそれにも少し慣れてきていた。
男は雨が弱くなるのを待っていたが、一向にその気配はない。
閉店時間も近づいてくる。
壁を灰色がかったナメクジが一匹、ゆったりと這っていた。
女はそれを見つけると、いつも通りに古い箒の柄で、窓からそっと外へ放り落とす。
窓を閉めると、女は煙を吐きながら漏らした。
「今日、泊まってく?」
「え」
男はその一言に身を硬め、言葉を失う。
沈黙は長かった。
「……いや、いい」
ようやく絞り出した声。
「そう」
いつも通りの、短すぎる返答。
「アパート、どうするの」
「……どうしようもない。金がない」
「そう。誰かから借りれないの」
「借りるあてがない。周りで金払いの良いやつを俺は知らない」
「ふうん」
そのあとはただ沈黙が続いた。
このままではアパートは取り壊され、男は仕事もないまま立派な「浮浪者」になってしまう。だが今の男に何ができるというのか。彼は弱々しく自身の無力さを噛みしめていた。
閉店時間まで粘ったものの、風雨が収まる気配はない。
「じゃあ」
女はその言葉には応えず、ただ灰皿を見つめている。腹を括った男は、轟音の鳴り響く雨中へと身を投じた。
まるで滝行でもしているかのようだった。
▼次回 第9話 再びの夜
2人のちっちゃなだれかさん (2 little whos by e e cummings)
2人のちっちゃな だれかさん
(ボクとアタシと)
この下の
素晴らしい 木の
にこにこしながら 立っていて
(どうでもよくって
どこ? とかいつ? とか)
いまここに
(おとなびちゃってる 既知の世
界から いかにも遠く
ボクもアタシも いかにもラシク)
だれかさんと だれかさんが
(2つのちっちゃな
ボクとアタシと その上は
とほうもない 輝いていて
まっかっかに 夢が)
※どこかにも書いたが、人が規則を破壊するとしたら二つの理由がある。一つは虚無感から。おそらく高橋新吉のダダイズム的破壊はこれが理由であろう(一読すれば、その虚無的心情が深淵からこちらを覗き込む)。もう一つは童心の発露。心が子供返りをしており、せせこましい規則に縛られずに自由に遊ぶ。すると創造的破壊が生じる。カミングスのこの詩は後者による。だって、この詩、読めば誰にだって容易に知れる。破格といえば、形式的には、i&you fulのあたりが存在しない英語となっている。おそらく、「ボクらしさとキミらしさ」と言いたかったのであろうが。また、しばしば語順が乱れている。under are this wonderful treeとか、all realms of where and when beyondとか、どうも各連につき一か所はありそう。意味的には、幼い男児と女児が一緒にいるところを詠んだものであろうし、いかなる世間的約束にも縛られない自由な心を描いたものであろう。童心ゆえの破格なのである。ただ………実に訳しにくいものではあるが。
2 little whos
2 little whos
(he and she)
under are this
wonderful tree
smiling stand
(all realms of where
and when beyond)
now and here
(far from a grown
-up i&you-
ful world of known)
who and who
(2 little ams
and over them this
aflame with dreams
incredible is)
以下は、実はこうだったのかな、という自分の理解を覚書として(間違っているかもしれませんが、いや間違っていそうですが…訳者泣かせのカミングス………ぐすん)。
2 little whos (he and she) are under this wonderful tree
stand smiling now and here (beyond all realms of where and when)
who and who (all I and you, far from a grown-up world of known)
(2 little ams, and over them, this is aflame with incredible dreams)
鐘の記録する影、多くの影
「夥しい夜の痕跡と実践的な蓄音機の性器を用いたビジネスをしてみませんか?」
筋肉から
白い流星群的言語が噴き出した夕方とは
違う夕方の出来事だったが
庭師は尿管結石を抱えていて落ち着きをなくしていた
休憩しすぎではないですか?
ぼくの詩の中のペンギンは稲妻と連結していて
三十六時間やすむことなく
ニッケル製の角笛を鳴らし多くの人に思い出を与えますよ?
短い影
長い影
多くの影がある
無音で鐘がそれら影についての想念を譜面に書き記し
「循環する夥しい夜の痕跡と実践的な蓄音機の性器を用いたビジネスをしてみませんか?」
不条理を不条理と言ってしまうような記号的な紳士が
機関車の中で毛むくじゃらの慈悲深いコーヒーをすするのだ
みずうみのまわりにいる家族を呼んで
休憩しましょうか?
いきつもどりつ
白い草の生えた神秘的な川沿いで
だれかが風に死体のにおいを流している
毎晩のように
納豆ご飯と赤ワインだけを飲食し
嫌なニュースを
嫌だと感じるのは自分がまだ若いからだという
尿管結石の言い分だけを
信じた
短い影
長い影
多くの影がある
鐘が考える苦痛の植物の赤ん坊が
その影たちひとりひとりに語りかける
洞窟では塩粒のことだけ考えて
街路樹のそばでは繊細な農場だけが展示される
アーティスティックな催しのことだけを考えたのだ
「そんなことを考えるよりも
ビジネスしませんか? 先ほどから言ってますが
夥しい夜の痕跡と実践的な蓄音機の性器を用いたビジネスですが」
いきつもどりつして
くりかえすときに接吻するのがエチケット
数学的な余暇に大洪水が起きて
脇腹から顔をだす脂ぎった代議士の禿げ頭が見えた
鱗が逃げて剥き出しの彼らの法案は
大半のことに興味がない
「ビジネスにも? 興味がないのでしょうか?」
動物性のふくらみ、目と、
公衆浴場で
悲痛な語りをする金属の神々が、《エンヤコーラ》《エンヤエンヤエンヤ》
夢の不在
、その祭りの周囲で洗濯して
あ!
街路樹が感電死する!
目と古代の死滅した群青色に
なりたいなあ……
目と、
いまから会いに行ってもいいですか外国の車のエンジンの中に眠って待っていますよ
ゾンビ映画の主役のゾンビのように、
目と、
自転する神話解体のエネルギー論者たちの
あ!
しぶきをあげる宇宙的下宿の糞便のあふれるトイレ群!
短い影
長い影
多くの影がある
ふたたび鐘が彼らの言葉を譜面に書き記し
燃え立つ朝
彼は自分のエンゲル係数が
筋肉の結び目からの孤独な採石場の痙攣を伴いながら
鎮静化した文章のような報復を遂げようとしていることを
理解していた……
「じゃあ蜃気楼のビジネスをしませんか? 蓄音機の性器は何も夜だけに存在するわけではない たとえば蛇口が本能を剥き出しにしたらどうなると思いますか? 大いなるビジネスがそこにあるように思いませんか?」
彼ら記号の旅
彼ら催眠実験の偶像
彼らは合法的に虚無を青白くする技術をもち、まだやわらかな異教の食事にも似た一本足のパラシュート部隊のように
平穏な嘘から毒素を抜いて夢想的時間を約束するだろう
そうだ……ビジネス ビジネス ビジネスだ……
少し休憩した方がいいです
ぼくの詩の中のペンギンは階段の上のコントラバスと連結していて
三十六時間ずっと休みつづけ
ニッケル製の角笛が過ぎ去る時間によって劣化し
滅びのときを迎えるまで
休みつづけ
青空のような反逆者の咽喉の思い出を語るために
短い影
長い影
多くの影がある
それらは並んでいるのだ
目と、
白く噴出する雑踏から
さっと
、切り刻まれ、噛み砕かれた、シリンダーの中の陽炎に遠心力を働かせ、
ははは、指先から胎児が生えて来た、そいつを
ずっと舐めていたらさ……
そいつが、
白い名詞の恣意性で、
ははは、どうしたことだろうか?
むかし映画館で白い蝶の群れが過ぎり
観客全員が瀕死の状態になり
ぼくだけが
、ゴジラの鳴き声を真似していたのを思い出したよ
ははは、この胎児、噛みついてきやがる……
どうしたことだろうか?
栄養過多なのかもしれない
目と
皮膚の意識の泥には
短い影
長い影
多くの影がある
結膜炎の車輪が霊廟でまわる
ぐるっぐるっ……
異教の食卓を囲む
一日中
野菜を表にし裏にし、また表にする、口にはいれない
みずうみのまわりにいる家族を呼ぶ
おーい
おーい
なにしてんだよー
おーい
白い草の生えた神秘的な川沿いで
燃え立たない朝
貝殻の中に閉じ込められた骨の山から
夥しいその
骨に
埋まりながら
風となり
遠方の地へ
ぐるっぐるっ……
さすらい
死体のにおいをとどけにゆく鐘の音が
くぐもって
残る
詩と少女(グリフィス作品「シーシュポスの神話」連詩企画より抜粋、改訂)
もう一度
わたしはやりなおそう
ひょっとしたら、なにか新しいことがわかるかもしれない
(引用:「リチャード・ブローティガン/藤本和子」)
すぐ傍にある死。だから彼女は、このセンテンスを読んでもその意味がわからなかった。
彼女は「ほんとうに」死ぬ事ができなかったので、「やりなおす」ことができなかった。
ときどき、彼女は掃除でハタキをふるったが、パシパシとふっている内。
そのリズムに嵌まり込むと、ずうっとその動きをつづけて家中をグルグルグルグル、何周もした。
「コラ」
センセイが来ていて、センセイは彼女のふるっていた右手を掴んだ。
彼女の眼はどこか潤んで今にも泣きそうだった。
おとうさんも、おかあさんも、センセイの事を、センセイと呼んでいたので、彼女もセンセイの事を、センセイと呼んでいた。
しかし実際、何のセンセイなのかは知らなかった。
センセイは、いつも急に来た。
「おとうさんもおかあさんもいないの?」
彼女は首を縦に一度ふった。
「コーヒーを頼めるかい?別にインスタントでいいんだけれど」
センセイは白いシャツに、ジーンズ、そして丸メガネをかけている。
「パソコン持っている?Xしていないの?私はクロカミ、ってハンドルネームなんだ。
元々は黒髪だったんだけれど、もう、こんな白髪になってしまった」
センセイは笑った。
「センセイ、最近、自由詩を書いたの。でも、これって何かのデータのような気がする」
「詩?センセイも昔書いていました。ファイヤーオイルなんていうタイトルの作品を書いてね、あれはないね、とか。よくやっているね、なんて色々言われたものです」
「いや、わたしの詩」
「わたし?」
「わたし」
「いつからきみは自分の事を、わたしって言えるようになったのだろう」
又、センセイは、白髪をそっとかき分けて言った。
「センセイは、アカシックレコードやユングの事は少々分かる。でもね、きみ
専攻するならば、インド哲学がいいでしょう。あの、稲垣足穂も小説の中で書いています。知っていますか?稲垣足穂。
少年愛の美学。そうして、三島由紀夫へ向かって、いや、三島になると、全集の巻数が多い。こうしましょう。金閣寺。
から豊饒の海、輪廻転生、仏教、そうして、インド哲学ですよ」
「わたしの詩を読んで下さい」
「ええ、読みます。ちょっと待って。コーヒーを置きます」
Elastic
ひとは時に弱気
時に強気
自信というのはきっと伸縮性なんだろう
だから
自信がなくなった
というのは勘違い
ただしぼんでいるだけなんだ
もっともっと調整がうまくなればいい
そうセンセイは諳んじた。
そして一言言った。
「きみはちょっと明るくなったかね?」
そう言われた途端
彼女は急に走り出して外へ出た。
「きみはちょっと明るくなったかね?」
恥ずかしかった。
川があった。
その川沿いの道をずっと、ずっと進んでいこうと思った。
昨日読んだ宮沢賢治の詩の一行を口の中でころがしながら。
あめゆきとてきてけんじゃ。
あめゆきとてきてけんじゃ。
そう諳んじ、祈りつづけていけば、わたしは「ほんとうに」どこかへ行けるのではないか。
宮沢賢治の妹の、トシのように。
川の向こうの山に日が落ちる。かがやいている。
「スマホ、ちょっとおとうさんに頼もうかな」
またはじめから
やりなおしなんだから
わたしはどこへも行きはしない
(引用:「リチャード・ブローティガン/藤本和子」)
台風前夜
台風が確実に来るという話を聞いて
熱情 闇討ち 連なる山
巨大な雪で覆われた
豊穣な首都の卵を思う
まこと裸のグルメたちが集う場所
いかなる苛烈な潮騒を浴びたのか
かれらの肌は夕暮れと白樺の色彩を転々とする
エロス冴えわたり
身体を熱くしながら
ジャズを語るその人の
熱情 闇討ち 裁きの白紙
明日には台風が来て
海の韻律なんて誰も気にしなくなる
秘密めかして
それがジャズなのだよなあ……などと言って
祖霊のまえで闇雲に
現役ボクサーの真似をしてみせる
クグツの豚!
目を潰されて叫ぶ意味性!
これに似た貝がなかったか?
モアイ像 モアイ象 ああ モアイ……
……むかしのことだ
感動を人に知られるのは死ぬほど恥ずかしくて
水族館の影に隠れて
エロス冴えわたり
ストロベリイキャンディを舐めていた……
ナイトクラブの二〇世紀後半
手首からアカシアの生えた影の男が話していた
ぼくは今日は一日中
ショスタコーヴィチの二十四の前奏曲とフーガを
聴いていましたよ
床に倒れた状態で動けずに
卵のぬるぬるした部分だけ
飲んでいた
色香のある暗黒の庭先
多数の塔が割れる
ガラスの虫けらたちの乱舞!
クグツの豚の
戦慄したその皮膚のリズム!
錯覚の芸術!
ナイトクラブの二〇世紀後半
獣の臭いをたどっていけば
熱情 闇討ち 丸太の運河
そうだ
明日は必ず台風が来ると言っていた
首のない祖霊たちと
丸太につかまり
オオ オオ と叫びながら
巨大な雪で凍り付いた首都の
秘密の咀嚼を求める骨髄を泳ぐクラゲのなかで
暖められた黄金のように犠牲になりたいのか
溶けて流れ
雲と樹液が混ざった場所に棲息し
なおも
魔術的変質者の装いをして歩き
睫毛に火をつけて叫ぶ
徒手空拳の枯木の眩暈
オオ オオ
エロス冴えわたり
ポケットから土気色の故郷の写真を取り出して
またジャズの話など始めている
千本桜論
1 読めるか読めないか
作詞作曲・黒ウサ、Vo初音ミクによる「千本桜」の歌詞を以下に読解する。
この歌の解釈は先行事例が多々あるようだが、検索するとくだらない解釈が上位に並ぶ。曰くこの歌詞は解釈できない、曰く意味はない、曰く音で楽しむ歌だ、曰く刺激的な語の羅列である、などというものである。最初にそうした論を否定しておく。
この作品を原作とした歌舞伎は私も鑑賞し、実在する。また、私は鑑賞していないが、漫画、小説、芝居なども存在するらしい。それら二次創作や翻案は、元になった「千本桜」への解釈と鑑賞を実行しなければ存在しないはずであり、したがって千本桜が「解釈することも可能」な詩であることは間違いない。二律背反である。解釈が存在するのであれば、「解釈できない」という説は確実に誤りである。
なお、「解釈することもできるだろうが、解釈はしない。」という鑑賞態度ならば、形式的には存在可能である。ありえねえとは言わん。だが無益だ。何が嬉しくてそんなことをするのか?何も楽しくないではないか?
解釈しない鑑賞は、解釈の不能性を味わうことがあってこその読み方である。解釈不能な作品においては、ときには解釈の不可能さが感動を触発する。それはよい。私もその事は知っている。
だがふつうに意味が読める文字を読まないで、これはただの音の並びです、やあやあ、いかにもきれいなならびですね。ではごきげんよう。などと述べるのはあまり立派な態度とは言えないと私は思う。
2 カタカナで歌う少女
この詩にはひらがなベースの部分とカタカナベースの部分がある。
カタカナベースの部分は少なく、以下4行のリフレインである。
千本桜 夜二マギレ
君ノ声モ 届カナイヨ
三千世界 常世ノ闇
嘆ク歌モ 聴コエナイヨ
これはこの歌の中で何らかの特殊な声を表現したものであり、この曲がVO初音ミクをアテ書きしたものである以上、この部分は人間の感情や認識ではなく、人ならざるものの声なのかもしれない。初音ミクが発話者であることもありうる。仮にこれを初音ミク17歳少女(架空存在・アイドル)が自己の内心を歌っているのだとする。あとから全体を考えて見れば、それが整合性が良い。
するとこれはまた、「君」と呼ばれる者へむけた歌いである。
【君ノ声モ聴コエナイヨ】と歌ってるのはカタカナ少女だから、もう一人の誰かである「君」も歌っている。また、その歌はこの楽曲を構成する一部であり、カタカナ少女(初音ミク)に呼応して、対話のような構成をなしているに違いない。
だからこの歌詞には少なくとも2人の誰かが登場している。
では、上記カタカナフレーズの前後直近で呼応している歌詞は、カタカナ少女に向かって何を述べているか。そこからカタカナ少女が何をしていることがわかるか。
カタカナ少女のリフレインする四行のフレーズに、隙間をあけずピッタリついて歌われる、平仮名少年のフレーズが、以下の五パートある。これら五パートはいずれも、カタカナ少女への呼応であると解釈できる。またいずれもが、依頼または命令の文形で、カタカナ少女への希求・祈りと、応援を表明している。
(1)
ここは宴 鋼の檻
その断頭台で見下ろして
(2)
青藍の空 遥か彼方
その光線銃で撃ち抜いて
(3)
希望の丘 遥か彼方
その閃光弾を打ち上げろ
(4)
ここは宴 鋼の檻
その断頭台を飛び降りろ
(5)
君が歌い 僕が踊る
ここは宴 鋼の檻
さあ光線銃を撃ちまくれ
カタカナ少女は鉄の檻の中にいる。おそらくそれは運命だが幽閉された可能性もある。カタカナ少女が初音ミクなら、鉄の檻(機材)の中にいるのは起動までの初期設定だ。
また、カタカナ少女は囚われて処刑目前だ。断頭台にいるのだから、そのままなら殺されるが、その処刑は見物されている。
これらのフレーズで、カタカナ少女を「君」と呼んで歌いかけている者を、ひらがな少年と呼ぼう。ひらがな少年は、カタカナ少女に対して「君(ミク)が歌い、僕は踊る」と伝える。だからカタカナ少女はひらがな少年(僕と自らを呼ぶ者)の身体を行動・動作へと向かわせるアイドルだ。
彼女は歌っている。少年も少女も鉄の檻に囚われているが、死んではいない。むしろそこは宴である。強制は宴を結果しない。宴は参加者が自ら望んで参加することで発生する。
ひらがな少年は千本桜の夜に紛れている。そこには多数の桜が存在し、その一部がひらがな少年だ。桜の多くはカタカナ少女の処刑を見物しているのか、そうではないのかだが、ひらがな少年は処刑に同意していない。
ひらがな少年はカタカナ少女に断頭台から飛び降りろ、と歌いかける。
逃げろ、殺されるな、自由になれ、というのだ。
処刑場で反乱を起こす断頭台上のアイドルである、カタカナ少女に、ひらがな少年が期待する戦闘行為は、3通りである。
(1)青空の彼方を光線銃で撃ち抜くこと。
これは軍事衛星などを破壊する行動である可能性があるが、非・戦闘員を直接殺害する行為ではない。
(2)閃光弾を打ち上げること。
閃光弾とは、暗闇などを光で照らし、敵を発見する武器。対人の殺傷兵器ではない。
(3)光線銃で撃ちまくること。
これは殺戮である可能性があるが、そのような銃は作詞時点で実戦投入されていない。だから(1)とともに隠喩(歌による敵の無力化)である可能性もあるし、殺害するとしても、断頭台から飛び降りた直後であるから、逃げるという目的にとっては必然的な犯罪と言えよう。
この歌詞を暴力的であるとする解釈も可能かもしれないが、カタカナ少女に歌いかける部分で述べられている言葉を、たとえば無名の人に無差別大量殺人を呼びかけるアジテーションと解するのは、相当な無理があると私は思う。
ともあれ、カタカナに着目するだけで、すくなくとも一人の生贄なりかけ少女(上述のカタカナ少女)と、それに歌いかけている少なくとも1人の死刑反対者が読み取られた。
3 平和国家日本
詩でも小説でも、状況は最初に決定する。
優れた文芸作品では、登場人物は最初から動作しなけばならないし、物語は説明される前に始まらなければならない。したがって状況説明は多くの場合に冒頭ではないが、作中世界の枠組みと登場人物たちの足元は最初から暗示されていて、導入が終わる前半まではそれがぶれてはならない。
「千本桜」の最初のスタンザで提示されるのは、
・磊落と見える平和国家
・日本製二輪車
・悪霊退散のおなじないのようなICBM
・戦国時代のような状況で無敵を示している少年と少女
である。
私は断固たる反戦主義者であり、あらゆる戦争に絶対に反対だが、上記四点を状況として描くことに違和感はない。ましてや上記の提示をもって好戦的だと述べるとすれば、それはリアリティにかける状況認識であると言えるだろう。
平和国家であることは人類の最前線での知的戦いであり、もちろん楽でも簡単でもない。
日の丸が商標にすぎないのであれば、それを愛そうが嫌悪しようがどちらでも好きにすれば良い。どちらも同じように無意味でくだらない。
大陸を飛び越えるアメリカのミサイルが、中国やロシアの脅威をなんとかしてくれるなど、呪術並みに非現実的だ。
そうであることが快適だとは言わないが、国土が戦場になっている国よりましであり、他国の住宅に絨毯爆撃したり、あろうことか学校にいる女の子をピンポイントで殺害して笑ってる愚劣な連中よりはまだ人間的であるし、どの時空で何を戦っているのか私が知らない少年と少女に、彼らの物語が進行していることもわかっている。
わかったうえで私は絶対的・原理主義的な反戦主義者なのであり、このサイトで別の散文により言及した平塚らいてうも、濹東綺譚の永井荷風も、同じ意味で反戦主義者のカラマートである。
4 この国はだれのものか
マルクスは資本論においてやや難解な地代論を述べた。
価値とは畢竟労働が姿を変えたものであるから、労働時間と賃金は差し引きする項目で修正の上では、等式で結ばれるという労働価値説はわかる。生産手段の独占や特定階級の投資・再投資による搾取が資本主義のシステムであることもわかる。受給曲線も剰余価値説もちろんわかる。だが、地代というものは何百年の大論争を経済学者たちがやったあとでも、やはり実感として私には納得できないものである。なんとなくおかしいではないか。土地は人間が作り、作った人が販売するものではない。基本的には自然が作ったものだ。なのになんで土地にお金を払わねばならない。
柳田国男は土地はそこにいる者たちのモノだ、という捉えかたをした。
彼はそこにいる者たちを当初農民ととらえたが、後にはよりひろく、すべてのなりわいに拡大して、常民と呼んだ。
その後の彼のロジックを私は未理解なのだが、結果的に彼は、死者や妖怪も「民」に含めた。ものすごくぶっ飛んでいて、ものすごくしっくり来る考え方だ。
都会にも田舎にも幽霊の出るとされる場所はあり、すくなくとも当面はそこには人が住めないので、伝説と死靈が占有している。保護されている禁断の場所も、神聖視されている場所もある。妖怪もアニメなどのなかに姿をかえつつ、それでも消滅しないし、しばらく前のコロナの時にもなんだか見慣れぬ姿絵が流行った。演劇に登場してもらう場合は、お岩さんには今でも礼拝は行われる。お墓も青山や六本木ですら守られている。
地代なんて変であり、土地は、そうした非実在存在や過去に生きた死者もふくめて、みんなの物なのが本当なのだ。
いっぽう、インターンネットの普及は、すべてを情報化する方向に進んだが、これは現実の土地と存在者を切り離す面もあった一方で、怪異と生者を等価にながめる、未来のAIの視点を我々に近づけている。それは当然人外の視点だから、人間のうち資本家や支配者と呼ばれる地位の者たちの、あやふやな感性やあやしげな説明に縛られるはずもない。必然的な変化として、我々は死者と生者と怪異と神聖のうち誰かの特権をもはや信じていない。そしてアーカイブはそれらを同じ電気信号で記憶して蓄積していく。
文芸仲間と東京を文学散歩すれば、白虎隊隊士の戦闘の跡を寺社にふつうに見かけるだろうし、新宿では江戸時代に行われた牛裂き刑場のあとを見かけ、池袋には魔辻がある。関東大震災や東京大空襲の莫大な数の死者は、まだ眠ってるかどうかわからない。
戦国の少年武士や巴御前が戦場をかけるのは、初音ミクが異空間でみかけた風景であってなにも不思議はないではないか。
この国は民主主義の原理から言えば、政治的には国民のものであるが、叙情空間を描写するとなれば、それだけに限定して状況を設定しなければならないわけでもない。
千本桜は、千年桜ではなく千本桜として作詞され、歌われる。
あるひとはこれを横への空間の拡がりや多数を暗示ないし示唆するものと指摘したが、私も同感だ。この歌では時間と空間が拡張されて状況設定されている。私はその世界観に異論はないが、それが一部のひとには難解さに見えているのではないだろうか。
5 サーガ千本桜
以上を踏まえ、破綻しておらず歌詞と矛盾しない物語としての千本桜を述べることは、私にも可能であるが、考えてみればそれをここで詳述する必要はないように思えてきた。
これは軍国主義や固定観念により捕縛され、処刑されようとしている少女が解放され、精神世界の革命少女として活躍に至る物語であり、過去すべての民と英雄と怪異が参加する宴の歌である。と、いえば十分ではなかろうか。
ここで筆をおく。
さよならに化けてしまうから
言っちゃいけない言葉は
あるの
なんで、わかってくれないの
簡単単純些細な言葉
だからこそ
ささってぬけなくなるの
言葉は魔法よ
覚えておいて
とてもあつかいづらいのよ
わたしたち(あなたもふくむ)
まだまだまだまだまだ
なんだから
にくしみ
もじを
じっとみていたら
またきづいたの
にくがあるから
しみこんで
いるのだね
もう ゆるせる
もう ゆるせた?
にくがなくなるころ
きえていくって
しったから
あなたもわたしもだれかれも
営み
雲に
灰皿
渡した
しけ
もく
たちが
空に
火を
はなつ
おしえてあげる
かわいい
いもうとにだけ
このこえがとどけばいいな
このちきゅうでは
ほこりだって
ひかりがあれば
きらきら ひかる
どんなにちいさく
もろもろい
わたしたちだって
ねむれないよるを
すごす
ヒトリポツの
すべての
かわいい
いもうと(たち)へ
小さな星の軌跡 第二十六話「新部長」
六月半ばの水曜日。 天文部部員全員が集まっている。
三年生、四人。 二年生、三人。 一年生、二人。 それに部員ではないけれど、みっちゃんの隣に当然のように座っているおーちゃん(小郡さん)。 普通にやってきて、この場の空気に馴染んでいる。
耳納先輩が、一通り見渡す。
「じゃあ、ちょっといいかな。揃ったところで次期部長について話をしたいと思います」
「任期や決め方に特にルールがあるわけじゃないので、顧問に誰それが部長ですと届け出ればいいだけなんだけど、まあ僕もそろそろ部長は次にやってもらおうかなと、で皆さんいいですかね?」
みんな黙ってうんうんといった雰囲気だ。
「立候補や推薦、それで出た名前で皆が異議なしであればそれでいいと思うんだけど、どうでしょう?」
やはり皆黙ってうんうんと頷いている。
「はい、ではまずは立候補ですけど、誰か進んでやりたいって人はいますか?一年生も良いんだけどね、どうですか?」
皆ちょっと顔を振って見渡すような感じ。
「特に立候補が無ければ、推薦はありますか。推薦する時には一応理由もつけて発言お願いしますね」
わたしはたかちゃんが良いと思ってるんだけど、中学の理科展で賞をもらってるくらいだし。でも皆はどう思ってるんだろう。 そう思いながら手を挙げた。
「部長、いいですか」 「はい、筑水さん」 「基山さん(たかちゃん)が良いと思います。中学の理科展で賞をもらっている実績もありますし」
「はい、ありがとう。一名推薦が出たけど、ほかにありますか?」
たかちゃんが手を挙げた。
「私は、筑水さんを推薦します。私は星も見ますけど、どっちかと言うと地質とか鉱物だし、部活紹介でしゃべった実績もある筑水さんが良いと、そう思うんですけど。」
耳納先輩がまとめる。 「はい、二人の推薦が出ました。お互いがお互いを推薦する形だけど、ほかに意見はありますか?無ければこの二人でどちらかを決めたいですけど、シンプルに多数決でいいですかね。」
異議なーし、とみっちゃん。一年生も頷いている。
「では、挙手で良いかな。基山さんが良いと思う人は右手、筑水さんなら左手を挙げてくださいね。順に挙げると雰囲気に引っ張られるから。では、行きましょう。三年生の三人も挙げてください。小郡さんは申し訳ないけど部員じゃないので見ててくださいね」
「では行きますよ、はい」
僅かな布擦れの音と共に手が挙がる。
わたし以外みんな左手だった。なんだか当然でしょと言わんばかりの光景だった。
「はい、筑水さん除いて満場一致なんだけど、筑水さん、部長をお願いできますか?」
ふぅ、やっぱりこうなるかぁ。覚悟はしていたけど、ほんとにわたしで大丈夫かなぁ。
「えっと、皆さん一致で推薦されたからには、頑張りますね。地質の活動もしたいのでその時はたかちゃん手伝ってください。皆で協力して、楽しく活動していきましょう」
簡単に挨拶だけした。
みっちゃんが拍手すると、続いておーちゃんも手を叩く。そして皆も合わせてくれた。
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みんなが帰ると、部室がいつもより広く感じた。
耳納先輩は黒板の前に立って、チョークを一本手に取った。それからやめて、戻した。
「じゃあ、引き継ぎといっても大したことはないんだけど」
先輩が話し始めたのは、顧問への連絡方法と、備品の管理台帳のこと。部費の扱い、生徒会とのやり取りや報告。毎日の活動記録。観測会の申請や報告の提出。一つ一つ丁寧に、でもさらっと。いつもの先輩の話し方だ。
わたしはノートを開いて、メモを取りながら聞いていた。
「だいたいそんな感じ。まあ今までに概ね見てるだろうし、わからないことがあれば何でも聞いてよ、卒業するまでは普通にいるから」
卒業するまでは。
その言葉が、さらっと通り過ぎていった。
「……はい」
なんか、急に実感が来た。来年の春になったら、耳納先輩はここにいない。当たり前のことなのに、今日初めてそれが本物の重さを持った気がした。
「ちーちゃん」
顔を上げると、先輩がこちらを見ていた。
「部長、似合うと思うよ」
「……そうですかね」
「うん。みんな当然みたいな顔で手を挙げてたから」
わたしはノートを閉じた。
「先輩は、最初から決めてたんですか。わたしに」
「まあ、だいたいは」
「えー、じゃあ一応の手続きじゃないですか」
「民主主義だよ」
先輩が笑った。わたしも笑った。夕方の部室に、二人の笑い声だけが少しの間浮かんでいた。
それから、なんとなく、静かになった。
先輩が一歩近づいてきた。それだけで、わたしの心臓が馬鹿みたいに跳ねた。
「ちーちゃん」
「はい」
「いつも、ありがとう」
そう言いながら、先輩の手がわたしの頬に触れた。静かに、確かめるように。
そして、ほんの少し顔が近づいて——
——唇が、触れた。
一瞬だった。
でも、ちゃんとそこにあった。
わたしは目を閉じたまま、しばらく動けなかった。
「……先輩」
「うん」
「部室では、しないって決めてたのに」
「今日だけ特別。……区切りだからね」
先輩の声が、いつもより少しだけ低かった。耳の近くで聞こえた気がして、また心臓が跳ねた。
一年前の初めても、この部屋で、六月だったなと思い返す。観測会の終わったあとだった。
窓の外は夕方の光で、部室の床に長い影が伸びていた。
来年の春まで、まだ時間はある。でも今日この瞬間は、ずっと覚えていると思った。
――つづく
[ま]曼荼羅
ロータス
逆向きに咲く
恫喝の二審
欠如した道徳
祖先の回想 半獣人が流した血と涙の田畑で
転生の輪が欠けた天使の歌が聴こえない
顔を隠した才女が祈り続ける
「明日を生きるため、食べるため」
踊り踊れ狂うまで 天命のまにまに
煉獄さえ極楽浄土の模倣
ビビアンの脊髄から流る信号に集え
イカサマ経典 前頭葉の奥を覗き込め
「悪魔憑きだ!」と騒ぐ民衆
嘯く、神様なんか誰も救わないと
方舟を造る材木さえない
快楽薬と愛憎と祈りだけしか持ち合わせない
金で殺法を説く宣教師
不当な判決 絆された神官
罪も教えも流行も商材さ
肥えた利権と娯楽 リバースアウト
踊り踊れ狂うまで 天命のまにまに
無機質なものを奪い合う群衆民衆
クリシュナの青肌 交配し熟すテロメア
羊皮紙に綴られたヴェーダが一室で寂しそうだ
髪やボロ切れを売る骸骨の
崩れていくその姿に願いはあるか
散々だって泣く憂いの日々に
水面に咲く花が歌った
踊り踊れ狂うまで 天命のまにまに
不浄な宗教の内部飽和 閃光
アガペーに堕ちる 失わない愛などない
曼荼羅の聖典 隔世遺伝 震え上がれ細胞
AI生成詩(無加工)
戯れに、ChatGPTに生成させた作品を載せてみよう。私は手を加えていない。
しずかな樹液に凍りつく
声帯は緩慢に熔けだして
あさひの粒子が降りそそぐ
腐朽のかげりが漂えば
いしころが響きかすめて
まぶたの裏には蛍光が
鉱石めいたうたが揺れる
うずまきと呼吸をまぜて
てざわりは翡翠をまとう
夜ふけの瀬音にひきこまれ
ふすまの隙間に蜃気楼
螺旋のあわいをたゆたう
つゆくさが秘密を吐けば
霧笛は藍染の色となり
硝子の虹彩が揺らめいて
炎昼の街角は息を飲む
うろこがしっとり乾かない
温室の瓦礫にしのびよる
よるべなく素足をよごして
桃色の琥珀に眠りつく
みぞれが掌でほどけだす
梢から夜光虫が降る
地層にひそむ微熱かな
こはくの溶岩が踊りだし
紙風船は針に怯えて
鳥肌が砂丘をさまよう
くちびるに錆びた蜜柑味
汽車はずぶぬれで通りすぎ
瞼をみずうみに漬けこむ
水槽に溶ける瑪瑙色
うたた寝の柩にくるまれて
昆布の波間に眠りこむ
発光体のような額縁
枝垂れ柳は愁い揺れて
鯨の瞬きに吸いこまれ
砂時計は波間に沈んだ
飴色のつばめがほろびる
はなびらに孕む琥珀糖
蝉時雨が珊瑚に沁みる
鉄瓶の煙におぼれて
白昼夢は鱗粉に濡れて
磁石の迷路をさまようよ
渚の卵が孵りだす
絹糸が夕凪を縫って
雨垂れの鼓動がふるえる
洞窟は星屑を吐きだし
蜜蜂が陶器に囚われて
海月の残響がそよぐころ
黴びた畳が笑いだす
睡蓮に透ける吐息かな
樹液の結晶がうずくまる
蝶々は羊水にまぎれて
星座が梯子をのぼりゆく
とまり木に刻む白昼の影
繭玉に滴るねむけ色
真珠が喉元で鳴いている
硯には墨汁の残響が
鈴蘭の脈拍が響き渡る
風車が氷室をかすめれば
みずあめの雫が跳ねている
洞のうろこが咳をした
夏蜜柑の針がひかって
琥珀の化石にまぶされる
目覚ましが翅音を告げて
ともしびは水銀を纏う
真夜中の硝煙がしのびよる
指さきはみかづきに似て
風鈴の亡霊が笑った
波止場でちぎれる鯖雲
街灯の瞳孔がふくらみ
素焼きの蛍火にふるえて
松脂のなみだを拾いあげ
潮風は鉛筆を尖らせる
羽虫が吐く息をつかむ
鶏冠が月光に輝けば
やまぶき色に染まる陶片
靴紐の屍が絡まる
霜柱に踏み跡がにじんで
あけびの蔓が舌を絡め
露草は鏡を逆さまに
蛸壺はため息をためこみ
隕石の涙に濡れそぼる
夕焼けにむせぶ天道虫
足跡が螺鈿を刻むころ
朝露にくすぶる焚き火跡
竪琴が鳥影を揺らし
胡桃の殻に響く嵐
囁きは木綿糸を伝い
琺瑯の泡がひび割れて
時計草はためらいを隠し
黒曜石は睫毛をひらく
胡蝶蘭が渇きをふりまき
煉瓦のささやきに躓く
檜の粉塵にかすみゆく
さなぎが青磁を抱きしめる
鋏が月光を切りとって
水煙に硝子がきらめけば
盲点に虹色をのせて
星明りは薄氷を編む
葡萄の透かし彫りに眠り
百合が刃物をひたして
血潮が透ける白磁かな
すずめは真綿に身をくるみ
楽譜に弾む金魚の泡
雪洞は湯気をくゆらせて
蛭の噛み跡がひりついた
柚子の種子が頬を突き
空蝉が眼鏡を曇らせる
琥珀の櫛を濡らしたまま
嘴が玻璃を貫いて
潮騒が絹布をゆするころ
白湯が舌先に踊りだし
綿帽子が銀河に溶ける
砥石はため息を研ぎすまし
涙腺に星砂が降る
雨戸が弦楽を奏でれば
砂糖漬けの記憶が揺らぐ
薄墨が蝋燭をたらし
氷結は紅茶を刻みこむ
水辺に微睡むかまきり
月桂樹が蝶番を鳴らし
熱帯魚は仮面を脱ぎ捨て
爪痕が古書をよごした
石鹸が窓辺をぬるませる
青海波に指輪がはねて
睡魔が羅針盤をまわす
天幕は薄紅に染まり
暗渠が鳩尾を撫でる
硯箱にゆらぐ睡り火
しじまが唇を縫い合わせ
花弁の煙がとどろいて
月影が骨董を照らす
青磁が泣き声を吸いこむ
よみがえりに注ぐ涙瓶
梟は脈動を忘れ去る
叫び
苦しかった
悲しかった
大声で泣き叫びたかった
叫ぼうとした私
なのに声が出ない
涙も出ない
出たのはいつも通りの声
「平気だよ。大丈夫。」
なんて笑顔で答える私
叫び
いつも
ずっと
私は心で叫び
心の中で泣いている
私の苦しみ
私の悲しみ
そんな叫び
あの人には知られたくないから…
perspective
振り返っても振り向いても孤独で
遠近法を殺そうとすれば
激しい彼方へ
血と水とひかりが
混じり合いながら降っていく
わたしの世界にまだ
これほど遠い場所があるのかと
呆然として
目が乾くまで見つめた
わたしたちの遺伝子は
旧字体で書かれ
痛みは幾何学
しかしやわらかい
若いとき、はらのなかのいのちをおろしたこと、
今でも後悔している
そう 言葉にすれば安っぽく
裂け目を閉じる糸のように
わたしたち
それぞれの名がある
最近
もうすぐ次男を出産予定だという
知り合いの女に会った
大きな腹をなでさせてもらったが
おそろしく
感触は覚えていない
まだ幼い長男が躊躇なく
母親の腹をさわっているのを見たとき
眼前の
激しい彼方に打たれていた
わたしの世界にまだ
これほど遠い場所があるのかと
呆然として
立ち尽くしていた
巣食う怪獣
深夜。キッチンに一つの影が差した。そんな時間に音がしないはずのそこからは、背徳感を食い物にする腹ペコ怪獣がいた。
引き出しのラインナップを見てから作るものはすぐに決まった。食欲の逃げ道は食べることしかないのだ。だがやはり深夜に一食食べるのは失敗というか、敗北というか。ただし作る手は止まらない。
1人用の700mlの鍋を出し、半分より少し上まで水を入れる。ガスコンロのつまみを回した時からすでに腹は準備満タンだ。青い火が鍋底を掠めたのを確認し塩味の袋麺を開け、砕けた乾麺を口に放り込む。特段おいしいというわけではないがなぜか病みつきになる。
水が沸騰しだしたところに、麺と粉末スープを鍋に投入する。まだ早かった気がする。菜箸で浮いた麺を押さえてから、冷蔵庫から卵を取り出した。食器乾燥機を覗いて、お椀が無かったのでマグカップに卵を割り入れてかき混ぜた。寝る前に変えた空っぽのゴミ袋に殻を捨てた。たぽたぽと可愛らしい水の音はいつ聞いてもわくわくするものだ。湯気と共に立ち上る塩ラーメンの匂いに足はステップを踏んでいた。
取手を持って卵を流し入れる。
はやく、はやくとはやる気持ちを、鍋をのぞき込んでごまかす。湯気が顔を蒸して少し気持ちよかった。
黄色かった卵液が徐々に白っぽく固まっていく。そこで火を止めた。急いで鍋敷きを机に放り投げて鍋を置いた。ただ座る、それだけなのにそれすら惜しくて。
椅子の前で菜箸のまま麺をひと掴み。ゆっくりと口へと運ばれる。途端に広がる、罪悪感をも晴らす熱さと旨味。
やはり失敗なんてなかった。
口上
さあ寄ってらっしゃい見てらっしゃい!!
西の皆様東の皆様、あ皆々様!!年齢性別国籍家柄、金持ち浮浪者、宵越しの金なしも大歓迎!!
ようこそお越しくださいました!!
さあさ皆様!今宵白も黒も構わず踵鳴らしてお踊りください!!お隣の美男美女同士お手を取り、さあワンツー!!……あら、お姉さま?なんと素敵なお召し物でいらしてこんなにお美しいのに、その瞳で誰も射止めず帰るつもりですかい
どちらであってもあなたの手を取らぬ見る目なき若造は放って、わたくしと踊ってくりゃしませんかい?
ありがとうございます。皆様!!
素敵なお相手、しっかり手を離さず皆様にいらっしゃいますでしょうか!いらっしゃいますね!?
それでは一夜限りの縁か、はたまた一生の縁となる今夜、袖が触れ合うこの長い夜をお楽しみください!!!
寄席
頭の奥の
出囃子が
りんかいを
越えて
踊ってる
わたしは烏
眼前とは遠く華を添える
(テーブルは疫病の夜尿の泡の習作)
では今も焦点で横雲を二等分する原型も
ただ天地空想で風潮なのではないか
いま知覚されたものがパチパチと震え
点在するアーク灯がみちを横暴に照らし出し
濁った水の中で光が切り取られている
薄墨か燐光か。
それは待つ者のための、しろい守護霊だ
かるく拾おうとして
おもうようにはならない
まるで低い低い夜風が息を切らせる
それはヒスのような扉ではなく。
憂鬱な深い沼地でもなく
澄んだ湖でもなく
まるで弱さを漏らした水垢の細い縞は
眼鏡に溶かされた一枚のショール
風にほどけてみせた、銀の櫛で髪を梳く
あまいろの夕暮れは トレスの琥珀
冷たいぬくもりなんて砂糖菓子を
ざっくばらんに摘んで
口にしただけ、なのです
つまらないな。
なんてつるんとした外套の言葉だと
アンバランスな中でたゆたう
街は簡単に洪水になる
それで舟人のカードをめくっては
探しているのか水郷を
もっとも痛覚はデザインでも
まなうらは希望もそこにないのですか
わたしは鳥
ゆくえもまたたきも忘れたかのように
翼も時代へ、揺れ、また踏み鳴らした
かみさまの悪路では、残響が生まれ
誰もが去っていった いつか手足となって
「破裂する。破裂する。」
背中に、
:はなれられる触媒がいった
黒ずんだ きつけ。
武器は もたずに。
時計塔の人生は ほとぼりが醒めるまで
のり過ごしたぶんの 駅舎も もう
ミニチュアみたいに くたばる
パンドラの筆跡
件の集合体の記憶が 藻が映えた時間軸に 絡まるは
水母たちの引き算の都市。天の川を密かに
その箱に透いたから 残照が酷く歯がゆく囁く
言伝の檸檬紅茶が 暈を増やす痕を滲ませている
性別不詳の夜半
血縁者の牢獄、
土手に填める桜はまた 希望だった
若草色のフェルトペンがぼやぼや
停止した白血球数の数だけ終の住処を建てる
朧
月は
凷に被弾した魂を籠めて
染み付いた遺伝子の徘徊
瞼の裏を破った時に来世にすげかえる
ゴツゴツしたフシクレの展につらを咲かせるもの
藁半紙なんて珍しいかぎりの 我ら
、牢獄の民の咽頭に花と散った。
とんだむかしを拡大鏡にうつした
緑地は 流砂の肌を曝し
浮き出る№を撫でるように 嘔吐く、
この手でだきあげるは
あなたは わたしなの
腐った思い出をプレートに並べて、
そして跡形もなく崩れ去る
と すがすがしく目覚めるなら、
きは、 悪くは無い。
淫売を重ねる暗い道を照らす朱は
終幕のように綴じられるとしても
「 瑞雲で有れば好いのに 」
言い淀んだのは溶け残った琥珀糖で
ずっとひかりは弧をえがいていたが
ただ 夢のようだと思えばよかった
十三月に総て延べチギレユク、ひとかけの意味も知らずに
未だしゃべり足りないひな鳥が
新たな母を呑み込んでは
また、とべずに啼いています
そんなわざとらしい愛を熨せ
ずっと奔らせていたい、我儘な時針に似せ
おいおいと泣いている、さわりすらも訪わずに
栞の如く焼き尽くす旨、胡蝶のルーツを手繰る
思考は星状に受胎している 雲海の果て、その海路図の焦点
ゆびきり
待宵草さん だれを待つ
綺麗なお着物身にまとい 涼しい時間にうつむいて 恥ずかしそうに笑ってる
君たち君たち あたしはね 月見草ではないんだよ
あたしのお着物は お月さまの雫で出来ている
だからよく間違えられるのさ
それはお勉強して知っている
ねぇねぇ答えて だれを待つ
淋しい夕に 清しい朝に だれも来ないようにも見える
君たち君たち 知ってるの あたしの正体知ってるの
お星さまでできた色 織り成す夢が作ったお花
うんうん とってもステキだね
そう言うとおひさまキラキラ輝いて
待宵草さんおしゃべりやめた
待宵草さん、待宵草さん また明日
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帰ってきたヨッパライ
夜明け時、地上に根を下ろす花が、真夏の海岸で眠るヨッパライの夢の中に現れてこう言いました。
「私は、花。この地上いっぱいにロマン咲く。雌蕊が受粉して実をつけ、花を咲かす。そこに本当のロマンやセンチはないの。でも、そんな私を見て歌を書くものがいる。それが、ニンゲン」
それを夢の中で聞いたヨッパライが、こう呟きました。
「花じゃ、ダメだあ。ともに手を繋ぎ、話さないとお」
そこへ、一羽のカモメが、空から降りてきてこう言いました。
「私は、鳥。雨の日は、灰色の空を飛ぶ。空を飛ぶのは夢ではなく、日常。
決められた軌道に沿って飛ぶ流れに乱れはなく、上手くいっている時、私は飛ぶマシーン。
でも、そんな私を見て憧れを持つものがいる。それが、ニンゲン」
すると、目を覚まし開けて、それを聞いたヨッパライがこう言いました
「鳥じゃあ、だめだあ。地に足をつけ、歩かないとお」
砂浜に流れ着いた石ころが、ヨッパライにこう語りかけます。
「私は、石。道端に落ちているオイラは決して、頑固者なんかじゃないのさ。
海を流れ波に揉まれ、流れ流されてここまできた。しかし、そんな私を見て魂を感じる存在がいる。それが、ニンゲン」
それを聞いたヨッパライは、朝明の中で、こう答えます。
「石じゃあ、ダメだあ。心身体開き、笑わないとお」
ヨッパライが、帰ろうとしながら海をぼうっと眺めていると、海がこう語りかけます。
「私は、海。粒としての集合体として、動植物に場を提供している。そんな神として場を与える私に深く感謝とともに、畏敬の念を唱える存在がいる。それが、ニンゲン」
それを聞いたヨッパライは波の流れに身の危険を感じながら、心の中で、こう唱えました。
「海じゃあ、ダメだあ。狭き世間を泳ぎ、渡らないとお」
ぼうっと、空を見上げながら正気へと帰りつつあるヨッパライに、空がこう語りかけます。
「私は、空。下界へと広がりながら。地上に風を送り海を作り、人々を応援する。貴方たちが輝けるように私は地上に楽園を作った。そんな私に対し、目を背けるものも、いる。それも、ニンゲン」
それを聞いてヨッパライは、ハッと目を覚まし、我に帰るとこう語りました。
「空じゃあ、ダメだあ。日常へと帰り、働かないとお」
凩馨
そしてとある広場にて/パノラマの群衆が/音のないパズルに到る/へだたりのない手が/みずたまりのホタルより/絵本のページとおく/ふところのうえで/ケムリを吐いています//ひずんだ心臓を濾過する/金糸雀と呼べ/虹彩に並べ/疲れ果てた処で/日没を手にした瞬間/白い旅をはじめたとき/秋はぶら下がりはじめていた//焼き立ての情報は擬似的な物語だから/カラメルがかかったポスターに表現され/採用された旗はリンゴに広がっていく/スタートした瞬間を一滴/パンの香りと評し/おだやかに傷ついて/風にのって、街中/このからだのシナモンの匂いがとれやしない//この街の人々は/しなびた舌が/(惜しくもない、辛いとはおもわない)/いつもより長く伸びている海面をみながら/傾斜を詰めた鍵一つ持って/ただ泣いた//沈むのを忘れたように/粒子の唇に触れるとき/失われたトマトが/眠るジェスチャーをする/触覚のない口が/うねうねと饒舌になる//振動する港までいけば/立ち去るがいい/迷路のない駅までゆけば/遠ざかるばかり//そのたましいとは。ビルの隙間から/オレンジから紫へと/ゆっくり/変わり続けます//おきあがる檸檬の感覚が/その太い陽は/腐らない蒼さの地図をひき/ちぎって/輪郭なき大窓にひかりがやどるから/(潮時をみて)/いろがみの夢が苔むした花をただ、しぶき/錆びた骨を嚥下したようです//多くを語らない/装飾のない抜け殻だから/時計塔の群れに/かざぐるまはちかく/おおぞらをまわり続けた/ここで/風を均す鐘は/頬をかすめるのだけれど/うすい微笑みをこなす/目覚めにはがし/その狐兎に/わかっているけれど、誰もが気にしないんだ//使い方も登録済みの幻灯機のネガだった/とある小さな街では/誰も帰りたがらない/つややかな流れ星に想えたから/見上げたら/無意味な掌で染み込む小舟は/ブイを通り過ぎ/黒煙が開くはなびらは/クシャクシャな顔だが/点描の猛虎は耳の中で/ねむたげな足取りで//あくせくと黄昏れている/Enter.↵
問わず語り/宙船とチョコレートの疑惑
先週の雨、過ぎ去りし頃から北海道もようやく全国平均に追いつく気温で、朝から晴天。
あー、夏だね。
こうなると黙っていられない、私のから騒ぎ。
さて、相変わらず詩を読むのが下手くそな私ですが、それでも自分の思想や世界観を詳しく説明してくれる詩人たち。CWSユーザー、神かよ。
いろんな個性のアソートが面白くて、箱の中に私もちゃっかり(方言で意味は、図々しい)自作とは言い難い、お乱れ表明を好む思考と日々のエッセイを独走。誰がそんなこと知りたいんだよってことばかり書く癖は相変わらず。で、結局なんの話だったの? そう、私の話は読後感ゼロのワイドショーみたいなもの。
前提条件が無い人にはとても読みにくい状況を、どんどん投稿する、この嘘っぽさ。
ほんとか嘘かわからない
そのくらいでいいと思ってます。そんな私にも様々な「面」があり、Xでは文句をぼちぼち言われる立場です。
アルフォートの箱に帯付き100万円×2を入れた画像を投稿
一律文句を言う人達が出現
でも、あれは実際の画像だからね。2019年頃キャバクラでアルフォートの箱に100万円入れて会計するのが流行りました。その後もタンス預金ならぬ、お菓子の箱貯金する夜職ガールの投稿はカジュアルな話。使用済みの折れてるお札を重ねても箱には入りませんが、新札帯付きだとピタッと収まるので何方様も機会があればどうぞ、お試しを。
インターネットの普及と共に、SNSでお金を見せたり、海外のホテルで美しい景色を背景に撮影する人達が急増。
そのなかで「港区女子」というワードがあるけど、あれって2010年頃から出て来たものでピークが2017~2019年のコロナ禍前なんです。
7年前といえばかなり古い情報
皆さまの記憶にも新しい夜職の女性が次々と被害に遭う、痛ましい事件。お陰さまで、風営法も変わりました。その次です、闇バイトが出てきたのは。常に社会は「お金の稼ぎ方」に注目が注がれているなかで、通販で販売されるダミー紙幣を利用するパロディもまた急増。
ダミー紙幣を販売する会社の売り文句は「遊び方は無限大」驚かせる為のおもしろいグッズ。
だから見せてる人は大概パロディだよね。
夜職は会社の所属によりますが、ほぼ個人事業主なので、確定申告は自分でやる必要があります。
勤務先の店ではパネルで顔出し、日記やSNS展開は営業の必須。その先で自宅に大金を隠しているとなれば販売に巻き込まれる可能性よりも、税務署は追徴課税をかけられる。夜職だと1000万プレイヤーはそこそこいますからね。更に社会的な問題と繋がっていれば、警察も介入する。
だから演出で、嘘のお遊びでやってる人が多いと思うんですよ。人によってSNSの活動内容は異なる。インスタに見る不思議なセレブ女性の背景はマフィアだらけなので怖いよね。ドバイ案件は嘘じゃない、ただ売春するなら自己責任で。後になってから「仕方なかった」を前提に何をされたかだけ一方的に伝えて来る被害者は、誰かにとっての加害であることは確か。
私はセックスワーカーに偏見はありません。
でも、知っているからこそ、付け足しで知らない人が同情するようなことを言う人には、はっきりと物申す。
身銭で稼ぐハイリスクは、終わりませんよ。ずっと。わざわざ言う必要はないよって前にエッセイに書きましたけど。あの、どこの世界に「セックスで稼いだ経験がある人」と付き合いたい、結婚したい寛容な人がいるのか。ほぼ確でいねぇよ、だって自分のリスクになるもん。
結婚した後に、風俗勤務歴やAV出演していた。就職しないでパパ活のお手当で生活の全てを賄っていた。
てへぺろ
これで喧嘩にならない溺愛を喰らえる人しか言ったらダメ。自分が不利になることは言わない方がいいよって話です。
話をダミー紙幣に戻します。
ダミー紙幣と比較して本物の日本銀行券は、偽造防止技術が施されています。
私がよくいう「パールインキ」がそのひとつ。
面から見ると見えませんが、お札を傾けると、お札の左右両端の中央部にピンク色の光沢が見えます。
これ、ネットに打ち上げたら知らない人が結構いる。
お札の端、縦のとこ見て? ピンクっぽいキラキラが見えるでしょう。私はそこが見えるように写真撮ってることがよくあるので、あのお金は本物。
だから腹を立てる人が前に出て来ちゃうのは仕方ない。
令和のネット事情は、共感性で成り立っている。
対する私はリアリスト。いいところも見せるけどそれは相手あっての情報として、時に失敗談をユーモアに見せるのは相手が見ているのを知っているから下手を打たない。ずっとそうしてやってきたから書き物も、空想的な虚構を書かないと決めています。
文筆家・及川まゆらはキャラクター
だけど現実を生きてる私そのもの。いつの時代にもいるXを私物化して、事実も確かめないで自分の気持ちだけを述べる。
指摘されても答えないで相手を避けて、自分の発言を無かったことにする。
今の時代でそれやったら、開示ですよ。Xだと最初はXの担当弁護士を相手にして進めますが、開示請求された側にも連絡が入ります。お手紙は一切来ていませんは通じない。開示請求個人が特定された後は、迷惑行為が立証できる、また実害があれば裁判になる可能性が十分にある。相手に不快な思いをさせて我慢させる。事実をわからなくさせる情報操作を何年も続けて、揚げ足取りのスクリーンショットを投稿して嫌がらせは手を変え品を変えて続ける。誹謗中傷になるような発言には気を付けるのではなく、そもそも誹謗中傷ダメ! て、警察も政府もアナウンスしてるよね。
やったらダメなんだよ
状況を知った上で、気を付けて和口を言うのはただの悪意です。
昨今、開示請求は裁判所を通さず簡易に行える制度も整備され、ますます開示が利用者に近い存在になっているので他人をバカにしたツケは返って来る。
これが社会制度に組み込まれています。
そういう場所で、嘘をつくよりも
他人を突いて自分の正しさを表明するよりも
創作を楽しみ
男と遊び暮らして酒が飲みたい。
折しも、台風接近で昨日からめちゃ暑くて。あっ誤解されそうなので、正しくは日中だけ暑い。夜は19時過ぎたら窓閉めないと寒いです。
月に一度の丸亀うどん
天ぷらはズッキーニおすすめ。一世風靡した焼うどん(ねっちねち過ぎて喉詰まりしそうになったやつ、そば飯は海鮮がおいしかった記憶)から冷たい鬼おろしうどん3種と揚げ浸しに変更。涼を供えて腹持ちもよく、ハイボールを飲みながら夕涼み。
ちゃんと働いてますけど、もうこの年になると手に職。短時間で高時給に乗っかれるわけですよ。
フルタイムでがむしゃらに働いて、いつも誰か闘いながら意地を通して、我慢をする業種から足を洗いました。もう信じられないことがあったのでそのうちエッセイに書きますけど、NTRはアダルトのジャンルであって実際にやるものではない。そんな事して職を失い、体調が悪くなった原因に後戻り出来なくなる。なんて、私には到底考えられない。
始末がつけられない人に目配せ、通り過ぎるだけで精一杯かな。
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「もし生まれ変わったら」なんて
目を輝かせて言ってたくない/B'z 90年代の歌だけどこれってその通りなんだよね。人生の快楽。
咲羽
咲く羽と書いて、さわと呼びます。
大地に落ちた種子が
土の中で十分に栄養をたくわえ
芽を出し
葉を広げ
茎を伸ばし
大輪の花を咲かせた時
枯れることなく
その花びらを翼にして
自分の思うところへ
自分の生きたい場所へ
自由に羽ばたいていけますように
と…
大地はどこまでも続いていて
空はどこまでも広がっている。
問わず語り
鳥が空を飛ぶのは辞めないのは、何故か?
と思想する鳥が空に問うと
きっと羽を捥がれたことがないからさ、と暗き鳥が答えました
その上で空を飛ぼうとする鳥を、どう思うか?
と思想する鳥が空に問うと
嫉妬して、苛める。が、本当に飛んだら遠くから眺めて賞賛すると、暗き鳥が答えました
人間が歌うのは、何故か? と思想する漢が空に問うと
下手と言われたことがないからよ、と暗き女は答えました
下手と言われても、気にせず歌い続ける人間を、どう思うか?
と思想する漢が空に問うと
嫉妬して、苛める。でも、みんな認めたら自分もその列に加わると暗き女は答えました
生き物がものを考えるのは、何故か?
と怠け蟻が空に問うと
暇だから、と働き蟻が答えました
考えて考えて、そのことに忙しくて、それが巨大な資本を産み、成功者になっても、まだ忙しい生き物がいたら、どう思うか? と怠け蟻が空に問うと
尊敬し、崇め従う。しかし成功を収めるまでは苛め続けるだろうと、働き蟻が答えました
無能力者が、下らないお喋りを辞められないのは、何故か?
とライオンが空に問うと
楽しいから。自らの内側に向かって喋るのが、疲れるからとダチョウが答えました
では、自らの内側に問い続けることで、その中に本物の宝物を見つける。そんな洞窟の中のお喋りを心の中に見つけたら、どうするか? とライオンが空に向かって問うと
くだらないオナニーなら毎日しているけれど、そんなものを得るためにしなくて良い努力はしたくないと、ダチョウが答えました
神様に休息が必要なのは、どうしてか? と魔法使いが空に向かって問うと
山も海も川も休むことなく成長し続け、流れ続けている。どうして貴方は、そう思うの? と一人の子供が答えました
人が死んだり、矛盾に満ちたことが起きたり、おかしな錯覚に惑わされたり、この世はおかしいと思うことが多いからさ、と魔法使いが答えると
死ぬこと生きることも循環ならば、我々の世界はすべてにおいて万能者が支配し、その中を泳ぐ魚たちには、それがおかしいと思えるものさと一人の子供は答えました
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