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2021/01/01 12:00:00

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投稿作品一覧

それはまだ、見えているもの

そりゃね
どうしようもなくて
いやな気持ち抱えたこと

あるさ
あるにきまってるでしょ

わたしのどこが
ないように見えるの。

え、それを聞くの。
言うわけないでしょ。



わたしの底は
わたしだけの場所。



まあ、そうね。
もし言うときは、ネットに書くわ。
昔は川か、海に流したんでしょ。

八百の嘘の中に
一つ混ぜ込んで。

気になるなら
探せば。

どこかの澄んだ
青い水底に

沈んでいるかも
ね。

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ラムネを飲もう

イギリス人には
紅茶を飲むという暖かい光景がある
家という一つの宮殿に勝る
その小さな世界の片隅の
サイドテーブルの上を舞う湯気は
誰かに売りつけた阿片の匂いをそっとかき消すのだろう

アメリカ人は
茶壷と港の発音の違いがわからなくて
紅茶をむざむざと失ったけれど
その代わりにコーラ瓶を口に運んでは
季節を選ばない渇きを癒すのだ
ピザとテレビディナーを家族と囲みながら

ドイツ人の歴史書は敗北の二文字だけど
それを分厚くしているのはビールの泡
フランクフルトといえば1848年の理想の中心地だけど
でも普通はビールの御伴でしかなくて
空にはためく黒赤金は今日もそれ以上でもそれ以下でもなく

ロシア人
語るまでもないだろう
砂糖の配給すらないはずの時代でさえ
どうやってかウォッカを手に入れて寒さをごまかし
そのせいで雪をちょっとでも掘れば
永遠の安息に浸ってることが発見されるのだから


じゃあ、僕らは何を飲めっていうんだろうか
どのような国民的行為に手を染めろっていうんだ


お茶を飲めって?
やだよイギリスとネタが被るじゃないか
それに君は抹茶に頻繁に手を出すのか?
ミスドに行った君はおおかた他のドーナツを選ぶんだ
わかっているんだからな

日本酒?
よく考えてほしい
ほろ酔いがガチ酔いばかりの民族だ
そんな民族が飲酒を
国民的行為にできるわけないだろ!
いい加減にしろ!


こうして困り果てた僕だけれども
それでも幻想を求める旅に出た
失くしモノを求めるように

紅茶飲んではフォース湾で水漬く屍
そんな民族的幻影が
ひとかけらでも欲しかったから

国民的一家が日曜日の終わりに突撃しては揺れる家
定期的に音響的災害の繰り広げられる土管付きの空き地
疲れ果てたサッカー部員に追突される黒塗りの高級車
空手部員三人が合宿で泊まり込む部屋
何とは言わないけど下北沢の邸宅
それに匹敵するような国民的幻想を
飲むという行為で再現できないかと

僕は必死に探して探して
そしてあの夏の日、あの残花と共にした終末の日
ひまわり畑の前に辿り着いた僕に
白いワンピースに身を纏った青髪の少女
そんな共同幻想が現れたんだ

幻想はにかっと笑うと
一本の冷たい瓶を僕に差し出して
それからふわっと消えてしまった
あんなに咲き誇っていたひまわりも
今ではすっかり俯いてしまって

でも、その喪失とは反対に
僕の手に握られた瓶のその煌きは
千年も八千年も
あるいはきっと苔が生そうとも
僕の脳裏から離れてはくれないのだろう


夕涼み
くいっと口に運べば
夏灯篭の火が揺れる中
舌に寂寞性青春が沁みていくのです

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人形

人形を買った
ここ一ヶ月あまり
ネットショッピングサイトを
開く度に
毎回見つめていたから

運命の子。
と出逢いたくて
どの子が当たるかわからない
シリーズで買ってみた
(※ラブ◯ではない)

ドキドキしながら
箱を開けると
可愛い可愛いお人形が
現れて

五歳の息子が
欲しい
欲しい
騒ぎ出した
「一緒にこのコを育てよう」
「名前はハッピーちゃんにしよう」
「ふたりのお人形にしよう」
と、わたしを口説く

曖昧に頷いたけれど
わたしは全く納得してなくて
こっそり
わたしだけのお人形を
もうひとり迎えてしまうかもしれません



追記。
人形を欲しくなる心理と検索してみて
うんざりしながら

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尻ッポの言い分


蜥蜴の尻ッポ切りって言葉知ってるかい


その切られる尻ッポの役割を
いつもしているのがわたしよ



斬り捨て御免!



斬り捨ててから謝られたって
もう遅いってんだ



ねぇ




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三つのシの詩

三つのシの詩、覚えたら
傘持ち歩くは、雨の中

鈴の音、聴こえて ガマガエル
勇んで戻るは、帰り道

悲しみ堪えて、我は行く
ナキムシ シカエシ シカタナシ

三つのシの詩、覚えたら
広げて踊ろう、パラソルを

底抜け 壁抜け 君は、誰?
光を求めた、夢の中

希望を抱えて、今日もまた
ヒナゲシ ナカヨシ コレデヨシ

三つのシの詩、覚えたら
笑って歌おう、人生を

君の手 産の毛 謎だらけ 
並んで映ったフレームに

永遠の記憶と、目を閉じて
ムツマジ タクマシ イトヲカシ

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優しくなんかなれやしない

チョコレートが世界で一番好きなのに
なかなか食べられなくなりました

それでこの世を憎むのは
まっとうなことだとおもうのに
うまく言えません
だから誰にも会えなくて

優しくなんかなれやしない
自分にすらチョコレートひとつ
買ってあげれないのに

悲しみは汚れでしかないといいきれば
誰よりも高級な白い布が纏えて
崇高な神様に出会える気がした

それでもさあ
わたしはやっぱり
チョコレートひとつがほしくって


それだけで世界を憎めるのです

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新幹線太宰治

 太宰治は人間失格になったので、新幹線になっていました。
 
 ヒューンヒュヒュンヒューーン

 速いぞ、速いぞ、新幹線だぞ、わーい、わーい

 太宰治は人間には適合できなかったが、新幹線には適合できたので、楽しい日々を送っていました。
 しかし、そんな太宰を嫌う乗り物たちもいました。ある日、年老いた電車が話しかけて来ました。

「太宰くん、若造のくせにすごい速さだ。無事故で人間にも大人気だね。しかし、世間の乗り物たちの嫉妬は怖いぞ。ちょっとは自重した方がいいんじゃないかね。」

 これは、人間時代に気づいたこの世の真理の使いどきだぞ。太宰治はわくわくしました。

「世間とは、あなたなのです、あなたが嫉妬しているのです、ビビビビビービビ、ビビビビビーーッ!!」

 太宰治は新幹線になって自己肯定感が高まっていたので、堂々と言い放てました。

 年老いた電車は完全に言い負かされてしまい、プライドがひどく傷つきました。

 ドッカーーーーン

 ショックのあまり自爆してしまいました。

 太宰治はこの件に関し強い罪悪感を覚えました。

 年老いた電車が自爆してしまったのは完全に私のせいだ。私は間違ったことを言った覚えはないが、彼を酷く傷つけてしまったのは事実だ。真理は時に人を傷つけるのだ。なぜあんなにはっきりと言ってしまったのか。それに、なぜ私は新幹線なのだ。なぜあの老電車は電車なのに、私は新幹線なのだ。私なんかが新幹線になってよかったのだろうか。なにか努力したわけでもないのに。申し訳ない、申し訳ない。

 太宰治は新幹線であることに罪悪感を感じるようになり、以前のように速く走れなくなってしまいました。そして、ある日、全く走れなくなりました。

 新幹線、失格。 

 もはや、自分は、完全に、新幹線でなくなりました。

 太宰治は新幹線失格になったので、飛行機になりました。

 フラーイフライフラーイ

 飛行機すごいぞ、空飛べる、楽しい、楽しい、わーいわい

 完

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ケサディーヤ

「深夜2時まで営業中!」
ファミレスの窓ガラスに貼ってある
A4用紙に一文字ずつ。

深夜1時に話すことは
昼の1時に話すこととは違うのだ。

たとえ明日が眠たがろうが、
深夜1時に話すことに、価値がある時代がある。

 ウフフな話
 クスンな話
 フワフワした話
 ジットリした話

隣に体操服を着た少女が2人
ケサディーヤにデップをつけて頬張る。
彼女たちもいつか、深夜の1時に来るのだろうか。

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海外の方が日本ブンガクにマネーを落とすと言う事@しろねこ社賞推薦文

推薦対象

reverse
by 完備

 

 
 作家の北方謙三さんが仰っていた事なのですけれど、日本文学というものは、これからどんどん翻訳されて海外で読まれてゆく
ようになるので、未来は明るいんです、という動画を拝見しました。


 煎じ詰めれば(この、煎じ詰めればというのを流行させたい。個人的には)
 それはインバウンドという事で、結局、海外の方が日本に来て、何を求めているのか。その需要に対してしっかりと供給できる
のかどうかという問題をはらんでいる。
 それはやっぱり富士山であり、青田であり、京都のちょっと脇に入った所にある喫茶店、或いはこの方は本当の舞妓さんなのか?という、あの、おしろいに着物、って事だと思われます。



 そうして、例えばラーメンという物もそれは日本文化としてあるのですけれど、或るテレビ番組を観ていて思ったのが
その、海外の方の需要に応えるものが、「これぞ老舗の醤油ラーメン」ではない、という点です。
 それは、例えばチェーン展開されているラーメンの味であって、そこでは実際に「ほんまもん」を求められてはいない。

 つまり、プロとして作品に向かうというときに、敢えてそこでクオリティ的に、書き込み過ぎない、といった
 そのそれは「本来的実力の内」なのですけれど、その「わかりやすさ」「受けとりやすさ」の方へ振っていく、
 それも才能の内だろうと。



 まあまあ、私は文系でありつつ、必死に左脳を動かして考えた結果、その求道タイプの方の作品を自分では好み、であるから
そうした方の作品は大衆性やコマーシュといった問題で、世に出にくいのでは?と、その書籍化を希望する旨、推して推薦文を他に書きましたけれど。「わかりやすさ」も問題意識として、どうしても、その書籍化の際に先に述べた大衆性、コマーシュを念頭に置くとこれはあり、このような作品の推薦文を書いて、私自身の中でバランスをとっていかないと、何か、気持ちが落ち着かないという部分があります。



 その凄く頭をフル回転させると、その、大衆性、コマーシュの問題意識をしっかりお持ちであるならば
 別段にこのCWSではなくとも、AI翻訳で勝手、日本語を英語に訳してくれる、ノートドットコムを選択している筈であり
その書きつづけてゆくラインとしても、すいすいと事が運ぶ可能性もあるのではないかとも思いつつ。
 しかし、このCWSで、物を書く、というとき、そこにはネット詩、ネット詩人として大衆に向き合ってゆきたいという話なの
だろうと思う、すいません、これ、田中、勝手に書いています。



 そうして、やっとこの書き手さんについて書こうと思うのですけれど、私の把握している事として、数学に歴史だと思って
おり、そうすると、必然的に「岡潔」へ、連想が、これは、動く。
 岡潔が主張するには、その情緒を重んじ、その個人が、把握するラインを増やすのではなくて、敢えて減らしてゆきなさい
と言っている。
 なるほど。実際、そういった作品なのではないかな、とも思われる。しかし私には書けない。


 同じ書き手として、どうしても、ここをこうしてこうして、という詰碁をしているような、そうして結局の所、また
 言います、煎じ詰めれば、どうしてもこういう作品になるな、と思う。
 まあ何か勝手に思っていますけれどそれは私の「理想」の話です。



 *

  最後に書いておきたい事は、その、XとここCWSとの親和性の話であって、本当に個人的な事なのですけれど
 Xでフォローし合うようになった作家さんの中で、まあ、田中へ自分はこうこうこういう夢があって、みたいな話が男性の
 書き手さんからあって、まあ、フムフム、と聞く事があるのですけれど、まあ、その話の流れとして、推薦文の話にどうしてもなるんですがすいません、私の中では、これは幾つか、ポリシーといいますか、問題意識があって。

  例えば、私は男性だから思う事なんですけれど、それは自分で詩と散文の腕を磨いて、自分で売り込めばいいのでは?という謎の体育会系気質があるのです。それは。
 その、推薦文を通読してくれれば、わかると思うんですけれど、今すべて女流作家です。別に軟派とかではなく、寧ろ、硬派です。


  そうして、何か、個人的に、もうそれは何か、えにし、或いは本当に自分に感じいる事が無ければ、推薦しないかも知れません。
 まあ、ラフには生きたいと思ってるのでこの推薦文も、私の「ワーク」として楽しく読んで欲しいかな、と思っています。

 

 完備さんの詩集の、書籍化をのぞみます。

 
 感謝。

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問わず語り/神のお気に召されるように。

 LINE通知
 めっちゃ鳴ってるけど仕事中は見ないのがお約束/内訳:即レス常識とかお前らインターネットやりすぎ、抜け。ちょっと落ち着くから、自分でしろ。という杜撰なステップから始まる今日のエッセイ、テーマは『神6』について。

 初投稿から私は自分のセクシャルを公表していますが・・・・・・
 あくまでも私の話であって、
 世の中のゲイ、同性愛者に属する皆さま=私と同じだと思わないでね。
 私以外のゲイは日々努め、精進して生きています。ゲイは男の中の種類で、まぁ殆どの男が性的なことを言ったりしないし、お行儀よく隠しているのに対して私は2000年代/ISDNから常時接続して男の事情をご開帳する総受け化猫モンスター。お願いだから世の中のゲイを、愛すべき彼らを嫌いにならないで。ご理解の程よろしくお願いします。

 さて、アイドル界隈で神6といえばトップアイドルの総称や、特定の6人組アイドルを意味しますが。

 私の場合
 彼氏の数・6名

 これ以上は増やせないと厳選、6名まで通常の「お付き合い」可能。
 愛し愛される者同士
 1:1ではないのか、えーっ浮気するの不潔って思った方へ


 https://creative-writing-space.com/view/ProductLists/product.php?id=3258&user_id=58&mode=post


 ちょっとした、私の自己紹介です。

 多分これ読んだ人のなかで、それまでコメントくれていたけど一切関わらなくなったのは、私のことが嫌になったんでしょうね。
 夜職にも詳しいから平気で口を挟む。でも、私は物書きである以上それをやめません。
 そもそも恋愛は一人ずつとすれば誠実でしょうけど、貞操の義務はガン無視で。だって結婚してる間柄はひとりもいません。それに大勢の男が私と恋愛したいよっ! という状況だと、考え方は変わる。
 例えば月30入れ替え戦
 好き嫌いのない誰専の特性を活かし全国のゲイみんな食っちゃおうキャンペーンを実施。

 ※現在はキャンペーン終了

 そういうことが私の人生にはあった、というだけの話です。多分。

 ゲイってさ、ノンケと違って・・・・・・
 やり捨てするタチが、極少数/ノンケ比較。総人口が違うので、そう感じるだけかも?
 みんな恋愛がしたくて、好き同士でいることを望む。
 大体にしてゲイの総人口が少なすぎる。特性がある人の枠/マイノリティであることに病んで疲れる人が多い界隈。
 もっと深掘りすると、セックスできる相手に多くを望む傾向がある。心も裸になりたがるんです。
 最愛の恋人であり、
 一番の親友
 そして、俺の大切な家族。でありながら違う人ともセックスを平気でします。ほぼゲイは、それ。

 一人の相手と長く付き合うことは、まず無い。
 めっちゃ短命な恋愛スタイルが多い理由は、身近な相手を食いに出る。だからトラブルになるんですよね。
 彼氏は別れたら友達・セフレに逆昇格するけど、結局やらかすことに変わりなく、住んでる地域を変えないとアップデートできない。だから昔は、どこそこまちに住んで仕事してたけど今は実家や田舎で暮らしてるゲイは<なんか>やらかして土地を離れたと疑っていい。まぁそれは他人の人生だとして。

 特筆すべきは、ノンケ比較で絶望的にセックス/技術の基準が低い。

 やっぱ風俗って偉大だな
 ノンケの方が明らかに上手いし、遊び方を知っています。
 割り切った関係で、別にやれるなら男でもいいノンケに対しして、ゲイはセックスから始まり恋愛をしたがる。
 愛し合うことにとても憧れており、自分の理想と違ったらフェードアウトする。メンタル弱いのにプライドだけは超高層。
 自分をよく見せようと必死になるのは全国統一。
 だから上質な相手をみつけたい私が出した答えは、ゲイは友達としていいけど恋愛お断り。

 神6にゲイはひとりもいない。

 結果として、私が好きで性愛が位置付けられているならゲイだろって言われそうだけど、ほぼ既婚者。お付き合いしている歴は長くて10年以上、ということは彼の人生のなかに私がいる。男なら誰しもそういう相手がいるのかも知れません。

 世の中の男は、必ず「誰か」の息子。
 そして、
 父親であり
 夫であり
 会社員などの社会的な立場がある。その中から独身を狙うのは至難の業、ですけど。
 女にかかっていけない種類の男は必ず、いる。

 今から紹介する彼が、そのひとり。

 現在、海外で暮らす日本人男性の英治さんは神6の上位クラス。
 どうにも女が苦手な独身・優良物件のノンケ最高峰。出会った時から期待値、高めで入念なイメージトレーニングと計画性をもって近づき、告白させた経緯のなかで。50代まで親の介護をしながら日本で暮らし、死亡後の手続きと相続による裁判が終わってから、仕事で海外へ転勤。その時点でもう日本には戻ることはないと言ってましたが、随分と強気な発言だなぁと隣で話を聞いてた私。
 ・・・・・・ん? まさか、と確認する英治さん。
 案の定、私を連れて行く気でした。
 「なんで、行かないよ」
 「そう言われると思ってなくて、そうか。なるほど」
 付き合って、2年と数か月。同棲はしてないけど(親は独居で在宅介護)会いたい時に英治さんの自宅マンションで会える仲ではある、ただそれだけの関係で二人で何かを所有する権利があるものがあったとか責任やお金が生じる付き合いではない。
 (お客様が神6に昇格することはない) 
 私の一言に、顔から表情を失いつつ、念押しする聞き分けの無さ。
 あなたは私だけが大切で、お金も時間も全部使ってくれる。でも私が大切なしているものを絶対に認めてくれない。だから一緒になれないんだよ。
 一緒にいられる時間だけ私は英治さんのものになれる。
 それは私にとっても特別なこと、それをずっと言い続けても覚えてくれないから、あーもうこれで関係終わっちゃうんだなと思った。こんなに生意気でどうしようもない私を宝物のように扱ってくれる男は残念ながら他にもいるので、さようなら。
 英治さんはご多忙中につき、会えないことに慣れていた私は合図として、玄関に合鍵を置いて出て行ったきりでした。英治さんは日々忙殺されるばかりで私と寄りを戻すことは叶わないと思っていたと言います。
 年下の男に振られた。別れた後に残るのはその実績のみ。
 ドラマのように別れてみたかったけど、それを私からやるのはどうなんだ。英治さんはいつもサプライズをしてくれたけどね。
 日本を発つ、当日。
 新千歳空港行のエアポートライナーに乗った英治さんから「本当に来てくれないのか」涙ながらの電話を受けた。
 「根性の別れじゃあるまいし」
 「君は・・・・・・いいのか、このままで」
 「だって、もう会えないでしょう。ストックホルムだよ?2年は向こうで頑張りな」
 「どうしていつもそうなんだ」
 「知らないよ。今どこ」
 返事は無かった。声にならなくて震えているのが音でわかる、今更どれだけ懺悔をしてもあなたの遠い通りになんかなりません。多分これ一生変わらない私のマインドなので、諦めて下さい。
 今、全てを無くしてもあなたが欲しいと思ったことが一度も無いんだから、仕方ない。
 聞き落としそうな声を拾って、英治さんの現在地を確認。私は時計を見ながら、まだ間に合うと電話を切って走り出す。
 私だって寂しいよ。でも、それを言ったらあなた心配するじゃない。
 いつも優しくて
 私思いで
 家庭の事情と仕事でいっぱいだった時も、私を選んでくれたこと何回もあったよね。
 だから、笑顔でお見送りしようと決めた。

 ────私のこと、褒めてくれる?

 新千歳空港の専用ラウンジに、ドリンクを目の前にして白髪頭を垂れている。
 残念そうな後ろ姿、清楚系おじいちゃんを絵に描いた様な白いカーディガンにスラックス姿で、ハンカチをポケットにしまって英治さんは立ち上がり、サービスに笑顔で対応する。
 その横顔はルビーの指輪を世に送り出したミュージシャンにそっくりで、だけど歌は下手よね。
 気が付くかなと思って声もかけずに、すれ違ったけど、そのまま歩き出したから走って背中を叩いた。
 驚かせるのは得意だけど、仕事だから見送りには行かないと嘘をついたのは、私の強がり。
 
 最後になるかも知れないから、これだけは言わせて。

 どんなに離れていても、空は繋がってる。
 私、寂しくなったら空を見上げるね。いつでも英治さんのこと思い出せるように。行ってらっしゃい。

 胸の前で手を繋ぎながら挨拶をすると、そのまま私の手にいっぱい涙をこぼして、英治さんは膝をついて声を殺した。
 いや、だからさ。根性の別れじゃないから。
 私がいるから日本にまた帰っておいでよって再会の理由づくりをしたかったんだけどな。
 英治さんはひとりぼっちじゃないよ。大丈夫、いつも言ってるじゃない大丈夫だよ。ほら、と励ましながら私のハンカチで涙を拭うと「これ、もらっていい?」返せる宛が無いと思ったのか、たった一言を途切れながら息を飲んで聞く。もちろん「いいけど。大事にしてよね」意地悪なやり取りを最後に、英治さんの手を離して、後ろ姿が見えなくなるまで大袈裟に手を振る。私も泣いてた。
 こんなに辛くて悲しいのに、
 大好きなのに、
 なんで別れちゃうんだろうね。私たち。

 2年後、仕事の目途がついて、日本で手続きをする為に一時帰国した英治さん。
 札幌の滞在期間は3日間。
 私は毎日多忙で一秒も会うことが叶わず、大激怒で国へ帰って行きました。
 半年くらい何の音沙汰もなく、まぁ死んだらそん時だと日々面白おかしく過ごす様子をSNSに公開しているのを全部見ていた英治さんは心臓トゥンクで倒れちゃいます。何だか難しい病気になったらしく、治療しながら仕事を続けて、次第に自分で呼吸ができなくなり入退院を繰り返す。
 それは日本で可能性として指摘されていた病気で、5年目に追いついて来た。
 その日のうちに確認できなかったメッセージを開くと「もう自分は長くない」我慢の限界と、孤独による精神の解れを読み取る。
 60過ぎまで生きたら大往生だって、信長に笑われるよとメッセージに画像を添えて返信した。
 新しい彼氏は、スペインの王子様。その前は年下の韓国人男性という身のこなし。当時の気持ちを語る英治さんは「こっちは死にそうなのに、憎らしいこと。死んでも死にきれない。」死んだら終わりです、そういうこと。
 老いて病んだ時、何が一番の薬になるか。
 生きる目標をみつけることです。それと同時に、英治さんの今の状態に合う薬がみつかり少しずつ回復。
 ここまでの医療費が日本では考えられない高額で、臨終の床に着くことが無い経済力は圧巻。日本にいたら都内サ高住で入居に数千万、10年で億の費用を費やす暮らしをしていたのかも知れないと推測。
 庭の手入れを自分でやったり買い物にも行けるようになると、趣味で音楽を始める。ネットで出会ったフランス人男性の影響だそうで、相撲が好きで日本に来るというから、会ったら、キスしてその日に愛された軽率な私に対して友人の彼を寝取ったタバサは「綺麗な肌で、若い頃みたいに夢中になってしまった」と供述。この男、結構チャラい。まぁ脱がないと見えない肉体改造は私の趣味で、ピアスも海外とは違う観点があり、緊縛や折檻などの博愛精神も備わっているのでいいに決まってる。
 今まで後ろから髪を掴んできたのは、ロシア人男性とタバサくらいです。
 だから、男性同士がタブーという線引きをしている相手でも、うっかり踏み越えてしまう魔境がこちらの居住区。ただタバサと性格的にほんっと合わなくて、お互い嫌味を言わないで会話できるまで2年の歳月を費やす。喧嘩する私たちを介する英治さんの厳しさに、タバサのほうが気後れするほど。あのね、乱痴気を𠮟れない男になんか私の人生を分けてやれません。英治さん頭もよくて冷静な判断を最中もできる、理性の持ち主。健康上の都合、もうできないけど、あの記憶は一生もの。永遠に所有したいエピソードが私たちには幾つもある。
 英治さんもたまに思い出すみたいで、庭を望む窓際にて。
 そっと触る。目を閉じるだけで記憶を頼りに身をやつすことができると言うのだから、男の性欲に年齢は関係ないのだと知る。

 白いバラの花びら
 ひとつふたつ散る時
 優しい朝に染められるでしょう
 そして生まれ変わって
 あなたの胸に咲けば ふたりの愛は永遠になる

 英治さんの好きな歌です。私は、ふたつの鼓動と赤い罪のほうが好き。
 これが神6で、二番目に付き合いの長い、最高齢・英治さん。私が夜中に起きて会話をしている相手です。ほんとインターネットは便利よね、コロナ禍でリモート飲みした日々が懐かしい。
 FIFAワールドカップでフランスが優勝した、あの年。私たちは希望と、友情と、感動をひとつにした。
 The Cup of Life/テーマ曲は今でも色褪せない、青春だね。

 6/1しか御神のことは言えない。

 今は情報社会で個人が特定されると、終止符が打たれてしまうから。
 奥様にお会いしてしまい、疑いようのない夫の事実にそつなく挨拶を交わしたこともあります。
 女の勘は鋭いもの
 だから女は物理で満足させる。それができなきゃ神座を降りて結構、誰かがまた座ります故に・・・・・・
 ────貴之は神6に入っていません。
 トップの入れ替わりは無い。真の王座に君臨しているから、英治さんは貴之を尊敬していて、同性として憧れると言います。
 どうすれば、まゆを上手に躾けられるのか?
 余程、辛抱強いか
 所有や支配が前提ではない加護のような献身と経済力で、死ぬまで愛せる人材に巡り合えるかどうか。ご縁だよ。
 実際はただの飼い主。
 夜21時、トントン屋さんの営業開始。危なく寝かしつけられるところ隙を見て逃げ出すけど、その癖どちらがご主人様なのか。お解りだと思うけど叩き込んであげる、と機嫌で話しても貴之は許してくれる。
 「理不尽でもいい、俺と一緒にいてくれてありがとう」
 抱きついてくる男の甘えを惜しげもなくお披露目してくる貴之はどこか幼くて、めっちゃ可愛いぞ。至近距離で直視するとやべぇ勃♂なるべく爪を立てないように努力している、私えらい。

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 投稿数40 \おめでとうございます/

 あっ、そーだ。
 ここってどうやって画像を文章内に張り付けるの?
 コメントにも画像腫れるの、この間初めて見たいんだけど・・・・・・ご存じの方は、コメントお願いします。それでは、何方様も神のお気に召されるように、ご多幸をお祈り申し上げます。

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エキソゲノス

​白濤は外なる牙のごとく覇然と列なり、
錯々、鑿々、搾々として、
肉の柵を穿ち、内なる胴腔へと外因の楔を打ち込む。

​潮騒は嘲笑を越え、
涛音は外からの告解へ、
遠雷は遠々と永延と続く外延へと転訛し、
隠された膏肓の闇を、外界の業火が煌々と囂々と照らし出す。

​赫々たる白光は、
救済の後光にあらず、境界を融解させる曝露の光。

口腔、胸腔、頭蓋腔、
あらゆる空洞に外を光降させ、
内なる自己の核を、強制的に他者へと変貌させる。

​柵は割かれ、錯は混じり、索は手繰られ、
兵は蔽い、弊は蝕み、閉は開かれ、
血は知を捨て、地を離れ、他となって外なる深淵へ逆流する。

​寄る。依る。因る。夜る。すべては外から押し寄せる

還る。返る。孵る。蛙る。内側へはもう還れない

満つ。充つ。鬱つ。沐つ。外の毒液が、器を満たす

裂く。割く。避く。咲く。内と外の境界が、いま爆ぜる

​もはや意味は音韻へ還元されず、
観念は漢字を離れ、
漢字は感字を殺し、
感字は岩字を砕いて、外へと飛び散る
散字へと霧散する。

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いちじく

今朝、いちじくの木に11個の小さな実を見つけました。

よく見ないと分からないまだまだ小さなこぶです。
去年の夏はたったの2個だったので今年は豊作になりそう。

葉も開いたように大きくなり、鮮やかで明るい緑色をしています。

左右にその大きな手の平を広げ
「どうだ!見事だろ!立派に実を太らせるぞ!」と、ドヤ顔をしています。

赤ちゃんいちじくを抱えている枝も太くなり、
「おれが守ってるから、安心しろ!」と、
太い腕で、優しく支えており、とてもたくましいです。

かすかにですが、鼻の中をスーッと通り抜ける、桃のようなりんごのような爽やかな香りもします。

雨が降って少し成長し、太陽にあたって少し成長し、夜私が寝ている間も成長し、
知らぬ間に大きくなり、ある日突然、私を喜ばせてくれます。

寒い冬は、うな垂れて、今にも折れそうな程痩せ細って見え、
「大丈夫なの?生きてるの?死んでるの?」と心配していたのですが。

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肉の発生


山岳地帯に入り羊たちの腸を見た
むきだしにされた傷口からコオヒイがこぼれるのを頑張って掬い取りぼくたちは大きな模型的な球体をめざして歩いた
検証された人間の
相互浸透の暗示的ヴィジョンについて教えてくれたのは
野性の簡潔な赤道
そして孵化しながら野生化した郵便切手群だった
ぼくたちは皮膚と窓と灰の山を混乱させ
なおも神経の樹液と名乗り続ける
心因性の自由意志に対し
精力旺盛な煙突のあいまいな傾斜と鸚鵡のエレジー
毛深いガソリンによるあいまいだが酷くロマン性に溢れた
死体の沈黙を
その解説を
要請した
洞窟が痙攣し自転車に乗った幻想の廊下にともなわれた感情が通過し山岳地帯では奇妙な記念品が見つかったとぼくたちは報告を受ける
おりてくるおりてくるボイラー室では
盛んに通過する濃霧が
報告するのだ
「町と村で祝祭をしているのはなぜか。町と村で」
すえたにおい
切り刻まれた屋根からは甲高い計算式の腕が
無数の腕が青く滲んで来る
時間である
ぼくたちはむきだしにされた傷口から
所有者のない赤黒い
巨大な腫瘍を摘出し霧散する
山岳地帯で
孵化する


摘出された闇の玉
摘出された魚の玉
腹部は牧歌の発生源
そう学んだのは
アオミドロ的呪物の時代だった
ひとびとと抽象をさえぎるものはなく
ひとびとと広場の煙は憎みあわない
「潰れた目は目ではない。それは祝祭。それは。オーオー」
コーラス隊が遺伝子に書かれていない歌い方でうたう
ロミオが裸体で焔の中へ入る俺の全盛期はクラゲ王子だから叫喚があり法廷がありそこには可愛い耳のジュリエットが笑いながら羽毛のない小鳥となって白い汁を撒きながら飛び交う
闇の玉
魚の玉
それらに記憶はありますか
アメリカンロードの夕映え
日のにおいを団扇で攪拌する
「潰れた目が闇に浮く。それは目ではない。それは。オーオー。それは祝祭。それは。オーオー」
地面に落ちた金属の歯を拾い上げ
ヨハンシュトラウスの音楽を懐かしむ
父は縄と凶作が好きだった


優しい虐殺騎馬隊が話してくれたことだけど街では獰猛な陶酔に生えた無数の植物の呼吸器による文章が人々を思慮深い地下室の幻影として積み重ねているようだ
ぼくたちは山岳地帯に
あるいは痙攣する洞窟の内部にいる
豊穣なテラスは偽善的でオーケストラ的である
ただよう花粉とトンボ 
ただよう
ただようレントゲンの動物たち
父祖たちの焔は甘美なる歌にはならない
摘出された巨大な赤黒い腫瘍が
ありとある郵便局にワルツを流すよう指示をする
熱の漂流物
ガラスの咽喉
ぼくたちの家は
小舟に太陽をあつめ
他人の生活を
麦畑から薔薇の死骸に変えた
水中に樽が存在しないように行動の結果は闘争の構成要素にはなりえないそれは付随する金庫におびただしい数のエビを入れてそのエビたちが世界の狂気を活字にするための努力を始める
ヨハンシュトラウスの音楽を懐かしむように
風船の中に閉じ込められた胎児が吐き気をこらえている
ぼくたちは呻き声をだしながら細菌類からコオヒイをしぼりとり飲んでいた
思考に樹液を塗った
優しい虐殺騎馬隊が笑う
心臓部の交配する優しさのような笑いと樹液の効能で朝には無事に死んでいく生命体の歌のような笑いである
角笛はニッケル
ニッケルは気晴らしの死刑台
山岳地帯の上のほうの上のほうへと歩いていく
何の設備もなく包囲された街のほうからは
無数の思慮深い文章の悲しみのない叫び声の反響が溢れていて
ぼくたちはそれを《回想》と名付けた

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 1

 1

永遠

永遠を見つめ続けていても
心は疲れない
目がしばしばしてくるけれど
星の光はとても遠くからやって来る
星の光を見つめ続けているうちに
いつしか思うようになった
この世の永遠というものを
永遠を思い浮かべてみよう
永遠の中で時はやって来る
未来を待ち続けた我々は

涙の意味を理解しようとしている
愛し合うために
涙や汗がある
体がある
愛と生命のどちらが優位か
私たちは哲学をして
根源的意味を知ろうとする
生命の意味を逆にたどれ
愛の意味に従え
それで何かが見えてくる
生命と愛は二重らせん
木の周りをくるくる回って二匹の虎はバターになった
私たちは急ぎ過ぎた虎だった
ずっと追いかけ合って
愛し合う時間を失おうとしていた
教訓を生かさねばならない
私たちは時間をゆっくり旅しよう
永遠の中で見通すものは
空の真理と愛の真理
それゆえに涙が出て
私たちを視野の中で
より一層永遠へと近づける

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 2

 2

隣の芝を、青く。

ボクの隣の席の女の子は、

いつも貧乏で、

みんなそれをわかってるから、

給食をたくさん分けてあげたり、

勉強をたくさん教えてあげたり、

遊びにたくさん誘ってあげたりされているから、

いつも恵まれている。

ボクはその子に、

給食でも食べ過ぎると太ること、

勉強を上手くやる方法、

みんなが知らないゲームを教えてあげた。

そしたらその子はすごくステキな人になって、

少し、友達が減った。

隣の芝は、青くみえる。

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 2

 1

秘密めく

化粧室で
鏡越しの
瞬き
接触
濡れた
リップに
指紋が
二つ
残る
いいわけをしようか
おとな
ふたり
照れた
ピアスを
触ろうか

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 2

 2

140文字の物語/雨

傘もささずに
雨宿り、パブで一杯飲んだら
バッグから本を取り出して広げる。
変わったブックカバーだから
声かけられ、
そこに言葉もなく
泡で唇を濡らす夜もある。
───────
Después de la tempestad viene la calma.

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 0

 3

新天地

この地での私の足跡を消して貰えますか

この地に戻る事は無いから

言葉は薄れゆく記憶の中で木霊し

振り返る事のない後ろ姿が

燃え盛る劫火へと消えゆく

未来を切り開く勇気と犠牲に立ち尽くし

臆病で卑怯な限りに生きぬく

あなたが開拓した新天地で

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 4

 4

レイニーちゃん

子どものときから壊すほうが得意
追いかける足音が階段に響いている
雨の踊り場で私は
傘の露先をツンカツンカ打ちつけながら
近づいてくる途切れとぎれの足音を待った
きみの目を突いたらどうなるのだろう
きみの心を果物のように潰したら?
愛が追ってくるから殺さなくてはと
身体いっぱいかたくなる
団地の廊下はしんとして
遠くで救急車が赤い夜を曲がる
ああ 息荒くけだものが立っている

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 1

 3

感謝

感謝!!

圧倒的感謝!!!!

感謝があれば何でもできる。

元気はあってもなくてもいい。

元気は添えるだけでいい。

元気は左手、感謝は右手。

左手は添えるだけでいい。

感謝を諦めたらそこで試合終了。

スポーツマンシップがお留守で失格だ。

お箸じゃなく、心にはお椀を持っていたい。

ごめんなさいで済めば、警察はいらない。

ありがとうで締めれば、通報もいらない。

頭を下げるということが、

謝罪の断罪なんてものに使われているとは。

何たる愚行だ。反吐が出る。

「ありがとう」

そう言って下げる頭は美しい。

太陽のように明るいから。

きっとまた昇ってくるはずだから。

失敗にめげず立ち上がれ。

落ちぶれたと思うなら昇ってこい。

責めるな、攻めろ。

そうだ、

元気はいらない。

謝罪もいらない。

誠意もいらない。

敬うということは誉めるということだ。

おだてるだなんてポケモンに躾けても

ロクなことにならない。

アルコール臭のしけた悪習だ。

感謝!!

圧倒的感謝!!!!

言葉に出さなくても伝わるもの、

それが感謝。

ありがとう。


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 3

 3

拝啓、中島みゆき様 vol.6 永遠の嘘をついてくれ


この曲は、吉田拓郎に提供した曲なのだけど

 
ある夜、みゆきと拓郎が一緒に吞んでいるときに
拓郎がボソッと、自分はもう昔のような曲は描けない
引退も考えている、とみゆきに弱音を吐いたらしい
普段は他人に対してそんなに容易く弱いところを見せたりしないという拓郎
だけど何故かその夜、みゆきには自分の弱さを正直に打ち明けることが出来たらしい

本人曰く、みゆきの曲を聴くといつも、あんた達何やってんの!と云われているようで
どうもすみませんでした、と正座して謝りながら聴いているのだとか
(まあ、ジョークでしょうが汗)
そして、あまり他人に曲を作ってほしいと頼んだことのない拓郎が
みゆきに曲を依頼した、という経緯がこの曲にはある


みゆきは拓郎の熱狂的なファンで、拓郎がデビューしたころからずっと聴き続けており
ポプコンだか世界歌謡祭だかに出場した際、審査員に拓郎が来ていると知るや
楽屋に凸しまうほどの追っかけだった
みゆきにとって拓郎は、永遠の憧れの存在であり
かつ目指すべき目標のような存在であったわけで
そんな、憧れの存在であり
かつまた目標としていた人が
いま目の前で曲が描けないと弱音を吐いている
この曲はそんな拓郎へみゆきからの、云ってみれば叱咤激励とでもいうのか
そんな弱音なんか聞きたくない
いつまでも憧れの存在のままでいてくれ、という切なる想いが込められた
猛烈なラブコールでもあったのだと思う


2006年のつま恋で、中島みゆきがシークレットゲスト出演してご両人の共演が実現
この時の映像(YouTubeで何度も削除されてはまた投稿されてる)
何度観ても胸が熱くなる
ほぼ誰かのライブに参加することのないみゆきだけに
この共演はレア中のレア、と云っても決して過言ではない
(後に拓郎はラジオでその日のことを、みんな俺を観ないんだよ、
あの白い服着た姐さん≪みゆき≫しか観てない、と嬉しそうに語っていた)


義理堅い拓郎は、みゆきに何度もライブのバックバンドに参加させてほしいと云ったり
夜会にゲスト出演させてほしいと云ったりもしていた
吉田拓郎でダメなら、デビュー前に考えていた芸名の入江剣名義でもいいから、と(笑)
誰にも気づかれずこっそりみゆきのライブで
実際、バックでギターを弾いていたこともあるらしい


ちなみにご両人ともにそれぞれのライブで
拓郎はみゆきの「ファイト!」を
みゆきは拓郎の「唇をかみしめて」をカバーしている
(「ファイト!」がみゆきの曲だと知らないファンの人たちが
てっきり拓郎の曲、と思い込んでいたエピソードもあったり)


拓郎が引退前(といいつつ、現在も活動されてるが)の仕事に選んだのも、
みゆきの「世界が違って見える日」というアルバム中の
「体温」という曲への参加だし
ご両人の、音楽を通しての絶対的な信頼感というか
関係性がなんとも素敵で


ご両人のエピソードで面白いのが、
坂崎幸之助と吉田拓郎のオールナイトニッポンゴールドにみゆきがゲスト出演したとき、
坂崎も拓郎も、瀬尾一三さえもが「悪女」のサビ部分を歌えなかった、というのがあって
  隠しておいた「あ」言葉がほろり~♪
おいた、のあとの「あ」の部分、間の部分が男衆にはどうしても理解できなかったらしく
ややこしいややこしい、と大わらわ(#^^#)
当のみゆき本人は、そうですかねえ、なんていいながら笑っていたけども
拓郎がそのとき、みゆきの曲は同じコード進行でも
符割が変わってるから面白い的なことを云ってたのが
とても印象的


曲のタイトルもいい
 「永遠の嘘をついてくれ」


 ♪いつまでも種明かしをしないでくれ
  人はみな 望む答えだけを
  聞けるまで訊ね続けてしまうものだから


もう、これをラブコールと云わずして
なんと呼ぼう、というね
打ち震えて痺れちゃう(泣)










 100

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 2

 3

批評・論考

じんたま

じんたまとは
分解されること

じんたまとは
次のエネルギーに変える場所

じんたまとは
誰かのことを捨ててしまわないこと

じんたまとは
誰かを捨てないかわりに
自分のガラクタをみつけること

じんたまとは
自分のガラクタを分別すること

じんたまとは
自分の捨てるべきガラクタを
さっさと捨てること




じんたまは
晴れた日も
雨の日も
空を飛び交う

じんたまを
封筒に入れたり
ロッカーに入れたり
しない

じんたまは
強い風にふかれて
ぶつかりあい
どこかへ飛ばされても
さようならをいわない

太陽がしずんだら
それぞれのからだに帰って
その日の空気を確かめ合い
必要ならまた
せんたくする




じんたまの放送が終わったら
もうそれは過去のことになって
人のことは置いといて
自分たちそれぞれで
反省して
泡を立ててみたり
洗い流したり
落ちない汚れは
そのまま乾かしたりして
後になって
簡単に取れていたりする

そして次の土曜日には
きれいな場所で
はじめているようだけど
残っていたものが
繁殖しているのを
喜びながら、また、始まる

 0

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 3

 4

キタキューの詩(うた)

1
「やけえ、やけえ」と職場では九州弁が喧しい。
僕はクルンッと身体を丸めた猫のような心地でいる。
キタキュー(北九州市)に来てからもう2年というのに未だ軽く違和感がある。
40手前のおっさんだから適応に時間がかかってるのか(?)と自嘲する。
でも気分はいまだに中高生、だったりするんだ。


2
故郷は人口15万人ほどの町だけれども、実家は隣の町(もとい村)の近くで山に抱かれていたし、町に出るときも僕は町に入りかけの端っこを選んだ。


3
カーン、カーンと近隣の新築工事の音が甦る。カーン、カーンと弾けるような響きが逆に、纏われていた静寂を際立たせているようだ。


4
だだっ広い住宅街のアパートに一人住んでいた。夢のようにだだっ広くて、遠く県道のコンビニが点、に見える情景はどこか寂しげながら朝にもたそがれることができた。


5
この街(キタキュー)に来てから僕はたそがれたことがあったろうか?皿倉山に登って夜景ならぬ昼景を見つめてみたいのだけど、ロープウェイが怖くて乗れない。


6
杜甫の"月湧いて大江流る"の思い出された、小倉を流れる紫川。中心街を対岸から望めばため息が出た。なんのかんので僕は都会が好きだけれどもと、あの町への名残惜しさの詰まったため息。


7
同じく田舎から出てきた女の子と少し。田舎といっても福岡県内の田舎だけれども、調べてみると故郷の田舎よりも人口が少なくって、僕は妙な同胞意識を抱いたのだった。十字路に集う暴走族の話をおとぎ話のように聞くほどに目前の、若くて胸の大きい彼女のリアリティは増していった。


8
職場では友人ができたし、先輩ともども、毎日のように和気あいあいと昼食をともにしている。

だけれども、黎明のように仄暗かった彼女との昼こそは僕の根っこに繋がっているみたい。

最後に会ったのは、小雨の昼だった。

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 1

 0

しや


わたしは わたしを さましておいで


はいいろの くさはらに 
おおきな かぜがふいている


ほんとうに すぐれたひと は いない

だから 安心して


かぜが 全身をあらい
ひとり たっている


わたしは わたしを さましておいで

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 0

 0

柱時計

幼いころから家にあった
柱時計
長方形の黒い枠
大きな振り子をぶら下げて

引っ越しても
家族と一緒についてきて
柱時計は
時を刻んだ

家族の話声や
テレビの音にかき消されて
眠りについても
一緒だったから
カチコチなるのも気にならない

だから止まったときも
わからなかった

十一時四十一分
針はそこで止まっていた
その時間があっていたのかどうなのか
わからないが止まっていた

時は流れるが
刻まれるのは
生きているときだけ

言葉も
嘆きもなく
カチコチとした音だけが
気づかれずに止まってた

そんな時計が
いろいろなところに
きっとある

だれにも
知られず
気づかれず
静かに止まる針がある

 0

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 1

 0

絆創膏



真一文字に 縦に この腹を裂いた 
大きな傷 小さな傷 傷の上 たくさんの あめが走る 
生まれてきた ばらばら おちた 
朽ちた十字 ひんやりする 

絆創膏を貼り付ける 重なる 指先 
肌の上 わからない プールの朝 健康診断の朝 
ひざまづく 見下ろす 痛くない 
水にとける 風になる 家に帰る ひとりで

夜がくる なでる 
疼かないようにと 治まるまで 
ひとつの寝床 くるまって 見上げる 手を伸ばす 
閉じて開いて 天井を ぐるぐると 仄暗い 光輪を揺らし

痛みますか 癒えましたか 忘れてしまいましたか 
ずっと昔 産声をあげた遠い日 胸に抱く児 
長い針と 短い針 交わり 離れた 
ふたつの巡りの中で


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 2

 2

薄花色の記憶

朝ごはんにおにぎりと豚汁を作る
それを「ああ美味しい」と
食べられることはしあわせなんだと
そう感じられるようになったのは
いつの頃からだったか

カーテンを開け放った窓から空が見える
未熟な自分がさらに未熟であった
10年前のちいさな記憶の風景が
薄花色に染まる雲とともに
窓の向こうをさらさらと流れていった

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 5

 5

吐き出す

遮るものが何もないから
風のよく通る椅子に座って
手帳を一枚一枚開いている
柔らかくて 千切れそうで
そっと 手で水を掬うみたいに
遠ざけてみる

風に飛ばされてゆくほど
美しくもなく
敷石ほど重くもない
いや それは案外
重量級かもしれない 
雀が囁きながら飛ぶ

あれを取ってきてよ
ほら あれ
ちり紙のようなもの
懐紙でもいい
昔の人が胸に入れていたものよ

知らない
風がうるさくなってきたら
椅子を置いて
手帳の中身を覗く時がきた
そこは真っ赤な目の奇人や
涼やかに笑う気触れびと
掬われない水たちの溜まり場

打ち捨てるほど無意味ではなく
棚にしまうほど大切でもない
いや 案外
最後の砦かもしれないよ
またちがう雀が飛んできて言う

風は相変わらずよく通り
蝉のように鳴り
なんだろうか 私は何かを
盛んに吐き出している

 0

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 3

 0

問わず語り/恋愛とはキュンとする、何かである。

 なんだか、暑い。
 今週の日中暑くて朝晩の寒暖差に疲労と噂に聞きますが、現在の室温計は<湿度51%>←!?
 いつも40くらいか、それを下回るのに・・・・・・暑いとムラついちゃうからほんとやめて。昨夜も事後、賢者タイムにならないものですから(ホルモンの抑制機能・男限定)朝までしつこくて、ごめんなさい。昔、久宝留理子さんの「男」という歌があったのを思い出す。

 行く先も言わない/全然いかない
 朝まで帰られない/朝まで終わらない
 気まぐれな癖 このままじゃもう冗談じゃない

 愛していると繰り返し言ってるじゃない
 ふざけないでわがまま過ぎる
 自分勝手で頭にくる

 ────えっ私のこと?(周囲を見て自分なのか確認する仕草)

 ええ、男だからそんなこともあります。
 というわけで今日も男をテーマに、元気にエッセイ書いちゃうよ。

 ・
 ・
 ・
 ・
 ・

 時事ネタと称して取り扱いますが、まずかったら・・・・・・遠慮なくお申し出を、よろしくお願いします。




 ランプレイ:作・北岡伸之

 https://creative-writing-space.com/view/ProductLists/product.php?id=4448



 
 ここのコメントでいつものように打ち返していましたが、エッセイに置き換えます。
 いつになく馴れ馴れしい口調で飛び込むのは、北岡さんのSNSにもリプしてて私の感覚で「慣れている」故に"ああ"なるわけですが、CWSにおける私のスタンスは思ったことを作家に直接できるだけ正直に言う。最初こそ詩の世界観や個人の詩に対する取り組み、やたらとふんわりしている比喩の在り方と読み解きが、マジで全然わからなくて、失礼なことも言いました。
 ある意味で、実直。
 でも、言葉のままに読み取るのは間違いだと言われることも屡々。詩を通して、心の暗い部分や過去から続く根に持つ思考を放つための方法が詩を書くこと。
 文学を雑に扱っているように見えて、よい印象が持てませんでした。
 随分と暗い世界だなぁ、と
 どのようにして理解を示していけばいいのか。学ぶことでしか得られない栄養が必ずある。私は希望をみつけるために現代詩を読んで、実際に詩を書く作家と意見交換をしたこともあった。それぞれが違う惑星の住人で、おそらくクレイジーぶってるだけで、一般社会で常識的に暮らしている普通の人なんだろうな。大勢の中に紛れているマイノリティな存在はきっと少ない。そりゃ私の知るところではないし、もっと尊敬の念を抱かなければいけません。そこで初めて見えて来る詩の世界に、ある人の言葉が解釈という定着をもたらす。

 Xでお馴染みの三島由紀夫さんのポスト

 言葉とは本来、他者に向けて放つものではない。
 内側で膨張し続ける思考が、器を破る前に出口を求めて滲み出るものだ。
 友人がいれば会話で消費できる。いなければ、文字に変換するしかない。
 孤独な者ほど、言語能力が高くなる理由がそこにある。
 対話の相手を持たぬ者は、自分自身と対話し続ける。
 その対話が洗練されるほど、言葉は鋭くなる。
 つまりTwitterで多投稿する者は、友人がいないのではなく、内側に住む対話相手が多すぎるのだ。
 頭部が爆発四散する前に書く。それは弱さではなく、自衛だ。

 自分自身との対話
 書く理由が自衛であること。私はそれまで私が基準で、みんなも同じだと思っていた。だから私は普通だもんねっていう図々しさ、甚だしい。
 アップデートしないと、他人の迷惑になります。年齢と共に老化する自身を振り返ることができないと、人間は、男は、なんかイキり散らかす感じの悪さに事欠かない。40くらいで落ち目を感じつつもまだ若い意識があり、男盛りを迎えた後の60過ぎは、社会経験からめっちゃ言葉がキツくなる。現実的なことばかり言うようになって、よく見せることもできるから柔軟さに裏付けられる意地の悪さが言葉と態度になって表れ、益々需要は落ち込む。定年から先はいつも体の調子が悪くて、整えることがとても難しくなる。ここに来て差がつくのは見た目や年収ではない『どう生きているか』全部に出る。
 心の姿勢と余裕
 言葉、語彙は経験値。そして生活習慣が後期高齢者は長けている(だって老化してるから)とは言いませんけど、あのコメントの中では確かにお年寄りを対象とした話になっておりまして。
 それは読み方も、感じ方も違うでしょうね。70代の恋愛観は刺激よりも、精神的に満たされる成分が多い気がします。

 書き手としての心理

 >まったく予想もつかない読み方されることもある。

 これに関して物語とは読んでそのままであることから、意図してないことを言われるのは読者/相手がそれを狙って言ってるか、自分では書けていると思っていただけで実際は文章内に意識が足りなかった。努力や精密さを書き込めたとしても、どこかに誠実さが足りず想像上の虚構をみせてしまった結果である可能性が考えられます。
 あと、私なんかは「青春恋愛小説」を実際に好んで読むので、青春・・・・・・は見当たるけど恋愛を、濃度として目で捉えることができませんでした。
 だってもうタイトルが、ランプレイ。
 何のプレイだろう。乱交・・・・・・まさかそんな・・・・・・調べたら出て来たワードがヤツメウナギ。これじゃない、違う違うそうじゃないけど、北岡さんといえばご存じ<イワナの民>釣り人で、水の生き物の話は得意。今作もニジマスの話が登場します。そして鹿肉、うなぎ、やっぱりランプレイってそれかよっ!!
 ────で、恋愛はどこら辺にあったのか、もう有無に関係なく物語としては面白いよね。料理の話が好きなのと、つい最近ニジマスを食べたばかりなので親近感。


 終

 了


 恋愛に関しては振り返らずにいよう、それがいい。
 むしろ恋愛がわかんねぇなら俺でもいいだろ、北岡さん。もれなく野郎同士のブロマンスも体験できるぜ。一生に一度くらい男と男でいかがですかとあらぬ方向で決まりを着けようとする私の乙女心/戦慄!貞操の危機はこのくらいにして。(笑)
 コメントの中で話に上がった・・・・・・

 >CWSはもっとコメントが活発につくといいです!

 それは私も思う。
 でも、私が見ている限りその実績を積んでサイトを盛り上げる行為を進んでやろうとする人は今、少ない。
 読者としてではなく批評(価値観や本質を分析して判断する)人もいて、私はいいと思うんだ。自分にそれが向けられたとしても言葉を返していける。知識と経験による言葉の奥行は確かだけど、今は「言葉遣い」を気にする人もいるだろうし、批評家に対する価値観を睨みつける人もどこかにいるはずです。存在自体が気に入らないと会話が成立しない、させる気がないスタンスで誹謗中傷や人格否定に及ぶことの次第になれば、コメントが活発になると巻き込まれる人も出てくる。
 影響されやすい人もいる。
 言えないけど、意見を胸に留める人もいるだろう。
 それって損得勘定で言えば、何の意味もない。闘えばどちらかが勝って、負ける。
 創作は勝ち負けではありません。
 言葉が優れている人が評価される正式な場、だと思ってます。あくまでも私、個人として。
 
 CWSは規約が無いけど、ユーザーの行動と言動に対して運営は厳格だ。これはサイトの特徴といっても過言ではない。

 https://creative-writing-space.com/view/Discussions/discussion.php?id=15

 これを始めて読んだ時、衝撃だったのが
 「作者は不快なコメントを我慢してスルーしなければいけない義務はありません。」この概念を運営が示すのは、WEB小説投稿サイトを利用してきた私にとって初めての経験でした。
 「CWSではコメントは相手のためにやるものと捉えており、だからこそ利他的行為であるコメントに対して、サイト内通貨スペースコインというリワードを準備させていただいております。」これも今までにない方針でありながら、サイトが利用しているとわかる、運営はユーザーを守りたいのだと。

 多くの人は日常のなかで、静かに苦しんでいる。
 平気な振りをしているだけで、誰かの今日がどれだけ重いのか知ることはできない。
 それを言葉にできる
 CWSがあってよかったと声にするユーザーもいる。
 運営がそれを大事にしたいのなら、ここを利用する上で同意しなければ、私の教養は存在しない。知らない、わからないといえば丁寧に教えてくれる人がいた恩がある。たまに言葉が過ぎた時の御守に運営のお知らせを何度も観て、思い出すことを繰り返したい。だから諍いの元になる誰かの暗い心を見た際は、自分の気持ちをまっすぐに伝えています。
 この間も折角の投稿が消されたのは、私のコメントが原因でしょう。
 経緯と事実どうあれ、悪口や嫌味を言われた側が見ていたら、よく思わないよね。言う側には理由があったとしても、行為としての正しさをぼかして比喩にした詩で浮かべるやり方はどうなんだろう。性格悪い。ゲーテの詩集やアポリネールの動物詩、他にも小さな文庫本を愛読してきた私にとって詩は芸術、レスバをするように用いる詩人を見るのはとても心苦しい。
 私が言うのも違うと思うけど、そこはサイトを利用するユーザーとして諦めきれない思いがある。

 いいよね、CWS。
 たのしいよね、CWS。
 
 恋人にはここがみつかっちゃったけど
 私が大事にしているものを、同じように、大事にして見守ってくれることを願っています。/内訳:サイトに迷惑かけたら承知しねぇ。そこから、黙って見てろ。
 
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・

 恋は、雨上がりの虹の向こうに。

 0

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 0

 0

編みもの

ふふ、そう
いま 編んでるの

あなたが
凍えてしまわぬように

歪な世界に
負けないように

あたたかく
ふんわりと
紡がれた
あなたに合った
言葉をさがして

ごめんね

むつかしい編み方は
いたしません
できたらとても
よかったけれど

時にはからまり
ほどいては
ほつれることも
あるでしょう

それでもわたし
やめません

精一杯な背中に いつの日か 
かけてあげたい 
編みものを

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 7

 5

前兆

なんの前兆であろうか
その老人は
土地の用途を苛烈な浜辺へと並べ
これは菫色のあやかしの骨であると
うずまいて
とらわれていく風景を
しきりに歌に詠んでいた

その前兆の
低音の快楽しかない祭りの
波間の余韻に浮かぶ旅館がある

輪が浮かび消える運動の
氷雨の葬列のなかに
座して

学校の先生と百年間チェスをすれば
脳髄は御影石となり
叫び声をあげ
遠くの山のぬかるみで無表情な
近代建築のように爆ぜ
アメーバの王として即位していた

その物語ともいえぬ
捕虜たちの淫猥なる部分の雑踏の
回復することのない
果ての庭のようなもの

まがいの湾をおりるふたつの影があり
ひとつの影が
焔のなかで震える
羊歯の葉を持つ

串に刺された奇態なる香り
それはなんの前兆であろうか
偉大な水銀類が押し寄せて豚を食べ
その豚は
雪のなかで鼓膜の迷路を探索し
帰ったばかりだった

緩慢な眩暈のなかで
風がくりかえし
老人の歌を埋もれさせ
洗い流す
この川べりの同義語は
物狂いの熾火であろうか

その老人の肉体に
貝肉のやわらかさがあらわれる

うずまいて繁殖する風景
風景は

しずまる旅館の
溶けた肉質の
床材の上にひろがる断片
それはなんの前兆であったのだろうか


 0

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 2

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わっか


月のわっかをひっかけて

頭にのっけて笑ってみせた

「あなたの願い、叶えてあげる」

天使になったきみが言う。

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 7

 6

機械史、文字史


眞珠湾われしらねども玉藻なす沖津へしづむ艦艇甲板、水兵

菊形の通信機ゆ宣布さるきれぎれの暗号にありき新高山

こしかたが世をいはば艦橋旗へたれの花こそ散る開戰忌

暗渠へと敵は敵なす背骨つらぬきし死水をながすも伴なし

勝戰と敗戰隔て愛づる母そを鳥のひとみもてわれは見、

覆へる宝石箱つばさもて打つまへに打たる、正当防衛劃して

a America,空港にて死児百余出づるにみな國籍をもたざりし

優生医は堕胎をえらばざるも音波検診の梔子あをむらさきにふくら まず

有機的機械二十一世紀新暦未來アダム「起源の種子」つちかふも

焉にぞ歌を留むる聖靈は電氣的なるfilamentへ 眼瞬く間


茜闇へと死者の織りなせるピアノ馥郁と響きし世はも散花

議事室へと官、軍、臣、つれだち入りき総指揮者たりしおほきみ

軍刀を佩かせよ百のbeltは馬の鞣し革もて縛りける 列

衛士ならばためらはず銃架ならべて授くる死の氷筍の門

紅海悉く乾きつづく曠野へ無銘捕囚碑の石塔へ旧る 字は

Christian 贖へる奇蹟の拠代は無花果の常生らずを憎めり

戰争後遺症 花経る時の衰へてゆかむかは繃帯の縫跡へ置く 末翳

ネオ・ナツィズム起草せし 遅雪ふかき路の敷妙なすしかばねに

八十隈なく燈に冒されて牀上へはらまるる麒麟の焔なすふさばな

世界卵設計すへとめどもあらずは熱風のなかのゆがめる時計



天皇陵よみがへるなき殉葬者三一〇〇〇〇〇 耳朶ふるへる

細骨の組なす玩具飛行せるなかぞらへにんぎやうもろとも散りき

絢なす自動機構の紡績工の死してくりかへす演算子 歴史を

自然言語すなはち散文の雙六の必然たりし氣紛れの秩序ある

Artificial Intelligence,そのたそがれに物思ふ葦の灯をきざすも

戰争をのぞむゆゑわれ代理人の死を冀ふ機械史なりき

被造物たるともひとり松明へほろびつる天文の殻そ出でたし

狩猟機械「人間」へ韻文の諸諸のつづり文字目へと走りき

散文は物語せるその行列の末尾へかならずや柩ありぬ

鳥籠はみづからの禽を探すとも空間の残照の格子 言葉

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用水路

右手「用水路を女が流れてきたんだよ」

左足「信じませんからね」

右手「その女、段々と幼児から」
左足「から?」
右手「おばさんに変わっていったんだ」

左足「あのパーマの?」

右手「でも、詰まらないんだよ」
左足「あの狭い用水路をおばさんが……」

右手「信じられないな」

左足「流しそうめん、やりましたよね」
右手「お盆にだろ」
左足「おばさん流れてたんですよ」

右手「ちっさいおばさん」

左足「……」

右手「ぷるぷるしてたか?」

左足「流しそうめんって、トマトとか
         葡萄とか、子供が悪ふざけで
         ゼリー流したりして。
         ああいうの
         水に濡れると全部つやつやして
         人の頭みたいなんですよね」

右手「お前、昔から変なこと言うな」

左足「詰まらないものですが」

右手「いや、詰まるだろ。うじゃうじゃいたしな」
左足「信じられませんか」
右手「トマトは美味かったよ。冷たいから」
左足「冷たいの、昔から苦手なんです」

右手「そうだっけ」

左足「祖母の家で、
         麦茶のヤカン覗いたことあって。
         夏の昼間で、誰も居間にいなくて
         蝿だけ飛んでたんです。
         冷蔵庫の横に麦茶が置いてあって
         氷がからから鳴ってた。
         喉乾いてたから蓋を開けたら、
         知らないおじさんが
         中からこっちを見上げてたんですよ。
         麦茶の色した顔で、じっと。
         あれから麦茶、おじさんの味なんです」

右手「おばさんじゃないのか」

左足「だから冷たいトマトも、ちょっと似てました」
右手「おばさんに?」

左足「水に濡れて、丸かったから」

右手「なんかお前の髪、べたべたして丸まってないか」

左足「……」

右手「あのおばさんに見えたけどな」
左足「信じませんか?」

右手「流れるうちに、幼児に戻ったんだ」

左足「歯、だけが浮いてるから」

右手「髪がべたべたで、丸まった」

左足「雨がやみましたね」

右手「うじゃうじゃいるかな」

左足「名前は分かりませんけど」

右手「そうめんと一緒にな」

左足「詰まりますか?」

右手「詰まらないだろ、流れてんだよ」

左足「おばさん? それともトマト?」

右手「……全部だろ」

左足「詰まりますね」

右手「うじゃうじゃ」

左足「……」

右手「お前んちの用水路、深かったよな。
         ああいう場所って、
         流れてるのか溜まってるのか
         わからなくなる。
         だから時々、まだあそこ通ってる気が
         するんだよ。葉っぱとか
         トマトとか、おばさんに混じって」

左足「天然の流しそうめん」

右手「水っぽいんだよな」
左足「塩を振り忘れたかな」

右手「雨、まだ降ってる?」

左足「やんでますね」

右手「そうか」

左足「詰まらない話でした」

右手「うん」

左足「……」

右手「ずっと流れてるよな」

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夢と無花果



こんな夢も見て
あんな夢も見た


それは万華鏡のスコープをのぞいているだけなのか
とわたしは気づく
熟れた無花果
「わたしは気づく、熟れたいちじく」
その押韻を
そっと口ずさむ
ハッと
わたしは、普段、自分自身をあらわすとき
「わたしは」と言っていないことに気づく
わたしの中から決定的に失われていた「わたし」
だから


彼女が手紙を書いても、主語が抜け落ちていることに気づいた
それは詩になっている事に気づいた
もう手紙を書く事はやめてしまおうかと考える
大体、この出せない手紙もたまりにたまったし
いつか あわい海へ目を向けつづけるとおいまなざし



彼女はひとねむり その前に自分自身に呟いてみる「おやすみ」
部屋の中 人生なんて暇つぶしに過ぎないのだが
夢を見るんだ


こんな夢を見て
あんな夢も見るんだ


彼女はふと起きだし、パソコンにルーターを
ずっとしまいこんでいたもの
埃を払い
プライドっていうの はらい
それらをデスクの上で「設定」し

 とおき夢つかもうともがく しかしそれもわたしなきまぼろし

かも知れないけれど
下手くそでも良くて じっさい物を書いて 恥をかいてもよろしく
パブリック(もうかたはらいたいっす) へ ただ楽しく
投稿しようと考えた



 雨がふりはじめていた


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青い猫と陽キャの美由

青い猫が神社にいたら、いいと思う
神様がいるとするなら可愛らしい存在であってほしいんだ。

それでね、
薄いうすーい緑の風が、吹きわたるの
サラ、さら、さらら

それはほんのりと冷たい秋の始めの朝のこと。


いま思いついたんだけどねぇ、
境内にハーモニカの音(ね)が響きわたればロマンチックだと思わない?

でもそれは男の子じゃなくって陽キャの女の子が吹いてます。
"わたしだってたそがれたくなる時くらいあるわ(!)"ってちょっとプンスカ、されたりして?

だからわたしは彼女に見つからないよう左端っこの木々のさなかを背をかがめて歩くんだ(笑)
青い猫は拝殿の賽銭箱の上にクルッと身体を丸めて、
哀切なメロディを聴いているのかいないのか(向かって)右斜め下を向いているんだけど、
境内の右上端っこの美由(って名前なんだ)を素通りするかのような下への視線に、
さながら娘に関心の薄い父親のようだとわたしは思う。

わたしがあなたのホントの娘、なんて、わたしはキラッキラの瞳で近づいていきました。
すると猫はスルッと地面に降り立ち砂利がパラリと弾けました。
気づけばハーモニカは止んでいます。
美由は哀しげな目でこちらを見ていたからわたしはビクッとして「美由ちゃん!」と叫んでしまいました。
何かがササッと目の前を通り過ぎていったと思って視線を戻すと、
青い猫は消えていました。

「はあ〜(!)」と美由は大きなため息。
「せっかく、せーっかく、青猫さまに聴いていただいていたのに…」
「じゃあ、こっちを見てたのは?」
「演奏がちょうど終わったから、青猫さまと対話しようと思ってたのよ」
「でも美由ちゃん、なんだか哀しそうだった」
「わたしだって哀しげになる時くらい、あるわよ」 

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amefuri

あめふり 蛙が鳴きます
ひとつひとつに耳を澄ませば
声の違いがわかります
わたしも雨に打たれれば
なお鮮明にわかります

あめふり 水嵩が増せば
流されるだけの草や花
きっとわたしたちも同じです
まよいこんだ鹿が
        たいそう美しく

明日から昨日へ歩いていくあなたと
すれ違うのもここでしょう
あめふり わたしたちも濡れています

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まぶや まぶや

ちゅらさ ちらす ちらさ

笑って 
と三回繰り返した後
泣き出したのは
どっちだったっけ

まぶや まぶや



ちらさん ちゅらー ちらさに

さっきから笑ってるよ
とつぶやいた後
黙ってたのは
どっちだったっけ

まぶや まぶや



ちらさ ちらすん ちゅらー

光に向かい
その手を伸ばすも
明日の自分へ
一歩踏み出すも
すべては心の決めること

まぶや まぶや


もう無理して笑わなくてもいいから

まぶや まぶや



ちらすぬ ちらさん ちゅらー

俯いた顔を持ち上げて空を見上げたのは
どっちだっけ
それから笑いはじめたのは
背を伸ばしたのは
歩きだしたのは
そして
優しく振り返かえるのは
どっちだったっけ

まぶや まぶや


まぶや まぶや

ちゅらさ ちらす ちらさ 

ちらさん ちゅらー ちらさに 

ちらさ ちらすん ちゅらー 

まぶや まぶや

ちらすぬ ちらさん ちゅらー 

やさ

まぶや まぶや





******************
「まぶや まぶや」:まぶい(魂・肝)を抜かれませんように(おまじない)。
「ちゅらさ ちらす ちらさ」:美しさ 散らす つらさ
「ちらさん ちゅらー ちらさに」:つらさも 美しく 散らそうか
「ちらさ ちらすん ちゅらー」:つらさ 散らすも 美しい
「ちらすぬ ちらさん ちゅらー」:散らす つらさも 美しい
* 厳密な沖縄口ではないものもあります。
short https://youtube.com/shorts/O5kQ2J9P9k4?si=O514XkMcb1mWVgIF
full https://youtu.be/cQnRvmdTmlY?si=LrW-Qz6DteK0p1X7

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ライフ イズ ビューティフル

夕暮れ時になると思いだす
冬の岸辺にウミネコ一羽
死んだ魚をついばんでいる



大人しい子供だった
保育園のころ いじわるな女の子に
毎日つねられたりしていたのに
それを口に出して云えない子供だった
同じことをしているのに なぜだか
わたしばかりが怒られる役回りだった 
ちゃんと注意してあげなきゃダメでしょ
と なぜだかいっつも云われる役回りだった


いい子ちゃんだった
漢字や計算ドリルをせっせと解いては
学校で見せびらかしていた
だからみんなやさしかった 最初だけ
最終的には いつも軽く扱われた
ある時 親から貰って嬉しかったものは何かと
担任がクラス全員に答えさせることがあった
わたしの番になり 答えようとしたところ
まるでわたしが見えていないかのようにスルー
次の子の名前を呼んでいた


勉強はキライじゃなかった
小学校のころは算数が好きだった
読書は苦手だった
冒頭部分を読んだだけで
つまらないと断定してしまう子どもだった
いつだったか 遠足のことを書いた作文が
市の機関紙に載ったことがあった
あんなもののどこがよかったのか 今もって不思議だけれど
誰かに褒めてもらったことなんてなかったので
自分の書いた文章をほめてもらえたことが嬉しかった
このときの出来事がなければ 
わたしはいま 描くことをしていなかったと思う


運動はまったくもってダメダメだった
逆上がりもできないし 走るのも遅い
ドリブルもできないし 自転車にも乗れなかった
校庭に M字の形をしたアスレチックみたいな遊具があり
他の子たちは すいすいと登って降りてができるのに
わたしだけ どうしても山を越えることができない
何度か練習したりもしたけど ダメだった
運動は向いていないと ハッキリわかってしまった瞬間だった


早く大人になりたかった
早く大人になって ひとりで生活できるようになりたかった
親からも兄からも早く離れたかった
自分だけの居場所がほしかった
誰の機嫌に怯えることなく呼吸できる場所が
夢という夢なんて 何ひとつ持ち合わせてはいなかったけれど
それだけが唯一 わたしの中では
夢と呼べるものだった


太宰治にハマった 
小説を 表紙が破れるほど読み返した
完全自殺マニュアルという
当時流行っていた本も
何べんも何べんも繰り返し繰り返し 読み返した
死にたかった というより
跡形もなく消えてしまいたかった


いくつかの出会いがあった 
一緒にいるときはみんないい人だった
だけど別れる時は 何故かみんな怒っていた
彼らが何故怒っているのか わたしにはわからなかった
わからないから怒っていたのかもしれない



          夕暮れ時 長い長い影法師が
          いつまでもわたしのあとをくっついてくる
          わたしはなんだか侘しくなって淋しくなって 
          思いっきりその影を踏んづけてみたけど
          影はうんともすんとも云わず
          なおもわたしのあとをくっついてくる



死に方ばかり検索エンジンに入力しては
いのちのSOSに電話をかけまくってる夜


ただいま大変混み合っております
しばらくしてからもう一度おかけ直しください
ツー ツー ツー ツー



『カミソリは痛い
 水は冷たい
薬は苦い
銃は違法
縄は切れる
ガスは臭い
 生きてる方がマシ』


17歳のカルテって映画で
そういえばアンジェリーナジョリーが
そんなセリフを云っていたっけ



ブツ切りにされた回線は
今夜もどこにもつながらずに
行き場を探して
ぶらんぶらんと揺れている








夕暮れ時になると思いだす
冬の岸辺にウミネコ一羽
死んだ魚をついばんでいる




死んだ魚を
ついばんでいる






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芦田愛菜は間違ってはいなかった


好きなもののことをかんがえるの
きらいなもののことをかんがえちゃだめなの


Motherってドラマで芦田愛菜が云ってたの思い出したから
あたしもまねっこして 好きなもののはなしをするね




中島みゆきが好き
エレファントカシマシが好き
amazarashiが好き


中原淳一の描く絵が好き
高畠華宵の描く絵が好き
亜土ちゃん大好き ムーミン大好き
あたしの中でベルばらとあしたのジョーは
永久不滅のアニメ


太宰が好きだし 安吾が好きだし
寺山が好きだ
いつか 太宰の小説「津軽」を手に
ゆっくり青森を旅してみたい


不二家のネクターピーチ
製氷機で凍らせて 炭酸水で割って飲むの
原液カルピスで作った ちょっと濃い目のカルピス
グレープジュース オレンジジュース
キウイソーダ カゴメの野菜ジュース 
ジャワティ ジャスミンティ 抹茶入り緑茶 ほうじ茶
フレーバーティ レモンティ 
喫茶店のクリームソーダ 砂糖漬けの真っ赤なチェリー
ケチャップたっぷりナポリタン


真夏に食べるアイス
サクレ パピコ スイカバー アイスの実
チョコミント ガリガリ君 メロンの容器がかわいいメロンシャーベット
ふわっふわのかき氷
真冬に 暖房ガンガンにして食べるアイスも良き
この世で一番好きな食べ物 桃
キンキンに冷やしたスイカ
ぶどうにバナナ 梨にたねなし柿
イチゴにみかんにキウイにパイナップル
いよかんにグレープフルーツ


氷水に浮かべたそうめん ピンクと緑の麺がかわいい
茹でたてのとうもろこし
梅とオクラと鰹節をたたいたのを
熱々のごはんにのっけて食べる
すりおろした山芋
刻んだのも好き
納豆のビニールがうまくはがせたとき
豆腐のふた開けたとき 中の水が飛び散ってこないとき


自分のために作ったごはん
茄子とピーマンのバター醤油炒め 味噌炒め
ほうれん草とベーコンのクリームパスタ
野菜とチキンのトマト煮
トマトスープ コンソメスープ クリームスープ
パスタにかけても良し トーストを浸して食べるも良し
ごはんを入れてリゾットにしても良し
カレーにシチュー グラタン
肉じゃが さつまいもの煮っころがし
もやしキャベツ野菜たっぷり 具だくさん焼きそば
お味噌汁の具は冷蔵庫にあるものでちゃちゃっとね
そうそう 時々はお酒も呑んだりもするのよ
年に数回 たまらなく呑みたくなるときがあって
その時だけ ほんのちょこっと
ちょこっとね


犬猫動画観てほっこりしてるとき
Manyuちゃんって豆柴 美犬でおとなしくてとってもお利口さん
猫のレモンさんと犬のポテチ
ゴールデンレトリバーのコロッケくん


お笑いが好き 子どもの頃から好き
ウンナン 爆笑問題 さまぁ~ず
東京03 バカリズム マツモトクラブ


サブスクで 昔好きだったドラマが配信されていたとき
観たかった映画が配信されていたとき
面白そうと思って観たら 案外そうでもなかったとき


寒い冬 はぁ~って吐いた息が白いのを確認するとき
雨が降った日 窓を伝うしずくをみているとき
アスファルトの上ではしゃいでる雨粒たち
傘にあたる雨の音
長靴履いて水たまり歩くこと
ひととすれ違うとき ちょっと傘を傾け合うこと


気負わず付き合ってくれる友だち
地図を読むのが苦手なあたしに代わって
いつも道を調べてくれたり
お茶しようと入ったドトールとかで
空いてる席があるか 見てきてくれたり
さりげなくいつも気遣ってくれて
そういうことがごくごく自然に出来る友だちを
あたしは心からスゴイと感じている


みゆきやエレカシやamazarashiや
尾崎やRCや
森田童子や山崎ハコや浅川マキ
岡林信康に吉田拓郎に井上陽水
ジャニスジョプリン
なにをするにも音楽
かけていないと落ち着かない


描くということに出会えたこと
詩という表現方法があることを知れたこと
パソコンやスマホといった文明の利器
投稿サイト
素晴らしい詩人たち
あたしの詩を否定しなかった人たち
あたたかく迎えてくれた人たち
あたしの詩に まったく無関心だった人たち
眉をひそめて嫌悪していた人たち
詩の描き方をうっかり忘れかけていたのに
もう一度あたしに思い出させてくれた想い




夕焼け空が 泣きたくなるくらいキレイなこと
部屋の窓から見上げると 静かに青く照らす月明かり
クスリは忘れず 同じ時間にちゃんと飲んで
今日も同じ時間に眠くなること
同じ時間に目が覚めること


エレカシのライブ
みゆきの夜会やコンサート
また行けるかな
行けたらいいな


もっと本格的に冬が来て 身を切るほど寒くなったら
海見に行きたい
凪のような穏やかな海でなく
荒波高く どこか淋しい冬の海を
始発電車に乗ってさ




誰の心にも引っかからない
読んだ先から忘れられてしまうような
そんな詩を描くくらいならば
せめて引っ掻きキズくらいは残せるような
そんな詩が描きたいものだ




好きなもののことをかんがえるの
きらいなもののことをかんがえちゃだめなの


愛菜ちゃん どうだったかな
ちゃんと好きなもののこと
かんがえられていただろか
でなきゃ あの頃まだ5歳だった愛菜ちゃんに
思いっきり叱られちゃうかもね


マヨネーズの最後 無理くり絞り出すみたいにしなきゃ
出てこないんじゃないかって思ったけど
案外多いじゃん



これらに支えられて
きっとあたしは
生きている
生きていけるはず




だいじだいじ





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ランプレイ

ランプレイ   北岡伸之

 ハイウェイ101は、かつて西海岸を縦断する幹線だった。今はインターステート5にその役を奪われ、沿線の港町は時代の外縁に取り残されている。その港町の入り江の奥へ、自分は向かった。シアトルの大学で新入生向けの夏の集中コースの仕事を終え、先に帰省していたガールフレンドを追って、オレゴン州沿岸の小さな町へ車を走らせた。シアトルには居場所がなく、彼女の故郷が唯一の居場所だったのだ。
小山の中腹にある彼女の実家の庭には、古びた車が何台も錆びついたまま放置されていた。ペンキの剥げた厚い木の板を貼り重ねたような家は、いつものように鍵がかかっていない。中に入ると奥から物音がした。妹のコートニーの部屋だ。ノックして妹の部屋に踏み込むと、裸の男女がベッドに横たわり、天井を見上げていた。代謝のいい若者特有の、学校のロッカーの臭いが部屋に充満していたが、コートニーの白い肌は透き通るように色が抜け、腕には紅色丘疹が線状に並んでいた。ベッドバグだろう。隣の小柄なヒスパニック系の男の瞳孔は散大している。
「やあ、コートニー。お姉ちゃんいるかい?」
彼女はヘーゼルナッツ色の瞳をひらき、自分を見て、ベッドサイドに散らばったものを見て、また自分を見た。何かを言いかけ、何かを考え、また自分を見る。それを短い時間に五回ほど繰り返した。これはどうもあの青臭い朗らかなものではない。CNS stimulants(ルビ 興奮剤)か。まったく、なんというものを。コートニーの、まだハイスクールを出たばかりの娘の表情は、恐怖に支配された。
「シン、おねがい、おねがい、おねがいだからお姉ちゃんにはいわないで! これはなんでもないの、なんでもないのだから」
青年は、取り乱すコートニーにまったく関心がないようだった。胸だけがものすごい速度で上下している。ベッドサイドの机には、小指の先ほどの、どす黒い粘液で覆われたガラスのパイプ、無数のビニール袋、フォーティーと呼ばれるモルトリカーの瓶が転がっていた。一ドルで買える酩酊。
「なあ、コートニー。酒なら買ってきてやるから、それはやるなよ」
「お姉ちゃんにいわないでくれる?」
「うん、いわないよ。フォーティーじゃなくて、オークリーフを買ってやる。だからそれはやるな」
コートニーはこくっと頷く。小学校の生徒みたいに。射的や小動物の屋台をやってフェスティバルに出ることを生業としているブリトニーの両親は、いつものように家をあけているようだった。
 
 勝手知ったる居間で休む。かすかに空冷エンジンのやかましい音が聞こえてきた。デレクの車だ。ポートランドの日本文化フェスタで知り合ったガールフレンドのブリトニーは、いつも幼馴染のデレクの車に乗って二十マイル先の港町まで買い物にいく。デレクは、ブリトニーの3つ上で、TVゲーム(この国ではビデオゲームという)が大好きな自称銃砲工だ。
やかましい音がすぐ近くまできて、小型で格子柄のシャツを着た白人の若い男が家の中に入ってきた。デレクは言う。
「おいこのダーカー、お前またフォントノー家の娘の純潔を奪いにきたのかよ」
この乱雑な一言に、黒尽くめのゴシックロリータの格好をしたガールフレンドのブリトニーが口を開いて、くわっと威嚇するそぶりをみせる。デレクは次の口汚い言葉をひっこめたが、自分は同じような調子でデレクに言った。
「ようデレク、ニーファイ人の子孫。熱い杖を創造する男」
デレクはニヤニヤわらって頷いた。そして言った。
「シン、アリサカライフルの弾に火薬をつめておいてやったぞ。こんどまた撃ちにいこう。だがなんでお前の国は、6.5ミリなんて中途半端なサイズの弾を使ったんだ?」
「資材節約のためさ。だからお前らとの戦争に負けたんだよ。タイプ99はようやく7.7ミリ弾を使うようになったけどな」
そして自分たちは銃器の話にのめりこむ。このあたりの男たちは銃火器が大好きだから、デレクは腕よりも仕事のはやいガンスミス(ルビ 銃砲工)としてそれなりに仕事がある。でもデレクは金が入ると港町に行ってすぐ使ってしまう。
ブリトニーは少しあきれたように、ビニール袋につめられた肉を持ってキッチンに向かいながら自分に教師のような声で告げた。
「デレクが鹿を持ってきてくれたの。ベリーのソースを添えたいからちょっと採ってきてくれる。あと、庭のローズマリーも何枝か」
自分は裏山にいってくると彼女に言って、コートニーの部屋に半歩入って目配せした。ブリトニーより大柄のコートニーはまだのびている彼氏を横目に起き上がって、ベッドサイトの机の上をきれいにした。そして彼氏と港町のタコス屋に行くといって、家を出た。
ブリトニーの家は小山の中腹にある。山と言っても小さな木と灌木、そしてベリーのツタが生い茂っている丘のようなものだ。彼女がベリーといったのは、ブラックベリーといわれる濃い紫の木苺のようなもので、日当たりのよいところの酸味と甘味のバランスのいいものを選んで自分は実を集めた。

 食卓には鹿肉が並ぶ。デレクが撃った鹿をローズマリーの枝をのせてローストしたもの。鹿肉はピンク色で、それにかけられたベリーの紫色のソースが鮮やかだ。
「大学はどうなんだ?シェイクスピアとかを習うのか?」
デレクが興味いっぱいという顔でブリトニーに尋ねる
「ううん、それは高校でやったでしょ。あなた覚えてないの? シェイクスピアよりもう少し古い話よ。ホメーロスとか、そういうの。でも私の興味があるのは日本のゲンジモノガタリで」
デレクは目を丸くして、ナイフとフォークを卓上に置いた。そしてつぶやく。
「俺はミセス・ハロルドのイングリッシュのことは記憶にねえ。しかしすげえな。このあたりで本物の神話を習ったやつなんかいねえぞ。だいたいが、ニーファイ人がどうしたとか、部族の王の首をはねたとか、そういう血なまぐさいのだ」
「でも集落にはちゃんとした教会あるじゃないか。そこで君らの民の物語を教わるんだろ。約束の地がどこにあるかとか。前に自分がブリトニーに自分の携帯番号だって嘘ついたコミュニティチャーチ」
ブリトニーはわりと本気で自分をつねった。
「あそこの牧師はまえからおかしかったが、最近もっとおかしくなってね、お前が行けば、有色人種は業火で焼かれるって本気でいいだすね」
「この時代にか?」
「ああこの時代に」
デレクは真顔で言った。鹿肉にそえられたベリーのソースは、甘みよりも酸味が勝った味で、厚く切られた鹿肉がいくらでも食べられる。
デレクはブリトニーをほめた。高校で先生の間違いを指摘することもざらだった才女で集落の誇りだと。上院議員の推薦をもらって、ウエストポイント陸軍士官学校にいくことだってできたのではないかとからかう。そして付け加えた。
「なのに、こんな呪われた有色人種と関わりをもっちまって」
「なあ、デレクお前ほんとそういう言葉普通に出るよな。その高校、白人と有色人種でトイレが違ったのか?」
それはない、とブリトニーとデレクが同時に声をだした。さすがにそれは違法である。だけど、廃業した映画館には、今も有色人種用の入口の表示が残っているかもしれないと、ブリトニーは真顔でいった。つねられたところが本当に痛い。ゴシックロリータの服を着ているくせに、彼女の腕は筋肉がしっかりついている。デレク愛用の44マグナムの、自分の細い腕をもっていくような反動も、彼女の腕はしっかり受け止める。
「しかし、シンも変わっているよなあ、なんでこんなところにわざわざ好んで来る?」
デレクは好奇心いっぱいの小熊のように自分の目を覗き込んで聞いた。
「都会のリベラルなやつらは、差別はいけないとかいってるくせに、内心では俺たち黄色人種のことをカインの末裔だとかマジで思っていやがるからな。だから俺はここが好き。ここに来ると自分の居場所があると思えるよ」
ブリトニーは頷いた。そして目を輝かせて、これを聞けといって彼女の物語を時代がかった調子ではじめた。

 ”Once Upon a Time…
町の者どもは、みなジャック・ラッセル・テリアを飼うておりました。その犬どもは、飼い主たちよりもずっと血が濃うございました。週末になると、高校の生徒たちはオーチャーズ(果樹園)へ罷り出て、裸になって水に入りますの。私めも誘われました。されど、あの御方たちの裸だけは、身罷るとも見とうございませんでした。店は五つに閉まります。公園のほとりには、大きな池がございました。魚は数多く棲んでおりました。されど、いずれも養殖場より運ばれてきたニジマスにて、味はよくございませんでした。それを釣るのが、みなの慰みでございますの。
あるとき、友人たちと、出会いのネット掲示板にて町の保安官の写影を見つけましたの。彼は素っ裸にて、ただ股間のみをカウボーイハットにて隠しておりました。私どもはそれを摺りて、町じゅうに貼ってやりました。保安官はいたく恥じ入り、別の町へ去っていきました。高校には廊下が一筋しかございませんでした。師たちは、たいてい二つか三つの科目を受け持っておりました。私めの代数の師は、スペイン語の師でもございましたの。

 デレクは大笑いをした。彼もその高校の生徒であり、裸になって果樹園で水に入り、保安官の恥ずかしい写真を町じゅうに貼ったのだろう。そして、だいたいの男女がその果樹園で出会った相手と結ばれるのだと、デレクは付け加えた。
「それでますます血が濃くなるのよ」
しれっとブリトニーが付け加えた。デレクが頷く。筋骨隆々とした男女が果樹園で裸になるのだろうか、それとも高校生のうちから、腹の出た保安官のような体なのか。迷ったが質問はしなかった。そして自分は歌を返した。

 ”Near Yokota Air Base…
 日曜日になると、われわれは川へ行く。
 米軍のために作られた慰安施設。国際ニジマス釣り場。区切られた水に、養殖場から来た虹鱒が泳いでいる。鰭の擦り切れた、義務を心得た魚たちが。彼らは出来合いの毛鉤に律儀に食いつく。郊外の丘を埋める小箱の領主たちが、ニジマスを釣りイギリスの古典釣り文学を諳んじる。
 Study to be quiet。静かに生きることを学べ。
月曜日、小箱の領主の息子や娘たちは毎日電車に押し込まれ、舌の下にはベンゾジアゼピン。扉が開くと兵隊蟻のようにホームを進む。川には、もう魚がいない。暗渠の中を鯉が鈍く動いているだけだ。日曜日になると、昔を思い出すために虹鱒の川へ行く。ピカピカのキャンプ道具を小さな車に詰め込む。高価な値札が愛の深さであり、男らしさであると女たちは信じているようだった。小箱の娘の腹はニジマスの腹のように白かった。
基地の米兵はもうニジマス釣りになど来やしない。フェンスの内側にこもってる。軍医の薬で魂の痛みは感じない。俺はずっと鎮圧されている。”

 ブリトニーもデレクも笑った。
「シンの街も、たいがい変ね。アジアはどこでも小箱が丘に並ぶの?」
「日本にもあのろくでなしのニジマスがいるのかよ」
デレクは痛快だという表情で自分にハイタッチをせがむ。
「そうだ、だいぶ昔に導入されたんだな。カリフォルニアのを入れたと思う」
「ここいらも、あのろくでなしのニジマスばっかりだ、のっぺりとした面をしやがってどんなに大きくなっても顎がしゃくれねえ。幼いままだ」
デレクはいまいましそうにつぶやいた。そして、少し驚いたような表情を浮かべて訊いた。
「そういやお前、日本人なのにどうして英語喋るんだ? どこで覚えた?ずっと気にしたことはなかったが」
自分はまっすぐデレクを見て言った。
「その米軍基地の放送聞いてたんだ。日曜になると、カントリーウエスタンのカウントダウンをやる。俺の犬が死んだ、兄貴は戦争に行った、でも俺達は強く生きていく、ララ・ラララ~。そういう歌が何十曲も流れて、毎週ランキングが入れ替わる」
ブリトニーは手の平を大きくひろげて詰る。
「ちょっと、そういう歌は、私にとっては侮辱された気分なんだけど。アメリカ人がみんなそうだって、あなた思ったの?」
「そんなことはないけど、でもデレクと話していると、ようやくアメリカ人に会えたという気はするよ」
デレクは大きく頷いた。そうだ、といわんばかり。そして台所にいって、冷蔵庫からモルトリカーをとってきた。ここでもフォーティー。
「じゃあ俺が、犬が死んで兄貴が戦争に行くようなのじゃねえ、本物のカントリー・ウエスタンを教えてやらあ」
デレクは物語をはじめた。

 ”おれたちの前に、この谷にはほかの民がいた。トゥトゥニ族。アッパー・コキール族。アサバスカンの民。川から川へ。ローグからチェトコ。コキールから海。水の曲がり角すべてを知っていた。その道の一部がハイウェイ101になった。俺が高校生のころ、友達の車でポートランドへ走った道だ。彼らは暮らしを置いていった。何千年もかけて作った暮らしを。歩け。振り返るな。それが命令だった。だが夜のうちに山を越え、川へ戻った者もいた。川は彼らを覚えていた。
シビル・ウォーが終わって七度目の春、七十人ばかりの男と女と子どもがノースカロライナとテネシーから鉄道で来た。カリフォルニアを経てオレゴンへ。自分たちをカロライナ・カンパニーと呼んだ。傷はまだ癒えていなかった。だから逃げた。西へ。ある男は土曜日に式を挙げ、日曜の朝にはもう走り出していた。選んだのは一番人里離れた谷だった。四方を山に囲まれた隠れ場所だった。川がくれるものの豊かさに喜んだ。
ランプレイウナギ。トゥトゥニ族が一万年燻して干してきた魚。英国の王が酒と香辛料で煮てパイにした魚。大西洋を渡り、大陸を横切り、再びここコキール川の岸に姿を現した魚。大きくて、うまい。ばあちゃんはそのパイの作り方を先祖から聞いて知っている。ランプレイはケネディが大統領だったころの十分の一しか残っていない。ダム。伐採。そして下流のやつらが害魚としてゴミのように扱った。吸盤の口が嫌われた。”

 「いい抒情詩だけど、でもこれあなたが作ったんではないしょ?」
ブリトニーに指摘をされて、デレクは照れ笑いをうかべる。鼻の頭が真っ赤だ。
「そうなんだ、叔父貴がコミュニティカレッジの英語のクラスで披露したやつをちょっと俺が改変したんだ。男はこういう物語を知らないとならないだろ」
デレクは立ち上がって、フォーティーの瓶をとってそのまま飲んだ。大きな熊のイラストが書いてある瓶。その粗雑な動作と、その壮大な物語の語り口は、不思議と一致しているように自分には思えた。そのとき、ブリトニーのフォントノーという姓名は、南部由来かもしれないと初めて思った。
ブリトニーは、トゥトゥニ族を追いやったときのことを詳しく語り始めた。
「連邦の役人が数百人を故郷から引き剥がし、北へ歩かせた。ここから数百マイル来たの、彼らが見たこともない居留地へ向けて。三十三日間歩き、八人が死んだ。八人の赤ん坊が産まれた。連邦の役人は日誌にこう書いた。出発時と同じ数で到着した、と」
「そうだ、それが正確な歴史だ。俺達は彼らの土地にいる。ブリトニー、本当に先生みたいだなあ」
デレクが感嘆をもらした。
「彼女は日本のアニメをみるときも、監督の名前から作画スタッフの名前、全部おぼえているしね」
自分がそういうと、ブリトニーは抗議するように唇をつきだした。デレクはにやっと笑って、白人たちはランプレイをゴミのようなウナギと嫌って駆除したが、ここの人間は春に海からのぼってくるランプレイを手づかみにして、とって食べるのだと誇らしげに語った。それはどういうウナギ?自分が聞くと、ブリトニーが学術用語を無造作に使い説明する。
Anadromousなの。顎を持たない古い脊椎動物、無顎類よ。吸盤みたいな口で石に付き、流れに逆らってのぼるの。ブリトニーの説明にデレクは首をかしげる。そういうむずかしい言葉、シンはわからないだろ。自分は指をふった。Anaという接頭辞は、上へという意味だろ。そしてdromousはギリシャ語では、と言ったところでデレクは叫ぶ。おい、シン、お前もオタクなのか、ブリトニーと同じオタクなのか。自分は弁明する。外国人はこうやらないと、言葉をおぼえられないんだよ。デレクはわかったような、わからないような顔をした。

 食事が終わり、デレクは、春に俺がとったランプレイを燻しておいたやつがある。水で戻して、ばあちゃんにパイにしてもらおう、明日、来いよと自分とブリトニーにつぶやいた。ブリトニーはあれはくさくて食えたものではない、それに公には禁漁なのだと笑いながら、まんざらでもない顔だった。そして自分はブリトニーの部屋に泊まった。木目の浮き出た立派な板で出来た部屋。相当古い。ペンキが何層にも塗られているのがわかった。14インチのテレビの中では、ブリトニーのお気に入りの日本のアニメ。
自分はベッドに腰掛けて、一緒に彼女とAKIRAをみた。甘酸っぱい腋臭がかすかにする。近未来の大東京帝国に、異能の力を持った少年が現れ、軍隊と不良少年と政治家と宗教が、その力のまわりに集まってくる。ブリトニーは、それを神話のようにとらえた。AKIRAが終わって、ブリトニーは、自分の土地の物語をせがむ。困ったことに、何も思い浮かばない。苦しまぎれに平将門の話をした。西の朝廷に反旗をひるがえし、天皇になろうとした男。その男が駆け巡った戦場、呪われた丘、その丘には今、小箱がぎっしり並ぶ。天皇に反逆した男にかかわる土地なので、神をまつることを許されない。地名がない。だから便宜的に、さくら町、なんとか台、そういう地名がついて、神殿のない丘に、小箱が埋め尽くすのだと自分は語った。
ブリトニーは感に堪えないという顔をする。自分はありもしない郷土の話をするのに耐えられなくなって、禁じられた彼女の名前を呼ぶ。
「Buu」
赤ちゃん語だからと、彼女は人前では決してこの名を呼ばせない。彼女は自分の頭を撫でて聞く。黄泉の国というイメージはあなたにはあるのか? 自分はこたえる。ああ、あるよ。彼女はささやく。死の谷の陰を行く、私たちはそういうイメージを聖書から刷り込まれている。でもそれは私のものではない。あなたは持っている、だから大丈夫よ。そして、死から生へと意識が向く。彼女の手はびっちり汗をかいていた。甘酸っぱいにおいに、革のにおいが交じる。部屋の古い板がずっと目の前にあったように思えた。ぎゅっと手をつなぐ。
そのときに窓枠から何かが堕ちる音がした。ブリトニーが金切り声をあげる。自分はすぐ正体がわかった。コートニーとその彼氏がのぞいていたのだ。恩を仇でかえすとは!自分もブリトニーと同じように、闇に消えた二人を汚い言葉で罵った。
悪戯者たちは消えたというのに、殆どの化学反応というのは不可逆的だからどうにもならない。自分とブリトニーは朝まで清い関係でいることに決めた。日本のアニメをみた。次に見たのは『オネアミスの翼』だった。別の世界の、まだ宇宙へ行ったことのない王国で、落ちこぼれの青年たちがロケットを飛ばそうとする話だ。主人公は宇宙に上がり、地上へ向けて、祈りのような声を送る。届くかどうかもわからない無線で、人類がここまで来たことに感謝してほしい、と言う。
デレクは自分をダーカーと呼ぶ。しかし自分は、彼女の神話の国からきた男なのだ。窓の外がかすかに色彩を取り戻してきたとき、ふたりとも少しまどろんだ。そして朝、自分は内側から力が湧いてくるのを感じる。不思議な力がこの地には、いや彼女にはあると思う。神話を持つ一族。

 翌朝、自分はブリトニーと川へ向かった。デレクは朝からばあちゃんの手伝いをしているようだった。このあたりの川は、河口から続く入り江のような地形が終わって、山間に入る前の沢と川の中間のような流れだが、一車線の田舎道はすぐに舗装がなくなって山間にはいった。立派な針葉樹が生い茂る森は、たしかに源流にふさわしいと感じる。日本の貧相なスギでいっぱいの山とは違う。ブリトニーは間違えたといっては大判の紙の地図を見る。何回も自分は車を狭い道で転回させた。あちこちに穴だらけになった標識がたっている。ようやく目的地に車を停めて自分たちは流れにむかって緩い斜面をおりていった。

「このへんはまだ森が新しい。もう少し奥にオールドグロース(ルビ 原生林)がある」
「オールドグロースって?」
「人間が伐採する前の、昔の森」
ブリトニーはどんどん上流へ向かう。ダグラス・ファーの、下にシダが生い茂る森の中を我々は進んでいった。やがて目の前はひらけて、数十メートル四方の大きな淵が目の前にひろがった。水は足もとの茶色の石の影響なのか、やや濁って見えた。無言で仕掛けを結んで、小魚を模したルアーを投げると、竿が大きく曲がり、底に潜っていくような断続的な重い引きを感じる。ドラグを緩めて、竿をたてた。鈴の音のような金属音がして、糸が出ていくのがわかる。
「丁寧に、水面にあげて空気を吸わせて」
ブリトニーは魚の弱らせ方を熟知していた。やがて水面に浮いてきたのは、銀色の丸々肥えた魚。黒い点はほとんどなく、かすかに小判のような紋様が見えた。手元に寄せる。大きさは1フィート半はあるだろう。
「これは違う、ジャックよ。サーモンだから味はいい」
ブリトニーはそういうと、川原で跳ねて暴れている細い丸太くらいの魚の頭を木の棒で殴りつけた。魚は痙攣してまっすぐになった。自分は腹を割いて内蔵を出し、椎骨沿いの血合いを爪でこそいできれいにして、肩がけのカバンのような魚籠に魚をおさめた。ずっしり重く、紐が肩に食い込んだ。さらに上流へと彼女と進むと、岩が段々に連なる場所に来た。左右の木々は同じ針葉樹だが、今までよりも太く見える。遅れて岩をはいあがってきた自分に彼女は告げた。ここが、そう。
沢筋の、ほんの一帯、そう数百メートルくらいの一帯だけ、巨大な針葉樹のほかに、楓の巨木が、手のひらほどはあろうかという緑の葉を揺らしている。自分は、アメリカで初めて、楓が沢に寄り添っているのを見た。東部やカナダの木だと思っていた広葉樹が、オレゴンの湿った谷にも生えているとは。
さらに上に行く。流れはどんどん細くなり、しまいには、助走をつければ飛び越えられそうな幅になった。黒い影が横切る。流れ込みにルアーを落とすと、二十センチほどの魚が、全身をぐねらせて上がってきた。手元に寄せると、喉元に赤い筋が深く入っている。喉が切れているように見えた。胴からヒレまで、黒点がびっしり入っている。
「これ。これがカットスロートだわ」
 「なんて小さいんだ。これは海に降りないの?」
 「降りるものもいる。でも、この沢のは降りない。ここに残るの」
 「さっき釣ったジャックは、チヌークサーモンなんだろう?」
 「そう。でも、川に残ったまま早く成熟する雄もいる。大きなサーモンが戻ってきて産卵しているときに、影からそっと入って、放つの」
ブリトニーは淡々とジャックの戦略を語った。小さな雄の生存戦略は、たしかによくできていた。
 そのとき、自分は彼女から火薬と革のにおいが立ちのぼるのを感じた。征服者の娘。そして自分はスキをうかがう狡いダーカー。反射的に彼女の体をぐっとつかむ。
「陰から放たれるのを待っていたの?」
ブリトニーは少し驚き、すぐに怒気を含んだ声で言った。
 「シン、これは魚の話をしただけ。人間の mating の話じゃない」
いつもの少しずれた論理性がおかしかった。目をみつめあう。火薬と革のにおいはもうなかった。針葉樹とは違う甘い空気があたりを包む。われわれの間に化学反応がまた起きた。川はすぐそばで流れていたが、音は大きくなかった。床にはレディーファーンが茂っていた。
 「シダをつぶさないで」
ブリトニーはそれだけを言葉にした。彼女の沢で、自分は彼女を改めて知った。流れの湧き出す源を。 だが彼女は、このカットスロートは、自分の魚ではないといった。彼女に自分は本当のことをはじめて明かした。
「俺には泉がない、あっても枯れてしまった」
ブリトニーは何も言わないで自分を抱き寄せて、膝枕をした。
「私もない。大学にいき、あの池でニジマスを釣る人生とは違う方向に進んだ筈だった。でもこの先何をしたいかまったくわからない。ねえ、シアトルはどんな具合?」
「金はうんとある。でも偽善者でいっぱいだ。たぶん、自分の住むところではないと思う」
しばらく時間が流れた。シダは柔らかかった。
「ここを、われわれの場所にできないかな」
彼女は驚いて自分の顔を撫でた。
 「ほんとうに?ねえ、シンあなたはじめて、われわれといった」
そして自分はこたえたのだ。
 「われわれはどこにでも行ける。一晩寝れば元気になって、どこまででも歩ける。疲れて歩けなくなったら、ここにもどってくればいい。レディーファーンの絨毯を歩き、楓の沢で寝ればいい」
ブリトニーは、もっと、と短くいった。そうして、われわれは夕方まで過ごした。

 家に戻って、隣(といっても3マイル向こう)のデレクの家に向かった。ダグラスファーの板を何度も塗り重ねたような壁で、白いペンキの下から灰色の木目が浮いていた。庭にはたくさんの植物が植えられていて、そのどれも食用であるように見えた。
デレクの家族は、東洋人を見るのがはじめてというわけでもなかろうに、自分の一挙手一投足に注目した。ブリトニーは面白そうに見ている。自分は招かれたものとしてジャックを手渡して、挨拶をした。デレクは写真を見せてくれた、2フィートはありそうな大きなウナギが、樽いっぱいに詰められている白黒の写真。格子柄のシャツを着た男が二人、樽の前でポースをとっている。
「これが、昔、川をせきとめてランプレイをとっていた時代のものだ。春になると、ランプレイは海からのぼってくる。それをまとめてとるんだ」
デレクは次にカラーの写真を差し出した。
「群れがのぼってくるときは、鈎でひっかけて釣れるときもある。俺はこのランプレイ釣りが大好きなんだ」
写真にうつるランプレイの口は、円く開いた傷口のようだった。唇の内側には、細かな歯が同心円に並び、祈りではなく呪いのために作られた紋章のように自分には見えた。そのとき、自分は目の横にあいた穴をみて、これに似た魚を思い出した。そうだ、ヤツメウナギだ。
「おい、デレク、これは日本にもいる!」
「なんだって? お前それはウナギだろ?ただのウナギ。ランプレイはアメリカにしかいないよ」
「違う!日本にもいる。YATSUME EELという。8つの目があるって意味、この穴と同じだよ。けどな、日本のはもっと小さい、1フィートもない。小さいやつなんだ。でも俺達も、これを食う。目の薬になるといって食うんだ」
デレクは顔をほころばせた。
「そうか、ランプレイは日本にもいるのか! ああ、俺の魚、まだ世界で生き残っている!」
そして食卓が準備されて、促されるままに自分とブリトニーは席についた。まだ見ぬばあちゃんの趣味か、あちこちに幾何学的な紋様の刺繍がほどこされたテーブルクロスの上には、木を削って作ったであろうボウル、表面が美しく歪んだ古いガラスの調味料入れ、そして花瓶には黄色い小さい花が活けられていた。
デレクがキッチンに行って、大皿を運んできた。自分とブリトニーが釣ったジャックが、丁寧に蒸し上げられてマヨネースが添えられている。
ばあちゃんも食卓についた。はじめて会ったデレクのばあちゃんは、複雑な模様のはいったキルトのような服を着た、小柄で丸顔の人だった。少し東洋人の面影があるように感じる。
ばあちゃんは、自分を見てゆったりとした言葉で尋ねた。
「あなた、日本からいらしたの?」
「はい、そうです」
ばあちゃんは遠くをみたまま、諭すようにつぶやいた。
「私たちも、あなたの国も、ヤンキーに負けたのよ」
デレクがおいおいまたかという表情を浮かべる。
「ばあちゃん、俺達の国は日本に勝っただろ、なにを言うんだよ?」
ばあちゃんは微笑みながら軽く首をふる。やはり東洋人のように見えた。
「いいえ、私達の国は、ヤンキーに負けたのよ」
ばあちゃんの言葉は、慈しみに満ちていた。そして、ジャックの薄紅色のピンクの身を大皿からとって、マヨネーズにひたして口に運んだとき、自分はばあちゃんのもてなしの深さを思い知った。ベアルネーズソースだ。丁寧に卵と油を分離しないようにかき混ぜて、細かく刻んだタラゴンの葉を混ぜたに違いなかった。シアトルの丘の上の豪邸でもお目にかかれない、本物の歓待だ。

 ばあちゃんが、ランプレイのパイを皿にのせてやってきた。そして、穏やかな微笑みを浮かべたばあちゃんは、とろみのある古びたナイフでパイを切り分け皆に渡した。バターの香ばしい香りのなかから、鶏のレバーのような濃厚な脂の味がする。デレクがランプレイを燻すのに使った木のにおいだろう。
「ああ、うまい、うまいなデレク」
ブリトニーが笑う。ばあちゃんはこのパイを客に出すことができて本当にうれしいという、心からの笑み。そしてそれを客がおいしいと食べたことへの無条件の喜びをあらわした。
「シンが、ランプレイを食べた!」
ブリトニーが飛び上がる。そして彼女は一切れのパイをアルミホイルに包んでくれないかとばあちゃんに頼んだ。コートニーに、と短くいうと、ばあちゃんはゆっくりと頷いた。

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 2

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暴 力

タンクトツプよれよれの太陽の陰部にて
よれよれになる団地の四角窓の鉄柵の錆
キリストを讃へる赤ペンキ字の上で芋虫
補助輪のもげた自転車と子供用バケツと
タンクトツプで出てきたあなたの無防備
よれよれの隙間から見えそうで見えない
生えかけのよれよれだらう腋毛の間引き
お互い片親のお互い未来は暗いよれよれ
赤ペンキまみれの芋虫キリストの項垂れ
長祝辞が述べられてよれよれになれども

暴 力

よれよれのタンクトツプの継ぎ目からは
地黒のよれよれとした十代のあるまじき
汝隣人を愛せよ構えよ敬えよ喰らへよと
あなたの腋毛に触れやうと脳ノ手を翳す
一九八五年赤ペンキ一色タンクトツプよ
滑り込ませばすぐそこに届いたであろう
硬化した先端の愛であり平和であり諸々
よれよれの私服のだらしなさがまた尊し
つけいる機会も解らずにラジカセの再生
安全地帯でなく生理ナプキンの上に座る

暴 力

あなたの母親を初めて見た似てもいない
よれよれのホルモンのやうな簾の向こふ
私はだらしのない立ち方で狭い鉄扉の間
刈り取られてゆく腋毛と共に面皰面をも
よい返事だけ戴きたい画面には桂三枝だ
お互いの背中のあたりで殴打されてゐる
やさしいものからこわされてゆくマジで
生けたばかりの脳ノ手がよれよれとなる
好きだといつてくれたおんなのこの腋毛
タンクトツプ姿はいいよなよれよれだが

暴 力

芋虫はユダとなり赤ペンキは溶けて出て
讃へるタンクトツプのよれよれ片親同士
あなたによく似たポルノ女優の唇の動き
生理ナプキンはよれよれでそれは鬱血で
冷蔵庫の吸盤のやうな乳首を硬化させて
よれよれになり一九九五年に入院をする
肥大した夏柑橘の肌や砂場の中の補助輪
なにをいまさら希望めいたおとぎばなし
あなたとあなたの母親は団地に沈下して
生けた私はよれよれて腋毛にからまつて

暴 力

暴 力

https://i.imgur.com/42QJAbF.jpg

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 5

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夜桜桃梅 ーー 俳句百句 ーー

山桜桃梅 ―― 俳句百句 ――

笛地静恵

【ノート】

夏、秋。冬、そして、春で、うたいおさめといたします。四季のある国に生まれ育ち、老いていくことができました。季語によって、感謝を表現しました。わが『四季礼讃』の四百句。お時間があるときに、少しずつ楽しんでいただければ幸いです。あなただけの一句と、出会えますように。

春の百句。次のような句をおさめています。

水温むわれのスマホのぬるいなあ

爛漫の桜の奥のカメラアイ

既読スルーLINEの文字の遅桜

地虫穴を出づアスファルトをば引き裂かん

終電の京急くだり初桜

花冷えのギグワーカーの自転車よ

春の雲いのちを孕む猫背線

花粉症目玉取り出し洗うべし

行く春やわれのいのちのすこしあり

なお、この十句を選定したのは、AIです。自己承認欲求を満たしていただきました。おもしろい時代になってきました。

笛地静恵

二〇二六年五月二十六日(火) 

石油タンカーが日本に接岸したという報道の日に


一、 蠢く


水温むわれのスマホのぬるいなあ


海胆を割り従妹は僕へ食えという


地虫穴を出づアスファルトをば引き裂かん


春の雲いのちを孕む猫背線


クレーンのひねもす上下野蒜のびる


雪解の農業用水どぶどぶと


電柱の不穏蛙の目借時


風の筋受けとめ老爺野を焼きぬ


うぐひすのメロデはずすカラオケか


残雪をにらみ電柱傾けり


ミヨソティス無人コンビニセルフレジ


土中より電線生えぬ啓蟄や


食うことは外を内へと種浸し


紺青のつばめつばさの鋭角を


液晶の大和三山蛇穴を出づ


東風吹くや工事現場のバタバタと


猫の恋ひねもす屋根に恋を恋


春暑しシャッター街の落書きに


泥靴の底の重さを渡り漁夫


あかあかと夜の自販機の蜃気楼



二、 食欲


終電の京急くだり初桜


さくら雨ちらぬふんばるつぼみくん


爛漫の桜の奥のカメラアイ


二日灸わが肩の筋どんじりと


かなわんな燦然の桜を見上げ


夜桜やLEDに染まる宴


目刺し焼くスカイツリーを拒みつつ


団子より桜を愛す老年期


陽炎や鉄路の線のゆらゆらと


春の雷スティーブ・ジョブズかき消され


スーパーのセールの棚の花疲れ


せつなきはカレーの匂い春の夜


奥の歯で独活かみ潰す『三国志』


ホタルイカ辛子に鼻を突きさされ


蝌蚪泳ぐ泥のなかなるバグってる


電線に足の二本を巣立鳥


つばくらめ高層ビルのたちくらみ


春の午睡マックいすわる高齢者


かわず鳴く夜の団地へ一斉に


剪定の清々しさを松の芯



三、 相克


朝東風の高層の窓叩きけり


配信の画面の中の大石忌


遮断機を下ろすはやさや五月祭


料峭のビニール傘のすぐ折れて


サイレンの音つぎつぎと春眠を


三段のお重提げ鳥雲に入る


塩焼の鰆四ツ倉友と旅


壺焼きの銚子を二本小名浜港


桜咲くAI生成桜画像


四月バカQRコードは四角


ガード下飲み屋の消えて春の雨


春の月イヤホン耳へ浜通り


満開の桜の下に警備員


電子マネー決済音の春の駅


白魚の辛子醤油の踊り食い


春の宵ツナのサンドの安売りへ


花冷えのギグワーカーの自転車よ


コインランドリー回れよ回れ春昼後刻


炬燵塞ぐひとみはぼやけ遠く見る


春の山リュックの紐の揺れやまぬ



四、 視線


涅槃西風わが脈拍の確かなり


聴診器胸へ冷たき春の風邪


花粉症目玉取り出し洗うべし


メーデーの薬の数を数えつつ


野遊びのわが脳髄のゴリラ霧中


静かさやレントゲン室春袷


春菊の黄色を噛みて生きんとす


仏生会底の底なる夢の底


爪を切る春のひかりの縁側に


春の風老いの胸板突き抜ける


春かなしわが背のすこし曲がりあり


廃園の池に紅白ヒヤシンス


白米の飯おかわりを茂吉の忌


点滴の友の雫ののどかなれ


上り鮎魂魄の渇きを癒し


ホオジロの病院内のせわしさよ


受難節わが影なおも濃きままか


菜種梅雨マスクの髭のほぼ白し


春らんまん食わねばならぬうな重を


わが爪ののびるはやさの暮の春



五、 胎動


行く春や超電導の加速する


葉桜の緑の舌の生え揃う


いつからか蕨の苦み好物に


夏近し冷房入る地下の駅


路地裏の春の蚊よ外灯の下


既読スルーLINEの文字の遅桜


おしゃべりは藤棚の下のど飴と


晩春のウィンドウへと映す皺


置き去りの自転車のもと犬ふぐり


ひな祭りハチ公前の人だかり


ガードレール錆びをつつじの隠しけり


儀式のごとく箱のメロンを取り出しぬ


あさり汁底にしずもるひかりかな


ゴミ収集車声太く聖金曜日


痩せ馬の夜行の便の嘶きか


網焼きのはまぐり開き恋ばなし


蠅を生みコンクリートの胎動を


わかさぎの天ぷらからの筑波山


水田をタニシの道の桜川


行く春やわれのいのちのすこしあり



(了)



『四季礼讃』





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ロスト・イン・アドレセンス 〜神の子羊

ママの朝帰りが始まって、家で眠る意味を失くした僕は、
みんなと陽が昇るまで渋谷にいた。
パパの自殺を知ったのは、騒ぎすぎて吐いた居酒屋の便所だった。
疲れた声や悪い夢を根こそぎ吸い込むこの街に許されて、
夜の彼方に僕らの為の朝が生まれる時を待った。

(寒いのは、今夜までですか。)

微睡みの中で蘇る暴力描写にうなされる僕を叩き起こしたのは、
殴られた記憶と、姉の悲鳴と、終点を告げる車内アナウンス。
発車ベルの下に吐き出された社会人的な週末が、
電光表示を切り替える最後の仕事を片付けて、
無気力に動き始めた回送電車を見送っている。
強まる雨で光るアスファルトは線路伝いに続き、
重たく濡れた裾の足取りとは裏腹に、
頭の中は来た道をあてずっぽうに引き返していた。

〜〜〜親水公園〜河田町〜市ケ谷〜池袋〜夢の島〜馬喰町〜退部届〜交友関係〜停学処分〜成績不振〜校則違反〜放課後の約束〜自傷癖〜37℃の微熱〜陰口悪口失恋話〜二人乗り〜拡散希望〜南北線窓の向こう〜繁華街〜年末一斉補導〜気が狂いそう〜手錠〜みんな嘘つき〜就職率〜進学実績〜明るい未来〜吐きたい〜痛い〜息してない〜君がいない〜吐けない〜東雲駅発〜世界の果て〜まもなく有明〜まもなく有明〜平和島。

心なんて幾つあっても足りなくて、休まる暇もなかった暮らしは、
上辺だけの愛し方と、悲しいだけの思い出しか残さなかった。
補修する必要のない壁や窓、酒呑みの怒鳴り声に怯えなくていい夜、
「おやすみ」をちゃんと言い合える絆、
自分にはそれが贅沢だと知った時には、もう元に戻らなくなっていた。

帰宅したばかりのママがシャワーを浴びる音は止み、
通話中に寝落ちした姉を照らす豆電球を消して、
窓の結露を擦れば、酒臭い部屋にもちゃんと朝が来る。
パパを酔い潰した水割りの紙コップを捨てて、
どうせ聞く気のない寝息の耳元で独り言ちる。

(辛いのは、死ぬまでですか。)

副流煙が染みた皮膚、由来も知らない名前、不細工な脳、
ママに似て惰弱な消化器系、パパとお揃いの逃げ癖と泣き真似、
僕は、二人に貰ったすべてを体中から毟り取りたくて育つ。
あなたたちの子供に生まれた事を恨みながら大人になるのは、
少し後ろめたいけれど制限時間は近付いている。
「お前なんて産まなければよかった」が本音なら、
「人は皆生きてるだけで尊い」という見え透いた嘘に賭ける。

夜は空を去り、元居た内心に散らばった声なき声は照らし出され、
街角の無関心は、本音さえ隠せなくなる。

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 3

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怪物

陽が燦々と照りつける夏の陽気
今日はとても良いお天気で
滝のように汗が流れております
町行く人は目を細めて
何を見つめているのでしょうか
あれは積乱雲
あれは雑踏に佇むビル街
あれは何でしょう
見つめているのは怪物です
血眼にして辺りを見渡す
恫喝する怪物です
夏の陽気共に出てきたのでしょうか
何かを叫んでいるようですが
私には何も聞こえません
まるで展覧会のように
人々は怪物を見物しています
自分が対象になることはない
そんなことを思っているかのように

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エレベーターの詩

昨日の夢の深層であなたからの花が届き
ブーケには差出人の名前がなかったけれど
どうしたわけかすぐに分かりました
白百合の匂いが小さな部屋に満ちたので
泣きも笑いもできなくなりました
香りの良い贈り物を抱えたまま
異界のエレベーターに乗りました
きっと私は地獄行きだから違うフロア
ふたたび会えるものかどうか
(もうここにおらん人はここにおった人
やけんどうしょうもなくさびしいとよ
どんな人とも出会う前には戻られんけん)
長い睡眠でしたが今朝も当たり前に醒めて
あなたにはもうこない当たり前がきて
有難いことです でも
また少しだけ潜れたらと思って
三十秒間目を閉じてみていました
目的の階にはまだまだかかるみたいでした

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パンドラの筆跡

件の集合体の記憶が 藻が映えた時間軸に 絡まるは
  水母たちの引き算の都市。天の川を密かに
    その箱に透いたから 残照が酷く歯がゆく囁く

言伝の檸檬紅茶が 暈を増やす痕を滲ませている

  性別不詳の夜半
  血縁者の牢獄、
  土手に填める桜はまた 希望だった

若草色のフェルトペンがぼやぼや
 停止した白血球数の数だけ終の住処を建てる
 朧
 月は
  凷に被弾した魂を籠めて

 染み付いた遺伝子の徘徊 
  瞼の裏を破った時に来世にすげかえる
   ゴツゴツしたフシクレの展につらを咲かせるもの

       藁半紙なんて珍しいかぎりの 我ら
         、牢獄の民の咽頭に花と散った。
      とんだむかしを拡大鏡にうつした
        緑地は 流砂の肌を曝し
 浮き出る№を撫でるように 嘔吐く、

この手でだきあげるは
あなたは わたしなの

 腐った思い出をプレートに並べて、
 そして跡形もなく崩れ去る
と            すがすがしく目覚めるなら、
きは、                 悪くは無い。
    淫売を重ねる暗い道を照らす朱は
    終幕のように綴じられるとしても

「 瑞雲で有れば好いのに 」

  言い淀んだのは溶け残った琥珀糖で
  ずっとひかりは弧をえがいていたが
  ただ 夢のようだと思えばよかった

十三月に総て延べチギレユク、ひとかけの意味も知らずに

          未だしゃべり足りないひな鳥が
          新たな母を呑み込んでは
     また、とべずに啼いています

     そんなわざとらしい愛を熨せ
   ずっと奔らせていたい、我儘な時針に似せ
 おいおいと泣いている、さわりすらも訪わずに
 栞の如く焼き尽くす旨、胡蝶のルーツを手繰る

思考は星状に受胎している 雲海の果て、その海路図の焦点

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沐浴

洗面台に あたたかいお湯を張り
私は湯気の中に 赤ちゃんを浸す
短いごわごわした髪 汚れた顔を
せっけんをつけた指で 丹念に撫でる
やわらかいからだを 押す
小さなかわいらしい乳首がついていて
撫でるたびに それが掌にふれる
赤ちゃんは 瞬きする
見覚えがある顔だと 
私の顔を見ては 何度も瞬きする
これは 私の赤ちゃん 
いまは はだかぼっち
どこで間違えたのか 知らない
 
お湯が洗面台いっぱいに 溢れてくる
溺れそうになる 
私はとても 顔を下に向けて
沈める気にはなれなかった
ひたひたとお湯が 顔にかかる
私はそれを押し戻す 押し戻す
 
掌にずっしりと 重みが加わる
水を吸い込んだ赤ちゃんが 滴る
指の先から 足のつま先から
ごわごわした毛の先から
私はタオルを押し当てる 
ぎゅーぎゅーと強く押し当てて
青い水を吸い取る
 
満足した?
私の赤ちゃん 
 
私の赤ちゃんは とうの昔に
洗濯ネットに入れられて 
ベランダに干されていた



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シーシュポスの神話

深夜のコインランドリーは、僕たちが漂着した最後の中州のようだった。
湿った空気の中に、安価な洗剤の人工的なフローラルと、さっきまでシーツの上で貪り合っていた僕たちの、微かな汗の匂いが混じり合っている。
まなみは、回転を止めた乾燥機の前で立ち尽くしていた。
彼女の細い肩には、脱ぎ捨てたばかりのラルフローレンのオックスフォードシャツが、アイロンを失ったまま無防備に羽織られている。その下から覗く胸元、ヴィクトリアズ・システマティックの黒いレースが、湿った熱を帯びた肌に食い込んでいた。
「熱も、言葉も、すべてが均一に混ざり合って、何も動かなくなる状態……それがこの世界の理で、いちばん平穏な死のはずでしょう?」
彼女の言葉は、薄氷を割るような静けさで響いた。まなみは、バスケットから取り出した僕のシャツを手に取ると、その袖を愛おしそうに指先でなぞった。指先にはまだ、僕の体温を求めて彷徨った時の強欲な力強さが、仄かな赤みとなって残っている。
「……でも、この世界はそれを許してくれないみたい」
まなみはシャツをバスケットに戻した。
そして、唐突に歌い始めた。
彼女の唇からこぼれたのは、昔のアニメソングだったが、それは高揚感とは無縁の、ただ事実を淡々と確認するような音調だった。
彼女は踊り始めた。
右手を上げ、左手を腰に当て、リズミカルにステップを踏む。その動きは、何千回、何万回と繰り返されたはずの「正解」のトレースだった。
けれど、まなみのそれは、決定的に何かが欠落していた。
シャツの下の黒いレースが、ステップのたびに湿った肌の上で揺れる。僕の背中に爪を立てた、剥き出しの身体性はそこにある。なのに、その動作はどこか機械的で、まるで動かなくなった乾燥機のドラムが、慣性だけで回り続けているかのようだった。
「……魔法以上ノ愉快ガ……」
その声には、魔法も愉快さも存在しなかった。ただ言葉が、彼女の気管を通過して、深夜のコインランドリーの静寂に、無機質な振動として放たれていくだけだ。
僕たちの、あの終わらない熱が、この安っぽいアイドルソングによって完全に濾過され、ただの「運動」へと成り下がっていく。
それは、彼女が先ほど口にした「平穏な死」への抵抗のようでいて、その実、最も残酷な形で死を体現しているようにも見えた。かつての熱狂の、抜け殻のようなダンス。
まなみは、一通りのサビのパートを踊りきると、項垂れる様に笑って唐突に抱きついてきた。店内を照らす蛍光灯が、彼女の無防備な横顔と、少し乱れた髪、そして胸元の黒いレースを、執拗なまでの鮮明さで焼きつけている。
その静止を破ったのは、店内の隅で色褪せたクレーンゲームが散らす電子音だった。
僕は100円玉を数枚投じ、磨耗したジョイスティックで銀色の爪を操作した。煤けたペンギンのぬいぐるみを狙う。機械的な駆動音が、静寂を一定の周期で刻む。爪がぬいぐるみの首筋をかすめ、空しく宙を掴んだ。
「取れないね」
僕は言った。彼女のダンスが残した、決定的な何かの喪失感を、クレーンゲームの無残な空振りに重ねるように。
「いいよ。執着だけが形に残れば」
まなみは力なく笑い、今度は埃を被ったガンシューティングの筐体の前に立った。
画面の中ではゾンビの群れが、生物学的死を超越した「非平衡」の足取りで押し寄せてくる。彼女は使い古されたプラスチックの銃を両手で構え、狂ったようにトリガーを弾き続けた。銃声が店内のタイルに反射し、マズルフラッシュの青白い光が、再び彼女の横顔を鋭く焼きつける。
それは、未来を使い果たした僕たちが許された、暴力的なまでの生の横溢だった。さっきまで僕の背中に深く爪を立て、もっと奥へと、もっと永遠に近い場所へと求めてきた彼女の、あの剥き出しの貪欲さが、いまは火花となって虚空を貫いている。さっきの、魂の抜けたダンスとは、対極にある烈しさで。
「死なないものを、何度も殺すのって、祈りに似てると思わない?」
まなみが銃口を下ろすと、画面には『GAME OVER』の文字が、血管の破裂したような鮮やかな赤で点滅した。まなみの唇が、かすかに震えた。
「時間の結晶——外部の誰にも理解されない周期を刻みながら、熱力学の終焉を拒み続ける。たとえ、それがただの、終わらない『慣性』だとしても。私たちはこの静止を許さないの」
彼女が洗い立てのシャツを抱きしめた瞬間、乾燥機の排気口から吐き出された熱風が、二人の間を通り過ぎていった。
それは、エントロピーが増大し続ける宇宙の中で、肉体を重ねてもなお埋まらない欠落を抱えた僕たちという異物が、唯一許された「不変」の証明だった。
そしてその不変は、今しがた彼女が演じた、あのあまりにアンニュイで、あまりに空虚な眼差しによって、より深く、僕の中に刻み込まれていた。

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疑い

あの子の優しい嘘が
いつか僕を殺すのだ
彼女の美しい歌声が
裏切りの雨を降らすのだ
僕は道端にひとり
しかし光は静かに照らす

ああ地面に雨は降る
泥を飲み込んで生き返れ
100人自転車行ったり来たり
雪崩て事故よ空高く
こんな地獄はもういやと
泣いてうずくまるあの声が
とおく闇を貫いて
悪魔の行進こっち見た

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