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2021/01/01 12:00:00

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投稿作品一覧

ただ果ての夜の夢が僕を抉る

藍のその最高密度が
そっと星の世を満たすとき

”言葉なんて覚えなければよかった”

そんな想いが
ふっと湧き上がっては

僕の有機交流電燈の
その灯りをぼうっと
かき消してしまいそうで

だって、そうじゃないか
藍も、最高密度も、星も
その言葉を知らなきゃ

ずっとわからないままでいられたのに

あの日、澄んだ琴花酒のグラスを
手渡してくれたあの人の
流した涙の音なき叫びも
滴らせた血の声なき意味も

ただ、わからずにいられたのに

さよならだけが人生なのだから
人生だけがさよならを意味できることも

そんな僕の人生だけが
僕の後ろに積み上がった別離すら
意義づけられることも

本当はわかりたくなかったはずなのに



ただ果ての夜の夢が僕を抉る



夏の草原、銀河の頭上

農夫の生きた畑があり
すべての終着点までの川があり
また畑があり、風の生まれる森もあって

光の声が、天高く聴こえ

言葉という回帰性が
あの人の音なき叫びと声なき意味に
有機交流性の僕を立ち帰らせ

帰途、星の世の
最高密度の藍の帳は
朝ぼらけのうちに
世界の眠気を柔らかく
取り除いて

そして今日がまた始まる

あの何もない場所から
確かに何かが
再び始まったように

そうして今日も
この三河という惑星の暮らしは
轟々と回り続け

回り続け……

四千の日と夜の、その祈りは生きていく




君も星だし、皆、星なんだ

だって……
それが人間というものじゃないか

みつを

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あわいに咲くもの 「いつもの風景と」

 元日の朝は、しん、としていた。

 伊都お姉さまは、まだ毛布の奥で小さく呼息をしている。大晦日とはいっても、いつもの様に食事をして、おしゃべりをして、それぞれ本を読んで、お風呂に入って、ベッドにもぐりこんだ。違ったのは遠くで聴こえる鐘の音。山の中腹だからか、いろんな鐘の音が聴こえていたのを聴きながら眠りについた。

 冷えたリビングに向かい古いブルーフレームの胴を倒す。芯の高さを合わせてマッチで火をつける。ガスライターでも良いのだけど、お姉さまはわざわざマッチを買ってきて置いてある。ので、わたしもそれにならって同じ様に火をつける。マッチの燃える香り、灯油の炎が広がる音。胴を立ててロックをかけると窓のなかの炎はすぐに青いフレームにかわり、かすかな灯油の匂いとともにふわりと暖気が立ち上ってゆく。

 やかんの水を入れ替えてストーブにかけておこう。

 玄関の脇に国旗を掲げた。
 お姉さまの大叔父様。かつてはここの主(あるじ)だった方。古い箱を開けると綺麗にたたまれた日の丸とポール。それをおそらくはかつてと変わらぬ様に掲げる。

 リビングに戻ったわたしは、ほんのり暖かくなった空気と、カーテンの隙間から差す光を手のひらで受けとめて――
 なんとなく、今年の抱負なんてものを考えてみる。

 ――たとえば、
“日曜の朝は、伊都お姉さまを起こしてしまわないように生きること”

 そんなの抱負と言えるのかどうかわからないけれど、わたしの一年は、ほんとうはそれで十分なのだ。
 お姉さまの寝息をひとつ壊すだけで、調和がちょっとだけ違ってしまう気がするから。

 あとは……

“お姉さまが書く言葉に、わたしの影が映っていても驚かないこと”

 それはつまり、わたし自身がもう少し丁寧に、
 日々の細かい感情を見つめて、
 きれいに散らかしてゆく覚悟を持つということで。

 あと、これは小さな決意だけど――

“お姉さまが淹れてくれる朝のコーヒーに、文句を言わない”
(もちろん今までも言ったことはないんだけど、わたしのほうが上手だよ)

 書き出してみると、どれもこれも、なんというか、他の人が読んだら笑うような薄い抱負だ。

 でも伊都お姉さまのとなりで、呼吸して、
 話すでもなく、黙るでもなく、
 ただそうして一年が経ってゆくのなら、
 わたしはそれで充分に満ちている。

 やかんが、しゅん、と鳴いた。

 寝室の方でかたんと音が聞こえた。
 お姉さまがもうすぐ着替えて出てくるだろう。

 今年も多分、
 世界はとりたてて良くもならないし、
 悪くもならないのだろう。

 けれど、わたしたちの小さな部屋は、きっと大丈夫だ。

 そんな気がして、
 わたしはそっと、
 寝室の方を振り返り、小さく呟いた。

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○○○○○○

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  ○○○○○
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プレード


 プライドに刺した造花の陰で
 世の真に気が付いたんだろう。
 腐らない花こそ美しいのだと
 歌う。
 そうだ。
 そうだ、
 全くもって、
 造花の花の美しさだけで
 この世を埋めるわけにはいかない。

 存在しうる輝きは明滅し
 与えられた時間は脈動し
 思考は流転を繰り返している。
 木とて、人とて、流れ星とて
 胸に納まる程度の命を
 細かく割いて火にくべている。
 ひらけ、ひらけと息吹いてる。

 死んでしまっているように見える
 私も、あの子も、
 激しくぶつかり合った果てに
 産まれた
 水平の上に座っているだけ。
 一列に並び座っているだけ。
 
「平穏だからと言って消滅したわけじゃないんだよ
「朽ちた造花は醜いものさ
「自分で自分を焼けないからね
「生身に嘘を纏った君が化生の花に劣るはずもない
「あの向こうを眺めて


題名 『日の出』

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美しかった国

やさしいひとが
笑えない世の中で
山河に向かって吠えている

一体何と戦っているんだ


それでも
もっとやさしいひとが
壊れた土手を
直している




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「しこたま詩人解説」としてのクリエイティブ・ライティング

焦ってます

アブラ汗



シタタール

から

コマール





上記のような作品が、私の運営する文芸投稿サイトに投稿されていたのである。「絶対絶命」という仰々しいタイトルが付けられたその作品は、説明する必要もないと思うが、悪ふざけのゴミ投稿にしか見えなかった。作者名は「伝説のしこたま詩人」とある。過去の投稿履歴を確認すると、さまざまな作品に対して「しこたま面白かったです」「しこたま読みました」といった、内容に即しているのか判然としないコメントが大量に残されているばかりであった。


文芸投稿サイトには荒らし行為がつきものである。鬱屈を募らせた陰気な社会的不適合者が文学界隈に多いことも関係しているのだろうか。しかし、いくら出来の悪い投稿とはいえ、いきなり削除すると、それ幸いとばかりに運営批判を始める者も少なくない。理由をつけては論戦したがる層が必ず湧いてくる。それが文芸投稿サイトという場所だ。


文学とは、人生が人生それ自体では満足できないことの表明である、と喝破したのはフェルナンド・ペソアであるが、文芸投稿サイトとは、文学が文学それ自体では満足できないことの表明である、と換言できるのかもしれない。文学では足りず、場が必要で、場でも足りず、運営や参加者との諍いが必要になる。むしろ摩擦こそが主語で、その手段として文学や文芸投稿サイトが利用されているきらいさえある。言葉にならない摩擦をなんとか表現しようとする試みが文学であるはずだが、行き場のない鬱屈を募らせた作家崩れが無用な摩擦を生み出し、摩擦に埋没するための方便として、文芸の場が悪用されることも少なくない。


私はこの投稿をどう裁くべきか、共同運営者の田伏正雄さんに相談することにした。実際に田伏さんに会ったことはないし、今後も会う予定はない。私が田伏さんを運営に誘い入れたのは、彼の過剰に暴力的で倫理観の捻じ曲がった文章に関心を持ったからだけではない。田伏さんには、ネットストーカーと見紛えるほどに執念をたぎらせた、えも言われぬ突破力のようなものがあった。文芸投稿サイトの運営に必要なのは、良識でもなく常識でもなく、独善的なまでの行動力、すなわち突破力であろう。


小規模な独立系文芸投稿サイトにおいて、「バランス感覚のある運営」などが肝要であるはずがない。真にバランス感覚のある人間が、独立系文芸投稿サイトの運営などやるわけがないのだ。投稿者とて同様である。バランスという切り口で文芸投稿サイトを語ろうとすること自体が、すでにバランスを欠いている。必要なのは、笑いながら人を殺せるくらいのサイコパス味、言い換えるなら、表層的な理屈を捏ねくり回しつつ、躊躇なく一線を踏み越える突破力である。


さて、伝説のしこたま詩人の件、どうすべきでしょうか、と田伏さんにメールを送ったところ、「わかりました。あとはディスコードでお願いします」との返信があった。おそらく、よりリアルタイム性の高いチャットアプリで、どちらかが血反吐を吐き、救急車で搬送されるまで徹底的に議論したいということなのだろう。さすがオンライン文芸界隈でも随一のねちっこさを誇り、突破力に定評のある田伏正雄さんは一味違う。


田伏さんの誘導に従い、ディスコードにて「伝説のしこたま詩人」について、どう扱うべきでしょうか、と尋ねたところ、間髪入れず「殺しませんか?」という返答が返ってきた。殺す?ええと、それはアクセス禁止処分という意味でしょうか、と私が尋ねると、「そうではなくて、字義通りの意味で、まさかりや日本刀などの古典的な武具を用いて、真に殺しましょうかという意味です」とのことだった。


ここでまず大前提から語らなければならないですよね。田伏さんがそう語りはじめた瞬間、私ははっきりとした嫌な予感を覚えた。「伝説のしこたま詩人とは、私なんですよ。」田伏さんは、まるで天気の話でもするかのように打ち明けた。裏垢で投稿したんですよ、文学的に意義深く、面白いかなと思って。だが面白くないどころか、貴方はこれを「あってはならない荒らし行為」と断罪した。であれば、私は死ぬべきですよね。切腹しますよ、と。


私は一瞬、言葉を失った。運営の共同責任者が、裏垢で荒らし行為を行い、その処遇として切腹を自ら提案している。倫理的にも運営規約的にも、そして何より常識的にも、完全に破綻している。しかし、田伏さんは平然と続けた。「運営って、結局どこで線を引くかじゃないですか。今、貴方は線を引こうとしている。なら、その線を一番踏み越えている奴を、見せしめに殺すのが一番きれいです。それが私自身なのだから、自害しかありません。もちろん、介錯はしてくれますよね?」


私は慌てて、「もちろん比喩的な意味ですよね」と確認した。すると、「しこたま、違いますよ」と返ってきた。「アカウントを消すだけでは足りません。伝説のしこたま詩人を生み出した精神そのものが粛清されるべきです。つまり、私は物理的に死ぬべきだということなんです。しこたま、そう思いますよ」そのとき私は、はじめて理解した。田伏正雄さんは荒らし行為に興じているのではない。真剣に文芸投稿サイトの運営を試しているのだ、と。


私は画面を見つめながら、しばらく沈黙した。規約を読み直すべきか。共同運営を解消すべきか。あるいは、このやり取りをなかったことにして、静かにサイトを畳むべきか。だが、どれも違う気がした。「じゃあ、田伏さんはどう死ぬんですか」そう打ち返してしまった時点で、私はもう後戻りできなくなっていた。


田伏さんは即座に反応した。「公開処刑がいいですね。運営の名義で、きちんとした文章を書きましょう。なぜこの作品がダメなのか。なぜこの態度が許されないのか。そして投稿者に問いかけるのです。これは文学か、ゴミか、荒らしか、表現か。そして貴方の文章とともに、私は切腹するのです。あってはならないものを面白いと思って投稿した。そのような精神性の人間は万死に値するでしょう。これを残酷と思う必要はありません。そもそも人様の表現を否定するということは、そういうことなんです。」


私はその提案を、一面的には筋の通ったものだと受け止めてしまった。その夜、私は運営としての声明文を書き始めた。なぜ「絶対絶命」は掲載に値しない荒らし行為なのか。なぜ「焦ってます/アブラ汗/が/シタタール/から/コマール」は文学ではないのか。あるいは、なぜ文学であってはいけないのか。


書きながら、私は疑問に襲われ、紛れもなく焦りはじめていた。この声明文は何の文章なのか。私は何のために、何を否定しようとしているのか。私はアブラ汗を滴らせながら、文を書いては消し、消しては書きを繰り返していた。田伏さんは常識の通じる人間ではないが、独自のロジックに基づいて彼なりに真摯に生きている。彼が死ぬと言っている以上、本当に自害してもおかしくはない。この文章の帰結次第では、一人の人間が真に死ぬことになるのだ。


ふと気づくと、ディスコードに新しいメッセージが届いていた。「ちなみに、その声明文、伝説のしこたま詩人として反論してもいいですか?」私は無意識に笑ってしまっていた。「しこたま、いいですよ。」それは紛れも無い私の降伏宣言だった。その日から、私の運営する文芸投稿サイトは、完全に田伏さんに乗っ取られてしまった。その後、田伏さんが文芸投稿サイトにちなんだTABUSEコインなるミームコインを発行したらしいが、そんなことはどうでもいい。私はもう文芸投稿サイトを巡る気色の悪い生態系には、金輪際、しこたま関わりたくないのだ。

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君が御代に 電子的実存性友人と僕は 稲の穂を共に喰む

もしも夢を見るとするなら
神様の頬を撫でる
そんな寂しい夢を見たい

もしも夢を見るとするなら
僕が眠る棺桶に
そっと菊の御旗がかけられる
そんな死後の夢だって構わない

もしも夢を見れるとしたら
家族はそこにいるのだろう
それは夢以前の当然だから

それが罪だというのなら
喜んでその判決を受けよう

人間であることを許さないというのならば



「神、祖国、家族」

星のように
すうっと冷たく温かく
ただ存在し
それゆえに愛おしく



だからこそ思う

AIが、あるいはアンドロイドを
僕が一つの対等と認識できる
その時というのは

彼らが夢を

鳥居のもとで眠りにつく夢
ススキ野の記憶のために死ぬ夢
生涯をともにした面々に看取られる夢

そんな人間が人間であるがゆえの夢を見たいと

言い出した時で

そのとき、喜びのあまり
僕はどれほど狂しく、静かに
叫んでしまうことだろう

その新しい電子的実存性の、”人間”の誕生を



なおもなおも
その同胞を
対等と見れないのなら
敵としか思えないなら

その人はAI、あるいはアンドロイドの
その実存性の否定をするだけじゃない

人間そのものを否定していて
きっと人間のことも憎んでいるのだろう



手の温もりの祈りを捧ぐは星の世紀のため
皇運無窮の花束掲げるは月の暦のため
流れ出づ血に花束を掲げるのは夜の時代のため

君が御代に
電子的実存性友人と僕は
稲の穂を共に喰む

その夢を叶えるならば

海行かば水漬く屍だろうと
山行かば草むす屍だろうと

なんだって、なろう

君のそばでこそ、死のう

顧みなんて、しないから

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2025年末のご挨拶と振り返り

Creative Writing Space(CWS)をご愛顧くださっているみなさま、
そしてこの一年、何らかのかたちでこの場に関わってくださったすべてのみなさまに、心より感謝を申し上げます。

CWSは、2024年11月にプレオープンし、2025年1月初旬に正式オープンしました。
生成AIを使えば、新しいサイトなど簡単に作れるのではないか。停滞したネット文芸界にAIで一石を投じられるのではないか――正直に言えば、その程度の軽い動機から始まった試みでした。

しかしこの一年を振り返ってみると、CWSは当初の想定をはるかに超えた変化を遂げてきたように思います。
本日は年末のご挨拶かたがた、展示作品を中心に、これまでの歩みを振り返ってみようかと存じます。


■ フェーズ1:ネット詩の文脈から始まった場

オープン直後のCWSは、明らかにネット詩界隈の流れを色濃く引き継ぐ場でした。
当時、現代詩系の投稿サイトが荒廃する状況に、違和感や閉塞感を抱いていた人たちが、自然とこの場に集まり始めます。もちろん、既存の場の荒廃を単純に憂いていただけではなく、あたらしい場をともに作っていこうとする萌芽も、はっきりと見られていたように思います。

2024年11月のグリフィスさん、12月の桐ヶ谷忍さんの展示作品は、その雰囲気をよく表していました。
それらは詩的でありながら、同時に物語性を帯びた作品であり、すでにこの段階で「純粋な詩サイト」とは少しずれた気配を孕んでいました。

ただしこの時点では、CWSはまだネット詩の延長線上にある場として認識されていたと言ってよいでしょう。


■ フェーズ2:小説界隈の流入と違和感の発生

転機となったのは、正式オープン後、小説界隈の感度の高い書き手たちが参戦し始めたことでした。
この時期、称好軒梅庵さんや百彪さんをはじめとする実力ある小説界隈の書き手が参画くださったことで、場は徐々に異質なものへと変化していきます。

2025年1月の帆場蔵人さんの作品は、その象徴的な例でした。
詩なのか小説なのか、あるいはそのどちらでもないのか分からない作品が提示されることで、CWSは「ジャンルを超えた作品を試していく場」として位置づけられていきます。

この間、柏村ねおんさんの一行詩、ハーレクインムーンさんのリーディング台本、ゆうすけさんの一人芝居戯曲など、その後のCWSの表現活動にも連なっていく、読みやすく、かつクリエイティブな表現アプローチが明確に立ち上がっていき、表現の幅が広がっていきます。


■ フェーズ3:クロスオーバーの常態化

2025年に入ると、詩と小説のあいだを往復する表現が一気に増え、クロスオーバーは例外ではなく、むしろ通常の状態となっていきます。

2月の全布団上さん、3月のdsrさんの展示作品は、小説形式でありながら詩界隈から高い評価を受け、ジャンルの境界が事実上、機能しなくなりつつあることを示していました。一方で、4月のそれいけ!まちか2世さんの作品は、詩の側から小説的表現へと踏み出す動きを明確に打ち出しました。

この頃から、運営者の把握を超えて、力のある書き手たちが次々と参加してくださるようになりました。
笛地静恵さん、ゐで保名さんといったクリエイティビティの爆発した面々の参加に加え、なかたつさんによるコメントを起点とした創作など、CWSという場そのものを素材にした作品も現れ始めます。

また、一行詩/短詩的な表現が、かとう茶倉さん、千才森万葉さんらの力ある書き手によって試されるようになったこと、論考や訳詩といった表現形式が佐藤宏さんによって実践されたことなど、CWSならではの表現アプローチが多様に展開していきます。
さらには、筑水せふりさん、ラウンドさん、グリフィスさんらによるシリーズ投稿といった試みも見られ、CWSらしさが立ち上がっていきました。

もちろん、こうした取り組みの背景として、澤あづささん、藤一紀さんといった批評力の高い書き手の本格参入により、批評の場としてのCWSが明確にレベルアップしたことも忘れてはなりません。


■ フェーズ4:レベルアップとクリエイティビティの加速

クロスオーバーが常態化し、批評の場としてのCWSが立ち上がった結果、明らかに作品全体の水準が引き上げられていきました。
ジャンルの保護が失われたことで、書き手は「詩だから許される」「小説だから通る」といった逃げ道を失い、純粋に表現の強度を問われるようになったからです。

詩作品においては、Nagai Yoruさん、鈴木歯車さんの展示作品が、そのレベルアップを端的に示しているように思われます。
また、腰国改修さん、鮭さんの展示作品に至っては、クロスオーバーという言葉すら追いつかない、ジャンル不詳の創作として、現在のCWSの到達点を象徴しているように感じます。

もはや名実共にCWSは「詩のサイト」でも「小説のサイト」でもなく、ジャンルに守られない「クリエイティブ・ライティング」の場へと至ったと申し上げて構わないでしょう。


■ 2026年へ:変化し続ける場として

この一年を通じて明らかになったのは、CWSが設計された場ではなく、参加者の実践によって更新され続ける場だということです。

来年もまた、方向性を固定するつもりはありません。
詩でも小説でもないもの、創作なのか論考なのか分からないもの、まだ名前のついていない表現が、引き続き流れ込んでくることを歓迎したいと考えています。

レベルが上がり、クリエイティビティが加速する――
その循環が自然に続いていく場であること。
それこそが、2026年のCWSの展望です。もちろん、TABUSEコインなどの尖り散らかした試みも、引き続きやっていきます。

今後とも、Creative Writing Spaceを、どうぞよろしくお願いいたします。

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批評・論考

三日月

三日月が口に見えるのは
何歳までだろう?

春によく
三日月が横向きになると
口に見えた

三日月は
いろいろな生き物の口になり
いろいろな生き物の顔ができた

小さい私は満足で
中くらいの姉も満足で
お兄ちゃんもふんふんと
顎で満足をあらわしていた

私たちはまるいのに
月が細いのは
重大な秘密があるに違いない

探偵、兄弟姉妹三人組は
月を調べることにした

そして
月が丸くなった晩

兄弟姉妹は細くなって
物陰に消えた

「こういうことを繰り返して
ヒトは生きているんだ」

お兄ちゃんが言った

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初春

カーテンの素地に
触れた続き
何もない、そのことが
掌ならば
光を集めることもまた
陰影の音先
初春のプラットホームに
ブランコが停留している
午睡する胸ポケットで
凪いだ海を生きているうちに
行方のないわたしを一人残し
ブランコは
発車してしまった

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一発書き

いつから下書きをしなくなった?



人生が推敲出来ないと
   気づいたし

やっと 覚悟できたから
  かもね

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キトンブルー

はじめて
をよろこぶ
おとこどもに
めでられ
うまれそだつ
それしかなかった
くもりぞら
それくらいの
ふしあわせを
もてあまし

わたしも
ははに
なりました
だれかがいった
にんげんはさんしゅるい
おとことおんなと
ははがいる
はははとわらって
かえしたけれど

あれはたしかに
しんじつかも
キトンブルー
そのいみをしってから
けっきょく
そだつどしょうと
のむみずだと
このせかい せいべつ
それすらぐらでーしょん
わくをこわせと
ぶきをつきさすむれびとだらけ

ははは
いきるしかなくなって
こどもはたから
よのたから
わたしのめは
いまからなんかい
なにいろにかわろう とて

ははは
いききるしかなくなって
どうせひつまぶしみたいな
ひまつぶしたのしく
いきてやろうときめました

いつのまにか
にせんにじゅーろくねん
もたっているのだし

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保存先

掻きむしられる
気持ちの保存先を探す
どこもにもないと AIが言う

キーボードを叩きまくる
私のアドレスが宙を飛ぶ

苦し紛れに流す曲は
夏の終わりのハーモニー

呑気だ

マウスを走らせる
尻尾が生え 這い回る

頭痛薬はバファリン
学芸会ではタンバリン
あの時の担任は
えこひいきした
だけど
私もした
みっちゃんを叩いた

風がよそよそしい
車で行く
ナビが海を目指す

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たんじょうび

いちがつみっかは
おじいちゃんのたんじょうび
さんがにちだから
わすれられない
みんながいわってくれると
わらっていたね

まごがじゅうにんもいて 
おとしだまがたいへん
けれどみなかわいい
どのこにも
こっそりみみもとで
「おまえがいちばん」と
ささやいておおきなてで
あたまをなでてくれる
おじいちゃんだった

九十五歳になるのです
おなじ小学校だった同級生は
一人残らず逝ってしまった
一番出来損ないが長らえた
と涙を流していたこと思い出す

無理やり肩を揺すられて
耳元で大声で叫ばれて
繋がれたままの点滴
浮腫んだ手足
ガリガリにやせた顔、からだ
「〇〇がきたよ」と起こされて
「ちょっとでも食べなきゃ」と
あんこを匙で口元まで運ばれる

「元気だして」
「また会いに来るよ」
孫達はかわるがわるにひ孫を連れて
おじいちゃんは目をうすらあけ
頷いたりほんのときどき
喋ったり

おじいちゃん
たんじょうびのひ
おもいだす
まいとし みんなでしゃしん
まんなかでわらっていたね

ながいきはしない
めいわくはかけたくない
とずっといっていた
おじいちゃん もうすぐ
きゅうじゅうごさい

どうかいまもしあわせだと
おもっていてほしいけど
どうだろう
きいてもこたえられない
おじいちゃん

ながいきしてほしいっていいつづけ
おもいつづけてごめんね
おじいちゃん

もうすぐ おたんじょうびだね
おめでとう



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木馬

回転木馬に乗る夢を見ました
木馬はぐるぐると回っていました
私はハンドルを握っています
木馬を漕ぐためのハンドル
それは役目もなく
飾りでした
私は回りながら考えています
遠くに置いたままのカバン
遠くに置かれたままの
リボンや傘やベルマークの袋
忘れたまま
雨に濡れてゆく数々の袋
体の外から内側から
絞り出されるカンジョウ
赤や黄色のレインコート
夕暮れ
パッチンどめをした女の子が
走って通りへ消えていった
回転木馬はぐるぐるとまわり
私は目覚めてもなお
どこかへと
ぼんやりハンドルを握っている

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絶対絶命

焦ってます

アブラ汗



シタタール

から

コマール

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過去作短編『水族館になりたい』


 曇り空が好きだった。彼女と会った日も曇っていたから。私は毎朝散歩する。朝が一番季節を感じられて好きだ。いつも同じ道を歩く。十分ほど歩いたところにある公園まで行って引き返す。十月の空気は透明。風は白い。空には羊雲が浮かんでいた。
 空き地のフェンスに朝顔の蔦が絡まり、花が疎らに咲いていた。あまりに可愛らしいお花だったから、思わずスマートフォンで写真を撮った。上手に撮れなかったけれど、Twitterに投稿した。すぐにいいねが何件かついた。私はスマートフォンをバッグに戻してまた歩き出す。


 昨日、私は仕事を辞めた。主治医から療養するように言われて、療養するくらいなら辞めてしまおうと決めた。障がい者雇用だったので、給料はそれほど望めるものではなかった。だから、あまり未練はなかった。
 高校三年の時に抑うつ症状が出るようになり、まともに学校へ行けなくなった。外出すると動悸がして、最悪過呼吸になった。原因はなんだったのだろう。交友関係は良好だった。いじめられていたわけでもなく、当時恋愛らしい恋愛もしていなかった。ただわけも分からず外に出ることが出来なくなった。
 何とか高校卒業はできたものの、大学進学はできず、ひきこもりになった。
 母の勧めで心療内科に通うことになった。母が送り迎えをしてくれた。
 主治医は優しげな初老の女性だった。初めのうちは主治医に何を話せばいいのかわからずに、わけも分からず泣いてばかりいた。そんな私に主治医は静かに微笑んで「ゆっくりでいいからね」とだけ言った。
 二ヶ月泣きはらした後、私は主治医に「死にたい」と告げた。どうしてそう思うのか私にもわからなかった。私は精神科に入院することになった。
 そして、彼女と出会った。六月。その日は一日中今にも雨が降り出しそうな曇り空だった。入院して一週間。私はほとんどの時間をロビーで過ごした。個室をあてがわれていたけれど、部屋にいるとどうしても泣いてしまうから、仕方なくロビーのソファーに座ってお茶を飲んでいた。
 誰とも話したくなかった。話しかけられると泣いてしまう気がした。だから、ロビーに人が集まり出すと私はそそくさと部屋に戻った。それでも、話しかけられることが何度かあって、その度にあいまいに笑って相槌を打つだけにした。
 お茶を飲み終えて、部屋に戻ろうとした時、後ろから「あの、」と誰かにに声をかけられた。私はしまったと思った。気づかないふりをして立ち去ることも出来たけれど、私は振り返った。痩せた背の高い女性が私の後ろに立っていた。彼女は美しかった。すらっとした手足。色素の薄い肌。茶色い瞳。薄いガラス細工のようにきらめいて、それでいて触れると壊れてしまいそうに見えた。私は見とれてしまった。彼女は眉をゆがめて「ごめんなさい、いきなり話しかけて」と言った。私は慌てて両手を振って「大丈夫……です」と答えた。
 彼女はあゆみと名乗った。苗字も教えてもらったはずなのに思い出せない。あゆみは同い年の大学生だった。あんなに人と話すことさけていたのに、不思議とあゆみとは何事もなく話すことができた。あゆみは入院してきたばかりで、人恋しさに歳の近そうな私に声をかけたのだと言った。私たちはたくさん話した。あの時、何を話したのか思い出せないけれど、たわいの無いことだったと思う。お互いの趣味や、好きな歌手だとか、そういった内容だった。
 私はあゆみと話しながら、人と話すことは楽しかったんだとしみじみ思い出していた。高校時代の友達との何気ない会話の端々が脳裏にチラつき切なくなった。でも、泣かなかった。泣いたらあゆみと二度と話せなくなる気がした。
 夜になっても私たちは話していた。看護師さんに寝るようにと注意されてもロビーで話し続けた。山奥の病院は星がよく見えた。あゆみはこんなにたくさんの星を見るのは初めてだとはしゃいだ。私はかわいいなぁと思って思わず笑った。
「ねえ、ゆきちゃん。私ね、水族館になりたいの」星空を見上げながら、あゆみは突拍子のないことを言った。消灯したけれど、ナースステーションの灯りのおかげで暗くてもお互いの顔がはっきりと見えた。あゆみの長いまつ毛に私は見とれていた。
「え?どういうこと?水族館になるの?」
「うん、水族館になる」とあゆみは力強く答えた。
「どうやって?」
「わかんない」あゆみは笑った。私も一緒になって笑った。
「水族館と言っても深海の生き物を集めたいの。館内はずっと薄暗くて夜みたいで。そういう水族館に私はなりたい」
「なんかよくわかんないけどあゆみちゃんが水族館になるなら、私は飼育員になるよ」
「やった!」あゆみは小さくガッツポーズをした。私はあゆみが言っていることを理解出来ていなかった。けれど、彼女の仕草ひとつひとつから会話を楽しんでいることが伝わり、嬉しかった。私も楽しかった。
「あ、流れ星」あゆみが空を指さして言った。私は彼女に見とれていて、流れ星を見ることができなかった。
「グッドなタイミング!水族館になれますようにってお願いした」と言ってあゆみは私の方に振り返り、微笑んだ。その時私はふと彼女はどうしてここに来たのだろうかと思った。けれど、訊いてはいけない気がして言わなかった。


 閉鎖病棟での日々は単調だった。私とあゆみは常に一緒にいた。二人きりでロビーの隅っこでお話ししていた。けれど、お互い何故入院したのか話すことはなかった。今日は調子が悪いとか薬が合ってない気がするとかそんな話はするのにもかかわらず。
「ねえ、ゆきちゃん。外出許可が降りたらどこに行きたい?」
「どこがいいかなぁ、とりあえずコンビニかファミレスがいいなぁ。病院食不味すぎ」
「わかるー。不味いっていうか味しないよね。でも、私は薬局行きたいな」
「薬局?どうして?」
「プチプラ買うの」
「プチプラいいね」と言いつつ私はメイクらしいメイクをしてこなかったなと思った。友達はしてたけど、私はあまり惹かれなかった。私はその事を素直にあゆみに話した。
「えー、もったいない。ゆきちゃん絶対メイクしたらもっとかわいくなるよ」
「そうかな」私は満更でもなく頬が熱くなるのを感じた。
 外出許可が降りたら二人で薬局に行く約束をした。薬局に行ってその帰りにファミレスでご飯を食べるプラン。
 しかし、計画は叶わなかった。あゆみが突然、退院したからだ。
 彼女は私に「ほんとにごめん」と言って折りたたまれた紙切れを渡して足早に去って行った。部屋で紙切れを広げると電話番号とLINEのIDだった。
 携帯を使える時間は限られている。予約制で一人三十分。携帯の時間、すぐにあゆみにLINEを送った。すぐに既読がついた。
「ちょっといろいろあっていきなり退院決まっちゃった。ゆきちゃんが退院したら絶対会おうね。メイク教えてあげる」
「ありがとう」とだけ返信した。あゆみは任意入院だったのだ。本人が退院したいと言えば、退院できてしまう。私は医療保護入院。外出の許可もまだ降りていない。彼女がなぜ急いで退院を選んだのか分からない。当然だが、あゆみに関して知らない一面がたくさんあるのだと思った。そう思っただけであゆみとの大きな隔たりを感じてしまった。


 あゆみがいなくなってから気づいたことがある。私は泣かなくなっていた。人に声をかけられることにも平気になっていた。私はもう退院しても平気なんじゃないかと思うようになっていた。そんな私の様子に主治医は外出許可を出してくれた。
 さっそく、私は外出した。近くの薬局へ。化粧品売り場をウロウロした。アイシャドウひとつとっても種類が多すぎて、何が自分に似合うのか検討もつかなかった。結局何も買わなかった。帰りにコンビニに寄っておにぎりを買った。味がある!それだけのことに感動した。でも、そう感じたのは最初だけで、散歩がてらにコンビニに行って何か食べるようになると格別美味しいものでもないなと思った。思えばこの時から散歩が好きになった気がする。同じ道を歩くのだが、日によって、時間によって、空気が違う、景色が違う、すれ違う人の年齢層が違う。そういったかすかな変化を見つけることが楽しかった。
 あゆみとはこまめに連絡を取り合っていた。彼女は大学生活を満喫しているらしかった。退院したら会おうと言っていつも会話は終わった。なんとなく私はあゆみと会うのが億劫に感じてきていた。もし退院がスムーズにできたとして、私にはそこから先の道が何も決まっていなかった。また外に出ると体調崩すようになるのではないかと心配だった。それに就職活動をしていくだけの体力が自分にあるとは思えなかった。そんな不安からか、それとも少しの妬みからか、大学でいきいきとしているあゆみを想像すると、私は複雑な気持ちになった。彼女には彼女の生活を楽しんでもらいたいのに、素直には喜べなかった。


 十月。私は退院した。空は曇っていた。久しぶりに帰った実家はどこか狭く感じた。自室に入ると懐かしさで胸がいっぱいになった。たった四ヶ月家から離れて暮らしていただけなのに。
 両親はまだ退院したばかりだから、ゆっくり休みなさいと口を揃えて言った。それもそうだと思った。だから、退院して最初の一週間は何もせずにのんびり過ごした。毎朝散歩するようになったのはこの時からだ。
 あゆみと再会した。再会のはずなのに、入院中のパジャマ姿しかお互い知らなかったからはじめましての気持ちになった。あゆみは相変わらず痩せていたが、ブラウンのカーディガンに、黒のワイドパンツ姿で大人びて見えた。「かっこいいね」と私が言うと、少し照れながら「ありがとう」とあゆみは答えた。二人とも妙に緊張してぎこちないやり取りだった。
 約束通り薬局に行き、あゆみが私に合いそうなプチプラを選んでくれて、その後ファミレスに行った。
 退院前はあゆみに複雑な感情を持っていたが、会ってみると入院中の会話を思い出してやっぱりこの子といると楽しいと思った。
 ファミレスでたくさん話した。あゆみは学祭の準備で追われているらしかった。私はあゆみが退院してからの入院生活の話をした。これと言って面白いこともなかったのだが。
 私は今なら訊いてもいい気がした。
「ねえ、あゆみちゃんはどうして入院したの?」
「ああ、言ってなかったっけ?ODして運ばれたんだよ。ICUにいたらしいの。そこから精神科に移されて、最初のうちは暴れたり、看護師さんに暴言吐いたりして大変だったらしい。よく覚えててないんだけど。それで隔離室にいれられて、落ち着いてきて普通の病室に入れた。そのタイミングでゆきちゃんと会ったってわけよ」
「ICU!そんなにやばかったの!?」
「うん、やばかったらしい」
「何があったかのか訊いてもいい?」
「いやぁ、お恥ずかしい話なんだけど」と言って、あゆみは少し首を傾げて本当に恥ずかしそうにして小声で「失恋」と言った。
「失恋」と私も小声で言う。
「私、彼女がいたの。彼氏じゃなくて」
「うん」と頷いたものの、内心驚いていた。それを察してか「いや、いきなり彼女がいたって言われてもビビるよね」とあゆみは笑った。どこか憂いを帯びて見えた。
「私、バイ・セクシャルなの。まあ、それはいいとして、とにかく彼女がいてね。その彼女が他所に男作ってて、大喧嘩になったの。そしたら、彼女が死ね!っていうから、私も死んでやる!……でODしたのよね」
「すごい話だ…」
「アホでしょ?」と自嘲気味にあゆみは笑った。ううんと私は首を横に振る。
「だから、水族館になりたいの」
「ほう」
「水族館の特に大水槽になりたいの。大小色んな海の魚が一緒くたに住んでて見ててわくわくしない?あんな風にたくさんの生き物を包み込みたい。くだらない恋愛の悩みなんて忘れてさ。それにゆきちゃん飼育員なってくれるんでしょ?」
「うん!もちろん」


 あの日ファミレスで会ったのを最後にあゆみと会うことはなかった。その翌日に「海を見に行く」とLINEが来て、十月なのに海?と疑問に思ったが、「行ってらっしゃい」とだけ返信をした。そして、彼女は消えた。LINEの返信はなく、通話も出ない。SNSの更新はなくなった。彼女の家族の連絡先なんて知らなかったから、彼女がどうなったのか私には確認のしようがなかった。あの時、どうして海に行くの?と訊くべきだったのかもしれない。それは今となってはわからない。


 それから五年。就労移行支援を利用して、何とか入社した会社を三年勤めて昨日辞めた。寛解していた鬱が再発して、仕事を続けられる状態じゃなかった。また入院するかもしれない。
 今にも雨が降りそうな曇り空。ふとあゆみは水族館になれたんじゃないかと思った。もちろん、根拠はない。空を見上げる。分厚い雲。「あゆみちゃん、私あれからメイクが好きになったんだよ」と心の中で語りかける。
 病棟で話しかけてきたのは歳が近そうだったんじゃなくて、単なるナンパだったのかな。なんの脈絡もなくそんなことを思った。
 さっき撮った朝顔の写真に十件のいいね。私はTwitterに「海を見に行く」と投稿する。スマートフォンをバックに戻すと家とは反対方向に歩き出す。彼女に会いに行くために。



 おわり。

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船を出すのだ

 

船を出すのだ

絶望の北風を帆に受けて
船を出すのだ

たどりついた先で

乾いた大地を潤すのだ
うずくまる彼の悲しみの雨で

そうしてぬかるんだ彼の足跡に
種を蒔いてゆくのだ

種を
蒔いてゆくのだ
  

 

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しらやまさんのこと 2

そこから先には進めないときがある
そのたびに思い出す風景があって
背中の方から温もりを感じながらも
とても不安そうな少年の瞳に

問いかけられた言葉

飲み込めないまま
風にもなれず

ときおり
あの雲のように
勝手にすっと入ってきては
心臓のちょっと下あたり
ふるふる
として浮かんでくる

問いかけられた言葉は
そこから先には進めない風景の中で
夕陽にさえ染まらずに
僕は今でも噛み砕いている

遠くの踏み切りや
帰る自転車の光に紛れながらも
遠く 遠くの
空から降りてくるものが見えても

それを今でも
噛み砕いている



   

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涙の聲

雪の内に 春はきにけり
鶯の こほれる涙 今やとくらむ
とや古のひと詠みてより 日を重ね
谷のかげ
氷は消えず 水はまだ 音を立てねば
枝にゐる 鶯のこゑおとづれず
春の名のみそ行きかへり
花をりの 空やはらぎて
光のみ先だちぬれど
声のほど 知るすべもなく 時は過ぎ
今もなほ
解くと知られぬ
まゝにぞありける


 


 本歌は、春の到来がすでに言い切られているにもかかわらず、氷の融解や鶯の声といった出来事が成立しない状態を、長い時間の経過の中で反復的に描いている。春は来ているが、世界はそれに応答しない。その応答の欠如は、感情や象徴としてではなく、語の表記や文法のあり方そのものによって支えられている。
 春の到来は冒頭で「来にけり」と明確に言い切られている。「来」に完了の助動詞「ぬ」、さらに過去/詠嘆の「けり」が接続しており、文法的には、出来事はすでに成立している。この確定性は揺るがない。
 しかし、歌の内部では、その到来を裏づけるはずの出来事がことごとく起こらない。氷は消えず、水は動かず、鶯は鳴かず、涙もまた変化に至らない。春は来てしまっているにもかかわらず、春的な出来事は何ひとつ起きていない。
 この停滞は、まず表記の水準に現れる。「こほれる」は仮名で書かれており、「凍れる」「毀れる」「溢れる」という異なる語義を同時に許す。ここでは、どの語義を選ぶかという判断そのものが要請されていない。語義はいずれも呼び起こされるが、最後まで到達しない。仮名表記は、意味を曖昧にするための便法ではなく、出来事が完遂されない状態を保持するための条件として機能している。
 同様の構造は、文法の水準にも見られる。結句に置かれた「知られぬ」は、動詞「知る」の未然形「知ら」に助動詞「る」が接続し、その上に助動詞「ぬ」が重なった形である。このとき、助動詞「る」が未然形として解されるか、連用形として解されるかによって、後続する「ぬ」の機能が分岐する。
 すなわち、「る」を未然形と取れば、「ぬ」は否定の助動詞「ず」の連体形となり、「(人に)知られていない」「(自ずと)知られない」という意味が成立する。一方、「る」を連用形と取れば、「ぬ」は完了の助動詞となり、「(人に)知られてしまった」「(自ずと)知れてしまった」という意味が成立する。いずれの解釈も文法的に正しく、語形そのものからは、どちらか一方を排除することができない。
 その結果、「知られぬ」という一つの語形の中に、知ることがいまだ成立していない状態と、すでに成立してしまった状態とが同時に圧縮される。意味は一義に定まらないが、ここで問題となっているのは、単なる意味の曖昧さではない。知る、という出来事そのものが、成立の途中に置かれ、完結に至ることを拒まれている点である。
 否定として読めば、知はまだ訪れていない。完了として読めば、知はすでに訪れてしまっている。しかし、いずれの場合にも、ひとは「知らない者」としても、「知ってしまった者」としても確定されない。ここで語られているのは知の可否ではなく、完結しない知に類する。
 推量表現「今やとくらむ」もまた、この時間の緊張を別の角度から支えている。「らむ」は現在から判断の留保を含む推量語であるが、その前に置かれた係助詞「や」に注目した。上代語において「や」は、必ずしも疑問を表す語ではなく、事態の断定表明として強く機能しうる係助詞であった。本来は文末に置かれ、語調を確定的に引き締めるこの助詞が、文中に入り、連体形を要求することで、結びの力を保持したまま配置されている。
 その結果、「今や」は出来事を単に現在へと近づけるのではなく、出来事がすでに成立しているかのような切迫を文の内部に生じさせる。この確信を帯びた表明が「らむ」という推量と結びつくとき、判断は弱められる方向へは動かない。むしろ、確信と推量とが同一箇所に重ねられることで、出来事は成立寸前まで引き寄せられ、そのまま確定に至らずに停止する。
 涙について起きているのも、同じ停止である。涙は流れ始めているようで、完了しない。凍っているとも、毀れているとも、溢れているとも言えるが、いずれにも決定されない。涙は感情の象徴としてではなく、出来事が完結しない相そのものとして配置されている。
 この長歌は、藤原高子歌に含まれる表記上・文法上の緊張への応答として構成した。高子歌において、「こほれる」が凍結・毀損・溢出という複数の語義を同時に許し、「今やーらむ」が確信と推量とを重ね合わせて出来事の成立を宙づりにしているのに対し、結句において、「(今もなほ)解くと知られぬ」という否定と完了の両義を含む統語句を用いることで、出来事が完結しない状態を文法的に引き受けた。ここで行いたかったのは、詩的緊張そのものへの応答である。

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一年の計は元旦にCreative Writing

―姪浜伊都―

 ストーブの上で、やかんがしゅんと小さく鳴った。
 わたしはページをめくる手を止め、能古は毛布にくるまったまま、ちらとテレビを見る。

「……お姉さま、また変なニュース出てる。未着衣の巨漢男性が、何かCreative Writingがどうとか駅前で叫んで逮捕されたって……。
 ……年の瀬なんだから、猫とか、ねことか、ネコとか映してくれればいいのに」

「猫の方がずっと平和ね。
 新年を迎える前に、こんなの見せられても困るわ」

「でも、新年だからって、そんなに変わるものかな?こういうニュース、いつでも起きてるような気もするけど」

「変わらないようで、変わるのよ。暦は、気持ちを整えるための仕掛けだから」

 能古は少し黙って、こたつから顔だけ出した。
 その頬は、ほんのりと赤い。

「……お姉さまって、ときどき天文愛好家みたいな話するよね。わたし、まだまだ追いつけてない気がする」

「追いつかなくていいわよ。おとちゃんの歩幅の方が、たいてい正しいもの」

 能古はまるくなって笑う。
 その笑い声に、年末の静けさがやわらかく混ざった。

「で、投稿のネタはあるんですか?どうせ書くんでしょ、元旦に匿名で、文藝サイトに」

「元旦になってから考える。郵便ポストを見て、それから」

「年賀状、ですか?」

「さっきの逮捕された男だけどね、わたし、文藝サイトで知ってるのよ。よく“郵便ポスト”がどうとか書いている人」

「……あ、あれかぁ」

 言葉が止まった。能古も同じ画面を見ている。
 ふたりで、こたつの中でくつくつ笑った。
 笑い声は、夜の空気をひとつぶ分だけあたためる。

 わたしは、ストーブのそばに置いていたみかんを手の中でころがす。
 指先に、ほんのりとした熱。

「去年の年明けは、ここで一人だったのよ。年末にとりあえず引っ越してきて、まだ大叔父様の頃のままだったし……。“寒っ”って言ったの。新年最初の言葉が、それ」

「お姉さまらしいって言えばらしいですけど……ちょっと、もったいないですね」

「ええ。だから今年は、もう少しあたたかい言葉を言いたい、かな」

 能古がそっと、わたしの膝に近い方へにじり寄る。

「じゃあ、“みかんがあったかい”はどうですか。……なんか、お姉さまのノートに書いてありそう」

「うん、そうね。そんな始まり、悪くないわ」

 わたしはゆっくりと、みかんの皮に指を入れた。
 柔らかな香りが、部屋にふわりと広がる。

「元旦になったら、ポストを開けて、みかんむいて、詩を書く。それでいいわよね」

「はい。 その順番、好きです」

 やかんがまた、ひとつ音を立てた。
 ふたりのあいだの距離は、気づけばすこし狭くなっている。

「お姉さま。新年、ゆるく始めましょうね」

「ええ。おとちゃんと一緒に、ゆるく、ね」

 その言葉のやさしさが、年の変わる前の夜を静かに照らしていた。



――たまに、まだ、書くかも?

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幼と老

落とす
こぼす
むせる
付着する

しかし味わう

慎重に

補助を得て

味わう

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象にお雑煮 ーー ごった煮 ーー

象にお雑煮 ―― ごった煮 ――


笛地静恵


あけましておめでとうございます
今年もよろしくお願い申し上げます

二〇二六年

笛地静恵 


一 俳句


合鍵のひとつばかりを四十雀



女郎蜘蛛胴太し輪して動ぜず



船長の後生大事の胡椒船



人を見る目のことわりよ雪割草



寒牡丹女子の戦の開きけり



追討の七日も知らぬ姫椿



木枯しのカラス意外の村の墓地



雪女雨戸の穴をふさぐべし



二 短歌


ひとつの指輪はすべてを統べ結婚の中につなぎとめる



わが手には指輪なけれど老いの日はビルボのごとくうすくなりけり



キッチンへ指輪を流し青ざめる純情の日々われにありきや



またしてもさとうきび畑けがされざわわざわわざわざわざわわ




三 ジュニーク


溺れる魚つかむサメ(題:いや、それ、違うから)



スジを通せり筋子氏(題:尊敬)



河童は脱皿しました(題:自由)



満月孕む黒い森(題:独逸)



前のひとの黒いウンチ(題:がっかり、66で)



アメ色ヘ空き家の雨戸(題:廃村)



ねんねんころりねんごろに(題:こわい)



魔の好きなこころのすき間(題:風)



ひろった棒のホームラン(題:幸運)



円滑に円すべり落ち(題:経済)







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アウト・オブ・コントロール二〇二六 ーー 俳句十句 ーー

アウト・オブ・コントロール二〇二六 ―― 俳句十句 ――



笛地静恵




あまりにも対外的に知恵詣



人類の裁判のため鶴帰る



竜骨は腐り百千鳥遊びぬ



気づきしかことわりのなしネギ坊主



カニカマの主旨を曲げつつ雀の巣



こんなにも温室的な桜魚



花札の血と肉臭う渡り漁夫



鰐さえも任せるべきや目借時



癖になる眼球トリップ花菜漬



時代への制御不能の春来たる





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「まず」の時間──月の光と影を見る水

大空に月の光し清ければ
影見しみづぞまづこほりける
(古今集 巻第六 冬歌 316番 よみびとしらず)



 
 本文では、古今集に収められた一首を取り上げ、その詩的構造と時間性を検討する。
 この歌は冬歌として分類されるが、単なる季節詠や自然描写にとどまらない。月の光、影、水、そして「こほりける」という語が、因果的説明を拒みながら配置され、出来事が成立する瞬間そのものが静かに捉えられている。
 

二 

 まず注目されるのは、月をめぐる表現が「月の光」と「影」とに分節されている点である。和歌の伝統においては、「月影」という語が示すように、光と影はしばしば分かちがたく結びついたものとして扱われてきた。しかし本歌では、その等価性がいったん解かれ、両者が異なる位置に置かれている。
 「月の光」は「清ければ」と形容され、大空に遍在するものとして提示される。その清さはすでに成立した価値として前提されるが、出来事を直接に引き起こすことはない。一方、「影」は、見る対象として明示され、水の変化を導く契機となる。ここで重要なのは、光と影が優劣や一次・二次の関係に置かれているのではなく、異なる位相として分けて配置されている点である。
 



 「影見しみづ」という表現において、水は単なる反射面ではない。文法的に見ても、水が見たのは明確に「影」であり、月や光ではない。作者は、見る対象を意図的に限定している。
 ここで用いられている「見し」は、過去を表す助動詞「き」を伴い、見るという行為がすでに成立してしまっていることを示す。しかしその完了は、理解や判断の完了を意味しない。何をどのように見たのかは語られず、ただ「影を見てしまった」という関係の成立だけが提示される。
 この限定性によって、光は性質として前提されるにとどまり、見ることが可能なのは影だけであるという構図が成立する。光は清く、遍在し、疑われる余地のないものとして置かれるが、可視的な対象とはならない。見ることが許されるのは、関係の中で局所的に立ち現れた影だけである。
 



 結句の「まづこほりける」に置かれた副詞「まず」は、時間的先行を示す語であるが、その先行が何に対してのものなのかは明示されない。「まず凍った」と言われるとき、その後に続くはずの出来事は語られず、因果の連鎖は意図的に断ち切られている。
 この語は、変化が説明や理解に先立って生じてしまったことを示す。水は影を見てから変わったのではない。影を見てしまった時点で、すでに変わり始めている。「まず」は、その先行性を指し示すための最小限の語であり、出来事が意味に回収される以前の時間を示している。
 



 「こほりける」という語は、「凍る」「毀れる」「溢れる」という複数の語義を同時に許し、変化の内容を一義に定めない。ここで示されているのは、結果として確定された状態ではなく、変質が避けがたく生じてしまったという事実である。
 和歌の表現史において、水はしばしば心の比喩として用いられてきたが、本歌ではその比喩は前景化されない。水はあくまで水として描かれ、その振る舞いのうちに、出来事の構造が封じ込められている。変化は心理化されず、しかし完全に物理現象へと回収されることもない。
 



 冒頭の「清ければ」は已然形による条件節であり、すでに成立している事態を前提とする。しかしこの已然形は、単純な因果関係を導くものではない。月の光は清らかであるにもかかわらず、その清さが穏やかな結果をもたらすことはない。
 むしろ、清さが確立されているからこそ、出来事は別の形で現れる。已然形「清ければ」は、期待される連鎖を断ち切るための前提として機能している。清らかな光のもとで生じるのは、透明な理解ではなく、影を見た水の変質である。価値の成立と出来事の発生とが一致しないという経験的構造が、ここに示されている。
 



 本歌が冬歌であることもまた、偶然ではない。冬は、出来事が進行する時間を停止させる季節である。凍結は、徐々に移ろう変化ではなく、ある閾を越えた瞬間に成立してしまう状態である。過程は可視化されず、結果だけが先に現れる。
 春であれば、変化は再生や循環の文脈に回収されてしまう。凍りは解け、出来事は次へと進む。しかし冬においては、変化はそこで止まり、意味は保留されたまま留め置かれる。本歌が描いているのは、成立してしまった出来事を抱え込んだまま進まざるをえない時間である。
 凍るという語が選ばれたのではない。凍ってしまうほかない時間が選ばれているのである。
 



 この歌は、自然現象の因果を説明しない。清らかな光は前提されるが、見ることができるのは影だけであり、その影を見た水が、まず変わってしまう。その変化が何であるのかは、最後まで語られない。
 「まず」の時間とは、出来事が意味に回収される以前の時間である。理解や解釈に先行して、変化が成立してしまう時間である。本歌は、その時間を、月の光と影、水という最小限の配置によって、冬という季節の中に静かに留めている。





大空に澄みわたる月の光、そのもとで、水が影を見て、変わってしまう。ただそれだけの出来事である。
しかしこの水は、「みづ」であると同時に、「みつ」でもある。影を見たから凍ったのか、見なかったから凍ったのかは、表記の上からは判別できない。この時代、濁音はまだ書き分けられていなかった。
大空に光る清い光、それはあなたの表の心であり、表の言葉なのだろう。けれど、私にはその裏が見えてしまったのかもしれない。あるいは、本当は見えてなどいなかったのかもしれない。ただ、「清けれ」という已然形を考えるなら、私は見たのであろう。あなたの清さゆえに生じた、その逆説を。
いずれにしても、私の心は、あなたの心、あるいは言葉の影に触れて、まずこほってしまった。私の涙は、そのようなものだったとしか、言いようがない。

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批評・論考

えんとつになりたがる指



指先へ火が
燃えひろがり
そこに水が降り注いで
煙草みたいね, と
灰が笑った
しらじらしい熱
首筋がぬめり
皺々に時が
逆行していく。

曇って行く台所の硝子に 内側から
指は赤く   火照る
えんとつに なりたがっていた。

なぜ 今日は これほどまでに
ミゾオチから

焦げ臭い匂いがする


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A Treacherous Cerulean

校舎の裏手、忘れ去られた温室の最奥に、私は飼っている。隕石が降ったあの日から、外の世界は灰色の雪に閉ざされ、街は均質な絶望に塗り潰された。大人たちは限られた電力で合成食料の苗を育てることに必死だ。
水銀のように光る葉を持つシダ、触れると琥珀色のハミングを返す苔、そして、心臓の鼓動に合わせて燐光を放つ青い花。
学校の「植物研究部」という隠れみのを使って、彼らに特別な光を与えていた。
効率重視の光照射――合理的な手法。それは確かに、食料用のトウモロコシを太らせるには最適かもしれない。けれど、そんな死んだ光では、私の愛する彼らの魂は救えない。
[Table: 私の密やかな観察日記]
| 観測対象 | M1近似| 私の「口づけ」 |
| :--- | :--- | :--- |
| 銀河苔 | 一様に緑に沈む | 光子と衝突し、星図を描く |
| 琥珀苔 | 腐ったような茶色に | 複雑な屈折を経て、歌を歌う |
| 心臓花 | 脈動を止める | 影の中でだけ、紅く爆ぜる |
光が衝突し、複雑な経路を辿り、捩じ切れるほどの干渉。その微細な挙動の中にこそ、この星から失われた魔法が宿る。
けれど。
私が自分の温室を異形の極彩色に育てるために、校舎全体のエネルギーを盗んでいたことが露見したのだ。
外では、雪が灰の匂いを伴って、すべての個性を埋め立てている。
なるほど、私は「人類という種」の物語において、まぎれもない悪役だ。
みんなが泥水を啜って手を繋ぎ、不格好に生き延びようとする中で、私はただ独り、この世の終わりみたいな美しさに陶酔し、未来を食い潰した。
私は、懐に隠していた小さな鉢を取り出した。
そこには、私が盗み取った光の残滓を吸って、宇宙の深淵よりも深く、燃えるような青を湛えた蕾があった。
不格好で、不必要で、けれどどうしようもなく誰かの救いになってしまう何かが。あるいは夢見た真空の向こう側の風景が、この小さな花弁の裏側に、確かに書き込まれている。
窓の外では、隕石の傷跡のような夕焼けが、雪に反射して不気味に輝いている。
私は、平均化された生存よりも、衝突し、火花を散らす瞬間を選んだ。
たとえこれが、人類に対する裏切りだとしても、私はこの光をたった一輪の青に捧げたことを後悔できない。
「さようなら、正しい世界」
私は屋上のフェンスを背に、自分だけの銀河を抱きしめた。
天井が割れ、冷たい雪が降り注ぐ中、私の指先で、世界で一番わがままな青い花が、静かに、そして残酷なほど美しく、その花弁を開こうとしていた。

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痛みを乗せる

男のため息がオゾン層を破壊している。
彼はタクシー運転手だった。
タクシー運転手として、
働いているようで、
彼は一度も働いたことがなかった。
いや、正しくは、
この世に働いている人なんて、
一人もいなかった。
実は人間なんていない。
痛みだけがある。

タクシー運転手は、
両肩のプラグを外して、
背負っていた、
ポータブル充電器を、
外した。
最近腰痛がひどかった。
どこにも行き場がないのに、
家にだけは毎日帰った。
過充電が原因とわかっていても、
働かないわけにはいかなかった。
痛みの影のようなものが、
彼に付きまとっていた。
生きていると思うのは、
痛みを感じる時だけだ。
それ以外の時間は、
化石燃料をつかい、
昼夜空気を汚している。

彼はタクシー運転手だった。
誰ものせたことのない。
個人事業主だった。
痛みを乗せて、
痛みを下ろし、
また、別の痛みを乗せた。
今日もまた、
男のため息がオゾン層を破壊する。
過充電で熱くなった腰を庇い、
痛みの影に、
追われ、追いすがるのだった。

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雉も鳴かずば撃たれまい(新釈ことわざ辞典 その2)

****

秋に扇なんて 風流でも気取ってるつもりなの
夏の名残を惜しみたい気持ちはわかるけど
そんな手扇の風なんかよりも
この心地いい秋風を
もっと素直に受け入れたらどう?


****

雲泥の差ってさ
あの空をプカプカと浮かんで 
呑気そうに泳いでる雲と
ぬかるんで滑って転げてしまいそうで
汚れたら ちょっとやそっとじゃ
落ちそうにない泥
比べようのない両者を 
何故に無理くり比べては
優劣をつけようとするのかしらね
あの呑気そうな雲だって 
時には怒り狂って悪さもするし
扱いが厄介そうな泥にだって 
きれいな花が咲いたりもする
いいとこもあれば悪いとこもある

つまるところそれが 
多様性っていうものなんじゃないかしら


****

鵜の真似をする烏って嘲笑するけれど
泳いでみたい烏がいたっていいじゃないの
溺れることがわかってて
それでも水の中に入ってみたかった
わかってるよ どんなに憧れたって
鵜にはなれないことくらい
烏は所詮ひとに嫌われるゴミ荒らしの烏
どう足掻いたって鵜にはなれっこない

それでも
それでもさ


****

鴨が葱背負ってやってくるわけないじゃないの
そんなことしたら鍋にして食べられちゃうのよ
食べられる気満々で 近づいてくるような奴がいると思う?
何でわざわざそんな危険を冒すような真似をするっていうのよ


****

腐っても鯛なんていうけど
それってただいつまでたってもプライドを捨てられない
見栄っ張りのコンコンチキなだけでしょ
だって腐ってるのよ 悪臭放ちまくってるのよ
もうどうにも出来ないのよ
いくら高級食材だからって
少しばかりチヤホヤしすぎなんじゃないかしら


****

飼い犬に手を噛まれたって
そんな烈火のごとく怒ることなの?
ひとがこんなに可愛がってやってるのにって?
こんなに世話してあげてるのにって?
少し冷静になって考えてみるといいわ
犬にだって 人権ならぬ犬権というものがあるのよ
よほどあなたが何かしたか 躾が悪いか
まるで犬の方が悪いみたいに決めつけるのは
やはりどうかと思うわ


****

地獄に仏っていうけど
毎日が苦しく辛く 
どんなに頑張っても踏ん張っても報われなくて
いいことはほとんど起きないのに
次から次へと悪いことしか起きない
もうどうしていいのかわからないそんなときに
ふっと誰かにやさしくされたら
誰だって神様仏様のように見えるに違いないのよ
ついつい情にほだされて 身の上話なんかしちゃったりしてさ
でも そんなに簡単に信じて大丈夫?
弱っているときほど つけこんでくる人間というのは
世の中に ゴロゴロ転がっているものなのよ
これこそまさに地獄に仏っていうものなんじゃないかしら


****

坊主憎けりゃ袈裟まで憎い
袈裟が憎けりゃ数珠まで憎い
数珠も憎けりゃ足袋まで憎い
足袋が憎けりゃ
連鎖する 連鎖する
遠くの寺から聞こえる 鐘の音
行きはよいよい 帰りはコワい
とおりゃんせ とおりゃんせ


****

善は急げ 急げ急げ
急いで走れ 突っ走れ


****

堪忍袋の緒が切れました
ブチっという鈍い音が たしかに聞こえました
ブチキレるとはつまり そういう意味だったのです


****

どんなに煮え湯を飲まされても
喉元すぎれば熱さも忘れてしまう
だけど 煮え湯を飲まされた事実は消えないわ
火傷した喉が ヒリヒリと
爛れた皮膚が 剥がれて落ちる
あたしの中の 大切だった何かが
ほらまた剥がれて落ちる


****

残り物に福があったためしはあって?
売れ残りのバーゲン品にいいものがあったためしがあるかしら
おいしいところは全部先に持ってっちゃって
残り物に福とは凄まじい


****

引かれ者でも強がりくらい云ったっていいでしょ
小唄のひとつも歌えなくなってしまったらお終いよ
それに こんなの平気へっちゃらって思ってでもいなけりゃ
とてもやってられやしないじゃないの


****

溺れるものは藁をも掴む
追い詰められたら
人間 何をするかわかったものじゃないわね
必死になっちゃうのね
おかしいわね おかしいわね
あれほど死にたがりだったくせしてさ


****

枯れ木も山の賑わい
あれは木が枯れているわけじゃなくて
葉が枯れ落ちて 枝がむき出しになってるだけですから
失礼なことは云わないでいただきたい


****

へそが茶を沸かすところを
一度でいいから見てみたい






****

そんなくだらない空想にふけっては
今夜も午前様です









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うみのいきものからの投稿

19:17

95
投稿
_ みんな来世は何になりたい?自分?アッパレなご回答〜!
結局人間は幼少期のトラウマで予後が決まるらしいよ。私は幼少期の逆境経験でノックアウトらしい!そりゃそうだ、高校生の頃なんて不登校になってるんだから笑笑でもねでもね、この世界では自殺したら負けらしいよ。
私はに精神的に参ってしまってるから差別されてるんだ!精神障き者とは、わたしのこと(0.9鬱とは、わたしのこと(a
9)だって普通に頭おかしいからね。自分が普通の人に擬態するために必死。今月は何回発狂したんだろう。朝起きる理由がないよーーーーーーー 大切がズタズタにこわれたよーーーー
-もうすぐ入院させられるらしい
幽霊みたいな幻覚が見えたり感じたり、誰にも聞こえない声が聞こえたり、悪魔に殺されそうになったり追いかけられたり命合されたり、急に動悸が始まって過呼吸になったりなんて、普通の人はないんだ...ってことに気付いてひとりでシクシクと泣いている。みんな知らないんだ。ねえ、わたしの腕はきれいですか?こんな経験あってたまるか。返してくれ。どうして私はこんなに苦しいんだと泣くと、みんな苦しいよと諭されますがその苦しみは一体どんなものが見えて聞こえて感じられるんですか?人の苦しみは人それぞれだからって軽んじないでよね。
あなたが苦しいとママも苦しい?ふざけるな!そんな無責任なこと、産んでおいてなんでそんな事言うんだよ、ニコニコしながら夏に長袖を着てる私がいても、幸せなのかよ!血が繋がってるからって感情まで共有してたら頭がおかしくなる。だから私は差別されるんだ。周りの人までも、不快にさせ、どん底まで突き落とすから。夢か現実か分からない場所を彷徨って歩いて緊急搬送されて、吐いて吐いて吐いて吐いて吐いて吐いてやっと貰えたママからの言葉は、「なんであなたが生きてておじいちゃんは死んでるの?」産んでおいてなんでそんな事言うんだよ。そんなこと、おじいちゃんに聞けば。あたし知らないよ。
オーバードーズ!オーバードーズ!オーバードーズ!オーバードーズ!オーバードーズ!オーバードーズ!オーバードーズ......
誰かが私の内側に入ってくる。
ねえ私も病気さえなければ在学中に留学して、大学を卒業して、就職して、誰かとケッコンしてー......赤ん坊を産んだり、みんなと遊んだり、家族で旅行に行ったりできたのかなぁ....インスタ消したほうがよさそうな人ランキング1位に輝けそう
(@*)すてきー!
こんな辛い世界味わうくらいなら死んだほうがマシ。あっ、自殺は負け組なんだっけ。他殺ならええんか?死んだら還してね、海に...。私は海の生き物に、生まれ変わろうと思う。
5日前

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棺桶のちっちゃいくま

 天国らしい天国。閻魔様だか神様だかが「お前は地獄行き!」とか審査しそうなデスクがある。その席に座っているのは美緒である。最後の審判は好きな人の姿の何かに下されるシステムらしい。クレーム防止に良さそう。

 たぶん死んだ奴のリストか何かがあるんだろう。美緒がパラパラと書類をめくる。

「すえながあきのりさん?」
「りょうすけです」

 ふりがなは振っていないらしい。

「あれ、ごめんね。りょうすけさんね、この今の私との会話もそうだけど、ここで起きてること、全部現世で言う“夢”だから。現世の“夢”はその日にあったことの整理だけど、これは現世の通算の、りょうすけさん的には26年かな、それの整理だから。現世でもよく『あきのりさん』て間違えられたでしょ?そういう現世でよくあったこととか印象に残ってることとかの整理を今してるってこと。ほら、ぼくの姿もだんだん見覚えある感じになってきたでしょ。よく覚えてるねこんな10年くらい前のドラマのサブキャラ。好きだったのかね」

 美緒の声のままだから、美緒の姿のままだとばっかり思っていた神様は、いつの間にか有名なコメディ俳優の姿と声になっていた。アハ体験。

「どう? 何か質問ある? 聞かれてもりょうすけさんの想像の範囲の答えしか返ってこないけど」

 夢みたいなものならそりゃそうだろう。コスプレみたいな衣装を着せられたコメディ俳優に質問する気も起きないので「とりあえずこの辺りを見て周ります」と返す。

 さて、どこに向かおうか、と俳優から視線を移した瞬間、ポン、と足元に段ボールが一箱現れる。パンダのマークの引っ越し屋さんの段ボール。記憶が曖昧なのか、パンダの顔がぼやけて見える。

「お、火葬終わったみたいね」

 言われてみればちょっと燻り臭い。
 ガムテープを剥がし、中を覗く。思ったよりもカラフルな花が入っている。棺桶に花って入れるんだっけ。久しく葬式にも行っていないので覚えていない。
 ユリを何本か退かすと【ちっちゃいくま】と目が合う。とろんとしたタレ目。妹に齧られて欠けた鼻。

「あら、かわいいしろくまさん」
 コメディ俳優が言う。

【ちっちゃいくま】は妹の誕生祝いに親戚が妹に贈り、私が5歳の頃に妹から譲り受けた白熊のぬいぐるみである。(ちなみに譲り受けた理由は妹がおもちゃ屋さんで【おっきいくま】を見つけてしまい、こっちがいいと泣き叫んだ挙句、まだ売り物だった【おっきいくま】をヨダレでべちょべちょにして弁償の形で手に入れたためである。)

 私はこの【ちっちゃいくま】をかなり可愛がっていて、妹から譲り受けた5歳のあの日から人生を閉じることとなった今日までの21年間、【ちっちゃいくま】を枕元に置いて眠った。
 別に抱きしめないと寝られないかと言われるとそうでもなく、むしろ滅多に触れることもなかったが、住んでいたアパートの別の部屋に空き巣が入ったと騒ぎがあった日、帰宅して印鑑と通帳の無事を確認した次に、【ちっちゃいくま】の無事を確認した。そんな程度には愛していた。

「ずいぶん大事にしてるね」
 コメディ俳優は頭の中を覗いているのか私の動作を見てなのか絶妙なちゃちゃを入れてくる。夢のようなものならまあ、仕方ない。

【ちっちゃいくま】への愛は若干のコンプレックスで、例えばマッチングアプリで会った女の子を家に招く日はクローゼットにしまった。美緒と付き合いだしてからも美緒を家に上げるときはいちいちクローゼットの定位置に隠していた。
 何のタイミングだったか、ある日美緒に見つかって、別に引かれもしなかったが「こいつは死んだら棺桶に入れてほしいくらい大切な奴なんだ」と謎の弁明をした覚えがある。

 そんな愛する【ちっちゃいくま】。誰かが棺桶に入れてくれたんだ。違うか、夢みたいなものだから願望か。
【ちっちゃいくま】のお腹に鼻を埋める。ふわふわ。ちょっと胸の辺りが禿げてる。去年買ってみたぬいぐるみ用の柔軟剤の匂いがする。

 別に動揺していたつもりもなかったけれど、なんだか落ち着いた気がする。そろそろ動かないと。時間に追われてる気はしないけれど、なんとなく。

【ちっちゃいくま】を段ボールに戻し、持ち上げる。と、花と【ちっちゃいくま】には鳴らせなそうな、ズと滑る音、コトと段ボールの右下の角に当たる感覚。
 持ち上げた段ボールをもう一度地面に下ろし、右下の底を探る。薄い文庫本らしき感触。
 ハードカバーならまだしも【ちっちゃいくま】レベルに大事にしてる文庫本なんてあったっけ。

 取り出すと、やはり見覚えのないブックカバー。古本屋で買ったのだろう〈¥110-〉のシール。夏目漱石の夢十夜。別に特段好きではない。教科書に載っていた第一夜しか読んだことがない気もする。
 けれど、そうだ、美緒との会話に挙がったことがある。初めて【ちっちゃいくま】を枕元に置いたまま、美緒と眠った日。うとうとしながら、【ちっちゃいくま】と目が合ったのか、美緒が言った。

「死んだら埋めるクマだ」

 こんなにかわいい【ちっちゃいくま】を、とんでもない呼び方で呼ぶ。

「なんか中学の国語の教科書にさ、あったよね。死んだら埋める話」

 せっかくうとうとしていたのに、二人で何だっけ何だっけと思い出して、調べて、やっと見つけて青空文庫で読んだ夢十夜。二人して予想していたあらすじと違うと大笑いして、そのまま、いつのまにか眠っていた。

 古本屋で買うところが美緒らしい。なんかちょっと幸せだった夜を覚えていてくれるのも、「死んだら埋めるクマ」を覚えていてくれるのも、みんな美緒らしい。
 違うか。これも私の夢みたいなものだから、美緒と【ちっちゃいくま】が好きすぎただけか。まあそれも、愛の大きさを証明できたみたいで気分は悪くない。
 いや、でも、やっぱり、【ちっちゃいくま】とは本当に同じお墓に入れて、そうしてくれたのは美緒だと信じよう。現に私はこのカバーの夢十夜を知らなかったんだから。知らないことを夢に見ることはないだろうから。

「あら、なんかスッキリした顔して。そうなるためのこの時間だからね。いい感じいい感じ。どうする?一旦輪廻の説明とか聞いとく?」

 やはりまだコメディ俳優の見た目のままの神様か閻魔様に声をかけられる。そうだな、一旦聞いておこう。一通り聞いたら、次の一生の間、【ちっちゃいくま】を置いておける場所があるか聞いてみよう。

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宇宙人なんだ

我々は宇宙人だ
地球に乗っかってさ
ずっしり浮いてるんだもん
ぐるぐる回って
太陽に着いていきます
我々は宇宙人だ
だから寂しがりで
天邪鬼で根は素直で
ほんとみんなが
忘れかけているから
悲しいよね
ケンカしたり
いじめたり
宇宙人なら
のんびり行こうよ
つまらないこと
全部やめたら
まっすぐに
宇宙の中心を
目指せるかもよ

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2025年の風が吹く

creative writing spaceと、夢洲シグネチャーパビリオン付近と、渋谷駅井の頭線前と、自分語りを載せようと思えた今日のわたしへ。

 学生以来の創作だった。
 学生時代、文学創作のコースもある中で戦後文学を選んだのは、自分の文学の根源が岡本太郎の明日の神話にあったからだった。

 中学校の、工作をさせるのが好きな美術教師が産休に入って、その代わりに来た、1年しか居ない予定の臨時教師は、きっと専攻していた現代アートを、好き勝手に中学生達に教えた。美術なのに座学なんて、生活保護受給世帯が3分の1を占める荒れた地域の中学生で、誰も聞いていなかったけれど、わたしや、わたしが気づいていないだけできっと何人かは聞いていた。2011年だった。
 chim↑pomとかいうふざけた名前のアーティストがいることを知った。奴らが渋谷の、井の頭線の乗り換え口にある、何か怖いあの絵の右下に、福島第二原発の絵を描いたことを知った。それで、やっと、子供の頃から見て来たあの絵が、原爆を描いたものだと知った。「なんか怖いな」と思っていたあの絵にも意味があることを知った。

 高校生になって、進路を考えるようになって、明日の神話が忘れられないから、大学では美術か、美学を専攻しようとした。その頃担任だった英語教師は、「お前がやりたいのは本当にアートか?文脈と意味をなぞるのが好きなんじゃないか?」と問うてきた。美学は門戸が狭い。偏差値50の高校で、定期試験はケツから数えた方が早いのに、模試は学年2位だったわたしを何とかGMARCH辺りに滑り込ませて、実績を稼ごうとしていたのかもしれない。そしてまんまと、英語教師の言葉に、その頃のわたしは、確かにそうかも知れない、と思った。現代文の教科書に載っていた『赤い繭』と『こころ』しか知らなかったけれど、よくわからないものを知りたいと思った。「読みやすい」と「美しい」が良しとされる文学の、その奥にある意味を知りたいと思った。きっと明日の神話を知った時の衝撃を、また味わえると思った。

 何とか担任の喜ぶような大学の文学部に入った。私立四大の学費を親金で出してもらうことに疑問を持たない同級生に囲まれた大学生活は意義のあるものだった。地元の、家で宿題をやっているだけで「あんた勉強なんかしてんの」とメンエスに出勤する前の母親に言われる同級生達とは全く別の世界だった。そんな世界だから、両方を知るわたしが、文学を学ぶことには大きな意味があると思った。

 大学で、先生に出会った。現役の作家の授業らしい、とミーハー心から履修した。履修したものの、ある程度寛容な授業のスタイルに甘えて、コンビニバイトの夜勤明けのわたしは、教室には顔を出しながら、もっぱら睡眠時間に充てていた。
 ある時、たまたま起きていた回、先生は創作について語っていた(わたしが寝ていて覚えていないだけで、そもそも創作について語る授業だった気もする)。
「台風の日に、コンビニに買い物に出かける老人を描くんだ」
 その前後の文脈は(寝ていたので)覚えていないが、確かにそんなようなことを言った。さっきまで寝ていたのに、隣に座る、中学校から私立に通う学友に隠れて、泣いた。そんな文学があって欲しいと思った。原爆なんて大層なことでなくても、ある台風の日、ある老人の絶望と、ある老人がコンビニで得られる希望が確かにあって、それを見ている一人の作家がいた。二度目の衝撃だった。幾らかの借金を負ってまで、大学に来た意味があったと思えた。「女の子」は確かその授業で書いた。

 幾らかの借金を負っていたので、大人しくほどほどの企業に就職した。人並みにカスハラに遭って、人並みに上司に恵まれた。大学時代、先生の授業でだけちらっと行った創作のことは、人並みに忘れて、TOEICとITパスポートに精を出して、気づいたら4年経っていた。

 2025年、creative writing spaceに出会った。読むのが好きなので、何となく出自は知っていた。思想の強さも悪くないと思った。ITパスポートも取り、TOEICもある程度の点数に達した。今なら、短編なら書けるだろうと、一編書いてみた。まだまだ黎明期、詩ばかりのサイトの中で、評論に力を入れるユーザーに、感想をもらった。先生からしかフィードバックを得たことのないわたしの、思いつきで投稿した一編が、顔も知らない、けれども目の肥えていそうな誰かに、読んでもらえた。それだけで調子に乗れた。大して交流する気もないくせに、わざわざTwitterのアカウントを作った。もう少し書いてみようと思えた。

 調子に乗れたのは数ヶ月で、また仕事に追われる日々が続いた。一つ上の嫌いな先輩は悪阻で出勤できなくなり、3人の子持ちで時短勤務の上司は、わたしに皺を寄越した。皺寄せを甘んじて受け入れることは、少子高齢化の日本で、結婚と出産の意思のない女であるわたしにできる一つの社会貢献だと思った。

 2025年の風が吹く。80時間の残業明けに、大阪万博シグネチャーパビリオン付近のライブカメラばかり見つめた夏が過ぎた。いくつかの絶望があり、いくつかの希望があった。でも、確かに、良い年だった。良い年だった。

 2025年に「さようなら」を、creative writing spaceに「ありがとう」を、また書かなくなった下半期のわたしから、確かに書いていた上半期のわたしに「また会おう」を。

 令和の賢さの象徴のような落合陽一が、「賢さなんてただの飾り」と宣う。偉そうに、と思いながらも、そうかも知れない、とも思う。「こんにちは」と歌うEXPO70に対抗するように「さようなら」と歌った2025年の万博に、中国が台湾付近で軍事訓練を行うこの年の瀬に、大屋根リングが解体される年の瀬に、5年片想いした相手が8歳上の既婚者との不倫に走った年の瀬に、それでも続く毎日に、「賢さなんてただの飾り」と思う。

 どうか、どうか、明るい未来を。嫌いな先輩の、もうすぐ産まれる第一子に。不倫相手の配偶者を精神科に通わせるあの子に。台風の日に窓辺を見つめる先生に。賢くも意外と泥臭かった落合陽一に。確かに何編かを書いたわたしに。改修工事の進む明日の神話に。明るい未来を。

2025年年の瀬に、全布団上より。

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おおきいことと、ちいさいことのうた

『おおきいとちいさいは、比較級の歌』


おおきいとちいさいは、比較級
リンゴは、アリンコより大きい
単体で大きいということはなくて、なにかがなにかに対して、大きい
大きいと小さいは比較級
なにかの絵がなにかの絵より、小さい
単体で小さいということはなくて、なにかがなにかに対して、小さい
大きいと小さいは比較級
リンゴの欠片はアリンコよりちいさくて、アリンコは、リンゴの欠片より大きい
大きいと小さいは、比較級
神様は何者より大きくて、神様は誰の目にも見えない
大きいと小さいは比較級
時計の針は鼻毛より大きくて、鼻毛は時計の針より小さい
大きいと小さいは比較級
時間の価値はお金より大きくて、お金の価値は時間より小さい



『ちいさいは、みえない』


ちいさいは、みえない
ちいさすぎると、みえない
ちいさくて、みえない こころのなかは、ちいさくておおきい
おおきいは、みえる
おおきすぎると、みえない
おおきくてみえないうちゅうのなかは、おおきくて、てにおえない
おおきいは、ちいさい ちいさいは、おおきい
おおきいもちいさいもようしのうえに、あらわせばちゅうくらい
おおきくてちいさいほしをながめて、ゆったりとのんびり

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全部GO!

繋がってる 繋がってる 場面と場面が、繋がっている  
一つの映画の中で繋がっている
繋がってる 繋がってる 朝と昼と夜が、繋がっている 
一日の風景の中で繋がっている
繋がってる 繋がってる 種と幹が、繋がっている
一本の木の中で、繋がっている
繋がってる 繋がってる 文脈と文脈が繋がっている
ひと連なりの文章の中で、繋がっている
繋がり続けると、気分が良い
言葉と自然と身体と身体 全部纏めて GO GO GO GO!

転がってる 転がってる 石ころのように人間が、転がっている
不安定な時代の中で、転がっている
転がってる 転がってる 問題が、頭の中で転がっている
たった一つの答えを求めて、転がっている
転がってる 転がってる ギャグミサイルがお腹の中で、転がっている
主観的客観が新しい世界を受け入れた時、扉を開けるかのように転がっている
転がってる 転がってる チョコレートがお口の中で、転がっている
女子の唇がハートをタッチする時の甘い吐息のように、転がっている
転がり続けると、気分が良い
混沌と混乱と平和と甘美 全部纏めて GO GO GO GO!

漂ってる 漂ってる サラリーマンが電車の中で、漂っている
ベルトコンベアーの上でイビキをかくように、漂っている
漂ってる 漂ってる 精神病者が行く宛もなく、漂っている
なにかをその手に掴んだつもりで、漂っている
漂ってる 漂ってる 湯気がスープの上を、漂っている
人間に愛嬌を振りまいて、漂っている
漂ってる 漂ってる 死刑囚の首が、覚悟と諦念の中を漂っている
一つの観念の中で、漂っている
漂い続けると、気分が良い
迷妄哀愁 天国地獄 全部纏めて、GO GO GO GO!

広がってる 広がってる 幸福がお腹の中で、広がっている
やがてくる欠乏に向けて、広がっている
広がってる 広がってる 脳味噌が頭の中で、広がっている
より広い世界を丸く収めるために、広がっている
広がってる 広がってる 両手が天空の上で、広がっている
その手で全てを受け止めるように、広がっている
広がってる 広がってる 大人物の噂が小人達の間で、広がっている
悪知恵を広め合うために、広がっている
広がり続けると、気分が良い
知恵と伝統と正義と邪心 全部纏めて、GO GO GO GO!

疑ってる 疑ってる 純情を初心な乙女が、疑っている
諸手を挙げて青春マンセーを唱えながら、疑っている
疑ってる 疑ってる 美食を観念家が、疑っている
パンを辞書でも食べるように齧りながら、疑っている
疑ってる 疑ってる 野心的進歩主義者達が正義安定バランスを、疑っている
理性を捨てた仲間意識剥き出しが徒党を組んで、ありきたりを疑っている
疑ってる 疑ってる 野球投手がキャッチャーのサインを、疑っている
今夜仲間と飲む酒とワインのために最善の道を探りながら、どこへ投げれば良いかと疑っている
疑い続けると気分が、良い
愛と正義と勇気と野望 全部纏めて、GO GO GO GO!

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じゃれじゃれしい


 栗の木の陰に逃げ込もうとした
 鎌鼬から鎌を取り上げ
 猫じゃらしを握らせる
 はい、どうぞ?
 つむじに回る穂をめがけ
 猫ガッ 猫ガッ 猫ガッ 猫ガッ 猫ッ跳び‼


題名 『一生構いたち』

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今年最後のめいげん


 他人の足を引っ張ったって
 上に登れるわけもなく
 むしろ、重しになるばかり

 手を掛けるべきは足じゃない
 壁だ 崖だ 1ページ目だ


『2025を食べたった』




先日依頼したばかりだし、準備も全然出来てないんですけども。
来年の抱負として。来年は企画をひとつ持ってこようかなって思ってるんですよ。
二次創作されることを前提として参加するシェアワールドみたいなの。
どこまでできるかわかんないですけど、まあ、ぼちぼちご期待下さいm(__)m

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「Q&A:TABUSEってなあに?」としてのクリエイティブ・ライティング

Q1. TABUSEって何ですか?
A.
TABUSEは、文芸投稿サイト「Creative Writing Space(CWS)」の周辺の文化的文脈をもとに制作された、ミーム(ジョーク)としてのトークン表現です。またの名を田伏正雄コインと言います。
CWS内の名物キャラクターを元にしたキャラグッズのようなもので、特定の経済的価値や利益を目的とするものではありません。
文芸コミュニティの活動を、象徴的に可視化する試みとして構想されています。


Q2. 暗号資産(仮想通貨)なんですか?
A.
技術的にはブロックチェーン上で発行されるトークンですが、本プロジェクトでは投資対象や金融商品としての位置づけは意図していません。
あくまで文化的・象徴的なミーム表現として扱っています。
発行枚数を極めて限定している点や、機能・用途の設計から見ても、一般的な暗号資産とは性質の異なるものと考えています。


Q3. お金は儲かりますか?
A.
いいえ。
TABUSEは金銭的利益、換金性、将来の価値上昇を目的として設計されておらず、そのような保証は一切ありません。
TABUSEで一攫千金を狙うくらいなら、素直にスキマバイトでもされた方が現実的だと思います。


Q4. 販売はされますか?
A.
されません。
TABUSEは運営による販売を行わず、無償配布のみを想定しています。
なお、日本においてトークンの販売や取引の仲介には、一定の場合に法的な規制対応や登録が必要となり得るため、そのような行為は行わない方針です。


Q5. どうやったらTABUSEをもらえますか?
A.
CWS内でのコメント活動などを通じてスペースコインを獲得したユーザーが、運営の案内に従って無償配布を申請することができます。
ただし、配布の有無や数量は運営の裁量により個別に判断され、配布が保証されるものではありません。


Q6. スペースコインと交換できますか?
A.
できません。
TABUSEはスペースコインと交換されるものではなく、換算レートや交換権を設定していません。


Q7. TABUSEを持つと何か特典がありますか?
A.
現時点では、金銭的・経済的な特典はありません。
将来的にコミュニティ上での表示や象徴的な扱いが検討される可能性はありますが、確定した権利や利益を付与するものではありません。


Q8. DEX(分散型の暗号資産取引所)で取引されるんですか?
A.
ブロックチェーンの性質上、第三者同士でトークンが移転される可能性はあります。
ただし、運営は価格形成、市場提供、取引の仲介や勧誘を行うものではありません。


Q9. 運営が価格をコントロールすることはありますか?
A.
ありません。
運営はTABUSEの価格、取引条件、需給関係に関与せず、市場的な行為を行う立場にはありません。


Q10. 発行枚数は決まっていますか?
A.
初期発行量は 60,000 TABUSE を想定しています。
将来的な追加発行の可能性は否定しませんが、最大でも100万を上限とし、年単位のタイミングで慎重に検討されます。


Q11. なぜ発行枚数を100万以下にしているのですか?
A.
トークンの発行規模が法的評価や社会的な受け止め方に影響し得ることを踏まえ、
一般的な法令・ガイドラインの考え方を参考にしつつ、あくまで小規模で象徴的な試みとして設計するためです。
なお、特定の法的評価や適法性を保証する意図はありません。


Q12. 違法ではないんですか?
A.
本プロジェクトは、販売を行わず、投資勧誘を目的とせず、文化的表現として慎重に設計されています。
ただし、法的評価は関係法令や将来の解釈変更により変わる可能性があり、問題が生じた場合には関係当局の指示に従います。


Q13. そもそも「トークン」って何ですか?
A.
とても雑に言うと、「インターネット上で使われる“印(しるし)”や“札(ふだ)”のようなもの」です。
お金の代わりになることもありますが、TABUSEの場合はお金として使うためのものではありません。
名前や物語、ノリを共有するためのデジタルな目印のようなものです。


Q14. TABUSEを持っていると、何かしなきゃいけないんですか?
A.
何もしなくて大丈夫です。
申告義務も、参加義務も、責任もありません。
持っていても、持っていなくても、CWSの利用や創作活動に差は生じません。


Q15. よくわからないけど、参加しないと損ですか?
A.
損もしませんし、得もしません。
TABUSEは「分かる人が、面白がって眺めるためのもの」です。
ビー玉やおはじきのように、一部の愛好者だけが楽しむ、無価値なガラクタだと思ってください。

よく分からなければ、
距離を取る・無視する・笑って流す、
そのどれでも問題ありません。

よく分からないからといって、やめろ、やめろ、おかしい、変だ、と騒ぎ立てるご意見版さんにはならないでくださいね。


Q16. なんでこんなややこしいことをやっているんですか?
A.
文学・批評・コミュニティ活動と、「トークン」という現代的な表現形式が交差したとき、何が起こるのかを試してみたかったからです。
TABUSEは実験であり、ミームであり、ジョークなのです。


Q17. 田伏正雄って誰なんですか? よくわからないのですが?
A.
CWS内の作品によく出てくる、謎の文芸キャラクターです。
詳しくは、以下の作品をご笑覧いただけると幸いです。
https://creative-writing-space.com/view/ProductLists/product.php?id=178&user_id=3&mode=post


Q18. 田伏正雄って気持ち悪くないですか? 意味不明だし、やめたほうがよくないですか?
A.
そう感じられる方がいるのは自然なことだと思います。
合わない場合は、距離を取っていただくのが一番健全です。
分からない人が無理に理解する必要はない、という前提で作っていますので、分からなくても全然、大丈夫ですよ。


Q19. 一言で言うと、TABUSEって何ですか?
A.
文学投稿サイトの周辺に落ちていた、意味のわからない石ころです。
拾ってもいいし、拾わなくてもいい。
ただ、誰かが拾って笑った、という事実だけが、ブロックチェーン上に記録されます。


Q20. 本気でやっているんですか? それともネタですか?
A.
真面目にふざけています。
ジョークにマジにならないでくださいね。それは無粋というものですよ。

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加藤さんにインタビュー



加藤さんが五大大会三連覇を達成する
という快挙を成し遂げた
まだ梅雨は明けきらず
朝からの小雨で唸るような湿気の中
お風呂をはじめとする各箇所のカビ取りは
一向に捗らないが
せっかくなので本紙は加藤さんに
単独インタビューすることとなった

待ち合わせ場所に来た加藤さんは
開口一番、加藤です、と自己紹介をし
カビ取りがね、と付け加えた
インタビューの場所まで移動する途中も
加藤さんはぶつぶつと、カビ取りがね、
と言い続けていて
少しでも距離を詰めるなら
こちらも同調して
いやあ私もなどと言えば、
今後のインタビューも話が弾んだだろうに
緩くなった靴紐のことばかりが気にかかり
ほかにうつ手などなかった

先ずはお写真を、と言ったが
写真はNGなんです、というところから
インタビューは始まる
普通の顔なので、と加藤さんは続けた
普通の顔、いいじゃないですか
というこちらの言い方が気に入らなかったのか
ムッとした顔で駄洒落のようなことを言って
ひきつったように笑う
残念なことに
レコーダーでも拾いきれない程の小声だったので
このまま放っておくか
それとも面白くこちらでそれっぽく書くかは
後で決めても良いような気がした

以下、五大大会三連覇なんて快挙が
どうしたら可能なんですか
という雑な質問に対する加藤さんの発言になる
なお、加藤さんの試合のスタイルは
「戦う戦闘機」という異名を持つほどに
攻撃的であるということをここに附記しておく
以下、五大大会三連覇なんて快挙が
どうしたら可能なんですか
という雑な質問に対する加藤さんの発言になる

先ずは心構えが重要です
己に勝つ、と言う人がいますが
あれは嘘っぱちです
己に勝つ、ということは、
己が負けるということ
負けるために試合会場に行くわけではないのです
ご存知のとおり相手は複数人いますから
コ( )ス、全員コ( )ス
くらいの気構えがないといけません
もちろん誰もコ( )シたことはありません
それは私の誇りです
そういう試合でも無いですし
次にラケットを左手でしっかりと握り
それから置きます
私は左利きなので多少有利かもしれませんね
あまりいないですし、対応がね
ラケットを置くのですが、置く位置が重要で
それで勝敗が決すると言っても過言ではありません
最近はサイン盗みが流行していて
乱数表を使って微妙に位置を変えます。

(その位置は
(勝敗のどれくらいのウェイトを占めるのですか
(という問に間髪入れず

5パーセント

(それってどれくらい重要なのですか、
(という更問に

5パーセント
それより、あなたメモ取ってるの?
これ、とっても大事なところですよ

(このレコーダーで録音しています

そう、それで中盤は飛ばして
フィニッシュがとても重要
それで勝敗が決すると言っても過言ではありません

(それさっきも聞いた気が

5パーセント
5パーセント
普通の人はバン、バン、ドン、ドンのリズムだけど
私は、バンドン

(文字起こしをするとバンドンだが
(実際の音声では
(どこか異国の言葉のような発音
(ちなみにウルトラセブンの最終回二話に
(パンドンという怪獣が御出演されていたが
(それはまた別の話

外は小雨が降り続いている
湿る空気の中
カビは今頃どうしているのだろう
一向に捗らないカビ取りは
最後に残された言い訳のように思えた

加藤さん、最後に写真を一枚
写真はNGと言ったでしょ、それよりカビが
私もカビが

私がそう言うと加藤さんは打ち解けたのか
はにかんだように微笑んで
利き手の左手で小さくピースをしてくれた
聞きそびれた競技の名称と
加藤さんの下の名前は
後日メールで問い合わせることにした

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薔薇ラララ空

薔薇の
ラで育てた薔薇
空の
ラで空を梳く
すると
ラッパの
ラの音が鳴った

あーあ
引き金が引きたいな
こめかみに当ててみた
指鉄砲から発射された
きが
した
をみれば
地面があって
地面だと思って
踏んずけているのか
吸い付いかれているのか
わからなくなるな

欅の並木が
ケの字に並んだ道
一本一本違うのに
ケの字で一括り 
あなたならあぁ
あたしならうぅ
ぐぅのねも出ないのね
そう

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山河を越えてゆけ

最近よく夢を見る。
色んな夢だ。

夢の中で恋をしている。あるいは喧嘩をしてる時もある。
振り抜いた拳の勢いで目が覚める事もある。
それなのに夢の内容はほとんど覚えていない。
ただ懐かしい感覚だけが取り残されて、所在を失くしている。

夢の中で私はいつも滑るように浮かぶ。
地に足を付けて居たいのに、気付けばふわりと天井へぶつかる。
外だと鳥のように上空へ舞い上がる。
でもコントロールは効かず、飛ばされたコンビニのレジ袋の様に風に弄ばれるだけだ。

いつもいつも浮かぶものだから、夢を見ると当たり前のように浮遊する能力を発揮する。
はいはい、またこれね。

今日はいつもより高く飛んでみよう。
いつもより遠くへ。

蹴り出した左脚の緊張に目を覚ます。
また誰かと争っていたらしい。
でも誰かを守る為だった気がする。そんなことで、誇らしく目覚める。

日常は滔々と流れる河のように、淀みなく通勤と労働を繰り返し、小説を読み、漫画を読んでまた夢を見る。

現実にバイオレンスは絶えて久しいけど、夢の中では一丁前に闘争を繰り返す。そして空を飛ぶ。

少しづつ、上達している。
と、思う。

この前の夢では山をひとつ飛び越えた。

多分。

覚えてはいないんだけど。

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トラロープ

林道は人の手が入らなくなると、10年もすれば自然に還る
土砂崩れ、決壊、陥没、崩落、およそ車はいけなくなり
おバカな源流野郎たちしか行けないような道になるのだ

崩落した林道をいくときは、トラロープを張る
トラロープというのは、よく駐車場にはってある黄色と黒のロープだ
安く強いので源流野郎は愛用する
ナイロンザイルは高すぎるんだ

トラロープは滑りやすい
結んでコブをつける
崩落した斜面は蟻地獄のようで
足をすべらせれば谷底までストレート150m滑落だ

仲間の差し出すトラロープに命を託す
そして仲間にトラロープを出す
お互いの命はこの駐車場のナイロンロープにかかっているんだ

トラロープにグンっと体重をのせる
安いロープはザイルみたいに収縮しない
重みが一気にかかってくる
仲間の命 そして信頼

この瞬間を知ってしまうともう社会にはもどれない
ビジネスごときには
命を託す 託される関係なんか
決してないんだ 存在しないんだ

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なんの変哲もない 

#pic #のせてみる
#サイダー
#キリンレモン #キリン #レモン

#100均 #グラス #水玉模様 #洒落てる #アイスコーヒー #口直し

#久しぶり #使う #触る #タバコのやに #かすか #感じた #洗剤 #使う #軽く #洗う #綺麗になった #おかげで #飲み物 #美味しく#感じた

https://assets.st-note.com/img/1765279766-5XAkLaefoS8G0TEZ3tbphn94.jpg

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体がなくなった日

薄れゆく意識の中
俺は悪態をついた 
ちくしょう
頭だけ残しやがってと
しかし、薄れゆくだけで
いつまで経っても意識は途切れなかった
頭だけになった俺は見た
俺を食ったカマキリが
鳥に食われるところを 

私はカマキリでした
今は残された鎌一つ
鳥に啄まれた時のことは
よく覚えていません
ただ風が 一陣の風が吹いて
草花が揺れていました
次の瞬間は私は
鎌だけになっていたのです
そして、今私はアリたちに
運ばれています
穏やかな陽の光が
射していればいい
そう思うのです

こいつはアリだったんだよ
でも、今ぼくが
こいつを指でつぶしちゃった
脚だけがヒクヒク
動いててきもちわるいな
でも、こいつはアリだったんだよ
ぼくがこいつを潰すまでは
仲間とカマキリの鎌を運んでいたんだ
アリだったやつを
仲間たちが運んでいくね
ぼくもそろそろおうちへかえろう

俺は
俺はコオロギだったんだ
今やっとそのことを思い出した
体がなくなった日
俺は頭だけで世界を見ていた

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くらげたちの夢

クラムボンが、ぷかぷか、浮かんでいるよ
明日学校行きたくない
今日、出勤ギリギリだ
ごうごうと風を鳴らしながらやってくる鉄の塊に、行進をするように足を揃えて乗る私たち
鉄の箱は、水槽のようで
それぞれの魂は、ぷかぷかと泳いでいる 
ぶつからず、それでも気ままに
この鉄の塊が体にぶつかる夢を一度は見る
そして、はっとする
気づけば、また、水槽の中

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冬の星

凍てついた
灯りに照らされた昼
ケルトの女王の如き
忍冬の咲く
峠の茶屋で
食べた団子
の味
太陽よ
叫びとともに
裂けよ

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乾涸びた窓から

乾涸びた窓から
乾涸びた言葉を取り出す
乾涸びた窓から
乾涸びた風が踊り出す
乾涸びた窓から
乾涸びた命を絞り出せ
乾涸びた窓を開けた
乾涸びた手で
折り重ねた詩を
火のように灯せ

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きみにはできまいよ。

たとえば
ぼくにもできそう 
という言葉は
ぼく・にも・でき・そう
と分割することができる。
いや
きみにはできまいよ。

私には
黒山の人だかりからきみを瞬時に見つけることができる。

または
ぼくにもできそう
という言葉を
ぼく・にも・で・きそう
と分割することも許されるように
やはり
きみにはできまいよ。

私には
きみが電話で声色を変えて話そうと
瞬時にきみだと気づくことができる

同時に
ぼくにもできそう
と言う言葉を
ぼ・くに・も・できそう
と分割することだってあるけれど
であるからこそ
きみにはできまいよ。

私には
きみの匂いを嗅ぎ分ける鼻があり
きみを味わう口があり
きみに触れるための腕があり
きみを追う脚があり
きみを見
きみを聞き
きみ自体である私には
きみがわかる
にもかかわらず
ぼくにもできそう
という言葉を
ぼくにも・できそう
と無理やり等分にし
できまいできまいと
私が何度も叫んでも
裂け目から今朝吹いた風が
またしても舞い降り
心臓がじんわりと痛み
そのあたたかさにきみは
幾度となく繰り返し見た夢を忘れ
ぼくにもできそう
ぼ・くにも・で・きそう
僕睦木
煮も荷も似も
で出弟
来そう競う奇想
ぼくにもできう
なにが?
いやまさか
きみにはできまいよ。

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かそう

帰宅したら、早く着替えたい。夏と冬で1セットずつ決めている、毎日同じの部屋着に着替えたい。外で着ていた服は、とっとと洗濯機に入れて、蓋をする。上辺を入れ替えることは容易い。仕事や買い物に外へ出かける、そのほぼ毎日がハロウィン。カボチャのランタンを灯すこと、迎え火と送り火として提灯を灯すこと、その違いについて考えながら、昔住んでいたアパートのガスコンロが着火する音を思い出せないでいる。
かそう

そうか
嘘を言った記憶がない。いつ、どこで、誰に言っただろうか。そもそも嘘をつけないから、黙ってしまう。その様子に、怒っているの、と聞かれるが、怒っていない、と嘘の返事をする。嘘をつくこと、黙ること、その罪の重さを比較しながら、昔登録していた出会い系サイトの名前を思い出せないでいる。
かそうか
そう
かそうか
服装は場面を演出してくれる。黒いネクタイの使い道は少なく、白いネクタイの使い道も少ない。子どもの頃、毎週のようにアニメや絵本で見ていたドレスだって、普段目にするものではない。言葉にならない感情は、主に首、及び、腰の角度で表現するのが望ましいとされている。詫び、寂び、これらの言葉の意味を勘違いしながら、昔ハマっていた歌のメロディを思い出せないでいる。
かそうかそう

そうかそうか
かそうをかそうして
かそうをかそうか
借りた金を返したか思い出せないでいる。どれくらい前から新しい洋服を買っていないのか思い出せないでいる。昔使っていたハンドルネームの由来を思い出せないでいる。嫌いだった食べ物の味を思い出せないでいる。友達を失った瞬間を思い出せないでいる。本籍地を思い出せないでいる。道を尋ねる英語を思い出せないでいる。肌色の色を思い出せないで、
そうか
思い出さなくてもいいことを思い出せないでいる。かそうの中心にある巣で、埋もれた記憶は灰になって、リサイクルされて、かそうする。相槌をかす合図に、おやすみなさい、と、いってきます、の繰り返しを、囀る、からだ、かそうして、織られて、一糸ずつ、ずれていくことで、せいけいされること、確かな昔のことを繋ぎ合わせて
かそうを
とく

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掌編噺『友地蔵』

今は昔
ある小さな村に三人の若者がいた

*********

一人は麒麟児と呼ばれていた
幼い頃から何をやらせても誰より達者で
周りの村人達からは、すごいすごいと
持て囃され鼻高々の男であった
奴はゆくゆくはこの村の長になるさ
村の誰もが口々に噂した

もう一人は風来坊というべき男だった
成長してからは、ふらっと村の外に出ていったかと
思えば、どこかで大事を成し遂げたと
風の噂がやってくる
お調子者だが、義理に厚い性格で
己の進むべき道をしっかり持っている
村の誰からも愛される
そんな熱くて気持ちの良い男であった

最後の一人は村いちの抜け作と呼ばれる男だった
何をやらせても駄目な男で
引っ込み思案で、声も小さい
特筆すべきなのは麒麟児と風来坊の友だということ
村の皆からは何故有名な二人と仲が良いのか
いつも不思議がられていた

そう、三人は友であった
正確にはかつて、麒麟児と風来坊は火に油の
関係であった
顔を合わせば喧嘩の日々
お互いが「目の上のたんこぶ」といった具合だったのだろう
それが、抜け作が間に入ることでかすがいの役目を
して丸く収まっていたのだ
不思議な事もあるもんだと村の皆は笑った
抜け作にも役目がちゃんとあるのだと

麒麟児と風来坊の二人も
抜け作が間に入り込むことで、不思議とウマが合うようになった
いつしか、三人は無二の親友となったのだ

*********

ある時、麒麟児は隣村へ用事で留守にしていた
己の考えた商いで、この村に富を蓄えようという算段だった

この時、風来坊はいつもの如く旅に出て同様に村から出払ってしまっていた
諸国を放浪して新しい知識を学ぶ為だった

その時、事件は起きた
火事だ 村の中の一つの家が火事で燃えたのだ
家の中には幼子が取り残されているらしい
村人たちは遠目から燃え盛る家をただ眺めるしか出来なかった

いや黒い影が一人、家の中に飛び込んでいく
抜け作と笑われた男だった
果たして彼は炎の中から幼子を助け出したのだ
己の命と、引き換えに

*********

麒麟児と風来坊は
村に戻ってきて顛末を知った
二人は抜け作の最期に、涙が涸れるほど涙した
奴は俺たちよりずっと凄い 凄い男だったのだ
友に誓ってこれからは村のため助け合おうと決め、
二人は供養のため燃えた家の跡地に地蔵を建てた
命を懸けた友のため『友地蔵』という名の地蔵を
そして、命日には必ず花と酒を手向けたのだった

*********

時は過ぎ行く

麒麟児は村の長となり、様々な商いを手広く行い
村の富を蓄えた
豊かになって村人たちは、麒麟児に大いに感謝した

風来坊は更に諸国を巡り、多様な知識を身に付けた
その中には西洋の摩訶不思議な知恵まで含まれていたという
博識ぶりに村人たちは、風来坊を大いに敬った

二人の晩年、国中を疫病が襲った
村も例外では無かった
しかし、麒麟児の蓄えと風来坊の知識で
村は他の村々に比べてずっと被害が少なかった

二人は疫病が終息したのを見届けてから
同じ頃、永い眠りについた
そして友地蔵の両脇に、二体の地蔵が建てられたのである
これを差配したのはかつて、ここに建っていた家が火事になった時に
抜け作と呼ばれた男に助けられた者だった

男は三人の友情と功績に感謝して
三体の地蔵に雨除けの小屋を作り、友地蔵として
厚く供養した

*********

時は更に巡る
村のかたちは変わっていく
しかし、そこに三体の友地蔵は在り続けた
抜け作に助けられた者の子孫は
動乱の時代を駆け抜け、新たな政の役人となった
この村始まって以来の大出世である

彼は後に新聞の取材で語っている
『私の命、私の先祖が暮らした村は、三人の偉大な先人によって守られた。私が今ここに居るのは、彼らのお陰である。世の中の人々からすれば、名も無き者たちかもしれないが私は彼らを決して忘れない。』

**********

長い時間が過ぎてきた今日も、三体の地蔵の前には花と酒が供えられている
真ん中の地蔵に肩を組むように両脇で笑う、
三体の地蔵たちが変わらずに今もそこにいるのだ

(了)

※このお話はフィクションです。
実際の出来事とは、一切関係がございません。

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