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2021/01/01 12:00:00

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投稿作品一覧

地上波へようこそ

マグニチュード6の地震が発生しました。
大きな警告音とともにテレビの画面が途絶えた。
ちょうどFIFAワールドカップの試合を録画している最中だった。
 揺れる揺れる
       揺れは次第に縦から横へ傾き
壁に掛けてあるヒデヨシが落ちてきて、
ヒデヨシが落ちればイエヤスも落ちてきた。
すぐにテレビの中継局に電話をかけた。
 ~おい、わしゃノブナガという者じゃがずっと受信契約しとるモノじゃぞ、早う映るように手を打てや~
衛星放送の受信が途絶えて
しばらくすると雨が降り出した
地上放送へチャンネルを切り替えてみる
変わらず地震の影響を画面に流している
~「マグニチュード6から3に切り替わりました」
というテロップが映し出されていた
なんだ!ここは天国じゃなかったのか
揺れが収まり僕はここで眼が覚めた
衛星放送の画面は信号で
三原色だけが斜めに揺れていた。

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resurrection

歌が聴こえる
幾層にも重なった奥と上と左の触る河の歌
ひとりごとの羽毛も黄土になると
笑いとばしてしまう
経験が蓋付きの容器に入ったまま持ち込まれ
ひどい傷口を目の当たりに眠りこむ邑
遥か先ふしだらな天使
我ら考えごとにて時をきれぎれに刻んだ
はずが話は熄んで
てのひらは きたならしい


蝶が飛びまわるのを追ってどこまでも行ければ幸せだと思った子がかつていた この話の内にある永遠は どこまでも という部分なのであり どこまでも という場所が蝶に宛書されていたのだった


文字を書くことは
永続への挑戦なので
代償をもとめる


観よ、つめたい弓矢を
他の多くの若い極論を蹴散らして
座り込んだ褥。
あからさまな星向きに否を唱えて。
陽が湖の膝元へ屈むとき
溺れてしまえ、と
ねじが
これほどまでによくできた喩とは思わなかった。
高らかに唄う往路の行進。
復路はなく。
万節を閲することあたわぬものに
熱を湛えた海と呼ばうかはたれ

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はじめまして

投稿詩歴だけは長くても何も知らない人間です。そう人間で在ることに間違いないのだけれど、ひょっとしたら死人かも知れません。死人からコメントを書き込まれて癪にさわることがあるかも知れません。どうぞ遠慮なく返事を書き込まれてください。尚、ネガテイブに短気なので、誹りとか悪意ある嫌味は一応できるだけ避けてコメントしてくだされば、幸いでございます。
先ずはスタッフの皆様から集う皆様へ、ご挨拶を兼ねてよろしくお願いいたします。


                                      洗貝新

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おかわりないですか?

 おかわりないですか?
 こちらはおかわりないです
 そちらはおかわりないでしょうか?
 あちらもおかわりないです
 みなさんおかわりないですかね?
 おかわりありません

 どこへいっても
 おかわりなさそうです

 こうも日本が変わってしまうとは
 みんなお腹が空いています

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可視化するための、極めて人間的な手つき

言葉とはラベルなので、ラベルを剥がして中身を見ていく、そしてその中身を改めて書いていくようなかんじ。すっと出てきてしまう言葉ではなにかが違う掬いきれないと思っている、今ある言葉を凌駕したいとか、傲慢ではない。というか言葉を凌駕するのは当たり前。収まりきれるわけがない便宜上だろうよ

言い方を変えれば、言葉にならないことを言葉で象る事自体が、人間の傲慢だと思うけど。所詮言葉にならないことを言葉にすること自体が、人間が感じたことでしかないものを、扱おうとしているだけから、人間にしかできない遊戯だろうそんなモノ。

丁寧に言葉を扱う、っていう仕草は、相手がいて初めて必要になる行為だ。まず相手は眼の前にある、どうしようもないこと、これしかできないこと。まず作品のことだ。その相手は、詩になるまえのことばとして、感覚をことばとしてラベルを貼り付けていく、”詩を書く”ということ自体だね。

これは自身との対峙であり対話、敬意を示すばかりの丁重な手仕事なんですよね

だから人に向けた丁寧さ、というのは外観の問題だろうね、それはある程度は使役できるけど、意味など固定できないものだという、個人個人のための棚にジユウに手にとって頂けるスペースが確保されているというだけの話。だからその棚の扱いや、スペースのありかたがひつよう。それを管理するのが作者の役割ではないかな

だから書き手自身もはじめに出てきたラベルを疑う必要があるし、中身を知って置かなければならない、まあ底しれぬ得体のしれないものであるけれどね。手に取るだけで溶解侵食するかもしれない。瓶を開けたら爆発するかもしれない、形などまやかしで霧散してしまうことだってある。ただ、そうみえるもの、そこにあるもの、ということを、信じるしかなく、信じれば揺るがない、そこに”いるもの”に変容する。取って掴むことができる。と、

コレは読みても同じ仕草でしか、扱えないもの。結局ラベルを貼り棚に並べることが作者のできることであり、なかみをどう作者が形容しようと、実際受け取るときにどんなふうに見えるのか、触れるのか、感じられるのかは、それぞれ違うものなんだ。

ところがいまだに、みな、なかみについて論じているのが不思議でならない。貴方の触り方で貴方はなにを見たのか。それはもう、中身ではなく、自身を露呈しているだけなんだよ。

だからおたがいが、あいさつしているようなもので。それだけの関係性である。と割り切る

挨拶から先へ、進めるかどうかは、偶然であり相性でしかないよ。無理やり臭気を好む人もいれば、ぐにゃった袋を壊して中身を選別する人もいるだろう。ただそれだけだ。棚にある作品はそのまま鎮座しているけれど、相手が受け取ったときに、静止している作品に、時が宿り動き出す。そして相手とともに歩き始める

ただ作者としては,あたりまえに作品の行く先を覗きたいところではあるし、棚の確認も怠らないでしょう。あたりまえだな、それは。

まっ、きれいごとだね。実際はもっと澱んでいるもんで、折り合いのつけ方だ。言葉にならないことを、象ることは仮である。ラベルを剥がして中身を見ていく行為は 可視化するための、極めて人間的な手つきだ。

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批評・論考

「難解」という誤解——詩における難解さの種類と、その対処

(各種AIとの多量対話差分をもとにclaude.aiでケチつけながら記事作成)



1. 「難解」という言葉の問題

詩を読んで「難解だ」と感じたとき、読者は何を指しているのか。

多くの場合、「難解」という言葉は、「わからない」「ついていけない」「自分には無理」という感情を、一言で表現するために使われる。

しかし、「難解」にも種類がある。
そして、種類によって、対処法が異なる。

「難解」という言葉で一括りにすることで、本来は読める詩が、読まれないまま放置される。

 

2. 難解さの四つの種類

種類1: 語彙の難解さ

特徴:
知らない言葉が使われている。専門用語がある。古語や造語が出てくる。固有名詞(人名、地名、書名など)が前提知識なしに使われている。

例:

「彼岸花の朱は、曼珠沙華の記憶を孕む」
→ 「曼珠沙華」を知らないと、読めない

「エントロピーは増大し、系は平衡へ向かう」
→ 専門用語を知らないと、意味が取れない

対処法:
辞書を引く。注釈を参照する。背景知識を学ぶ。

重要な点:
これは、調べれば解決する難解さである。詩そのものが難しいのではなく、語彙の問題。

 

種類2: 構造の難解さ

特徴:
時系列が複雑(過去・現在・未来が入り乱れる)。視点が多層的(誰の視点か、不明瞭)。省略が多い(主語、述語、文脈が省かれている)。接続が飛躍している(因果関係が見えない、文脈が断片化されている)。

例:

「雨が降った。彼女は笑った。窓が割れた。」
→ 三つの文の関係が不明

「昨日、明日、今。すべてが同時に。」
→ 時間の順序が攪乱されている

対処法:
読み方を変える。意味の連続性を探さず、断片として受け取る。時系列や因果関係を確定しようとしない。

重要な点:
これは、読み方を変えれば見えてくる難解さである。従来の読み方(意味を追う、文脈を繋げる)では受け取れないが、別の読み方(感覚を追う、断片を受け取る)なら対応できる。

 

種類3: 前提の難解さ

特徴:
特定の文脈を知らないと読めない(歴史的背景、社会問題、特定のコミュニティの経験など)。他のテクストへの参照がある(引用、パロディ、オマージュ)。ジャンル規範の知識が必要(特定の詩形、文学的伝統)。

例:

「ゴドーは来ない。だから、待つ。」
→ ベケットの『ゴドーを待ちながら』を知らないと、ピンとこない

「五七五、季語なし。」
→ 俳句の規範を知らないと、何が起きているかわからない

対処法:
参照されているテクストを読む。歴史的・文化的背景を学ぶ。ジャンルの慣習を知る。

重要な点:
これは、学べば理解できる難解さである。知識の問題であり、詩そのものが難しいわけではない。

 

種類4: 「わからない」という感情

特徴:
共感できない(詩の感情や状況に、自分の経験が結びつかない)。「感じる」ことができない(身体的・感覚的に、何も起きない)。価値観が合わない(詩が示す世界観や美意識に、違和感がある)。

例:
ある人にとっては深く響く詩が、別の人には「何も感じない」。特定の経験(喪失、恋愛、孤独など)を持たない読者には、ピンとこない。

対処法:
これは「難解」ではない。ただ、その詩と読者の間に、共鳴が起きていないだけ。無理に読む必要はない。

重要な点:
これは、詩の問題でも、読者の問題でもない。単に、その詩と読者の間に、相性がないだけ。

 

3. 「難解」と「読めない」の違い

「難解」と「読めない」は、しばしば混同される。

「難解」とは
詩そのものに、何らかの複雑さがある。語彙、構造、前提——いずれかの次元で、読者にとって未知の要素がある。でも、対処法がある。

「読めない」とは
読者が、その詩に対する適切な読み方を持っていない。あるいは、詩と読者の間に、相性がない。対処法は、読み方を変えるか、諦めるか。

 

4. フォーカシング的読解が対応できる難解さ

フォーカシング的読解は、主に種類2(構造の難解さ)に対応する。

構造の難解さがある詩
時系列が複雑。視点が多層的。省略が多い。接続が飛躍している。

従来の読み方:
意味を追おうとする。文脈を繋げようとする。因果関係を探そうとする。
→ 失敗する → 「難解だ」と感じる

フォーカシング的読解:
意味を確定しようとしない。文脈を繋げようとしない。身体に起きる感覚を観察する。
→ もやもやを受け取る → 「わからないが、何かを感じる」

つまり、フォーカシング的読解は、「構造の難解さ」を「難解」ではなくす。

 

5. 他の種類の難解さへの対処

種類1(語彙の難解さ)への対処
辞書、注釈、解説を参照する。必要に応じて、語彙を学ぶ。フォーカシング的読解とは、直接関係しない。

種類3(前提の難解さ)への対処
参照されているテクストを読む。歴史的・文化的背景を学ぶ。フォーカシング的読解と並行して行える。

種類4(「わからない」という感情)への対処
無理に読もうとしない。その詩は、今の自分には合わないと受け入れる。別の詩を探す。

 

6. 「難解」という言葉の使い方

「難解」という言葉を使うとき、以下のことを意識すべき:

1. どの種類の難解さか?
語彙? 構造? 前提? それとも、ただ合わないだけ?

2. 対処法はあるか?
調べる、読み方を変える、学ぶ——何かできることがあるか?

3. 「難解」は、価値判断ではない
「難解だから悪い」わけではない。「難解だから良い」わけでもない。ただ、読者にとって、ある種の複雑さがあるだけ。

 

7. 読者へのメッセージ

詩を読んで「難解だ」と感じたら:

どの種類の難解さか、考えてみる
語彙? 構造? 前提? それとも、ただ合わないだけ?

対処法を試してみる
調べる、読み方を変える、学ぶ——できることを試す

諦めることも、選択肢
すべての詩を、すべての読者が読める必要はない。今の自分には合わない、と受け入れることも大切。

「難解」を、価値判断にしない
難解だから悪い、わけではない。難解だから読まない、という選択も、正当。

 

8. 詩を書く側へのメッセージ

詩を書く側も、「難解」について意識すべき:

1. どの種類の難解さを意図しているか?
語彙を難しくしているのか? 構造を複雑にしているのか? 前提知識を要求しているのか?

2. その難解さは、必要か?
必要な難解さ(詩の本質に関わる)なのか? 不要な難解さ(読者を遠ざけるだけ)なのか?

3. 読者に、手がかりを与えているか?
語彙の難解さ → 注釈を付ける。構造の難解さ → 読み方のヒントを示す。前提の難解さ → 背景情報を提供する。

4. 「難解」を、武器にしない
「難解だから、高尚」という思い込みを捨てる。難解さは、目的ではなく、手段。

 

9. 結論——「難解」を解きほぐす

「難解」という言葉は、便利だが、曖昧である。

本当は、語彙の問題、構造の問題、前提の問題、あるいは、単に合わないだけ——これらを、一緒くたにしている。

「難解」を解きほぐすことで:
読者は、適切な対処法を見つけられる。詩を書く側は、意図を明確にできる。詩が、「難解だから」という理由で、読まれないまま放置されることを防げる。

 

難解さには、種類がある。
種類によって、対処法が異なる。
フォーカシング的読解は、「構造の難解さ」に対応する、一つの方法である。

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批評・論考

散歩と犬をした日

散歩と犬をした日。ペティは言葉を逆さに話す。あべこべだろうとこべあべだろうとあたしの知ったこっちゃないね。椅子がない窓に凭れて、いつまでも縺れている粒子を解いていく。それは不安のように柔らかく不埒だ。みぎぃは鳴くことを辞めず耳。古い本を紐解くと漁り火は言葉を纏う。しかし、様子がおかしい。ペティがあたしやバントフの様子ばかりすり鉢状に気にしては焦げた匂いを出す。みぎぃは犬、いえ、犬はみぎぃみぎぃみぎぃと鳴く。鳴く鳴くなくなった様子がおかしい。拡大するとレイヤーが異なる。バントフの体の深くからする滑るスメル。あたしは聞いちゃいなかった。はじめからないにも。ペティもしくはペチューニアは笑い、ここは広い閉所だ。閉所だ広い。味のついた虹のようなものを舐める時の舌のザラつきを思い出し、あたしまで燃えてしまう気がして、声も出さず涙のみ流す。ここには冷えたお湯と溶けた氷しかないよ。人体の構造的欠陥。神経が一度のどの辺を迂回して脳へと至る。

倍速で映画を観る家族が住む家。それはピーマンに含まれる栄養素。みぎぃが鳴くと聞こえてくる春の祭り夏の祭り予感の祭り。ペティ、きみが口汚く切り株を呪う時、あたしまだほんの子供で、語彙爆発を起こしていなかった。飼っている三葉虫に皇帝と名付け、虫ケラのように愛した。あ、あたしあまりにもうつくしい。け、けれどどこでおぼえたのかしら。おかしな鎧戸だこれは。サンボリスムの揺籃に、潮満ちる大伽藍。内壁にはびっしりと襞。襞にはびっしりと秒針がまとわりついてカチカチと火を灯す。回ると平面になる地球。点から線へ、線から面へ、面から大地へと旅を終えた一家の主バントフ。日記にははしたない文字でペティを称える言葉たち。みぎぃの吠え声は聞こえないの。散歩と犬をした日にあべこべなことばを話すペティもしくはペチューニアはあたしたちと反対の方向へ通学する不埒で淫らな穢れなき瞳をしたひと握りの人の瞳。

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青曜日の魔法少女

また青曜日が来たら世界の全てが青色になる。

魔法使いの学校を中退したから、
一学期までに習う魔法しか使えない私の奥歯に埋め込まれたUSBメモリーに入ってる国家機密

毎日奪いに来る刺客たち、
一番最初の授業で習った召喚魔法、ブロッコリーの中から生まれたグリーンの召喚獣も、今日はブルー。

全く戦力にならずに、私は殺されて血まみれのまま死ぬ。

幸い今日は赤曜日で、
世界は赤一色で私が出血しても分からないから、
死体はそんなに無惨に見えない。

天国不動産に紹介された物件、
右隣に住んでるアインシュタイン、
左隣に住んでる『昨日の世界に足跡をつける事が出来る君』。

そしてまた青曜日が来て、
アインシュタインが新しい数式、青空に書き殴る。
「今まで私が雲だと思っていたものは、彼がチョークで書いた新しい数式だったの?」

虹曜日が来たら世界の全てがルービックキューブみたいな虹色になる。
その日に建てた家は雨上がりにしか出現しない。
だから私達は雨上がり以外、ずっとホームレス。
翌日には、また青曜日がやって来る。

昨日の世界に足跡をつける事が出来る君が、
昨日につけた虹色の足跡。 

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往復書簡

魂と魂の繋がりを
いつの間にやら見つけて
思い出せない前世の続きを
噛み締めながら

一歩後ろを歩く駐車場
長い年月が奏でた音を
一つずつ確かめ
澄んだ夜空の月と木星

あなたが居るから
冷たい風も心地良く
ただの私として呼吸をする

沈黙の顔は
晴れて自由を取り戻し
星の導きに寄り添うままに

隠れ蓑は要らない
真の愛に目覚める
来世への魂と魂の繋がり

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周回軌道

これまで生きてきた中で
一体どれだけの分岐点に立ってきただろう
どれだけの選択肢があったというのだろう



もしもあのとき 違う途を選択していたら
いまとは違う生き方ができていただろうか




     目の前に巨大な壁がありました
     その先へ進んでいくためには 
     どうしてもその壁を越えないといけません
     しかし 運動神経皆無で高所恐怖症のわたしには
     とてもその壁をよじ登ることは不可能です
     果てさて 困ってしまいました
     近くにはしごのようなものはないかしら
     もう少し わたしでも登れるくらい低くなっているところはないかしら
     ウロウロ ウロウロ 右往左往と立ち往生ばかり
     そのうちに抜けられそうな場所を見つけ出します
     良かった助かった
     高い壁をよじ登ることもしなくて済んで
     これで先へ進んで行くことができます
     できるはずです



     その巨大な壁をうまいこと回避できた気になって
     壁の向こうのその先へ
     進んで行けてるような気になって



     あるとき ふっと気づくのです
     眼前には 相変わらずあの巨大な壁が
     まるで嘲り笑うかのごとくに立ちはだかっていることに



     ずっと抜け道をみつけた気になっていたけれど
     うまく壁を越えられた気になっていたけれど
     それはただ そんな気になっていただけで
     実はずっと ただその巨大な壁の周辺を
     ぐるぐる ぐるぐる
     廻り歩いていただけだったということに




もしもあのとき 違う途を選択していたら
違う人生が待っていただろうか
いまよりもう少しマシなふうに生きられていただろうか



たとえどんなに いまとは違う途を選択したとしたって
結局まわりまわって
いまいる同じ場所に辿り着いているんじゃないだろうか
たとえばそう あの巨大な壁の周辺を
ただぐるぐるぐるぐる 廻り歩いてただけだったように



人生って いろんな選択肢の中から
自分で選んできたようにもみえるけれど
本当はそうではなくって
けどきっと そのときそのときで
それを選ぶより他に方法がなくって
選ばされ選ばされてきた結果
いまいるこの場所に辿り着いたんじゃないだろうか




どの道この道 所詮は周回軌道




そういうのをだから
つまるところたぶん



運命って呼ぶんじゃないかってさ






☆★***★☆***☆★***★☆

 なにを選んでも選ばなくても 
 きっとたどり着いたのがいまの自分なのだから

 そんなに自分を責めなくっていい
 否定しなくっていい

 そう思うのです




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花の理想論

足りないわまだ     分かってるでしょ?
あの蝶から羽を頂戴しなさい
満足しないわ    この姿じゃ
花弁に装飾品をつけましょう

ああ私、ここで死ぬのかしら?
やめてよ、散り際に価値も馬鹿らし
笑っちゃう    承認欲求?
あんなのたかが流行り言葉でしょ

三億年の夢を見ましょう
そのうち誰かが起こしに来るでしょう
近くの朝に雨が降るでしょう
そしたら野原をかけまわりましょう
小鳥みたいに

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太陽の塔 ーー 詩  ーー

太陽の塔  ―― 詩  ――


笛地静恵



《太陽の塔》は


万博の会場にあったときよりも


野外にあって


風雨にうたれ


背中を丸め


時の腐食を甘受している


現在の姿の方が


はるかに神性を帯びている


日本の落日を目撃するために


岡本太郎の肉体を借りて


神は仮初の時を


降臨されたのかもしれない


頭と腹と背中の顔が


それぞれの


沈黙を受けとめている




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この世界線のティーンエイジャーに共感されようとしてるのだろうけれど、おそらく作者のいる世界線が違いすぎて、「大人なんかに俺たちの気持ちがわかってたまるか」という怒りよりも「こいつは何を言っているんだ???」という困惑が勝る詩

作:韓雲竜
題:「僕が十五歳のときの恥」

※※※※※


あの夕陽が西空の茜色を
そっと踏み殺していくときには

僕は皆と同じように十五歳にして

やはり皆と同じように、大韓帝国の臣民であることを恥じた

陽が昇るべきは東からであるはずで
でもその東は
帝国の宝石として嵌められていて
どうしたって外しようはなくて

大韓という名前が恥ずかしくて
あの冬草の萌える丘を掘り返しては
そこに恥を埋めようとしたけれど

こぽこぽ、こぽこぽと、
恥というものは世界の透明度を奪って
また土を吹き飛ばすように湧き出そうとして


今日という今日も
大韓という煌びやかな宝石の機械は

臣民を、日本人を、中国人を、インド人を
燃料タンクに放り込みながら
悪臭の漂う煙を吐き出しながら

万国を冬に陥れ、なおも一国の春の顕現のために動いていた


それがずっと許せなくて
鴉の鳴き響く帰路をとぼとぼ辿るなか
ソウルという地獄の中心で
僕の中に怒りと涙がこみ上げてきた


十五歳の皆
今もなお良くなっていないのだろう

でも、その怒りと涙を
どんなに辛くても苦しみが襲ってきても
その抱きかかえた胸から一ミリも
離すんじゃない

叫べ、叫べ、自分たちだけ勝とうとした卑劣な者達に
今はたくさん叫んで、戦え

大丈夫
黄昏に踏み殺された茜色は
また東海にゆっくりと漂うから

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2026年元旦

半口もて母は淑気を吐くけもの

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小さな星の軌跡 第十八話「新しい春」

 新学期。 いつものバスより一つ早い便に乗って登校。そして朝一番、部室へ行ってみた。

 からから……。
 八女先輩と甘木先輩が私物を置いていた所が空いたままの棚。 スマホのアプリで今も繋がりはあるけど、やっぱりちょっとだけ隙間風。
 さて、明日は新一年生の入学式。誰か天文部に来るだろうか、それだけを願う。 空いた棚に向かって軽くお辞儀をして二年生の教室に向かった。

 わたしとみっちゃんは同じA組。おーちゃんは私学の文系狙いらしく、選択科目がだいぶ違うのでE組。ちょっと離れてしまった。みっちゃんに「離れちゃって残念だね」って言ったら「いつかの日に、一緒にいる為なのよ」って帰ってきた。二人で見ている物がある含みだと思う。たかちゃんは選択科目は同じだけど隣のB組だ。体育なんかの合同授業は一緒になるのであんまり変わらない気もする。

 始業式から学級委員ぎめなんかも一通り終わり今日は昼前でおしまい。学食でパンと飲み物を買ってみっちゃんと二人天文部室に向かう。その途中で耳納先輩とたかちゃんも合流。
 柳川先輩と大川先輩は生物部室かな?今日はお留守のよう。

「じゃあみんな集まったので明後日の新入生への部活紹介で誰がどんな風に喋るかを決めようか?」
と耳納先輩。

「そりゃ耳納先輩でいいのでは?」
とたかちゃん。

「いや、壇上は二人まで良いし、去年は自分一人だったから、二年生から二人で良いのでは?」
と耳納先輩。

そしたらみっちゃんが
「先輩とちーちゃんでいいじゃん。……男女一人づつ平等で」

と来た。
平等は後付だ絶対。

 耳納先輩は「う~ん」と唸っている。わたしは、去年先輩を壇上で見て、天文部に入って見ようと思ったんだよね。あんなふうに輝いてしゃべれるかな?
 でも楽しい事がいっぱいあった一年だったからその事を新入生の前で伝えたいってそんな気持ちも抱いていた。

「じゃあ僕と筑水さんでもいいかな?」

「異議なし」とみっちゃんとたかちゃん。

 それでは喋る内容だけど、と簡単に内容を打ち合わせをして、時間内まで適当にアドリブで喋ることに決まった。


 入学式は在校生の一部が出席するだけなのでわたしたちはお休み、そして翌日、部活紹介の時が来た。
 新入生は午後から講堂に集まって、各部活の紹介を部員たちが演壇で順に喋る。朝倉先輩は二年生のもう一人と写真部で、大川先輩は筥崎君と生物部で喋るようだ。わたしは壇上の端の方に耳納先輩と並んでパイプ椅子に座り順番を待つ。
 どの部も笑わせながら部の特徴を喋るのが上手い。緊張するなぁ……。

「はい、生物部ありがとうございます。お次は天文部、よろしくお願いします」

 生徒会が取り仕切る中、先輩と並んで演壇に向かう、のだけど演壇の後ろだとえっと、わたし背が低いんでかなり隠れちゃうのだけど……。と困っていたら、先輩はマイクをスタンドから外して演壇の横に立ち、わたしも横に出るよう促した。目の前の一年生の一部がくすって笑ったような気がするけど、見逃す事にしよう。

 先輩が最初にマイクを持って喋り出す。

「皆さん入学おめでとう御座います。早速ですが私達、天文部の紹介を始めます」
「今部長をやっている三年の耳納と言います。天文部では三年は早くに楽隠居する伝統がある様で、自分は去年もこの演壇に一人で立たされてですね、なんとか新入部員にアピールせんといかんと、そんなだったですけど、今年はこの通り、次期部長の横に立って、もうちょっとだけ部活動を楽しもうと、という訳で、この後の天文部紹介はこちらの筑水さんにお任せしますのではいどうぞ」

 うにゃ、一昨日の打ち合わせと全然違うし、いきなりアドリブしか無いんですけど!?!?

 覚悟を決めよう。と言うかいつも通りに楽しもう。うん。

 そして、小さく息を吸い込む。

「わたしより大きい一年生の皆さんこんにちは、次期部長予定の筑水です」

 笑い声が聞こえる。よしよし。

「わたし達天文部最大の特徴は、月一回学校に泊まっての宿泊観測会です。三階の渡り廊下、あの屋根のない廊下に望遠鏡を持ち出して思うままに季節の星雲星団、惑星や月を観察し、写真を撮ったりスケッチをしたりしています。普段毎日の活動は天気図の作成です。ラジオから流れる気象通報を聞きながら天気と気圧風力などを書き込んで等圧線を引いてゆく、アナログでマニュアルな天気図です」

「……昨年の文化祭ではプラネタリウムの上映を主に天体写真や天気図の展示、太陽の黒点観察などを行いました。プラネが大入満員で、わたしたち一年生は先輩のナレーションを聴けなかったほどでした。その評判のおかげで、後期は予算が多めについて昨年末に新しい自動制御の望遠鏡も入りました。また他の部活との兼部の人も多く多彩な活動が出来ますので、是非見学だけでもきてくれたら嬉しいです。お待ちしてます、ありがとうございました」

 ぱちぱちぱち

「それでは次の無線部……の前に天文部さん、マイクを演壇に返して欲しいのですが……」

 あ、そのまま持って座っちゃた。笑い声の中、先輩と二人もう一度演壇まで行ってマイクを戻す。なんかかわい〜って聞こえたけど聞かなかったことにしよう💦

 やれやれ、無事に各部活のスピーチが終わり講堂を後にする。
 色々考えていた事、ちゃんと喋れて、そして伝わったかなあ。部室に戻るとみっちゃんとたかちゃん、おーちゃんもいておつかれ様って言ってくれた。

 先輩が一年前に感じた期待と不安、明日以降部室の扉に影が映るたびに感じるんだな。そう思いながら校門から校舎を振り返ると、夕暮れに桜の花びらが、あの日と同じ様に舞っていた。

――つづく

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手袋

一月の早朝
まだ暗い窓の外
重いまぶたを無理矢理こじ開け
のろのろと身体を起こす

いつものようにお湯を沸かし
コーヒーを淹れる
花瓶の水を取り替え
写真の脇に添える

顔を洗い 歯を磨く
脱いだ服を積み上げる
デジタル時計に目をやる
刻々と過ぎてゆく

玄関のドアを開けると
思いがけない寒さに
今季はじめての手袋を取り出す
かばんに忍ばせていたひと回り大きなそれは
黒い生地に鮮やかなオレンジ色のフェイクファー
すべり込ませると
指先にぽっかりと隙間があまる

サドルにまたがりハンドルを握りしめる
ペダルを踏み込みアスファルトを走り出す
遠く白けたオレンジ色の光
まばらにすれ違う人と車
冷たい風が頬をつねる

黄色い点灯に足を止める
目を落とす
包まれた両手は
思ったほどあたたかくはなかった

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17skai,

1# 第一のお題

『あ、ちょっと聞いて下さいよ。昨日俺、風呂場ですっころんだんですよ。そしたら、』
『ふむ』
『予知能力が身に付いちゃったんですよ』
『な、なんと。目を見開くはビッグ・アイ。たとえば?』
『あの、10円玉あるでしょ』
『あるある(笑) 』
『それを親指でピンッとはねて、落ちてきたやつをぎゅっと握るんです。そして拳の中の10円玉の裏表を見るんですよ』
『うん、それで』
『18回やったら17回当たっちゃったんです。これって予知能力ですよね』
 『あ〜なるほどね。それがきっかけで新しい能力を身に付けたんだよ、きっと。じゃあ今度は500円玉でやって…あれ?持ってないの?あ、どうやら私には遠隔透視能力があるみたいだ』
『えっと、小銭はないけどPASMOならありました』 
『あ、それは駄目だよ。だってそれノンチャージだもの』 



2#第二のお題

『あ、』
『どしたの?』

『ちょっと寒い』
『あ、確かにちょっと冷えるね』

『あの、うち、まえの彼氏にね、』
『うん』

『「寒い」っていったら「寒いね」っていわれたの』


『』

『でもさ、うちはほかの言葉をかけてほしかったんだよね』
『なるほど。俺だったら行動で即示すね。あいにくマフラーはないけどさ』

『どうするの?』
『ピン、ピン、ピン、パラリ。さ、中に入りなされ』

『え、ヤダよそんなの』
『寒いと言ったのはどこのどいつだい?さ』

『ヤダ、馬鹿みたい。やめてよ』
『ガバッ、捕まえた。フルヘッヘッヘ 。MOUHANASANAINODEARU』

『ヤダ、恥ずかしいよ。もっと恥ずかしいよ』
『寒いと言ったのはどこのどいつだい?さ、歩くよ』

『え、なんで歩くの?このままでも十分暖かいよ』
『寒いと言ったのはどこのどいつだい?さ、未来永劫しばし歩くよ』

テクテクテクノのテクノの娘…。…。。

『あっ』
『あっ』

ドテリ。

『ほら、転んだじゃない。馬鹿。そんなことするの高三のDカップくらいだからね』
『?や、そらそうだよ。だって俺の子供心は17才で止まってるんだから。知ってるだろ?』

『はじまりました、馬鹿再確認。あ、何歩歩いて転んだか知ってる?うち、数えてたよ』
『知ってるよ。答えなくてもいいでしょ?17回転んだんだよ』

『じゃあ、うちが馬鹿って何回言ったか覚えてる?』
『分からない。なぜなら変に頭が賢いから』

『なら、馬鹿って10回言ってみて』
『馬鹿、馬鹿、馬鹿…手間なので3回だけにした』

『その馬鹿は誰?』
『この痴態を晒している二人を遠目から眺めている大衆みな全て。なぜならあの人たちは、こんな異性への愛し方もあるのをまだ知らないのだから』

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負けず嫌いになれない人

負けず嫌いの人が成功するとよく話を聞く。実際そうだろう、彼らは1番になるために頑張れる人なのだから。
負けず嫌いにはなれない人もいる。
その人は他人が自分の芸より上手いのを見ると、自分より年数が上でも嫉妬でやる気をなくしてしまうのだから。
勉強で他人より上へ上へと言う人が近くに居る。その人は下を見るなとも言う。
けれど他人の成績を見てやる気をなくすのならば下を見ても意味はあると思う。
絵や工作といった類ものはやる気をなくしたとしても強制してやることでもない。
けれど勉強と言うのは将来の進路を広げる為に重要だ。
何があったとしても、今向かっている夢を諦めたとしても、学歴が良ければ社会復帰は自身が望めばそれなりには出来る。しかし低学歴ならばどうだろう。社会復帰、いやそれ以前に就職など不可能だ。
それじゃあやる気はどうやって出せば良いのだろうか、わからない。
そんな人は何となく分かる
全てにおいて自分を下回っていて自分を肯定してくれるような人。そんな人が必要なのだろう。

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批評・論考

ちょっとの愚痴

とある友達の話。
自分も荒らしをしているのに自分を正当化して他の荒らしを叩くような人。でもその子は私しか友達がいない。だから一緒に居る。
毎日一緒に帰る。断る理由がないから。本人の嫌なところをその人の前で言えるほど私は強い人でもないから
でも私の親は良い子って言ってるんだから良い子なのだろう。
私には他人の良し悪しがわからないのかもしれない。
彼女がみんなから嫌われているのは何でだろ

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批評・論考

青空

きみがきみであるために
太陽は照り
雲はほどけ
空気は澄んでいく

それを
協力と呼ぶのは
少し違う

ただ
きみがいてほしい
それだけなんだ

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おならうた

どれだけ見栄を張っても、オナラブー
どれだけ格好つけても、オナラブー

偉大な文豪小説家
或る日、五月の雨の中
得意のペン先尖らせて
魅惑の名文閃いたと、ポンと膝打ち肩慣らし
お決まりのポーズを取った瞬間


                   ー
                 ー  ー
               ー     ー
           …    ー   ー
            ー  ー   ー
             ー    プ

っと、スッキリしたあ!

どれだけ見栄を張っても、オナラブー
どれだけ格好つけても、オナラブー

イケメンテレビの俳優さん
ウキウキ九月の山の上
汗かき拳を握りしめ
最高のショットが決まったと、トンと肩下ろし
素に戻った瞬間


                        ー
                     ー ー
                    ー ー 
                   ー
                    ー
                     ー
                      ス

っと、サッパリしたあ!

どれだけ見栄を張っても、オナラブー
どれだけ格好つけても、オナラブー

怖くていかつい大統領
爽やか四月のパレードで
とびきりスピーチ決めてみせ
どうだいオイラはと、ホッと足下り
椅子に座った瞬間


                           ーーーーー
        ーーーーーー                  ーーーー 
              ーーーーー       ーーーーーー
                   ブーーーーーー

っと、バキュームだあ!

どれだけ見栄を張っても、オナラブー
どれだけ格好つけても、オナラブー

見栄を張って張って張って
胸を張って張って張って
                       ー
                   ッ    ー 
                    ー    ー
                     ー    ー
                      ー  ー
                        ブー


見栄を張って張って張って
胸を張って張って張って
                    ー
                   ー ー
                    ー ー
                  ー  ー
                 ー   ー
                ー  プー

どれだけ知恵を絞っても、オナラブー
どれだけ頭捻れど、オナラブー


或る日、悩まし女の子
三月乙女を愛でる日に
自作の恋文読み上げて
嗚呼悲しと、ボソッと涙し
顔を上げた瞬間
                      ッ 
                     ッ ッ
                      ッ
                   ブリッ

と、カレーの匂いだあ!

どれだけ知恵を絞っても、オナラブー
どれだけ頭捻れど、オナラブー


頭賢し、名探偵
お芋の美味しい十月に
今日も得意の名推理
真実突いたし、ズバッと解決!
犯人を睨んだ瞬間                  ッ
                           ー
                          ー
                         ー   
                          ー ー
                           ー ー
                           ヌー


っと、おっと、しまったあ!

どれだけ知恵を絞っても、オナラブー
どれだけ頭捻れど、オナラブー

モテないクラスの男の子
太陽ギラギラ八月に
私の人生真っ暗暗 
もうダメだと、ウエッと吐き気を催し
目を伏せたその瞬間
 
                             ー
                            ー ー
                           ー ー
                         ー  ー
                        ー ブホー
                         ー ー
                          ー 

っと、尻の呻きだあ!

どれだけ知恵を絞っても、オナラブー
どれだけ頭捻れど、オナラブー

芋を食って食って食って
お腹張って張って張って張って
                                 ッ
                                  ー
                                 ー
                             ー  ー
      ッ                       ブー
       ー
        ー 
         ー 
        ピョー        

芋を食って食って食って
お腹張って張って張って張って

                                

                                                                           
                           ー 
                          ー
                         ー
                       スー   


    ピー
 ッ    ー
  ー     ー
   ー  ー
     ー

っと、毎日がスペシャル! 
おしまい。

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空白都市

この街にはこんなに人がいるのに
君だけがいない

浜辺に打ち寄せられ
銀色の腹を見せて腐っていく魚のように
街の空は白く輝いていて
僕たちは光るものを
偽物の宝石をこんなに沢山持っている
指を見れば
二千円のジルコンと二十万円のダイヤ
ではもちろんよく輝くのはジルコンの方で
奥底から湧きでるほんの仄かな繊細な虹
を愛するのは難しい
ぼくらはそれほどに飽きっぽいから
否 否
この星の石に名前などなかった
ただ45億年を黙って生きてきただけ
人に値段をつけられるな
自分の値段は自分でつけろ
そしてどんなに安く買われていても
その本当の値段を譲るな
忘れるな

あの白い建物は
いつかのアミューズメントパークだった
観覧車に乗った君と膝突き合わせ
高いところが怖くて震えながら街を見下ろした
地平線の向こうまで生活はぎっしり詰まっていて
見えるどの窓もどうしょうもなく
ほの暗くて四角くて人間の匂いがした
君は神様だからブロック遊びみたいに
建物をつまんで積んだり崩したりして
あそこの道とこの海岸線を繋いで
街のうららかな夜明けに見えない波を
漣を一面に打ち寄せさせるのだろう
あの濁流でなく透明できれいな洪水ならば
溺れてもいいとみんな思っている
かも 内心ではどこかでは
海に帰りたいけど海が迎えに来るのは嫌なんだ
現象は 神様の指が決めた通りに
過去や未来へとタイムラグしながらやってくる
そう
神様は、決めるだけで
生きることはしない

ゆっくりと境界線が崩れていく
眩しすぎる真昼に目が見えなくて
君と手を繋いで歩いたそこは
草原だったか公園だったか
桜の香りと酔っ払いたちの臭気
怒声と歌声が響いていたのを覚えている
君が走ると私も走った
リードで繋がれた犬と飼い主みたいに
もちろんどちらも犬でどちらも飼い主で
何なら
花の色を浴びすぎた詩人だったのかもしれない
連結することばとことば
それから改行 改行 改行、そして空白
まだ黙らないのなら
遊んでよ もっと

(ねえ
スーパーファミコンの頃のマリオやったことある?
引っ越しはひび割れブロックから
次の足場に飛び移ることに似ている
飛び移ったらもう元の場所には立てない
夜になったら家も居場所もない
だからヒビだらけのところには
長くいられないとしても
飛ぶときには足がすくむんだ
でも人生は強制スクロールだから
そもそも
戻ってとり忘れたアイテムを取ることも
光る翼の亀を倒して
翼を奪い直すこともできないね
ねえ
君はあのゲームクリアできたの?
翼は手に入ったの)

点滅する信号機の横断歩道の
ダルメシアン模様の陽だまり
道路のあちらとこちらでは
時が断裂してる
通りゃんせ通りゃんせ
通れない通せない問題ない
改行、改行、改行、句読点のない深夜の断章
雲の一切れと
そして空白

君との愛は本当に見事な嘘みたいだったよ
鮮やかな
鮮やかな虹色のルービックジルコニア
もうあのアミューズメントパークもなくて
ひとりで
街外れに新設された観覧車に乗る
高いところはやっぱり怖くて怖くて
震えながらガラスに顔を近づけ
西日の街に
ギリギリで触れないキスをする
いつまでもこれが君の顔
あの横断歩道にも公園にもどの建物にも道にも
君はいない
君だけは いない

(これはラブイズオーバーではなくて
ゲーム・イズ・オーバー
だがライフ・イズ・ネバー・オーバー)
本当にいないのは誰か?
君か
私か
この途方もない街を円卓と囲む
私たちみんなか
安っぽい疑問、改行、改行、改行
ありがとうのうしろの

空白

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フォーカシングと詩の読解の同一性

(各種AIとの多量対話差分をもとにclaude.aiでケチつけながら記事作成)


フォーカシングと詩の読解の同一性



1. 前提——二つの営みの構造的類似

1.1 フォーカシングとは何か

フォーカシングは、心理療法家ユージン・ジェンドリンが開発した技法である。その核心は、言語化される前の身体感覚(フェルトセンス)に注意を向け、それを丁寧に言葉にしていく過程にある。

フェルトセンスとは:
まだ明確な言葉になっていない、漠然とした身体的な感じ。「胸のあたりがモヤモヤする」「喉に何か引っかかっている」といった、輪郭の定まらない感覚。思考や感情より先に立ち上がる、前言語的な経験。

フォーカシングの手順:
身体に注意を向ける。そこに生じている感覚(フェルトセンス)を見つける。その感覚に「ぴったりくる言葉」を探す。言葉と感覚を照合し、ずれがあれば調整する。感覚が変化する様子を観察する。

重要なのは、正解を探すのではなく、感覚の動きそのものを追う点にある。

 

1.2 詩の読解における類似構造

詩を読むとき、何が起きているか。

通常の散文的読解では:
語の意味を確定する。文法的構造を把握する。文脈から解釈を導く。

しかし詩の場合、意味に先立って、音・リズム・語感が身体に働きかけてくる。

たとえば、「あかぎれ」という語を読んだとき:
意味(皮膚の裂傷)を理解する前に、「ギ」という音の硬さ、「レ」の擦過音が、喉や舌に、ある種の感覚を引き起こす。

この言語化以前の身体反応が、詩の読解の起点になる。

 

2. 同一性の根拠——五つの共通構造

2.1 前言語的経験の優先

フォーカシング:
思考や判断より先に、身体に生じる「感じ」を重視する。「なぜそう感じるか」は後回しにし、まず「何を感じているか」に留まる。

詩の読解:
語の意味を確定する前に、音・リズム・語感が身体に作用する。「この詩は何を言っているか」より先に、「読んだとき身体に何が起きたか」がある。

共通点: どちらも、意味・解釈・判断に先行する、未分化な経験を出発点とする。

 

2.2 感覚の言語化という運動

フォーカシング:
フェルトセンスを「ぴったりくる言葉」で表現しようとする。最初は「モヤモヤ」「重い」といった漠然とした語から始まり、徐々に輪郭が明確になる。

詩の読解:
詩を読んで生じた身体反応を、言葉にしようとする。「喉が乾く感じ」「視線が定まらない」「息が詰まる」——感覚を記述する語彙を探す。

共通点: どちらも、非言語的な経験を、言語へと翻訳する運動である。

 

2.3 正解の不在

フォーカシング:
「正しい感じ方」は存在しない。各人の身体に生じる感覚は、その人固有のものとして尊重される。

詩の読解:
「正しい解釈」を一つに定めることはできない。同じ詩を読んでも、読者ごとに異なる身体反応が生じうる。

共通点: どちらも、評価や正誤の判断を保留し、経験の多様性を前提とする。

 

2.4 感覚と言語の往還

フォーカシング:
感覚に言葉を当てる→言葉と感覚を照合する→ずれがあれば言葉を調整する。この往還の中で、感覚が変化し、理解が深まる。

詩の読解:
詩を読んで感覚が生じる→その感覚を言語化する→テクストのどの要素がその感覚を引き起こしたか確認する。この往還の中で、詩の構造が見えてくる。

共通点: どちらも、感覚と言語の間を行き来する、動的なプロセスである。

 

2.5 意味は後から付随する

フォーカシング:
フェルトセンスを感じること自体が目的であり、それを「解釈」することは二次的。感覚が変化すること自体に価値がある。

詩の読解:
身体反応を確認すること自体が読解であり、「意味の確定」は必須ではない。音・リズム・語感を受け取ること自体が、詩を読むことである。

共通点: どちらも、意味や解釈を、経験の後に生じる副産物として扱う。

 

3. 相違点——対象の内外

ここまで同一性を論じてきたが、一つ決定的な相違がある。

3.1 フォーカシングの対象

自分の内側に生じる感覚。外部からの刺激(問題状況、対人関係など)に対して、自分の身体がどう反応しているか。

3.2 詩の読解の対象

外部のテクスト(詩)に対して、自分の身体がどう反応しているか。ただし、詩は自分の外にありつつ、読むことで身体の内側に取り込まれる。

3.3 相違は表面的

しかし、この相違は本質的ではない。

フォーカシングでも、外部の状況が内的な感覚を引き起こす。詩の読解でも、外部のテクストが内的な感覚を引き起こす。

どちらも、外部の何かが、身体を通じて経験される過程を扱っている。

 

4. 読解の転換——「意味の把握」から「感覚の追跡」へ

4.1 従来の詩の読解

詩の「意味」を確定することが目標。作者の意図、歴史的文脈、象徴・比喩の解読。読者の身体反応は、主観的な印象として軽視される。

4.2 フォーカシング的読解

詩を読んで生じる身体反応を、第一義とする。意味の確定ではなく、感覚の動きを追う。読解は「正解の発見」ではなく、「身体内での再配置」のプロセスになる。

4.3 転換の意義

この転換によって、何が変わるか。

読者の立脚点が変わる:
「正しい解釈」という外部の基準ではなく、「自分の身体」という内部の基準に立つ。詩がわからなくても、身体に何が起きたかは確認できる。

詩の技術が見えるようになる:
なぜこの音を選んだのか、なぜこの位置で改行したのか。感覚を引き起こす技術的な仕掛けに気づく。

複数の読みが共存できる:
各自の身体反応は異なるため、解釈の多様性が自然に生まれる。「どちらが正しいか」ではなく、「どう感じたか」を持ち寄れる。

 

5. 実践への橋渡し——フォーカシング的読解の手順

フォーカシングを詩の読解に応用する、具体的な手順を示す。

5.1 準備

詩をゆっくり読む。意味を急いで理解しようとしない。身体に注意を向ける。

5.2 ステップ1:初読(意味の保留)

詩を声に出すか、心の中でゆっくり読む。語の意味を繋げようとせず、音・リズム・語感を受け取る。「わからない」で止まらず、身体の反応を観察する。

5.3 ステップ2:フェルトセンスの確認

詩を読んで、身体のどこかに感覚が生じたか確認する。喉、胸、手のひら、目の奥、背中——どこでもいい。「何も感じない」と思っても、呼吸のリズムや視線の動きに変化があるかもしれない。

5.4 ステップ3:感覚の言語化

生じた感覚を、短い言葉で表現する。「乾いた」「詰まる」「浮く」「ざらつく」「重い」「速い」——感覚語を使う。正確さよりも、「なんとなくこんな感じ」を優先する。

5.5 ステップ4:テクストへの照合

その感覚が、詩のどの部分で生じたか確認する。特定の語? 音? リズム? 改行? テクストの要素と感覚を対応づける。

5.6 ステップ5:再読(感覚の変化を追う)

もう一度詩を読み、感覚が変化するか観察する。最初と違う感覚が生じるかもしれない。その変化自体が、詩の働きを示している。

5.7 ステップ6:意味への接続(任意)

ここまでの感覚的な読みを踏まえて、意味や解釈について考える。ただしこれは必須ではなく、感覚の確認だけで終わってもいい。

 

6. 理論的含意——読解の再定義

6.1 読解とは何か

従来:詩の意味を正確に把握すること
フォーカシング的:詩が身体に引き起こす変化を追跡すること

6.2 詩とは何か

従来:意味を伝達するための言語形式
フォーカシング的:身体に作用する音・リズム・質感の配置

6.3 読者の位置

従来:詩の意味を受け取る受動的な存在
フォーカシング的:詩を身体内で再構成する能動的な存在

 

7. 限界と留保——この方法が全てではない

7.1 フォーカシング的読解の限界

詩の歴史的・社会的文脈を捉えにくい。詩の政治性や批評性が後景化しやすい。感覚の言語化能力に個人差がある。

7.2 他の読解様式との併用

フォーカシング的読解は、複数の読解様式の一つである。

歴史的・文献学的読解、精神分析的読解、社会批評的読解、形式分析的読解——これらと対立するのではなく、補完し合う関係にある。

7.3 適用範囲

すべての詩がフォーカシング的読解に適しているわけではない。

特に有効な詩:
意味の連続性が断片化されている。音韻やリズムが前景化されている。身体的なイメージが多用されている。語の物質性(音、視覚)が意識的に操作されている。

効果が限定的な詩:
物語性が強い。散文的な意味伝達が中心。形式が定型的で、音韻の効果が予測可能。

 

8. 結論——同一性の意味

8.1 フォーカシングと詩の読解は、同じ運動である

どちらも:
前言語的な身体経験を出発点とする。感覚を言語化する過程を経る。正解を求めず、経験の動きそのものを追う。意味や解釈は、後から付随する。

8.2 この同一性が示すこと

詩の読解は、テクストの外にある意味を発見する行為ではなく、テクストが身体内で引き起こす変化を観察する行為である。

フォーカシングという既存の技法を援用することで、この読解の在り方を、具体的な手順として提示できる。

8.3 実践への可能性

詩を「わからない」で諦める読者に、別の入り口を提供できる。詩の技術(音・リズム・語感の操作)を、身体反応を通じて可視化できる。読者と作者、読者同士の対話を、「感じたこと」を持ち寄る形で開ける。

フォーカシングと詩の読解は、同じ営みの異なる呼び名である。

どちらも、言語化される前の経験に耳を澄ませ、それを丁寧に言葉にしていく——その運動において、本質的に同一である。

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批評・論考

いい、茶柱

そっと 




口紅を
交互に  
つけて
湯呑を
まわす
唇を
てらす



いい、
茶柱

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鯨の音

この鯨の背から望む黝い海はいつ果てるのかとんと判らないのだが、僕たちは進まなければならないのだ。ときたまに視界を滑空する海鳥たちは果たしてどこでその羽根を休めるのか、僕は夢想しながら隣の少女に目をやる。白い衣を纏う少女は虚ろに視線を泳がして、すこしこの鯨の背から身を乗り出して海水に手を浸してみたり、伸びた僕の髪に手を触れたりするのだが、僕が話しかけてもただ黙すのみだった。鯨の尾には太く長い縄でもって函が括りつけられていて、しかしその函には決して海水が触れなかった。そのため函は海水除けて部分的に海を裂き、海底に触れてガタガタと音を立て続けていた。その音から察するにどうも函の中には石板様の硬い何かが入っているようなのだが、なにしろ函は遠く海の底で鳴っているのだ、僕たちがその中身を確かめる術はなかった。
鯨には餌をやる必要があった。ときどき鯨は高音とも低音ともつかない不思議な、しかし不愉快でない声を鳴らして餌をねだる。陸地の見当たらないこの世界で僕たちがどうやって食糧を得るのかといえば、それは空から降ってくるのだった。僕たちが腹を減らしたとき、また鯨が鳴くとき、きまって空から乾いた、白いパンのようなものが鯨の背に向かって降ってくるのだ。そうして僕たちはそれらを頬張ったり前方の海に投げて鯨にやったりする。このとき、このパンのようなものはきまって鯨の背に向かってしか降らない。したがって、僕たちの眼に空からパンのようなものが降ってくるところがうつるとき、その空の下には僕たちとは別な鯨とひととがいるに違いないのだった。飲み水はといえば、鯨の背に育ってもはや岩のようになった藤壺の塊を——はじめ藤壺はまだらに鯨の背にあるのみだった、この藤壺の大きさは僕たちの航海の時間を物語っている——拳でコン、と叩くと水が溢れ出てくるのだった。僕と少女とはその水を両手で掬って飲むことで渇きをしのいでいた。



ひとびとにとって空を飛ぶのに邪魔だと目されたもの、たとえば電柱や電線など、およそ中空での視界を遮られると見做されたものは先代のひとびとによって悉くその名を唱えることで取り尽くされた。同様にしてひとびとが空を飛ぶにあたって憤ろしいと感じられるもの、たとえば連嶺や懸崖など、およそ天空からの風景を害すると見做されたものもその実在を奪われた。また先代のひとびとは肩甲骨が翼の名残であると信じていて、実際に幾人かの若者は最先端の言葉——いまおもえばそれは烏滸がましいことこのうえないものなのだが——によって背中から翼を生やして空を飛んでいた時代があったらしいのだが、天に近づいた彼らは悉くその翼が発火して堕ちていったという。彼らは天蓋を目指して一心不乱に言葉でもって目につく物を次々と取り尽くし、遂にはこの果てるともおもわれない海、ときたまに視界を横切る海鳥、そしてこの鯨と僕たちのみが残された。



炸裂音がする。遠くで、あるいはそう遠くないところで、なにか巨きな、あるいはそう巨きくないものが爆ぜるような音。そのたびに波動する僕たちはしかし進まなければならない。
生成したり滅却したりする力を言葉はとうに喪っていたから、僕たちは好きに話すことができた。かつてあった生活や建築物の話だ。といっても専ら僕が喋るのみで、少女は一言も発さず、分かりにくいジェスチャーのような仕草で僕に相槌のような動きをしてみせるのみだった。海鳥が少女を通り過ぎることがあった。海鳥は少女の肩口から逆側の脇腹へと抜けてまた空へと舞い上がり、ちょうど海鳥の這入ったところの少女の肩口は瞬間はっきりと黒ずみ、海鳥が見えなくなる頃にはその滲みはぼやぼやと消えてゆくのだった。痛くないの、と僕が尋ねたり、冗談を言いながら僕が少女の髪を梳いたりすることもあったが、少女は喋らなかった。
他の鯨とその背の上のひとと海上ですれ違うことがあった。数える程度しかそのようなことはなかったが、きまって一頭の鯨につきその背に乗ったひとの数は二人、性別は男女が多かったが、そうでない場合もあった。生き残りのひとに出会えることは少ないから、そのようなとき僕は彼らに大きな声で話しかける。彼らもこちらに気づいて声を発するのだが、その声は誰の場合でも、いつも何とも言えない奇妙な仕方で発されていて決して聞き取ることができなかった。僕たちはそうしてお互いに言葉を交わすことができないままに行き過ぎるのだった。この世界では少女が喋れないものなのかといえばそうではないようで、こちらに向かって声を発するひとの中には少なからず少女もいた。逆にこの僕の隣の少女と同じように、ぼんやりとして黙すのみの男もいた。



雨があった。雨風をしのぐ手段はなかった。だから僕は少女に覆い被さった。濡れた僕の背中から垂れた水滴が衣の裾から少女を濡らしていくのを見ながら僕は僕の体の冷えるのを感じて、ひとつ咳払いをした。
日照りがあった。湧き出す水は足りなかった。だから僕は僕の飲む量を少なくした。少女が暑さでぐったりとしているときは僕が少女に水を飲ませることもあった。
寒さがあった。暖を取る手段はなかった。だから僕は僕の衣を少女に着せた。少女がふるえているとき僕は少女を抱きしめた。体温の混ざる感覚を僕は忘れなかった。
嵐があった。長く止まなかった。こういったとき僕たちは嵐の行き過ぎるのをただ待つのみだった。しかし今日は少女の様子が違っていた。泣いていた。大粒の雨が降り注いでいた。そう見えただけなのかもしれない。しかし僕には確かに少女が泣いているように見えた。
僕は少女を抱き寄せた。冷たかった。大丈夫、と僕が声を掛けたとき、少女の左腕がぐしゃり、と崩れてもげた。僕は強く抱きしめた。

少女は右手で僕を突き飛ばして海に落ちていった、爆発音がした、底の方から、僕は、中空に打ち上げられた――



目覚めると僕はゴツゴツとした場所で白い布を纏っていた。鯨の背の上に僕はいた。隣には海に落ちていった少女とは違う少女がいて、僕に喋り掛けてきた。僕は返事をしようと試みたのだが、声が出なかった。だから僕は身振り手振りでジェスチャーのようなことをしてそれを相槌とするしかなかった。その新たな少女は薄青い布を纏っていて、饒舌だった。この世界が海と、海鳥と、鯨と、僕たちのみになってからの歴史を少女はよく知っていた。曰く、僕たちは番いになって鯨を育てなければならない宿命にあること、失敗すれば鯨は爆ぜるということ、鯨が育つ条件は餌をやることだけではないということ、僕たちは進まなければならないということ——滑らかな語り口を小休止して、少女は僕に尋ねた。前の少女をあなたは少女のためにのみ愛していたか、と。僕は黙した。
少女は話を続けた。曰く、鯨を育て終えたひとびとの国があると。そこは、巨きくなった鯨でのみ辿りつける大陸であるとか、鯨の潮でもって打ち上げられてはじめて天空に張られたそこに行かれる城なのだとか、いろいろな話があるそうだ。

海鳥が僕の胸を通り過ぎた。僕は泣いた。僕を見て少女は、僕の胸にできた黒い滲みをさすって、一緒に泣いた。

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カーテンの裏

きらきらの
剥がれ落ちた鱗
なにも
話せないことが
動けないことが
いたい
汽水へ運ばれる
夢は破れて

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行き先


冬空のスーパーマーケットの駐車場にて、
人待つ間に買ったばかりの花林糖の袋を開ける。

ガラスの向こうにはパノラマの空。
雲があったりなかったり。
風が舞ったり舞わなかったり。

あっ、ヘリコプター。
ブルブルブルブル、威勢よく右の空へ。

あっ、飛行機。
音を立てずに、ひたすら左の空へと進んでいる。

上下に分かれて上手にすれ違った。

あっ、何の鳥だろう?
ちろちろちろり、前から奥へせわしなく。

みんな、どこに行くのだろう。

負けじと花林糖の袋に指を突っ込む。
ポリポリポリ。
喉を緩める。

手には次の花林糖。
やっぱりお茶を飲もうかな。
つまんだ指を袋に戻す。

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夏も消えゆくのですかね?

母に
十月のまだ暑い頃
僕は
夏も消えゆくのですかね?
と問うた
母は何も答えなかった
今度
僕自身が消えゆく
夏の蜃気楼に佇み
それをながめては
あの
麦わら帽子が••••••
少女が••••••
いた
線路に沿って歩く姿に
ときめきを
覚えずにはいられなかった
やがてこの情景に
秋になる頃のもの淋しさに
涙を流さずにはいられなかった
母よ
夏とともに
僕も消えゆくのでしょうかね?
と問うた
母は何も答えなかった

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滲む手紙

あなたへと綴った手紙
渡す勇気もないまま時が過ぎ
手紙は色あせている

あなたを想うと溢れる言葉
沢山綴っても足りない程
あなたを想うと涙も流れる
涙は手紙に落ち
綴った言葉が滲む
滲んだ言葉は読めなくなり
あなたへの想いもなくなりそうで
余計に哀しくなる

あなたへ渡す事はきっと叶わない
沢山の言葉は涙で滲み
もう読めない
それでも私は手紙を持っている
あなたを想う心を失いたくないから
捨ててしまったら
愛も消えてしまいそうだから

色々あせた手紙
読み返して涙がまた流れる
そして言葉は滲む
その内読みなくなるだろう
その時が来たら
手紙を捨てる時
あなたへの想いも捨てる時…

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[う]鱗

電気コードの断線から小さな火花が弾けるのを見た
鳴らしたエレクトリック・ギターがヒューズを飛ばしてアンプが劈く悲鳴を上げる
目の端の筋が収縮して空気が私を連れ去ろうとする
抗うように身を振り乱して落ちていくうろくずが醜くて泣きそうになる
あなた方はそれを美しいと見上げる
一つの宗教の崩壊のように一瞬を待つ
それを崇高なことだと思わないでほしい
あなた方はまだ輝く体毛に覆われているのだから

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しらやまさんのこと 8

 もう一緒にグラウンドを駆け回ることができない
友達について、S君は作文を書いた。その作文を読
みながら泣いた。その声を聞きながら、僕も泣いた。
 とてもかなわない し、かける言葉もない。

 春は、一度やって来て、またちょっと引き返した
ようで、僕らの町にも雪がちらついていた。日本海
の冬型の雲はすじ状で、雪の降っている向こうには
青い空が広がり、山がまばゆく輝く。日々の生活で
ほんの少し立ち止まって普段とは違う方向を眺める
だけで、言葉以上の世界が広がっているときがある。
少なくとも僕が持ち合わせている言葉よりは。
 
 僕らは優しくなれる。
 罪多き生き物で、偽善を覚えて、利己主義であっ
ても 優しくなれる。

 もう会えない君へ、こんなにも寂しい思いをする
のなら、
 口だけじゃん 
と言われながらも、優しい言葉をかければ良かった
と思う。

 もう会えない君へ、
 夏のグラウンドは暑かったね。
 冬の体育館は冷えたね。
 初めてのゴールはうれしかったね。

 もう会えない君へ、
 山 白く 輝いて 
 まぶしいよ。

  

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再生

鏡を見たら、偶々、顔が現れてきて、眺めてみると、思ったよりシミが多かった。この顔の持ち主を探しに外を歩くと、靴が、足裏に地面の堅さを教えてくれた。世界とは、地球のことを言うのでしょうか。世界一を決める大会に、宇宙人はいるのでしょうか。私が死んでも、あなたが死んでも、地球は無くならないけれど、世界は無くなるのかもしれません。あの葉っぱはニンジンの葉っぱだね、と私が言うと、それを教えたのは私よ、とあなたは言った。焚火を見ながら読書をした記憶、を捏造した、もしくは、捏造されたので、鱗になって、剥がれ落ちていく。色や位置、形が変わったら、それはもう別物だから、機械で大量生産された物に安心して、私も誰かに成っていく。あの場所を通るたびに思い出してしまうことがあるかもしれないけれど、これまでの時間を決して否定しないでください。空間は時間を守ってくれると教わりました。ただ、時間は空間を守ってくれやしません。また鏡を見たら、顔は現れなかった。光を浴びすぎた顔は、シミに覆われ、黒子になってしまった。テレビ画面に汚れがついていると思ったら、宇宙のはしくれだった。戸締りやガス栓、蛇口を確認するように、靴を隔てた足裏で地面を押し返していく。シンボルツリーのアオダモは葉焼けしていて、霧雨が降り注いでいる。川の水位が上昇して、地表が減色するように、年々分厚くなっていく国語辞典を代名詞で薄くしたい。溢れた一般名詞とたくさん接続して、人波に溺れず、世界を泳いでいきたい。部品が取れて毀れたおもちゃはどうすればいいかと母に聞いたら、また買えばいいと教えてくれた。落としてしまったソフトクリームは、もう食べられないから、風食を待てばいい。再生ボタンが効かなくなったリモコンは、修理に出さず、現在だけを見つめればいい。親になるということは、代名詞になることだと知って、鏡を見たら、見慣れた顔が現れた。私はこの顔の持ち主に、固有名詞を与えた。宇宙人から見た私たちは宇宙人だから、この世界には宇宙人しかいないね、と私が言うと、それを教えたのは私よ、とあなたは言った。言葉を飲み込み、誰かに成っていく。あなたは、私が吐き出した記憶の欠片を保存している。それを時々眺めては、言葉にして、私に届けてくれる。その言葉の色や位置、形が変わらないようにするため、足裏で地面を押し返して、名詞を拾い集めていく。

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みな波なみなみの涙か

涙みたいな朝だ
誰も知らない海辺
静かな心臓の音
琥珀色の朝焼け
生まれたばかりの今日に
口づけをする
おはよう
みんな死んでしまった
豊かな暮らしを求めて
みんな逝ってしまった
おーい、どうだー?
人生は楽しかったかー?
さらさらの砂
殺し合いなんて
別にしたくなかった
たった一つの選択
そこに意志があった
右をむいても
左をむいても
内蔵が破けた
破けたなかに
真珠があった
それは神授だ
大事にしなよ
まだ寒い夜明け
新しい時代がそっと息をしている
肺を通って
今日を通して

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『Memories of a Paper Plane』

この文章は、2月7日(土)20時に三浦果実アカウントにて公開される「ネット詩は文学じゃない#1」スピッツ特集に向けて書かれたものです。

一般に喧伝されるポエムが、未来への期待や届かぬ想いを「妄想」という名の燃料で燃やす行為だとするならば、草野マサムネが描く世界は、すでに「起きてしまった」事象の惨憺たる、しかし美しい残響に他ならない。それは僕たちが経験したはずのない、けれど細胞の深淵が確かに記憶している「存在しない過去」を巡る巡礼だ。
スピッツ的世界観において期待が宿るのは、紙飛行機が放たれた瞬間の高揚ではなく、風にさらわれ、誰の記憶にも残らず、道端に落ちて朽ちていくまでの「墜落の軌跡」そのものにある。彼らの視線は常に、飛び去った後の「空の空白」を、透明な諦念をもって見つめている。そこには「死」と「性」が未分化のまま溶け合う、標本箱のような静謐な日常が横たわっているのだ。
呪詛的な執着から紡がれるポエムを脱ぎ捨て、確定した現実から、存在し得なかった視点を持って世界を俯瞰すること。醒めない夢を追うのではなく、醒めてしまった後の乾いた世界を愛おしむこと。その倒錯した手触りこそが、放課後の無人の教室や、西日に焼けるアスファルトの匂いといった、人類共通の「喪失のアーカイブ」を呼び覚ます。
僕たちがスピッツを聴くとき、そこにあるのは、かつて置いてきた「選ばれなかった選択肢」たちが、佇む別の現実だ。紙飛行機は必ず落ちる。その墜落地点を、見向きもされない影の底を、凝視し続けること。その残酷なまでの誠実さこそが、ポエムという主観的な幻想を、普遍的な文学へと昇華させる唯一の触媒となる。再生ボタンを押すたびに、期待と諦念は泥のように混じり合い、僕たちは「存在しない記憶」へと、何度でも再会を果たすのだ。

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Nothing's gonna change my world

時間はもはや刻まれるものではない。それは、葉先に結ばれた露の重みが耐えかねて、土へと還るその瞬間の滴りにのみ測定される、極めてあわい情緒の集積だ。
私は、鋭利な鋏を振るい、世界の余分な枝葉を切り落とすことに汲々としていた。輪郭を整え、意味を矯正し、まるで一輪の「正解」だけを愛でる無機質な園丁。しかし、今の私はただ、土に還る途上の沈黙を、肺胞の隅々にまで浸透させている。生命の終着点こそが、新たな言語の産声であることを知ったからだ。
頭上を覆うカラテアの波打つ葉。夜には祈るようにその身を閉じ、朝には世界の光を両腕に抱きしめる。その密やかな律動を、私は自身の鼓動として複写(トレース)する。葉裏に潜む深い紅色は、かつて私の内側で暴れていた情熱の、穏やかな成れの果てだ。燃え盛る炎はいつしか静かな残り火となり、今はただ、記憶を滲ませる色彩としてのみ、そこに在る。
アジアンタムの繊細な小葉が、目に見えない空気の震えを慈しむように掬い上げている。その淡い緑の群生は、かつて私が紡ぎ、そして捨て去った無数の言葉の断片だ。意味という重荷から解放されたそれらは、今はただ、風の行く末に身を委ねている。記憶を宿していた場所には、クビアクシの蕾がしどけなく垂れ下がり、私がこれまでの人生で飲み込んできた光の総量を、静かに計量している。
私はこれらの「沈黙の会話」を、皮膚を通して翻訳し続ける。
色が自身の魂に浸食していくのを、ただ許すこと。私という個体を記述することを、私はあまりにも自然に忘却していく。葉脈が描く緻密な地図と、光が土に溶けるまでの階調(グラデーション)。その膨大な情報の連鎖の中に、私は一滴の養分として溶け落ちていく。
かつての私は、大切な真実を守るため、言葉の隙間に膨大な砂嵐――無意味なノイズ――を紛れ込ませ、堅牢な鍵をかけてきた。広大な砂漠に一粒の真珠を放り込み、風に舞う砂利でその輝きを覆い隠すような、不毛な防衛。
けれど、この園の住人たちは、全く別の術(すべ)を私に教える。
彼らは青緑であり、深紅であり、あるいは透き通るような琥珀だ。色彩を、情報の織り糸に加えたなら、世界はどう変わるだろうか。
白と黒だけで描かれた点描画の中に、一滴の「青」を混入させる。ただそれだけで、砂嵐の深みは底知れぬものとなり、真実を探り当てようとする者の目は幻惑される。情報の粒が単なる光と影の反復から解放され、色彩という多重の深みを持つとき、守るべき秘密はより強固で、より優美なヴェールを纏うのだ。
驚くべきことに、色彩を宿した手紙は、かつての砂まみれの長大な巻物よりも、ずっと短く、軽やかだ。多くの言葉を連ねる必要はない。ただ一色の深みに、千の言葉を託せばいいのだから。
かつて、私もまた、あまりにも単純な法則の中で真理を固定しようと足掻いていた。けれど、カラテアの葉裏の紅や、スパティフィラムの仏炎苞(ぶつえんほう)が放つ清冽な光を見ればわかる。この世界を記述するのに、言葉という道具はあまりにも不十分すぎるのだ。
この園で私が吸収している沈黙は、単なる欠落ではない。それは、未来の秘めごとを綴るための、膨大で極彩色のパレットだ。
これは叫びではない。満たされた生命が、その幸福な重みに耐えかねて零した、透明な蜜のしずくだ。
その蜜の一滴一滴が、光と影の隙間に差し込まれる、新しい色彩の階調(ニュアンス)となる。
ああ、風は歌い、葉は踊る。
この宇宙の片隅で、全てはより深く、より鮮やかな沈黙へと、書き換えられていく。

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雪まろげ

妻を転ばせ雪の上
ころころ転がせ肉の玉
ころころ転がせ雪の玉

ころころ丸まる妻の玉
ころころ転がる雪だるま
ころころ転がる雪の原

妻を転がし雪のお遠足
オニギリころころ妻をごろごろ
まんまるお月さん、いま昇る

ウサギの足跡追いながら
妻を転がし雪の果て
月まで転がせ雪まろげ

転がりつかれて雪の上
転がしつかれて雪の上
まんまるお月さん、いま笑う

くるくるかわる雪もよう
ぐるぐるまわる目がまわる
妻が転がす雪だるま

わたしを転がす妻の足
ころころごろごろ雪の坂
ごろごろ転がり飛んで行く

融けながら静かに笑う雪まろげ
泣き笑い静かに崩れる雪まろげ
今は冬?わたしはいつまで雪だるま

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自分〈らしさ〉

運動会で 自分より
先にゴールを 越えたのは
この六年は スタートの
ピストルの音 だけだった

一位の賞状 渡す校長
嬉々とした 両親の表情
万雷の拍手の中
階段を下る 僕が
手に入れたのは 〈らしさ〉

できないことの 口実に
苦手を避ける 交渉に
切っても 減らない 便利なカード
不思議な効力 守るため
脚を回して 腕を振る


中学最後の 大会で
先にゴールを 越えたのは
僕の背中を 追いかけて
陸上始めた ヤツだった

一位の賞状 渡す会長
受け取るアイツに 沸く会場
地面を打つ 秋雨の中
階段を下る 僕の
手を落ちたのは 〈らしさ〉

できることの 証明に
得意を選ぶ 確信に
使えるだけの 不便なカード
削れたバフを 隠すため
ちぎってポッケに しまい込む


周りと創る 自分像
これ以上 傷つけぬよう
よぎる棄権の アプローチ

才能・努力の ゼッケンが
剥がれかかった ユニフォーム
掴んで胸に 引き寄せた

鼻を刺す 汗の臭いは
苦々しい 失敗
痛々しい 後悔
忌々しい 敗退

その奥に うっすら香る
愉しさ
嬉しさ
面白さ

快と不快が ミックスされた
匂いがホントの 僕〈らしさ〉
抱えたまま走る 自分は
新しい ゆえに 誇らしい


高校最初の 大会で
先にゴールを 超えたのが
僕になること 夢にみて 
今日もラインに 置く両手

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それで わたし

少しだけの 自信と
たくさんの 抑圧と

その自信も せいぜいプロの下っ端で
その抑圧も 気にしなければ済むほどで

それでも わたしはわたしの脚で歩んできた
それでも 笑い飛ばせるほどの度胸は無くて

だから 積み重ねる
だから 受けながす

それが わたし
それで わたし

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死んだ男

その男は語ったものだ。
翌秋に来る妻の十三回忌についての計画を百回も。
下の息子の披露宴における彼の挨拶がいかに秀逸であったかを千回も。
とめどなくのたくるアルコールの蛇の円環話法が続いたものだ。
それから上の息子ついての批評を一席ぶち始めたものだ。
ああ、また始まった。
その度にコップ酒透かして男を見ながら思ったものだ。
兄はよく彼を殺さないものだと。

少年のころ豚舎で働いていたことがあるそうだ。
客船でボーイをやっていたことがあるそうだ。
コック見習いに励んだことがあるそうだ。
一生出世とは縁のなかった男である。
牛乳工場でボイラーマンを長く勤めた。
定年後は土木工事に行かされた。
そしてまた豚舎で働かされた。
豚に噛まれるとけっこう痛いと嘆いていた。
何をやらせても不器用な奴だった。
その点は下の息子が受け継いだと云われているそうだ。

だが男は計ったように大晦日の夜に死んでみせた。
後には何も遺さぬと宣言し晩年大蕩尽をやってのけ真実そうなった。
それは男がしてのけた唯一の大仕事であったかもしれない。

柩には花々と酒パック一ヶに擦り切れた「松本清張集」。
葬式には男の兄弟係累親類縁者ただの一人も来なかった。
読経で僧侶が口にした戒名に笑いこらえた。
私からの香典は兄さんが立て替えてくれたものなんだが。
もう父も知っているとは思うのだが。

火葬場へのバスの外はこの地方天地開闢以来の前も見えぬ猛吹雪。
何処へ連れて行かれるのかも分からぬ不安の中。
父の哄笑が聞こえてきた。

小男の父の骨は存外太くて立派であった。
骨を拾いながら兄と語り合った。
樺太の抑留生活で鍛えられているからなあ。
飢えのあまりミミズを喰ったんだって。
賢明院さん。
あちらではどうか賢明にやってくれたまえ。

酒の好きであった男である。
歌の好きであった男である。
一生出世とは無縁であった男である。
小説なども少しは読んだ男である。
そうして、二〇〇五年十二月三十一日に死んだ男である。

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帰路

ぺたぺた鳴る靴、
揺れるビニール袋。
右肩にリュック、
左手のホッカイロ。
ポケットのキーケース、
真っ赤に晴れた耳、
変わらない景色。
あの帰路を覚えている。

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冬の少年

一人の少年の中で
寂しげな実存がすっくと立っている
帰り道の途上
友人の軽やかな口実と
食卓の重たげな沈黙の
その均衡を測りかねて
真冬が彼の心を波立たせ
木枯らしが少年の影を拡げ
両頬は微熱の予感にうち震えている
優しかった母の温もりを想う
(僕はあひるのようにひ弱だ
僕は僕の孤独をかがやく湖へ浮かべよう)
また一つ歳を重ねるたびに
幼心も氷のように溶けていくだろう
落葉樹のハミングに耳を傾けて
柔らかな腐葉土に混じった
実存の種を固く握り締める
少年が躊躇いつつも帰り道を進むように
季節も春を懐胎し
いつかは哀しみを手放していく

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ざわめくT字路

行き止まりだ
感じた瞬間、道が見える
右、光っている
左、暗やみだけ
右、眩しくて見えない
左、慣れると見える
右、掴みとれない粒子
左、虚空を掴む
右、汗の匂い
左、嘘の香り
右、風の音
左、波の音
ざわめくT字路の真ん中で
影だけが二つに避けている

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あたしはバカだから


銀の涙を零している

それは針

あたし

ロボットになるかも

すきなひと 病気、治るかな

あたし
代わってあげることも出来ない

この涙の針は 残念なことに 救わずに
すきなひとの肌を刺す

知ってる

でも、泣きたい時
泣いても良いよね

もしもロボットになって
口がきけなくなっても構わない

むしろ 要らぬ心配を言う口は 塞いでしまったほうが良い
針で縫い付けてしまったほうが良い

お願いだから元気になって

息子よ赦して

”ママ ”は……自分の寿命をすきなひとにあげたいです

アルミホイルみたいな顔をして 黙っていよう
そのためにここに書いた



https://i.postimg.cc/TPMRWdc1/atashihabakadakara.png

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雪待合室

一年中が雪に閉ざされた谷間にある村はずれの小屋でわたしたちは暮らしていた。わたしは薪割りの仕事をさせてもらい、村でただ一軒の雑貨屋で米と塩と父のための煙草を得ていた。村では父に一人の親しい友もなく、訪ねて来る人もいなかった。

父は毎日背中を丸めて机に向かっていたが、何の仕事をしているのかも、父がいつからこの村に棲み、いつからわたしの父であるのかも、わたしにはわからなかった。父は数時間も黙り込んだまま座り込んで、机に頬杖をついたまま、窓の外に降るいつ止むともしれぬ雪を惚けたように眺めていたり、鉛筆で机を小刻みに太鼓のように叩きながらぶつぶつと何か独り言を呟いていたり、かと思うと、おおーっ、とか、ほひょー、とか奇声を上げて、いきなり握り締めた拳を前に突き出し、突然板敷きの上の薄い座布団から飛び上がると、狭い部屋の中を思いつめたような目をして、ぐるぐる幾周りも歩き廻ったりするのだった。時々仕事の手を休めて父はダルマストーブの傍らに来て座り、昼間の薪割りでぐったりと疲れて横になっているわたしが薄く目を開けるそばで、唇を小さく丸くとがらせて、ランプのゆらめく灯りの中、ぽぽぽぽぽ、と煙草の煙りを輪にして吐き出してみせ、淋しそうに微笑むのだった。そんな時、透き間風となって吹き込んで来る凩の音がひときわ高くなる。わたしたちはいつ何処から来て、そしていつまでここにいるのか。

月末の日曜日は街へ行くバスが月に一度通る日だった。その月末の日曜日が近づくたびに父は気分が浮ついて、そわそわと落ち着かない様子だった。土曜の夜にはわたしに身の周りの物を布袋に詰め込ませて支度をさせ、自分は何か書き溜めていた紙の束を古い革鞄にしまい込むと、もうすぐだぞ、と妙に浮かれて上機嫌だった。

日曜の朝、まだ暗いうちから小屋を出た父とわたしは二里の雪道を、はぁはぁと白い息を凍らせ、何かが焦げたような炭の焼けるような匂いの漂う村を抜け、ちょうどわたしたちの小屋から真反対のはずれに位置する村の入口にあるバス亭へとたどり着く。待合室にはすでに何人かの老若男女が来ており、それからも引き戸を開けて、ぽつりぽつりと村人たちがそれぞれの荷物を抱えて入って来、五坪ほどの部屋のベンチはすぐに埋まってしまう。彼らは父の姿を認めると世間話をぱったり止めて、時々こちらの方を見ながらひそひそと耳打ちし合った。その村人たちはこの辺境一帯の村々を巡る日に一度通る便を利用する客たちだった。わたしたちが待つ街行きのバスの到着時刻は、バス会社臨時職員を兼任する時もある村役場の助役の話では、午前と午後の中程とのことだった。客たちはいつ来るかもわからないバスを今か今かと待ちわびて頸をキリンのように長くしている。それから誰も何も話す者もなくなりストーブの上で蒸発皿がたてるシュンシュンという音だけが室内に響く。何度も助役が水を注ぎ足し幾度お湯を鎮めても、村人たちが貧乏ゆすりに疲れ、居眠りを始めてもバスは来ない。父はわたしの隣でため息をついたり、一日五本と決めている煙草をポケットから出したり戻したりしている。そんな時、バスの到着を報せる助役の声が上がる。それは村巡りの便で、いっせいに村人たちの土色の顔が生気を帯び、雪の舞い込む中、一同は入口に横付けにされたバスにぞろぞろ乗り込む。わたしたちの方を眺め、ひそひそと話をしながら、笑いさざめきながら。それからあれはどれほどの時間がたった時であったろう。あたりが夕暮れ深い青みに染まる頃、父の肩を叩く者がいることにわたしは気づく。顔を上げるとそこには例のごとく助役が立っていて、哀れむようにわたちたちに告げる。本日の街行きのバスが運行休止になったと。そしていつものようにホッと安堵の表情を浮かべながら父は煙草に火をつけ、わたしに向かって淋しそうに微笑む。ぽぽぽぽぽ、と煙りの輪をいくつも吐いてみせながら。
 
窓から見える村にはまた雪が降っている……

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前世の子

     許しを乞う    苦しみを祈る

誰も立ち入れないような酷い曇天が
僕ら二人だけを世界に取り残した
遊具は茨の迷路ひとつ
そのせいで僕らはいつも血みどろだった
     こんなところに僕を置き去りにして
     君は今どこにいるのだろう
     疲れ果てて眠る君がいる
     奥深く進んだ行き止まり
     僕は今も探しているのに

幼い頃の前世では
僕ら手を繋いで夜の砂浜を走った
荒れた天気ばかりでその頃も人はいなかった
     冷たい波がくるぶしをつかむ
     ああ僕は隣を振り向いた
黒い潮風が何本も通り過ぎて
僕の手は空をつかんでいた

夢から覚めれば
ここは穏やかな午後で子供たちの声がした
(許しを乞う   苦しみを祈る)
今どこかにいる君が
もし真黒な世界に打ちひしがれているのなら
思い出せないような光る過去を
君におくる

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自然と人が一体に見えるひとつのケースを考えました | しろねこ社への推薦文

推薦対象

雪待合室
by 須賀章雅

「厳しくて淋しいけどあたたかさがありますね」では済まなくて、あたたかさがないはずはないけど厳しさ淋しさが圧倒的に勝つ、抒情的な作風なのにあまりにリアルな辛さをもったお話が寒さとともに身に沁みました。わたし自身が風情や抒情性を提示したいとき、気を抜くとすぐ装飾過多な描写になってしまいます。こちらの作中では気取った感じが少しもしない、説明的でさえある素朴な文が訥々と続いていくのに、こんなに五感をともなうゆたかな情景が浮かんでくるなんて、意気消沈してしまいそうです。

お父さんの人物像や、主人公にとってお父さんがどのような存在であるかが、儚く危うげに感じられました。全体的に、彼は主人公にとって頼もしい支えというより支えるべき相手という印象があり、その気持ちのなかから排除できない要素として(主人公にとっての)負担であるのかなというふうにも思います。けれどもラストの「ぽぽぽぽぽ」で、読んでいるわたしとおなじように、主人公もどこか救われているのではないかな、そうだといいなという気持ちになりました。また、あんなに心待ちにしていたことが台無しになってしまって「安堵の表情を浮かべた」ことについては、もしかすると主人公への思いやりであるかもしれませんが、いわゆる報酬系機能をじょうずに利用できないわたし自身にとって、(意図とはちがうだろうと思いつつも)なんとなく共感できることでもありました。

主人公には、お父さんとともにいるあいだはお父さんとともにいることによる孤独が、お父さんを失えばお父さんを失ったことによる孤独が、待っているのかもしれません。けれどもそれは、良し悪しや幸不幸の結論を与えられるものではなく、あるいは良くも悪くもあり、幸せでもあり、不幸せでもある。わたしはこのお話を社会派作品として評価しようと考えていたわけではないのだけれど、こうして書いているうちに、厳しい淋しいと感じた背景には「あたたかい」と形容するのも浅はかに感じられるような営みがあるような気がしてきました。あるいは雪深い土地をしらないわたしにとって、雪深い土地の冬がもつ重みを、感覚的に伝えてくれるように感じたのかもしれません。

また、地名や年代などの具体的な説明がなく、登場人物たちが置かれている環境の経緯にも言及がないなかで、どこにどうリアリティを置くかという判断が巧みといいますか、リアリティを感じさせることそのものがすごいことだなと思いました。

わたしの感じ方は須賀さんの意図とはかならずしも一致していないと思いますが、まったく的外れな読解であったとしても、多様な要素・側面においてすばらしい作品です。

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家出します

家出します
私は••••••
男の家へと転がり込んで
一緒に寝た夜に
パチンコを打つとき
彼の笑顔に
幸せを感じた
家族なんて
学校なんて
監獄よと
言い捨てて
冬の季節に
私探し
しています

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[い]いきものの詩

熱が過ぎていく
水を携える
花になっていく
今を見てる

ただ過ぎていく だけじゃなくて
始まっていくものを知っていく
ただ溶け出していく だけじゃなくて
さよならをそっと告げている

誂えた寝床で
少し夢を見て
準えたやり方で
祈るふりをして

時が巡っていく
屍に成る
息を繰り返す
今を生きている

ただ揺れている だけじゃなくて
募っていくものを眺めている
ただ造っている だけじゃなくて
知れず身勝手を繋いでいる

さよならを告げている

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[あ]愛憎摘果

さもしいものではありますが、まだ青い真心を届けたく思っております。
酸っぱいものではありますが、咀嚼するほど甘く熟れてゆくと考えています。
恥じらうものではありませんが、いつかは渋くなって吐き出すことでしょう。
消えゆくものではありませんが、ふと恨みを込めて口元を痛めてしまうでしょう。

あなたを彩らせるためのもぎ取られるものたちの中に
あなたを傷つけるものだけを除去してしまうのはあまりにも切ないものではないでしょうか
誰のためでもないあなたのための果実の中の虫食いを私が土へ落そう
落ちた果実から種が芽吹いて開いた花はあなたのためだけに咲いたのだと誇ってもいいんだよ

あなたの側にいなくなった私の処遇を隠し去って、あなたの歯車になれればそれでいい
遠い未来のドライフルーツの私は糖度のない苦い口当たりにならないよう、涙の粒を間引いている。

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「ドメイン停止考察」としてのクリエイティブ・ライティング

この文芸投稿サイトは5月末で閉鎖になります。
理由はまーくんの足が臭すぎるからです。









 
悪ふざけの投稿と断じるのは容易い。だが、私には単純に切り捨てられない背景があった。


まーくんとは誰か。その人物の足の臭気と、サイト閉鎖とのあいだに、いかなる因果関係を想定しうるか。理由が理由として成立するための論理条件はハナから放棄されている。理由が明記されていながら、理由について考えること自体が忌避されており、私は上述の二行を閉じた文章だと感じた。


あるいはこれを一笑に付すこともできたのかもしれない。
だが、それができなかったことには理由がある。この投稿を行ったのが、ほかでもない「伝説のしこたま詩人」だったからである。


このところ、私が参加している文芸投稿サイトでは、「伝説のしこたま詩人」という謎のアカウントが運営を乗っ取ったらしい、という噂で持ちきりだった。規約やマナーにうるさいはずの場で、彼の横暴だけがなぜか不問に付されていたからである。誰かが注意すれば炎上し、誰かが黙ればそれが「理解」とみなされた。


伝説のしこたま詩人は、あらゆる投稿作品に対して「中々のしこたまですね」といった、意味の判然としないコメントを残す。それを批判した者には、サイト内外で執拗な罵倒が飛ぶ。投稿をやめるまで、あるいはやめた後でさえも、追撃は止まらなかった。批判を許さず、集団で言葉を浴びせかけ場から追放する。その有様は、さながらカルト宗教のようでさえあった。


気づけば、投稿サイトは、しこたま詩人とそのシンパしか残らない場になっていた。残った者たちは、彼の言葉を読み解き始めた。「しこたまの輝きですね」が最上位であり、「しこたまが微笑んでいます」「中々のしこたまですね」「しこたま読みました」「これのどこがしこたまですか」といった順に評価が下されているらしい、という考察まで共有されるようになった。


しかし、しこたま詩人の挙動には逐一、反応するくせに、サイト閉鎖は話題に上ることもない。この場所は、しこたま詩人に気を遣ってまで参加したがる者にとってさえ、すでに閉鎖を惜しむ価値を失っていたのだ。


私はその光景を、強い不快感とともに眺めていた。
私は、自分では真面目にやっているつもりだった。いや、真面目というより、文芸投稿サイトという場に対して利他的であると信じていた。


気合いの入っていない投稿者を見つければ、もっと考えて書けと態度を変えるまで説教してあげた。文芸投稿サイト外で、他の投稿者に軽薄なエアリプを飛ばしている者がいれば、サイト内外で痛烈に批判し更生を促した。ろくにコメントも書かず、配信やツイキャスにばかり熱を上げる者がいれば、放送中に怒鳴り込んだこともある。嫌われる行為であることは分かっていたが、それでも私は空気を読まずにやった。表現者とは、予定調和を壊す者であり、文学とはそのようにして守るものであると信じていたからである。


だからこそ、5月末のサイト閉鎖について、私は深刻に考えざるを得なかった。

しこたま詩人が場を掌握しているとはいえ、創業メンバーの一人がドメインを所有しており、その人物が5月で更新をやめる、という話が出回っていたからである。その人物は、規律やマナーに厳格な制度設計を行った張本人であり、しこたま詩人の振る舞いを強く嫌気しているとも聞いていた。


つまり、この二行は冗談でありながら、予告でもありえた。

理由はいい加減だが、結論は異様なほど強固である。そういう、もっとも食えない構造を宿した宣告だった。


私は創業メンバーの一人であり、ドメイン所有者でもある「花緒」という人物に連絡を取った。閉鎖は本当なのか。継続の意思はないのか。既存のドメインを捨てても、また誰かが新たにドメインを取得すれば済む話ではないのか。何が背後で起こっているか投稿者の立場からは伺い知れないが、しこたま詩人を排斥したいなら、私も協力できる。


しかし返ってきた言葉は、予想外だった。

「最初に言っておきますけど、私は閉鎖に賛成です。あなたみたいな人が跋扈するのは、単純に不愉快なんですよ。軽蔑しかしていないですし。あなたみたいな人って、要は足が臭いだけ、みたいな話じゃないですか」


まったく意味が分からなかった。
不愉快なのは、しこたま詩人ではないのか。私は食い下がった。
花緒は銀縁メガネを掛け直し、少し黙ってから、こう言った。


「私からすれば、しこたま詩人の方がまだ救いがあります。親切な人間には親切を返す。協力する人間を無駄に傷つけない。最低限、その程度のプロトコルは守っています」
そして花緒は続けた。


「あなたはその逆です。協力されると、協力のやり方が悪いと言って相手を攻撃する。貴方には自覚がないでしょう。
例えば、久しぶりに投稿してくれたユーザーに、もっと活動しろと怒鳴り込む。まだ投稿間もない初心の者に、経験が足りないと罵倒し粘着する。それを文学的正しさと主張し疑わない。もっと俺に近い立場に立ってくれと騒ぎ立て、ますます相手を遠ざけてしまう。
平たくいうと、遊んでほしい相手に悪態をつく幼稚園児と同じです。そのレベルの低次元の悪癖に文学という名を与えること自体が、既に文学的ではないのですよ」


私は納得できなかった。
花緒によれば、しこたま詩人は荒らしだが、私のような人間は「運営する責任は引き受けないくせに、支配欲だけが肥大した迷惑投稿者」だという。捨て地を荒らして楽しむ者と、他者に理想を強要する者。そのどちらもが、場にとって迷惑でしかない。


「あなたは、真剣な人間だけが残る場を望み、実際に他者を排斥してしまう。でも、その姿勢自体が既に真剣さから外れていることに気がつかない。貴方に任せれば、しこたま詩人以上に人が減り続け、場が閉ざされていくでしょう」


花緒は一拍おいて、こう言った。
「そして、何もなくなったあとには、あなたの足の臭みだけが残るでしょう。Bye」


私は激怒した。
支配欲をたぎらせ、自由であるべき文学の場に秩序を持ち込んだのはお前だろう。その反動として、しこたま詩人のような荒らしが湧いたのではないか。何の実力もなければ、実績もない。そもそもお前は文学を必要ともしていない。ヨン・フォッセもフォローできていない程度の文学的素養で、ドメインを盾に規律を語る、このポンカス野郎が!


その後のことは、もう考えたくない。
私には、田伏正雄、すなわちまーくんという名の巨漢の友人がいるのですよ。彼の足の匂いをあなたに嗅がせてあげたい。それが私の文学的正しさなんです。花緒は確かに、そう言い切った。私もあなたに輪をかけて利他的なんですよ。銀縁メガネの奥に潜むその目は、もう完全に異常者のそれであった。


それからというもの、私の部屋から、私の持ち物から、あらゆる場所から、足の臭いが立ち上るようになった。どのような手段で、どのような執念によって可能になったのかは分からない。ただ、どこにいても吐き気が止まらなくなった。


私はもう文芸投稿サイトには関わらないことにした。
理由はまーくんの足が臭すぎるからです。

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