投稿作品一覧
【推薦文】無頼派詩集、出して下さい
推薦対象
遺書について
by 三明十種
本作は自分の死という、重くもあり、侘びしくもある主題を扱う作品。なのに軽妙さ、とは私は思わない、軽妙さでも洒脱でもなく、もっとどんくさいが、独特の【優れて「投げやり」な】ユーモアが光る、愛らしい作品。
なお、本作ラストのスタンザはメタを仕掛けており、この作者が遺書を書く状況の切実さを自ら揺らして居るが、これは強がりと私は解した。
他の作品からこの作者の「孤独」との付き合い方を読むと、なおさらだ。
無頼派詩集を期待して、推薦します。
C賞授与式にて
エアコンの効き過ぎたホールの
化粧の芳香と二の腕にむせながら
逃れた駐車場の隅に
朝顔にとられるつるべもなく
埋められた井戸の側には
しろつめくさの三つ葉と
蟻の行列
探さねば詠う季節もありゃしない
なんて
じりじりと残暑の陽の向こうからの
蜻蛉の声も届かぬうちに
ジジジと鳴いて授与式が終わる
色うつし
七夕飾りのあいだを通り抜けると
見えないこころをもった人の囁き声が聞こえた
色を捨てて影になった人の声も聞こえた
その声を打ち消して 緋色 藍色 向日葵色の・・・
なかったことのように 泡だけが沸き上がり
すぐに消えてしまうのに色をつなごうとする
転生のあとで 透明のこころが行き場を失っている
天の川に名前を刻んでも・・・
なかったことのように 泡だけが沸き上がり
見えない場所で 何度も奪われたいのちが色をつなごうとする
なかったことのように 泡だけが沸き上がり
微かなこころの 余白の その白に だれかの色がうつってゆく
呼吸
小走りな靴跡と泥を跳ね
飛び石を堅く叩く
落ちかかる日に足を取られ
惹き吊るようにもありました
この雨は
わたしを覆い隠してくれる
やさしいだけの我儘の
楔のような、あとでした
かつかつとうろつきまわる
そのうちに
地を這うように脈々となり
ひたひたとしみゆくときに
忙しないだけの 醜いものは
それでいて
梟の様におおらかで
得体のしれない声を上げ
疲れ切ったひとびとの
合間を縫っても 誰一人
ぬばつむだけのサナトリウム
浅瀬を波打つものでした
物音ひとつないくせに
かげのごとく偲ばせる
吸いつくだけで
くぐもるばかりの
雀の涙かもわからない
おぼれているのは群衆の
沈んだままの淡いで削げた
からころとさる鳥たちと
夕餉をくぐらす団欒と
伽藍洞にも寄せ返す
代わり映えない光景の
子猫のような黒い影、
急かして廻るまなざしの
ただまばゆくさき夏のひぐらし
2021-08-13
全てがあなたに優しい
静かに
いくつかの
切り替わる情景
共にしてきて
私たちは
生きていた
どんな時も
したたかに
人というのは
本当に生きているだけで
奇跡だと思うのです
ここにあなたがいる
ここに私がいる
その事実に
私は涙ぐむ
もうそれだけで
良い
別れても離れても
生きている
その事実だけで
もう良いのです
ありがたい
あなたを生かす全てに
私は感謝する
ありがとうと
私は感謝する
呪縛
この苦々しさを
どのように表せば
表したところで
なにを得ることもない
しかしながら
職業になる
味になる
価値になる
犯罪被害の材料になる
犯罪加害の材料になる
生きることを邪魔する記号
肉体があるということがすでに不自由の根源
そこに輪をかけて
よろしくない
呪縛
もしかすると
死後の世界とやらに於いても
呪縛
肉体を得た瞬間から始まる
呪縛
セイベツ
セイベツ
ときに
ネンレイ
ファスケス
桜の路地にそっと落ちていたもの
それはファスケス
人類が高貴だった時代の
その最後の事物
刃に散った桜は夜の果ての夢
もしあなたが場を作るなら
ただ一本のファスケスを
まっすぐ貫き通せばいい
僕は星を見るためにファスケスを握った
一切の容赦を認めぬ勇敢
一切の逸脱を認めぬ秩序
一切の罪悪を認めぬ協同
場に相応しくないなら斬り捨てるだけ
一本の清らかな斧だけが
場の高貴とその永続を形作る
救いがために斧は振るわれる
それだけが人類に残された
ほんの最後のささやかな希望
主張強め日記 7月21日 B-REVIEWの消滅に寄せて
2026年7月21日、B-REVIEWという現代詩の投稿サイトが、インターネットから消えた。10年近くにわたる作品とコメントの蓄積は、もう読むことができない。
消える直前、私たちCWSはアーカイブの引き継ぎを申し出ていた。管理権を持つとされる仁川路、いすき、田中の3名からの返答は、明確な拒絶だった。自分たちにはデータをすべて消す権限があり、誰にも引き継がず全てを削除することが、ユーザーへの最も誠実な対応だと考える、という。理由は、規約にサービス終了時の定めがないこと、ユーザーの同意なくデータを第三者に渡せないこと、などだった。
だが、残す方法は現にあった。個人情報をすべて削除した上で引き継ぎ、削除を希望するユーザーには速やかに対応する仕組みを作る。残したい人は残せて、消したい人は消せる。その方がよほど誠実ではないかと説いたが、回答は最後までなかった。それだけではない。どうすれば実現できるのか、何が障害なのか。残す方向の問いは一度も返ってこなかった。10年分の遺産を消すことをためらう人間なら、拒否する前に何かを確かめようとするはずである。その痕跡が、一切なかった。
正直に書けば、この交渉はデータの行方だけの話ではなかった。B-REVIEWが壊れた後、第8期運営に関わった人たちの一部は、CWSに姿を見せるようになっていた。田中氏や黒髪氏のように投稿の場を求める人がいる一方、ユーザーからは、サイトを壊した人たちを被害を受けた人たちの作った場に受け入れるべきなのか、という意見が上がり、幾度となく通報も届いていた。もっともな問いであり、私は答えを保留していた。
判断には材料が要る。彼らが、何が起きたと認識し、誰に責任があると考えているのか。この交渉は、それを聞ける決定的な機会だった。彼らに対しては、第8期運営の中心となった人物が突如として失踪する中で、最後までサイトへの責任を取ろうとした人たちであると同情を寄せる声もあった。責任の話が言葉になるなら、関係の再設定もありえる。私は半分はそのつもりでテーブルについていた。つまりこの交渉には、彼らとの邂逅を図る意味があった。
結果から言えば、邂逅は成し遂げられなかった。失敗すること自体は、半ば予想していた。だが、なぜそうなるのかは、終わってみても釈然としなかった。
交渉の様子を少しだけ書く。管理者たちと直接話したいと申し出たとき、窓口の田中氏からは奇妙な説明が返ってきた。運営のグループチャットの管理権限(彼はそれを「王冠」と呼んでいた)を、雲隠れした元運営者が持ったまま去ってしまったので、私を招待するには壁がある、というのである。新しいチャットを作ればいいだけの話だが、その発想は最後まで彼らから出ず、結局、私が場を用意した。
議論が始まってからも同じ調子だった。バックアップは存在するのか、と聞く。答えはなく、切実さについての言葉が返ってくる。残す意思はあるのか、と聞く。ネット詩の系譜に報いることができなかった、という悔恨が返ってくる。アーカイブが消えることが確定してなお、彼は「対話を続けたい」と言う。何についての対話なのかは、判然としない。
乱暴に言えば、言葉には二つの種類がある。規則、手続き、権限、責任を扱う「制度の言葉」。罪、赦し、切実さ、自分が何者であるかを語る「実存の言葉」。前者は物事を決めるための言葉であり、後者は内面を開いて他人に手渡すための言葉である。交渉の間、彼らから返ってきたのは徹頭徹尾、実存の言葉だった。制度の問いは、着地する場所がないかのように、すべて実存へ落ちていく。
思えば、この光景には見覚えがあった。
B-REVIEWは、マナーガイドラインを根幹とし、その理念に賛同する者だけが運営になれる、という構成のサイトだった。コンセプトが根本的に気に入らないなら、別のサイトを作って好きにやればいい。運営に入りたいなら、理念に合意する。合意できないなら、他所でやる。ただこれだけの、ごく単純な話である。
この単純な話が、一部の人間には、ついぞ通じなかった。なぜこの程度の単純な話が通じないのか、ずっと奇異に感じていた。第8期運営は理念に合意しないまま運営の座に就き、ガイドラインを骨抜きにし、サイトを次に引き継げない形で壊した。なぜ他所でやらないのか、という問いに答えが返ってきたことはない。確信犯的に無視しているのではないのだろう。「合意」や「資格」といった制度の言葉が、そもそも読めていないとしか考えられないのである。
制度の言葉を読めない人たちが集まって社会的な何かをやろうとすれば、行き着く先は馴れ合いしかない。
彼らの眼には「制度」の層がまるごと映らず、世界は快不快と敵味方に翻訳されて経験される。ガイドラインに違反し続けながら「俺がこの場を盛り上げてやっている」と言いたがる人は、嘘をついているのではない。規則は破ったが、俺と俺の友達の間では楽しかった、だから俺は貢献者だ。外側の視点を捨象した世界では、この理屈は完全に筋が通っている。
異論は意味不明な攻撃としてしか経験されないから、異を唱える者は排斥され、残るのは互いを咎めない者だけになる。どれほど荒々しい看板を掲げる集団でも、内側は批評性を欠いた相互肯定の輪に行き着く。現に、第8期運営では、しりゅう、ゼンメツといった中心人物がサイトを壊すだけ壊して雲隠れしてなお、内側から批判は殆ど聞こえてこない。
いまも同じ型の人たちが文学アウトローなどと自称しているが、その看板の下で実際にやっているのは、初老の人間が好みそうな昭和の音楽や食べ物を紹介し合う、ただの馴れ合いである。罵倒上等の看板と、咎め合いひとつない内輪。この乖離が、彼らの求めてきたものの正体を示している。この輪の中には、異論を処理する回路も、責任を確定する語彙も、外部と交渉する言葉も存在しない。
その上で、書き留めておく。これだけ実存の言葉を浴びたのに、私は結局、彼らが何を感じているのか、最後までわからなかった。なぜそこまで意固地に、全てを消したいのか。美学なのか、面倒なのか、意地なのか、羞恥なのか。どの仮説にも、確かめる手がかりすら与えられなかった。
ただ一つ確かなのは、切実さ、悔恨、罪、系譜と、実存の語彙は溢れるほどあったのに、申し訳なさだけが、最後まで一度も現れなかったことだ。罪の意識は系譜や文化という抽象に向かうことはあっても、10年分の作品を託した一人一人の書き手に向かうことは、ついになかった。彼らは謝らなかったのではない。謝るという発想自体が、なかったのだと思う。黒髪氏もCWSの中ではっきりと書いていた。誰に何を謝る話なのか分からないと。
消える少し前に出た、最後の運営名義の告知文も同じだった。
「わたしはあえてビーレビューを見に行きはしない。全力で書いた。もうただネットの海へ流れてゆけばいいんだ。本当にわたしたちは詩人だから仕方ない。自分の作品を回収する時間なんて無かったんだ。だってあのとき、わたしたちはドラマの中にいたのだから」
謝罪のないままポエムへ転調するこの文章に、よく読めば、個人の感情はほとんど書かれていない。「ネットの海」「詩人だから仕方ない」「ドラマ」。どれも既製品の詩句であり、謝罪の意は微塵も見出せない。実存の言葉は内面を開示するための言葉のはずだが、彼らのそれは、窓ではなく幕として機能していた。詩人ファーストを謳った第8期運営は、詩人たちの10年分の作品を葬り、その責任を既製品の稚拙なポエムで覆った。これを不誠実と呼ばずに、何と呼べばいいのか。私たちは不誠実を既製品のポエムで覆うような自称詩人、自称極道とは決別して、あたらしく進めていきたい。
フィラデルフィアの夜に 93
フラデルフィアの夜に、音が鳴り響きます。
地面をうろつく鼠たちが最初、その音に気付き耳を傍立て、警戒し逃げだしていきます。
もう少し大きな耳の、猫や犬が気づき始め、騒ぎ声を上げ始めていきました。
鳥たちも急ぎ羽ばたく。繋がれた、部屋に閉じ込められた猫や犬を尻目に。
最後に気づいたのは、慌てるように忙しい人々たち。
ただもう、逃げるのには遅かったのでした。
音が鳴り始めます。
人間にもようやく聞こえる大きさで。
ドクン
鼓動。
ドクン ドクン ドクン
鼓動。
ドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクン
心像の鼓動としか言えない音が、街の中で響く。
音を聞き、目にして異常さに気づく。
その鼓動の度に、建物に、設備に、地面に腫瘍のような出来物が大きくなっていく事を。
鉄骨が、配管が、配線が針金の様に引き伸ばされ、混線し絡み捻じられ鼓動をする。
打ち捨てられた廃棄物が、混ざり集まり塊り、鼓動を開始する。
どこかで見た事のある形を作り上げながら。
街の逃げ遅れた医者は気づく。
心臓だと。
ドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクン
その心臓の鼓動から逃げようと人々は外へ、街の外へ逃げようとするも、体は言う事を聞かない。
鼓動の振動で、足が。
足が。手が。全身が。
操られるように動き続ける。
踊り続ける。
街のそこかしこにできた針金の心臓、その鼓動に唆されて。
心臓と言う太鼓、鼓動と言うサウンドに身も心もそれに委ねてしまって。
自らの、普段気に留めない心臓にもやられてしまって。
建物が、地面が、設備が、機械が、車両が、樹木が。塵芥が。動物が。そして人々が。
ドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクン
踊り続けた。
心臓の鼓動のサウンドで。
しばらくして外から救援が入り込めました。
それまで誰が入っても街の鼓動によって踊り続けてしまうために。
街は疲れ切ったものであふれていました。
建物が、地面が、設備が、機械が、車両が、樹木が。塵芥が。
動かなくなった心臓をそのまま、打ち捨てるように転がして。
動物が、また人々はその心臓を穏やかに動かし、ぐったりと眠りついています。
ただ、なんだか街全体が幸せそうだったと言います。
♡
ハートをね、あかく染めるんだ。
だれかのことばが
きれいだったから
すてきだったから
あたたかかったから
いたみだったから
そっと、あかく染めるしゅんかんに
このきもちが届けばいいなって
ゆびさきから小さく願って
ハートに触れる。
ランタンの夏
机に世界があった
小さな小さな世界
文字と辞書の構築
暖色の灯が手元を照らし
それを頼りに文字を繋いで
そして世界を建築する
夏のために詩人はある
ふわりと風が吹き抜け
原稿が少し浮きかけ
窓、そっと覗けば
風鈴、軽やかな泣き声
星のために夏はある
豆腐について
(一)
明方の台所で
豆腐がひとり
脱皮をしていた
家の者を起こさなように
静かに皮を脱いでいた
すべてを終えると
皮を丁寧に畳み
生ごみのところに捨て
冷蔵庫に入った
夕食は冷奴だった
僕は明方に見た
豆腐の脱皮の光景を
妻に話した
何、それ
と言って妻は笑った
豆腐も笑った
(ニ)
夕食に冷奴を食べようとして
豆腐を呼ぶけれど
テーブルの下で膝を抱えたまま
出てこようとしない
仕方なく
自分もテーブルの下に入って
同じ格好で隣に座る
しんみりとした夜
豆腐も自分もこんな暗闇から
生まれてきたのかもしれない
そう思うと懐かしく感じられて
いつもよりたくさん膝を抱える
(三)
夕食の冷奴を食べると
石鹸の味がした
石鹸だった
豆腐はすべて食べてしまったの
妻は悲しそうに言いながら
絹ごしのような滑らかな手つきで
ビールを注いでくれる
ベッドの上には
枕の代わりに豆腐が
ぐちゃぐちゃに捨てられていた
本当はこんなにたくさん
食べ残してしまったのだ
(四)
豆腐のプラモデルを買った
思ったよりもたくさんの部品があった
毎日夢中で組み立てて
その間にきみは
近所の羊飼いと駆け落ちしてしまった
数日後きれいな豆腐が完成した
通はわざと角などを崩すらしい
薬味はお好みで
と説明書にあったので
ネギと生姜を買いに出かけた
本当はきみに一番見せたかった
(五)
テーブルの下に
豆腐が落ちていた
食べるの、食べられるのに疲れて
飛び降りたのかもしれない
窓を開ける
初夏の風が吹いて
部屋の中を涼しくする
豆腐を庭の隅に埋めて
簡素な弔いの言葉を添えた
豆腐屋でその話をすると
お店の人は黒板の正の字に
一本付け足した
今日のおすすめは
厚揚げらしい
(について)
豆腐を食べているうちに
豆腐のことが気になり始めた
豆腐の色はどうだったか
豆腐の形はどうだったか
匂いや味はあったか
どのように崩れ
何を受け入れ
何を拒むのか
すぐにでも豆腐屋に行って
確かめたいけれど
今は豆腐を食べるのに忙しい
いつまでもなくならない豆腐を前に
長梅雨は明ける
指先
先生の質問に
山田君が手を挙げて
クラス中が騒然となった
先生もクラスの皆も
山田君が
誰であるのか知らなかった
じゃあ山田くん答えて
動揺しながらも
かろうじて先生は
山田君を指したけれど
本当は誰も
山田君の苗字どころか
名前すら知らない
ただ挙げた手の指先が
水泳のように綺麗で
先生もそこが気に入ったのだろうか
すぐに二人は結婚して
子供ができた
同じ山田君になったね
先生は子供に笑いかけるけれど
皆が一番困惑したのは
先生が誰なのか知らないこと
知らない、と
山田君も言ったこと
夏のドライブ
夏の暑い昼下がり冷えた麦茶を飲みながら、気の合う友人と取り留めも無い話しをしていた。
何かを決めるわけで無く、何かを相談するわけでなく、頭に浮かぶ言葉を口に出して笑って
相手も何となく答えてくれるけど深い意味を持たない、けれど私も笑い返している。
そんな時間さえも微睡そうな昼下がりに不図、友人が「向日葵が見たいね!」と言った。
私も何気に「良いね!向日葵 見たいかも!」と言っていた。
友人が立ち上がり「私、車で来ているから見に行こう!」と言い出した。
もう昼2時半を過ぎている。少し出掛けるには遅い気もしたけれど。
何故か向日葵が私達に微笑みかけた気がした。
夏の昼間は長くて向日葵が笑顔で歓迎してくれた。
一面の向日葵畑を歩く二人は、太陽が疎ましくて
帽子と日傘で遠ざけてさえ「暑いね~。」「確かに夏とはいえ暑すぎない!」と文句を言いながらも
向日葵を背景に二人をスマホに保存しながら黄色い熱波を通り抜ける。
涼やかな店で華映えするパフェに弾む会話には、もう向日葵は居ないけれど
まだ沈まない太陽に顔を向けている夏の頑張り屋さんは笑っている。
「日が落ちた向日葵って、どんな感じなのだろうね?」
友人の何気ない言葉が夕闇の中で向日葵が心に揺れながら詩を流してゆく。
<夕闇の向日葵>
いつも前向きのイメージ
太陽に希望や夢に顔を逸らさない
強くて明るいイメージ
私は好きだけどね
太陽が沈んでゆく時の
少し俯き加減の君の姿
OFFの時間って必要だし大事だもの
明日に昇る太陽の事なんて忘れて
今は静かに夕闇に身を任せようよ
オヤスミなさい夏の頑張り屋さん
「どうかな?このポエム?今、思い浮かんだけれどどう思う?」
「うん、良いね~夕暮れの向日葵も好きになれそうだよ~。」
アナタ以外からも「いいね」や「コメント」が貰えると嬉しいのだけれどな。
「影法師ったら、誰に向かって話しているの?」
「ゴメン・ゴメン~独り言、そろそろ帰ろうか。」
カーテンは必ず閉めてください
先輩聞いてくださいよ
近所の団地なんですけど不思議なんですよね
その団地 ベランダが歩道に面しているから顔を向けたら全体像が見渡せるんです
でもその窓の全部 カーテン締め切ってるんですよ
おかしくないですか?
朝も昼も夕方も夜も晴れの日も雨の日も休日も
毎日です それこそ何時でも締め切ってる
いつ見ても全部の部屋の窓が日焼けしたカーテンのクリーム色で埋まってるんです
それに団地には古ぼけた掲示板があって
変な張り紙が貼ってあるんです
『カーテンは必ず閉めてください』
普通そんな注意書きありますか?
絶対おかしいですよ 何なんでしょうあの団地
絶対何かありますよ 帰りがけにまた確認しなきゃ
口角泡を飛ばして熱弁する
後輩の熱量が俺には恐ろしい
彼の目には一体何が見えているのだろう
話に出てくる団地は確か……もう誰も住んでいない廃墟のはずなのに
届かない
言葉にしたからって
何もかも救われるわけでもないのに
A4用紙にべっとり貼り付けた
この肥大した自尊心を
どこへもぶつけようがなく
誰にもあてようがないから
とりあえずぐしゃぐしゃに丸めて
ゴミ箱に放りなげてみた
5センチほど手前で
ぽとりと落ちた
ノイズになりたい
なんせすべてが朽ちてしまうのに、(――手をあげて。)柔らかいまばたきが 非情な拍手を熾していた。とぷんとくれた凪に、過ぎた谷間の火蓋も日当たりは欲、痩せた風もなく、あらゆる臭い そして、揃えた色もなく痛い。ためらいがちに塗りつぶす感覚を はなしの真んなかに定義するには。ほら、気が触れた口と共にダンスする。いきのよい兄妹たちや、来るはずもない客人を馳走して
わたしは破れた時間を引き連れて行く、その意志は足がついているか。二枚舌の魚のよう 今に均しい浄夜を汲み出して、冷却したメタファーにそっと手をあてる。なら吸い殻というには南に向けて 皮肉にもどの子の指先も、縒れた手紙のような水槽の。目の前が圧縮された無限の図形をもつ 白いペンキが発光した空模様は、夢窓。その距離は、自由とは浮き彫りにされているレリーフを、紐解く。と、ともに赫いてくれるなら、それで、と唸った
市販の洋間に孵化した楽観がまた脱糞した。いたいほど味気ない。近々、骨を折り 伏せられた急流に横たわり 雷鳴に包まる。酸いを舐める酔うな読経も その硬さや残骸の軌跡や荒々しく、容姿と晒されている。磨り減ったシャム猫、とも呼んで 暗緑色のコトノハは、キネマで。手から手へと吹き抜け、あちこちに性器をおちつける
幾重にもゆるんだ返事も 故に怪訝そうな字名を美しい、と称するなら。わめきの奥に固有の訛りを 記憶から消してくれ。芥子粒ほどもない赤 錆る。とでも選り分ける錘に身寄りはないから 達磨、知らず知らずに 眼差しも眇め時に感化される、原色の造花。第二頸椎の哀歌だ
あなた、と焦点をあわせる、だからだね。煙たげに、ためらいながら口にする暗譜も然り。いつかの熱病は領域の無い鴉だ。と、ひっそりと痛んではやはり怖いのだ。今ここでひとかどの傷口の糸をゆすぐ翼よ。呆れ顔を意味し。まもなくぴたりと停まる
吐き捨てられる、存在はひしゃげたキャンドルに ああ、鳥が耳をよびだす めくらな黄金は。重力を忘れたトランペットが、血肉を作る未完の虻蜂なら。岩石や木の幹にも重なる ゆたかな沈黙を弾く風がきて 色々と抱きあげる
何かしらのゆとりがなくては、跳ね返る街に埋もれゆく テーブル上の陶器が、二客 また。よくよく思い出して 放射されたそこなしの曙に覆われてしまうでしょう。星座がのそのそと水きりの塚へ。気の毒な程 とりつかれているか、いしぶみは。断ち切られた多次元を置き去りに、どこか湿るようになる
不安定なラヂオか (かみさまはここにいる)
遠ざかってきた (すませ/つづける)
あけすけな中りといきどころの往来がにわかに活気づく
だが――この歌声に、耳を貸さない
あれこれの蝶や霧が日常を繰り広げるのです
バタバタとなぶる音。働きかけるには 目覚ましく
浮かぶ泡をピシャリと閉じるには無機的で これを見て
身を寄せる斉しく/充てがわれた感情に対し/釈す為に.
ひろわれたばかりの文字列に呼応せよ
わたしたちはことばもえらべない
特別なものはないけれども
そのすべてがきっといらないものだった
2024-09-29
繭に成る。それが、だ
薬指には琥珀蝶
唇には迷酔蛾を
硝子の自鳴琴が砂にかわるころ
万華鏡を抜け出して
朔の元を去ります。
角を亡くした手鞠が気ままに転がっていく
この鬼ごっこも追いかけるのもまた自由でした
其後に灯籠が経ちました、
ただ明りは知っているだけで
誰もいない近くて遠い場所で、
幼子はお隠れになったところで。
無意識の石の意図を糸に潜して置く。すると死や霊や念みたいなものが
栄えてくる。狂ワの民が持つその童歌に礼は 自然と生えているものか。
夏の盛りを過ぎた盆に置かれた私たちが空を見上げ
考えている。
なにかが通り過ぎるのを、
なにかが咲き乱れるのを、
なにかが熟まれるように績まれ、
『繭に成る それが だ。』
ただ来年も再来年も屹度違う色違う花を咲かせては腐らせるぐらいなら、
今この瞬間の風に蒔かせて、沢山の夢も希望も運に委ねて。記憶だけは
永遠に真新しいまま、祈りも願いも総て停めてしまえばいい。
すききらい なんて興味もない けど花占い
足元に散った 数殺した 命
儚いね、なんていいながら 踏みにじったあとで
青の子も赤の子も黄色の子も、皆違うね。間違い探しをしながら黒白の
歯車を駆け上がる、終わりのない果てを最期まで昇って。虹が見えたり
星があったり、躓いたり転んだり笑ったり泣いたりしたけれど、
(できないことをしようとして勇気だと讃えるヒトがいた。)
――やっぱり翼がない 『しのまえに しのあとに』
(空白と余剰、若しくは法面に寄生された、かお・かお)
船倉の踏み板に狡い鼠の一家がいて穀物を食い荒らし、それで
穴があいて全部沈んじまった。昨日見た夢の続きは長い首巻きに綴
られ、それを底におろし口から足先からハラワタからドウドウと流さ
れていた、時代も歴史も空になるまで月陽を与え風化するほど 傾いて
――カラダはもうなかった
(ほら、どいつもこいつも わたしから と 離れようとしない か)
薬指には琥珀蝶、唇には迷酔蛾を。
硝子のオルゴールが砂にかわるころ
カレイドスコープを抜け出して
月食の元を絶ちます。
角を亡くした手鞠が気ままに転がっていく。
この鬼ごっこも追いかけてもまだ自由でした。
其後に灯籠が経ちました、
ただ明りは知っているだけで。
誰もいない近くて遠い場所で、
わたしが お隠れになったあとで。
ボクの言う宝石はキミのところで、心臓にあたるところで
どうせ真直ぐに嗄れて。だとしても――炎の色に似ていた
――嘘ばかり/騙されてる
――天地が逆さまだよ
――堕ちないように溢れないように
「きこえないか?」
ささやかな風が耳朶に触れ頬を霞め輪郭を消す
近すぎる花火が網膜を焼いた それだけの指をなぞらえる
たった一片の ものは はじまりだった
たぶん私以外のすべて
特定の何かを保たない
/愛すべきヒト/亡くした家族/報われなかった、過去
生まれ得ることのなかった未来
懐古の天壌は 在りし日よ ―― わたしからみた、わたしいがい
視界にうつるもの総て、想像すること凡ての
『彼方』よ。
2023-03-09
泣き顔
赤い鼻を啜りながら
写真に映る泣き顔を見たら
なんだ、結構かわいいのねって
安心してしまったの
背中を向けて、
下を向いて、
髪で隠していた日々を
愚かだったなあって笑いながら
愛せる私を
愛したい
霧雨の庭
言葉が体育座りして
私の話を聞いている
そうよ、君たちには
なんの罪もないのよ
掌には 果てしない自由を
それを握るかは、
君が決めていいよ
運命なんてのは
きっと 毎日降り注ぐ
まだ見ぬ明日を
ほんの少し 濡らしながら
待ち合わせ
目つきの悪い男がいる
頬の汚い男がいる
床に座り込む男がいる
そして
人の往来をくすねて
泣いてる惨めな男がいる
袖振を
服屋の展示を
一人でまじまじ見て
泣いている
女物と男一人
泣いている
はぁ
投身自殺
その男の体を乗っ取って
這い上がって
転生した魔女に犯されたい
もちろん線路の上で
なんだか
赤らめたタイルの隙間に
落としたんだな
探すふりをして
タバコの吸い殻を
うっかり膝で潰してみたい
人生を失って
呆然と
自分を騙すふりを探す人間末期
の、ふりをしている男がいる
いきなり辺りを見渡して
頭をぐらぐらさせて
記憶を失くしたふりをしている男がいる
我慢できない
通りすがりの人の頬を
まじまじ見て点数をつけてやりたい
う、
頭が痛てぇ
いやこれも頭が痛いふりか
ふりを続けるとほんとにほんとがわからなくなるんだなと
目を見開いて驚いたり
周りに
そんな馬鹿なものがあると見せしめてやりたい
そんで
今までの下らん芝居は誰も見てないし
こいつが思うように伝わるわけないことを
思い出させてやるよ
[ゑ]ゑビスビール
カウンターで烏龍茶を飲み
ご飯の(中)と塩辛と、野沢菜と、つくねハンバーグを頼んだ。
隣のやせ細った中年が「ここは酒飲みの場だ!」と私を糾弾する。
バツの悪い私は桃烏龍を一杯頼む。
店員が気まずそうにすると私自身も気まずくなる様子に居た堪れないような、申し訳ないようなおもいでいっぱいだった。
頭上端に追い詰められたブラウン管テレビは野球中継を表情に表し、見るものは、負けている阪神に対ししかめっ面を向ける。
中年は「今年もダメじゃねが!」と毒を吐いて、その毒が私のつくねハンバーグにスパイスとなった。
縦縞のシャツに身を包んだ店主と中年はプレイヤーのバッドシーンを肴にビールを喉に通らせていく。
茶色の瓶から保冷されたミニグラスへ注がれる黄色は白の泡になりて、トクトク、シュルルシュル、という音を、こんな喧騒の中でも私の耳に与えてくる。
それは居酒屋という名の通過儀礼のようなもので、私のような下戸は本来淘汰される忌人なのかもしれない。
私は飲めないが、誰かが飲んでいる姿が好きだ。
愚痴を吐き、アルコールを流し、
罵声を吐き、アルコールを注ぎ、
笑いを撒き、アルコールを浴びる、
そんなどうしようもないほど全力な彼らが愛おしい。
野球中継を、枝豆を、店主の声を、喧騒を、狭くほこりっぽい空気を彼らは肴にしてその黄金色の液体を嚥下するのだ。
今を流し、明日を顧みらず、味は分からず、ただ、酔いしれるため。
どうしようもないほどの渇きを、潤わせるために今日もここは賑わっている。
中年の飲むビール瓶のラベルを見る。
恵比寿様は微笑んでいる、私ではなく、彼らに。
それがたまらなく悔しい、なんて思ってみたりもする。
恵比寿様の籠に鯛の尾が見える。
あなたの幸運は好きな野球チームが勝つことか、または宝くじでも当たることか、
今、この場の酒が美味い、それだけでいいか。
私は飲めないことをわかっていながら、微笑む恵比寿様の後光のようなものに当てられた(きっとそうだ)から、私はビールを注文した。
中年は嬉しそうだった。
夜を歩く
なつかしい下書きを持って歩く
二十歳の私へ書いた手紙が
届かないまま
十年以上経った今もまだ
空想のいきものや
記念メダルにこだわっている
行くあても帰るあてもないまま歩く
深夜のコンビニは
夜明け前の匂いがした
お互いに手紙では語り尽くせない数の
時間が必要だったのだろう
人生の塹壕で
怯えて暮らすこども
私と同じ名前をしていた
将来の夢を尋ねられ
エビになりたいと答えた
私が常に欲していたのは
許される実感で
今この瞬間
罰を受けずに済めばどんなによかったか
二十歳の私への手紙が届かないように
私は抱きしめてやれなかった
ひんやりと冷たい空気の層が
私たちを隔てていた
手を伸ばせば
届いたかもしれない
だが、それすらできずに
私は夜を歩く
カーテンの向こうの明日
別に来なくていいですよ
重たいだけだし
要らない要らない
来年くらいに
よろしくしてよ
日照り
除け者の
肩に
被ふ
屑払い
塗り潰す
指
土壇場雨
切り落とし
遠そうな
ツバメが飛んでいく場所は
きっとどこか遠い場所
あたたかいあたたかい
海の匂いがするところ
空の色が見えるのは
いったいどれほど遠い場所
それともそれとも近い場所
わたしの知ってるあの子はそこに
いない
かなあ
ほんの少し
ツバメの赤ちゃんが
初めて
羽ばたいて
海が ゆれた
波が わらった
雲が ないた
飛行機雲が消えていく
しゃぼん玉をパチンと 割る
ツバメの赤ちゃんは
もう どこか 遠く 遠く
ツバメの涙は今 どこに
きっと遠く 遠く 遠そうな
わたしの心のある場所に
pool
水溜りみたいな女の子がいた。
その子の肌の向うには
確かに「世界」があるのだけれど
ふれるとすぐに壊れてしまって
浅い底を撫でることしかできない僕を
その子はいつも、笑うのだった。
流れる
水たまりに大の字になっているあたし
道行く人が触れないよう知らん顔 足早に皆 傘を差し家路を急ぐ
あたしの腫れぼったい目の裏っ側にはお花畑があるんだよ
健やかで 優しい 見せてあげたいな
ずぶ濡れのあたしを人々がまたいでく
貴方よ 早く来て
雨粒は凶器と化し
いよいよ あたしはもう
もう 肌が破れそうです
――――貴方 来た!
茶色い水の上で愛し合います アスファルトのプールの深さがちょうどいい
溺れたら それでいいじゃない
浮かび上がって
灯り灯し
灯りに水|入《い》ればランタン 愛を燃やす そうしてあたしへとバタフライしてね
あたしは大バカ者だけど、貴方だって酷いわよ
だから泥んこ道で こんなことしているんじゃない
もう だめなのかなぁ
さすれば いっそのこと 貴方という雷に打たれ
人魚になって遂げましょう
https://i.postimg.cc/jjR4ZK2t/pixiv-liureru.png
「夜を飼う」
山のそばに
美術館があって
白いあごひげのある山羊と
異国の美少年の頭部が
ガラスケースに入っている
わたしが電車に乗って
山の美術館に到着すると
大きな空に藍色の闇が降りてきて
その底は紅く発光していた
宿された大量の蚯蚓たちの
桃色の皮膚が
冷たく濡れて蠢いている
美術館の前の公園には
子どもたちが遊んでいる
キリンの滑り台
蔦の這うぶらんこ
ゆっくりと弾む丸いボール
やわらかい髪が
起きたばかりの春風にゆれる
もう夜だよ
おうちに帰らなければ
急速にあたりは闇に包まれる
わたしは慌てて駆けだす
うしろからだれかついてくる
振り返ると娘だった
息を切らせて一本道を駆けてきた
おまえはみんなのところに戻りなさい
娘の顔は黒くてはっきりしない
肩にかかる髪の扇形に見覚えがある
その手触りも
撫でたのはいつのことだったろう
わたしは娘を残して闇の中を駆ける
車に乗って迎えにゆくから
山の上から街を見たら
灯りが星になっていた
異国の美少年はガラスケースのなかに
山羊を飼い
わたしはからだのなかに
夜を飼っている
ふくらんで大きくなって
透明なバリアはいっぱいになる
娘はみんなのところに戻ったろうか
【推薦文】白くて眩しい
推薦対象
サマーノイズ
by 白雨いろ
この詩の作者は一行の長さへの、おそらくは無意識なまでに洗練された感覚が特徴的であり、また空白行の使い方が優れている。
なのでつまりは、余白の使い方に面白さがあり、文字のないスペースから、単なる余韻を超えた詩的な要素が味わえる。
哀しみの詩からは嗚咽が伝わり、ネコの詩からは穏やかな動作が伝わる、といった具合だが、非言語表現だから全ては読み手次第でもある。
本作品の余白から何を読むかも読者次第ではあるが、詩集に入るのならレイアウトは美的センスのある人の腕の見せ所だろう。個人的には、えっち且つ健康的な太ももが見たい。
私はしろねこ社の詩集には、表紙絵などで繊細で奥が深い暗色の表現に魅力を感じているが、それも社主社員のテキストの読み込みと美的センスの融合があっての事と思っている。レイアウトに拘った、且つ何も付け加えない、純白の余白にも期待する。
詩集で、真っ白な紙のうえに展開される、この作品の絶妙な曲線をしみじみと(且つニヤニヤと)鑑賞したいので推薦する。
(修正2026.7.20 15時50分)
傘
二度と行かない所に
赤い傘を忘れた。
雨の日に元気でいられるようにと
赤を選んだ。
もしかしたら、もう、
いらなくなったのかもしれない。
松を焚く
行き交う幽霊の間を
生きるものはひっそりと間借りする
私はただ、あせもをつくる
続・ネイド王子とれもんの花
闇をはらう光の鳥シトラが運ぶ
王国さいごの「黄金のれもん」
れもんの行きさきは、
人間界のはしっこにある、小さなれもん畑のまんなか。
そこには、白いかべに黄色い三角やね、緑色のえんとつがついた
かわいらしいおうちがぽつんとひとつ立っており
ピールという名前の心やさしい女の人がひとりですんでいました。
光の鳥シトラは、ピールにゆっくりと話しはじめました。
「お腹ぺこぺこの怪物サンダーが、れもん王国の太陽を食べてしまったんだ。
そのせいで、れもんの木にれもんがならなくなったんだよ。
妖精たちも元気をなくしてしまっている。
それで、レモニオ3世は、『お腹がペコペコの大ピンチ』を宣言したんだ。」
シトラはそっと続けました。
「これは、レモニオ3世がピールに託した王国さいごのれもんだよ。
愛と夢と希望のすべてがつまっているれもんなんだ。」
ピールは金色に輝くれもんをうけとると、
だいじそうに両手でやさしくぎゅっとつつみこみました。
そのとき、ピールの心に、なつかしい思い出がよみがえりました。
それはまだピールが、王国のれもんの花だったときのことです。
ピールは、王国でいちばんたくさん実をつける花でした。
まるくておおきなれもんがぽんぽん、ぽんぽんとふくらみます。
そのれもんはかじると
ほんのり甘くて、すこしすっぱくて
おいしいれもんパイがたくさん作れました。
だから、れもん王国の妖精たちは、みんなピールがだいすきでした。
れもん王国は黄色い実と甘い香りで
いつもひなたのように明るい国です。
でも、ある日のこと
レモニオ3世はこまった顔でいいました。
「れもん王国に大きなピンチがせまっておる。
国を守るために、ピールよ!
人間界のはしっこのれもん畑へ行ってほしいのだ!」
ピールはびっくりしました。
でも、だいすきなれもん王国を守りたいと思って、ぎゅっとこぶしをにぎり、
小さくうなずきました。
こうしてピールは、れもん王国をはなれ、
人間の女の子として、
人間界のはしっこの
小さなれもん畑の小さなおうちに
たったひとりでくらすことになったのです。
つづく
言葉販売店
丁寧に並べて
見やすく
高く積まない
在庫切れは起こさない
言葉を
そうしていきたい
また明日
眩しさが傾いて
染まり始める西の空
お疲れさまを
燃やせるほどには
歩けなかった一日も
夕陽とならば終えられる
その儚さが寂しさを
美しさが憧れを
見事さが羨ましさを
そっとかき回しては
連れていく
暮れゆく今日に
またねはもう無いけれど
「また明日」なら
言えそうで
また明日
私を生きて行くために
藁人形
釣り上げたアジを
ナイフで
絞めている
おまえの
腕
笑う 海鳴り
膨らむ Tシャツ 腹筋
急に高まる カモメの声
僕は藁人形になって
おまえの左肩に
頬ずりして
そのまま
この世の無数のアジ
の中のいっぴき
クーラーボックスの中のアジ
僕がそのアジだったら
おまえの手のひらで押さえつけられて
おまえの顔を見上げながら
おまえのナイフで死ねたのに
おまえの横顔をずっと眺めて
おまえの夕飯になって
おまえの
まえの
えの
の
それでもうずっと、
ばんえい競馬
灼熱
ばんえい競馬
歓声が
重く残りし
コース場
燃え上がれ
歴史と金銭
人の思いを
ソリに載せて
レース始まる
号砲に
重種馬
突き進み
超越せし
小障害
進む命
なおも燃えつつ
滾り出し
歓呼従え
爆発してく
歩くよに
重く引きずり
歴史負い
歓喜従え
吹き湧き上がる
立ち止まり
大障害
息を吸い
命合わせろ
熱熱上げて
一斉に
挑みかかるは
馬と人
絶望的な
坂に向かって
喝采に
競馬場が
揺れ動く
世界唯一
その熱により
越えに超え
重量引きて
進みゆく
馬体から噴く
蒸気機関
灼熱
吹き湧き上がる
熱狂の
命は重し
ばんえい競馬
もう怖くはない
軽くなったと思ったら
いつの間にか思い出に
落ち着いたと思ったら
いつの間にか思い出に
優しくなったと思ったら
いつの間にか思い出に
寂しさと引き換えに
懐かしさが身について
こうなればもう怖くはない
いつまでも一緒にいられるから
選ばれない
ちがう
選んでいるのだ
わたしが
選ばれないを
あなたが
誰しもが
選ばないことを
選んでいるのだ
選ばれるのは
こわいから
昼と夜を別つ国
キノコバエ
チョウバエ
ショウジョウバエ
みんなあつまり
蕺の夜咄を聞くことがある
カーテンの向こうに昼と夜を別つ国あり
指さす先に
驚きや喜び栃の木や楤の木プラタナスが葉を広げ
街灯によって
睡眠を覚えた私たちの前に
異郷として峙つもの
「戻ってくると思ってたのに」
「投げちゃったね、とおくに」
見知らぬトーク画面に
見知らぬスタンプが押され
見知らぬままメッセージの往復が続いた
まんまるいつき
手のひらにおさめ
斑な淵に建つ砦
キノコバエ
チョウバエ
ショウジョウバエ
みんなあつまり
夜伽を終え
みつからなくなったものや
死んだ者もいた
倉庫ではネズミ捕りの粘着シートを踏んだオヤジが
声高に私を呼んでいた
「今から行くって」
「ダメかもしれない」
そうか、あのメッセージもきっと
ハエたちが接ぎ木のように
造った系統樹があって
その樹は人々から
真実の通時態と呼ばれていた
五本回しで積まれた米袋の向こう側に
オヤジの声がして
周りこもうとした時
昼と夜を別つ国
いみじう暑い夏を具す
私たちの言語を用いて寿ぐと
オヤジは粘着シートの上で足裏から
徐々に溶け落ちていった
「最後に非通知で電話がかかってきますから、くれぐれも出ないようにしてもらえますか」
「火星からの通信が途切れたのもきっとそのせいでしょう」
「だから、私には夜が必要だった」
「そういう時都合よく眠れなくなって」
「お互いにまだよく知らなかったから」
「最後くらい笑顔がいいなって」
言いさしのまま終われない会話が続き
ハエたちは散り散りに去っていった
昼と夜を別つ国のものども
すさまじき心肝を曝す
新落語 一文字シリーズ 「うな丼の話)
新落語
一文字シリーズ
「うな丼の話)
今宵は、
う
このような
言葉があるのは
それは、
誰もが知っている
はねる
文字を変更
うさぎ
から
うなぎ丼
それからどうした
うなぎ屋
それでどうした
お待たせ
うな丼です
そのあとどうした
お金がないと
店員につげたら
そのうな丼
はねられた
最後はどうなった
どちらも
はねられます
こんなの
どうでしょう
書けるもんなら
書いてくれ
雷鳴
「澄みたるは、老年の如し」
と、若きニゴリテルは言いました
「私は、ニゴリテル。平和な時間時代
その一瞬一瞬の暇と退屈を精神の安寧者たちと、共に過ごす
精神の疲弊と荒廃から、やがて欲望は膨れ上がり
発散解消が上手く得られぬまま、悲壮が私を蝕み
勝者たちが、私の時間を搾り取る
憧れの淑女、キヨメテルは多くの男性の羨望の的」
「染み渡るは、腐敗臭の如し」
と、同居人のクサリハテルは言いました
「俺は、クサリハテル。忙しい戦争の時代を生き抜いた
その一瞬一瞬の、争いとトラウマからくる傷跡を、同じ仲間たちと共に過ごす
精神の充足と、欲望の満足。肉は、血沸き賑わい
税は、国民が私の代わりに払う。喜悦が私の頬を緩ませ
敗者たちと、楽園の時間を過ごす
憧れもなく、永遠に続くオナニーが私の心を癒す」
「響き渡るは、快晴の狼煙」
と、老フザケテルは言いました
「オイラは、フザケテル。出来の悪い息子を精神病院にぶち込んだ
後は、自分は妻と忙しさと楽しきを国に保証された年金生活
その一瞬一瞬の、平穏と無事の世界を心ゆくまで、堪能する
良心の欠乏と、永遠の快楽。妄想は膨れ上がりて
天国へと続く理想と夢へ、私を連れていく
勝者敗者関係なく、皆私に身をひれ伏す
憧れはとうの昔消えていった、鬱陶しき先人たちよ」
それを天から見下ろす、シゴイタルが見て言いました。
「私の名前は、シゴイタル。天からの裁きといつかお前らを、シゴイタル
所詮この世は弱肉強食のサバイバル。勝った者達例外なく、ミナイバル
人生経験を雄弁に語り、女を孕ませ、女は抱かせ、けしからんサバイタル
不埒娘と、淫乱熟女たちめに、拳銃を突きつけ、マナーをいつかオシエタル
良心が作る地獄と、それを信じぬ天国野郎ども。イカサマ達に、人生というものをマナンダル
勝者敗者なき福祉国家日本を米国式資本主義の世界に、いつかトビコマセタル
そんで持って言葉の遊びの合間に、雷と天誅の用意をイソイダル
いつかヒライタル、我リサイタルに、マネイタル」
悲色図 安驚 美礼無頭
悲とは、なにか?
一方が善かれと思い、悪行は正当化される
巧妙な企てもあるけれど、傲慢な振る舞いもある
色とは、なにか?
その黒い雨の降る時、皮膚まで爛れおつる
歪んだ妄想の果てにあるもの。責任は、回避される
図とは、なにか?
記録されたるそのさまは、暗澹たるその姿
地獄とは妖怪のいくところであるけれど
正にそのさまである
安とは、なにか?
虫や獣の如く処理されたものたちよ
安らかに眠りたまえ
高貴なるその意思を貫通した人々と共に
正義は、我々にある
驚とは、なにか?
あれから何十年経ち、人々の記録は常に更新されていった
洗脳は驚きであるけれど、新世界の幕開けである
美とは、なにか?
靖国の英霊を敬う時、死んでからも認められたいと願う人々のことを思う
イマジネーションは天空を駆け巡りながら、この大地へと根をつける
礼とは、なにか?
マナーを守らぬ大国に、頭を下げ続ける我が従属国よ
独立は英断であるけれど、大きなリスクを伴う
無とは、なにか?
忘却は虹の彼方にて、漆黒の闇へと誘う
確かな罰則もないけれど、いつかは天罰が襲う
頭とは、なにか?
一億総病棟時代に、賢人がいた時代を思う
我ただ一人願うのは、脳内のその無事である
立ち去る
離れる
別れる
立ち去る
ただ一歩前に進むだけで楽になれるのに
どうしても出来ない…
「愛」が私を引き止める
愛されてないのが分かっているのに
あなたから離れられない
身体は離れたいと訴える
心は離れたくないと訴える
あなたは近くに存在しないのに
あなたを愛する私だけが存在している
遠いあなた
近づいたと思ったら
また離れてしまうあなた
何度も追いかけ
何度も泣いて
もういっそ離れたままで良かったのに
あなたは近づいてくる
そして私はまたあなたを愛する
あなたは離れても
すぐに私の傍に帰ってくる
もう疲れた…
立ち去る事が出来ない私
一歩…
ただ一歩だけでいいのに
勇気が出ない
だから今度あなたが離れたら
私はもう待たない
私はもう追いかけない
苦しみ藻掻くのはもう嫌
「立ち去る」
今、その勇気を持って
あなたから離れたいと思う
充分苦しみ哀しみ泣いたから…
甘やかな敗北
君の毛先が揃って
僕の知らない横顔を彩る
君が笑うと
僕は跳ねて
君が話すと
僕は和らぐ
君の変化1mmで
僕の世界は瞬きと光る
君の視線も
君の温度も
君の香りも
君の音も
僕が触れない
君の全てで
僕は毎回
白旗を振る
甘やかな世界で
君が輝く
そんな日々が
僕の敗北
ひまわり
光を追って
目を
顔を
そちらに向ける
眩しくて目を細め
大輪の笑顔に
手をかざす罪は
僕だけのもので
その存在に
凛とした視線に
息を飲み
目を瞑る
圧倒的な
華やかな声は
僕の奥を
震わせて
僕の背筋に
冷えた吐息が
かかるようで
逃げ出す足に
力が入る
膝が抜けて
怖いと漏らす
輝く花びらで
人は殺められる
なんてことを
口ずさむのは
僕だけの咎
在る
寂しい人を見たなら
後ろからそっと手を添え
一人を分け合う
優しい風になり
心の糧を探す人には
足元をそっと支えて
一人に沈まぬ
泥臭い土になり
涙を流す人には
傘は差さずに
一人を潤す
清らかな雨になり
誇れる自分を見たい人には
灯した種火を渡して
一人を消さない
温かな月になり
いつでも私は
そこに在る
気付かなくとも
あなたの影になり
人肌の想像力
思いやりには
しなやかな想像力が必要だ
想像力には
あたたかな温度が必要だ
たとえばそう
ちょうど人肌くらいのあたたかさが
私という惑星
靴底に春を敷きました
さよならぶりの外出は
三日と九時間と行ってきますのあと
昼寝をしたから輪郭をうしなった私に
春が生きなさいと言ったから
まずは春を踏みます
生意気ばかりいうくせにせっかちで
カタツムリみたいににぶい
春が悪夢なら幸せですよねまったくです
夏は冷凍保存します
最悪のときには冷えていて最高のとき
何食わぬ顔をして溶かして食べます
衣を替えたら変わる不幸なら美味しい
ささくれは秋に抜くのがいいでしょう
みえないところにささったものほど
秋に抜くのがいいでしょう
好きな色の絆創膏を買いこんで
ほら秋が落ちてきます
靴紐で冬を結びましょう
はなやかでなくてささやかでいいのです
私という惑星を
生きるためでいいのです