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2021/01/01 12:00:00

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投稿作品一覧

ブランケット

コンビニに
深夜のすがたを 晒すこと
中心を踏まずとも
綱は渡りきれる きっと
街灯の配置が歓迎している

生物であれ無生物であれ
鳴き声を親しく思えること
本当にまぬけな
顔ができる
通れない隙間に思わず
わくわくする  
こと

うんめい
注釈を挟みたくないなにか
ブランケットくらいはかけてやりたい

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お花畑

世界中をケシの花でいっぱいにしたら
全人類ハイになっちゃって

戦争はなくなりましたとさ

めでたしめでたし



おやすみ

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#じんたま 3

4月5日の夜、クヮン・アイ•ユウさんのツイキャスがあるという告知を目にし、私は導かれるようにその場を訪れた。
画面の向こうには、彼とつつみさんの二人。リスナーは時折出入りがあるものの、私は挨拶もせず、ただ静かに「潜伏」していた。彼から見れば、つつみさんと、正体不明の誰かが耳を傾けている——そんな風に映っていたはずだ。
彼は自作の詩をいくつか披露した。
改めて聴く彼の朗読は、実に響きのいい声だった。言葉の扱いが手慣れているというか、その発声には確かな地力が宿っている。月曜からはまた仕事が始まるはずだが、どうにも寝つけない夜なのだという。私は普段なら12時前には眠りに就くのだが、その夜は潜んだまま、彼の声に身を委ねていた。
詩を朗読し、その背景やつづられた当時の記憶を、つつみさんと対話するように語る時間が流れていく。私は潜伏したまま、歯を磨き、喉を潤すといった生活の細々とした動きをこなしていた。やがて、話題がCWS(Creative Writing Space)に投稿された私の「#じんたま」に及んだ。
いつまでも素性を隠して聴いているのも不自然に思え、私は挨拶がてらコメントを残した。
かつて「B」にいた頃、私は「吸収」と名乗っていた。「グリフィス」という名は、さらにその前、文学極道時代のハンドルネームだ。その投稿掲示板が機能を停止したとき、私もまた、この界隈から自然に消えていくのが道理だと考えていた。
それから約5年、ネット詩の世界からは完全に遠ざかっていた。
転機は、娘がコロナに罹患し、その看病で付き添っていた時に訪れた。ふとした拍子にネット詩の海を彷徨い、辿り着いたのが「B」だった。そこで久しぶりに詩を投稿した。いや、文学極道時代には賑やかし程度の関わりしか持っていなかったから、それは初めて詩を「発表」するような、奇妙な感覚を伴うものだった。その後の「B」での活動が私の今を形作るのだが、今はその本筋から逸れるので置いておく。
長く離れていたせいで、クヮン・アイ•ユウ氏が「B」で最も活発に動いていた時期を、私は全く知らない。ただ、後年になって過去のログを漁っていた際、彼の活動の軌跡を何度か目にした記憶が、断片的に残っているだけだった。
放送の中で、彼は私がCWSで「#じんたま」を書き継いでいることに触れ、「ご自身のペースで書いてくださいね」と穏やかに言葉を掛けてくれた。私は頷きを返しつつ、「ご本人のことをよく知らないまま書き始めてしまって、どこか変な感覚なんです」と正直な胸の内を明かした。
「クヮン・アイ•ユウさんの詩界隈での人間関係、その相関図のようなものがあれば便利なんですけどね」
そんな私の軽口に応えるように、彼とつつみさんは、これまでの歩みを丁寧に説明してくれた。
知っている名前もあれば、初めて聞く名もあった。
「武田地球さんとも活動されていたのですか?」と、おぼろげな記憶を頼りに尋ねると、「詩人z」についての解説もしてくれた。「クヮン・アイ•ユウさんは、大阪のミャンマーさんなのですか?」という私の問いには、「いや、どうなんですかね」という、煙に巻くような、あるいは照れ隠しのような返答が戻ってきた。
どうなんだろう、私は一体何を聞いているのだ。そんな自問がふと頭をよぎる。
放送は24時前に幕を閉じ、私は挨拶をして退室した。
それから、つつみさんのカレー作りの動画を眺め、紹介された場所へと飛び、過去から現在へと繋がるクヮン・アイ•ユウ氏の活動の足跡を巡り歩いた。
CWSに「#じんたま」を投稿し続けることで、私は何を求めているのだろうか。
ふと、自分自身の中にある「カタルシス」のようなものを求めているのではないかと感じた。
トーマス・マンの『魔の山』、サマセット・モームの『人間の絆』、そしてヘルマン・ヘッセの『車輪の下』——。古の教養小説が描いてきたように、私は自分自身の歩みを振り返りながら、この「#じんたま」という活動を通じ、どこか決定的な場所へ辿り着こうとしているのではないか。
目を閉じれば、ハンス・カストルプがそこに立って、世界の無常を語り出す。
私はその深く、静かな瞳を、いつまでも見つめ続けていた。

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月の優しさと根源の調

一。
わたしの根源(ね)、優しき夜の底に眠る。
開かれず、ただ在ることの、深遠なる誓い。
その重みは、朝焼けの不安を鎮める、静かな錨(いかり)。
かつて握りしめ、解き放った恥じらいは陽光の中でも月の光を宿し、
真実をそっと守る、銀色の守護者。

​二。
最も小さなものが、宇宙の全てを知っていた。
華奢な胸と、震える吐息。
世界が「もう少し」と囁いたその場所こそ、
魂が、最も純粋な生(いのち)を謳(うた)った調べ。
柔らかな水面が、望の秘密を映す。
爆ぜた光は、赦しを告げる星屑。
鎧を解いた時、この体は初めて、
風と月と交わる、自己を開く門となった。

三。
月はただ、息を潜めて見つめていた。
森は、何も尋ねず、ただ温かく包んでいた。
その瞳の裏に、裁きなどひとかけらもない、永遠の受容。
美しさとは、欠けや満ちを恐れず、
すべてを抱きしめて、そこに息づくという、穏やかな事実。
冷たい切り株の肌触りは、
この存在の確かさを教える、やさしい記憶。

四。
自由は、もう、逃げ場を必要としない。
仕掛け細工の小箱に、あの夜を凝縮し、
胸の奥へと、光の種として抱きしめた。
混み合う喧騒の中でさえ、目を閉じれば、
夜風は変わらず、髪をそっと撫でてくれる。
日中の乾いた影の下でさえ、
泉は、静かに、貴女は愛されている、と応えてくれる。

五。
昼の光の下、たとえ月が姿を消しても、
内側に灯された、その炎は揺るがない。
それは、他者の視線では決して灯せぬ、
わたしが、わたしに贈った、永遠の安息。
​だから、もう、さまよわない。
わたしは、もう、逃げ隠れしない。
すべてを赦し、抱きしめたこの場所に、
優しく、深く、永遠に、
わたしはわたしとして在り続ける。

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主張強め日記(4月8日) 文芸投稿サイトに持ち込まれる揉め事について

文芸投稿サイトには、揉め事がつきものである。傍目にはよく分からない誹謗中傷の応酬、それが嵩じて裏アカウントが湧き出し、さまざまな登場人物が巻き込まれ、いずれカオスの様相を呈する。そこへ、一部始終を眺めていた別アカウント、あるいは自演アカウントが運営に向かって「適切に対応しているのか」「対応の進捗報告をせよ」と詰め寄ってくる。


これはもう、文芸投稿サイトの業とでも言うほかない。我々はこの種の事態を、知りすぎるほどに知悉している。此の手の揉め事が起きないと、むしろ運営をやっている実感が薄れるほどだ。ただ裏を返せば、よく知っているがゆえに刺激もなく、正直なところ只々、退屈でうんざりしている。


提携を打ち切った名輿文庫についても同じことが言えるのだが、結局のところ、何のために揉めているのか、傍からはまるで見えない。おそらく、何かのきっかけで揉めて、拗れて、自家中毒を起こしているだけで、これといったハイコンセプトがないのだと思う。表層的な屁理屈や常識の押し付けの応酬だけがあって、結局のところ何を守るための戦いなのか判然としない。


人生の中で堆積していく澱のようなもの、如何とも言い難い剰余のエネルギー、それが溜まりに溜まってスパークしていくのが「表現」だとすれば、うまく表現に昇華できないまま、謎の揉め事という形でしか噴出できなかったもの、それが文芸投稿サイトの揉め事の正体だろうと感じている。表現の核になるような強度を備え損ねたまま、負のエネルギーだけが気持ち悪いかたちで表出している。


だとすると、我々は「表現の出来損ない」をサイトに持ち込まれているわけで、そういう意味でも、一顧だにしたくないという気持ちに駆られる。運営を巻き込みたいのなら直接依頼すればいい。対応に不満があるなら直接抗議すればいい。婉曲な揉め事という迂回路を選んだ時点で、それは私の目には表現者としての一種の「敗北」に映る。


しかし、私はその敗北に対して、一定の理解がある、と正直に言わなければならない。私もまた、揉め事を持ち込んでしまう側の人間と通底する性質を持っている。その自己認識は、常にある。端的に言って、私は運営者でなく一参加者の立場なら、荒らしに接近するタイプの人間である。私だけでなく、多くの投稿者が多かれ少なかれその種の傾向性を有しているからこそ、文芸投稿サイトに愛着しているということもまた否定しがたい事実ではないか。


私が執拗に書き続けてきたキャラクター、田伏正雄は、この種の揉め事が体現するもの、ただただ気持ち悪く、何も生み出さない、鬱屈したエネルギーの塊を具現化しようとした試みである。出来損ないのエネルギーの表出を、なんとか表現の世界へ引き戻すこと。揉め事を起こす者たちにも、結局はそこへ戻っていってほしい。それさえできないのであれば、本当の意味での敗残兵ではないか。少し冷静になれたなら、反省の一言でもDMしてきてほしいところである。私は謝罪あるいは、今後どうするかについてすり合わせられるなら、すぐに許す準備がある。畢竟、似た性質を抱える者同士なのだから、冷静に言葉を交わせば、一定の理解には至る可能性が高いし、いずれにせよ、揉めたり、断交したりするほどの理由など早々にあるものでもない。


CWSでは、問題を起こしたユーザーはさっさとアク禁にする。ただし、その後コンタクトがあり、最低限の意見の擦り合わせができれば、アク禁は解く仕組みを設けている。もちろん、解いてほしければ頭を下げてこい、などと言うつもりは毛頭ない。自分に改めるべきところなど一切ないと思うなら、我々とは合わないし、他でやってくれればよい。インターネットやその他の場で、書く機会など無限にある。我々はアク禁によって、改めてもらい、また気分良く利用できるようになるためのきっかけを作ろうとしているだけである。


そうやって毅然と、そして柔軟に運営していかなければ、文芸投稿サイトはあっという間に荒廃する。荒廃した場には荒廃した場なりの奇妙な面白さがあったりするが、それでは結局人は集まらないし、継続性を持たない。このことを、我々は幾度となく繰り返し確認してきたと思う。

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批評・論考

優しさの色

ふんわりと香った
春の空気

伝わってゆく
勇気をもらえて

いつものように
巡ってくる
春のなかで

こんなにも
一瞬で

優しさに
満たされる

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未着

月の裏側から
砂漠が眠りに就くまえに
長いストローをひと吹き
ただ遊泳しながら作る
オムレツに
宙を漂うケチャップを

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闇をあなたに

ぼくはかならず夜 
光をすくう 
とても わるいことが あっても
朝になったら
くつを
揃え

いってきますと 

ずらす
ダイアル
一つ

光をかきわけつづければ
会えるから
唇のたましいのうえ

網を

あなたに

わたそう

闇を
掌を
ひきさいて
すくいつづけた
ひかり
一つ

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#じんたま 4

詩人とは、遊星に似ている。
独自の引力圏を持ち、孤高の軌道を周回する存在。その強大な引力に取り込まれ、旋回を余儀なくされる衛星たちの圏内では、重力は歪み、光は正しく直進することを許されない。
人間関係においても、「ロシュの限界(Roche limit)」は厳然として存在する。
詩人はあまりに強大な心的質量を有している。ゆえに、詩人同士が近づきすぎれば、その質量差が歪な関係を生み、引き合っては離れ、時には潮汐力に耐えきれず崩壊して塵へと帰していくのだ。
三浦という男を眺めていると、その理(ことわり)が顕著に立ち現れる。
彼が詩人であるかどうか、私には断定できない。しかし、彼の周囲には常に歪な空間が漂っているように見えることだけは確かだ。
あの二歩氏でさえ、三浦氏に対して激昂した。
理由はどうあれ、彼女がそれほどまでに感情を露わにする場面を、私は他に知らない。三浦氏には、詩人を寸前まで追いやる「何か」が備わっているのかもしれない。彼は多くの人間を引き寄せ、そして同じだけの人間を無慈悲に弾き飛ばしていく。
私は三浦氏に対し、深くは踏み込まぬよう距離を置いている。
端的に言えば、それは畏怖に近い。想像上の魔物を前にした時のような、根源的な感覚。近寄りがたいオーラを、私は肌で感じてしまうのだ。
怒りに震えた二歩氏自身、なぜ自分がそこまで至ったのか、その理由を測りかねているようだった。おそらく、三浦氏は「触れて」しまうのだ。良くも悪くも、深淵を引き出し、暴いてしまう。
配信『#じんたま』において、三浦氏は遺言を残し続けている。
時代の徒花として散る覚悟があるのかもしれない。そして、私の中にも似た想いはある。我々はクヮン・アイ・ユウという存在を介して、自らの人生の意味を完遂しようとしているのではないか——。
「B」の時代、第8期運営は三浦氏でなければ形にできなかった。だが、もしこれが壊れることがあるとすれば、それもまた三浦氏が原因だろう。私は何となく、そのような予感に似た感覚を抱いていた。
100のリソースしかない世界で100を出し切ろうとする私に対し、三浦氏は300の容積のうちの100を「B」に割いているように見えた。残りの200は、正体の知れない何かに沈んでいる。その余白こそが、彼のまとう不穏な雰囲気の正体だったのかもしれない。
「B」が崩壊した真の原因がどこにあるのか。無責任と言われるかもしれないが、私にははっきりとは分からない。ある日を境に、全てが変わってしまった。運営の各々が限界を超えて接近し、結果として塵のように砕け散った——そんな幕切れだった。
誰の責任かを問うことに、もはや意味はない気がする。ある日突然、全ての歯車が空回りし始めた、あの空虚な感覚だけが今も残っている。
私も相当に詰められたが、運営を去った理由はそこにはない。このまま内部に留まっていては、組織を守れないと悟ったからだ。私はDiscordのサーバーを削除し、一切の連絡を絶った。
一年後、二歩氏を運営に推薦するために再びアプリをインストールした時、そこにはメンバーからの膨大なメッセージが届いていた。
今でも、シリュウさんの残した音声ファイルは聴けないままだ。私にはそれを聴く資格がない。そう自分に言い聞かせている。
『#じんたま』の投稿を始めてから、三浦氏から連絡があった。
私は彼に対し、「必ずしも三浦氏を利するような投稿はできない」と告げた。もちろん、彼にそんな意図はないだろう。ただ、私の綴る言葉に対して、彼なりに直にコメントしづらい何かを感じているのかもしれない。あの連絡は、謂わば彼なりの激励だったのだと受け止めている。
時折、彼が一人でギターを弾くツイキャスを眺めることがある。
画面越しに響く音色を聴きながら、やはりこの男には「畏れ」という言葉がよく似合うのだと、私は改めて感じている。

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美しい朝のこと

とても美しい朝だった
雨上がりの匂い漂うなか
朝日が白い壁を曙色に染め上げ
風に揺らされた桜は全身を震わせ
柔らかな花びらを舞い踊らせる
新緑を纏い始めた木々たちが
さわさわと細波のような音を奏で
それに合わせ鳥たちが歌う
ただそれだけの
あまりにも美しい朝のこと

もう二度と同じ朝はない
ただ一度の、美しい朝のこと

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『西武園所感』所感 その遊園地は誰が作ったと思うんだ

資本家がペンで計画を築き上げ
労働者が汗を流しながらペンキを塗り
そうして互いが互いのできることをやって
遊園地という一つの詩が完成した

その詩で家族連れが多く訪れては遊び
子供たちに思い出を刻んでいく
それはきっと何よりも詩的なことなのだろう

“みみっちく淋しい”だなんて
その一言で資本家も労働者も踏みにじっていいものか
図面も作れず、ペンキも塗れぬ輩に何がわかる
グラン・ブルジョワを倒そうとか言うけれど
アイン・ランドによって一瞬でたかり屋認定されるぞ、それ

司馬遼太郎だったら褒めたたえたことだろう
“君たち。よくぞ英雄たちのように働き、成し遂げたじゃないか”
そう暖かい笑顔でそっと原稿に記してくれる

それは独占によっては生まれなかった
それは協調によって生まれたのだ
一つの階級協調のその産物

某詩人と同年生まれの歴史作家だったらそう述べたはずだ
ビルの上にいるようでそれでもビルで働く人々の
その傍にいるようにエールを送ってくれた

君がもし詩を書きたいというのなら
西部園とそこを作ったあらゆる階級の人々を賞賛するために
そっとペンを走らせていくのです

今は叩かれがちなあの人だってそうしたはずだろうから
いやまあ僕にも庇えない部分はあるけれど
彼の価値観は僕の価値観となっていったのだから

詩で家を建てたっていいじゃないか
僕は建てたい、それも本当に住みよい家を
子供に玩具を買ってやったっていいじゃないか
むしろ自分のためのゲームをたくさん買うね
血統書づきのライカ犬は……
その、僕は猫派だけど飼ったっていいんじゃない?
あと、諸国の人心にやすらぎをあたえたっていいはずだ
やすらぐ人はどうせやすらぐんだし

むしろあの人の歴史譚は多くの働く人たちを元気づけたじゃないか
現に僕があの人のようによく貪欲になれていったのだから

詩で人間が造れたって別に問題はない
詩で協調を作り上げてしまおう

三つの矢をもって決して折れない矢を作るように
いくつもの束をもってして強力な斧を作るように

詩は君の心の一つの盾
詩は君の心の一つの矛

なぜなら
詩は最初から君の私有
詩は君が血と汗の代物
君の魂が世界に立つための足

君が君自身の労働で実現しようとしているもの

詩は八月のラムネ
詩は一輪の菊花 
一つのさざれ石

詩は 表現を変えるなら 人間の魂
名づけがたい物質 不滅の歴史だった

いかなる時代においても
詩は君のそっと握った刀

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メンヘラ女子は眠れない

リストカットもファッションなら
オーバードーズもまたファッション
スマホで撮ってハッシュタグつけて
今日もブログにうPする

映えるインスタ盛るX
7個のサイトを使い分け
裏垢病み垢自撮り垢
メンヘラ女子は眠れない

彼女は歌舞伎町のホストを刺したあと
その画像をネット上にばら撒いた
人生はフォロワー数や
「いいね!」の数の中だけにある

自分自身を消費せよ
誰もがアピール誰もがジャッジ
もっと可愛くもっと過激に
勝手に拡散勝手に炎上

量産型に地雷系
キーワードは「ぴえん」と「エモい」
迷惑動画もバズればノーカン
メンヘラ女子は眠れない

彼と彼女はSNSへ投稿し
トー横のホテルから飛び降りた
人生はフォロワー数や
「いいね!」の数の中だけにある

(ラップ)
プリン髪して痛バ持って
とてたま気分でバイ活オワコン
キラキラ女子に港区女子
無理ゲーだったらパパ活女子
干物女にはなりとうない
外見スペック超絶ウィケメン
スパダリわかりみキュン死にしてねアピ
パリピギャルサーマジ卍
誰得禿同同担拒否
どーでもよすぎワロタそれなw

メンヘラ女子は眠れない

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V

配信画面に切り替わる瞬間が
部屋の壁より先に
わたしの皮膚を更新する
もはや祈りではなく
手癖でもなく
半壊した儀式として
あなたを推す、たましい、

あなたが勝手にわたしを救った
言葉は軽くて
体液の粘度に耐えない
「向こう側」
で笑うあなたの息は
フーリエ級数展開されて
電波に乗り
私の耳まで届くのです
距離は倫理の代わりにならず
切り抜きの秒数で愛を学んだ者は
結末の尺を待てない
アーカイブを二倍速で巡礼しながら
私は何を省略しているのか
あなたの退屈
あなたの生活
あなたが勝手に引き受けた
あなた以外のすべてのもの

救い
あるいは逆さまの脅迫、
矛盾はないどこにも
群衆は祝祭であり
同時に略奪でもあるから
世界が壊れたのではなく
わたしが勝手に傷ついただけだ
神格化、あるいは
極端に俗っぽいあなたの
弱さを見たくない
でも弱さが好きだ
その弱さより
ずっと強いあなたのたましいが好きだ

あなたが勝手にわたしを救った
わたしは
救われる資格がないまま
あなたに怒っている
あなたを愛している
あなたをなぶる妄想をしている
あなたになぶられる妄想をしている
巨大な祭壇に詣でて
すべての整合性が解体されるのを見ている

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真ん中

私は、世界の真ん中にいる。
立つだけでも、歩くだけでも、世界の真ん中にいる。
神様がそうしたんじゃない。
地球がそうしたんじゃない。
私達がそうしたんじゃない。

ここが真ん中だ。
それだけのことだった。

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2024/07/15@海遊館吟行より

夜がくるじんべゑ鮫と云ふ夜が

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転生しなくても

何度も名前を
かえるだけ

生まれてこられる
世界は
便利だね

けれど
ひきょうでは
いかしきれないかな
(にがわらい)

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【短歌】親愛なる冬のみなさま【まとめてみた】

銀紙にくるまれた冬をとりだしてほうばる前にすこし眺める




透明をかさねてかさねて神無月こんないろでも光になるのか


夏掛けにいっしょうけんめいもぐりこむコタツごっこと音も無い窓


濡れ鼠かわかしたので眠りねずミルクのふとんにくるまって尚


おや中尉あなたでしたかこの冬を鏡のように磨く役目は


十二月なにを撮っても美しく星の採取に役立ちました


枝ぶりは丑三つ時ならシカのツノ冬の昼なら空の花束


将来は研究しようと思い立つ無垢なそらほど寒いふしぎを


碧すぎて夜はとうとう紅くなる電信柱へ薪をくべよう




終わり際は初冬とおなじ匂いみたいこんな鼻ではわからないけど

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2026/03/11 日常詠 ガチャガチャを回してみて

わざはひを描いて筆は蝸牛

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『硬つむり』という、おそらくコレはダイアモンドの。

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そのたびにどこにゆくのだろうか

 熱い亀裂がずらりとくすねると飽き飽きしたクセが出る。しかし、たためなくていいからおれないようにしてくれ。
 風合いの葡萄酒でも鬱積があっと声を上げ。向かい風でも無責任な可能性を地図記号にみたけれど、道徳の配置を取り違えたものが、次から次へと ねずみ講と呼ぶ。
 正座した淡雪の摩擦音は かざりたいきもちがある。無機質なCodeの先は紅色の臥房まで、正午の頁は路頭に迷う仕組みである。こじらせた玉虫色の脳内で暁のハ音記号を蒔いたユマニテといえ。
 むすめの手もとに沈んだ行は処分された。ときに視線をとめた。楽天家の契約書ではないけど迂闊に切り出せない/タイミングは。すいぎん色に曇った空に 一刻も早く修正された手本に 幼児語のビラを疑ったとおり

 すいません
 たちまちのうちに
 玻璃でさえずりをばらまいたもので
 (やわらかにおちる)
 しかし空想だけ書き出しと結びの雨に打たれている
 ありきたりの消耗品だ

 真鍮をダウンロードした単語帳は永遠て覗いてから、低く掠れたような猿真似でも、もてはやして涅槃を縫う、暗がりで色もない感じの夢/あやめもわかず
 いまや句読点が波のようにうねる こともなくきえた雨風に(日向の樹を 白骨化した鱗のようにへいきな顔で)つきのひかりが差し込むでしょう。それはきっと全体で暗がりで色もない感じの、まえから
 指で机を叩く、から、まだ舟のさきに萌いだ、初茜、に。なぞらえるようにそう、望みながら襞ばかりを、明るい調子で。正午も首を傾げ 映像はそこでとまり 脱ぎ捨てた山水画の、巷の巡遊には受け皿もなく、
 象ったジュークボックスに震える手で、
 この胸に喉に、標本室まで量産された廃塵がてのひらに
 避けて通るような黒い水たまりが下手くそに描いてあるみたいにおもえ、待ち合わせの後になれば(目覚めがわるい)夜明けでは薄化粧も許せないから。彼方に消え去る。あかがねをつづりあわせ、どこまでも、砂山の背骨から及ぼす壊死ていく、息弾ませ 鏤めれる。思えば繰り返し送り出した文明がある。

 どこか苹果と木の子に振り分けてみる、
 懐かしいニオイがした。溜息ばかりは安堵に近づく

   反応はすまい

 潰れた時間みていた。やわらかな造本は程遠い拠点に まだ、を超えたころ身を焦がす、また間に合うかもしれない。挨拶代わりの戦犯にも基礎を敷く まだら模様の舟が薄い雲の、どんよりとした明かりが、適役は部外者であるから、
 盂蘭盆より雲泥の差。しかしシンメトリで末尾に認め暖炉の前で とるにたらない包みを計算するほど。ほら、ところどころに欠伸を壊す雨、地下鉄に裸足で水没する、さりげなく怠け者の最近は、七支刀よりまたぎ追い打ちを、白色矮星、と女性はにこやかにこたえ、焼くような土、からだきした両腕で鵬翼が、灰色な紙も飾り透く

 減らず口を叩く夢オチと殺伐は似たような速度だし、僅かに満たされた視界が効かなくなる。どこか温暖化したレセプションで影絵するような羅生門に天をすり合わせる。ばらばらの肢体のほころびが目立つだけ きりくちの二点を結んでいた、疲れたような獣がいるのだと知った。
 何のために起きあがって無邪気といえばそれで 飛び上がって咲いていたか 望遠鏡で覗いてみたものの、あしがはやいから 苦痛に震え眠りに撞く、 贋作の蜈蚣の泡をして 憐れなぬくもりは死んだようにヌルく寄り添うのだから、それでさっそく狂いがないのだと理に従うのだ
 取り澄ました印象はなく 混乱を用いた山や谷に咲きむらがる。人混みに落とした 楕円形な葉緑体より。どうやら木の枝の、夥しい数に暇を任せて、いくらか蘇る記憶にしがみついて/戻る/悲鳴が耳について。飛沫づくしの金枝玉葉にダビデと名付けて、

 今、生徒諸君に亜ぐ。

 弾かれたように、呆れては。たぶん言語にもあえない生命線で、オペラ座で
 自由に目覚めればどこか、彗星の魂動をきく、ホルスの目で、波風もない
 突っ立ったまま。氷砂糖の病葉で赤字を雷雲に被せる、振り返って
 
 みれば憑かれたように賑やかで或れ 楔揃いの書生、諸説あり。痺れるような火のような目眩をまとった、ココロがとけていた。そのうちひびわれ、そのうちはち切れる。

化けの皮を剥がす回だ/あんたは 帰りな
 かもしれないことは存在していて、ベットで丸くなって、目をつぶってもなお眠っているんだと今もこうして、NOを奈落に華やぐようなちりおちてしまった花びら。
 やわらかな風がながれ、しらずしらずのうちに染み付いてしまっただけの(足元は川のようだった。)とりえのないたそがれにかけ、古インク瓶に、みせていたゆめしかみないので。

まるでつまらない罪人じゃないか
 空中散歩する  我知らず漂っている。もう どこからが鳥かごの喩えで もたらされた余白を副む御厚意に(生きている)床に伸びていく影のようなもの
 小規模に沈んだ口内に、覚醒した! とも言い出せず――(油紙に火をつけた)いま、淫らな無知が蒼い薔薇を 舌をそよがせて水平線にふつりと消えた。葬の後始末を化け物屋敷に変奏して、

あれはいつのあたしだろう。
 目鼻立ち嘘すぎておもえる、ライトをどこか 儚さと同じぐらい、憧れでは。瀬が記録の尻尾のように履き潰しの顔。得意げに笑っては。やや激しい語気に気圧されておもいなおし 立体という名の懐古を与え あらためて悔しいとみえるようすは。

 日増しにまして引っかかるようになる、なんておおごとよりは濁して立ち上がり、ひんやりと湿っている芽を等分し、わたしは首を傾げ早朝ないた。
 几帳面で小心な感情が気が気でないのだ

 封筒の中身は知らなかった
 冷ややかな顔になり敢えて出ていった
 語彙の音は続いていた

 証明のために覗くと崩れた。そのたびにどこにゆくのだろうか。不審そうにたずねたが/いいや頼んだのだと頷くしかなかった。(なぜ理由もなく・単純に問題なのか。)わたしは確かに見たのだ――押しやられたような声をころしてパッと色づいたのか?
 けれど何一つ変わらない。目があったのだよと、埋めるのだ。と。みい出せないから必要になるのか・知ることによって立証することなのか・これは私の言葉だけではありませんというそれとも……

 覗き込んだだけだった。
 波がふってきて――言葉が漏れたのはいつだろうな

 おまわりにないしょばなしは阿鼻叫喚なら 与えたソラの半分が折れた、やわらかなもの〝真空〟(すべりやすいくだり坂)さながらにうごかない/屈折光で、間に割り込ませ 呪い無垢で 涙ぐましいところが、ものに含まれる部分に あらわれた姿、
 邪魔にならないような結果をログインしてみる。箱にはなにか深海魚がいっぴき溺れていて 解をしらせるそっと手を握る部分。石ころより劣る深層にいつもの朝とおなじく

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きみとわたしのあわいに

海と空に境界などないように
白と黒の境界などないように
あり得ないとあり得るの境界も
きみとわたしの境界も
本当はなにひとつないのかもしれない

そこにあるのは
ただ揺らめく波のようなものだけで

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 3

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『独り言の一人事』

“私”は、きっと

誰よりも強欲で

誰よりも臆病で

誰よりも我が儘で

誰よりも寂しがりで

誰よりも弱虫で

誰よりも面倒だ

だって

貴方を想えば想うほど

“私”は、きっともっと

貴方の言葉が欲しくなる

貴方の声を聞いていたくなる

貴方の傍に“私”を置いてと願ってしまう

貴方の邪魔には成りたくないと祈ってしまう

貴方の心を気にしてしまう

貴方の心のままにと望んでしまう

だから、このまま

ただ想うことにしようと思う

ただ祈るだけにしようと思う

ただ「愛している」と

伝えるだけにしようと想う

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 1

 4

欲しがる

夜の帷に
預け合っている
音のない言葉

裏も表も
思いは伝わり
眠るでもなく

曖昧な昨日の面影
時計の針の精密
静まる枕元

伝わるからこそ
言葉の音を欲しがり
ためらうままに

バレている
心の中で何度も書いた
愛しています

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 4

 6

ジレンマ解決法

にげろ
かべこわい
ゆかこわい
そらこわい
おれこわい
はらのなかがいちばんさ
はらのなかにせなかあずけたい
はらいがいにけつむけたい
いえはあれしかない
そろそろかえろうか

あれあいてない
まえまであきやだった
はらわってはなそうか

あとちょっとのしんぼう
あれがでたらおれはかえる
おおでた
なきさげんでる

あなだ
ここがあなざーすかい
いやここだけ
ああじゅうでんきわすれた
まあいいや
おおはいった
なきさけんでる

おいだすなよ

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 3

 2

ポ…

  老いたねこ ふんづけた蟻 台所で
  あらそう 家族 汗っかき
  壁 それぞれに
  風が なだめに おとずれる
  その頃 寝室で
  月が 敷いた 枕へ
  ポ…
  ポ
  と
  弱音を 吐いた
  あかんぼう

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 5

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宇宙

わたしは見た この世のすべてを

僕は見た この世の神秘を

到底理解できるモノではなく

それ故に人を魅了し人々が求め続けてしまう

それに抗えないのは私も同じ

底の見えない暗闇へと足を踏み入れ抜け出せないまま

その幸せに感じ入っている

私はやっと見つけたのだ 全てを捧げる存在を

この空白を埋めてくれる存在を

その『モノ』のためなら私は



何だってできる気がしたんだ

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 1

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チューリップが咲いた日に

去年 初めて育てた
オレンジ色のチューリップが
咲いた日に

愛犬は旅立った

最後の1週間
ごはんが全然食べられなくて
望みを託して
栄養剤の注射をしてもらいに
病院へ

注射をする前
ふらふらしながら
わたしと長男を
見上げて
頼りなげ困り顔で
ぺっそりくっついてきた

がんばろうね
長男とわたしは
かわるがわるいって
注射をしてもらった

長男が抱いて車に一足先に
連れていき
わたしはお金を払いながら
獣医と話していた
「急変を覚悟してください
もう、だいぶ、、、」
頷くしかなく
無理やり笑っていた

そうしていたら
長男が、大きな声を出しながら
愛犬を抱きしめて
駆け込んできた
「お母さん!先生!
様子がおかしい!
たすけて!!」

愛犬はすぐに
診察室へ



でも だめだった

獣医も肩を落とし
何も出来ず
すみませんと
泣きそうだった

でも
早く家に帰ろう
お父さんに抱っこしてもらおう
愛犬はそれが一番うれしいよ
と泣きじゃくるわたしに
長男が言ってくれた

すぐ連れてかえり
家族みんなで
かわるがわる抱っこして
泣いて泣いて泣いて泣いて泣いて泣いて


チューリップが咲いた日
4月8日だった
春だった
お釈迦様の誕生日だと言われている日

愛犬が旅立った
わたしがそちらに旅立つ時まで
忘れられないだろう

チューリップが咲いた春の日
また会える日をまちわびて

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 3

 1

心の掃除

掃除をしましょう  心の掃除

キュッ キュッ キュッ キュッ 掃除して
人の悪口 消しましょう
キュッ キュッ キュッ キュッ 掃除して
見下す心を 消しましょう
キュッ キュッ キュッ キュッ 掃除して
怠け心を 消しましょう

掃除をしましょう  心の掃除

キュッ キュッ キュッ キュッ 掃除して
感謝の心を 磨きましょう
キュッ キュッ キュッ キュッ 掃除して
優しい心を 磨きましょう
キュッ キュッ キュッ キュッ 掃除して
負けない心を 磨きましょう

心がピカピカ輝けば きっと 幸せ微笑むよ

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 1

 1

孤島の詩

封をして、家を出た。
冷たい風が服の中を通り抜けて体をくすぐっていって、思わず身震いした。
こんな寒さだと、誰も外になんかは出ない。
でも、この時間が特別だった。

誰かのために言葉を綴り、美しく封をして、ポストにトンッと落とす。
この前、丁度教え子から手紙を預かった。
だから私は手紙の代わりに詩を送るのだ。

広い紙に、真ん中にポツンと言葉を置く。まるで孤島のように。
孤島の詩(ことうのうた)。それがいい。
孤島とは、孤独とはまた違うのだから。

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 1

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私は人間であろうか。

私は鳥であろうか。
気ままに空を飛び、あるいは気ままに地に降りる。空を飛ぶということがあたかも当たり前かのような顔をして。
私は埃であろうか。
隅の方に追いやられ、悪者扱いをされ、なんともかわいそうなものであるのかもしれない。社会の欠点として隅に追いやられる姿は、もっともである。
私は時計の秒針であろうか。
馬鹿みたいに時を刻み、社会の動きを一秒単位ですべて決めていく。しかし果たしてそれが楽しいと言えるものだろうか。いや、秒針というものに楽しさを求める人生などは虚しいものなのだろうか。

あるいは、私は人間であろうか。
鳥でも、埃でも、時計の秒針でもない美しさと醜さというものが共存しているものが、人間である。でも、それが私でもある。私は人間である。この世にある、人間である。

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 1

 4

男は、笑っていた。

男がいた。
噴水の縁に腰を掛けながら、ぼーっと空を見ていた。
一瞬、男は手を伸ばしたが、その手は空を切ってまた男の膝に戻った。

男が、こちらをみた。
針を刺すような、鋭く、繊細な目だった。
実際になにか刺されたように、背中がピリッとした。

男は風船を渡していた。
小さい子どもたちがたくさん集まっていた。いつもの噴水の縁で、男は一人一人に風船を手渡した。
子どもたちの笑い声が水に響いた。

男は、笑っていた。
空を掴めぬとも、笑っていた。

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花の名前を

『別れる男に、花の名を一つは教えておきなさい。 
花は毎年必ず咲きます。』

有名な小説家の一節
知ってはいたけれど
身をもって知るのは
あまり愉快とはいえない

穀雨に潤される山吹を見るたびに
『この花が好きなの 綺麗な黄色』
何気なく言った君の声が
鮮明に 蘇ってくる
大事なこともそうでないことも
ごちゃまぜの記憶が胸を刺す
桜じゃないのが 君らしいななんて
あの時はぼんやり思っていた

さよならを言い合ってから
幾度目かの春
忘れてないとも
忘れたとも言えないまま
移ろいゆく天気と
晴明に澄み渡る空に
置いてけぼりにされた気持ちで
いつもの道を歩いていく

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 4

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[と]トマラ

その穴が狂わせる
きっと革新的だった

献身的なまぐあいが破滅的になる
それはきっとボクらが化け物だからだ

理想を見つめる君とないものねだりなボク
憧れられる瞳があまりにも奇麗で、抉り取ったのだ

永遠なんて信じられないけど
君となら体感できる気がする

ねぇ、聞こえてる?
聞こえないよ、脳漿の花が飛び出していって

中途半端同士がくっきりと繋がったんだ
それが愛し合うこと 尊いと胸を張れるんだ

ねぇ、聞こえてる?
声がでないよ、君に言いたいことがあったのに

また君から「おいで♪」って言われたかったな
笑顔の動かない君を揺すってみるけど
これが後悔のない終わりなのかもしれない

ボクの素敵な恋でした

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 2

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まどろみの中で

やめろ
苦い汁をくれ
あの珈琲豆の煎じ汁を

夢に
さ迷い 惑い
酔い潰れ
まどろみが
全てを失わせた
あの あの
大いなる楽を
仏陀が指さした
あの道を

有為の奥山 今朝超えて
浅き夢見し 酔いもせず

苦みが駆け巡り
もう酔いはしない
目が覚めた

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 4

2025年大晦日

除夜の鐘いまも貝殻生れつづけ
↓推敲案
鐘凍る生まれつづける虚貝

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うぉううぉう

弟に金を借りにいくのに
ちょうどいい時間帯の電車は

縁がきれかかっている
親友に金借りる時の
引き出せる額の上限は

昔の彼女に金を借りる時の
どうしようもない
睾丸の汚れ具合は

自動販売機の釣銭口にも
小銭が残らないこの街は

おれのつみおれのつみおれのつみおれのつみおれのつみおれのつみおれのつみおれのつみおれのつみ、は、は、は、は

うぉううぉう、うぉううぉううぉううぉう
うぉうう、うう うぉう うぉう う、う、う、う、う、う、ううっ、う、う、う

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 3

 2

つめたい


ディズニーランドの入場口、
すぐ入ったあたりで心臓が止まってしまった
のであれば
もう少し泣いたのかもしれない

つめたくなったあの人を見て
泣かないわたしはつめたいと思われ、
じゃあお前らはあたたかいのかよ
と思う

脳でよう考えんと
反射だけで調子よく泣けるお前らは
そんなにえらいんか?
根拠なく堂々と正義って書き殴れる
狂った暴力の塊のような
プラカードみたいな顔しやがって。
あったかさ、やさしさでいうとこの、
お前らのどこにアンパンマン感があるんじゃ。
せいぜい、
ヤマザキパン工場から出直してこい
お前らにはまだアンパンマン工場は
五十年、早すぎるからじゃ
なにが、はとこのよしおですう
この度はご愁傷様ですう、ぐすん。じゃ

だれやねん。
そして、だれたち、やねん。

つめたくなったという事実だけで
泣けるお前らになにがわかる
つめたいわたしと
つめたいあの人のなにがわかる

知らん子供が退屈そうにしている
いい子に育てよ
スイッチ、押せば泣くのなんて簡単じゃ。
と、
いともたやすく言う大人になんかなるなよ
いともたやすく理解出来ていても
泣かずにいる大人にもなるなよ
損するばかりだから。

ディズニーランド、行こうとしてたらしいな
わたしの知らん子と
わたしの知ってる女と。
ディズニーランドに行く三日前に死亡が確認されたらしいな
わたしが下から見上げたマンションの一室で

悪巧みしよるからや
神様が死亡フラグや、って思ったんじゃ
今だ、と思ったんじゃ
わたしみたいな顔して。
でもやっぱりディズニーランドの入場口あたりでないと、わたしは泣けんな。

わたしは
格別、つめたい人間じゃないわ
外野の陰口がわかるくらいには
つめたいだけじゃ。
あんたほど、つめたくないわ
しょうもな
ただ、泣けないだけじゃ、あほくさ。

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忘失のノクターン


 迫り来る夜の帳に、細やかな音色が絡まって。世界が穏やかな眠りに向かい、重い瞼を閉じてゆく。古びた鍵盤を撫でる指は怯えるようにたどたどしいが、奏でられる唄は優しさに満ちていた。

 古ぼけた家の扉を押し開き、祖父が駆け込んだ。
「ああ、酷い。あんなに晴れていたのに、どうしたんだ一体」
 そう呟いた彼の解れた服は、バケツを被ったように濡れている。
「雨ですか?」
「ああ、酷い雨だ」
 祖父はそう言ったっきり、日課である夜の散歩を中断された事にふて腐れた。床へ垂れ落ちる水滴から視線を戻し、再び小さなオルガンに指先を落とす。

 ひとつ、ひとつ、音が零れ落ちてゆく。やがてそれが、夜の縁を辿る。

 いつからだろう、夜が未知のものでなくなったのは。いつからだろう、暗闇に焦がれるようになったのは。いつからだろう。この静寂を愛していたのは──。

「またノクターンを弾いているのだね。もう、そんな季節か」
 いつの間にか背後に立っていた祖父が、柔らかな声音で問いかけた。答えの代わりに、微笑んで見せる。祖父もまた微笑むと、子供にするみたいに髪に触れるだけの口付けを落とした。
「ゆっくりお休み、エリス」
 もう子供ではないのに。その文句も、祖父の背中には届かない。

 再び訪れた静寂の中、夜は今日も優しく、エリスを包み込んでゆく。あの日から変わらず胸を叩く旋律に身を委ね、エリスは誓うように瞼を伏せた。

 貴方に捧ぐ。忘失のノクターン──。


  海は今日も穏やかに、そこに佇んでいる。滑らかな水面を滑る風が木々に寄り添い、小鳥たちは揃って唄い出し、空が薄っすらと白み始め、寝坊助の太陽がようやく水平線に顔を覗かせると同時に、この小さな港街もまた緩やかに動き始める。

 カーテンの隙間から差し込む光に導かれて飛び出した猫のマリーに続いて、エリスも布団の中から這い出した。後ろ髪を引かれることもなく、階段を駆け下りる。キッチンでは寝癖を遊ばせた父が、母とキスを交わしている所だった。
「パパ!」
 勢いをそのままに飛び付くエリスを受け止め、潮に焼けた顔からとろけた笑みが零れ落ちる。
「おはよう、エリス」
 父は気さくな笑顔と美味しい料理で街の誰からも好かれる、エリスの一番の自慢。
「今日もちゃんと学校に行くんだよ」
「はあい。パパも気を付けて」
 弾んだ声でいってらっしゃい、と叫ぶエリスに背中で手を振って、父は日の出と共になだらかな坂道を遠退いて行った。

 小高い丘の上から、エリスは髪を揺らした風を追いかけて視線を伸ばした。海辺にひっそりと息づくこの街が、まるごと手の中に収められる場所。うねうねと走り回る紅い煉瓦道に、片手で数えられる程度見受けられるトラックの姿。まだ薄すらと白み始めたばかりの蒼い靄の中に霞む、灯の落ちた窓。てんてんと散らばる暗闇に、エリスは小さく身震いをした。

 この街はエリスが産まれた時よりも少しだけ、寂しくなった。戦争があった。ほんの少し前のことだ。エリスはまだ小さくて、覚えてはいないのだけれど、酷い戦争だったと、近所のお爺さんが涙ながらに教えてくれた。海の向こうでは生物兵器が使われて、沢山の命が重い苦しみの中で燃え尽きた。

 今日も遠くに見える浜辺では、大量に打ち上げられた魚の処理が行われている。風向きのせいで、甘い生臭さが今日はエリスの鼻先までくすぐっている。
 この街自慢の漁港。活気に満ちていたそこは、今では誰も立ち入らない。帆を畳んだ漁船だけが、いまだ波に煽られ震えていた。

 変わりゆく故郷を見詰め、エリスは息苦しさに鼻を啜る。どうして、僕たちはこの愛する街と、愛する人とお別れしなくてはいけないの──エリスにはまだそれが分からない、十三歳の春のことだった。 

「どうか今日もパパが無事に帰って来ますように」
 教会でいつものようにお祈りを済ませ、エリスは勢い良く走り出した。教会から学校までは、走ればぴったりつく時間。けれど向かった先は学校ではなくて、裏手に建てられた小さな小屋。昔は牧師の家だったそこに、もう主はいない。代わりにエリスが最近手に入れた小さな秘密が隠れている。

 随分と風化した建物から微かに聞こえるピアノの音色が、エリスの小さな胸にあいた隙間を埋めてゆく。我慢出来ずに駆け込むと、古びたオルガンの前に、頼りない背中がちょこんと腰を据えていた。
「ティルダ!」
 高い声に振り向いた顔が、嫋やかに歪む。
「おはよう天使君。今日も早いね」
「もう起きて良いの?」
「ああ、すっかり調子も良くなった」
 君のお陰でね、と付け足して、ティルダは軽やかな目配せを送った。けれどその顔には、血が通った様子はない。青褪めていて、唇も赤みを消していた。エリスは急に落ち着かなくなって、急いで彼の隣に腰を下ろした。
「何を弾いていたの?」
「夜想曲さ」
「夜想曲?」
 エリスが問い掛けると、ティルダは再びゆっくりと指を踊らせた。白い指先は、労わるように鍵盤を滑る。奏でられる音さえも、どこか湿った温もりに満ちたものだった。
「静かな、夜の唄──」
 確かにこの街の夜は静かだけれど。エリスにはどうしてそんなものを曲にするのかよく分からない。その疑問を察したのか、ティルダは鍵盤を撫でながらもエリスに視線だけを向けた。
「夜は嫌い?」
「……分からない。だって、夜は寝るものだろう? この街の皆、太陽と一緒に暮らしているから。だから、夜がどんなものか分からないんだ」
「そっか」
 ティルダは少しだけ俯いて、横顔で微笑んだ。

 エリスにとって夜は、未知のものだった。それにまだ、形なき存在に言いようのない恐怖を感じる年頃。仕方がないことだった。

 二人はしばらく隣り合って座りながら、ノクターンの調を聴いていた。夜に想いを馳せながら。最後の一音の余韻さえ終焉した頃、ティルダはいつもの不器用な笑みでエリスに問いかけた。
「この街が好きかい?」
 その問いに、小さな頬が緩む。
「だって、ここは僕たちの街だもん!」
 そう自分で言いながらも、エリスの胸にまた小さな隙間があいた。
「でもね、もうすぐ死んでしまうんだって。最近大人たちが皆でそう言っているんだ」
「……死んでしまう?」
 エリスに向き直ったティルダの瞳には、驚きではない何かが滲んでいた。まだ幼いエリスの口から漏れた、死という言葉が彼をそうさせたのだろう。
「うん。毒がね、海を渡って来たの」
 ティルダは大きな瞳を微かに伏せて、寂しそうに俯いた。
「……そう。それで、エリスも街を出て行くの?」
 この街を愛した父の、打ち拉がれた背中がエリスの瞼の裏に蘇る。海を越えた遥かを睨み、震える肩を。
「ううん、僕、パパとママと一緒にいる」
「でも、死んでしまうのだよ?」
 エリスにはやはり、まだ死がどういうものか、よく分からなかった。死もまた夜と同じ。未知なる恐怖でしかない。
「命は大切にしなくっちゃ」
 続いたティルダの言葉は、どこか空惚けた響きを持つ。どうしてだろう。彼が、エリスとは違う瞳をしていたからかもしれない。それが怖くって、エリスは無理矢理に笑みを作った。もう、その話はしたくないという意思を込めて。
「そんなことより、ねえ、ティルダはどこから来たの?」
 寂しげに伏せっていた瞳を遥かへ向けて、ティルダは投げやりに微笑んだ。
「遠い、遠い所」
 エリスはその視線を追い掛けて、海の向こうに生きる人々を想った。 

 この小さな秘密の関係は、数日前に教会で倒れていたティルダを偶然助けたことから始まった。医者を呼ぼうとするエリスを、ティルダは痩せ細った腕で必死に止めた。
「大丈夫、大丈夫だから、誰にも言わないで」
 彼がしきりにそう言うものだから、エリスも従うしかなかった。外傷があるわけじゃない。だからエリスも最初は空腹から来るものかと思っていたのだけれど、ティルダの容態は一向に回復を見せない。もしかしたら、重い病を抱えているのかもしれない。
 けれど、聞くことができなかった。出会った瞬間からティルダはもう、幼気なエリスの友達になっていたから。

 彼は物知りで、穏やかで、そして不器用な笑みの中に、何か大きな違和感を持つ人だった。

 二人はその後も、早朝と、そして学校を終えた後、陽が沈むまでの逢瀬を重ねた。
 そんな、ある日だった。

 今日もティルダは夜に想いを馳せながら、短いノクターンを繰り返し弾いている。エリスはその隣でぼんやりと、優しい音色に包まれていた。
「もう、陽が沈んでしまうね」
 不意にぽつりと呟かれた言葉は、聞こえなかったフリをする。太陽とのお別れの時間。それは、二人のお別れの時でもあったから。ティルダはこの街で生まれたわけではなくて、だから、同じ時を生きてはいないことをエリスは知っていた。ティルダは太陽が眠りにつくとき、一体何をしているのだろう。
「ティルダも、おひさまと一緒に眠るの?」
 エリスの唐突な問いかけに、古びたピアノの唄は止んだ。
「僕は、眠れないんだ」
「どうして?」
 どうしてか、その答えをくれないままに、ティルダは小さく微笑んだ。だけどその後の言葉は、彼が生きて来た道を示しているようだった。
「エリス、今夜、散歩をしないかい?」
 彼はやはり、あの太陽と共に生きてはいなくて、だからエリスはとても悲しくなって、叱られることもいとわずに頷いた。
「しよう、散歩!」
 精一杯笑って見せることで、エリスは未知なる恐怖を退けた。

 この街の夜は、とても深かった。だが吸い込まれてしまいそうな闇の中、誘うように唄う波の音は、ティルダの奏でるノクターンの調ととても良く似ている。時折闇の中で瞬く光は、灯台守がまだこの街を愛している証。

 足元ばかりを灯すカンテラだけが、ゆらゆらと景色を泥ませて。その橙色が落とす影を、エリスはじっと見詰めながら歩いていた。
「怖いかい?」
 首を振ってはみたが、気を抜けば泣いてしまいそうだった。もし、ティルダが悪戯心でエリスを置いて走り去ってしまったら──そう思うと、叫び出したい衝動に駆られた。

 震えるエリスを見て、ティルダは愛おしそうに笑った。
「こうしていようね」 
 骨張った掌が、小さな右手をそっと握り締める。その温かみがとても心地が良くて、エリスは思わず指先を絡めて強く握り返した。途端、頭上からくつくつと笑い声が降った。見上げると、大きな瞳を惜しげも無く細め、彼はとても愉しげに笑っていた。
「恋人みたいだ」
「恋人?」
 首を傾げるエリスに、ティルダは小さな目配せをする。
「こうして手を繋いで、唄うようにキスをするの」
「パパと、ママみたい!」
 エリスは嬉しくなって、それまでの恐れが嘘のように、夜道を飛んで跳ねた。手を繋いでいるから、ティルダも一緒になって飛んでいた。

 二人はその晩、手を繋ぎながらあてもなく歩き通した。何か会話をするわけでもなく、目に付いた全てを言葉にしては笑って。

 エリスがあれ程恐れていた夜には、満点の星空と、波の唄うノクターンと、そして、暖かい男の掌があった。その全て、刹那的な煌めきと、どことない寂しさを引き連れていて。けれどエリスの記憶の中のそれら全てが温かなものだった。ティルダがずっと、この手の中にいたから。

 愛おしかった。消えてしまいそうな横顔を密やかに見詰めること。視線が合った瞬間に跳ねる胸。ティルダの微かな笑い声──あの夜に存在する全てが、エリスは愛おしくて仕方がなかった。 

 エリスはその日から夜毎に窓から家を抜け出し、夜を感じるようになった。勿論、ティルダと手を繋いで。ティルダはここに来るまでの話はしてくれなくて、エリスも聞けなかった。今、ここで生きている彼は、確かにエリスと同じ時を生きているから。
 知りたくはなかった。街の外の、悲しい戦争の傷跡を。今はただ、この愛しい時を大切にしたい。

 二人が夜を飛び越えるたびに、街は寂しくなってゆく。ぽつりぽつりと、灯を落とすように。

 けれど、それも長くは続かなかった。こんな風に二人が関係を深めている一方、ティルダの身体は痩せ細ってゆくばかり。蒼白かった顔も、より透き通るように濁っていった。

 そして遂に、藁を敷いただけのベッドから、立ち上がることさえ出来なくなった。もちろんエリスは医者を呼ぼうと彼を説得しようとした。ティルダはやはり、頑なにそれを拒んだ。
 それならばと、彼に内緒で連れてこようともした。けれど足が竦んでしまって、駆け出すことができなかった。ティルダが苦しむことを恐れるのと同じくらいに、彼がまた遠くへ行ってしまうことが怖かった。
 きっとティルダを蝕んでいるものは、普通の病気じゃない。こんな小さな街ではとても治りっこない。エリスは、彼の好きなようにさせてあげることが幸せと、どうにか折れそうな心に言い聞かせていた。

 刻一刻とティルダが夜の先へ、エリスの知らない場所へ、真っ直ぐに歩んでいることを、本能では知りながら。

 もう、ノクターンは聞こえない。夜が抱き込む小屋で、エリスは落ち窪んでゆく瞼を見詰めながら、何もできずに項垂れていた。
 紫色の唇から、懐かしい唄が溢れている。彼が毎日弾いていた、優しくて、切なくて、美しい夜想曲。ティルダの顔は、立ち上がれないことなど気にも留める様子はなくて、その蒼白な色とは相容れないように晴れ晴れとしていた。エリスは、そのときに気付いてしまった。ティルダが何を求めていたのかを。だからそんな彼を見ていることが悲しくって、我慢が出来なかった。

「命は大切にしろって言いながら、どうしてティルダは生きようとしないの。ねえ、どうしてだよ!」
「何を言っているの、エリス」
 彼は頬を叩かれたように目を丸くして、慌ててエリスの髪に手を伸ばした。その指先の白さに、涙ばかりが溢れる。
「僕、分かるんだ。この街に残ろうと、ここでこの街と一緒に死のうとしている大人たちと、ティルダは同じ顔をしているもの……!」
 それが彼の望みなら、受け入れてあげなくてはいけない。なんて、大人にはなれなくて。エリスは声を上げて泣いた。ティルダはそんなエリスに困り果てた様子もなく、ゆっくりとゆっくりと上体を起こし、細い吐息を吐き出してから微笑んだ。
「僕は、死のうとしているわけじゃないんだよ」
 そんなはずはないのに。そう言おうとするエリスを、深い瞳が諭していた。
「ご覧、エリス」
 ティルダは震える指先で、ボロボロのシャツのボタンをゆっくりと外してゆく。小さな唇から吐息が漏れる。ボタンが弾けるそのたびに、ぶつん、ぶつん、と途切れるように。

 全て外し終え、ティルダが寛げた布地の向こうには、確かな絶望が息づいていた。

 肉が全て削ぎ落とされてしまったように、骨の形を露わにする皮は浅黒く、シミのような紫色の斑点が、幾つも幾つも痩せた裸身を侵していた。彼が息を吸うそのたびに、肺が苦しそうに震えていることさえ手に取るように分かる。まるで、砂浜の魚のよう。エリスは彼の命を目の当たりにしたときに、涙さえ、止まってしまった。 
「僕はもう、幾ら願ったとしても永く生きてはゆけないんだ。それはどんなに目を逸らしたとしても付いて回る、現実なんだよ」
 ティルダはそう言って微笑んだ。諦めでも、投げやりでもなく、朗らかな微笑みだった。彼はもう、何もかもを受け入れていた。けれどやはり、どこか歪で、秘めた思いだけがその瞳を深く染めている。

 肉の削げた指先で隠れてゆく彼の命から目を逸らさぬエリスの頭上、彼はまた、撫でるような声を漏らした。
「僕の世界はね、ずっと、ずっと灰色の壁に囲まれた檻の中にしかなくて。だから、ここに来たの。最期に、自分の罪を見詰めたくて」
 でもね、と囁くと、ティルダは掌で、痩せた顔をすっぽりと覆い隠した。
「夜になるとこの手が震え出す。怖い、怖い、怖い……」
 震える指先が、薄い瞼を歪める。
「君と仲良くなればなる程、この街が好きになればなる程、恐ろしくて堪らないんだ……!」
 エリスには分からない。彼が何を恐れているのか。
「エリス、僕はね、悪魔なんだよ。償えぬ罪を犯した悪魔の癖に、ひどく臆病で、卑怯な男なんだよ」
 けれど、どうしてだろう。そんな彼を、愛おしいと感じた。エリスは怯え切った瞳から零れ落ちる涙を残らず拭い、震えるその身体を抱き締めた。彼の痩せた身体は、子供の腕でも抱き竦められるくらいに、小さかった。

 まもなく、夜が明ける。この静かな闇が、切り裂かれてしまう。それがどうしてか寂しく思えて、エリスは馴染んだ掌を握りながら、彼の乾いた頬を撫でた。
「まだ怖い?」
 ティルダはひび割れた唇を緩やかに持ち上げて、小さな目配せをくれた。
「もう大丈夫。君が、手を握っていてくれるから」
 ずっと、ずっと握っていてあげる。そう言いたかった。でも、言えなかった。
「夜が、明けるね」
 光の刃が二人の濡れた頬を貫いて、その痛みに思わず瞼を閉じる。握った掌に少しだけ、力がこもった。
「僕のお願い、聞いてくれる?」
 いっそう弱くなった声を必死で受け止めて、エリスは何度も頷いて見せる。
「僕が旅立つ日が来たら、一度だけでいい。ノクターンを弾いておくれ。僕が、迷ってしまわないように」
「きっと、きっと弾くよ、必ず!」
 エリスがあまりにも大きな声を出すものだから、ティルダは可笑しそうに笑った。ゆっくりと明けてゆく世界の中で、エリスも一緒になって笑った。

 小さな秘密と交わした、小さな約束。エリスはその形なきものが、とても愛おしかった。

 それからすぐに、エリスは祖父の家に引き取られることとなった。そして時を同じくして、生物兵器を生み出した有名な博士の失踪が報じられた。見出しには、「悪魔の兵器を作った男、責任逃れ逃亡か」と大きく書かれていた。

 エリスは目に付いたその新聞を、全て燃やして歩いた。

 雨音が屋根を叩く。エリスは手紙を書くように、古ぼけた鍵盤をなぞる。

 ティルダ──僕はね、貴方に出逢って知ったことが沢山あったよ。夜が怖いものではないこと、それでも朝は、待ち遠しいものだということ。二人で歩む道の愛おしさや、繋いだ掌から気持ちが伝わること。あれが、愛であったことも。そして何より、大切な人の背中を、唯々見送る寂しさ。
 僕は貴方に、何を教えてあげられたかな。きっと何も教えてあげられなかった。だから僕は今宵もまた、貴方に捧げるノクターンを奏でるよ。共に背負った罪も愛も、決して忘れぬために。

 波間を漂う海鳥のように。岩礁に砕ける波のように。鼻先を擽る潮風のように。疲れ果てた旅人の、深い眠りに寄り添うように。僕は祈る。

 貴方のゆく道が、穏やかであれ──。 



 了

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消えたあと

僕は消えたあと、どこにいくのだろう?
いまはただただふわふわと。
空の美しさに目を奪われているだけなのに。
僕はこの空にぽつんと置いてある太陽から光を浴びて
キラキラと光っている。
あ、だれかみてる。
僕に手を降っている。
小さい子だ。

あっ

ポンッ

「あ、ママ。しゃぼんだまがとってもきれいに弾けたよ」

あぁ、僕は消えるときもとってもきれいなんだ。

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めぐる

春は  
私に動き出せというようである

夏は  
暑さに耐えればえらいというようである

秋は  
実りの多くを収穫しなければならない

私は、冬が好きだ

お風呂が楽しみになるからだ

冬は  
私に期待しない

私も  
冬の間はゆっくりできる

しかし、私は気づいている

春が来れば  
私もまた  
変わらなければならない

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『余白』

渡したい想いは、幾らもあるのに

当て嵌まる言葉は、幾つもなくて

あらわす言葉を探しては

「何かが足りない」と解けていく

それはきっと

「独り善がり」だと知っているから

渡したところで

貴方にとっては、幾らか場所を取るだけで

特別何かと成るモノではないのでしょう?

知っているから、探す言葉も曖昧で

填まる言葉は、象に成らず熔けていく

それでも

そうだと解っているからこそ

何処か朧気な貴方という人が

「確かに居る」と伝えたい

“私”にとって『とても愛しい貴方』が

『此処に確かに居るのだ』と

そう伝えたいと

願い祈ることを

貴方は許してくれるだろうか?

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フォッカ


350円で満足できるって実績がほしかったから
その日ロータリーは草原になった

停車場には屋根があり わたり廊下に似ている
外周をひとめぐりして 地獄ゆきのバスが出る



雨の多い月だ
しがつは春雨が
ごがつは五月雨が
そのつぎは梅雨
台風と スコール
しきりによこすのに

————さりげなく傘を置き草原へ走りでる、この手をかわかして。



ロータリーの草原にくるくるとまわろう
ここだけがよく晴れて
もぐらとねずみが手をつなぎ駈けていくのを見ることができた
かれらはサイゼリヤでお茶を呑むだろう
わたしが望むなら

350円で満足できるってわかったから
わたしはまだバスに乗らなくていい
車体が外周をめぐるとき
草原のまんなかでゆっくりと踊ろう

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拝啓、中島みゆき様 vol.5 わかれうた


   ♪途に倒れて誰かの名を
    呼び続けたことがありますか〜


ここのフレーズ
みゆきをあまり詳しく聴いたことがなくても
知ってる人は多いと思うのですが


いろいろ誤解されがちなフレーズだと思うんですよね


きっと多くの人が「道」をイメージしちゃうと思うけど
歌詞を見るとそうではなくて「途」なんだと


つまり、物理的に道路に倒れ込んで誰かの名前を呼び続けている
のではなくって


恋人にわかれを告げられた女性が
人生という途に躓き、嘆き悲しみながら
それでもなおまだ
誰かの名を呼び続けている


そういう歌なのだとわたしは解釈してます


物理的に道に倒れて誰かの名を呼び続ける女性がいたら
たしかにコワイと思うのは致し方ないし
あの人、大丈夫かな?と
眉をひそめるか、心配になってしまうところですが


そういう解釈をしてみるとまた
この歌の中の女性が、違って見えて来たりしませんか?


みゆきの描く、特に失恋ソングの中の女性って
淋しがりやだけれども、強がりで甘えるのが下手ッピな


本当は助けてほしいクセに
ついつい、大丈夫よ、と云ってしまうような
不器用さがある気がするんですね


裏を返せば、男に媚びない、媚たくない
という、社会的に自立している、というか
闘ってる女性像、というか


わかれうた、でもうひとつ注目なのが
男性側の身勝手さ


   ♪わかれの気分に味をしめて
    あなたはわたしの戸を叩いた


わかれを切り出しておいて、なお女性の部屋へやってくる男
ここに、なんというか
この女は、泣いて縋ってくるに違いない
といった男性側の、男性優位的な想いが透けて見えるような気がして


だからこそ、余計に
女性は、大丈夫、と云ってしまったりするのかもしれない


なんて


男女関係、人間関係の複雑さ
むずかしさを


わかりやすく、的確に表現されている


そんな一曲であることは、間違いないですね
















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批評・論考

漫画家志望の初老男

漫画家を目指して 30年
職場じゃ最年長 still part-time / no fame
昼メシ 卵焼き 冷めた弁当
腹へっても鳩に give / no gain

水道がついに止まる日常
うすっぺらな感覚 軽い異常
テレビは通常 でも部屋は異様
息の根 止まりそうな low tension / slow

週刊誌 めくるその指先
初老の男 無言のまま立ち
去年の日付 色あせた文字
なのに初見の話ばかり

知らない事件 知らない名前
読んだはずなのに 記憶がない
ページの奥に 残る気配
new or old? あいまいな境界
指名手配犯 似てるらしい
似てないらしい still close / maybe

写真の目が こちらを見る
見慣れてるはずの この顔
ページを閉じても 残る視線
消したはずなのに 消えない scene
逃げているのは どっちだろう
考えすぎて 笑ってしまう

似てる 似てる まだ似てる
閉じても 開いてる still 見てる
去年 今年 どっちでもいい
名前はどこにも 書いてないのに

うすっぺらな感覚 剥がれる感情
残るのは音と わずかな残像
初老の男 ページを閉じた
閉じたまま end / no reaction



この詩を歌詞にしてsunoで作曲した HIPHOP Verはこちら↓↓↓
https://youtube.com/shorts/_ureypuWYW4?si=ipZAnTRhW0D92UUH

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ひとり立ち

私の足元のねばっこい影
ずっと取れやしない
洗っても、擦っても
影はずっと
足裏を掴んで離さない

大変だったろうに
二つの命を抱えて
毎朝、毎朝
自転車を漕いで

もう私はかえりました
だから離れていいんですよ
そう伝えても
影はひっついたままで
すがりついているようで

ずいぶん背中が、小さくなったなあ
普通、時間が経てば、影は伸びてゆくのに
あなたはこんなに
弱く見えたっけ

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にんげんっていいな

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36くらいでいいや
「にんげんっていいな」

ごめんほとんど聞こえなかった。

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人間

太古の昔から、戦争の神様はいたけど
反戦の神様はいないから
戦争に反対する人間を讃えよう

悪と戦うのは正義だとか
防衛は侵略じゃないとか
そんなことを言う神様を見捨てて

良い戦争とか、悪い戦争とか
敵とか味方とか関係なく
戦争に反対する人間を讃えよう

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見上げた空に溢れるもの

ありがとうの心はね
ありふれた景色のなかに
あふれてる

目に映るもの
愛にあふれて

感じた心
うれしくて

やさしい気持ち
に満たされて
あふれていくから

かわいくて
やさしくて
あたたかい心のなか

言葉にのせて

大切なもの
あげたい気持ち

あふれてくる

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あい・し・あう

いみ
     を
        ことばで

まいごに

 するなんて、 

 
ことばが


  いみを

かさまし したり


            まどわすのも

め ん どくさい ね



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むち

生きてよ
せのじゅんにならんだときから
ひとは
つまらないものだと
知ったはずだよ

やさいをたべて
にくをたべて
たまごをたべて
てをあわせたら
まるで葬式みたいなのに
きせつの帳尻を
あわせているだけ

だいじょうぶ
だって わかいから
うらやましいわ
だって わかいから
あおくても
つめたい錆の
においくらい
ねむれないよるの
さびしいよふけに
知ったはずだよ

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2026/04/05 日常詠 Shuraxa Lost Temperature Release Tourを観て

https://i.postimg.cc/d1xH5kV8/IMG-20260405-184344.jpg

武田理沙
鍵盤や葱へ刃のあまたたび

山本達久
春の闇うごくシンバル瞬けば

中尾憲太郎
じむぐりの耳道這ひずる重力場

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