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2021/01/01 12:00:00

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投稿作品一覧

持続と継承のアウラ

元彫刻家「なあ、お前いつまで掘り続けるの?俺はもう辞めたぜ。全然完璧な作品に仕上がらないし、全然終わらないし、お前もいつまでやるの?」
彫刻家「んー、いつまでって、やり続けるも何も勝手にそうなってしまうんだよ。俺だって納得のいった例なんて無いし、上手く出来た例なんか無いし、完璧な出来に仕上がった事もないし、そもそも完全や完璧なんてこの世に存在しないと思っている。けど、それでも尚、永遠に到着することの無い謂わばアキレスと亀の様な、そんな絶対に永遠に辿り着く事のない線の上をずっと歩いてしまうんだ、最近になっては人間は何世代にも渡り、歩き続けるから彫刻もとい芸術と云うのは永遠に終わらないんじゃないか、とさえ思ってしまうんだ。そう考えると俺のこの彫刻も取るに足らない些細なものだけどそれでも尚、俺は象り続けてしまうんだ。」
元元彫刻家「やっぱそう云うもんなのか」
彫刻家「そう云うもんなんじゃない、多分」

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【短歌】親愛なる冬のみなさま【まとめてみた】

銀紙にくるまれた冬をとりだしてほうばる前にすこし眺める




透明をかさねてかさねて神無月こんないろでも光になるのか


夏掛けにいっしょうけんめいもぐりこむコタツごっこと音も無い窓


濡れ鼠かわかしたので眠りねずミルクのふとんにくるまって尚


おや中尉あなたでしたかこの冬を鏡のように磨く役目は


十二月なにを撮っても美しく星の採取に役立ちました


枝ぶりは丑三つ時ならシカのツノ冬の昼なら空の花束


将来は研究しようと思い立つ無垢なそらほど寒いふしぎを


碧すぎて夜はとうとう紅くなる電信柱へ薪をくべよう




終わり際は初冬とおなじ匂いみたいこんな鼻ではわからないけど

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三度目のお願い

今日はあったくせしなかった。
最初は相手から言ってきたのに今じゃその体温が頭にこびりついて後悔しかしない。
照れながらも言ってくる様が可愛かったのにこれじゃ恥ずかしい。
そんな事もあれば遅刻したお仕置きとして言ってみれば良かったと後悔が混じる。けれど言ってしまった時、引かれないかの心配と言う言葉よぎり、心を止める。
いっそのこと会うたびに言ってくれればいいのに。

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SHINKA!!

始まりのシグナル 
瞬間にシンク
深層のインナー 
心火がインプット→Lgniter

さぁ次は真価のヒントを探すイントロ
限界のラインもハイにして一歩
迷ってもワンダー 
段差もダンサー
転んだ瞬間 
条件反射でランナー
不安がバンバン鳴ってもガンガン
突破の感覚掴んでジャンジャン
曖昧な先々もライトでライド
迷彩のメンタル
一斉解体してファイト
正解の形は毎回違う
でも大体“今”が最大値だろ

SHINKA!! 
心火が進化して
深化して真価出して神化級
LaLaLaLaLaLAで脳内ジャンプして
限界ラインを一瞬でブレイクして
SHINKA!! 
世界をアップデートda
僕らの進化は止まらねえステート

昨日の失敗 
今日なら失速しない
切り替え一瞬 
気分は疾走モード
心の深海 沈んだ真意
拾って再起 神域ライン
限界の前で前例破って
前進宣言 全然OK
天井なんて幻想で
連勝モードで前方へ
震えた胸がメロディー連搬
心火の温度で全部転換
僕らの進化は永遠拡散

SHINKA!! 
心火が進化して
深化して真価出して神化級
LaLaLaLaLaLAで脳内ジャンプして
限界ラインを一瞬でブレイクして
SHINKA!! 
世界をアップデートda
僕らの進化は止まらねえステート

ここから先は加速のセクション
雑音まじりの過去もコレクション
弱さも強さも全部インフュージョン
混ぜて混ざって生まれるレボリューション
心の奥の奥の奥で
ずっと燻ってた火種が呼んでる
「もう測定予測値内を反復横跳びするのは飽き飽きだろ」と

SHINKA!! 
心火が進化して
深化して真価出して神化級
LaLaLaLaLaLAで脳内ジャンプして
限界ラインを一瞬でブレイクして
SHINKA!! 
世界をアップデートda
僕らの進化は止まらねえステート

上限超過
まだまだこれから
そう僕らはずっとUpdater



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やさしいカラス

朝方から降り続いていた雨が上がった夕方近く、公園の傍の車道をカエルが歩いていた。
公園から迷い出て来たガマガエルは、行きかう車にお構いなくゆっくりとマイペースで歩いていく。
しかし何を思ったか、歩道に向かっている足を車道の中央へ方向を変えた。

このまま行けば間違いなく轢かれてしまう。
人ではなくても、車に轢かれるのを見るのは嫌なものだ。
けれど助けようにも、グロテスクなガマガエルを掴むような気にはなれない。

見るのを止めようにも、一度気になったものからなかなか目を逸らせずにいると、一羽のカラスが飛んできた。
一声鳴き声を上げてから旋回し、ガマガエルの脇に降りた。

そして、ガマガエルの車道側を寄り添うように歩き始めた。
車もカラスが目に入り、少し避けて走っていく。
ガマガエルは、カラスに邪魔され方向を歩道側に変えた。
カラスはガマガエルが進むたび、自分を障害にするように歩道の方に先導して行った。

やがてガマガエルが歩道へ上がると、カラスはまた鳴き声を一声上げ、空へ飛び立っていった。

ゴミをあさり、人を威嚇し、真っ黒なその身体。
カラスにいいイメージを持つ人はいないだろう。
人間にとってカラスは敵だが、それは彼らにとっても同じことだ。

しかし自分たちの生活の邪魔をすることはないガマガエルは、カラスにとって味方なのかもしれない。
外見ワルそうなやつでも、付き合ってみれば義理に厚くいい奴だというのは人にも当てはまる。
カラスへの印象も同じだ
彼らにだって言い分はあるだろう。

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あさ

めがさめてないている

なにかに
おいかけられていた

めがさめて
つめたいくうきのなか

まだ
ゆめのなか

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ぎんいろに、なみうって

むねの波間の 小さな月は
風がふいたら 水底のように
ひかりの網目で わたしを包む

夜の優しさ 湛えた月は
まだほどけずに 胸の底

わたしを包んだ銀砂の布は
午前の陽光 透かしの星々
夜の光は そろっと裏に回る

静かな確かな 銀の月
わたしを照らした 冬の月
桜の波間に 見る月は
波打つ色も 胸染めて


いましばらくは そのままに。

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あたし時々おもうの


伝わるか伝わらないかっていうのは
なにを云ったか
が問題なのではなくって


つまるところ 結局は


誰が云ったか
が問題なんじゃないかって





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春の詩

冬に捨てた言葉達が
緩む土手で顔を出す土筆の様に
心に返り咲いたなら
なにくわぬ顔をして摘み集めては
花を揺らす風を友に麗かに
春の詩でも書いてみようか

春を待つ
気持ちは一歩
背伸びする

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も、く、げ、き

ワレワレハチキュウジンダ

ミテルダケ セカイヲ

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paypayと30円

あ、虫だ。

なんか可愛いよね、私のそういうところ。

なんでかな、とても難しい顔をしている…。

最近流行のグミ、凄く美味しかった。また食べたい。

…散らばった君との思い出かき集めて、放っとく。

本当は大事にしたいんだよね…ここだけの話だよ。

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ブリンキーとピンキー

 冬の教室は、加湿器の蒸気と、誰かの脱ぎ捨てたコートの湿った匂いで充満していた。おれはいつものように、周囲の顔色をうかがうことに心底疲弊していた。クラスメイトたちの「自分だけは安全圏にいよう」とする卑屈なパーソナリティが、視線の端々に透けて見える。おれはそういう本性を見破るスキルだけは人一倍だったから、この閉鎖空間にいるだけで、呼吸が浅くなるのを感じていた。
 おれのすぐ後ろの席には、彼女が座っていた。
 彼女は、いわゆる「不良」のレッテルを貼られている女子だった。いつも不機嫌そうにスマホをいじり、髪は校則で禁止されている色に染めたロングヘア。廊下ではいつも他愛もない様子で上級生の彼氏と喋っているクールビューティーだ。おれとは住む世界が違った。どうでも良い話だけど。
 授業の終わりに、プリントを後ろに回すタイミングが来た。
 おれは無言で振り返り、彼女の方へ紙の束を突き出した。その瞬間、暖房の熱気と外気の温度差のせいか、おれの眼鏡が真っ白に曇った。視界から色が消え、ただの白い霧になった。
「……ぷっ、何それ。前、見えてないじゃん」
 彼女が笑った。
 それは、周囲を威嚇するような尖った響きではなく、もっと幼い、例えば無邪気に泥団子を転がしていた子供のような、無垢な響きを含んだ声だった。
 その「音」が、おれの記憶の鍵をこじ開けた。
 霧の向こう側で、幼い頃の風景がフラッシュバックする。
 おれたちは、親友だった。レトロゲーム好きだった親たちの趣味で、パックマンのモンスターの名前をあだ名に付けられ、呼び合って遊んでいたはずだ。おれが赤い「ブリンキー」で、彼女が桃色の「ピンキー」。
 親の仕事の都合でおれが引っ越してから、おれはその事をすっかり忘れていた。
 名前は、ユキ。そうだ、彼女の名前はユキだった。
 家のアルバムには二人で一緒にお風呂に入っている写真もあった気がする。すっかりと忘れていた、けれど確かにそこにあった記憶だ。
「……ユキ?」
 おれが小さく呟くと、彼女の笑い声がぴたりと止まった。
 曇りが取れ始めたレンズの向こうに、本物のユキがいた。
 彼女は一瞬、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしたが、すぐにその瞳に鋭い色が戻った。まるで自分の弱みを見られたのを塗りつぶすように、彼女は唇を歪ませて不機嫌を露わにした。
「……あんた、今なんて言った? 気安く呼ばないでよ。マジで、うざいんだけど」
 彼女はプリントを奪い取ると、わざと大きな音を立てて机に伏せた。その拒絶の仕方は、まわりを傷つけながら自分だけは安全圏にとどまろうとする、彼女特有の防衛本能そのものだった。おれは、自分の失言を呪った。気まずさが、冷たい風のように背中を通り抜ける。
 だが、数分後、放課後のチャイムが鳴る直前だった。
 彼女が、おれの背中を指先でつついた。振り返ると、彼女はどこか落ち着かない様子だった。
「わたしは、結構前に気がついてたけどね」
 彼女は、おれの機嫌を取ろうとしていた。さっきの言葉を無かったことにするかのように、不器用な優しさを差し出してきたのだ。彼女の目は泳いでいて、その指先はかすかに震えているようにも見えた。
 彼女は、おれがあの頃の「ブリンキー」であることを知っていた。そして、今の自分が、あの頃の純粋な「ピンキー」ではいられないことも、痛いほど理解しているのだ。
 おれたちはもう、パックマンのステージを無邪気に駆け回る小さなモンスターではない。
 偽物のパーソナリティで自分を塗り固めなければ生きていけない、出口のない迷路に迷い込んだ大人一歩手前の生き物だ。
「……おお、気がつかなくて悪かったな」
 おれがそう言うと、彼女はフイッと顔を背けて教室を出ていった。その背中は、かつて公園を走り回っていた少女の面影を、どこにも残していなかった。
 彼女は廊下で待っていた上級生の彼氏に呼ばれ、そのまま人混みの中へ消えていった。


 こんな話を食卓ですると、ピンキーに似た面影を持つ娘は喜ぶし、嫁はなぜかキレてしまう。
 別にキレるほどの内容ではないはずなのだが。
 だが、その理不尽なまでの「拒絶」と「独占欲」の入り混じった反応こそが、かつておれが呼びかけた、初代ピンキーの行動原理そのものなのかもしれないと、近頃は感じている。

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Gluon nested


生まれ来る時に
握りしめていた全てを捨てて
開いたその小さな小さな手のひらは
全ての世界につながってゆく

https://youtu.be/u8MRUVrDaRU?si=8jAezFt6kATO29Am

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愛になる


今まで感じた
心のすべて

受け入れられた
心のやさしさ
あたためて

言葉のなかに
心伝えて
いつまでも

目に触れるもの
感じるたびに

心のすべてが
愛になる

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日本の最北端で買ったコンドーム

宗谷岬の土産屋に、どういうわけかコンドーム。
分からない。近くにホテルなんかないし、大体日本の最北端まで来てコンドーム買う奴があるか。
「なんで?」
「なんでだろうね」
面白いからという理由で、購入。
なるほど、こういう馬鹿なカップルがいるから置いてあるのか……

まさかこれが二人で買う最後の土産になるとは思わなかった。
帰り道でトラックに突っ込まれ、無事だったのは、俺とコンドームだけ。
土産屋のオッサンの計算高いマネタイズが遺品になった。
「なんで?」
返事はない。

---

あれから数十年。いま、病床に伏している。
もう、目は見えない。言葉も話せない。
意識はあるが、周りの誰も自分に意識があるとは思っていないだろう。
そもそも、誰かいるのか?

そしていま俺は猛烈に焦っている。
あのコンドーム。結婚してもなお、捨てる決心がつかなかった。
俺の自室の机の中に入っている。入院前に処分し損ねたのだ。
事故や彼女のことを家族に話したことはない。
だからこそ、化石化した謎のコンドームの存在は、きっと家族を困惑させるだろう。

そうこうしているうちに、病室には宗谷岬の冷たい風が吹き、ぼやけたサハリンの輪郭が映る。
走馬灯に思いを馳せている場合ではない、俺の頭の中はコンドームのことでいっぱいだ。
こういうのって、穏やかな気持ちで見るもんだと……こんな焦りながら見る羽目になるとは……
「なんで?」
「なんでだろうね」

ごめん。もはや誰に謝ればいいのかも分からないけど。

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いいあらわせないけど 

自死をした娘さんの携帯料金を
ずっと払い続けている
と綴れたブログを見かけた

誰に何と言われようが
そのお金は必要経費で
娘そのままなんです。

このような言葉に
しばられたみたいに
こころがびたり
ここ数日
かたまってうごけない

わかる気がします
などとたやすくことばは
かけられず
けれどなにをするときも
ふいにそのひとの言葉を
何度も何度もおもいだした


昨日の夜読んだ漫画の主人公の
言葉が
そんなわたしをひょいっと
すくいあげた
何年ぶりかにゆっくりじっくり
漫画を読んだ

「わたしがあなたの記憶も全部
未来に連れて行くよ」

こんな風に言っていて
この主人公のエルフ族は
寿命がとてつもなくながく
周りのは人間は「通り過ぎていくよう」に
「人生」を終えてしまう

いいあらわせない
なにをなにがいいたいのか
わからない つたわりきらないばかり


だから

だけど

だからこそ


やっぱりいいあらわせない


ただただ あの主人公の笑顔が言葉が
眩しくって

生きているって
     


わたしも料金をはらいつづけてしまうかもしれません
そうおもうのです

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即時一杯の飯に如かず⑫

 ep.12「シメパフェ」

 元彼の宗一郎は浮気っぽくて────
 三下り半を付けるまで随分と時間を費やした。何度となく甘い言葉に騙されきた俺にも惰性があり、違う男に可能性を感じて選ばなかったにのは、他人と新たな関係を構築するのが面倒だった半面、宗一郎を失う寂しさに束縛されていたからだ。
 別れて、半年。
 仕事に打ち込んできたが、誘われたらまんまと出向いてしまう自分の愚かしさに頭を抱える。
 路嘉にどうやって接したらいいのか判らない。
 また、浮気をされたら。ごめんで押し切られやり過ごしてしまう。それが浮気をさせる要因だと和真に指摘されても治らない俺はクズ・・・・・・いや、自分を貶めるのはやめよう。

 湯けむりを潜り、勢よく吹き出るシャワーを顔に浴びて前髪をかき上げる。
 ポンプから押し出される業務用のボディソープを掌で泡立て、汗と一緒に流せばガラス張りの向こう側で待つ、宗一郎と目が合った。
 濡れた体のままバスローブに袖を通して、裸足で絨毯を歩いた先にあるクイーンサイズの広いベッドに横たわり。枕をひとつ、抱えるのが俺の寝ぐせだ。
 まだ少し酒が残ってる。

 「悪酔いしたか?チェイサーしろってあれだけ飲み方教えてやったのに」

 交わしても執拗に追いかけてくる唇を怪訝に払い、酒臭いため息をひとつ。
 わかってる
 どれだけ嫌がってみせても、この男には通用しない。

 「絢斗。ちょっと見ない間に、色気出てきたね」
 「お前がそういう目で見てるからだろ」
 「やばい興奮してきた・・・・・・ほら、これ見ろよ」
 「言われなくても見えてる」
 「素直だな、お前こういうの好きだろ」

 バスローブの上から唇を這わせて耳元で甘く囁いた後、俺の眼前に見開くそれは・・・・・・




 8段重ねのタワーパンケーキ、アイスクリーム付き。




 「本日のシメパフェ」
 「パフェじゃねぇだろ。無理だって・・・・・・宗一郎のだめなところ、そこ!」

 
 部屋にライブステージがある独特なセッティングと、コンチネンタルブラックファーストで有名な新宿ファッションホテルはランチ休憩限定「メガ盛スリーナイン/999円」と呼ばれるホットミールが人気を博している。
 甘いものは別腹というが、宗一郎は甘いものが主食。
 糖尿病予備軍の名を欲しいままにフォークを突き立て、俺が隣に座っているのに自撮りを楽しむ。

 「この上からチョコレートかけて。もっと左、そこ・・・・・・いいよ・・・・・・ゆっくりかけて」
 「わざと言ってないか」
 「絢斗のエッチ。そんなに俺としたいの?」

 上目遣いでスマホのカメラを向ける宗一郎の手を押さえる、やめろ。
 
 甘い余韻が視線となって身を寄せれば、着信音。
 この手を離せば現実に引き戻される。いいのかと声をかけてくる宗一郎の体温から抜け出して、和真の声に答える。
 平然を装う、俺の声に陰る瞬間を見逃さない和真から「今、どこ」まさか宗一郎とホテルに居る、なんて・・・・・・隠し通せる自信はない。
 胸の内がざわつく。今、俺は浮気をしているとここにきてようやく頭が追い付く。身勝手で浅はかな行為に思わず、出掛かった言葉を飲み込んで肩をすくめる俺は息をするのもやっとの思いで、だけど謝罪ひとつせずに電話は終わった。
 和真に謝ったって、仕方ない。でも───
 
 苦しい。

 冷たい真っ黒な塊が温度に溶かされ、角を失うように、俺だって。俺だって甘えたい。
 大人だから、
 男だから、
 そんなの全部忘れて、優しく触って欲しい。どれだけ頑張っても安らぎに辿り着けない生命の危機感に耐えられず、露命を繋ぐ思いで自分から宗一郎の手を握った。

 宗一郎は唇のチョコを舌の先で舐めながら、微かな薄ら声で、事実を覆ったアルミパーチを裂くように返す。
 

 お前の良いところはゴリ押しが通用する
 純然たるその性格だな
 今の俺にできる精一杯はさせてもらう、いいな。シャワー浴びて来る。


 暴かれた俺の正体。
 立ち上がって短い息をつく宗一郎の手を繋いだまま下から見つめていると、甘い香りで囁く。俺とお前しかいないのに、またそれ────全く酷い男だ。

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おかえりノート


書いては消して ほおづえついて
まばたきをして メガネ外して
ため息ついて 立ち上がる

聴きたい曲はコレじゃない とか
靴下がキツイ とか
今朝ミルクを飲みすぎたから とか
ちっぽけで デタラメな 理由をつける

つぶやいたって いいじゃない

鏡のワタシは ふくれっつら
お気に入りのコップで 思いっきりうがいをしてみる
裸足になって つま先立ちで歩いてみる
部屋のすみっこのガジュマルに ほんの少し水をやる
鼻唄交じりに 机に向かう

書きかけのノートと目が合った

さらりとメガネをかけて
うん と頷き
「おかえり」の詩を 書きはじめる

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散るように

雨の声が広がっていく
春が濡れ
眺める心に雫が響く

舞う花びらを
追えないように
零れていく
気持ちはもう戻らない

一つ二つと手にしては
儚さがだけが美しい

過ぎて行く恋心
せめて涙が飾るなら

雨に紛れて泣けばいい

散るように泣けばいい

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気配

犬を散歩させている人がいた

けれどよく見ると
犬はいない
人もいない

ただ散歩だけがあった

それもまたやがて咲く
桜の気配に
溶けて消えた

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plenty

多すぎる荷物と花束と
離れた場所に停めた車まで歩いた

桜が咲いた日
たくさんの
言葉と
雨が降っている

明日からは 新しい生活

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日常詠、ガチャガチャを回してみて

わざはひを描いて筆は蝸牛

https://i.postimg.cc/85p8xHn5/IMG-20260312-215001.jpg

『硬つむり』という、おそらくコレはダイアモンドの。

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出発点

自分のことばかりの言い分
せいぜい家族や恋人くらいか

けれども愚痴っぽい主張に
正義や正論への根拠を繋ぎたい

侵すものは排斥だと指を立てて
所詮は大河の一粒として叫ぶ

はからずも寄り添ってしまえば
転換され続けるだけの責任とか

教室ごとに配られる答案用紙
どうせすぐにでも燃えるゴミの日

等しくは見えるであろう出発点から
てんでばらけて各々好きに行ってしまえ

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余白

飽きもせずに
直向きになって
見せるでもなく
習慣とでも言えば
それまでのこと

始まりからここに
そして終わるまで
一つも浮かべず
何も願わず
ありがたきを想う

天のあらましに
付き従えば
この身に深く委ねた
もうすぐの
これからのこと

大きな命の
一部に過ぎない
小さな命を
しなやかに
そして終えるまで

始まりのここに
余白に嵌める
静かな決意を
ただ一つ
置くだけの信頼

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コント原稿 結婚相談所

「初めまして。予約していたものですけれど」
「あ、どうぞ、おかけ下さい。予約時に教えていただいた理想の相手像にぴったりの方がおられたんですよ」
「え、本当ですか」
「ええ、ラヴィちゃんと言いまして」
「外国の方か」
「色気のある」
「うんうん」
「しっかりとしたお子さんを産めそうな」
「うち、親がうるさいんですよ」
「瞳が少し吊り目で」
「いいですね」
「唇が厚めの美人さん」
「そうそう」
「山梨県は南アルプス市鋳物師屋遺跡よりお越しのラヴィちゃんです。どうぞ」
「土偶じゃないですか!」
「コントをやる際は、ここでラヴィちゃんの写真を張ったパネルを出してください。
URLはこちらhttps://www.isan-no-sekai.jp/report/6196」
「メタいな! オイ!」
「ご懐妊の婦人を模したのではと言われる円錐型土偶で大きなお腹に手を当て、子宝の女神として皆様に愛されております。しっかりとしたお子さんを産んでくださること、間違いなしです!」
「だから土偶じゃないですか! 結婚できるとか以前の問題!」
「山梨県南アルプス市ふるさと伝承館でお待ちしてくださってますよ! 入場料はまさかの無料!
また分身が国立歴史民俗博物館におられます! 入場料600円!」
「うるさいわ!」
「では、他の方が良いと」
「そうしてください」
「では普段から身だしなみを整えている方はどうでしょう」
「いいじゃないですか」
「体は安産型でありながらその造形はまさに芸術」
「子供は欲しいですからね」
「やさしく、それでいて鋭い眼差しはあたかも蛇の様」
「そういう美人さんもいいなあ」
「お化粧も髪型にもこだわる、またとないお方です」
「素晴らしいじゃないですか」
「まさにビーナス」
「どんな人かな」
「長野県は棚畑遺跡よりお越しの縄文ビーナスちゃんです
URLhttps://www.city.chino.lg.jp/site/chinomiryoku/miryoku11.html」
「また土偶じゃないですか!」
「そのお体には雲母によるラメが入り、光に照らされると輝くと言う類例のない、目が文字通り眩むお美しいお方です」
「お化粧って、それ!?」
「また頭頂部には渦が描かれており、これは髪型なのではという説があります。他には見られない表現です」
「だからなんで土偶なんだよ!」
「お待ちください」
「なんだよ」
「国宝です」
「知らんわ!!」
「長野県茅野市尖石縄文考古館にてお友達で恥ずかしがり屋で国宝の仮面の女神ちゃんとダブル国宝でお待ちくださっているんですよ! 入場料500円!
またしても分身が国立歴史民俗博物館におられます! 入場料600円!」
「無駄に押しが強いな! オイ!」
「仕方ありません。別の方ですね」
「そうしてください」
「では大柄の方でも大丈夫ですか」
「ええ、問題ないです」
「体はがっしりと」
「スポーツやっていたのかな」
「それでいて自分独自のファッションに自信を持っており」
「おしゃれ好きか」
「普段は道の駅にてお勤めになっています」
「売り子とかかな」
「北海道は著保内野ちょぼないの遺跡よりお越しのニックネーム・カックウちゃんです
URLhttps://www.jomon-do.org/chukudogu」
「なんでしつこく土偶なんだよ!」
「待って下さい」
「だからなんだよ」
「北海道初の国宝です」
「知らんつの!」
「しかも日本で唯一道の駅で会える国宝です」
「だから知らねって!」
「銀箔を使って精巧に写し取った分身が、函館市役所と江別市の北海道埋蔵文化財センターにおられ入場料無料! 札幌市の北海道博物館にもさらに分身がいたりします。入場料800円!
まさに! 分裂するアイドル、それがカックウちゃんです!
本体は道の駅縄文ロマン南かやべに付属の函館市縄文文化交流センターにてお待ちしてくださってますよ! 入場料300円!
これまた国立歴史民俗博物館に分身がおられます! 入場量600円!」
「知らんつってるだろ!」
「でもってそっくりなご親戚もしくは分身と思われる中空土偶のニックネーム・マックウちゃんが東京都町田市の田端東遺跡よりお越しになっております!
URLhttps://www.city.machida.tokyo.jp/bunka/bunka_geijutsu/cul/cul08.html
町田市考古資料室にてお待ちです! 入場料はなんと無料!
なんで北海道と東京でここまでそっくりなのか!
ロマンが尽きません!」
「こっちは精魂尽き果てるわ!」
「そしてこれらの土偶がまさかの国立歴史民俗博物館におられます! 千葉県の皆様、ぜひお越しくださいませ! 縄文土器土偶に、平成の子供部屋を再現し、歴代のおせち料理をずらりと並べ、果てはゴジラまで展示されております!
まさに狂気の館! もはやこの博物館と結婚したいレベルです!」
「どんな博物館だよ! 勝手に結婚してろ!」

「と言いますか。こんなにこのかわいい土偶が嫌なんですか。なんでですか」
「なんでですかじゃないですよ」
「では全然別な方をご紹介しますね」
「お願いしますよ」
「お名前はハニィちゃんでして」
「嫌な予感がするんですけど!」
「日本で代名詞的な埴輪の踊る人々埴輪。埼玉県は野原古墳群よりお越しです!
URLhttps://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=2152
どうでしょう?」
「どうでしょうじゃねーよ! いい加減にしろ!」
「本人は東京国立博物館におられますが人気者のアイドルにつき、訪れたとしてもお会いできるとは限りません。
分身が熊谷市江南文化財センターにおられますので、そちらにお伺いください。入場料はこれまた無料です!」
「しつけーわ!」

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愛のメロディ🎵

um〜 聞こえるよ メロディ
um〜 なつかしい メロディ
um〜 笑顔が弾けだす
um〜 思い出のメロディ

五線譜の音符も踊り出す
粋な メロディ

自然と仲間も集まるよ!
ありがとう 愛のメロディ

um〜 口ずさむ メロディ
um〜 楽しいみんな
um〜 笑顔が溢れ出す
um〜 愛のメロディ

さぁ!歌い出そう 歌い明かそう
大好きな 仲間と
今宵は歌の翼にのって 
どこまでも 飛んで行こう

um〜 ありがとう みんな
um〜 愛してるよ みんな
um〜 明日につなぐ
um〜 希望のメロディ

ありがとう ありがとう ありがとう〜

um〜 愛のメロディ!

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花曇

町並みの軸は摩耗する
その浅瀬の透明な温い水は塩辛いものだ
ジグザクのうそを指折り数える
見知らぬ場所であれ不自由な語尾にのせる
小骨のかたちを定めるように游ぐばあい

仕切られた裏を愛してあげることにする
なにもないから、じぶんで抱いて
白檀に造花を、なんて灰をおとして
吹かしている、喧騒ばかりを煙にまく
気儘なだけで なんの歴史もありません
褪めるばかりの騙りといいわけさせてください

なにをどこでどうしてこうなったのか
ひとひとりの圍が整然と並ばっている
ばかだなあ、漏らしてみた(余りにもと置く。)
色白の記憶から指先でぬぐうようにして
拾った憐憫。くちごもる躯という連絡船は
いのちという理屈がねじ込まれるあたり、
けれどむき出しの蒼天、輪郭が崩れていくのを
その偽薬、おもえば生か死か箱庭は斜面
黙って見過ごせばいいのに微酔のさま
剥離した余剰なものが穴から溢れたものと 
ゆめでもなく、致死量を浴びた

無地に花と折る、咲う――劣情。賭して息吹
もしゃくしゃすっから、投げ出せず震えてんのか

かけ狂うじてしまった桜色にこうして
ぐだらぐだらとのさばる、眞砂のうつわでは
ヒカリの状態で濡れている。この弛んだ鍵の束
求めることなどただ、漉いた部分から錆びて
落ちないように埋め尽くしてしまいたいだけで
染み込んだままの微熱と富んだトビラがある

ふくよかな春風は強く背を押しては
すっと燃え尽きてしまうもの
掬いきれずに薄明、ここまできたけれども
くだらないなぁ こりゃ地獄の空だ
あんた生きているんだろう
じゃあな 花筏、それが凡てだ

意味も形も知ったところでなんも変わらない
帰ることが成らない、流れもの 総ては明け離れる

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ポスト

「不協和音」
 
 僕は久遠の時間を具し
 見るも無惨な不可視の風俗の街を
 歩く
 何者も一糸纏わぬ撹乱を
 顧慮するものもなく
 公明正大の不協和音が轟々とするばかり
 ああ、いつまでも愛していたよ
 艶書を送り、懸想に耽溺し
 無用かつ頑迷な言葉の連続に
 脳髄が混乱するのを創痍で感じる

 模糊の現実を通暁したとは言い難く
 言葉は空疎で、腐乱死体と共にあり
 不協和音のみが憤慨と焦燥を
 恥も外聞もなく血を滾らせ
 咽喉と肺臓を不可視の痛みで満たす
 満たされないのは心理のみ!
 知己を得た人々との離別
 書物の活字は更に僕を牽引から遠ざけた
 悉皆、知悉の近代学問は
 最早愚にもつかぬパズルゲーム

 驟雨は過ぎ、艱難も下火になり
 自分にのみ聞こえる悪罵、讒言
 迸る熱意で踊り狂い、憤り
 そしてその自我を盲滅法、獅子奮迅に
 かつて受け入れた慈愛の日々
 過去と現在の火炎に投じられ
 脱兎の如く苦悩を逃れようとするが
 呪詛や怨嗟はあいも変わらず
 魑魅魍魎の跋扈する様相を呈し
 ああ、僕はこの音に孕んだのだ


     「熊野古道」

 風光明媚な景色を車輪が疾駆し
 僕を乗せて移ろいゆく景色を凝然と
 渺茫で放縦な世界からの隔絶とし
 人間関係の乏しさを拙い会話で
 それも若さを度外視した前提で
 無為に終わる青二才と思いながらも
 多くの人々が僕の外貌の醜さを
 あからさまに毒づく
 一端の端麗な詩人と互角の胆力を
 持っているなら、そう持っているなら

 僕は熊野古道を闊歩する
 歩くことで曙光は無限の様相を伴い
 中二病的な詩人への回帰に
 我ながら魂の淪落と困憊
 そして人の存在の漸次的な蓋然性
 感じずにはいられない
 この単細胞な感受性
 多くの書物を脳裡で紐解く
 この新緑の轍や見事な木々や
 古色蒼然の歩道、点在する木漏れ日を

 神社で祈る事に自分の所業と
 対照する恣意的な欺きに、奸計に
 神は如何に洞察するだろうか
 偽善者、無頼漢、破廉恥漢などの烏合の衆
 彼らでさえ、僕は最早難詰出来ない
 自然は人を慰撫する事も圧倒することも
 そして、燦然と輝く惑星のぼつねんを
 必要以上に感じさせる
 幼年時代の僕には何にも根拠はなく
 未だに統合失調症にも根拠がない

 なんと玄妙不可思議なお笑い草か!
 統合失調症の条件を満たした瘴気
 温床、急勾配の心臓破りの階段


    「静寂」
 おお静寂よ、竹馬のねぐらよ
 艶書にも似た神学体系
 科学技術をどこまでも極め
 心をなくし、弛緩をなくし
 閉塞と幻滅の最中に
 この無惨な権威からの照り返し
 かく言う僕は襤褸をまとい
 夏の過剰な陽気にも
 自嘲的な音、妄想、認知を
 蒸留、電解する事は出来ないのか

 夏の濃い光、蝉の声、静寂への恋慕
 逡巡が霧消するかのような
 何かを待機し、臨戦態勢に
 僕は戦う形になっている
 統合失調症の本格化が夏で
 誕生日も夏、僕はアーベルと同じ誕生日
 それで画竜点睛を欠くような
 文学的欠落、不備
 お粗末な詩はかえって僕を陋劣にする
 それでも僕は内面と具象を彷徨う

 統合失調症の黎明、慄然
 その矛盾は同居し
 僕を絶え間なく懈怠にさせる事はない
 戦えと、意志が沈黙に幾重にも霹靂を
 時折醜い露悪と諧謔を伴い
 全知覚の隷属者である己を
 凌駕する事で初めて転回する
 涼風、相好を崩す人々
 喚き散らす児童と、単調な機知
 静寂は大挙して空虚を満たそうと目論む


  「何らかの銃声と、その後」
 運べ!運べ!運べ!
 脳髄の健常の化学物質を
 体躯の中の持久走

 金!金!金!
 仕事においての宿願を
 往年の大富豪は五臓六腑の充足

 黙れ!黙れ!黙れ!
 誰も不安を掻き立てるな
 遮断を受容してくれ

 ああ、何らかの胸騒ぎが
 痴呆と恍惚を渾然にし
 もう死へと向かう
 そして澄みきり、生まれ変わる事を祈る

 顔面が醜く感じ
 人々が残酷に感じ
 感情が多忙に鈍麻し
 憔悴した男は一体何が出来る?

 慚愧に堪えない人生の苦慮
 倒錯した変態共の凶行は
 蛆の湧いた、ハエがむごく痛ましく
 既に死神と共に襲撃を辞めない


   「狂人の言及」
 僕は狂人です。僕を重要視する人はいません。僕を助けてくれる人もいません。最近は春で気候も穏やかになってきました。けれども僕は外に出ると戦慄し、たちどころに震えて退嬰してしまうのです。冗談やメタファーやデフォルメではありません。外は僕の仇敵ばかりで、僕を攻撃してきました。最近はそういうのは抑制されてきましたがそれが更に不安になり、精神力が削がれる一途なのです。

 どうか僕を助けてください。僕は地獄絵図のクライアントです。苦肉の策、苦渋の選択として一般人に懊悩を披瀝しているのです。これは社会の為でもあります。僕の憤慨が予期せぬ方向に向かえば僕はきっと殺人者になるでしょう。或いは僕自身が殺されるかも知れません。ああ、僕の言葉が無為に消えていくのでしょうか?痛痒は指数関数的に増し、最悪の場合悲劇的な末路に焦点を合わせる事は容易であります。

 僕は過去に作業所に通っていました。そこは公共交通機関で30分はかかります。僕が外面はまともに見えるせいか、優先座席に座っているとあらぬ糾弾を受けた事があります。僕は社会からも十分に保護されておらず表層だけの生命線の障害年金だけは何とか確保出来ている構図です。28歳の歳を取ることは生半可な事ではないのです。死体になる勇猛果敢さがないからこうしています。

 咽び泣きそうな、酷い寂寥感。この寂寞の内実に篠不撓不屈の、統合失調症爾来発達してきた適性があるのでしょうか?僕には皆目分かりません。ただ、統合失調症だからと言って懶惰に生き、放蕩三昧することも今の僕には出来ません。僕には僕のやり方を通して徹底的に精髄を得て生き抜いてみせます。そしてそれは本来弱さからこのような枝葉末節に至ったものなのでしょう。挑発的?結構。大言壮語?それもまた結構。僕は意気を軒昂でいきたいのです。しかしまあよく喋る死体がいるものです。最近の死体はテクノロジーが長足の進歩をしていて独自の哲学を持っています。統合失調症からの死体。これは自嘲的過ぎるでしょうか?僕は自分を戯画化する事で思考に鮮烈な痕跡を残してやっていきたいと思っています。歴史にも深い爪痕を残していきたいです。

 作者傍白。統合失調症もここまで来れば道化だな。


    「枯れ木」
 枯れ木。朽ち果てていく木。僕もまたそこに生の儚さを投影している。どれほどまでに生き、バウムクーヘンになったのか。木と言えばバウムテストという心理検査を僕はやった事がある。その際に僕の絵の技術に対し「どこかで絵を習った?」と破顔しながら主治医が言った。
 
 生の群雄割拠。もう細かい事に目くじらをたてず死に至る戦いを生き抜くこと。自殺は遁走。社会的な眼で僕を眼前に据えれば僕は典型的な大人ではないだろう。とは言え僕も演技性は見事なまでに豊麗に影を潜め、部分的には恬然と出来るようになった。幻聴にわななき、味方などいないと思えた、あの孤立感。薄い皮膜が、現実と自我の境目が五里霧中となったのだ。
 
 詩という名の軽挙妄動、頑迷固陋、乱暴狼藉。過去の卓越した主治医は今の僕を見て深刻な近視眼的誤謬があると思うか?初期の統合失調症の状態になる、元の木阿弥だと認知するか?いずれにしても構わない。僕は自分の軸で生きる。白眼視されても、顰蹙をかっても、揶揄されても、豪傑の哲学、欣然たる哲学ではこれが覿面である。額面どおりに受け取るのではなくあらゆる情報を検閲して咀嚼し、嚥下するその連続。人生とは、食事の一種と称しても差し支えない。如何なる道程で美食と邂逅し、蜜月関係を構築するか?取るに足らない、阿諛追従、悲憤慷慨などはことごとく葬り去る事を半ば事務的に行っていきたい。ああ、僕も枯れ木。

      「改悛」
 ベッドで横臥して思った。僕は聖人君子ではない。やはりそうではない。改悛の時。微醺を追随させる、垂涎の感性。感性的陶酔がアートの一隅を占める。そして最大版図を際限なく拡張していく。最早僕は誰の後塵も拝していないし、敗北を喫している訳ではない。僕は僕として空前に生きている。僕にも落ち度はあった。それを踏まえて今を生きる。窓を開ける。今日は天気が悪いがハエの逃走経路を作る。ハエというものはケアしていても日常茶飯時のように僕に挨拶をする。この闖入者からの挨拶は非常に不快なものだ。
 

     「鬼滅」
 遂に来た、犬畜生にも劣る、劣悪な鬼
 その最後
 彼は阿鼻叫喚を助長させたが
 僕が金輪際彼との関係を絶ち
 眷属の助言
 泰平無事な期間

 徐々に治ってきた
 しかし悪口なんて発想次第で 
 むしろ燃料にもなるものだ
 症状との縁故
 もう何も怖くない
 来る事を渇望していた

 鬼滅の刃を観た
 鬼は恐ろしく強大で
 映画批評と同時に
 自分の象徴的な
 憂悶をどのようにして雲散霧消するか
 何度も絶望のゲリラ豪雨に頭を垂れた

 皮肉な常套句
 あるがままに!が答えだった!
 月を埋め尽くす狂気
 正真正銘自然の寵愛に
 新緑に染まり、最初より
 遥かに病気存在そのものが蒸発した
 

「統合失調症とプログレッシブツイスト」

 倫理的観点に難色を示す人々
 変化が空恐ろしく
 病気の形態は鬱蒼としたジャングルだ
 殊に統合失調症は
 何を厭うか、芸術の中枢は?
 人生攻略における牙城は?
 警鐘を鳴らす大賢者はどこに?
 創始せざるを得なかった芸術は?
 何が始まり、何が未然だったのか
 陰々滅々な時でも友はそばにいる

 僕の友はプログレッシブツイスト
 高度にひねりを支配し
 爛熟しきって、むしろ行き場をなくした
 そんな果実を一掃する、ジェノサイド
 僕は急性期はやはり怯懦だった
 両親からでさえ甚だしい軽蔑で
 僕を拒絶した
 紺碧の天空、濃緑色の痛苦
 視力にも優しいこの相次ぐ痛苦
 ああ、旧友よ、久闊を叙したな

 ただいま、僕は帰ったよ
 福祉の制度を、随所において汲み取り
 確かに僕はちょっと疲弊していた
 矢継ぎ早に言葉が紡がれれ、詩人となり
 詩人としての生活に至り
 今はどうする事も出来ず、生きてる
 ここからのツイスト
 露悪的で、かつ我田引水の
 無手勝流を駆使し続けること
 栄枯盛衰もあるだろうが

 感性であっても使わなければ腐敗する
 潤滑な運びが滞り、言葉に啖呵が失せた時
 僕はどうするべきだろうか?
 プログレッシブツイストは繁茂する
 それを夢見る愚昧な僕
 不器用な妄想界隈
 学校から出ても刻苦精励
 やっていかないといけない
 僕という存在の躍動感
 無鉄砲な銃乱射による被弾
 
   

     「アトラクション」
 小径を僕は突き進む
 痛ましい道だった
 碌でもない風の着物を着て
 流麗な御婦人の身なり
 それだけでなく道が揺れた
 揺れに伴い新たな塔が出来た
 寸刻先までなかった我らを睥睨する
 居丈高に睥睨するその塔は
 まるで観測者の視点
 僕はそれをアトラクションだと感じた

 精神年齢は旅路に逗留する
 吟遊詩人、ただ疲れれば豪奢な土地に
 鎮座する
 花鳥風月を愛でる男
 そこに妄想がだしぬけに
 現れ、耽美の本流が
 僕をそこに隷属させるのだ
 まるで弱者のように
 先天的な弱者のように五体投地するのみ
 この事実は統失の歪んだ認知

 治ったと思えば治らず
 恋が成就したと思えば手痛い仕打ち
 時は残酷で若者の期間は決まっており
 僕はその瀬戸際
 今際の際に僕は何を思う?
 それとも非業の死を遂げるのか?
 夭折の偉人は商業的だ
 それだけにウェルテル効果も健在
 ネットの勃興期を経ても
 不動のエゴイズムがある

 ああ、アトラクション
 僕は君を愛する
 苦痛の宅配や
 立派な好敵手として
 ただ、ただでは死なない
 統失が暗礁となり
 船は転覆し、殺伐閉塞の焦土があれど
 僕は変わらない、変わらない事を
 変わらない
 アトラクションに対し僕は意思を固める



    「齢の悲歌」
 超絶的なものを見る時は
 年齢によって制限がかかる
 どうしても時期尚早がある
 秀逸な表現、不可避的なうねり
 言葉のうなりの嫌悪
 少年期の僕は変貌を遂げるべく
 大衆書を貪婪に読み漁り
 言葉の神に歔欷し、拝跪した
 そうする事で何か克己した感じがある
 僕は統合失調症

 畢竟、感覚というものは状況に
 ある程度の影響を受ける
 統合失調症によって激甚の
 憚らない苦痛があった
 僕は凡庸から奔馬の如く逃げ
 今外を見つめている
 通りをゆく腰の曲がった老人
 恰幅のよい男たち
 長身女性を見る際に
 僕もまた色めく

 無用の長物が風雪に耐え
 七転八倒し、適者生存し
 今僕の脳裡に力と感慨を便乗させた
 不可視の障害、不可視の意見
 語り得ぬもの
 僕はどうするべきか
 散在する芥の山
 赤貧に慄然とし日々を生きる
 詩の世界は放埒であっても罵倒されない
 その明朗、公明正大さが生の文化の証左だ


      「舌戦」
 舌戦とは不毛なものが多い
 誰かとマウントを取りあい
 会話における吉凶禍福
 ジンクスを持っている事を
 僕は是認する
 恐悦至極だよ、四分五裂も
 芸術の一形態になり得る
 前衛、先駆が持て囃され
 ポストの空間を占拠し
 迫害された人種が芽吹く才能の
 面目躍如、嬉しい事だ
 
      「P.S.」
 ああ、統合失調症との逢瀬よ!こもごもとした人生の痛苦と歓楽のサラブレッドよ!僕はそんな君を愛さずにはいられない。知覚の真髄に、澄み切った区域に立ち入った極限の心理。我が悲哀でありながらも幽玄な行脚の連続よ。


 また僕は詩的形式のアイロニカルツイストを打ち立てた。これはプログレッシブツイスト上の定型を持たぬ定型である。メンタル面でも詩的にも、定型などには二重の意味で意に介さないのである。萎びた心で。

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コーヒー、深夜、それだけのこと

コーヒーは
いつも僕の悲しみ

何かが心を締めつけるわけでも
あるいは涙腺を痛めつけるわけでも
ないというのに

ただ悲しみだけが
そっとそっと、攻めてくる

コーヒー、深夜、それだけのこと

なのに

ただ顔を上げては
一片の眠気さえ失った目に
星を焼きつける日々が過ぎ去るんだ

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襤褸布

 連載が終わって、ようやく机の上から紙の束が消えた。いや、消えたというより、別の山に移されただけだ。朱の入ったゲラ、付箋のついたノート、書き損じの原稿、飲み残しのコーヒーの輪染み。どれも、まだこちらを見ている。仕事というものは、終わったあとがいちばん目つきが悪い。
 
 夕方から雨が降っていた。窓の外では、団地のコンクリートがぬれて、街灯を受けて白く光っている。こういう光り方を見ると、いつも、きれいだなとは思わない。冷えた流し台とか、病院の廊下とか、そういうものを思い出す。だが、白いものというのは、疲れた頭には都合がよい。汚れがはっきり見えるからだ。
机の下から靴箱を引っ張り出した。中に入っているのは、よそゆきの靴ではない。アノネイだの、デュプイだの、舶来の名前で箔のつく革ではない。国産の牛の皮で、よく見ると筋や血管の跡がうっすら残っている。均質でない。なめしたあとも、どこか生きものの名残が消えきっていない。店の照明の下では、たいてい、そういう革は負ける。きめの細かいフランスの革の横に置かれれば、どうしたって野暮ったい。学歴みたいなものだ。並べた瞬間に、負け方が決まる。
だが、そういう革が、家に持って帰ってきてから逆転することがある。
 
 靴を膝にのせた。甲のあたりには、電車の座席に脚をつっかけたような無神経な皺が幾筋も入り、つま先には、何度もつまずいた人間に特有の、小さな擦過傷がついている。いい靴です、とは言いにくい。けれど、履いてきた時間の量だけは、ちゃんとある。こういうのは人間と同じで、写真うつりでは勝てないが、長く付き合うと、急に厚みが出る。
 
 棚からクリームを出した。溶剤のきつい、手早く光らせるタイプのものもある。あれを使えば早い。くたびれた革でも、十分もあれば、なにか一段上の階層に属しているような顔つきになる。靴の世界にも、そういう金融商品みたいなクリームがある。有楽町の新興の靴磨き屋がそういうのを使う。中身の繊維にまで油を入れて育てるのではなく、表面にだけ、上場企業のIR資料みたいな顔を貼りつけるやつだ。足もとみられない輝き、という言い方があるけれど、あれはたいてい、本当に足もとを見せないための光り方なのだと思う。
 
 今日はそれをやる気になれなかった。
ワックスを指で少しだけ取り、薄くのばす。ほんの膜だ。塗ったのかどうかも分からないくらいの量を、つま先と踵に置いていく。布を巻いた指先でくるくるとまわす。すぐには光らない。むしろ曇る。曇ったところにまたごく薄く置く。仕事でも人間関係でもそうだが、たいてい、薄い層を何回も重ねるほうが、あとで効く。一回で決めようとすると、ろくなことにならない。

 ネットの公営競技チャンネルにアクセスすると、どこかの競馬場の結果を流していた。重馬場だったらしい。人気薄の馬が逃げ切った、とアナウンサーが妙に興奮している。逃げ切り。いい言葉だと思う。たいていの人間は、スタートで負けている。負けたまま、道中を運ばされる。最後に少しだけ脚が残っているかどうか、それだけだ。

 ワックスの層が四つ、五つと重なるころ、革の表面に少しだけ深さが出てきた。鏡みたいな、即席の平たい光ではない。湿った土を踏みしめてきた黒さの上に、別の黒がもう一枚のる感じ。川でもそうだ。浅い瀬のきらきらした反射より、淵の底のほうが、見ていて落ち着く。

 道具箱にウイスキーの瓶があった。安い国産のブレンデッドで、ラベルの角が少しめくれている。グラスに注ぐほどでもないので、指先にとんとんと数滴だけ落とす。水ではなく、酒を使うのは、贅沢だからではない。揮発のしかたがちがう。鼻を刺すアルコールの奥に、木の樽の名残がほんの少しある。それがワックスの油気とまざると、妙に人を黙らせるにおいになる。機械油とも、薬とも、夜ともつかないにおいだ。

 玄関の道具箱から襤褸布を出した。古いシャツを裂いたもので、端はけば立ち、ところどころに黒い筋がついている。こういう布は、買ってきたままのクロスよりよほどいい。こちらの手の脂も、前のワックスも、生活のほこりも、全部しみこんでいる。まっさらな道具というのは、信用できない。人間でも、道具でも、少し汚れているくらいがちょうどいい。

 酒を含ませた布で、つま先を磨きはじめる。力はいらない。ただ、円を小さく、小さくしていく。すると、さっきまで筋や血管の跡をどこか露骨に残していた国産の革が、急に口をつぐみはじめる。消えるのではない。沈むのだ。安っぽさが消えるのではなく、安っぽさごと奥へ入っていく。表面にだけ出ていた生活の傷が、下の層へ押し込まれて、そのかわり、別のものが上に上がってくる。艶、といえば艶だが、もっと不穏なものだ。まともに生きてきました、という光ではない。削れながら、湿気を吸いながら、それでもどうにか形を保ってきたものだけが持つ光り方である。

 つま先に自分の手元がぼんやり映った。襤褸布で靴を撫でている男の姿は、たぶん、豊かな趣味人には見えない。どちらかといえば、何かを隠滅している人間に近い。だが、生活というのは、実際かなりの部分が隠滅作業なのだ。疲労を隠し、貧しさを隠し、嫉妬を隠し、みじめさを隠し、それでも翌朝には、何食わぬ顔で靴を履いて外へ出る。そのために人は、ワックスを重ね、酒を垂らし、襤褸布で磨く。

 連載が終わっても、べつに人間が立派になるわけではない。賞罰も、階級も、加齢臭も、払いきれない請求も、そのまま残る。ただ、原稿を一本書き終えた人間には、ひとつだけ分かることがある。上等な素材を持っているかどうかではない。フランスの革か、国産の血筋の見える革かでもない。人間でも靴でも、最後は、どれだけ丁寧に襤褸布で磨き上げられるかだ。

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小鳥が死んだ夜

目が覚める様なブルーの羽色と、コロっとした体型が愛くるしい、マメルリハというインコを知った時、私は一目で虜になった。

マメルリハの雛が入荷したと知って、ベビーカーに子供を乗せて、遠くまで買いに行った。

小さな紙の箱に入れられた雛が、カサコソと動く度に、空気穴から中を覗いて、動いているのを確認しながら帰った。

昼間は3時間おきに粟玉という、雛の餌をスプーンであげて、入れ物を毛布に包んで大切に育てた。

ゴンと言う音と、何かが床に落ちる音がして、その音の方に振り返ると、マメルリハがドアにぶつかって下に落ちていた。

掌に乗せて、何度名前を呼んでも、ぐったりとして目を瞑り動かなかった。

亡骸をティッシュで包み、クッキーの入っていた、青い花模様の小さな箱に入れ、枕元に置いた。明日、庭に埋葬するまで、自分の側に置いておきたかったのだ。

豆電気の仄暗いオレンジの灯りの下で、箱からそっと取り出し、両手で冷たくなった体を包みながら泣いた。

隣で寝ていた夫が寝返りをうち、私の方を見た。そして何も無かった様に背を向け、夫の寝息と時計の秒針の音だけが暗闇に響いていた。

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日に十回水やり

勾留期限を引き延ばして生命 お世辞の青酸化合物 手首なき手錠    達筆の悪辣    供述を握った おむすびころりん ペンシルの命ごい まだ出るか 桜の内出血 客の串団子 未練ヘアピンになった骨  三年前  つり革でバイアス増殖 思考のバクテリア 感情の殺し屋 執着は大根おろしに混ぜて秋刀魚で食べよう 

     穏やかに生き  


歯の花壇に咲いた皇帝ダリア育てています 

 日に      

   十回       

     水やり 

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死ねなかった男に残ったものは

死ねなかった男に残ったものは
永遠の退屈、燃やせぬ身体
死ねなかった男に残ったものは
無駄な努力に、使わぬ筋肉
死ねなかった男に残ったものは
医者への怨恨、世間への侮蔑
死ねなかった男に残ったものは
開かぬドアと、押し黙る口
死ねなかった男に残ったものは
叶わぬ愛と、聞こえぬ音楽
死ねなかった男に残ったものは
溜まったガスと、腐った身体
死ねなかった男に残ったものは
果てない未来と、永遠の平和
死ねなかった男に残ったものは
飛べない翼と、見下す空 
死ねなかった男に残ったものは
使えぬ性器と、死んだ赤子
死ねなかった男に残ったものは
無望仲間と、悲しき同情

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狐と踊れ

クリニックの待合室には
体重三十キロ台ぐらいの女性がいて
針金みたいに細い脚で
カクカク貧乏揺すりを続けていた
坊主頭の青年が
母親らしき人に付き添われ
大声でお経を唱えながら
診察室へ入っていった

おでこはニキビだらけ
手首は傷だらけ
せめて夢の中で
狐と踊れ

一人カラオケで
三時間歌ってから
もう一時間延長しようとしたら
待ってる客がいるからと追い出された
ゲーセンで一人プリクラ撮影会をやり
ダンスダンスレボリューションもやろうとしたが
同世代の男の子たちが集まってきたので
回れ右して帰った

おでこはニキビだらけ
手首は傷だらけ
せめて夢の中で
狐と踊れ

満員電車の中で
痴漢に遭った
助けを求めたかったが世の中そう都合よく
正義の味方なんていない
バスの中はバスの中で
いちゃついてるカップルがいて
八つ当たり気味に
後ろからシートを蹴った

おでこはニキビだらけ
手首は傷だらけ
せめて夢の中で
狐と踊れ

家にたどり着くと
びしょ濡れの制服を脱ぎ捨て
シャワーを浴び
ファイナルファンタジーを夜までやった
それから薬を飲み
鞄の底から百均で買った
ビニール紐を出し
部屋のドアノブに縛りつけた

おでこはニキビだらけ
手首は傷だらけ
せめて夢の中で
狐と踊れ


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きみとわたしのあわいに

海と空に境界などないように
白と黒の境界などないように
あり得ないとあり得るの境界も
きみとわたしの境界も
本当はなにひとつないのかもしれない

そこにあるのは
ただ揺らめく波のようなものだけで

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回想と展望松鶴屋風、もしくは或る散骨 

されば、
ひとこと君に伝えておきたいことがある、それは
君が僕より誠実なわけじゃないということ。
というのも、
ねえ、
君が残忍なブルドッグ大尉の寝袋だった頃、
僕は塹壕でずぶ濡れののらくろだった。
君がタイマーの毀れたウルトラマンだった頃、
僕はぼろぼろの襤褸をまとったデロリンマンだった。
君が気のぬけた飴色のコーラだった頃、
僕は気のふれたひずんだラムネのビー玉だった。
君がひきこもりのヒネくれた丸太ん棒だった頃、
僕は碾き臼の挽肉にされるままの木偶の坊だった。
君が寝ても覚めても漂流しているアルコール中毒だった頃、
僕は覚めても寝ても飲み続ける贋の夢中毒患者だった。
君が飢えた犬たちの豚小屋で輪姦されていた頃、
僕はだるい猿の夢の中で私刑される豆腐の脳髄だった。
君が狂った運命の星にゴロまきゴロついてた頃、
僕は苦し紛れにフィールドの縁でゴロゴロ転がるボールを追っていた。
君がのべつ幕なしのたりプウタロウだった頃、
僕はノッペラボウの瘋癲のがらんどうだった。
君が四月の一日オフクロの頸を切り行った頃、
僕は四月の一日溺れた夢の頸を絞めていた。
君が涙の波乗りサーカスの鳶の王様だった頃、
僕は何もせぬ夢の無産会社の専務だった。
君が雨のない夢の荒地の地上げ屋だった頃、
僕は穴だらけの夢を弔う気球の揚げ屋だった。
君があぶく銭の胸騒ぎを隠していた頃、
僕はあぶれ者の空騒ぎに沈殿していた。
君がすかすかした素晴らしい西瓜だった頃、
僕はすべからく誰何されるすがすがしいスカだった。
君が詩まみれの血達磨の雪だるまだった頃、
僕は血まみれの火だるまの風車だった。
君が意味のない反古の山の文車だった頃、
僕は痛みの頂きで燃える地図の火車だった。
君が僕を血の針の尖で拒絶していた頃、
僕は君を死の灰の海に虚脱させていた。
君の元妻が付け火の焼け太りで着膨れになる頃、
僕の今妻は土色の貧乏太りで火膨れになることだろう。
君がついに極彩色のエロ本タワービルの屋上から飛び立つ時、
僕はきっと僕を鑿のコトバで跡形もなく彫り刻むことだろう。
しかしだからといって、
ねえ、
僕が君よりユメ誠実なわけじゃない。

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事故

どんでんどんでんどんでんどん

軽自動車が子供を轢きそうだ!

危ないーっ!!

キキーッ!!

ダブンッ!!

でかい鳥が子供を攫いました。

バクンッ
 
鳥が子供を食べました。

「我が子供、鳥の栄養になりにけり。」

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好きだよ

かわいいかわいいあの子は
ミニスカートが似合うんだね

白くて少し筋肉質な足
骨ばった体

何色の服が似合うのかな
なんでも似合うけど

優しい色が好きだな

すぐに肌荒れするのが嫌って言ってたけど
ポツってできたニキビがかわいいんじゃん

いつも笑顔で
きっと辛いこともあるのかな
弱音一つ言わずに頑張るあの子
ちゃんとぎゅってしてくれる人はいるのかな

スポーツが好き
お菓子大好き
目が好き
よく褒められるのは唇と笑顔
今度会ったらたくさんチョコをあげよう


君の好きなもので溢れる世界は


私は私を好きになる

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エイプリルフール

嘘をつけるのは正午まで
どこかの国ではルールがあるという
半日だろうが一日だろうが
年中無休で本当のことを言わない私には
関係のない話だった
似たような言葉をしたためている同士よ
今日ぐらいは、あなたの
ほんとうをさらけ出してみないかい
怖がらなくても
心配しなくても
今日は四月一日だから、
みなも本気にはしないさ
いつものように、冗談めかして
あなたのなかにひそむ
その真実を

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高級なハート


もうすぐお花が咲くよ

仕事人間のあなた 会社を引き継ぐことになったあなた

お花が咲きます

あなたは、日々 黙って 想っている
あたしと中学生みたいなデートをすることを

知っているのよ
春爛漫な あなたの夢を、あたしって

でも思い通りに行かなくて 二人はテレパシーと夢の中で慰め合う

――――やっと 今夜逢えた あたしの我儘のため
それでも ほんの少しの時間は不満よ だけど、嬉しかった

ホワイトデーのチョコレート ありがとう
あの指輪 早く買ってね!
スウィーツを齧ったら 二人のキスのほうが甘かったわ

春が来ると信じて 待っています

あなたの会社が、今にも増してお金持ちになりますように
あたしはきっと……あなたの如雨露でありますように
あなたにもっとナデナデしてもらえますように
あなたとあたし ずっとお花を育てていけますように


https://i.postimg.cc/mrtLps0z/gao-jinahato.png

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電信柱


 奈々のパパは、奈々ちゃんが6才のお誕生日を迎える前に家を飛び出して行ってしまいました。

                *

 奈々ちゃんと、弟である2才の俊太君と、ママとパパは、奈々ちゃんが物心ついた時、東京に住んでいました。
 でも、田舎で寡婦として一人暮らしをしていたおばあちゃんが再婚したのをきっかけに、そのお義祖父さんのところへ、奈々ちゃん一家は呼び寄せられました。山口県です。


「パパは何処へ行ったの? ママ」


 緑色に赤いバラが咲いたワンピースがお気に入りの服。ふっくらとした愛らしい奈々ちゃんは、ある日、ボブヘアーの髪を揺らし、ママに問い詰めました。
 思い切って訊いたのです。

 でもなんとなく、訊いちゃあいけない事のような気がしていた。

「うん、奈々ちゃん。パパはね、今お仕事に行っているのよ。ママと俊太君とで元気に待っていようね」
 笑顔が美しいママは、明るい声で答えました。

「はい……」

 金融業を営むお義祖父さんはおばあちゃんに意地悪ばかりをし、お化粧すらさせませんでした。

 おばあちゃんはかつて、ずっとずっと、いつも美麗に紅を引き、粋に華やかな着物を着る女性だったのに、山口県に嫁いでからは、お手伝いさんのようにお義祖父さんからこき使われるのです。

 奈々ちゃんは怖い目をするお義祖父さんの事が好きになれませんでした。

                *

「あ、パパ! パパッ!」

 ある日の幼稚園の帰り時刻の頃、パパが奈々ちゃんをお迎えに来ました。
 
 その後、奈々ちゃんはあんまり憶えていないけれど、気づくと真夜中で、車の後ろに寝転がっています。
 電信柱が何本も、何十本も並ぶさびしい、畑ばかりが広がる道をパパが車で運転します。
 どうやら俊太君も車に乗っているようです。

 パパのふるさとは東京です。東京を目指していたパパは途中、公衆電話から、山口でオロオロとし生きた心地のしないママに電話を掛けました。

「パパ! お願いよ。奈々と俊太を返してちょうだい。俊太はまだオムツなのよ!」
 ママは電話を受け、泣き叫んでいる。

 高速道路もまだ通っていない昭和の時代です。

 パパは、電話を掛けた兵庫から山口まで、愛するわが子達を返しに車を走らせました。

 ――――ママが嘘をついていた事を、薄々感じていた奈々ちゃんでした。

 パパは、金融業のお仕事が辛くて逃げたのです。優しいパパです。

                *

「お姉ちゃん? パパはなんで居ないの?」
 
 言葉がしゃべれるようになった俊太君が4才の頃、小学3年生の奈々ちゃんに訊きました。

「うん、俊太君。パパはね、お仕事に行っているんだって。きっと帰って来るよ」

 奈々ちゃんはそんな風にしか言えませんでした。

「ふーん」

 俊太君はその時なにを考えたのか、奈々ちゃんにはわかりませんでした。

 絆創膏が取れかかってヒリヒリとする、怪我をした膝小僧のような痛みがするばかり。

 ――――パパが、とっても奈々ちゃんと俊太君が大事だからあんな事をしたと、車で東京へ連れて帰ろうとしたと、わかっている奈々ちゃんです。
 きっとパパは、幼稚園の先生に適当な嘘をついた事でしょう。
 だって奈々ちゃんは、幼稚園バスで毎日帰っていたのだから。

 
 切ないパパの演技を想像し、大人になった奈々ちゃんは(パパに会いたいなー)と今でも思っています。




https://i.postimg.cc/fL0VVYNN/dian-xin-zhu.png

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整理番号:TR-9901  #アイラシヤ大陸

時代 現代
場所 ロシア

シベリアの永久凍土層、地下300メートル。針葉樹林の深淵に沈む白亜の私邸は、地上の零下40度の吹雪を拒絶する「熱」と、過剰なまでの「静寂」が支配していた。
重厚な扉が開くと、そこには現代科学の定義を逸脱した生命のポリフォニーが広がる。天井高10メートルの巨大温室。遺伝子編集で色彩を調整された数千羽の小鳥が舞うその中央、精緻な彫刻が施された黒檀のデスクに、男が座っている。彼の姿は、三重スパイという世俗の呼び名を拒絶するような、圧倒的な静謐さを纏っていた。
ラボの心臓部には、液体ヘリウムで冷却された量子プロセッサが鎮座し、銀色の光ファイバーが神経細胞のごとく壁面を這う。秒間数ペタフロップスのデータが「光の位相」として処理される傍らで、小鳥たちの羽ばたきが計算空間のエラーを物理的に中和する。ここは、国家概念や倫理規定が深度によって濾過されたあとの、純粋な演算の聖域である。
ホログラムを通じて権力者たちへ語りかける。その声は低く、地鳴りのように響いた。
「諸君は現在の混乱を、単なる物理的事象だと考えているのか? 北極圏の熱波、永久凍土の融解、そして対流圏を切り裂く線状降水帯……。これらは気候変動などという生温い言葉で片付くものではない。我々が『あちら側』と呼ぶ、不確定な歴史の濁流を湛えた未知の領域――その位相が、現代の計算空間と同期し始めたことによる論理的エントロピーの漏れ出しだ」
男は画面上のホルムズ海峡の動きを指し示した。
「ホルムズ海峡の緊張も、石油の奪い合いではない。あそこは地球磁気リレーにおける極めて重要なノードだ。米軍が展開する高出力レーダーの交差は、あちら側からの信号を他国に傍受させないための、巨大な電磁的ファイアウォールに過ぎない。地政学的な火種は、情報の検問所なのだよ」
画面には、NASAの「HLS(月面有人着陸システム)訴訟」の電子文書が映し出されている。スペースX、ブルーオリジン、ダイネティクス。三つ巴の法廷闘争。
「NASAがスペースXを選び、ブルーオリジンが提訴する。スターシップの再使用性か、それとも三段式か……。表層では熱心な商売敵の喧嘩に見える。だが、この『遅延』こそが、真の目的のための微調整であることを、君たちは理解しているはずだ」
男の肩で、瑠璃色の小鳥が一際高く鳴いた。その瞳には微細な演算コードが明滅している。
「『アルテミス2』。4人の飛行士を乗せたオライオン宇宙船が月を周回する。だが、その真のペイロード(積載物)は何だ? 軌道上の特定の座標、計算空間の『余白』が物理的な月面と重なるその瞬間に、彼らは何を投下するつもりだね? 月はもはやただの衛星ではない。それは巨大な『中国語の部屋』の外壁に開けられた、唯一の覗き窓だ。君たちが血眼になって開発している月着陸船は、月面に降りるための足ではない。あの不可知の領域へ、観測者の肉体を送り込むための次元潜航艇(ランダー)なのだ」
温室内の一部では、局所的な疑似重力フィールドにより水滴が空中に静止している。男の指先には、イスラエルの諜報技術で鍛えられた精密な触覚センサーと、ロシア宇宙主義が夢見た「不死」への渇望が宿っていた。
「民間企業の訴訟による計画の遅れも、予算の再編も、すべては位相がこちら側と重なる『その日』に打ち上げを同期させるための、精緻なアルゴリズムの一部だ。人類は重力と戦っているふりをしながら、実は論理の重圧に怯えている。スターシップが燃料を積み込む時、それは推進剤ではなく、こちらの世界の『未確定な未来』をあちら側へと輸出するための、存在論的な為替(エクスチェンジ)を積んでいるのだ」
男は通信を切断すると、再びスタインウェイの前に座った。傍らでは19世紀の自動手記人形(オートマタ)が、あちら側の座標を紙の上にカリカリと刻み続けている。
「Нужно довести обман до совершенства.」
奏でられる旋律は、重力に縛られた地球の音楽ではない。それは月軌道の向こう側に広がる、不可知の彼方から吹く、冷たい風の音であった。
【警告:本記録の閲覧ログは、30秒後にハッシュ値の海へと自己消去される】

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なんにもいらない

なんにもいらない
月明りと煙草があれば

冷たいコンクリートに立つはだし
吹く風になびく黒髪

毛先に降り注ぐ蛍光灯
足をくすぐるカーテン

これからも寄り添う観葉植物
誰かが話してるラジオ

ああ 私の周りには
こんなにものがあったんだなあ

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【詩】再会

待ち合わせの 十三時に
間に合わせて 乗った電車

空いた席を 空けたままで
ドアの側で 外を眺む

空の青は
はやる気持ち 落ち着かせて

山の緑は
はしゃぐ気持ち 迎え入れて

僕は 深く深く 座る
ドアの側の 紅のシート



背に伝わる 淡い揺れに
薄く閉じた 瞼と耳

ガタンゴトの 三連符が
徐々に 遠ざかって消えた

目を開けたら
目的地は とうに過ぎて

聞こえたのは
終を告げる 車掌の声

僕は 恐る恐る 開く
二人だけの トーク画面



開き始めた ドアの隙間
目がけ投げる 細い身体

ありったけの 「ごめんなさい」
投げたスマホ 汗ばむ手に

跨線橋を
猛ダッシュで 渡り切って

滑り込むは
十三時発の 急行 

僕は 破れかぶれ 齧る
ミント味の ガムを一つ



待ち合わせの 饂飩屋から
ストレートに 伸びる列に

一人きりで 待ち続ける
長い髪の 君を探す

「どのあたり?」と
訊くとすぐに 浮かぶ既読

「あたま」と聞き
店の暖簾 目指し走る

僕は 一人ひとり 覗く
二年前と 照らしながら



先頭から 三番目の
瞳と 今 空で触れた

杉の椅子に もたれかかる
君の髪は ショートカット

「大丈夫?」と
尋ねられて マスクを取り

「大丈夫」と
矯正した 前歯を出す

僕は 重ね重ね 下げる
丸い頭 悪い自分



飛んだ刻を カバンに詰め
二十二時に 乗った電車

空いた盤を 埋めるように
角の席に 腰を下ろす

空も山も
水墨画の 夜の町が

昼と同じ
色が香る 街に見えて

僕は じわりじわり 気付く
君に 歩み寄る想いに

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愛と名付ける

言葉にしてしまえば 
愛している 
結局はそれしかない 

あなたというひとを 
私がどれだけ憎み、妬ましく、哀れみ、許せないか 
大切に、誠実に、守り、毛一筋も傷つけたくないか 
あなたは知らないだろう 
どれだけ求め、そして同じくらい突き放したい衝動 
矛盾だらけのこの 
こころで 
愛していると 
他に当てはまる言語が存在しないことが歯がゆく 
結局 
うつくしいものだけをかき集めたようなひとこと
「愛している」 
そんなものではない 
うつくしい想いと同等に醜さが確かにあるのだ
私の中の愛という愛全てを捧げてしまう悔しさ
それを唯ひとりに捧げられる途方もない歓喜

あなたはそんな私のこころを知らず 
信頼しきった顔で無防備に隣で寝ている 
そのすこやかな寝息を永遠に壊したくないのに 
次の瞬間にはもう 
首に両手を這わせ締め上げたくなる 

儚く、したたかなこのこころは何だ 
誰か名付けてほしい 
愛している 
確かに愛してはいるのだ 
だがそこに潜む醜さを包含した時 
それでもやはり 
ひとは 
それもまた愛だというのだろうか 

最近効かなくなりつつある睡眠薬を飲み干し 
あなたのまぶたに唇でそっと触れる 

知らなくていい 
あなたは私が差し出した半分のこころだけを信じて 
残りの半分は知らなくていい 
脅かしたくない 
喰い殺したい 
どこまでも矛盾するこころで 
愛している 
あなたの耳元に聞こえない程のちいさな声で 
私はつぶやいた 

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即時一杯の飯に如かず⑬

 遅く起きた日曜の朝
 ドリップコーヒーを飲みながらキッチンに立つ。

 全粒粉のトルティーヤに、辛く炒めた挽肉、細切りのレタスとストックした常備菜の塩トマトとズッキーニのソムタムに即席サルサソースをかけたら二つ折りにして写真を撮る。
 食べ物は鮮度が命。
 撮影には時間をかけず、すぐ口に運ぶ。
 酸味と塩味のマッチングをヨーグルトベースのスムージーで流し込み、指を舐めたら唇に触れて・・・・・・あの日の出来事を、塗りつぶす。

 溜まった家事をこなしつつパソコンに向かってSNSを始動、タイムリーな記事ではないが個人でやる分には進捗。和真が運営しているサイトにデータベースを送信すると折り返し着信。

 一晩寝て、説教される覚悟はできた。

 『おはよう。昨日仕事だったの?』
 『ああ、うん・・・・・・』
 『お疲れ様。宗ちゃんと寄り戻したの?』
 『そうじゃないけど、成り行きで』
 『だと思った』

 沈黙。電話でよかった、と思う。

 『白鳥と喧嘩でもした?』
 『路嘉とは何もない』
 『ふーん。俺との仲まで疑われてるから、そっちで話つけて』
 『路嘉が迷惑かけて、すまない』
 『いいえ、どう致しまして。じゃあね』

 一方的に打ち切る和真の怒り心頭に押し流され、冷めたコーヒーの底に残る甘さを飲み干す。掃除が終わったら昼は流しのカフェ巡りで仕切り直しだ。


 ◇◇◇


 宗一郎と別れてからの半年
 俺はひとりで飲食店に入る度胸が持てずにいた。
 今このタイミングでなら、とはいえ昼時の行列を避けて他所へ行ってもカフェは圧倒的な女性客で埋め尽くされ敷居が高い。諦めた先で白壁の一軒家からブラックボードが引き上げられているのを見つけて走り出せばclosed(閉店)軽く会釈して爪先を返す。

 「あ、よかったらどうぞ」

 ボードを店内に入れるエプロン姿の女性に案内され、木製のドアを押して進むと子供の頃から見慣れたアニメ映画のような空間に引き込まれる。ステンレスのポットは水滴を落としながら冷をグラスの8分目まで注ぎ「ご注文お決まりでしたら声かけて下さいね」その後、呼ばれて厨房へ消えた。
 
 さて、どれにしようか。
 紙に書かれたメニューを指さし、ナポリタンのサラダ付きに決めた。
 
 メモを取る三つ編みのまとめ髪をした店員の後姿を目で追う。流行りじゃない丸い眼鏡が印象的だ。間もなくして届くサラダは紫玉ねぎとグリーンリーフのミックス、ポテトサラダ、ごまドレッシングのシンプル構成。ランチサービスのゆで卵は程よい半熟で、テーブルの塩をかけて食べる。

 この店はオフィス街で弁当の移動販売をしていた仕出し屋が元だとレビューサイトに投稿されていた。サラダを食べながらメニューを眺めること10分余りで待望のナポリタンがやって来る。
 写真で見るより少々ボリュームに欠けるが、味の方はトマトのホール缶を使った「おふくろの味」赤いソーセージが、懐かしかった。
 実家は共働き
 食事は弁当か袋ラーメンばかり。
 幼心に赤いウインナーがご馳走だったな。
 久しぶりに食べるとうまい!帰りに買って帰ろう。

 「ごちそうさまでした」
 「880円です。ありがとうございます、お気をつけて」

 外に出て見上げれば陽は高く、白昼夢のようなランチにご満悦の俺はバッグの中からスマホを取り出し、路嘉に連絡をした。
 相変わらずの不機嫌で声のトーンも低め、和真と居るのか。探りを入れる不信に対し今、独りだと言っても路嘉は聞き入れはしないだろう。
 彼氏ができると友達と疎遠になる。
 どちらも大切で捨て置けない現実に汗を滲ませ、運動がてら家まで歩くとするか。

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浮気と、男の誠実さについて。

 即時一杯の飯に如かずを連載している、及川まゆらです。

 いわゆるBL小説
 と、いうものは読者を楽しませる「定義」が含まれている作品が多く、こうあれば、あるほど良いとされる法則/テンプレートが定まっているジャンルです。
 女性向けですよね、BLを好んで読みたがるノンケはそれほど多くは無い認識。
 だから女性が好きなシュチエーションを濃厚にした方が、オタクっぽく仕上げた方が受けがいいと知りながら、現実的な恋愛観や男の素質を全面的に押し出した12話目は「男が浮気をする瞬間」を如実に描いています。ああ、なんですよ。男の心理。

 主人公には様々な葛藤が日常と、年下の彼氏との関係にあり。

 いつも浮気をされます。

 ゲイ視点でいうところ、体の浮気はしょっちゅーで。というか男なら・・・・・・軽率ですが"そんなもの"よくあること。
 男のメカニズムをここで熱く語る気はないけれど、性風俗が昔からある産業で、昨今では痴情のもつれの裏側に潜む色恋で命を落とす事件も珍しくない。風営法も変わりました。でも、性風俗はいつの時代も、誰もが利用できる揺るぎない位置付けとして存在しているのかなぜか。
 需要があるから。
 利用する人が多いから、働く人も増えてお客様のニーズに合わせた提供を行えるよう高時給の設定もできる。
 日常的にセックスができる文化が日本人男性にはある。ゲイでも、ノンケでも。お金を出せばセックスができる環境になんせ置かれていますからね。
 性欲ってね、旺盛かどうかではなく性的なことは誰でも興味があるし、できるならしたい。倫理観とかその場に置いて無くなる。だから浮気=悪い事というマインドは「その時、大切な人を思い出せるか」これを実行できる男は、誰かに誠実さを見せていられる。評価される意味と必要性がある男にとっては、そのボーダーは命取り。
 ただ、嘘も方便。他人とのセックスを息抜きだと心の底では思ってる男が大半なので、浮気する側の気が知れないのは当然です。抜けばいい、事後は顔も名前も覚えて無いような事をして、何となくその時をやり過ごした経験なんか誰にでもある。私がいう"そんなもの"とは、読んで字の如くそう。で、ここからもっと深掘りすると男は自分が辛かった時に側にいて心を支えてれた相手に心を許す。

 ここでいう許す、は
 委ねる
 自分の身勝手な甘えを相手に放ってもいいと思い込んで、やる。
 などの意味合いを持つ、心の在り方。

 言い方悪いけど、コイツになら何をやってもいいと思ったら本質的な諸相と行動が拡大する。これは良くも悪くも、絶対です。
 それが性的な行為を伴うと男はみるみる素直になっていく。
 人を知る上で、そのプロセスがあると解像度が高まる。男にはその感覚というか容量が大きいのかなと相手にする上で、感じます。例えば私の友人、アメリカ人男性で大卒後のエントリーからシステムが日本とは全く違う快速エリート勢の仲間入り、一流と呼ばれるステージへ野心で進んだ結果、彼は一族から見放される。そして訪れたコロナ禍と壮絶な4年間。おそらく彼の人生の試練、これ以上にない厳しさとプレッシャーの連続でした。
 彼の孤独に寄り添う私の存在は性愛もブロマンスも超えた親愛で結ばれ、今では思考がクラウド同期しているのではと笑い合う仲。
 男と男が生涯の友として対等に付き合うプロセスに重要視されるのは、絶対的な許し合う心と許容、そして熟年していく過程に私たち男だけが感じる共感。あんなに激しかった彼が優しく思いやる心を最中に捧げられるようになったのは、はっきり言おう私の調教の甲斐あっての出来事。めっちゃ顔面好きすぎる。私が理想とする骨格と旺盛が弾ける荒々しさはもうあの時でなければ得られなかったので、出会いのタイミングは大事だと実感。
 今はすっかり大人になっちゃって、相変わらずキレのいい嫌味と思わせぶりに苛々して仕掛けたくなるけど。長い指の上に顎を乗せて眉をしかめて見せる、あの激ルックスが可愛いので許す。お前が何をやらかしても私だけは、私たちだけはわかってあげられるよっていうお墨付き。

 そんな実体験を込めて、物語に付与する。
 主人公は恋愛が下手くそ。
 然るべき処で、怒れない男っているでしょう。感情的にはなるけど感情表現が上手くできない、適切な言葉が出て来なくて泣いてしまう。言えない。その一線を超えたら壊れちゃう。根底に不安を隠し持つ男はいわゆる弱者男性なんかではない。優しいの、愛したいって気持ちが上回るからおかしなことになるんです。

 浮気をされたり
 浮気をしたり
 傷ついたり、生きていく為に仕方ない行為を突発でも受け入れながら生きていく。

 世間ではおじさんと呼ばれ、おじさんであるが故に大勢の他人に対して配慮しなければならない概念に囚われ、それが社会のルールであるが如く思考に埋もれる。
 どうすれば自分が救われるのか。
 苦悩した先に、散々自分を弄んだ元彼しか選択肢が無い。絶望的な状況であっても快楽に身を委ねて逃れたいと思うほど苦しい、主人公の愚かしさは男にしかない心の恥部を夜に溶かしていく。そうやって間違えていく答え合わせが、今後の展開に盛り込めたら物語としては何度でもクライマックスを迎えられる。
 主人公の趣味である料理が充実するのも、食のリポジトリによる効果が大きい。
 料理を作って食べることは彼が心から求める自由な時間と、自分の遠い通りになる「失敗のない幸せ」評価してくれる人々がより幸福を与えて彼を認めてくれる。自信と探求心が同じところにあって満足感を得られるなら、恥ずかしさと引き換えに得る快楽の比では無い。満たされる幸福感と到達するまでの過程は明確で穏やか、そのものが主人公の性格という作りです。
 嫌な事があったら飯を作って忘れて切り替える、単純さも・・・・・・
 人を相手にした時の不器用で、自分中心な考えと失態も、実際にいそうな男として外さない。

 17話で終わった物語ですが、機会があれば視点/一人称なので主人公を変えながらこれからも書き続けられたらいいなと考えています。

 ええ、飯の話に事欠かない「暮らしの手帳」みたいなものですから。

 即時一杯の飯に如かず
 よかったら、皆さまご覧ください。きっと、うまい飯に出会えますよ。

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木蓮の蕾

ぼくはまだ
あのアパートにいる

冴えない朝の光が
カーテンのすきまから
こぼれてる

きみは なにも言わずに
ぼくの髪を撫でる
それだけでよかったのに


憧れは 遠くて
触れた瞬間に 壊れていく


ぼくは
きみのことが 好きで

だから このままで
いいと 思ってた

きみが ぼくのことを
忘れてしまっても

ぼくは たぶん
忘れない


ベランダの隅で
苔が 静かに増えていく
誰にも気づかれずに

意識が 遠のくみたいに
やさしさは 消えていった


あの日のいたずらも
笑えなかった理由も
まだ ここにある


きみのためなら
どんなことでも
できると 思った

悪いことだって
きっと できる
きみが 願うなら

ぼくに 死んでほしいと
言うなら

そのときは
少しだけ 笑って



木蓮の白さが
やけに 重くて
これ以上
近づかないように

手を思い切り伸ばして
空に触れようと


身をなげるよ

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本音

会いたいと伝えたら
画面の向こうの貴方は
どんな顔をするのかな

びっくりするかな
困るのかな
もし同じ気持ちだったらな

つい送ってしまった
つい溢れてしまった
『本音』
しばらくして
ついた既読

返事が怖くて
画面を伏せて
通知が来ても
気づかないふり

いつも通りの
温度のメッセージ
がっかりしたのと
同じくらい
ほっとしたんだ

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嘆きの天使

最最最底辺に生きる私には
輝ける未来なんかない
いつでもどこでも空気が読めず
周りからドン引きされる運命になっている

一番嫌いな奴はオノレ自身
こんな人間失格に誰がした
屈辱感に耐えきれずバックレた
世間様の正義が私を木っ端微塵にする

オ前ハ社会ノ穀ツブシ
オ前ハ社会ノ穀ツブシ

高い壁を乗り越えてもさらにもっと高い壁
死ぬまでこれの繰り返し
運の悪い奴は何をやっても
ドツボにハマるようにできている

同情買う奴オレオレ詐欺師
この世は弱肉強食の生き地獄
私のような●●●●●は
一丁前にハッピーになる資格はない

オ前ハ地球ノ落チコボレ
オ前ハ地球ノ落チコボレ

人生に期待する奴は大馬鹿野郎
生きていられるだけで御の字と思え
ラブとかピースとかありえない
夢みたいなこと考えてるから病気になる

オ前ノ一生燃エルゴミ
オ前ノ一生燃エルゴミ

NO NO NO
NO NO NO
NO NO NO
NO NO NO

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