投稿作品一覧
欧州趣味
愚痴としての詩を書く
もちろん不毛だけれど
書き連ねたって
そうバチは当たらないはずだ
だって愚痴って
ちゃんと予防線張ったもの
みつを
/////
諸君、僕はヨーロッパが好きだ
彼らの”宝石”が生み出す
茶葉とコーヒー豆の
匂い漂うカフェが
そして文明というガス灯の
優しいほの明かるさが
あるいは自らの天命を知り
旗を掲げて塹壕に列を連ねた
彼ら自身の神へと至る道が
あるいはあの夜の果てで
そっと散っていく水晶の
栄光に満ちたポグロムが
そんなヨーロッパが
ただただ好きなだけなのに
それを黄色味を帯びた詩壇で書けば
”あなたの思想は核戦争を引き起こす”だのと
なぜかそんな上から目線で物申され
核戦争を引き起こすのは
どう考えたって
誹謗中傷や罵倒
そんなものに明け暮れた
そんな詩人もどきだろうに
僕よりも彼らに核戦争云々を言えばよかったのだ
で、その詩人もどきたちも
嬉々として他人や日本や僕を叩くのに
僕が汎ヨーロッパの旗掲げれば
何も言わず
言わないのでコメントも付かず
サイトの仕様での下部に追いやられ
より誰にも見られなくなり
黙殺
今はスペースであれフォーラムであれ
あのとき
あの場に
いた人たち
僕が欧州趣味を語るのが
あるいは綴るのが
そんなにも嫌だったのか
嫌なら嫌って言ってくれたらいいものを
真っ向から反論してくれたらいいものを
僕が胸に
そっと抱える想い
”個を捨て、ヨーロッパという集合神格に至る”
そんな誰を害するでもない
そんなささやかな夢を
どうして核戦争を引き起こすと決めつけ
質問しても具体的な理由も言わず
一方的な黙殺まで仕立て上げたのか
ヨーロッパを愛することを
どうして僕に許してくれなかった
継続、力にならず。
頑張って打った文字、渾身のタイトル。
スマホの読み込み。
サイトの重いサーバー。
頑張って打った文字、渾身のタイトル。
全て消えた白紙の空間。
0/20000(文字)の絶望。
難しい授業、びっしりのノート。
もうすぐテスト。
何度も復習。
難しい授業、びっしりのノート。
破ったページ数枚。
大切に保管。
難しい授業、びっしりのノート。
テスト当日の焦り。
見当たらない数枚。カミを呪う点数。
継続、力にならず。
Be-Reviewにあった二つの傾向
「きみは頭が良いというか、少なくともtakoyoとかゼンメツみたいな変人よりは話が通じるね。ますますなんで詩なんかやってるの?と思うが」
――完備
「普通はそうあっちゃいけないのよ」
――ケルビィン
ずっとずっと書こうと思っていたことであった。堂々と告発してやろうじゃないかって思っていたことだったが、今やあんなことになったので、まるで死体蹴りみたいになってしまうのがどこか心地が悪い。まあ、それはそれとして書くのだけれど。
さて、僕は向こうでも抒情詩というものを書いていた。テイムラー隆一という、あの日本を代表する詩人の名前を明らかにもじったような名前で飛び込んで、それがネット詩における僕の最初の活動であった。
はっきり言って、甘い了見だったのは認めよう。「なんか内容もコメ欄も荒れた詩が多い……そうだ! ここで抒情詩を書けば癒しを求める人がほいほい寄ってくるだろう! それに僕は文章には自信があるし、理路整然とやれば問題もなかろう」。
甘い了見だったのは認めよう(n敗)。まず初期の段階においてはコメントがめったについてくれなくて、田中教平さんが一度上げてくれたのだが、まあ当然ながら勝手に荒れ始めるわ僕がいない間に議論を巻き起こすわで、実にまあ変なことになってしまった。
綺麗な作品を書いていてもこうなるし、いやむしろ綺麗な作品だからこそ彼らは憎んだのかもしれない。
前兆はあった。件の勝手に議論が巻き起こったコメ欄において、本棚がどうのこうのって感じで争っていたが、そこで尹東柱やフランシス・ジャム、ヘッセとリルケの名前を挙げた。どうも返答がなかった。最初はもう僕の作品へのコメントに飽きたのだろうと考えたものだが、様子がさておかしい。
だって、それ以降も彼らは僕がその詩人たちの名前を挙げたのを黙殺することが多かったのだから。最初は彼らの無知を疑ったのだが、どうもそうでもなさそうだった。これに関しては僕が失礼千万である。だって、詩を書く人たちが書物に何も目を通していないわけなんてないんだし。じゃあ、彼らはなぜそれに無反応だったのかといえば、後に感じ取ったことであるが、それに憎しみすら抱いていたのだ。
それは信じがたいことだったけれど、若干二名くらいはその傾向を極端に示していた。一人目はtakoyo2という人物。二人目はおまるたろうという、僕と同じ時期にBe-Reviewに突入しながらも以前から現代詩フォーラムにいた人物である。
まず前者だが、これはあづささんからの情報では室町礼二とかいう名前で以前にも存在したそうだが、彼(おそらく)は僕の嗜好に対しての敵意を隠そうともしなかった。僕がヘッセという言葉を口にすればインテリぶっていると攻撃をし、尹東柱の名を出せばその当てつけとして在日系への差別をまるで隠さない文章を投稿し(しかも本人はコメント欄で喜んでそれを告白するという執拗ぶり)、僕が村上春樹への好意を見せれば……と、いや春樹に関してはこのサイトでも嫌ってる人が多数かもしれないから、やめておこう。うん。とにかく、僕が近代人文側に立っているなら、彼は反近代の立場で喜んで僕を攻撃したのである。
で、おまるたろう。最初のところ、彼はメルモと相争っているだけで僕への飛び火はあまりなかったのだが、僕がtakoyo2への反感でより一層近代人文への傾倒を堂々たるものにしたときから彼もまた僕に対する直接攻撃を始めるようになっていた。最初は「いやあ、インテリの文章ってどうしても眠くなっちゃうんですよね……」と韓国詩に関して書いてる日本人への呟きから始まったそれは、やがて完全に文系に属するインテリへの憎悪攻撃に変化していき、当然ながら僕にも向けられるようになった。「文学部なんかに属してるからクソみたいな詩を書く」という、学部すら表明していた僕への攻撃は止むことがなく、そして興味深いことに「ナンパでもしろ」とか「ソープに行け」とか「角海老(調べたらソープ系の産業を営む企業だった)に早く行け」とかという、やけに卑俗なことを書き立てるようになったのだ。
まあこれがとくに僕への非難や憎悪をはっきりと露わにした二人なのであるが、あくまではっきりとしただけで、他の人々もちまちまと僕の詩への不信感をやんわりと文章から滲ませているのはわかっていた。と、ここでさっきの“卑俗なこと”が関わってくるのだ。
彼らは僕の詩の“下半身”の不在をひどく嫌悪していた。“下半身”! なんということか! そりゃ確かに僕が読むことのある村上春樹にも、あるいは文章を書き始めるきっかけとなったオーウェルの本にも、いわゆる濡れ場シーンというものはあったが……。だけど、彼らが要求したり、あるいは普段から作品やコメ欄や運営鯖で垂れ流しているのは、その……あまり僕からすると綺麗に思えないというか、エロティック性どころかグロテスク性の煮凝りでしかないのだ。先述したおまるたろうの言葉とか、そういうのを見ればわかると思う。
僕はあまりここに“下半身”云々をこれ以上書きたくないのだ。
手が汚れる。目が汚れる。頭が汚れる。魂が、穢れてしまう。
微妙な汚物性を有した性的な話題だのどうだのを画面の前で下卑た顔で語るよりは、それよりかは梅の花を愛でては晴れやかになった顔で画面に向かって、そっとキーボードを叩いて文字列を構築していきたい。そして、その構築で描き出していくのは冷えたラムネ瓶から注がれる寂寞の青春と、過ぎ去った入道雲たち……そうありたいのだ。
だけど、それをBe-Reviewは許してくれなかった。運営だって既に一人すごく怪しい奴がいた。黒髪というのだが、彼は普段は悟りだの仏教だのなんだのと宗教的なあれこれを語っていたけれど、吐き気を催すことに肉欲だのなんだの“下半身”は素晴らしいだのなんだのという下卑にも劣る下卑を一方で女性や僕に吐き散らすという側面があった。
そして何よりも話が通じない。そりゃ僕だって他人から見れば頑固で融通が利かないと言われるかもしれないけれど、もうそういうレベルじゃない。花緒さん、あづささん、紅井ケイさん、二藤さん、磊さんならわかると思うが(思いきり共犯にしていくスタイル)、本当に話が通じないのだ。
話は要領が得ないし(これは僕も犯していることかもだが)、書かれる言葉はすごく読み辛いし(気になるなら運営鯖に忍び込もう)、そして話が通じる人を無視していくスタイル。このエッセイの序盤で引用した完備さんが僕にああ言うくらいには、本当にそういう人が多かった。
これはただ彼らの認知能力がどうのこうのとかいう話でもないのかもしれない。僕の穿ち過ぎかもしれないが、彼らはどうも自ら好んで論理と理路と整然を放棄し、挙句の果てにそれらを憎悪しているようにすら思えた。
多分、近代人文学に対して当たりが強いのも、近代という時代がやはり論理と合理を前提にしていたのがあるだろう。
明治は、リアリズムの時代でした。それも、透きとおった、格調の高い精神でささえられたリアリズムでした。
――司馬遼太郎(『「明治」という国家』)
ともあるように、まあ色々と反論はあるかもしれないが、だが一つの事実でもあるともいえる。あっ、この引用、また別のエッセイで使うから覚えていてね(謎の予告)。
とにかく、この“下半身”への異様なる欲求と理路整然への不必要までの拒絶といった二つの傾向が、少なくとも僕が入ってから三浦さんによって幕を閉じられるまでのBe-Reviewにあったと思われる。これが第八期による偽物であるがゆえなのか、あるいはもしかすると文極からあったのかは……まあ、僕にはわからない。もちろん、どうしてそんな二つが生まれたのかもわからない。わかりたくもない。
だが、何はともあれ普通は下卑た“下半身”の話題は避けるべきだし、するにしても綺麗な言葉で覆うべきなのだ。そして、話が通じるような精神であるべきだと思う。たとえ書く作品が大衆向けだろうと非大衆向けだろうと、円滑なコミュニケーションはもはや義務といっても過言じゃない。
それができなければ、せふりさんが言ったようにとても授業で詩を知ってやってきた若い人たちに見せれるような場にはなれないのだから。
不倫
高ぶる私の香りに貴方の香りが
纏まり付いて来る
唇に伝わる野暮だけれど柔らかい感触
絡み合う舌だけが
落ちてゆく底知れぬ恋情の中で
現実への扉をまさぐっているかのように
相手の舌を押し戻しながら別れを告げる
貴方が帰った部屋の残り香が
私の知らない 知らなくて良い 彼の顔を隠す様に
火照った私の心を抱きしめる
気取る
気取ってる
ええ気取ってますとも
朝が夕に近づいていっても
窓から砂嵐を見るように
途切れ途切れに夢を見ます
遠いところでクラクションが鳴り
太鼓のようで
「パレードだな」と砂嵐が言います
それも過ぎ 夕の色が薄っすらと増し
私はゆっくりと寝返りをうつ
パワーなどは
スーパーに行けば売っています
買えないのは 小さな舟
川を渡るのに必要な舟です
それを気取っていると人は言い
愚かだと嘆きます
でもたしかに
気取っているのです
本当に舟を手に入れ
川をゆくものはわずかですから
なぜなら
そうそう舟は売っておりません
いきることにひっしのわたしたちは
どうもこうも
ながさやおもさがちがう
すぷーんで たがいたがいに
たべさせあう
それがあいだと
しっていてもしらずとも
民生食堂 あじさい 最終話 ふたりのひとり暮らし
民生食堂あじさいの朝は早い。
女は早くから仕込みに余念がない。厨房には女の包丁が、規則正しくまな板を打つ音が響く。いつもと変わらぬ音に男は安堵する。少し遅れて男もできることを全力で手伝いに降りていく。
食堂の客より質素な朝食を済ませると、男は仕事に出かける。縁あって近くの印刷所で印刷工見習いとして就職をすることができた。今は多量の紙やインクと格闘している。
昼になると女は忙しくなる。
次から次へとやってくる客をさばかねばならない。いずれも同居する男のように生活に困窮する人々だ。栄養も考えながら、料理を作り置きして客を待つ。
その頃には、男が帰ってくる。そこでちゃんと代金を払って昼飯を摂る。
あじさいに帰ってきた男の作業着からは、機械油と強い溶剤のツンとした匂いがする。あの頃の無力な臭気はもう漂っていない。
夕方以降、男が仕事から帰って来てから、書き入れ時には男も女の仕事を手伝ってふたりで切り盛りしていく。
夜には閉店。
女が先に風呂に入り、男は次に風呂へ入ったあと、風呂掃除をするのが約束となっている。
男も常連の顔を少しずつ覚えていった。客はこの新しいアルバイトに好奇の眼を向けているが、今のところその視線はかわせている、と思う。
安くて栄養のある総菜を作るのは難しい。女は新しいメニュー作りに余念がない。男が時々アドバイスをすることがあるが、それは大抵的外れだったり、栄養が極端に偏ったりしている。
週に一、二回、女の希望に応じてふたりは近所できたばかりのスーパーに買い出しに行く。運転手と荷物持ちは男。
このために、というわけではないが、男は辛うじて動くといった体の中古車を格安で購入していた。すぐエンストするし、ポンコツなので整備代もちょくちょくかかる。駐車場代だって男の薄給では決して安くは無い。それでも、大量の食材を運びたい女にとっては、自転車よりはるかに量が運べ、とにかく楽で助かった。だが維持費も駐車場代も折半。それが二人の取り決めだった。
つまずきやすい段差にはいつの間にか板が設置されたし、厨房の棚もその位置が少しだけ変わっている。いずれも女の安全性や効率を重視した結果だ。
ふたりは話をするうちに女の方が二つ年上だと言うことが判ったので、男の方が女をさん付けで呼んでいる。一方で女の方は男を呼び捨てにしている。
その年下の男は、見習いなので給料はなかなか上がらず、今のところ新しいアパートに引っ越すほどの余裕はない。
同じ屋根の下。同じ釜の飯を食いながらも、そこには厳然とした境界線がある。
だが最近、その線がわずかに動いた気がした。どちらかが引いたわけでも、押し込んだわけでもない。互いにとって最も呼吸のしやすい場所を求めた結果、自然と引き直された線だ。
一度、男は女に尋ねた事がある。なぜ自分を泊めてくれたのか、と。
女はしばしの沈黙ののち「さあ?」と答えた。「何でかな。あたしにもよく分からないね。昔っから気まぐれだからさ」と無表情に支度をしながら、男の顔も見ずに言う。
たとえ女の気まぐれだとしても、この先もうしばらくこの同居は続きそうだ。
そのあとのことは、まだふたりにも判らない。
――了――
Eye see.
✴「一見同じだけど、よく見ると違うことってよくあるよな。」
✲「あるような,,,」
✳「ないような,,,でも」
✲「よく」
✳「考え」
✲「ると?」
✳「,,,,ないような,,,」
✲「どっちだよ。」
✳「本気で見るとやっぱ同じな時もあるよな。」
✲「ねぇよ。そんなこと。」
✳「あるような気も,,,,」
✲「しねぇわ。何?何これ?洗脳?誰の哲学なの。ってか本気で見るってなんだよ。」
✳「こう、虫眼鏡みたいなやつで見ると,,,あ、やっぱ違うわ。同じじゃないわぁ。みたいな。」
✲「なんかすごいこと言おうとしてない?どこで何が引っ掛かってんの?」
✳「いやぁ、お前みたいなやつに話しても分からないかなって。」
✲「おい、見た目で判断すんなよ。」
✳「いや、中身の話なんですけど。」
✲「なんかショックだわ。」
主張強め日記 6月5日 昔の話とかなんとか
新しい文芸投稿サイトを銘打つこの場で、しかも出自もジャンルも問わないと標榜する中で、昔の話に拘泥したくはない。だが、新約聖書が旧約聖書を下敷きにしているように、古いサイトがあって、新しいサイトがある。このところ古いサイトの話を殊更にやりたがる投稿者がいて、こちらが黙っているほうが、かえって据わりが悪くなってきた。忙しい最中、正直、迷惑に感じている。
以前にも論考として投稿したが、罵倒上等の荒れた投稿サイト「文学極道」というものがあった。そのアンチテーゼとして立ち上がったのが、マナーを重んじる投稿サイト「B-REVIEW」であり、私はその立ち上げメンバーの一人だった。B-REVIEWには、サイトのコンセプトに賛同する者なら誰でも運営になれる、という仕組みがあった。運営の裾野が広いぶん、多くの人が「これは自分のサイトだ」と思える。その当事者意識こそが、場を盛り上げる原動力だった。
ところが文学極道が凋落していく中で、コンセプトに賛同などしていないのに運営の座に就き、B-REVIEWをマナー無視の文学極道化させようと図る者が、絶えず湧いて出た。サイトは十年近く続いた。だが最終的に、文学極道を出自とする者たちに乗っ取られ、荒れ果て、閉鎖に追い込まれた。この顛末に憤ったメンバーが立ち上げたのがCWSである。大きな流れとしては、そういう経緯がある。
そして今、そのB-REVIEWを乗っ取り、壊した張本人たちが、一定の謝罪とともにCWSに参加するようになった。私個人としては、過去の話はいったん傍らに置き、なるべく鷹揚でありたいと思っている。だが彼らは、「壊してしまった自分が詩人としてできることは、壊した顛末を振り返り、シリーズ化して投稿することだ」などと宣い、連日その手の投稿を続けてくる。悪気はないのだろう。だが、端的に鬱陶しい。構造としては、人を殺した犯人が「自分にできるのは、この事件と向き合うことです」と称して、犯行の一部始終を手記にまとめ、売り歩いているのと変わらない。被害者が黙っている中で、壊した加害者ばかりが過去を蒸し返したがる、その無神経な構造が気に入らない。
B-REVIEWのファンにとって、最も許し難いのは、コンセプトに賛同する者なら誰でも運営になれる——五十人を超える運営者・選考者を抱えたその仕組みごと、サイトは壊され、踏みにじられたことだろう。にもかかわらず、壊すことにばかり精を出してきた人間が、そのコンセプトを捨象して書いた「B-REVIEWの歴史」を、加害者が「宣伝したい」「向き合っていきたい」と掲げてコメントしている。これに不快を示すくらいのことは、私たちにも許されていいはずだ。
文芸投稿サイトなど、どうでもいいと言えばどうでもいい代物かもしれない。しかし、そんなことを言い出せば、人生のあらゆる事柄が、どうでもいいということも言い得る。どうでもいいはずのものでも、失われたり、踏みにじられたりすれば、どうでもよくないものに転じる。あらゆる文化的な営みは、どうでもいいように見えて、馬鹿にできたものではないところに本質がある。サイトの一つくらいなくなってもいいじゃないか、と言うのなら、そう言う人たち自身がこの場末の投稿サイトから締め出されることもまた、まったくもってどうでもいいはずである。
B-REVIEWが消えたというのは、一つの文化がなくなったということだ、という指摘をする人がいたらしい。文化である以上、それは誰か個人に帰属するものではない。その文化は、誰もが自分のものと思えるようなサイトの構造そのものに由来していたのだろうと、私は思う。壊れたものは元には戻らない。死んだ人が生き返らないのと同じだ。CWSを通じて、新しいものを作っていくことが真にできているのか、私には分からない。そして、それができているかどうかを決めるのは、私ではないような気がしている。
過去の話など何も知らない、まさしく「新しい投稿者」が、古い因縁で吹き上がる運営者を見て、あるいは誰かが排斥されていく現状を前にして、何を感じているのか、私には分からない。新しく入ってきてくださった方々を蔑ろにしたいわけではない。古い話を分かってほしいわけでもない。ああだこうだと意見を交わしながら、あるいは交わさない佇まいの中で、歴史が更新されていくこと。私が期待しているのは、たぶんそれだけだ。
その場かぎり
場数カウントは0。
年齢カウントは今も上昇中。
1年賭けて1階ずつ。
上がってくエレベーター。
階段を使えば良かった。
エスカレーター、合間にウォーキング。
止まるボタンは無い。
止まる階も無い。
人生はギャンブル。
アホか、誰がこれ賭けろと言った。神か?
人生はエレベーター。
その場かぎり。動かなかったやつの勝ち。
トコトコと負け組。
ガラス面、下から見下ろす。
あいつらにとっちゃ俺は神?
それも加味して、俺は降りたい。
上層はまだ早い。
下層に残りたい。と仮定(もしも)の言い訳。
いいわけ?神とやら。
このまま天にまで行っちゃっていいわけ、
ねぇだろ。
チカラ
ねぇだろ?
愛想
ねぇだろ?
学歴
ねぇだろ?
発想力
ねぇだろ?
コミュニケーション でき
ねぇだろ?
彼女 い ねぇだろ、このやろ〜。つんつん。
ま、
大丈夫か。
エレベーター、過信。
下を見て安心?見えなくなってく,,,不安っ!
下ではみんなトコトコ。
「その場」探しにワイワイ、ノロノロ。
あいつらにも迫るカウント。
ダウン願う上級者。
は?なんだって?俺。
自分「上級者」だって?大丈夫か。
人生はどん底気分。
俺の場所はこんなんじゃない。
そう、
ちょっと前まで俺もトコトコ。
仲間たちとゲラゲラ、てくてく。
てか俺らもあとちょいで脱・若者。
そろそろヤバくね。 誰かが言った。
それから仲間たちみんなキビキビ。
結婚は結構?じゃ絶好な。つって酷くね?
嘘つきの未来に投票したくせに、
過去の尻拭いだってするザマス。偉そうな顔。
オホホホと気色悪いおしろい。
俺は塗れなかった。
「仲間」「若者」「結婚」。
うるせぇよ。知るかよ。どっかいけ。
悪魔に人生売った仲間たち。
俺のとの思い出もどっかに出品しちまった。
「その場」壊されたのは、俺。
あいつらとはその場かぎり。
どっかいった俺。
立ち位置も分からない視点で見るビル。
都会の空へ上がってくエレベーター。
スーツ来たやつ、お相手連れたやつ、色々。
あいつらのところは田舎。
みんな同じ塞いだ顔。
俺がいるここは都会。
十人十色。ぶっ飛ぼうがぶっ潰れようがすごいやつはすごい。
俺は乗ってしまった。
エレベーター。
俺は乗れてしまった。
乗れーター。人波に。
俺はノッてしまった。
yeah yeah
俺はノッてしまった。
Fooo
とアガッたのも束の間。
「掴むな。」今なら言ってやりたい。
調子乗ってた俺。
ビートも凶暴なビーストになってしまってた。
全て上手くいくと思ってた。
全て俺の獲物だと考えてた。
都会に響くその鳴き声。
ヒビに気づかない盲目の怪獣。
教えられた都会に。
分からせられた。怖いやつらに。
俺は逃げるようにエレベーター登った。
誰もいないところへ行きたかった。
ラップって難しいな。
惜しいな、もっとまともな物語にすりゃよかった。
本当はそんな難しいこと描くつもりなかった。
積もらせた言葉のリズム、次々と降ってきた。
というか実際ノれてるのか?
ノリって何なのか分からず書いた。
詩とCreepy nutsくらいの知識。ラップ、
まずラップってどうやんだ。
お皿にかけるのか?
言葉をかけるのか?
い×え で yeah(イェー)
ふ×う で fooo(フゥー)
Who ラッパーって誰だ。今の俺か?
Boo ってなんか文句タラタラ言うやつか?
おい、聞いてるかCreepy nuts。
冗談だぜ。クリーピーパスタ。
お前らの歌は全部発禁。
R-指定なんだってな。
俺も聞いたぜ。Bring bang bang born
アダルトな中毒性。
耳に効いたぜ。Bring bang bang born
頭にクル前に心にクルぜ、涙もストレスも流れるぜ。
って、褒めちぎっちゃたよ。
これが普通か?そうだよな、叱るとハラスメントだしな。
不の感情バネにして、
人気でちゃっても困るしな。
大好きだぜCreepy nuts
もう人気だって?さすがクリーピーだな。
とか言ってクリーピーってなんだよ。
誰か言って。「いつまで続くんだよ」。
知らねぇことばっかだよな。
教えてやるよ、俺もわかんねぇ。
長いあとがき。
次々と出てくる、
二行はあとだし。
ジャンケンもびっくりの
発想パターン。
何通り何文字出てくんだこの韻(ライム)。
心配になってくるぜ。
大丈夫か俺の頭。
おかしくなっちまったか。
お菓子食っちまうみたいにポンポン止まらねぇぞ。
終わらせられるけど終わらせたくない。
ノっちゃたら降りられないエレベーター。
Better おい、初心者だよな、俺。
おい たが過ぎるぜ、そろそろ。
軽い気持ちで始めたラップ。
ビートもbitくらい低い解像度で、始めたラップ。
お前の散文ラップみてぇだな。
誰かが言った。
それから俺 yeah yeah
ラップ調、言葉のリズム、始めた意識。
Foo
Foo
何熱くなってんだ。
冷ませよ興奮。
覚ませよチンピラ。
Oh yeah
はい、ごめんなさい。
リズムに乗りすぎました。
何やってんだこいつって言ってやってください。
物語の主人公にも。
海
二回。
一日に二回。
浅瀬は一日に二回、
干潮で日の目を浴びます。
月と太陽のチカラで波が引いていき、
深淵はさらに深い場所へと姿を眩ませます。
一日のうちたった二回。
唯一浅瀬が輝ける時がありました。
ほんの二、三時間。
たくさんの男が浅瀬を見にやってきます。
しかし奇跡はそう長く続きません。
実際は30分ほどで波はザァザァ戻ってきてしまいます。
男たちも戻っていってしまいます。
顔を覚える間もなく行ってしまいます。
ある日、
一人の男が釣りをしにやってきました。
満潮です。
浅瀬で釣りを楽しめるところは限られています。
魚はなかなか釣れません。
なので、浅瀬は
深淵と混じる混合水、
中間層くらいの深さにいる魚を男に持っていきます。
しかし男にはどれもパッとしないようで、
一匹も受け取ってくれません。
男は浅瀬が見たこともない高価な仕掛けや、
巧妙なテクニックで、
少ないながらも着実に、
珍しい、深淵の魚を次々と釣っていきました。
浅瀬は絶望します。
男は深淵しか見ていません。浅瀬など眼中にないのです。
もちろん世の中には、
ここまでの男もたくさんいます。
何より浅瀬がショックだったのは、
その男に見覚えがあるからでした。
男とは小さい頃から一緒に笑い合う仲でした。
あの時にプレゼントした翡翠石や貝殻は、今の男には見る陰もありませんでした。
浅瀬は泣きました。
ありったけのガラス片を集めてやけっぱちな気持ちで遊びにきた人たちを傷付けて回りました。
男は自分で船を出し、
深淵の元へ行ってしまいました。
それから季節が経ち、
ガラス片も波に削られて丸くなった頃、
一人の男がやってきます。
夏でした。
太陽の光を引きずり込み黒々とした深淵に比べて、
浅瀬は日光を反射してキラキラと輝いて見えます。
美しい顔をしている。
浅瀬は男を見て思いました。
まるで沈んでいく夕日のように、
この広い海にもよく映る綺麗な顔。
男は浅瀬が決死の思いで集め、
磨いたガラス片を美しいと言いました。
それから浅瀬は深淵に憧れるのを辞め、
一人の男の側にいたいと思いました。
それから二人は結婚しました。
言葉も体も指輪も交わしました。
それでも、
1つのベットで何もかもを混じえて眠る夜に、
あの深淵の男が、
心の奥深くに、
思うのです。
Wind is blowing from the Aegean
女は海
好きな男の腕の中でも
違う男の夢を見る
Uh,,,,Ah,,,,Uh,,,,Ah,,,,
私の中でお眠りなさい
かくしごと
わたしのお父さんはかくしごとを持っています。
お母さんやおばあちゃんはとてもよろこんでいますが、
おじいちゃんやわたしの友達に言うとすごく不思議がられます。
お母さんが二人いるんじゃないかとか、
わたしの見ていないところでものすごいことをしてるんじゃないかとか、
じつはお母さんにいじめられているんじゃないかとか、
いろんないやなことやこわいことを聞かれます。
でも一人の女の子が、
「何をかくしているの?」と、
あかるくやさしく聞いてくれたので、
わたしも持ってきた絵本を出して、
しょうじきにはなしました。
「お父さん、ライターだったんだ。」
わたしが言うとみんなの顔もあかるくなりました。
感謝
感謝!!
圧倒的感謝!!!!
感謝があれば何でもできる。
元気はあってもなくてもいい。
元気は添えるだけでいい。
元気は左手、感謝は右手。
左手は添えるだけでいい。
感謝を諦めたらそこで試合終了。
スポーツマンシップがお留守で失格だ。
お箸じゃなく、心にはお椀を持っていたい。
ごめんなさいで済めば、警察はいらない。
ありがとうで締めれば、通報もいらない。
頭を下げるということが、
謝罪の断罪なんてものに使われているとは。
何たる愚行だ。反吐が出る。
「ありがとう」
そう言って下げる頭は美しい。
太陽のように明るいから。
きっとまた昇ってくるはずだから。
失敗にめげず立ち上がれ。
落ちぶれたと思うなら昇ってこい。
責めるな、攻めろ。
そうだ、
元気はいらない。
謝罪もいらない。
誠意もいらない。
敬うということは誉めるということだ。
おだてるだなんてポケモンに躾けても
ロクなことにならない。
アルコール臭のしけた悪習だ。
感謝!!
圧倒的感謝!!!!
言葉に出さなくても伝わるもの、
それが感謝。
ありがとう。
隣の芝を、青く。
ボクの隣の席の女の子は、
いつも貧乏で、
みんなそれをわかってるから、
給食をたくさん分けてあげたり、
勉強をたくさん教えてあげたり、
遊びにたくさん誘ってあげたりされているから、
いつも恵まれている。
ボクはその子に、
給食でも食べ過ぎると太ること、
勉強を上手くやる方法、
みんなが知らないゲームを教えてあげた。
そしたらその子はすごくステキな人になって、
少し、友達が減った。
隣の芝は、青くみえる。
ガガガガガガガガガガ
追いかける
追いかける
四本足で追いかける
優雅に逃げるアイツのように
俺も飛べたらいいのにな
蛾蛾蛾蛾蛾蛾蛾蛾蛾蛾
ガガガガガガガガガガ
ヒラヒラと舞うその姿は
まるでブレイクファースト
蛾蛾蛾蛾蛾蛾蛾蛾蛾蛾
ガガガガガガガガガガ
朝日に向かいクラッキング
お前が向かうべきは俺の口だニャー
捕まえれそう
捕まえれそう
もう少しで捕まえれそう
悠長に焦らすアイツのように
俺も誂えるおもちゃが欲しい
蛾蛾蛾蛾蛾蛾蛾蛾蛾蛾
ガガガガガガガガガガ
ヒラヒラと舞うこのところに
一つの肉球あり
蛾蛾蛾蛾蛾蛾蛾蛾蛾蛾
ガガガガガガガガガガ
泥棒に向かいシャシャシャシャシャシャ
俺の獲物だニャァ
取っていかれた
取っていかれた
通りすがりに取っていかれた
頑なリードするアイツのように
掴んだ肉球離さない
我我我我我我我我我我
ガガガガガガガガガガ
ピリピリ張る二人の視線
俺が先だお前が譲れ
我我我我我我我我我我
ガガガガガガガガガガ
お前に向かって牙を剥き
俺に歯向かわず手の片を向けろ
ヒラヒラヒラヒラ巡る思考
芽芽芽芽芽芽芽芽育つ怒り
シャシャシャシャシャシャシャ引かない
ヒクヒクヒクヒク鼻高く
バッ!と攻めてフッ!と拳
狙うはガッ!
ザッ!と爪をズッ!とかざし
欲しいのはガッ!
ナッ!と鳴いてヌッ!と睨む
バビブベと時間が経って
ボッ!と広がる手足口っ────
空。
がぁぁぁぁぁ
にゃぁぁぁぁ
ガッガッ
くそくそ
悔しいぜぇハァ悔しいぜぇ
ぜぇはぁぜぇはぁ息荒く
陸は厳しい状況だが、
空は容易い晴れ模様
ざけんなや
蹴んなや
冤罪符に猫キック
現場は以上と帰っていく
終わちゃったモーニングタイム
今日も近所のキャットフードか
憂さ晴らし
そこらのカエルに
キャットファイト
見事に惨敗
画になるねと近所のババァ
蛾をくださいとお祈りする俺
我を出し一目散にモフりに来る孫ガキ
ヒラヒラと毛を逆撫でた
ガまんできないニャ
ヘソ天ごろんち
玄関から虫が入ってくるのが見えた
パワーホール
P P P P
Oh!腕は一つじゃないだろ?
油断禁物、締めろイチモツ
光物が先に狙われんだ
勝利というダイヤモンドを取りに行く
からには手段も九段も数えてらんねぇ
Wow!こんな戦い見たことないぜ
正念場のスプリング、侮れない可能性
ジャンプもスクワットもないんだ
ポッシブルかインポッシブルか
弾むリングしっかり立って見極めろ
Every!オールマイティを意識するんだ
迫る壁にはキック、心にジャブ
どんなことにも真摯にパンチ
どこにふっ飛ばされても
ロープで返ってくるような柔らかい体を
Powers!Powers!Powers!Powers!
さまざまなチカラ
ガチムチにstrong
たとえ非力でも
ドーピングはなしさ
ドーパミン、自信だけにしとけ
ガリョクブソクでも
白いキャンパスよりドリョクと絆を
頭もデッカイ筋肉
Power!!
パワーがあれば何でもできる
強さを作れ
それが強さだ
弱さを作れ
それも強さだ
Power is not died!!!
黙れ
しーっ。
黙っておけ。
お前が口を出すことではない。
これは罠である。
さっきからワナワナと喚く心の言う通り。
抑えろ。
抑えられるのはお前だ。
バカ正直に叫んでみろ。
お前の耳障りでマヌケな声が、
世界に響き渡る。
由々しきウエディング会場では、
幸せの旋律にお前のコードが絡まって、
どこの馬かも分からない腐った骨の香りがドレスを汚す。
勇勇しい壇上では、
神に祈る歌はお前の声にひねり殺され、
この身を捧がんとする光の雄叫びは、
お前の声で失明した。
しーっ、ね。
死ね。
敵に勘付かれた。チャンスを逃した。
お前のせいで全て台無しだ。
飲み込め。刃物のような言葉。
お前が吐き出したものだ。
食え。お前のもので、私の傷だ。
喉へ持ってこい。首を締めてやる。
私の願いをたった一つの非道で、
シャンパンタワーのようにグシャグシャにしやがって。
そうだ。
お前の口は神だ。
一言で何もかも動かせる。
いい気になってんだろ。自分に酔いしれてるんだろ。
あぁさぞ苦しかろう。
神よ。
安心しろ。私が今元の居場所へ送ってやる。
口を閉じろ。
口を閉じろ。
口を閉じろ。
口を閉じろ。
二度と喋るな。
しーっ。
死ね。
豚に念仏、馬に真珠。
あるサバンナに泉があった
豚はそれを見つけた
美しい泉だと豚は思った
近くに誰もいなかったので
ヘトヘトだった豚は
思いっきり飛び込んだ
泉は池というのは過言すぎるほどで
浅かった
豚の汚れはあっという間に泉を濁らせ
一息癒された頃には
豚の疲れを吸い尽くしたように
真っ黒になっていた
豚はとても思った
美しいと
美しい泉だと
豚は思った
豚の目は光っていた
泉には何も映らない
また
豚は企んだ
ここにしばらく真珠を沈めて
誰にも見つからなかったら
泉を自分のものにしよう
豚はキラキラ輝く真珠を
真っ黒の泉に沈めて自身も身を隠した
しばらくすると
豚を追いかけに馬の群れがやってきた
「クソッ。あのブタ、どこ行きやがった。」
「真珠を探せ。何処かに落ちてるかもしれん。」
「あの輝きをこんな砂漠に落とすだなんて何たること!? 早く見つけ出して。」
「ブタにあの真珠の価値なんか分かるものか。きっと追手を巻いたと思ってここらへんに捨てていったに違いない。」
馬の群れはしばらく蹄を立ててせかせかと
砂を歩き回って真珠を探したが
次第に疲れてきたので
泉に集まってきた
「何だよこの水。きったねぇな。」
「黒すぎて石油かと思ったら、違うようだな。」
「そうだね。この水?はすごい臭いだけど、アイツらはもっと臭い。俺たちの糞より臭いんだ。」
「それに環境にも良くないわ。しかも煙が出るの。本当、気持ち悪い。」
馬の群れはしけった様子の泉に
すっかり興醒めし
こんな熱い中で油っこい話は良くないと
諦めて去っていった
馬の群れが見えなくなると
豚が泉へ戻ってきた
中に入ってみると見事に真珠があった
しばらく経って
豚は真珠を高値で売った
その金で泉のある土地を買い取った
泉は完全に豚のものとなり
真珠はどこぞの馬かも
分からないところへ行った
確かに豚は真珠の価値が分からなかった。
分からなかったが、
実は豚は価値のないものを集めたがる、
狂ったコレクターだった。
豚にとっては真珠は無価値で、
自分の汗や皮脂汚れで濁った泉こそが、
価値あるものであったというのは、
まさに馬に念仏だなぁ。
と、豚は思ったことだろう。
幸福って
あの時、一人この世界に欠けたまま生まれた。ペットボトル程度の軽くて小さな子。
泣かずに抱えられ親の顔を見る事もなくポッドの中に入った、科学に生かされ息も出来ずに生き延びた子。初めて見た時の姿は安らかに呼吸器を取り付けた姿。苦しいながらも三ヶ月であの世に混ざった。
生き続けるのが幸福なのか。あの子にとっては苦しい続きだったのではないか?
お金持ちと女の子(または男の子)
しょくもつれんさのはしきれ
たべさせあう
かみとからだのふりをして
ちがうね
まったくべつもの
こころがいうの
うなづきあう
「かわいそう」
つながれるものは
かさなるものは
ひとつもないから
だからこその
ぜんかいいっち
で
のあとは
なにもなくなる
たんさんじゅーすと
じょうおんすいを
せなかむけあって
いっきでのんだ
どちらにも
あわが
ぷくらぷくり
せかいのちゅーしんは
どこにだってある
ただのほねになるけど
じぶんのほねのしろさは
しりようがないから
がぞうおくってと
ともだち(らしき)に
たのんでおいた
しょくもつれんさのはしっきれ
たべさせあう
オキザリス
地面の近くで咲く
柔らかくて細くて小さな桃色の花
オキザリス‥‥
クローバーみたいな三つ葉に
くるくるくるりんと
後ろにカールした、立体的な花びらの繊細さに心を奪われる
「ぼくはモテない花、雑草です。」
寂しいことをいう
「それは違います。あなたは美しい花相を持っています。」
「花相って何ですか?」
「人間でいう生き様です。
その証拠に
あなたは、殺風景なわたしのレモンの木の元を
控えめでありながらも気品を持って
あなたらしく飾っています。」
「そんな風に言われたことはありません。」
オキザリスは、
地面を見つめて、恥ずかしそうにいうと
レモンの木の元を
少しずつ、美しい三つ葉と花で
飾っていった。
BAR「Creative Writing Space」
ニーズがあるやらないやら、まったく見当がつきませんが、
毎度おなじみの思いつきで、BAR「Creative Writing Space」を開業いたしました。
皆様にお使いいただけなければ、すぐに閉店いたします。
電脳空間の片隅にある、吹けば飛ぶような小さなBARでございます。
一杯引っかけた体で雑談していただけるスペースをイメージしています。
「Talk」がさほど機能していないことも踏まえ、もっとカジュアルに使っていただけたらと思っています。
【ルール】
・ワンドリンク制です。必ず何かお飲み物をご注文してからお話しください。ノンアルコールでも構いません。
・お代はいただきません。もしスペースコインをお支払いになりたくなったら、他のお客様に奢ってあげてください。
・酔っ払いすぎにはご注意くださいませ。
Creative Writing Space事務局
2026/03/21
批評・論考
つきなみ怪談 火の輪くぐりをするB枝ちゃん
そんな馬鹿なと言われる話ではある。
小学校四年生のとき、B枝ちゃんという同級生がいた。彼女が火の輪くぐりをする。火の輪はグラウンドで遊んでる時や林でどんぐり拾いしている時なんかにB枝ちゃんが、
「あ、今だ」
と手を叩くとあるのだ。サーカスでライオンが潜って拍手喝采される、あの火の輪を想像するといい。
まさにあんな風にB枝ちゃんは、だっ、と走り
颯爽と火の輪を潜り抜けて見せるわけだ。私だけでなく何人かの友人がそれを目撃していた。後に証言を翻した子もいるが、とにかくB枝ちゃんはたまに火の輪くぐりをしていたのだ。
潜り抜けると火の輪はふっ、と消える。
B枝ちゃんは得意げに、笑っていた。
火の輪くぐりがあった日には、町の何処かでライオンが目撃された。川の中洲や公園の砂場、デパートの売り場など。しかも、どのライオンもあくびをしていたという。そんな噂が同時期に流れていた。
ある日、私とB枝ちゃんが掃除当番の日に教室に火の輪が現れた。いつものようにB枝ちゃんが火の輪に向かおうとして、拭いたばかりの床で足を滑らせた。
私が、あっ、と声をあげた瞬間、火の輪は消えてしまった。
B枝ちゃんも呆気に取られていた。
そして、その日にはライオンを見たという噂は聞かなかった。
数日後、町で野犬の群れをみたという噂が流れた。それから、B枝ちゃんの火の輪くぐりを誰もみていない。
青空
薔薇が伸びている
天に向かって
いつか少女も
花と羞じらう
乙女となろう
最後の散文詩 4
昨夜、グノーシス派の星詠み人が、俺に明確に「退却」の信号を送ってくれた。その前に満月が気にかかっていたが、俺のエゴはすっかり記述し、明確にこころ、空洞になっていたので、その空洞にしっかり満月〇の影響をおさえこみ、ただ荒れるタイムラインの波を冷静にわたる事ができて、その日時を把握する事ができた。2026年6月5日。そうして伝統主義的なある若い詩人と僧侶の会話が記述されたテキストへ、もう一度目を通しつつホーム、であっても問題がある。わたしは、サーモスのカップからコーヒーをこぼしてしまい、コーヒーには砂糖が入っているから、虫が来るんじゃないの、と言われて、そそくさとティッシュを手にとって、これでも足らない、これでも足らない、と、とにかく、そのデスクの下をふきつづけた。汗かいた。そして、ファックス兼コピー機から排出された、これは書類を確認すると、そこへ妻の詩、が混じっていることに気がついた。そうだった、わたしの仕事は沢山あるけれど、妻の詩集を編む、ということも、これは一つの重要なワークになっていた。さいきん、ともかく、苦手な散文詩、をしっかりと書けるよう、最後の散文詩、と冠して、ともかく書いているけれど、 この
空白
改行
多い
行分け詩は
一抹の清涼剤のように、とかく目に凝る、わたしにやさしい詩ばかりだ、と思った。
妻はそれらの詩の束を集め、トントン、と角で打ってまとめると、一つ、一つにしっかりと目を通し、まとめていった。わからなければ手伝った。その妻の詩が、今後、どうなるのか分からない。
そうしてわたしは改めて、昔のことを思いかえしていた。工業高校、みんながしていたのは、宇宙の話。そしてセンセイの話。2ちゃんねるの話。北朝鮮のミサイルの話。わたしはどの話にもタッチすることができず、しょうがないので、図書室に向かい、なぜだか、中原中也の詩集を手にとって、言葉の意味もわからず、意識はゆやーん、ゆよーん、していたのだった。そう、詩は今のようにひらかれたものでなく、ただそこに、こっそりしているものだった。
ここまで粒さ、書いてみて思うこと。「ほんとうに」この詩をインターネットの海に流すのか。流れるのか、だれかの目にとまるのか、「こっそり」は共有されるのか、ともかく「ひっそり」と扱って、なんてそんな時代でなくなってしまった。今がいい時代なのか悪い時代なのか、わたしにはわからない。
ただ先に述べた気骨稜稜な、星詠みの女性がただ「退却」のサインを出したので、静かにぼうっと窓から外を見るにつとめる。
妻が、すべての彼女の詩の印刷された紙を、フォルダーの中へ閉じ終わるまで。
最後の散文詩 3
悔い改める、とは何か。悔い改める、とは何か。
俺は檄を飛ばされた。四方八方から石を投げられた。
そこに怒りがあるという地を揺らし沸き起こる怒りがあるという。結局、俺は消えるべき存在なのだが、そこにシラネの花があった。花は語りかけた。結局、お前はお前の詩を書きつづけるしかないんだよ。それは呪いのようなものなんだよ、一生付き合ってゆくものなんだよ、と。反省しても反省しても、悔い改めても、悔い改めても、それで足らないというのならば、もう、それは命の問題になってくるであろう。しかし、呪いがかかっている限り、私は花のうつくしさにすがってしまう。
ある日の晩だった。
まだXがTwitterだったころ、四人か、はたまた五人が、ツイキャスで全員合流できたことを喜んでいた。
そこから何かがはじまるのだと思ったけれど、結局のところ、俺はただのミーハーに過ぎなかった。痛感したのは、本当に参ってしまって、口の中から、ぺッ、と血を吐いた、ただそれだけの事を、詩にしてある詩の投稿サイトに投稿したらば、前時代的なんですね、と言われ、おまえはシステムの事なんてからっきし分からないだろうから、何もする事ができないタダの草の民、その一葉でしかなくて、それが踏みつぶされようが、なかった事にされようと、それはわたしにとって全然関係のない事であって、そうして私のような現代人こそが、そもそも現代詩を詠うにふさわしく、そうして順当にただ詩集を編むことができるのだ、と。ああこれ納得し、私なんてただ歌を諳んじていればいいのだと思った。歌を諳んじるしかないと思った。ナカタさんに電話をかけると、彼は「いや、ただきみがやりたいことをすればいいんだよ」と応えてくれた。ナカタさんにとってはそれは当然の答えであって、私の悩みなんて見送られる一羽の鴎の飛行に過ぎなかった。何の話をしていると思う?私は私の話をする事しか結局できない。
「きみはあまり交渉をしない方がいいんじゃないかな」「ただ、きみは喋る事が面白いからもっと喋って欲しいかな」
それは私を助けてくれた事のある方の言葉だったので、前時代的ながら、ひたすらその欲求にこたえることに没頭した。そして、さよならに反対、そういう詩を書いた事もあって、しかしその詩を認めてくれたのは、さよならが得意な人だった、っていうオチ。そうして今私は穴の中。ここはかえって安全なんじゃないかな、私はただわたしの愛するものやひとたちとただただ、好きな事を話していればそれで済む話なのに、どうしても、ほんとうは自分が、その怨念の側の人間なのではないかと、ふと、どこか気づいてしまった。ただ、海の方を見つめている。不甲斐ない後輩で済みません、後輩はただ、ひたすら寮長の部屋を片づけるのが基本で、そうするとふいに、ないしょだからな、と言って一本のラッキーストライクをくれる。火は危ないから、こっち向けろ、って言って、手で、そっと私の口にしたラッキーストライク、この風をよけて、つまるところ、一体、私は何に向かって怒りつつ、歯ぎしりゆききしつつ、ひたすら片づけをしているのかがわからなくなる。芒洋、とする。
そんなとき、俺はナカタさんの言葉を思い出す。
「きみがただきみのやりたいことをすればいいんだよ」
のこりび Ⅰ
「もう一度会おうね」
夜に包まれたあの日
僕の世界が優しく
崩れ去ったあの日
あの日の夢を見た
まだ僕の魂の
どこか奥深く
ずっと刺し続けている
かつての日々の残影
時計が示すのは
星々の果て
寝室にそっと訪れた
静かな黎明の中
頬に流れた雫
Star Violet
痛みを越えて
この宇宙に解き放とう
夜の夢は見終わった
夜明けだ
これから僕の人生が
どうなるか見ていこう
とにもかくにも
それは僕を染め上げて
そして何度も詩となっていった
痛みを越えて
夜明けを巡ろう
有機交流電燈を点滅させるのは
昏睡している
君の心と涙になるため
僕はそこに至るための
息の仕方を忘れてしまったから
君の夜明けのための灯り
痛みを越えて
僕のためだけに火をつけよう
最後の痛みはまだ覚えているだろう?
雨の日に踏みつけられた菫は
また咲き始める
虚空を覗き込んだ
そのときに見えた星
それが恐ろしく美しかった
痛みを越えて
ただ星屑に祈ろう
菫の花畑に舞っていく
翡翠に輝く粒子たちは
きっと夜の果てまで
僕の答えを
届けていくだろうから
星針盤
君はいつも空に星を伸ばしていた
届かないと知っていて
だからこそ
いつもそうしていたんだ
君が好きだった古い詩を
そっと懐に抱いて
歩き始める
まだその詩の脈動は生きている
世界の夜
果てのまた果て
君が手を伸ばそうとした先
プレシオスの鎖の向こう側
君にとってそうだったように
遠い昔の誰かの詩が
今の僕にとっても
そこに至るための
ささやかな羅針盤
夜の鳴き声が
草むらにこだまするころ
僕はそっと
君の好きだった詩を頼りに歩いていく
詩が指し示す星に向かって
辿り着かないと知っているからこそ
図書館
夢をずっと見ていたんだ
永久の中に沈んでいく
図書館の夢を
図書館は一つの宇宙だった
26文字といくつかの記号
宇宙を表現するには
たったそれだけで十分だと
そう言わんばかりに
図書館は存在していた
夜の果てのさなかで
図書館は星であった
図書館の中に
降り注ぐは
万物不滅の雨
無色透明の水銀灯
照らすのは
存在した
あるいは存在しなかった
書物の表紙たち
君がいつか
僕の書いた
あるいは書かなかった
詩集を手に取りますように
帰路
夜の果て
僕はそっと息をした
青い夕暮れの狭間
僕は畑の間にぽつぽつ立つ電燈を
たよりにして歩みをすすめる
君が僕の手を引いて歩んだ道
今は僕が一人でゆかねばならぬ道
夜の果て
僕はそっと涙をこぼす
空を満たしていた青は
その最高密度をますます高めながら
やがて星を映していく
夜の果て
僕は道端に咲く菫を見ては
心がそっと痛むのを感じる
千年
青い夜に沈む
最高密度を誇っていた
あの果ての教室の夜
教室の教卓におかれていた
水差しの水、コップに注ぎ
いまはどこへとも知れぬ人のために
そっと飲み干していく
喉を伝っていく冷たさは
僕の空を疎んだあの人の言葉だ
“君が嫌いだから生きてるんだ
君が書き散らしたものの終わりを見るためなら
きっと千年でも生きてみせる“
黄色い落ち葉が散っていく
共に並んだ帰り道の途中で
あの人はそう言った
夕ぼらけの中の記憶
結局はその百分の一も
見届けることもせず消えたのに
それでも僕が懐かしさと
あるいは背筋の冷たさに襲われるのは
心を突き刺すほど冷たい風が
あの人の歌声によく似ていて
きっと今でもこの世界のどこかで
歌い続けているのだろう
千年後の僕の終わりのために
僕はコップを置くと
教室の窓を開けて
僕の魂をずっと刺し続ける
この冷たい風をそっと浴びる
千年続く風を
問わず語り/きのうはあした、終わりのせかい。
\画像が挿入できたーっ/
これでnoteテキストに、ちょっと寄せられる。
普段のお食事や、北海道の景色を投稿することでエッセイがより私らしく書ける。けど、前に言われたんだよね。
「それをここでやる必要があるのか」
エッセイを、私の作品とは言わない。
ただ好き嫌いは分れる内容だということは自覚してる、見たくないひと、私がここに居たら嫌なひと・・・・・・いる、かも知れない。
でも、明日の自分にちょっといいことを残したい。
それが今日の私にできること。
文芸の一分野として、私というカテゴリがある。それは誰にでも等しくあり、社会通念よりも合理的配慮が求められたら文芸ではなくなってしまう。私は過去/平成の黄金期に「趣味の園ゲイ」という、えねえっちけー某番組タイトルを文字って園芸と家庭菜園のブログやってた。ホモの種まき。今だったら絶対怒られる、もう二度とあんなことできません。それでもよかったあの頃と今は違う。
昭和は「察する時代」
みんなそれが当たり前にできたから、何でもないとされていたことも今じゃ時代錯誤。
これは表現する側も、見る側にも変化として起きている。とても顕著に。
だけど、文芸や文学のジャンルがずっとあるのは、書き続ける人達がいるから。
書いて示すことの大切さを、私は誇りたいなと思うわけで。
さて、N局の話を度々していますが、今は家庭で視聴していません。
実家にいた時は一日に何度か放送される『みんなのうた』楽しみに時計を確認したものです。病気で学校を休んだ時、夕方まで家族は戻らないのでお留守番がてら、ちょっとだけ起きて、お咳が出ないようそっとして視聴。
優しい歌
元気になる歌
心に残るさみしい歌
学校で習うより、多くの歌を覚えました。
皆さま、どんな歌を覚えていますか。
私が好きなのは、三大トラウマソングのひとつ #まっくら森の歌
ねこちゃんが不思議な森に迷い込む、おとぎ話。
幻想的でミステリアスな映像に谷山浩子さんの「あの声」妖しくも美しいという表現がぴったりで、まっくら森を心のなかで歌うのはいつも寝る前。
子供の頃は抽象的思考で、暗い気持ちになると心が落ち着く。とにかく端的で、具体的なことは考えない。目に見えるものに気が付くことよりも、心のなかにいるもう一人の自分と手を繋いで遊んだほうが余程たのしく、不安やネガティブな感情を盛り上げる方法を性質的に身に着けなかった。
大人に叱られるような、危険なこと、それも興味はあったけど。不思議と妖しくて美しいものを好み、その先にある危険を予測できずに遭遇した時、驚きはするけど怖がらない。変なの、その程度。黙ってスルーが最適化、客観的な論理的思考の利点は「無関心でいられる」こと。
たのしいこと
怖いこと
みんな絵本を閉じるように終わらせる。
区切る、行為はそのものを地続きにさせない。
これは子供の頃に覚えないと大人になってからでは習慣になりません。
だから、心配するあまり何もできなくなってしまう人や不安が先立ち怒ってしまう人は、学びや教えが無くてずっとそのままなんだろうなと客観視。いい悪いの話じゃなくて、老いも成長のうちなので止まるべからずと言いたい。
いい年した中年ていうのは、自分のことを子供のままだとか都合のいいことを言うけど。
若さって、なんだ?
宇宙刑事ギャバンは「振り向かないことさ」と言いますよね。あれって前を向いて歩くことで進む前提があって後ろを見ない心のシンボルを歌い上げています。心の中にどこか後ろめたさがあって周囲との差を顧みないことを格好つけて、振り向かない。それがスルースキルだと言ってる奴はただの現実逃避で言動から情けなさ滲み出てくる。
そうはなりたいない、と言う人に関しても。もう、なりかかってる上での否定。この確率バカ高い。
だって全く身に覚えがない話だと、遠くから見た時の解答が言葉になって出て来るから。共感を寄せようにもちょっとわかんねぇなを置いて、自分はそっち側じゃないんでになる。と、思いませんか。
そんな話はどうでもよくて、暑いから光の速さで自販機にダッシュさっ!!←これがスルースキル/場面展開の上級者
いつまでも同じ所に留まるのは変化を受け入れないある種の安定志向で、上手くいかないことでもいつかは自分が評価されると生きづらさを全うするのは、アップデートする快適さを知らないから。ただこれも特性のひとつで、規則性/自分の法則を第一に繰り返すことで気持ちが安定していられる人もいるからね。動けない理由があるのなら、そうした方がいいねと私は愛のある方へ走り去る。
ギャバンって、なんの話だよ。
もう滅茶苦茶だぜコイツ・・・・・・て思った方、もしかして、今年から放送されてる超宇宙刑事ギャバンインフィニティご存じない?
最高議長が栃木のスター・関俊彦さん。
これ、なかなか話題に出す人いないネタですけど、あえて言おう。戦隊シリーズの終焉と共に過去のメタルヒーロー、宇宙刑事シリーズが現代版になって放送開始。
私は全然知らないので(昭和男子が見る番組は完全スルー、だって怪獣とか性善説が大っ嫌い)書店でふろく付きの雑誌・てれびくんを3か月連続で貴之におねだり。
「えっ、またそれ買うの」
「ポケモンついてる」
「ギャバン、どうした・・・・・・」
どっちも私のお友達だと本を掴んで貴之のディフェンスを交わし、ここでも光の速さでダッシュさっ!!←追いかけてくる貴之は何事も無かったようにお会計/私はポイント泥棒
大人になってから対象年齢が低い本を読むと、面白くてさ。
わすりやすさ=面白さは、直の接続。
N局の番組も当時は習慣で見ていたけど、中学くらいになってから「おはなしのくに」絵本の朗読番組なんですけど、ハマッた要因は表現力。物語の内容はもちろん、稲むらの火や赤い蝋燭と人魚は印象深かった。体現と映像の持つ力については、まっくら森も同じで、あれは不思議な動く絵本です。
トラウマというほど、怖いものか。
絵を題材にした話だと、江戸川乱歩・押絵と旅する男。
パノラマ島奇談を書いた後、自己嫌悪に陥った乱歩が筆休みに書いた短編のひとつで、もっとも無難だとされているけど、さすが乱歩の世界観。映像で見れないか探したらYouTubeで今から17年前に投稿された自主制作アニメーションが一番雰囲気ありました。アニメーションも好きなんだよね、プライムで観れる「血のお茶と紅い鎖」とか、おすすめ。
まっくら森は歌詞は詩の表現に近いものがあります。
歌・谷山浩子さんはゲド戦記・テルーの唄の歌詞を書かれている方。ゲド戦記は歌を聞きたくて映画を観に行きました、懐かしい。
まっくら森は こころのめいろ
ちかくてとおい まっくらくらいくらい
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・
・
・
おしまい。
最後の散文詩 2
雪、なのか、空からふりくる水の結晶化、なのか。そんな事を考えながら俺はそんなものがふる、ふるさとへ帰ってきた。とうさんは言った。「新幹線の中で弁当は食べたのか」食べられなかった。不憫、不眠症に陥っていた俺は、水しかとれなくなっていたので、その言葉にまなこを拓かされた。
「田中さんは天然だね」 俺は俺を知らなかったから、その言葉に於いてやっと俺は俺たらしめる俺について考えざるを得なかった。と、ここまで書いて「俺」の主語が多すぎる。
詩龍。私はあなたの背に乗ってもう遠くへ行くことはできないだろう。その代わり、ワイアード、インターネット空間に於いて、色々な人の言の葉、憚りながら、その葉を撫で、落ちるときにそっと手を伸ばし、そしてまたあのピンクの、さくらの季節に「さようなら」を告げる練習をくりかえすけど、詩龍。あなたのように巧く「さようなら」をやはり伝える事ができない。以前、私の友が言っていた、「突きつめると、日本という島に引き篭もっているだけじゃないですか」という、もうどうしようもない正論、或いはコンプレックスを解消すべく、私は今日も筆をとっているけれど、コンディションは最悪だ。
本を広げながら、世界地図を眺めながら、ながら勉強。俺はもう逐一、ムラカミハルキを読んだりムラカミ、つまりは長老格の意見を参考にしつつ、オリジナリティー?バイタリティー?気概、気骨というの。その骨が、平和、平穏、というもの少し触れるとき、それをホラホラ、これが僕の骨だ、とはもう書かないようにしたく、しかしそのとき、なんと言えばいいのか。「戦争反対」という言葉が封じられているのであれば、ただ単純なイメージの横すべり、からスキーへ行って、グングン、加速してゆく。木々の間を滑らかに抜けてゆき、くにざかい、なのか、こっきょう、なのか、ともかく、そのトンネルをビュウっと、抜けてゆくと、それは「ほんとう」の雪国。川端康成。そうしてそのまますいすい抜けてビュウ、からひゅうっと口笛を吹けば、火事が起こり、女が空中に舞うのだけれど?あれ、そんな小説だったっけ?ってもう確認するそもそもの文庫本を私は閉まってしまった。ともかく、呪文を、偈を、もうなんだっていい、帰命無量壽如来・・・、高速、阿弥陀如来の加護の中へ掌握され、詩龍、その背に、女はポーンと乗せられる。後はもう、これでなんとなかなるな、と思ったら私は懐のウィスキーをチラと見ると、このひらすら下ってきたルートを、スキー板を背負って、トボトボ、歩いて帰るのであった。
という夢を見た。おっどいたねぇ。
四月は残酷な季節だ。なぜならば、さくらの木の下には肢体が埋まっているのだし、だから奉献酒、わたしたちはただ、黄泉の国を思うとき、それは好奇心からどきどきしてしまうこともあれば、単純、酒を飲み、和やか、穏やか語り合わねばならない。
しかし、私はもう行くよ「煎じ詰めれば、詩ってつまらないよなぁ」なんて声を聞いてしまって、今、中原中也の詩集を、クローゼットの一番奥にしまってしまった、ところ。ところ。ところ。ところ。おもひでぽろぽろ。
不在の反復
開闢の薬と草むしり
天地創造の物語は根詰まり
荒々しく吐く吐息
暫しの別れのように投げ出した橋
私の胸には残り火がちろちろと
音を立ててまだない
やせちのつちをほるて
爪につまるつちの
その塵芥、星々の残滓
土龍は厭うべき形を持ち眠りにつく
最果ての村にある
鐘の音の渋滞は
静寂のもとに成り立つ
裸でかけていく童らが
口々に泡を吐く
汚すことの出来なかった
意味論統語論
反故や齟齬鯨飲に印契
御伽草子に焼かれて
煮えたぎる人の成り立ちには
蟠りがつくる輪郭がある
遍歴のものは
十字路にたつと
杖を放るようにできている
真である時に火でないもの
を出荷して待ちわびる午後
農村は
ねじりパンを帰属の証として
ささげ持つ
水車を使う権利があるのだ
粉を引く者とくすねないように見張る者
それぞれの手に握られた同化の烙印
都市とは
掘り起こした言語哲学の飢えに
そそり立つバブルのバベル
蜂のように夜伽に供え
暁の幼年を探すだろう
私はまたしても
火の照らす
燃え滓がまだない
途絶えるためにはつねに
断念を繰り返す
語りえぬものこそ
騙る禀質を傍らにならべ
蹉跌を味わい
もがれていく腕や足の
絶え間なる調べ
過去作短編『水族館になりたい』
曇り空が好きだった。彼女と会った日も曇っていたから。私は毎朝散歩する。朝が一番季節を感じられて好きだ。いつも同じ道を歩く。十分ほど歩いたところにある公園まで行って引き返す。十月の空気は透明。風は白い。空には羊雲が浮かんでいた。
空き地のフェンスに朝顔の蔦が絡まり、花が疎らに咲いていた。あまりに可愛らしいお花だったから、思わずスマートフォンで写真を撮った。上手に撮れなかったけれど、Twitterに投稿した。すぐにいいねが何件かついた。私はスマートフォンをバッグに戻してまた歩き出す。
昨日、私は仕事を辞めた。主治医から療養するように言われて、療養するくらいなら辞めてしまおうと決めた。障がい者雇用だったので、給料はそれほど望めるものではなかった。だから、あまり未練はなかった。
高校三年の時に抑うつ症状が出るようになり、まともに学校へ行けなくなった。外出すると動悸がして、最悪過呼吸になった。原因はなんだったのだろう。交友関係は良好だった。いじめられていたわけでもなく、当時恋愛らしい恋愛もしていなかった。ただわけも分からず外に出ることが出来なくなった。
何とか高校卒業はできたものの、大学進学はできず、ひきこもりになった。
母の勧めで心療内科に通うことになった。母が送り迎えをしてくれた。
主治医は優しげな初老の女性だった。初めのうちは主治医に何を話せばいいのかわからずに、わけも分からず泣いてばかりいた。そんな私に主治医は静かに微笑んで「ゆっくりでいいからね」とだけ言った。
二ヶ月泣きはらした後、私は主治医に「死にたい」と告げた。どうしてそう思うのか私にもわからなかった。私は精神科に入院することになった。
そして、彼女と出会った。六月。その日は一日中今にも雨が降り出しそうな曇り空だった。入院して一週間。私はほとんどの時間をロビーで過ごした。個室をあてがわれていたけれど、部屋にいるとどうしても泣いてしまうから、仕方なくロビーのソファーに座ってお茶を飲んでいた。
誰とも話したくなかった。話しかけられると泣いてしまう気がした。だから、ロビーに人が集まり出すと私はそそくさと部屋に戻った。それでも、話しかけられることが何度かあって、その度にあいまいに笑って相槌を打つだけにした。
お茶を飲み終えて、部屋に戻ろうとした時、後ろから「あの、」と誰かにに声をかけられた。私はしまったと思った。気づかないふりをして立ち去ることも出来たけれど、私は振り返った。痩せた背の高い女性が私の後ろに立っていた。彼女は美しかった。すらっとした手足。色素の薄い肌。茶色い瞳。薄いガラス細工のようにきらめいて、それでいて触れると壊れてしまいそうに見えた。私は見とれてしまった。彼女は眉をゆがめて「ごめんなさい、いきなり話しかけて」と言った。私は慌てて両手を振って「大丈夫……です」と答えた。
彼女はあゆみと名乗った。苗字も教えてもらったはずなのに思い出せない。あゆみは同い年の大学生だった。あんなに人と話すことさけていたのに、不思議とあゆみとは何事もなく話すことができた。あゆみは入院してきたばかりで、人恋しさに歳の近そうな私に声をかけたのだと言った。私たちはたくさん話した。あの時、何を話したのか思い出せないけれど、たわいの無いことだったと思う。お互いの趣味や、好きな歌手だとか、そういった内容だった。
私はあゆみと話しながら、人と話すことは楽しかったんだとしみじみ思い出していた。高校時代の友達との何気ない会話の端々が脳裏にチラつき切なくなった。でも、泣かなかった。泣いたらあゆみと二度と話せなくなる気がした。
夜になっても私たちは話していた。看護師さんに寝るようにと注意されてもロビーで話し続けた。山奥の病院は星がよく見えた。あゆみはこんなにたくさんの星を見るのは初めてだとはしゃいだ。私はかわいいなぁと思って思わず笑った。
「ねえ、ゆきちゃん。私ね、水族館になりたいの」星空を見上げながら、あゆみは突拍子のないことを言った。消灯したけれど、ナースステーションの灯りのおかげで暗くてもお互いの顔がはっきりと見えた。あゆみの長いまつ毛に私は見とれていた。
「え?どういうこと?水族館になるの?」
「うん、水族館になる」とあゆみは力強く答えた。
「どうやって?」
「わかんない」あゆみは笑った。私も一緒になって笑った。
「水族館と言っても深海の生き物を集めたいの。館内はずっと薄暗くて夜みたいで。そういう水族館に私はなりたい」
「なんかよくわかんないけどあゆみちゃんが水族館になるなら、私は飼育員になるよ」
「やった!」あゆみは小さくガッツポーズをした。私はあゆみが言っていることを理解出来ていなかった。けれど、彼女の仕草ひとつひとつから会話を楽しんでいることが伝わり、嬉しかった。私も楽しかった。
「あ、流れ星」あゆみが空を指さして言った。私は彼女に見とれていて、流れ星を見ることができなかった。
「グッドなタイミング!水族館になれますようにってお願いした」と言ってあゆみは私の方に振り返り、微笑んだ。その時私はふと彼女はどうしてここに来たのだろうかと思った。けれど、訊いてはいけない気がして言わなかった。
閉鎖病棟での日々は単調だった。私とあゆみは常に一緒にいた。二人きりでロビーの隅っこでお話ししていた。けれど、お互い何故入院したのか話すことはなかった。今日は調子が悪いとか薬が合ってない気がするとかそんな話はするのにもかかわらず。
「ねえ、ゆきちゃん。外出許可が降りたらどこに行きたい?」
「どこがいいかなぁ、とりあえずコンビニかファミレスがいいなぁ。病院食不味すぎ」
「わかるー。不味いっていうか味しないよね。でも、私は薬局行きたいな」
「薬局?どうして?」
「プチプラ買うの」
「プチプラいいね」と言いつつ私はメイクらしいメイクをしてこなかったなと思った。友達はしてたけど、私はあまり惹かれなかった。私はその事を素直にあゆみに話した。
「えー、もったいない。ゆきちゃん絶対メイクしたらもっとかわいくなるよ」
「そうかな」私は満更でもなく頬が熱くなるのを感じた。
外出許可が降りたら二人で薬局に行く約束をした。薬局に行ってその帰りにファミレスでご飯を食べるプラン。
しかし、計画は叶わなかった。あゆみが突然、退院したからだ。
彼女は私に「ほんとにごめん」と言って折りたたまれた紙切れを渡して足早に去って行った。部屋で紙切れを広げると電話番号とLINEのIDだった。
携帯を使える時間は限られている。予約制で一人三十分。携帯の時間、すぐにあゆみにLINEを送った。すぐに既読がついた。
「ちょっといろいろあっていきなり退院決まっちゃった。ゆきちゃんが退院したら絶対会おうね。メイク教えてあげる」
「ありがとう」とだけ返信した。あゆみは任意入院だったのだ。本人が退院したいと言えば、退院できてしまう。私は医療保護入院。外出の許可もまだ降りていない。彼女がなぜ急いで退院を選んだのか分からない。当然だが、あゆみに関して知らない一面がたくさんあるのだと思った。そう思っただけであゆみとの大きな隔たりを感じてしまった。
あゆみがいなくなってから気づいたことがある。私は泣かなくなっていた。人に声をかけられることにも平気になっていた。私はもう退院しても平気なんじゃないかと思うようになっていた。そんな私の様子に主治医は外出許可を出してくれた。
さっそく、私は外出した。近くの薬局へ。化粧品売り場をウロウロした。アイシャドウひとつとっても種類が多すぎて、何が自分に似合うのか検討もつかなかった。結局何も買わなかった。帰りにコンビニに寄っておにぎりを買った。味がある!それだけのことに感動した。でも、そう感じたのは最初だけで、散歩がてらにコンビニに行って何か食べるようになると格別美味しいものでもないなと思った。思えばこの時から散歩が好きになった気がする。同じ道を歩くのだが、日によって、時間によって、空気が違う、景色が違う、すれ違う人の年齢層が違う。そういったかすかな変化を見つけることが楽しかった。
あゆみとはこまめに連絡を取り合っていた。彼女は大学生活を満喫しているらしかった。退院したら会おうと言っていつも会話は終わった。なんとなく私はあゆみと会うのが億劫に感じてきていた。もし退院がスムーズにできたとして、私にはそこから先の道が何も決まっていなかった。また外に出ると体調崩すようになるのではないかと心配だった。それに就職活動をしていくだけの体力が自分にあるとは思えなかった。そんな不安からか、それとも少しの妬みからか、大学でいきいきとしているあゆみを想像すると、私は複雑な気持ちになった。彼女には彼女の生活を楽しんでもらいたいのに、素直には喜べなかった。
十月。私は退院した。空は曇っていた。久しぶりに帰った実家はどこか狭く感じた。自室に入ると懐かしさで胸がいっぱいになった。たった四ヶ月家から離れて暮らしていただけなのに。
両親はまだ退院したばかりだから、ゆっくり休みなさいと口を揃えて言った。それもそうだと思った。だから、退院して最初の一週間は何もせずにのんびり過ごした。毎朝散歩するようになったのはこの時からだ。
あゆみと再会した。再会のはずなのに、入院中のパジャマ姿しかお互い知らなかったからはじめましての気持ちになった。あゆみは相変わらず痩せていたが、ブラウンのカーディガンに、黒のワイドパンツ姿で大人びて見えた。「かっこいいね」と私が言うと、少し照れながら「ありがとう」とあゆみは答えた。二人とも妙に緊張してぎこちないやり取りだった。
約束通り薬局に行き、あゆみが私に合いそうなプチプラを選んでくれて、その後ファミレスに行った。
退院前はあゆみに複雑な感情を持っていたが、会ってみると入院中の会話を思い出してやっぱりこの子といると楽しいと思った。
ファミレスでたくさん話した。あゆみは学祭の準備で追われているらしかった。私はあゆみが退院してからの入院生活の話をした。これと言って面白いこともなかったのだが。
私は今なら訊いてもいい気がした。
「ねえ、あゆみちゃんはどうして入院したの?」
「ああ、言ってなかったっけ?ODして運ばれたんだよ。ICUにいたらしいの。そこから精神科に移されて、最初のうちは暴れたり、看護師さんに暴言吐いたりして大変だったらしい。よく覚えててないんだけど。それで隔離室にいれられて、落ち着いてきて普通の病室に入れた。そのタイミングでゆきちゃんと会ったってわけよ」
「ICU!そんなにやばかったの!?」
「うん、やばかったらしい」
「何があったかのか訊いてもいい?」
「いやぁ、お恥ずかしい話なんだけど」と言って、あゆみは少し首を傾げて本当に恥ずかしそうにして小声で「失恋」と言った。
「失恋」と私も小声で言う。
「私、彼女がいたの。彼氏じゃなくて」
「うん」と頷いたものの、内心驚いていた。それを察してか「いや、いきなり彼女がいたって言われてもビビるよね」とあゆみは笑った。どこか憂いを帯びて見えた。
「私、バイ・セクシャルなの。まあ、それはいいとして、とにかく彼女がいてね。その彼女が他所に男作ってて、大喧嘩になったの。そしたら、彼女が死ね!っていうから、私も死んでやる!……でODしたのよね」
「すごい話だ…」
「アホでしょ?」と自嘲気味にあゆみは笑った。ううんと私は首を横に振る。
「だから、水族館になりたいの」
「ほう」
「水族館の特に大水槽になりたいの。大小色んな海の魚が一緒くたに住んでて見ててわくわくしない?あんな風にたくさんの生き物を包み込みたい。くだらない恋愛の悩みなんて忘れてさ。それにゆきちゃん飼育員なってくれるんでしょ?」
「うん!もちろん」
あの日ファミレスで会ったのを最後にあゆみと会うことはなかった。その翌日に「海を見に行く」とLINEが来て、十月なのに海?と疑問に思ったが、「行ってらっしゃい」とだけ返信をした。そして、彼女は消えた。LINEの返信はなく、通話も出ない。SNSの更新はなくなった。彼女の家族の連絡先なんて知らなかったから、彼女がどうなったのか私には確認のしようがなかった。あの時、どうして海に行くの?と訊くべきだったのかもしれない。それは今となってはわからない。
それから五年。就労移行支援を利用して、何とか入社した会社を三年勤めて昨日辞めた。寛解していた鬱が再発して、仕事を続けられる状態じゃなかった。また入院するかもしれない。
今にも雨が降りそうな曇り空。ふとあゆみは水族館になれたんじゃないかと思った。もちろん、根拠はない。空を見上げる。分厚い雲。「あゆみちゃん、私あれからメイクが好きになったんだよ」と心の中で語りかける。
病棟で話しかけてきたのは歳が近そうだったんじゃなくて、単なるナンパだったのかな。なんの脈絡もなくそんなことを思った。
さっき撮った朝顔の写真に十件のいいね。私はTwitterに「海を見に行く」と投稿する。スマートフォンをバックに戻すと家とは反対方向に歩き出す。彼女に会いに行くために。
おわり。
短歌連作十首 源泉
他人様の短歌に色々と拙い評を述べた手前、僕も短歌を投稿してみるとしよう。普段書いている日常に近いものとは違う毛色のものを詠んでみた。短歌を始めて、そろそろ三年は経つ。少しはマシになっただろうか。
わらの犬 燻りて雨に濡れる腹のなか 菌糸の夢 這ひひろがりぬ
納屋のなか 猿の手を掴む祖父の背は 鏡の向こうに富を棄つ
草地に埋もれ立ち尽くす 為す術もない利き手錆びた鎌の匂ひ
傾いた棚から生えた白い手と 糸を喰ひつつ 紙を縒る
名を呼べぬ人魚の腸だけがあり 忘れたことに背中を刺され
金魚鉢 砕いて飾る畦道に 朱を引く夕餉の手がみちる
虎柄のTシャツを案山子に着せて 早く行きなと山から来た子
蔦の這うあの茶畑から採取したむかごを炊いた飯釜が鳴く
行き止まり 空から縄が降りてきて 掴めばそれは蛇の脱け殻
耳の奥へふうっと吹き込まれし息の白さを二十年(はたとせ)経てなお夢に見る
忘れられないパン
私の小学校時代に食べたパンが忘れられないという面白くもない話しなのですが読んで貰えますか
給食に出るコッペパンが美味しくなくてトラウマでコッペパンが食べられなく成ったという話しではありません。
小学校の社会科見学で行った場所はと聞かれて思い出す場所は、
交通公園等の少し遊び場所が有って勉強にも成る様な所ではないでしょうか、
この話は、社会科見学でパン工場に見学に行った時の話しなのです。
当然、遠足じゃないのでお菓子は持って行けなかったけれど、
給食でなく外でお弁当が食べられて教室で勉強をしなくて良いと言うだけで大盛り上がりでした。
友達とお菓子が駄目でも果物は良いよねとか話しながらバナナやミカンを持って行こうねと約束してウキウキしていました。
当日、バスに乗りパン工場へと向かい、言われたわけでないけれどパン工場の工場長さんだと思っている人に
工場を案内する手順や見学時の注意事項を優しく話して貰っていたのだけれど、
工場見学が始まったとたんにパンが作られる工程の説明よりもパンが焼ける美味しそうな匂いが気に成って
美味しそうな匂いだねとか、流れているパンは何パンかなとか、流れゆくパンの様に工場長さんの言葉も右から左へと流れてゆきました。
焼き立てのパンの香りを身に纏い工場を出る時には何パンが好きかの言い合いで盛り上がっていました。
先生が向こうの広場に集まれと言いながら私達を誘導して、
それに従い広場に集まると工場の人達が
「今日は来てくれて有難う。パンの事を知ってくれて、好きに成ってくれましたか?」と呼び掛けて来て、
それに対して「ハイ!パン美味しそうだった」とか「菓子パン大好き」とか製造に関係ないコメントを大きな声で返していました。
そして、工場からバスへと向かう時に一人ずつパンを貰い。
近くの公園広場での昼食時に食べた工場焼きたてのクリーパンが未だに忘れずに居ます。
勿論、有名ベーカリーのパンの方が美味しいと思いますけれど、
今まで食べて来たパンで一番美味しいパンはと言われたら、
あの時に口にした焼き立てのクリームパンだと答えてしまいます。
舌で覚えた記憶はボケたとしても残るとか、最強クリームパン万歳!
シーシュポスの神話 Full version
深夜のコインランドリー、僕たちが漂着した最後の中州のようだった。
湿った空気の中、安価な洗剤の人工的なフローラルと、さっきまでシーツの上で貪り合っていた僕たちの、微かな汗の匂いが混じり合っている。
まなみは、回転を止めた乾燥機の前で立ち尽くしていた。
彼女の細い肩には、脱ぎ捨てたばかりのラルフローレンのオックスフォードシャツが、アイロンを失ったまま無防備に羽織られている。その下から覗く胸元、ヴィクトリアズ・システマティックの黒いレースが、湿った熱を帯びた肌に食い込んでいた。
「熱も、言葉も、すべてが均一に混ざり合って、何も動かなくなる状態……それがこの世界の理で、いちばん平穏な死のはずでしょう?」
彼女の言葉は、薄氷を割るような静けさで響いた。まなみは、バスケットから取り出した僕のシャツを手に取ると、その袖を愛おしそうに指先でなぞった。指先にはまだ、僕の体温を求めて彷徨った時の強欲な力強さが、仄かな赤みとなって残っている。
「……でも、この世界はそれを許してくれないみたい」
まなみはシャツをバスケットに戻した。そして、唐突に歌い始めた。
彼女の唇からこぼれたのは、昔のアニメソングだったが、それは高揚感とは無縁の、ただ事実を淡々と確認するような音調だった。彼女は踊り始めた。
右手を上げ、左手を腰に当て、リズミカルにステップを踏む。その動きは、何千回、何万回と繰り返されたはずの「正解」のトレースだった。
けれど、まなみのそれは、決定的に何かが欠落していた。
シャツの下の黒いレースが、ステップのたびに湿った肌の上で揺れる。僕の背中に爪を立てた、剥き出しの身体性はそこにある。なのに、その動作はどこか機械的で、まるで動かなくなった乾燥機のドラムが、慣性だけで回り続けているかのようだった。
「……魔法以上ノ愉快ガ……」
その声には、魔法も愉快さも存在しなかった。ただ言葉が、彼女の気管を通過して、深夜のコインランドリーの静寂に、無機質な振動として放たれていくだけだ。
僕たちの、あの終わらない熱が、この安っぽいアイドルソングによって完全に濾過され、ただの「運動」へと成り下がっていく。
それは、彼女が先ほど口にした「平穏な死」への抵抗のようでいて、その実、最も残酷な形で死を体現しているようにも見えた。かつての熱狂の、抜け殻のようなダンス。
まなみは、一通りのサビのパートを踊りきると、項垂れる様に笑って唐突に抱きついてきた。店内を照らす蛍光灯が、彼女の無防備な横顔と、少し乱れた髪、そして胸元の黒いレースを、執拗なまでの鮮明さで焼きつけている。
その静止を破ったのは、店内の隅で色褪せたクレーンゲームが散らす電子音だった。
僕は100円玉を数枚投じ、磨耗したジョイスティックで銀色の爪を操作した。煤けたペンギンのぬいぐるみを狙う。機械的な駆動音が、静寂を一定の周期で刻む。爪がぬいぐるみの首筋をかすめ、空しく宙を掴んだ。
「取れないね」
僕は言った。彼女のダンスが残した、決定的な何かの喪失感を、クレーンゲームの無残な空振りに重ねるように。
「いいよ。執着だけが形に残れば」
まなみは力なく笑い、今度は埃を被ったガンシューティングの筐体の前に立った。
画面の中ではゾンビの群れが、生物学的死を超越した「非平衡」の足取りで押し寄せてくる。彼女は使い古されたプラスチックの銃を両手で構え、狂ったようにトリガーを弾き続けた。銃声が店内のタイルに反射し、マズルフラッシュの青白い光が、再び彼女の横顔を鋭く焼きつける。
それは、未来を使い果たした僕たちが許された、暴力的なまでの生の横溢だった。さっきまで僕の背中に深く爪を立て、もっと奥へと、もっと永遠に近い場所へと求めてきた彼女の、あの剥き出しの貪欲さが、いまは火花となって虚空を貫いている。さっきの、魂の抜けたダンスとは、対極にある烈しさで。
「死なないものを、何度も殺すのって、祈りに似てると思わない?」
まなみが銃口を下ろすと、画面には『GAME OVER』の文字が、血管の破裂したような鮮やかな赤で点滅した。まなみの唇が、かすかに震えた。
「時間の結晶——外部の誰にも理解されない周期を刻みながら、熱力学の終焉を拒み続ける。たとえ、それがただの、終わらない『慣性』だとしても。私たちはこの静止を許さないの」
彼女が洗い立てのシャツを抱きしめた瞬間、乾燥機の排気口から吐き出された熱風が、二人の間を通り過ぎていった。
それは、エントロピーが増大し続ける宇宙の中で、肉体を重ねてもなお埋まらない欠落を抱えた僕たちという異物が、唯一許された「不変」の証明だった。
そしてその不変は、今しがた彼女が演じた、あのあまりにアンニュイで、あまりに空虚な眼差しによって、より深く、僕の中に刻み込まれていた。
リチャード・ブローティガンを、ある詩人が、リチャード・ブロー「ディ」ガンと誤記した詩を発表した事も、もう一つの神話になってしまって、さいきん、私はリチャード・ブローティガンこそ、死の比喩で無かったかと思ったものだ。というのも、或る記事を読み、こんな事が書いてあった。「彼が死んだときには、じっさい安心してしまった。いつ彼が死ぬのか冷や冷やしていたものだから」
死がいなくなったら、人は安心する。
その記事を、私はポケットに突っ込んで、冷えた路傍を歩く。
さいきん、花の事をとても考える。でも、花はこんな郊外の夜の路傍では認められない。光りが無いからだ。甘い光りが。私はずうっと起きっぱなしのまま、明日の朝焼けに涙を零すだろう。そんな嘘もすっと、コンビニの灰皿の前、マールボロを弄っているとき、リアリティを持っていると「思う」。「思う」、「思う」、「思う」。「思う」って何だ?
リアリティを持っていると「考える」、実際はそういう事なのではないかと。思う、なんて何か余計な贅肉がついているんじゃないか。そうして、考える、として、本当に考えているのか?人間よ
という、テキストをパチパチと打つとき、俺は色んなものに影響を受けすぎていると思う。もっとラフにならなければならない、チャーミングにならなければない。でも、チャーミングでいる事は罪だぜ、黒髪のきみが、風呂上がり、洗いたてのその髪をゴシゴシと拭いている。陶器のような肌だ。そうして怖ろしくなってゆく。壊れてしまうって事だから。
「まだ寝ないの?」
「もう少しだけ」
俺は、サーモスのカップへコーヒー粉を突っ込んで冷水を注ぐ。
俺は、換気扇を回し、ポケットのマールボロに火を点ける。
俺は、明日の朝、あさやけを見つめ泣いてみようとする。
/小学三年生の僕は、学校で「考える」という言葉を習い、座りながら固まってしまった。いったい、「考える」って言うのはどういう意味なんだ?一時間半のあいだ、黙って机に座り、考えるとはどういう意味か考え続けた。答えは出ない。しかし考えは止まらない。何か意味あることが浮かんで来るかと、熱心に考え続ける。答えは出ない。
僕は、今まで、すべての概念を理解してきたのだが、「考える」という言葉には降参してしまった。意味不明。そう結論して、一時間半を終えた。
ただ白熱した時間だけが残ったのだ。考えるとは、答えを出すことだけではなく、答えを求めて問いの中に留まり続けることでもある。だから、答えを出そうと考え続けることが考えるということなので、答えを出そうとするという正解に辿り着かなかった当時の僕は、まだまだ未熟だったのだ。今考えるとそう結論付けられる。しかし、完全なる解に至ったのかどうかは今もわからない。内的体験は、他者に完全には伝達できない。だからこそ、自分にとっても、それを言語化することには限界がある。ただそのプロセスがあり、その間に時間が過ぎた、ということ、これが、考える、という内的体験を言い表す、もう一つの解として、言語化できる精一杯の言葉なのかもしれない。当時の僕よりも、今の僕の方が、伝達への意志が強い。だからこそ、あの一時間半を、こうして言葉にしようとしている。考えるとは、答えに到達することだけではなく、答えの出ない時間を、それでも意味あるものとして生きることなのかもしれない。/
深夜を包む白々とした蛍光灯の光は、彼女の右の頬にある、紙を一枚滑らせたような微かな線条を浮かび上がらせていた。
それは、彼女が小学三年生の夏のものでまなみはその日、鉄棒の冷たい鉄管に身体をあずけ、重力に逆らうようにして逆さまにぶら下がっていた。視界の先では、友人たちがバドミントンのシャトルを無意味に往復させている。白く、軽い羽が、夏の重苦しい大気を切り裂いて規則的な軌跡を描く。彼女はその反復される運動の奴隷のように、ただそのラリーの点と点を視線で追い続けていた。
やがて、網膜が捉える速度と、彼女自身の内側を流れる時間の速度が決定的に乖離した。目眩が彼女の三半規管を襲い、天地の契約が破棄される。まなみは自らの意志とは無関係に、握りしめていた鉄の冷たさから解放され、そのまま剥き出しの砂利と、陽に焼けた道路の側溝の縁へと落下した。顔面が硬いコンクリートに衝突した瞬間、彼女の幼い世界には、血の匂いとともに「偶然」という名の不条理が刻み込まれたのだった。そのとき出来た薄い皮膚の裂け目は、今も彼女の顔に、消えない不均質さとして居座り続けている。
まなみは、他人のそれよりも明らかに色素の薄い、硝子細工のような瞳を持っていた。
黒目の奥は、どこまでも透き通るような、しかし一切の光を吸い込んで沈黙する、冬の水底に似た色をしていた。
幼い頃の彼女にとって、この地上に降り注ぐ太陽光線は、祝福ではなく絶え間ない過剰な暴力だった。網膜を灼くような正午の光の容赦なさに、彼女は耐えかねて、かつて実姉にその苦痛を訴えたことがある。
「太陽が眩しすぎる、光が多すぎて、なにも見えなくなる」
しかし、姉はただ、妹の過敏な言葉を子供の他愛ない錯覚として、一顧だにせず聞き流しただけだった。他者との間にある、決定的な断絶。自らの肉体が受ける痛切な実感が、もっとも身近な人間にすら「言葉」として機能しないという事実は、彼女の内部に、ある種の冷徹な諦念を育て上げるのに十分だった。
「世界は最初から、過剰に明るくて、過剰に不親切なのだと思う」
まなみは、冷たいステンレスに指先を滑らせながら、呟いた。
彼女の薄い瞳は、深夜のどこをみるでもなく、ただその透明な深度を深めている。その眼差しは、あの夏の日の鉄棒から落下した瞬間の、そして誰も共有してくれなかった眩しすぎる太陽の光の下の、あの孤独な幼児のまま、均一化された深夜の空間をただ静かに見つめ返しているようだった。
羽傷ついた鳥一羽 目の中に入れ天上の
星の頼りはつれなくて 外灯だけが頼りなり
ポツンと置かれた鳥一羽 鳥の周囲に波紋の広がり
この目歯車に狂いつつ しかと見つめていたいのに
闇深くなるばかりでは ずうっと髪を指で触れ
誰か救ってくれないか
鳥を
私を
羽傷ついた鳥一羽 目の中に入れ天上の
汗を拭えば大聖堂
私は何処にいたのだか
大聖堂で
神に祈る
ステンドグラスが
目に鮮やか
厳かな
十字架には
過去の
悲劇と奇跡がまとわりついている
誰かが
生の一部を
願って
天井を見上げた
見事な
光に照らされた
ほこりに
神様の意志が
宿っている
鐘の音が鳴る
神的な時間は
人と共有され
愛の話を
信仰者たちは
小さな声で
分け合い始める
ハトが大聖堂の外で
歩きながら
穏やかな光を受けて
人の声にまざっている
人とハトは
どちらが偉いか
そんな問いを
神様は
持たない
人とハトはどちらが偉いか
そんな問いを神様は持たない
「どうかな」と、まなみは呟いた。
彼女の両親は、歴史の変革を標榜する活動家であった。彼女は、揺り籠の中にいた頃から、両親の強固なドグマ(信条)に沿って、その精神を、調教されて育った。彼女は姉と弟と共に、事あるごとに「世界に対する意味と回答」という精神的提出を義務づけられていた。
姉は従順であり、弟は秀才であった。そしていつも、まなみだけが弾き出された落第生であった。やがて姉は海外へ旅立ち、弟は家族の縁を切って生活を始めた。まなみだけが、両親との関係性を引き受け続けることになった。
「私は確かに、彼らの言う優秀な人間ではなかった。けれど、私はあの幸福を、素朴に願っていただけなのに」
まなみは、自らの疎外を噛み締めるようにそう吐露する。
太陽が沈み、狂騒が止む夜が訪れると、彼女は力を取り戻す。その瞳が、夜という闇に対して、あまりにも優しく調和するからだ。
「私の瞳は、過剰な光を吸い上げすぎてしまうの。だから、疲れ果ててしまうのね」
彼女はそう呟き、すべての社会的役割を返上した一個の原生的実存として、静かにその身体を私へと預けてくるのだった。
素朴、朴訥な祖母の置いたキャラメル、実直、事実無根の罪を負うた祖父の黒い革靴、雨がふるまなみは帰ってくる。そうして黒い革靴はなぜずっと出されたままなのだろうと考える。もう祖父の顔は額縁の中におさまり部屋の片隅に吊られているだけなのにその黒い革靴のとなりに雨でぐずついた白いシューズを置く
新聞紙は無い ビラは沢山あるけれどこのビラ一枚手をつけてはならない。
祖母が歯の無い口で何か言っている。彼女はそっと祖母の右側の席に座る。
祖母は歯の無い口で何か言っている「キャラメル、もらうね」
そうして彼女は白く包装されたキャラメルを一粒掴むと祖母の少ない髪をくしゃっと撫でる。そうして彼女は自分が自分自身に戻れる。唯一の部屋に入った。
/一生懸命に
配っていた
落ち葉のような
捨てられたビラ
風に舞って
ちょっと遠くへ
その人は汗を拭いて
終わった
と言った
イチョウの木の下で
天を仰いで
話しかけたいかのように
高い空を
見つめている
イチョウより自分は小さい
ビラを配った後で
そう認めた
その人の運命が
変わるかもしれない
愛がどこから始まるかは分からない
とりあえず
帰ろうと思って
その人は
コートを着直した/
まなみは贅沢な暮らしなど望んでいなかった。
美に対する執着は人一倍あったが、それ以上に、身の丈に合った静かな生活を好んだ。
活動家である両親には、皮肉なほど十分な資産があった。
「口では現体制を批判しながら、その実は、体制側の恩恵を余すことなく貪っていたの」
まなみは自嘲気味に、苦しそうな笑みを浮かべた。
本当に国家の転覆を企てるのなら、その国家がもたらす富を受け取らないのが筋ではないか。幼い頃からのそんな疑問が、彼女の心をずっと内側から削り、混乱させてきたのだ。
大衆に革命を焚き付けながら、自分たちの日常はとても庶民とは呼べない高級なものだった。
「お金なんて、簡単に手に入るのよ。役所に協力者がいてね、数年先に実施される未公表の都市計画を、両親は事前に掴むことができた。だから、その情報に合わせて土地を買ったり投資したりすれば……ね、わかるでしょう?」
まなみの瞳の奥に、深い闇が沈んでいた。
「家の中はね、極端な規律と、毎日の宴会のような騒ぎが同居していたの。私はいつも少しだけ食事をつまんで、あとはずっと水ばかり飲んでいた。そうしていないと、頭がおかしくなりそうだったから」
高校生の夏、初めてできた彼氏に身体を許し、その直後に別れた。
それ以来、彼女が重ねてきたのは随分と窮屈な恋ばかりだったようだ。
「二股をかけられていると知りながら目を瞑ったり、明らかに情緒の壊れている人と付き合ったり。でも、どれも長くは続かなかった。きっと私の方に原因があるんだと思う。弟も似たようなもので、結局大学を中退しちゃったし」
まなみの指先が、僕の頬をゆっくりと撫でる。
「愛がどこから始まるかは分からない、でもいつかは君も、私の前からいなくなるんだよね」
彼女はそう言って、諦念の滲む笑みを私に向けた。
(朝は一杯の水で済ます。澄む。どんどん、純化してゆき 私は一体何者になれるのでしょうか。冷蔵庫を開けると、ペットボトルのコーヒーがあって飲んでみたけれど、それは黒い色なので吐いてしまった。部屋にいる。雨がふってほしいと思ったら本当に雨がふったこともあった。ふらないこともあった。家。この家は忘れられてゆくんじゃないかと思った。
だって蔓や、草が茂り、何?わたしがすべてを勝手刈ってしまえばいいとでもいうの。そんな、出せない手紙が沢山溜まっていって頭に手をあてて、ちょっともう涙が落ちるのかな
と思う。闘っているのかなと思う。闘いという言葉が嫌いだ。雨がふってほしいと願った。でも雨はふらなかった。)
/何者かになれ
誰でもないものとして
生きると言った詩人がいたが
この世の中に
怒りを込めて振り返るなら
いいように使われる怒りを思い出せ
世の中から逃れて詩の中に生きる
才能あらばそのようなこともできる
でも私たちはすべてを許すことはできない
傷つけられた心の声を聞いて
何者かになって見返してやるのだ
誰かと関係を結んで
怒りの心を
大人になって
慰撫するのだ
世界は私を包み込み
わたしの心に問いかける
お前は何者なのか
人に認められなければ
それはわからない
神ならぬ我々は
思ってくれる人に答えられなければならない/
深夜、排水溝に溜まった雨水が、街灯を歪ませていた。誰かの吐いたガムが、アスファルトに黒く貼りついている。
コンビニのガラス越し、アルバイトの青年は欠伸を噛み殺しながら、揚げ物の油を見つめていた。
世界は、いつだって少しだけ疲れている。
まなみは、その光景を見ながら言った。
「人って、本当は壊れるために生きてるんじゃないかな」
僕は答えなかった。答えられなかった。壊れないために生きている人間なんて、見たことがなかったからだ。
午前三時。
洗濯の終わった衣類たちは、熱を失いながら静かに沈黙している。
まるで、役目を終えた臓器だった。
僕は乾いたシャツを畳もうとして、途中でやめた。
どうせまた皺になる。
どうせまた着る。
どうせまた汗を吸う。
繰り返し。
繰り返し。
繰り返し。
シーシュポスの岩は、案外こんな柔らかな布だったのかもしれない。
持ち上げても、また汚れる。
愛しても、また失う。
言葉を書いても、また沈黙する。
それでも人は、畳み続ける。
まなみは僕の隣で、ペンギンのぬいぐるみを抱いていた。
さっき取れなかったはずのそれを、店員が見かねてくれたのだ。
「優しさって、システムのバグみたいだね」
彼女はそう言って笑う。
僕は、その笑顔が、なぜだか少しだけ怖かった。
小学生の頃、僕は「未来」という言葉も嫌いだった。
教師たちは、未来には希望があると言った。
テレビの中の人間たちも、未来へ向かおうと叫んでいた。
でも、未来という言葉を聞くたび、僕はずっと、ベルトコンベアを想像していた。
流れてゆく。
止まれない。
降りられない。
気づけば皆、どこかへ運ばれている。
だから僕は、未来よりも、途中が好きだった。
学校から帰る夕方の道。
まだ帰宅になりきらない時間。
自販機の下に落ちた十円玉。
遠くで鳴る救急車。
名前も知らない家の夕飯の匂い。
ああいう、意味になる前の時間だけが、少し好きだった。
まなみは、煙草を吸わなかった。
煙が嫌いなのではなく、肺に残る「感じ」が嫌だったらしい。
「残留するものが怖いの」
彼女はそう言った。
「匂いも、記憶も、愛情も。全部、あとから腐るでしょう?」
それを聞いて、僕は少し安心した。
この人は、ちゃんと絶望している。
希望だけを信じる人間より、絶望を知ったうえで誰かに触れる人間のほうが、たぶんずっと優しい。
朝が近づいていた。空は群青色をやめはじめ、輪郭の曖昧な青へ変わってゆく。
新聞配達のバイクが、濡れた道路を走り抜けた。
世界がまた始まろうとしている。
僕はそのことに、軽い吐き気を覚える。
始まるということは、また繰り返されるということだから。
労働。
会話。
誤解。
期待。
諦念。
孤独。
人は、昨日の続きしか生きられない。
それなのに、ときどき奇跡みたいに、誰かが隣に座っている。その偶然だけで、僕たちは今日を、もう一度だけ引き受けてしまう。
まなみが、眠そうな目で僕を見る。
「ねえ」
「なに」
「もし全部無意味でも、一緒にコーヒー飲んでくれる?」
僕は少し考えて、それから、考えることをやめた。
「うん」
その返事だけが、夜の最後に残された、唯一まともな倫理のように思えた。
深夜の展望台は、宇宙の吹き溜まりのようだった。
眼下に広がる街の灯りは、誰かがぶちまけた雲母(きらら)の破片のように無秩序で、僕たちがそこに帰るべき理由など、どこにも見当たらなかった。
高度が上がった分だけ、夜風は尖っている。
まなみは、錆びついた手すりに両手を預け、街の光の海を見下ろしていた。
彼女の細い身体は、いつも愛用しているアニエスベーの黒いウールコートに包まれていて、ボタンは上まで厳格に留められている。その隙間から覗く白い首元だけが、凍てつく夜の暗黒の中で、頼りないほど無防備に浮き上がっていた。
まなみの声は、標高のせいでいくらか掠れていた。彼女が吐き出した微かな呼気は、たちまち白い煙となって夜の闇に吸い込まれ、均一な虚無へと同化していく。
彼女はコートのポケットから、古びた真鍮製の万華鏡を取り出した。それは彼女が子供の頃から持っているという、どこか剥げかけた、取るに足らない玩具だった。
まなみはそれを片目に当て、星ひとつない夜空へ、そして次に眼下の無機質な街の灯へと向け、ゆっくりと筒を回し始めた。
カサ、カサ、と、内部の安っぽいプラスチックの破片が擦れ合う、微かな乾いた音が風に混ざる。
「ねえ、見て。中にあるものは、ただの色のついたゴミくずなのに、回すたびに、驚くほど整然とした、完璧な『正解』の模様を作るの」
彼女は万華鏡を覗いたまま。
「でも、どれだけ回しても、それは何の意味も持たない対称性の反復。何千回、何万回と組み替わっても、どこにも辿り着かない、ただの慣性の運動。……奇麗に整えられているようでいて、決定的に中身が欠落している」
世界は僕たちに本質的な意味を与えてはくれない。理性の叫びは、この高い空の上でも、ただ冷たく、静かに撥ね返されるだけだ。
まなみは万華鏡を筒ごと強く握りしめ、レンズから目を離して僕を振り返った。
冷たい夜風に晒された彼女の瞳は、色素の薄い、硝子細工のような淡い色をしている。周囲の暗黒や街の虚無をそのまま透過させてしまいそうな、どこまでも怜悧で、温度を持たない静かな瞳。
その奥を覗き込んだ。
薄い瞳の、さらに深い底の底に、鮮烈な青い炎が宿っている。
世界に意味がないことを完全に看破した冷徹な知性と、それでもなお、この生を、この一瞬を圧倒的な熱量で生き抜こうとする狂おしい情熱、その二つの温度差が、彼女の薄い瞳の中で、静かに、しかし激しく火花を散らしている。
まなみは、ポケットから手袋を外した素手を取り出すと、僕の凍えた手をそっと包み込んだ。
その手のひらは驚くほど冷たく、けれど僕の輪郭を確かめるような確かな力がこもっていた。痛いほどの純粋さがそこにはあった。
まなみは僕の胸にそっと額を寄せた。彼女の髪からは、いつもと変わらない、少し古風な石鹸の匂いが微かに立ち上る。
彼女は顔を上げ、街の灯りに向かって、不敵に、美しく笑ってみせた。
その手の中の万華鏡は、もはや無意味な玩具ではなく、彼女が引き受けるべき不条理の結晶そのもののようだった。
その時、僕たちの頭上を、展望台の強力なサーチライトの光条が、一定の周期で静かに薙いでいった。
光は彼女の黒いコートのシルエットと、すべてを透かすような強い眼差しを、網膜が痛むほどの鮮明さで焼きつける。ライトの白光に照らされた瞬間、彼女の薄い瞳の奥の青い炎は、よりいっそう深い青へとその輝きを増した。
押し上げた岩が、どれほど無残に、どれほど正確に麓へと転がり落ちようとも、それを追いかけて再び坂を降りていくあの「意識の空白」の瞬間。
意味がないから投げ出すのではない。
この世界に、僕たちの繋がりに、最初から約束された救いなど用意されていないからこそ、私たちはこの「今」という一瞬の魂の交歓を、余すところなく尊ぶことができるのだ。
まなみが僕の手を強く握りしめた瞬間、展望台の鉄柵を鳴らして、激しい突風が吹き抜けた。
それは僕たちの歪んだ情熱の、静かな決意の爆発だった。外部の誰にも理解されない、僕たちだけの永劫回帰の周期。たとえそれが、ただの終わらない慣性だとしても、僕たちはこの静止を、世界への降伏を、決して許しはしない。
眼下の街を見つめるまなみの眼の奥には、運命を呪う奴隷の姿はなかった。
凍りつくような冷徹さと、燃え盛る青い情熱
その静かな横顔は、どこまでも幸福そうだった。
星も見えない暗黒の頂で、僕たちは繋いだ手の温度だけを信じ、愛すべき夜へと降りていく。
こんな夢も見て
あんな夢も見た
それは万華鏡のスコープをのぞいているだけなのか
と私は気づく
熟れた無花果
「私は気づく、熟れたいちじく」
その押韻を
そっと口ずさむ
ハッと
まなみは、普段、自分自身をあらわすとき
「わたしは」と言っていないことに気づく
わたしの中から決定的に喪失していた「わたし」
だから
彼女が手紙を書いても、主語が抜け落ちていることに気づいた
だからそれは詩になってしまう事に気づいた
もう手紙を書く事はやめてしまおうかと考える
大体、この出せない手紙もたまりにたまったし
いつか 淡い海へ目を向けつづけるとおいまなざし
彼女はひとねむり その前に自分自身に呟いてみる「おやすみ」
部屋の中 人生なんて暇つぶしに過ぎないのだが
夢を見るんだ
こんな夢を見て
あんな夢も見るんだ
彼女はふと起きだし、パソコンにルーターを
これはずっとしまいこんでいたもの
埃を払い
プライドっていうの それをはらい
それらを部屋の中で「設定し」
とおき夢つかもうともがく しかしそれもわたしなきまぼろし
かも知れないけれど
下手くそでも良くて しかしじっさい物を書いて 恥をかいてもよろしく
パブリック(もうかたはらいたいっす)へ ただ楽しく
投稿しようと考えた。雨が、ふりはじめていた
/パブリックな昼の習い
永久平和国
バナナを食べたいな
足の裏をなでながら
くすぐったいことはいいこと
大人になるほどくすぐったくて
幼稚園を思い出す
色んなことを教えてもらえた/
朝になると
干からびたコップがひとつ
私の残した遺跡
考古学者になったつもりで、
縁を指でなぞる
昨日の私
水を飲んで
一息ついて
生きることに飽きた私
窓の外では 雨はやんでいた
鳥がこちらを見ている
あの傷ついた鳥ではなく
ただの鳥
鳥は鳥のまま
朝のアスファルトを歩く
幼稚園の頃は知らなかった景色
一時間
一時間
時は静かに刻む
シルクのローブが私の素肌に触れる
朝のきらめきを受けて発光する
私は、その瞬間
光と一つになれた気がした
気がしただけかもしれない
ローブの裾を持ち上げると
昨日の煙草の灰が
まだ床に残っていた
それでもいい
鳥は飛び立ち
コップは乾き
私はまた
一時間を始める
私はまた時間を始める
まなみが、僕の頬をゆっくりと撫でる。
その、あまりに、冷たい、その、あまりに、静かな、その、あまりに、孤独な、その、あまりに、美しい、その、あまりに、不条理な、その、あまりに、儚い、その、あまりに、静かな、その、あまりに、孤独な、その、あまりに、美しい、その、あまりに、不条理な、その、あまりに、儚い、その、あまりに、静かな、その、あまりに、孤独な、その、あまりに、美しい、その、あまりに、不条理な、その、あまりに、儚い
指先。
「いつかは君もはなれていくんだよね」
彼女はそう言った微笑んだ。その、あまりに、冷たい、その、あまりに、静かな、その、あまりに、孤独な、その、あまりに、美しい、その、あまりに、不条理な、その、あまりに、儚い、その、あまりに、静かな、その、あまりに、孤独な、その、あまりに、美しい、その、あまりに、不条理な、その、あまりに、儚い、その、あまりに、静かな、その、あまりに、孤独な、その、あまりに、美しい、その、あまりに、不条理な、その、あまりに、儚い、
微笑み。
まなみが、僕の頬をゆっくりと撫でる。
その、あまりに、冷たい、
その、あまりに、静かな、
その、あまりに、孤独な、
その、あまりに、美しい、
その、あまりに、不条理な、
その、あまりに、儚い、
その、あまりに、静かな、
その、あまりに、孤独な、
その、あまりに、美しい、
その、あまりに、不条理な、
その、あまりに、儚い、
その、あまりに、静かな、
その、あまりに、孤独な、
その、あまりに、美しい、
その、あまりに、不条理な、
その、あまりに、儚い、
指先。
その指先は、地上の歪な模様をなぞるように、僕の輪郭を確かめている。
まるで、これ以外の方法では、自分が存在していることを、そして僕が存在していることを、証明できないとでもいうように。
「いつかは君もはなれていくんだよね」
彼女はそう言った微笑んだ。
その、あまりに、冷たい、
その、あまりに、静かな、
その、あまりに、孤独な、
その、あまりに、冷たい、
その、あまりに、静かな、
その、あまりに、孤独な、
その、あまりに、美しい、
その、あまりに、不条理な、
その、あまりに、儚い、
微笑み。
そこにあった心に従うだけ。
蒐集家が夢見るエラー
まなみの、
あの、
あまりに、
あまりに繰り返される、
冷たくて、
美しい微笑みの、
その方向に、
僕はただ、
歩いていく
微笑み。
もう何も残っていないよ。空では、冷酷な秩序を持った星座が、私たちの感傷をあざ笑うように輝いている。
そこにあった心に従うだけ。
まなみの、あの、あまりに、あまりに繰り返される、冷たくて、美しい微笑みの、その方向に、僕はただ、歩いていく。
ただひとつの不条理な命令を胸に抱いて、一歩、また一歩と、砂を蹴って不格好に跳躍した、その絶望的な歩調のままで。
僕を繋ぎ止める鎖はもう見えない。
けれど、僕の頬にはまだ、あの、あまりに、あまりに執拗に繰り返された、彼女の指先の冷たさが、呪いのように張り付いているのだ。
私はそこへ行く。言葉の通じない、誰も私を理解することのない、あの、深遠な、微笑みの、その、陰の中へ。
O Manami, mundus hic, in quo versamur, ab omni intrinseca ratione ac salutis promissione vacuus est; divina enim silentia hanc rerum absurditatem usque quaque dominantur.
Etsi fortasse hoc effatum, 'Omnia vincit Amor,' commenticium sit ad fragilitatem nostram consolandam, nos tamen huic ipsi absurditati obviam ire audemus, cum voluntaria deditione nos amori cedamus.
Mane mecum, quaeso; nam fatalis necessitas omnia tollit, nec contra fatum ullum exstat remedium.
In huius mundi nihilitate, dasein meum — hoc est, ipsam essentiam existentiae meae — non in verbis inanibus, sed in supremo silentio tuo altius inveni.
Quapropter, etiamsi omnia mox in voraginem vanitatis interitiumque demergentur, te constanter amare unica ac suprema contra hanc absurditatem rebellio mea manebit.
「儚い詩文をポツポツとまなみは諳んじつつ、打ちこみながら」
とまなみは儚い詩文をポツポツと諳んじつつ、打ちこみながら
まなみは、まなみになろうとする。刻句、刻み付けるようなその作業の果てに、まなみ、海、ひろがってゆく。浜辺の光景、閉っている海の家。芒洋とする、なんて言葉を覚えたのはいつだっけ?あゝ、ナカハラチュウヤ、ナカハラのハラからハラリハラリとススキッパラへ転じてまなみは、とてもお腹が空いたな、と考えた。いつか受けつけなくなったコーヒー、そのネスカフェゴールドブレンドを探ろうとキッチンの戸棚を開けた。まなみ、海、ひろがってゆく。するとそこに母親が隠していた男性俳優の写真集があった。まなみ、それを和室に持っていっては、同時、とってきたピーナッツを少しずつほおばりながら、パラパラと眺めては、ふっと笑った。ふふっと笑った。ふふっ、に釣られて、ふり、その雨は、パツパツだった。まなみは一言「おかあさん、もう」と言って、その写真集を閉じて放り投げた。 まなみ、海、ひろがり、しずんでゆく、からこの雨は夕立ち。いない、ともだち。「おかあさん、もう」なぜだか、もう一度言ってしまっても、まなみはいつまでも一人だった。
そうして立ち上がり、ちょっといきりちらし、さっきの写真集をグシャグシャと丸めてゴミ箱に放りこみに行こうとして、待って、止まって、燃やしたらいいんじゃないの?
まなみ、海、ひろがってゆく。
手頃なそれは空のオイル缶、カンカン、雨が打ちつけている。その缶の中に写真集を突っ込み、ファイヤーオイルを数滴、落とす。そうしてライターで新聞紙、へ火をつけようと(どう?こんな、散文詩、)まなみは気づく。まなみはライターの火を点ける事が出来ない。
まなみ、海、ひろがってゆく、まなみ、海ひろがってゆく。雨に打たれて。
ファイヤーオイルをたらして
火をつける
ぼっと燃えたら
昨日の夢を忘れる
火が欲しい
火が欲しい
わたしの心に火が欲しい
オイルをひとしずく
着火寸前
危険な香りを
かぎ分けて
火に包まれた心は
命を燃やす
わたしの心は
いつでも燃えだせる
オイルをひとしずくだけ
着火する寸前に
危険な香りを
かぎわけた
火に包まれた心は
命をも燃やす
私の心は
いつだって燃える
けれど 燃えない、
まだ それは
雨が降っているから
まなみ、海、ひろがってゆく。
雨は静かに缶を叩く
カン、カカ、カン
だれかが
ノックをしているみたいだ
火をつけたいのに
つかない
燃やしたいのに
燃えない
昨日の夢も
怒りも
恋も
湿っている
湿ったまま
こちらを見ている
まなみは
ライターを握ったまま
しゃがんだ
すると
雨粒が
燃やそうとしていた写真集の表紙へと落ちた
男優の微笑みが
ゆっくりと滲む
じわりと広がり
海になる
まなみ、海、ひろがってゆく。
「ああ」
「ああ、そうか」
燃やさなくても
消えるものは
消えてしまうのだ
ページはふやけ
顔は崩れ
記憶は流れ
言葉は擦り切れる
それでも私は
火が欲しい
ほの暗いところで
誰かの顔を見るための小さな火
まなみ、海、ひろがってゆく。
そして、まなみは
ようやくライターを置いた
濡れた写真集を抱える
昨日を捨てるのではなく連れていくために
火のないまま
それでもほんの少しだけあたたかった
知らない番号からの電話は、弟からだった。一時期は携帯を持たない生活を送っていたようだが、新しい仕事を始めるために必要になったらしい。
「姉ちゃん元気にやってる?」
「なんとかね」
素っ気なく返すと、弟は「いや、実は警察が来てさ」と言った。実家に置き去りにしたSAVAGE 400の反則金が未払いのままで、身元照会にやってきたという。
「あ、それ私だわ。キップ切られて、イラついて破り捨てたの忘れてた」
少しの沈黙。
「まぁ、姉ちゃんが元気ならそれでいいけど」
そう言って電話は切れた。まなみはそんな風に、事もなげに過去を振り返る。車庫には、カウルの砕けたアメリカンバイクが横たわったままだ。数日前、彼女は営業車と接触して宙を舞った。
センターラインを越えて突っ込んできた営業車に対し、激突の瞬間、彼女の脳内では恐怖よりも興奮が勝った。フルスロットルのまま正面から突っ込み、相手のボンネットを足がかりにするようにして、バイクごと青空へ跳ね上がったのだ。相手は完全に死んだと思ったらしい。警察の検証でも「ブレーキを一切踏まなかったこと」が奇跡的な生存につながったと分析されていた。極めて異例なケースだった。検査入院を経て、奇跡的に五体満足で退院した彼女は、相手方の会社と早々に示談を成立させ、その金で新しい軽自動車を契約した。
「私、バイクの運転は向かない。我を忘れちゃうから」
目の周りに青い打撲痕を滲ませたまなみが呟く。
呆れるこちらの視線など一向に気に留めず、彼女は広場で鳩が餌を突つく様子を、かれこれ3時間も凝視している。
彼女にとって、死は隣人のようなものなのだろう。最低限の礼儀は払うが、決して気兼ねすることのない、すぐ傍にいて当たり前の存在としての、死。すぐ傍にある死。
彼女は「ほんとうに」死ぬ事ができなかったので、「やりなおす」ことができなかった。
ときどき、彼女は掃除でハタキをふるったが、パシパシとふっている内、そのリズムに嵌まり込むと、ずうっとその動きをつづけて家中をグルグルグルグル、何周もした。
「コラ」
センセイが来ていて、センセイは彼女のふるっていた右手を掴んだ。彼女の眼はどこか潤んで今にも泣きそうだった。おとうさんも、おかあさんも、センセイの事を、センセイと呼んでいたので、彼女もセンセイの事を、センセイと呼んでいた。しかし実際、何のセンセイなのかは知らなかった。センセイは、いつも急にきた。「おとうさんもおかあさんもいないの?」彼女は首を縦に一度ふった。「コーヒーを頼めるかい?別にインスタントでいいんだけれど」
センセイは白いシャツに、ジーンズ、そして丸メガネをかけている。
「パソコン持っている?Xしていないの?私はクロカミ、ってハンドルネームなんだ。元々は黒髪だったんだけれど、もう、こんな白髪になってしまった」
センセイは笑った。
「センセイ、最近、自由詩を書いたの。でも、これって何か私のデータのような気がする」
「詩?センセイも昔書いていました。ファイヤーオイルなんていうタイトルの作品を書いてね、あれはないね、とか、よくやっているね、なんて色々言われたものです」
「いや、わたしの詩」
「わたし?」
「わたし」
「いつからきみは自分の事をわたしって言えるようになったのだろう」
又、センセイは、白髪をそっとかき分けて言った。
「センセイは、アカシックレコードやユングの事は少々分かる。でもね、きみ
専攻するならば、インド哲学がいいでしょう。あの、稲垣足穂も小説の中で書いています。知っていますか?稲垣足穂。少年愛の美学。そうして、三島由紀夫へ向かって、いや、三島になると、全集の巻数が多い。こうしましょう。金閣寺。から豊饒の海、輪廻転生、仏教、そうして、インド哲学ですよ」
「わたしの詩を読んで下さい」
「ええ、読みます。ちょっと待って。コーヒーを置きます」
Elastic
ひとは時に弱気
時に強気
自信というのはきっと伸縮性なんだろう
だから
自信がなくなった
というのは勘違い
ただしぼんでいるだけなんだ
もっともっと調整がうまくなればいい
そうセンセイは諳んじた。
そうして一言言った。
「きみはちょっと明るくなったかね?」
そう言われた途端
彼女は急に走り出して外へ出た。
「きみはちょっと明るくなったかね?」
恥ずかしかった。
川があった。
その川沿いの道をずっと、ずっと進んでいこうと思った。
昨日読んだ宮沢賢治の詩の一行を口の中でころがしながら。
あめゆきとてきてけんじゃ。
あめゆきとてきてけんじゃ。
そう諳んじ、祈りつづけていけば、わたしは「ほんとうに」どこかへ行けるのではないか。
あの宮沢賢治の妹の、トシのように。
川の向こうの山に日が落ちてひかりかがやいている。
「スマホ、ちょっとおとうさんに頼もうかな」
やりなおそう
台風が去ったあとで
野は一面に水浸し
パシャッ
と魚が泳ぐ音がした
見ると波紋を広げながら
大きな魚が泳いでいく
鳥が水面をかすめて飛ぶ
物事には理由がある
理由があるんだ
その理由が法であり
法を知れば
苦しみの中にも道がある
私は生まれることも
老いることも
死ぬこともない
触れられる
魚が僕の心に触れた
今日は雨上がりなんだ
*
グリフィス作品「シーシュポスの神話」は連詩企画であり、グリフィス、田中教平、黒髪、二歩の書き手が、主にグリフィスが捌き手となり、コメント欄やりとりによって、創作したものである。
しかし、グリフィス氏が、暫し、創作の休息期に入ると宣言されて、田中教平が、そのまとめ、編集を依頼されてここに、full version として発表する物である。連詩ではあるが誰が、どの筆記箇所を担当したのかは、「シーシュポスの神話」https://creative-writing-space.com/view/ProductLists/product.php?id=4409 のコメント欄を参照して頂きたい。
編集が不可能であるコメント欄上で展開され、その明らかな誤字に関しては、訂正を加えたが、今後、更に訂正、編集を加える可能性がある。「シーシュポスの神話」は、カミュの書いた物語ではなく、孤独な少女まなみを巡る物語であるけれど、一概にはそう言い切れない作品になっていると思われる。しかし連詩の一参加者として野暮な言及は避けるが、一ついえば、物語がどのように詩情を獲得してゆくか、その課題意識があった。
片/piece (短歌連作)
八重咲きの 桜花ひとつの開花にも
内圧がある また眼を閉じる
うすべにの嬰児のゆびが嵩むさま
ビニール傘をコンビニに置き
爛漫とうった小爪にひとしくもことなる声があったはずだが
春雨の憫笑癖をどうすれば
躑躅を履まぬ帰路の検索
隣国の平和にも似た安穏、と
いった けむたくなった
五分したケーキのはじの欠けたのを我が皿に取る顔のbe real
ピースオブケイクといった背面が割れているのをケースで隠す
われさきと頭ごと落つ艸(くさかんむり)
早逝だけを優生として
木蓮をふくむ口唇愛着のときをすぎても咥えたhope
連休はショートホープとつよがった
何か多大なものを忘れる
𝚂𝙷𝙸𝙽𝙸𝙶𝙸𝚆𝙰 𝙻𝙰𝚂𝚃 𝙱
2026/05/31
あなたへ
わたしはあなたに
何かを残したい
わたしがこの世から消えたあと
あなたがわたしを思い出すための
ちいさなあしあとのようなものを
それは一冊の詩集かもしれないし
一編の詩かもしれない
走り書きの紙切れ一枚かもしれない
そんなものすら残せずに
あわい残り香となり
たちまちに消えてしまうかもしれない
そんな手触りのない不安を
言葉にしようともがいては
疲れ果て今日もわたしは眠る
遠くの空を
届いた写真の
広大な空を
突き抜けるような
やがて空に溶ける
L字の飛行機雲
共に歩み始めた
真新しくも
懐かしい道の先を
会いに行きたい
もどかしさが取りもつ
清々しい青の架け橋
遠くできっと
同じ顔して見上げる
片割れの
細める瞼の裏
腰を下ろせば
他の誰とでもない
偶然みたいな今を
どう味わうのか
遠くの空を
[み]導きの詩
弾丸が埋もれた足を轢く
頼りない筋の切れた身体でも行かなくてはならない
飛ぶや舞うのが花々であるのなら
この身は何処へ差し出せばいい
亜層圏を越えて
人々はちゅうぶらりんに向かう
ネバーランドを目指して
行く当てもないから
疎らな列となりて
手持ち無沙汰で
関所を越えて
関税は重く
生まれる
膨らむ
胸筋
導き
弔
う
育むとは一人でないこと
生きるは管理されて然るべきで
故に人々はキュークツであるから
飛び交う空を見つめ、馳せる
ティーチャーズ・ペット
カーボン鉛筆の芯が折れて転がる
熱のこもった午後 黒い旗
地下道に似た県立高校の廊下
紙を裂く匂いまでわかりました
幼さをむさぼる人の気配で
三角定規の影も歪む バランスが悪いから
密接した呼気は部屋にたまっていく
伸びすぎた私の前髪が欲望の言い訳ですか
青白い蛍光灯が見ていたことの
いっさいを忘れてしまい
ぼんやり目覚めた冬の朝にだけ
膿んだたましいを温めるなら
量産型
よくある詐欺師の生き方ですよね
苦しみに満ちた自分の生命を抱えきれず
落ちていくとき少女を道連れにする
夢の残像を背中に生やして
留守番電話は聴かずじまいの先生
さほど強くもない風が吹き
何事もなかったように日が暮れ
いつか二人で標本になるの?
ランドン
ランドンは三〇年前に植物の精神を両肺に移植し、
それ以降は羊たちと目を合わせることがない。
「どうして、ランドンは、サンドイッチに魚を入れないの?」
不可解なのは、
ランドンが便座を
すぐに殴って破壊することだ。
鏡に零れ落ちる砂粒
のクラリネット演奏に実ったイチジク
から伸びる影のめくれあがった
粘液の季節
それは油絵具
による修正のような斜線、
直線が細かく入るのだが
ランドンの恋愛遍歴
もそれに似て掻き消された細長い直線
が、ややカーブした突き当たり、
そこには一匹の虎猫
など寝ていれば良いのだがというような
吐息
その消えつつも残りつつある温度
にも似たような
存在であったようだ。
油絵具のカタマリが、
ボソボソと話した。
ランドンが落下する。
それはキンモクセイが満開になった夜のことだった。
夜の木は素早い煙のようにして、
廃墟に唇で吸い付く。
急がないで。讃歌は、いくつもの恋物語と、
トカゲと調律師を、
乾いた脳を横断する臨時的なこのモダニズムに、
接続してきた。
五年から三〇〇〇年の間だったような。
「どうして、ランドンは、ソーセージに、
ハチミツをたくさん塗らないの?」
鳴り響くサイレンに合わせて
ビャッ!
ビャッ!
と喚きながら
契約したと主張する恋人たちは、
この波間、
あるいはこの武器庫の火になり得る誕生日も、
いつかはランドンのようになるのだと、
ニセの声を用いながら
話した。
石灰の激怒、
お気に入りの空、
エーデルワイスのような
カボチャ頭の痩せ細った他者たち、
どうして
本質的な恐怖以前の議論を、
支配者の小径が
求めるのか。
村の人はランドンの靴しか見たことがない。
雨の皮膚を剥いで作った、特別な靴だった。
不可解。
「どうして、ランドンは生まれる前の体毛、
美しい少年の昼間の類型的な真実を、
骨をしゃぶりながら、
凝視し続けるの?」
ランドンは一〇〇年前に死んだ。
遠い雷を聞いて、
その瞬間、一匹の黒焦げの犬になっていた。
ランドンは、ヨーゼフ・ハイドンの交響曲を部屋で聴く。彼の目、
彼の引き攣る習慣。
一〇〇〇年前のランドンは、いまよりも少しだけ
饒舌だった。
「どうして、ランドンはミニトマトと対談しないの?」
以上が、ランドンの人生の物語である。
ぼくは、鉛筆にオイスターソースをかける。
俳句短歌誌『We』19号(2025)掲載「真珠墓」より
流木を抱けば母よと鳥かへる
140文字の物語/画然
小説を読む
映画を見る
音楽を聴く
正当な理念より、面白い
感じて考えて思いを巡らせ、自分と話をする時間は大事。
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コヨーテの唄
森を棄てたやつらは バカだぜ
きのうだ 明日だ 嘆いてら
朝陽と笑い 月に出逢う
それだけでいい
それだけで
森を棄てたやつらは マヌケだぜ
上だ 下だ くだらんぜ
群を生かす
それだけでいい
それだけで
森を棄てたやつらは 阿呆だぜ
夢の兎を 追いかけて
きょうの糧は きょう喰らえ
それだけでいい
それだけで
うまれ堕ちた その日から
数を追いかけ
数に追われる
ネズミだぜ
コヨーテは荒れ野を駆ける
目のまえだけを けんめいに
遥か遠く
北アメリカの大地から
かすかに
遠吠えが 聴こえた
雨の六月
雨自体には雨粒の法があり
魚は泳いでいきます
私にも語りかけています
鳥は幾羽も同時に
目の前の空間を横切る
波立つ水面は
まるでしわしわになった輝きのよう
鉄塔が遠くに立っていて
電気を送り続けています
山の端は霧にかすんで
今日の日はまるで
六月が目覚めの咆哮を放った
あとみたいに
地上を
漠然と
薄暗がりの中に
置いています
君の心のほんの1㎜ズレた場所
君の心の ほんの1㎜ズレた場所
君の心の ほんの1㎜ズレた場所には
誰も触れることのできない
奇妙な花が咲いている
君の心の ほんの1㎜ズレた場所
君の心の ほんの1㎜ズレた場所には
啼くのを忘れた小鳥が一羽
青い空に遊んでる
君の心の ほんの1㎜ズレた場所
君の心の ほんの1㎜ズレた場所には
誰に聞かすでもない音楽が
いつまでも鳴り響いてる
君の心の ほんの1㎜ズレた場所
君の心の ほんの1㎜ズレた場所には
忘れられた尋ね人のポスターが
剥がれかけて揺れている
君の心の ほんの1㎜ズレた場所
君の心の ほんの1㎜ズレた場所には
人っ子ひとり いやしない
君の心の ほんの1㎜ズレた場所
君の心の ほんの1㎜ズレた場所で
君は深く深く 息を吸い込むだろう
君の心の ほんの1㎜ズレた場所
君の心の ほんの1㎜ズレた場所で
君は どんな夢を見るのだろうか
君の心の ほんの1㎜ズレた場所
君の心の ほんの1㎜ズレた場所で
君はひとり 笑みを浮かべている
君の心の ほんの1㎜ズレた場所
君の心の ほんの1㎜ズレた場所で
君は
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