N o w   L o a d i n g

通知

ユーザー名

メッセージ

2021/01/01 12:00:00

通知の有効期限は3か月までです。

メールアドレス パスワード 共有パソコン等ではチェックを外してください パスワードを忘れた方はこちらから

投稿作品一覧

五月の空の叫び

ほどけかけた微笑みが
光の中にまぎれていく 

五月の空
やわらかなひかりが
街路樹をゆらしている

目を閉じれば
風は頬をなで
花の香りが
そっとひらく

遠いものほど
高く澄み

触れられぬまま
憧れだけが残る

迷いながら
ふと 立ち止まる午後

見上げた空の先に
かすかな叫び声



 0

trending_up 14

 1

 2

過日の香り―影追の遥(ある日の矢部遥 第三話)

 休日、駅前に隣接する百貨店で用事を済ませた遥は外に出て、少し驚いた。午前中の巻雲は厚い雲に消え、ひやりと湿った風が辺りを走り始めている。秋の入り口の、急な冷え込みだった。

 本降りはまだ――ただ単にまだなだけなのは、ペトリコールが教えてくれていた。
 バッグから傘を取り出す。生成りの風合いに、端へ蔓草が這うデザイン。日傘兼用の、遥のお気に入り。まだ広げずに手に持ったまま、古い木製の天蓋が続くアーケードへ入った。

 裏通りへの路地が見えたとき、遥の足が少し遅くなった。
 十年前、クラスメイトと初めて入った装身具と――肌着の専門店。

 傘を広げ、路地へ折れる。雨の香りが強くなった。隣に、いないはずの影が並んで歩いていた。遥はそちらを見なかった。ただ、歩幅が自然に、二人分になっていた。
店は変わっていなかった。

 ドアベルが鳴った。からん――からん、と二回。

 奥でミシンをかけていたのは、あの頃大学の服飾科にいると言っていたお姉さんだった。手つきが、落ち着いた職人のそれになっていた。二言三言、昔よく来ていたことを話した。鈴蘭の刺繍がある、柔らかな風合いの揃いを、二つ求めた。

 外に出ると、またドアベルが二回鳴った。
傘を差して歩く。傘に当たる雨の音が、二種類聞こえた。

 小さな公園の東屋に、遥は座った。
左の方から、雨の匂いに重なって、シトラスの香りがした。

 遥は前を向いたまま、動かなかった。香りが強くなる。唇と、胸に、冷えた手のひらの記憶が戻ってくる。

 「ん、」
 ふっと、吐息が絡みあい混じった気がした。

 傘に当たる雨の音は、一つだけだった。

 遥は包みを一つ、東屋のベンチに置いた。それから立ち上がり、傘を持ち直して、公園を出た。

 ただ胸に手を当てて、何かを抱くように。

 0

trending_up 95

 2

 6

二つの雨―満水の遥(ある日の矢部遥 第七話)

 矢部遥は疲れ果てていた。

 一応の対応は終わった。自己の範囲で最大のことをやった。そして、ようやく帰宅した。

 タイマーで入れていた浴室の湯は既に冷めていた。追い焚きを入れると、底から熱が戻り、水面が少し上がる。肩まで浸かっても、温かさは皮膚の上で止まる。

 日付が変わった頃、雨が降り出した。いつもなら好きな音だった。なのに今日は粒がひとつずつ大きく、軒先を叩く。

 新しいパジャマをおろした。袖を通しても、布になじまない。体がずれる。一歩先なら、それは普通の事。いつでもどこでも、ちょっと水位を見ればそれで良かった。

 今日は違う事を、胸に当てた指先が知っている。今にも溢れ出しそうで、でも栓を開けるためのことすらしたくない。

 ベッドに横たわっても、雨音は遠くならない。呼吸も脈拍も勝手に走っていると遥は感じる。

 遥は起き上がり、窓から一番遠い廊下へ行った。毛布を一枚だけ持って、硬い床に躰を丸める。

 水位は下がらない。増えもしない。ただ、満ちたままそこにある。

 溢れそうな水位に、少しだけ指を浸す。
 雨の音は遠くで聞こえる。

 時折、口から声が溢れそうになる。小さく小さく息をして、揺れる水面を撫でてゆく。

 開けないことを選んだ躰は、ようやく水平と言う基準に落ち着いた。

 目は廊下から見えるテーブルの脚だけを見ている。遥はその満水をそのまま抱え、そしてずれたまま、水位を見るのをやめた。


 雨音が聞こえないことに気づいた遥は、ゆっくりと手を伸ばす。廊下の天井。テーブルの脚。玄関の靴箱。

 いつもの風景。

 起き上がろうとして、目を回す。
 まだ躰はずれたまま。湛えた何かは水脈を、別の色で巡り続けている。

 揺れる水位を感じたまま、やかんを手に取り、お湯を沸かし、いつもの休日の朝を始める。

 ただ今日は、濃いめのコーヒーを、たっぷりと用意した。


 午前中、弱々しく家事を済ませ、たっぷりのコーヒーが半分になった頃、遥はもう一度バスタブにお湯をはった。
 そういえばとベッドの脇に目をやる。数年前、友達からもらったまま飾ってあったバスソルトを手に取った。封を切ると、潮の香りと柑橘の香りが、ひっそりとした寝室に満ちていく。

 遥はクローゼットの隅にあるボックスを開けた。柔らかく、優しげなパジャマやその他いくつかを取り出すとベッドの上に並べて見る。その光景に少しだけ胸の水面が静かになった気がした。

 浴室の窓からは空しか見えない。

 遥は雨上がりのまだ薄い雲を見あげたまま、湯に躰を沈める。

 昨夜の張り詰めた胸は、まだその水を湛えたままだったが、遥は潮と柑橘の香りを躰に染み込ませるように、手を自身に添わせてゆく。

 湯から上がると、浴室の鏡が白く曇っていた。遥は拭かずにそのまま出た。

 ベッドの上のものたちが、並んだままでいる。遥はその中にそっと倒れ込む。素肌に触れる布の重さが、昨夜の硬い廊下の床をゆっくりと上書きしていく。

 潮と柑橘の香りが、髪に残っている。

 窓の外、雨上がりの光が薄く部屋に入ってきた。昨夜とは違う白さ。遥は目を細めて、その光の端を見ていた。


 水位は、まだそこにある。
 でも、今は流れの重さが違う。

 満ちたままでいることが、昨夜ほど怖くない。

 コーヒーの残りを思い出した。

 でも、まだいい。

 遥は並べたうちの一つを胸に抱いた。
 抱きしめるわけでもなく、ただ、重さを感じる。

 そのまま、眠った。


 目が覚めると、部屋の光が傾いていた。
 三時、か四時。コーヒーはすっかり冷めている。遥は起き上がり、窓を少しだけ開けた。

 雨上がりの空気が、潮と柑橘の残る部屋に入ってくる。

 水位は、下がっていた。
 少しだけ。
 でも確かに。

 昨夜からずっと湛えていたものが、眠っているあいだに、どこかへ少しだけ流れていったらしい。

 どこへ、とは分からない。
 それでいい、と体が知っていた。


 遥は冷めたコーヒーをそのまま一口飲んだ。

 苦かった。
 ただ悪くなかった。

 0

trending_up 57

 2

 2

そんなことあるわけないだろと笑われるが、本当にあった話

2025年12月25日
私はとある神社の前にいた。
老朽化の進んだ古くて小さな神社は、人生の転機や新しい挑戦をしたい時に参拝すると良いとされている。
「来年こそ幸運が雪崩のように押し寄せますように!できればバラ色の人生もお願いします!」
誰もいなかったので、遠慮なく声を大にして祈願をした。
すると、拝殿の扉がガタガタ音を立てて開かれ、中から、小さなおばあちゃんがひとり現れた。
「あなた時間ある?お茶でも飲んでいかない?」
えええ?神社の中でお茶ですか?かつて人生の中で経験のない事だわ!こんなLuckyってある?
心は踊り、欲深い私は、迷うことなく誘われるがまま、中に入っていった。
温かみのある優しい声で、おばあちゃんはゆっくりと話を始めた。
「私はここで洋裁教室をやってるのよ。週に2回、10時から16時まで。いつきてもいいのよ。週に一度でもいいし、月に一度でもいいし、あなたの都合の良い時でいいの。あなたも洋裁やってみない?」
見渡すと、年配の女性が、冬のコートやジャケット、ワンピース等を作っている。
素晴らしい作品の数々だ。
「是非わたしもやらせてください!」
即決即答した。
何故なら、チャンスがあれば洋裁をやってみたいとかねてから思っていたから。

この世に服はあふれているのに、直感が迷わず「これだ!」とささやく運命の一枚にはそうそう巡り会えるものではない。
だから、粋な色柄の生地で、私の感性が閃くままに服をデザインしてみたかったのだ。

早速、生地を探しに行った。
透明感のあるエメラルドグリーンの麻の生地に一目惚れ!
私の大好きなあの南の海の色だ!
姿見で顔映りをチェック。似合わなければ、買っても意味がない。
うん、大丈夫そうだ、良かった。
あとは、必要なもの、糸やファスナーや、裏地などを購入し、準備は整った。

気付けば、幾つもの偶然が折り重なり、私は神社へ通い、お参りを済ませると、そのまま神様の前で洋裁を学ぶという前代未聞のありがたい習い事が始まったのだった。

何と言っても、パワースポットで、ひと針ひと針心を込めて縫わせて頂くわけだから、仕上がれば、幸運と幸運を繋ぎ合わせた『福服』となるわけだ。

今、目の前には、最後のアイロンを待つだけのエメラルドグリーンの福服が静かに佇んでいる。
それは、私が私に贈る最高のご褒美!

この一着に袖を通した瞬間から……
人生がキラッキラの幕を上げる。

始まるよ! バラ色の人生が!!

 0

trending_up 43

 6

 4


はしつてむかうはるのあめ きみのことばにいそぎゆく
たもとをわかつはずだけど やはりわかれがさびしくて

さんざんとこにみたきみは やみをはらんでつよくある
やまにわたしはよわくあり ちぢこまりつあわれなり 

はなにみずゆくはるのあさ ほんをとじゆくひとりかな


 

 50

trending_up 31

 5

 6

山水と潮風―溢水の遥(ある日の矢部遥 第六話)

 七月の日曜日、山間の温泉を出た遥は、駐車場で少し立ち止まった。

 午前中はよく晴れていたが、午後の山の空気はすでに湿り始めていた。お湯は気持ちよかった。露天からは稜線が見えて、人もほどよくいて、悪くない時間だった。
 なのに、着替えて車のシートに座った瞬間、遥は自分が軽すぎることに気づいた。
自分の胸の奥、水脈の流れ、流れはあるのに軽い。何か違う物で満たされている。そんなズレかた。

 エンジンをかけながら、その感覚に名前をつけようとして、やめた。山を下り始めると、カーブのたびに木々が流れ、やがて川沿いの道に出た。川面が、曇り空を映してくぐもった光を返している。ラジオをつけようとして、やめた。このズレを、音で埋めたくなかった。

 海沿いのバイパスに入ると、潮の香りが来た。
 遥はバイパスから並行する下道に降りると、堤防脇に車を停めた。自宅まではもう十分ほどだったが、身体が先に動いた。

 エンジンを切ると、静かになった。窓を少しだけ開ける。

 潮の湿った香りが、静かに入ってきた。
 外出着は汗ばんでいた。お気に入りのシャツも、皮膚に薄く貼りついている。帰れば清潔なシャワーと、ベッドの上には優しい寝間着が出してある。なのに遥はここで、見えない波に身を委ねていた。

 ヘッドライトが流れるたび、フロントガラスに光が走る。遥の膝を、ハンドルの影が横切ってゆく。また来て、また過ぎる。誰も遥に気づかない。

 波の音が聞こえた。

 規則的ではない。来るたびに違う。遥の心臓は、自分のリズムで打っていた。波と、心臓。潮の香りと、汗の香り。どちらも遥のもので、遥のものでもなかった。

 フロントガラスの向こう、黒い海に月が浮いていた。

 時折ヘッドライトが走るたびに、遥の姿が浮かぶ。汗ばんだ外出着の遥が、暗い海を見ていた。見えない波に、ただ、委ねていた。

 温泉が満たした何かは、波の音の中で少しずつ、形を変えていった。出るのでも溜まるのでもなく、ただ、並んで流れてゆく。

 どれくらいそうしていたか、分からない。

「ん、」

 小さな声が、波の合間に一度だけ響いた。やがて遥はエンジンをかけた。バイパスに戻り、十分を走った。

 明るい浴室で、シャワーを浴びた。

 潮の香りが、排水口へ流れてゆく。汗も、山の水も、一日の重さも、湯が引いていった。化粧水を手に取り、伸ばす。いつものシトラスの香りが、浴室に広がった。

 自分の手から、今日最後の水が、水路を辿ってゆくのを遥は感じていた。

 寝間着に袖を通す。柔らかく、軽い。今度は、ちょうどいい軽さだった。
 部屋を暗くして、ベッドに入った。スピーカーから、波の音を小さく流した。

もう一度小さく、「ん、」と呟く。
そして遥は眠りに落ちた。

 0

trending_up 73

 4

 2

途切れなく流れ続けて―柑那と遥(ある日の矢部遥 最終話)

 桜も散り、ふわふわしていた校内の空気も少し落ち着いてきた四月の終わり頃、少し袖口が長く手のひらを隠しがちになる制服を持て余し気味に、特に部活に入ることもなかった矢部遥は、放課後の教室で、文庫本のページをめくっていた。

 図書室のラベルが貼られた古い本の傷は、今まで読んだ人の足跡なんだなと、そんな事を遥は思いながら、かさりと乾いた音を立ててページをめくる。
 その音の合間に、自分の呼吸と窓から入る風の湿度が並んで流れていく。

​ その風に乗って、一筋の香りが漂う

「……それ、面白い?」

​ 降ってきたのは、シトラスの香りが混じった、胸をくすぐるような声だった。
 遥は顔を上げる。そこには同じ制服を、自分とは違う着こなしで纏ったクラスメイトが立っていた。
​ 彼女の名前は、まだ名簿の中の記号でしかなかった遥は、返事に詰まる。

​「あ、……図書室にあったから」

​ 遥は反射的に、長く伸びた袖口を握り込んだ。
 握り込んだ手のひらの中で、わずかに汗が滲む。

 それが、彼女の内側の水位が初めて外の世界に向かって波紋を立てた瞬間で、遥自身が水位を意識した瞬間でもあった。

「寺田寅彦……何の本なの?……」

 彼女はそう言って、遥の机の角に指を添えた。その指先は、可愛らしい絆創膏が一枚。

 遥は、ページを開いたままの手が急に“そこにある”ことを意識してしまう。

「あ、えっと……随筆……みたいな、科学とか……」

 声が、湿り気を含み、少し重たげに。

 彼女は気づいたのか気づかないのか、ふわりと笑って、遥の隣の席に腰を下ろした。

 その瞬間、シトラスの香りが、文庫本の紙の匂いと混ざって、遥の胸の奥の水面にそっと触れた。

「へぇ、なんか意外。
遥さんって、もっと……歴史とか好きそうな感じかと思ってた」

「……なんで?」

「なんとなく。
落ち着いてるし、調べ物してる感じするし」

 今わたしを調べてるのは、あなたじゃないのかなぁ。遥はそう思いながら、袖口をまた握り込んだ。

 握った手のひらの中で、さっきより少しだけ水位が上がる。

「ねえ、帰り……一緒にちょっと寄り道しない?」

 彼女は、窓の外の光を一度だけ見てから、遥のほうへ身体を向けた。

「駅の近くに、かわいいお店があるんよ。
見てみたいものがあってさ。
 ……一人じゃ入りにくいけん」

 その言い方が、秘密をそっと差し出すみたいだなと、遥の胸の奥の水面は、その言葉に揺れたのだった。

「……うん。いいよ」

遥は自分でも驚くほど、すぐに言葉を返した。

 彼女は嬉しそうに目を細めた。
 その笑顔が、遥の中の“まだ名前も知らない水脈”に、初めて光を落とした。

 放課後の教室は、もう人影もまばらで、運動部の掛け声が遠くから風に乗って紛れてくる。

「じゃあ、行こっか」

 彼女は立ち上がりながら、絆創膏の貼られた指先で、机の角を軽く“とん”と叩いた。その小さな音は、遥の胸の奥に、思ったより深く波紋を立てた。

 教室を出ると、廊下は少しひんやりしていた。二人分の足音が響く。

 コツコツ、こつこつ。

 遥は、歩幅を合わせることを意識してしまう。

「ねえ、遥さんってさ」

「……うん」

「本読むとき、すごーく静かなんね。
 なんか、風の音とかまで聞いてそう」

 遥は少しだけ笑った。図書室の文庫本の紙の匂いと、さっきのシトラスの香りが、まだ胸の奥に残っている。

「……聞こえるよ。風とか、雨とか。
 そういうの好きで」

「やっぱり。そういう感じするもん」

 彼女はそう言って、階段を降りるとき、手すりに軽く触れた。その仕草が、どこか大人びて見えた。

 校門を出ると、夕方の風が少し強く吹いた。制服の裾が揺れて、遥の袖口もふわりと浮く。

「ここからちょっと歩くんよ。
駅前のアーケードのひとつ裏、わかる?」

「うん……なんとなく」

「大丈夫。
迷ったら、手ぇ引っ張るけん」

 冗談めかして笑うその声に、遥の胸の水面がまたひとつ揺れた。
 歩きながら、遥はふと気づく。自分の手のひらの汗は、もうさっきほど気にならない。

 代わりに、
“この子と歩いている”という事実だけが、静かに胸の奥に沈んでいく。

 ようやく名前を思い出した遥は

「瀬高柑那さん、柑那さんで良いかな、呼ぶの」

 遥がそう言うと、彼女は一瞬だけ目を丸くして、それからふわっと笑った。

「うん。そっちのほうが嬉しい」

 その“嬉しい”の響きが、夕方の風よりも先に、遥の胸の奥へ届いた。

 アーケードの手前で信号が赤に変わる。
二人は並んで立ち止まった。人の流れの中で、ほんの少しだけ互いの距離が近づく。

「ねえ、遥さんってさ」
「……うん?」

「なんか、話しやすいね。
今日、声かけてよかった」

 遥は返事をしようとして、喉の奥で言葉がひとつ転がった

“話しやすい”と言われたのは初めてだった。むしろ、話す前に一歩引いてしまう自分を、ずっと気にしていたのに。

「……そう、かな」
「そうよ。なんか、落ち着く」

 信号が青に変わる。
 二人は歩き出す。アーケードの屋根が頭上に広がり、夕方の光が少しだけ柔らかくなる。

「ほら、あそこ。あの小さいお店。
 かわいくない?」

 指さした先には、淡い色の看板と、布の影が揺れる小さなインナーショップがあった。

 遥は思わず足を止めた。
「夢みるエス……えっと」
「エストレリータ、スペイン語で小さな星、だって」

「……入るの?私、初めてで……」
「うん。ちょっとだけ見るだけね、付き合って?」

 その“付き合って”の響きが、遥の胸の水面を揺らした。一雫の、はじまりの音がした。

 遥は小さく息を吸って、袖口を握り込む癖が出そうになるのを、そっと止めた。

「……うん、じゃあ行こか」

 柑那は嬉しそうに頷いた。
その横顔を見た瞬間、遥の胸の奥の水位が、静かに、でも確かに上がった。

カランカラン

 ドアベルの柔らかな響きをくぐり、遥は店内の木の床に、まだ傷も少ない革靴で、少し戸惑いながらも踏み入れた。

「いらっしゃいませ〜」
若い店員の声がかかる。

「すいません、ちょっと見させてもらって良いですか?」

 柑那がそう答えると、店員は
「ごゆっくりどうぞ〜、なにか質問あったら遠慮なく聞いてね〜」
と気さくな返事を返してきた。

 遥はちょっと落ち着かない。
何より今までこういったのは母親任せだったし、初めて喋ったクラスメイトと二人で来るというのも全く考えてなかった。

 ただ、店内の雰囲気は落ち着いたナチュラルなアースカラーをベースにした素材と色合いで、所々に手描きのポップがメッセージカードの様に展示してある。遥の好む内装だったので先に動こうとする躰を引き戻すような、余裕ができるのを感じた。

 遥はしばらく見回して、そして気づいた。
「あの、ここってサイズが……」
柑那がにやっと笑って答える
「そう、わたしらみたいなのの専門店」


 その言葉に遥はまた胸の奥になにかが溜まるのを感じた。少しずつ水面が持ち上がるような、ただそれをうまく柑那に伝えることが出来ない。少し長い制服の袖口を再び握る。

 柑那は、棚に並んだ淡い布を指先でそっと触れながら言った。その指先の絆創膏が、店内の柔らかい光を受けて、小さく光った。

 遥は、どう返せばいいのか分からなかった。けれど、柑那の声はからかいでもなく、ただ“同じだよ”と伝えてくるような、そんな優しい響きだった。

「……あ、そうなんだ」

 それだけ言うのが精一杯だった。胸の奥の水位は、言葉よりも先に動いてしまう。

 柑那は、棚の奥にあった淡いラベンダー色の布を手に取った。

「これ、かわいくない?
 大人っぽいけど、やさしい感じで」

 遥はうなずいた。
布の色が、胸の奥の水面にそっと落ちていく。

「遥さんは、どれが好き?」

 突然の問いに、遥は息をのんだ。
“好き”と聞かれることに慣れていない。
まして、自分の身体に関わるものならなおさら。

「えっと……まだ、よく分からないけど……」

「分からんでよかよ。
 うちも今、そうやけん」

 柑那は笑った。
その笑顔は、遥には店内のアースカラーよりも柔らかかった。

「ね、これとかどう?
 色、遥さんに似合いそう」

 差し出されたのは、淡い水色の、小さな星が刺繍されたやさしい布。

 遥は受け取る指先が震えないように、そっと両手で包んだ。胸の奥の水位が、静かに、でも確かに上がる。

「……きれい、だね」

「でしょ。
 なんか、こういうの見るとさ……ちょっとだけ、自分のこと大事にしたくなるんよね」

 その言葉が、遥の胸の奥の水面から深く沈んだ。

“自分のことを大事にする”
そんなこと、考えたことがなかった。

 柑那は続けた。

「ね、誰にも言わんけん。
 今日ここ来たことも、何見たかも。
 秘密にしとこ」

 秘密。

 その響きが、遥の胸の水面に落ちて、静かに波紋を広げた。

「……うん。秘密」

 遥がそう言うと、柑那は嬉しそうに目を細めた。その瞬間、遥の中の“まだ名前を覚えたばかりの水脈”に、またひとつ光の粒が落ちた。

−−−
五月の風は、まだ春の匂いを残していた。

「今日も寄っていく?」
柑那がそう言うのが、いつの間にか当たり前になっていた。

 二人はアーケードを抜け、
「エストレリータ」の木のドアを押す。

カランカラン。

店のお姉さんは、もう二人を覚えていた。

「いらっしゃい、今日も仲良しやね〜」

 遥は少し照れながらも、その言葉が胸の奥に静かに沈むのを感じた。

柑那は棚の布を指先で触れながら、
「これかわいくない?」
「こっちは大人っぽいよね」
と、楽しそうに言う。

 遥はまだ何も買わない。ただ、布の色や質感を眺めるだけ。

でも、
“柑那と一緒に選んでいる”
という事実だけが、遥の胸の水面にそっと波紋を広げていく。

−−−
六月の雨は、二人の距離を少しだけ縮めた。

「ありゃ、振ってきたね」
「……うん、傘あるから、大丈夫」

二つの雨音とシトラスの香りが混ざる。

「ねえ、遥さん」

柑那がふと、アーケードの屋根の端を見上げた。

「秋になっても、ここ来れるかなぁ」

独り言みたいな声だった。
遥は返事の形を探して、結局、傘を少しだけ柑那の方へ傾けた。

「でもね、遥さんと帰るの、好きなんよね」
その言葉だけが、遥の胸に深く沈んだ。

店のお姉さんは、
「雨の日に来るのもいいよね〜」
と笑った。

遥は、
“ここに来ること”が
自分にとってどれだけ大事になっているか、まだ気づいていなかった。

−−−
七月:夏休み前、二人で“お揃い”を買う日期末

テストが終わった帰り道。
夕方の光はまだその暑さを落とす。

「今日こそさ、買おうと思うんよ」
 柑那が言った。いつもより少しだけ、早足だった。

「……買うって?」
「これまで見てきたやつ。夏休み前に、ちゃんと形にして持っておきたいんよ」

 遥は胸の奥が熱くなるのを感じた。理由は分からない。 でも、“今日なら”と思った。

 店に入ると、お姉さんが嬉しそうに言った。

「お、今日は本気の顔やね?」

 柑那はアプリコットのセットを手に取る。遥は、淡い水色に星と月の刺繍がついている布に目が止まる。

「これ、遥さんに似合うよ」
 柑那が言う。

 遥は、胸の奥の水位が静かに満ちていくのを感じた。
 そして二人は同じシリーズの、色違いのセットを買った。

「夏休み明けたら、また来よ」
柑那が言う。その声が、一瞬遅れて聞こえた。

「……うん」
遥も少しだけ遅れてうなずいた。

遥の胸の奥に“満ちる”という感覚が生まれた。ただそれと同時に、水面が揺れるのも感じるのだった。

−−−
九月:新学期、柑那はいない

始業式の朝。
教室に柑那の姿はなかった。

先生は短く言った。

「瀬高さんは、ご家庭の都合で夏休みの間に転校されました」

理由は誰も知らない。
遥も聞けない。

放課後、九月なのにアーケードの風がやけに冷たく感じた。

「エストレリータ」の前を通る。
ドアベルの音が聞こえる気がした。
でも、入れなかった。

家に帰り、夏休み前に買ったセットを箱にしまう。

一度も身につけないまま。
クローゼットの隅へ。

それは、秘密の続きが途切れた場所として、遥の中に残った。

 遥は箱に触れながら、かつて図書室でめくった寺田寅彦の一節を思い出す。

――線香花火の火花は、一瞬で消えて見えなくなる。けれど、その光が描いた複雑な軌跡は、しばらくの間、網膜の裏側に鮮やかな残像として焼き付いて離れない。

「線香花火みたいに消えちゃって……でも、ここにその姿は残しておくから、ね」

 独り言は、クローゼットの暗がりに静かに吸い込まれた。 けれど、彼女が遥の「水脈」に落とした光の粒や、あのシトラスの香りの余韻は、消えずにそこにある。

 遥は思う。

――あの日の水位は、どこへ流れていったんだろう。

 答えは出ない。けれど、胸の奥の水脈は、確かにあの日から、夏休み前の星と月の影を映し、温んだ水面を湛え流れ続けている。

――――――
ある日の瀬高柑那

 半島の山あいに来て、三年が過ぎた。
任期で来たはずなのに、気がついたら更新していた。頼まれたから、というのも本当だけど、それだけじゃないのは自分が一番分かっている。
 施設の庭に、みかんの木が三本ある。夏は青くて固い実が、秋になると少しずつ色づいてくる。患者さんの車椅子を押して、その木の下を通るたびに、ふっと香りが来る。

 「あ、」と思う。
 この香り。
 あの街にいた頃も、自分にシトラスの香りを選んでいた理由を、うまく説明したことがない。ただ単に、少ないお小遣いで買える、精一杯の香りだったかもしれない。それでも、これがいいと思っていた。今は外からも来るし、自分からも出ている。どちらが先なのか、もう分からない。

 リウマチの患者さんの手は、朝が一番つらい。起き抜けの関節の強張りが、その日一日の調子を決める。だから私は朝が早い。「今日はどうですか」 聞きながら手を取る。温度を確かめる。握り返してくる力の加減で、だいたい分かるようになってきた。
 言葉より先に、手が教えてくれる。

 あの制服のことを、たまに思い出す。
 遠くに転校してからも、そのままあの制服で通った。「買ったばっかやけん、勿体なかし」と母を気遣うようには言ったが、家計の事は後付けだ。おかしいのは分かっていた。でも脱げなかった。

 あの四ヶ月を、手放したくなかった。
 特に、あの放課後のことを。

 図書室の文庫本の匂いと、窓から入る風と、ページをめくる音の中にいた人のことを。名前を呼んだら、少し驚いたような顔をして、それからゆっくり答えてくれた。

 矢部遥さん。

 今も、どこかで本を読んでいるんだろうか。風の音を聞きながら。

 夕方、山の稜線が暗くなる前の、一番空が広い時間がある。患者さんのリハビリが終わって、記録をつけて、少しだけ窓の外を見る時間。
 みかんの木が、また少し色づいていた。

 秘密にしとこ、と言った日のことを覚えている。
 アプコリコットの、星と月の刺繍。ずっと箱にしまったまま十年が経った。

 代わりに、ここでは星がよく見える事に気がついたよ。

 もう一つの水色の星と月の刺繍は、今でも、どこかにあるんだろうか。

 0

trending_up 59

 2

 4

この世はクソ

この世はクソだ。まともで健気に毎日頑張って生きてる人が報われない。自分の言いたいことばかり言って他人に配慮のない人間ばかりが上手くいくこの世が憎たらしい。死にたい人は生きて生きたい人は死んで、この世はクソだ。身を粉にしてまで生きてる人間には絶望が降りかかり、他人の不幸で生業を立て甘い蜜を吸う輩には希望のある未来があるのだ。この世から争いが耐えないのは息苦しい人々がいるからだ。気持ち悪いんだよ。自分が苦しいからって言い訳を並べて相手を攻撃して自分を守った気になって、相手のためになってると誤認して気持ちよくなってひとりでオナニーしてるお前がいちばん愚かで気持ち悪いんだよ。ああいつもそうやって。私の首を絞めて。セコいんだよやり方が。てめぇの気持ちなんて知らねえよ。私はお前を忘れて幸せになる。アディショナルタイムを無視したお前らは今日もシャンパンを飲んでニコニコ笑ってる。グチグチグチグチ気持ち悪いゲロがお似合いだね。この世はクソだ。狂ったフリして壊れていこうぜ。遊び足りない。ラブアンドピースなんてクソ喰らえ。お前が世界の中心なわけないだろ!私は今すぐお前とこの世を壊してグチャグチャにしてやりたい。説教が気持ちいいと思ってる奴らはダサいしデブ。死にたいとか言ってる暇はない。こんなくだらない世の中で残酷なこと言うけど、自分で幸せを掴みとらないと幸せになれない。でも、こんなくだらないことばっかり、そんなこと言ってこの世のせいにしている自分がいちばんクソだ。

 0

trending_up 34

 1

 3

二度と行かない所に
赤い傘を忘れた。

雨の日に元気でいられるようにと
赤を選んだ。

もしかしたら、もう、
いらなくなったのかもしれない。

 0

trending_up 80

 9

 12

啞異野四流四

啞とは、なにか?
驚きとたまげの世界で、時に人は動転する
未だわからないことがあると言うこと。それが人を成長させる

異とは、なにか?
同じで無いイコールで無いことは、万事に共通する
隔たりは人を分けるけれど、そこに心地よさもある

野とは、なにか?
人工的に作られた世界で、時に我々は目眩する
自らの内側にありて外にそれを見つけた時、発見と解放もある

四とは、なにか?
発展と途上の世界で、大きな分岐にもなる
五になれば安定もあれど、無となれば振り出しに戻る

流とは、なにか?
石として生きる人生を選べど、変化は免れぬもの
頑なは美しく見えても、儚き願望と化す

四とは、なにか?
刻まれたその誓いを胸に、責任と舵を取ろう
バッターが席で投手を睨めば、ランナーは一斉にホームを睨む

 0

trending_up 87

 2

 10

なあ地球

なあ
地球 
お前は 
食べられるのか 

ちぎれるか 
レタスの
葉っぱみたいに

なあ 地球 
骨みたいに 
尖ってアブナイのか 
焼いたら どうなる
匂いは
かなしいか
それともサボンか

煙は出るか


 涙は流すのか


 御経は唱えるか

 葬式はするか

あの星にもな
れなかった
連中の為に

 0

trending_up 60

 6

 9

百年物語

いつも いつも うれいもち。
それ、母の面影。

母は文句が多かった。
子どもごころに、文句の内容は
大したことじゃないことは分かっていた。
違うところにあるんでしょ。

街でマッサージを受ければ、
母に受けさせてあげたかったと思う。

おつかれさん。

重荷をおろして去る姿は、
ひっそりと小さく、
そして凛としていた。

あなたがやり残したことを、
今やっているよ。
しかし、やり残したことが多すぎる。
誰かがやり残したことには、
使命があるの。

さかのぼる十年、二十年、三十年。
これは私の仕事だ。

さかのぼる四十年、五十年、六十年。
誰かがしなければならない。

さかのぼる七十年、八十年、九十年。
並々ならぬ、緊張、忍耐、不条理。

そして百年。

もはやここまでくると、伝統だ。
カッコよく三代目当主とでも
呼んでもらいたい。

私は一日一日を幸せに生きる。
私が幸せじゃないと、
幸せになれない人がいるから。

この百年物語も、まもなく終わる。

 0

trending_up 39

 1

 4

六個

きちんと

鶏が
落とした

錠剤

箱に
いれて
並べた

 138

trending_up 148

 8

 16

BAR「Creative Writing Space」

ニーズがあるやらないやら、まったく見当がつきませんが、
毎度おなじみの思いつきで、BAR「Creative Writing Space」を開業いたしました。

皆様にお使いいただけなければ、すぐに閉店いたします。
電脳空間の片隅にある、吹けば飛ぶような小さなBARでございます。

一杯引っかけた体で雑談していただけるスペースをイメージしています。
「Talk」がさほど機能していないことも踏まえ、もっとカジュアルに使っていただけたらと思っています。


【ルール】
・ワンドリンク制です。必ず何かお飲み物をご注文してからお話しください。ノンアルコールでも構いません。
・お代はいただきません。もしスペースコインをお支払いになりたくなったら、他のお客様に奢ってあげてください。
・酔っ払いすぎにはご注意くださいませ。

 0

trending_up 1381

 16

 68

批評・論考

もとめてないよ なんにも。

わたしに
たどりつくまで
いまに
なりはてるまで
どれだけの
だれかれのみがっての
けっか。 だろうか

しあわせ ふしわあせを
ひとりひとりにせおわせて
これからのことやもののすべてを
まるなげされてさ
「あなたしだいだからね」
すばらしいかがみのじゅもん
たせきしこうはどちらだろう
むせきにんはだれにとえばいい

何にも言わないけどさ
誰にも突き詰めないけどさ
ただ想うだけ

 0

trending_up 6

 1

 0

即時一杯の飯に如かず⑯

 残り2話のところで、停滞していました。
 続きを「新作」として書こうか迷いましたが時間が取れず、ある程度の進行をもっと目途をつけたのでまた始めます。
 
 まずは、おさらいを。

 ------------

 作品紹介

 独身男の飯盛りな日常系
 江波絢斗(アラサー部長)は会社の歓迎会で白鳥路嘉(新卒NR)をお持ち帰り
 それが飯友(的場和真)にバレてしまい――――!?

 秘密の恋と男子ごはん/BL小説

 『絢斗のごはんレシピ』付き

 ・とりあえず、飯。
 ・実在する商品や店、地名が出てきます。

 主な登場人物

 ●江波絢斗:趣味が料理の純然たるアラサー部長。
 ●白鳥路嘉:平成最期の新入社員。食欲旺盛!ツン担当のタチ
 ●的場和真:絢斗の飯友。イケメンの紅茶王子。
 ●佐伯総一郎:絢斗の元彼。魅惑のスイーツ王子(今でも絢斗が好き)

 全17話/タイトル一覧

 1.猫、拾いました。 
 2.朝ごはん
 3.マキシマム
 4.社員食堂
 5.ロシアンティー
 6.グランマーブル
 7.今夜のメニュー
 8.仕事帰りの一杯
 9.台湾料理
 10.珈琲とチーズケーキ
 11.アフタヌーンティー
 12.シメパフェ
 13.ナポリタン
 14.東京ミルクチーズ工房
 15.藪蕎麦
 16.蒙古タンメン中本 ←今回投稿するお話
 17.Twist Scoop Dunk

 一話あたり、600~2000文字のショートストーリー。
 当時話題だったライトBLのタグがついてます。他、ブロマンス・元カレ・年下攻め・飯テロなど。
 
 CWS初の小説連載。新作ではありませんが、一部の内容に加筆しながら、月・火・水/更新を予定。エッセイも書きます。

 ------------


 ep.16 「蒙古タンメン中本」


 25日連続の猛暑日
 熱帯夜に泳ぐスーツの群れも程なくして家に帰るこの時間、高層ビルの15階に位置するオフィスの窓から外を眺める俺は最終に間に合わない覚悟を決めた。
 ホワイトボードの消し忘れに気が付き、踏み出した先で・・・・・・これは?

 白鳥路嘉 16:00~NR

 営業先から直帰とは、これ如何に。
 新卒、だから・・・・・・弊社としては新人研修2か月儲け「研修生」として基礎からサポートした上で実際の現場に送り込む。見極めの期間を生き残った社員は半年毎に研修と面談を受け、2年で安定した雇用として獲得できれば儲け者。中途採用の雇用も良かった時期はあるが、即戦力に期待して実績が出ない場合も多く人員不足の悩みは尽きない。
 路嘉がどのくらい働けるのか。
 評価共に本人からも話を聞いたことは無いが、NRの傾向として・・・・・・

 プライベート優先する奴が多い。

 会社に身を置く限り、公私混同も覚悟の上で生きる事は食うこと。とは言わないが俺が考えが古風なのか、時代錯誤を感じながらボードを消していると通路からの物音に振り返る。

 「江波さーん、いますか」

 路嘉の声に慌てて駆け出す。

 「お疲れ様です」
 「あ、俺のパスケース届いてませんか」
 「見て無いが・・・・・・」
 「中に免許証入れてるんですよ。会員証作ろうとしたら無くて・・・・・・やばい」

 デスクを見回した後、ふと俺のデスクに置かれた封筒の下を見るとパスケースに付箋が添えられていた。そのまま渡すと、顔をしかめる。

 「的場さん、今日来てたんですか」
 「さぁ・・・・・・お前のデスクを置けばいいものを」
 「こういうお礼は、LINEで返しても失礼じゃない?」

 頷くとスマホ片手にすぐ取り掛かるのは良い事だ。しかしグループLINEに送らなくても、通知音OFFにしてないのでオフィスに喧しく鳴る。誰も居なくてよかった。

 「残業もいいけど自分の時間も大事にした方がいっすよ。江波さん」

 通勤バックからビニール袋を取り出す路嘉は、一度こちらに視線を寄こし、フフッと笑いながらカップラーメンを抜き取った。
 
 「新発売です。もう、食べました?」

 セブンプレミアム
 蒙古タンメン中本北極ブラック黒い激辛味噌
 

 絶句


 俺は激辛耐性、皆無。
 ラーメン界を「旨辛」で制する中本は、味覚が壊される恐怖の対象でしかない。
 それをここで食べようとする路嘉の手を止める。

 「会員証は、いいのか」

 今から行けば間に合う、とはいえ営業時間ギリギリに飛び込むのは感心できない。中本を持って速やかに帰れと促すがスマホをいじり出す。
 優しく言ってるうちに理解してくれ。
 俺は一秒でも早く仕事を終わらせて帰らないと総務から報告書を上げる羽目に遭う。そんなことよりスマホが煩い、誰だ。


 ──── 仕事終わるまで待ってる ────


 すぐ近くにいる、路嘉からメッセージ。
 やる気を削がれてしまい、荷物をまとめてオフィスを出るまで5分と掛からなかった。

 「お前、蒙古タンメン好きなのか」
 「刺激的なモノでストレス解消、よくある話でしょう」

 ホームのアナウンスに気が付けば習慣で階段を駆け足で降りる。
 改札を通りホームに流れ込む電車に飛び乗った。吊皮を握る手に汗。息が上がってるのは走ったせいではない。久しぶりに路嘉の横に立つ緊張の着地点がどこにあるのか、いつもは憂鬱に流れる景色が今夜はとても鮮やかに見えた。まるで真夏の世の夢だな。

 0

trending_up 19

 1

 4

汝、不埒であれ。


聖者たちの祈りが
夜の底で冷たいプラスチックの破片に変わる頃
僕らはもっと、不埒でなければならない。

​正しさという名の、糊のきいたシャツを脱ぎ捨てて
行儀の悪い指先で
世界という熟れた果実の、いちばん柔らかい嘘を剥く。

​綺麗に生きることは、
硝子の檻の中で、静かに窒息することだ。
​だから、唆されるままに、はみ出しなさい。

夜を徹した秘密の部屋、こぼした赤ワインが
純白の絨毯を汚していく、あの鮮やかな罪のように。

痛みのない幸福など、
ラベルを剥がされた安物の缶詰にすぎないのだから。

​もっと不埒に、さらに貪欲に。
​神様が創り忘れた、世界の余白を
僕らの不始末な情熱で埋め尽くそう。

夜明けの冷たい光が、僕らの不埒な足跡を
すべて暴いてしまう、その前に。

皆、不埒であれ。

 0

trending_up 27

 3

 3

自殺に失敗しました

タイトル通りです。気づいたら緊急搬送されていました。その後拘束され入院。自分のこと殺そうとしたので当然ですよね。地獄のようでした。トイレで排泄ができず、垂れ流すまま。涙も拭けない死に損ない。さよならさよならさよならサヨナラ。さよならって言ってるじゃん。結局は生きたいままでただの反抗期が治ってないのかもしれない。毎日叫んでる。夜は寒い。自分の事を傷つけてしまう自分が嫌い。私のことを認められない私が嫌い。私はいつになったら私のことを好きになれるんだろう。新しい私はどこにいるんだろう。 
人生の第1章が終了した。

 0

trending_up 184

 4

 14

二回。
一日に二回。

浅瀬は一日に二回、
干潮で日の目を浴びます。

月と太陽のチカラで波が引いていき、
深淵はさらに深い場所へと姿を眩ませます。

一日のうちたった二回。
唯一浅瀬が輝ける時がありました。

ほんの二、三時間。
たくさんの男が浅瀬を見にやってきます。

しかし奇跡はそう長く続きません。
実際は30分ほどで波はザァザァ戻ってきてしまいます。

男たちも戻っていってしまいます。
顔を覚える間もなく行ってしまいます。



ある日、
一人の男が釣りをしにやってきました。

満潮です。
浅瀬で釣りを楽しめるところは限られています。

魚はなかなか釣れません。
なので、浅瀬は

深淵と混じる混合水、
中間層くらいの深さにいる魚を男に持っていきます。

しかし男にはどれもパッとしないようで、
一匹も受け取ってくれません。

男は浅瀬が見たこともない高価な仕掛けや、
巧妙なテクニックで、

少ないながらも着実に、
珍しい、深淵の魚を次々と釣っていきました。

浅瀬は絶望します。
男は深淵しか見ていません。浅瀬など眼中にないのです。

もちろん世の中には、
ここまでの男もたくさんいます。

何より浅瀬がショックだったのは、
その男に見覚えがあるからでした。

男とは小さい頃から一緒に笑い合う仲でした。
あの時にプレゼントした翡翠石や貝殻は、今の男には見る陰もありませんでした。

浅瀬は泣きました。
ありったけのガラス片を集めてやけっぱちな気持ちで遊びにきた人たちを傷付けて回りました。

男は自分で船を出し、
深淵の元へ行ってしまいました。


それから季節が経ち、
ガラス片も波に削られて丸くなった頃、

一人の男がやってきます。
夏でした。

太陽の光を引きずり込み黒々とした深淵に比べて、
浅瀬は日光を反射してキラキラと輝いて見えます。

美しい顔をしている。
浅瀬は男を見て思いました。

まるで沈んでいく夕日のように、
この広い海にもよく映る綺麗な顔。

男は浅瀬が決死の思いで集め、
磨いたガラス片を美しいと言いました。

それから浅瀬は深淵に憧れるのを辞め、
一人の男の側にいたいと思いました。




それから二人は結婚しました。
言葉も体も指輪も交わしました。

それでも、
1つのベットで何もかもを混じえて眠る夜に、

あの深淵の男が、
心の奥深くに、

思うのです。



Wind is blowing from the Aegean
女は海
好きな男の腕の中でも
違う男の夢を見る
Uh,,,,Ah,,,,Uh,,,,Ah,,,,
私の中でお眠りなさい




 0

trending_up 16

 2

 4

父ならざる父たちの世界

女の子は家には帰りたくないと言う
醜いものまでも美しく光る
歪みの磁場へ帰りたくないと
身体じゅうからさびしさと
人々の無関心の匂いを放ちながら
その目は家ではない家を
血縁ではない血縁を
誰のものでもない国家をさがして飢えた
森の奥から狡猾なB面の人々が
獲物の匂いをかいでいた
母が少女時代に録音したカセットテープの
すてきにさびしい音楽で育った
もう子どもではなかったはずの大人たち
女の子だった私は不幸にして彼らを懐かしむ

 0

trending_up 25

 1

 4

幸子の幸 ーー 巨大娘ダーク・ファンタジー ーー

幸子の幸

笛地静恵

【ノート】
R18の「巨大娘小説」です。一万字のダーク・ファンタジーです。成人して興味があるようでしたら、もう一度、読みに来てください。そして、暴力や性的な描写があります。異常です。不愉快になります。つまらないです。苦手な人は読まないように、ご注意を申し上げます。2026年5月18日 笛地静恵

【あらすじ】
未知の難病「縮小病」により、身長が80センチメートルに縮んでしまった中学生の太一。かつて自分が「ミニちょん」と見下していた無口な同級生・高橋幸子に、放課後の旧体育館へ呼び出される。太一を待っていたのは、圧倒的な体格差を背景にした、幸子からの狂気的な愛の告白と、抗えない力による肉体的な蹂躙だった。脅迫写真で逃げ道を塞がれ、絶対的な捕食者となった彼女の奴隷となる太一。だが、次第にその歪んだ支配に奇妙な安堵と、男としての悦びを見出し始めていく。
病による肉体の縮小が、教室の権力構造を文字通り「逆転」させる衝撃的なダーク・ファンタジー。ディストピア・エロス。圧倒的な質量と筋力の差を前に無力化する少年の恐怖と屈辱が、生々しい官能性とともに描かれます。暴力的な支配の果てに、従属の快楽へと脳が書き換えられていく心理描写が秀逸です。読者をゾクゾクさせる怪作です。



「話があるの」
 太一は、クラスで二番目の〈ミニちょん〉である高橋幸子に呼びだされた。〈ミニちょん〉というのは、小さいという意味のあだ名だ。先生からは、使ってはいけないと注意されている。差別になるからだ。しかし、裏では、みんなが使っている。公然の秘密用語だった。
要件はわかっている。太一がクラスで一番の美少女を、エッチな顔で盗み見ている横顔を、幸子のスマホで盗撮されたのだ。あれを消してもらうためには、太一の大切なコレクションであるゲームのカードの一枚を、渡すしかないかもしれない。それとも、現金を要求してくるつもりなのだろうか。
幸子の家があまり裕福でないのは、なんとなく感じている。女の子たちが、ぶらさげているおしゃれな小物のたぐいが、彼女のカバンには、ひとつもついていない。セーラー服の生地も、てかてか光っている。髪の毛にも、艶がなかった。かわいて、ぼさぼさしている。
幸子は、無口で目立たない。勉強も運動も普通だ。世間を騒がせている未知の難病のニュースなんて何の関係もない。どんなに世界が変貌しようと、幸子はただそこに、無口で目立たない存在として佇んでいるだけだ。だが、どこかしら底の知れないところがある。本心が読めないのだ。いくら、いじめられても、けして泣き顔を見せない。あの気の強さは、どこからきているのだろう。



二人で、旧体育館への渡り廊下を歩いていた。運動部も、後片付けを済ませている。校庭に人影はない。誰も見ていない。太一は、助かったと思った。自分の恥となる事件だ。ばれたら、級友たちから、何を言われるか、わからない。まして、太一は、それでなくとも、みんなから注目される存在となりはてている。同級生の誰にも、今回のことは、知られていないはずだ。
昼休み、幸子はクラスメイトたちの前で、いかにも身体の小さな太一を気遣うような優しい声で話しかけてきた。
「太一くん、頼まれたプリントの整理、放課後に、ちょっとだけ手伝ってくれない」
誰も二人の行動を怪しまない。幸子の計算通りだ。
幸子は、何を話しかけても「あとで」と答えるだけだ。大股で、すたすたと太一の前を歩いていく。追いつくために、小走りにならなければならない。歩幅も、二分の一になっている。廊下を歩くだけで大仕事だ。クラスメイトの倍の体力を消費する。旧体育館へ続く三段のコンクリートの階段は、膝を胸元まで大きく引き上げなければ、登れない。険しい障壁だ。幸子との距離が開いてしまう。焦ってズボンの裾を踏む。危うく転びそうになる。
幸子の後姿を、こんなに至近距離から見るのは、初めてかもしれない。いや、見上げていると言うべきだ。やせているのに、お尻が大きかった。肉がついている。予想外だった。なにしろ太一の目線の高さで、左右に揺れている。いやでも、目に入ってくる。スカートから、にょきりとのびた太ももは太い。膝の裏側の皮膚が、洗ったようにきれいだ。ふくらはぎには、筋肉がついている。たくましい。そういえば、幸子は小さいのに足が速い。短距離の選手でもあったのだ。足首は細く締まっている。アキレス腱は強靭だ。
太一は、顔を左右に大きく振った。自分は無遠慮に、何を見ているのかと思う。今は、そんなときではない。なにしろ、女子のからだを盗み見るというエッチな性癖のおかげで、困った状況に置かれているのだ。反省すべき点だった。
困るのは、こんなからだになっても、性欲だけは、相変わらず残っていることだ。いや、前よりも、強くなっているのかもしれない。太一専用となった男子便所の隅の個室で、出さなければならないことがある。何しろ、太一の視点からだと、女の子たちのスカートの中身が、その気がなくとも、のぞけてしまう。パンティの色や柄がわかってしまう。太一の身長と同じほどの生足の森が、周囲に群がっている。むらむらする。
それに、ある種の女の子たちは、太一で遊ぼうとする。廊下を歩いていると、いきなり二本の足が。頭上を通過していった。突風が吹きすぎた。
「あ。ごめん。見えなかった」
そんなはずはない。
ある時は、下級生の女子たち四人に、四方を囲まれていた。おしゃべりに集中している。出られなかった。
しかし、これらは、太一を、おもしろいおもちゃとして、遊んでいるだけだ。一人前の男としては、見ていない。このままでは、彼女もできないだろう。キスをしようとしても、口まで届かない。太一が精一杯、両手を上に伸ばしても、高く前方に突き出したブラウスの胸の下あたりまでしか、届かない。一生、童貞をつらぬくしかないのか。それに、縮小病は、まだ未知の病気だ。これから、自分のからだが、どう変わるのかさえわからない。
太一の頭には、将来への不安が、渦を巻いている。〈ミニちょん〉の高橋幸子なんかに、新しいもめ事を持ちこまれるのは、耐えられない。手っ取り早く解決してしまいたかった。
 高橋幸子が、旧体育館の扉を開いた。中に入った。倉庫は半地下にある。校庭には、まだ日の光が残っているのに、内部は薄暗かった。幸子は電気をつけなかった。誰かがいると、わかってしまうからだ。



半年前までは、太一の身長は、百七十センチメートルはあったのだ。中学二年生の男子としては、平均的な数値だ。
幸子は、クラスで一番の〈ミニちょん〉の女子生徒だった、百四十五センチメートルそこそこしかない。見下ろすには、十分すぎる背の高さだった。「おい、〈ミニちょん〉幸子。そこ、どけよ」「〈ミニちょん〉は、歩幅が狭くて、歩くのが遅いのが、じゃまだな」
太一は、日常的に軽口を叩いていた。からかっている。それだけのつもりだった。
未知の難病「縮小病」に罹患したことで、世界は劇的に変化した。発症からわずか一ヶ月で、太一の身体は、骨も、筋肉も、内臓も、すべてが、均等な割合で縮小した。症状が安定した。縮小病棟から退院した。身長は、八十センチメートル。元の半分以下の肉体しか残されていなかった。幼児のサイズである。
母親に手を引かれた幼稚園の女子児童から、優越感をもって見降ろされたことがある。近所の道ですれ違ったのだ。
「ママ。あのお兄ちゃん」
「しっ、見るんじゃ、ありません」
母親に引きずられるようにして、遠ざかっていた。親しげに太一へ手を振っていた。仲間だと思われたのだろう。
教室に戻った太一を、級友たちは、哀れみと好奇の目で迎えた。特に女子生徒たちの腫れ物に触るような優しさが、太一の男としてのプライドを、じわじわと傷つけていた。
退院の時期に、縮小人間の肉体に合う衣服や下着が、政府から無償で支給されている。中学校の制服も含まれている。制服のミニチュアが太一の境遇を象徴していた。元のままの教科書とノートは重くてかさばる。机の上でページをめくるだけでも、両手が必要となる。
階段は膝を大きく曲げないと登れない。障壁だった。当たり前だった校舎のすべてが、巨大なアスレチック場となった。障害物との闘いの日々だった。
太一は、三段の跳び箱によじ登った。以前は椅子代わりにして、簡単に腰を下ろせた。自分の背丈ぐらいある。その上で足を組んだ。
入り口に立ったままだった幸子が、ゆっくりと振り返った。扉が、重い音を立てて閉まった。内側から鍵をかけた。
「なあ、何の真似だよ。幸子」
精一杯、すごんで見せた。しかし、声は体格に比例して甲高くなっている。その上に、かすれていた。威厳も何もない。
ずしんずしん。幸子が、太一の方に歩いてきた。足音が、体育館のコンクリートの床と跳び箱を通しても、太一の小さな身体に、直に振動として伝わってくる。
目の前で止まった。腰に両手を当てている。仁王立ちになった。眼前にそびえた。威圧感に息を呑んだ。普段、クラスの男子たちからは、〈ミニちょん〉とからかわれていたはずの幸子が、見上げるような大女だった。スカートのゴムの位置が、太一の胸の高さにある。くびれた腰がある。巨大な生きた彫像だ。高く突き出たブラウスの胸の下側を見上げている。幸子は、そんなに胸がなかったはずだ。かなりの巨乳に感じられた。
「どうして、そんなに、おびえた顔を、してるの。今までみたいに、私のこと、〈ミニちょん〉って呼んでいいのよ」  
幸子が、にっこりと微笑んだ。細い切れ長の瞳は、まったく笑っていなかった。
「カードか、それとも、金か」
太一としては、切り札を出したつもりだった。幸子がくすりと笑った。
「ああ、あなたが気にしていた、あの盗撮写真のこと。あんなの、どうでも、いいんだ。それより、きいてほしい話が、あるんだけど」
「なんだよ、もったいぶらずに、早く言えよ」



高橋幸子は、太一の目の前で、膝をついた。肉体の圧迫感からは、ひとまず解放された。安心はした。妙な沈黙の間があった。太一が口を開こうとした瞬間、幸子がかすれた声を出した。
「私ね、太一くんのことが、ずっと、好きだったんだよ」
唐突な告白だった。幸子の顔が近づいてくる。熱い吐息が、太一の顔全体を包みこむ。口臭を吹き付けられた。
「毎日、毎日、私を、からかってくる太一くんを見て、愛おしくて、たまらなかった。みんなが私を無視して、空気みたいに扱った。でも、太一くんだけは、いつも私をちゃんと見ていた。声をかけてくれた。意地悪な言葉だって、たいせつな言葉だったんだよ。だから、悪いけど、こんどのことでは、私、神様に感謝しちゃったよ。太一くんが、こんなに可愛くなって、私の前に、現れてくれたんだもの」
「な、何を、言ってるんだよ、幸子」
訳が分からない。太一の心臓が、早鐘を打っている。恐怖のせいだ。甘く見ていた。
退院時、主治医から真剣な顔で告げられた言葉が、耳の奥で蘇る。
『太一くん、絶対に普通サイズの人と、二人きりになってはいけないよ。肉体の差は、人間の精神をも、狂わせる。牙を隠した捕食者が、君をオモチャにしようとして、近づいてくるかもしれない。不幸な事件が、全国で、いくつも起こっているんだ』
太一は、まさか同級生の、それもあの無口な幸子が、捕食者に変貌するとは、夢にも思っていなかった。捕食者とは、ニュースに出てくる大人の犯罪者のことだ。自分が散々見くだしてきた、クラスで一番小さな女子生徒が、その牙を持っているなどとは想像すらできなかった。
しかし、これは、やばい。相当にやばかった。高橋幸子の瞳が濡れている。
「ふざけるな。俺は、お前のことなんか、好きでも、なんでもない。そんな風に言われても、気持ちが悪いだけだ。消え失せろ」
精一杯の拒絶だった。男のプライドをかき集めた。怒りを示した。しかし、身体の縮小にともなって、甲高くなっている。幼い子どもの悲鳴のように頼りない。
幸子の表情から、温度が消えた。もともと浅黒い顔をしている。日に焼けているわけではない。そういう体質なのだ。顔が冷たい石の仮面となった。
「へえ、拒むんだ」
低い声が、倉庫の空気を震わせた。
「それだけ、小さくなって、一人じゃ、何も、できないくせに。まだ、私を見くだせると、思ってるんだ」
 幸子が立ち上がった。太一の眼前に聳えた。巨大な肉の彫像だった。
太一は、本能的な恐怖を感じた。跳び箱から飛び降りた。背中を見せて逃げた。
「ねえ、どこに、行くの」
幸子が、哄笑した。
ゆっくりと太一を追いかけてくる。出口に向かう方向は、ことごとくじゃまされた。倉庫の奥へ進む。夕暮れのわずかな光すら届かなくなる。闇が迫ってくる。幸子の巨大な肉体が、黒い影となっている。幸子との関係は、完全に逆転した。薄暗い倉庫の中で、太一は無力な獲物でしかなかった。幸子は、絶対的な捕食者と化した。
「そんなに、急がなくても、時間は。たっぷりあるよ。太一くん」



太一は倉庫の奥の壁へと、追いつめられていた。高橋幸子の肉体の壁が、太一のからだを、とうとう倉庫の壁に磔にした。コンクリートの打ちっぱなしである。太一の背中に冷たかった。長い年月の間に張り付いた、乾いた消石灰と埃の香りがした。
幸子の白いブラウスの腹に、顔面を圧迫された。女の子特有の甘い匂いがする。服地から石鹸の香りが漂う。幸子自身の臭いの方が強い。発汗しているのだ。襞の多い紺色の制服のスカートが、ステージの幕のように重く垂れている。
「悪かったよ。今までは、からかったりして、ほんとうに悪かった。謝るからさあ、そこを、どいてくれ」
「別に、謝って、欲しいんじゃ、ないよ」
幸子の大きな両手が、伸びてきた。太一の薄くなった両肩を掴んだ。握力の強さに息をのんだ。抵抗しなければ。手首は、大木の幹のように太い。幸子の手は、太一の肩の骨を握りつぶせる。大きくて重い。太一は幸子の手首をつかんだ。手首でも自分の二の腕と同じぐらいに太い。押し戻そうとした。びくともしない。筋肉の質量が異なる。生み出す筋力が違いすぎる。
幸子の顔が、接近してくる。目を閉じている。唇を丸く突き出している。キスをしようとしているのだ。
「やめろ、お前、おかしいぞ」
ぺっ。唾を吐いた。至近距離だ。幸子の口元にかかった。
「やらかしたね」
幸子は手の甲で顔をぬぐった。太一の両脇に両手が差しこまれた。持ち上げられた。幼児を抱え上げるように軽々と。太一の身体が、宙に浮いた。
「やめろ、放せ」
太一は、空中で足をバタつかせた。幸子の両肩を拳で叩いた。足で胸を蹴とばした。しかし、何の痛みも与えていない。幸子は、細い眉一つ動かさない。
太一を、わきにあった厚い運動用のマットレスの上に、無造作に投げ飛ばした。ドサリ。力をこめたとは思えない。それなのに、太一は、柔らかいマットに、背中からたたきつけられていた。息ができない。受け身も取れなかった。力が違いすぎる。幸子には人形の相手をしているようなものなのだろう。
太一はマットに肘をついた。起き上がろうとした。だが、視界が完全に遮られた。幸子の両足が、太一の身体を跨いだ。上半身で覆いかぶさってきた。全体重がのしかかった。
「ぐふう」
太一は、自動車にひかれた蛙だ。つぶれる。幸子は、体重差をわかっている。楽しんでいる。息ができない。圧迫感がある。
太一は拳骨で、幸子の胸を殴る。手加減はしない。全力だ。白いブラウスの下に、胸の弾力を感じる。それなのに、何も感じていない。笑っている。太一の無力を楽しんでいる。
幸子が、喉を鳴らす。
「ねえ、太一くん。それで、全力なの。もっと、力をこめて、胸にふれて、いいのよ。くすぐったいだけ。私を、感じさせて」
太一は全力で暴れた。ボス。ボス。連続で幸子の腹にパンチをたたきこんだ。サンドバッグを殴っている感じだ。幸子の腹筋が、鉄のように固い。拳骨が痛い。
「そんなに、ジタバタ動いて。かわいい。〈ミニちょん〉は、無駄な動きが多くて、じゃまだよ。なあんてね」
太一の気のすむまで、やらせるだけやらせた。彼我の体力の差を思い知らされた。太一の腕が止まった。息が切れた。小さな肉体は、すぐに疲れてしまう。燃料がきれたみたいだ。
「もう、いいの。それじゃ、今度は、こっちから、行くわよ」



高橋幸子が上から覆いかぶさってきた。太一の顔にかかる自分の髪を指ではらった。うっとりとした目つきで見下ろした。
「やっと、私だけのものに、なってくれた。もう、どこにも、逃げられないよ、太一くん」
太一の両手首は、幸子の片手だけで、頭上の床に縫い付けられた。万力が締め付ける。びくともしない。
もう片方の手で、高橋幸子は太一の顎を乱暴に掴んだ。無理に上を向かせた。
「いやって、言っても、もう遅いよ。太一くん」
「んぐう」
言葉を挟む余地はなかった。幸子の唇が、強引に太一の唇を塞いだ。太一が映画や漫画で知っているはずの甘いキスとは全く別ものだった。幸子の口が、太一にとっては、あまりにも大きすぎるのだ。鼻と口を同時にふさがれた。パニックに陥った。呼吸できない。酸素が足りない。舌が挿入される。唇を閉じて拒もうとした。こじあけられた。分厚い舌の筋肉が、口内を蹂躙する。頭の中が真っ白になる。太一は目に涙を浮かべた。
かろうじて拘束されていない足を動かした。幸子の腹部を、膝で蹴ろうとした。だが抵抗は、またしても幸子の巨体で、簡単に封じられた。太一に体重を乗せる。それで十分なのだ。みしみし。肋骨がきしむ。生々しく胸に響く。幸子が、わずかに腰を浮かせる。ドスン。体重を預ける。そのたびに、太一の肺の中の空気が、強制的に絞り出される。抗おうにも、太ももの片方ですら、太一の両腕では、びくとも動かせない。大木だった。圧殺される。



どれほどの時間が、経ったのだろうか。ようやく高橋幸子が、唇を離した。太一は、頭がくらくらした。何も考えられない。咳きこんだ。無我夢中で、空気を肺におくりこむ。それしかできなかった。口元からは、だらしなく銀の糸が、引いて垂れている。幸子の唾液だった。
「あはは、すごい顔。でも、可愛い」
幸子は、欲しかった人形を手に入れた子どもだ。純粋で残酷な笑顔を浮かべている。
両腕で胸に抱かれた。強い力でブラウスに押し付けられる。太一の骨が、ぼきぼき鳴る。太一の尻は、幸子の左腕に乗っている。右手が背中を支えている。太一の両足が、幸子の腹の前で、ぶらぶら揺れている。幸子の右手は、太一を支えながらも、幸子は長い指先で、制服のスカートのポケットから、スマートフォンを抜き取った。太一にレンズが向けられる。太一は気づけなかった。意識が朦朧としている。両手が無意識に突き出た胸を押し返そうとしている。
抱かれたまま、もう一度、キスをされた。今度は、そっとだった。
「好き」
太一の唇が、幸子の唇の間に挟まれた。口腔に大きな舌が入ってくる。
「わかってるでしょうけど、噛みついたりしたら、握りつぶすよ」
幸子の巨大な手が、太一の学生ズボンの股間を鷲掴みにしている。ペニスも睾丸も、彼女の手の中にある。太一の命は、文字通りに幸子の掌中にあった。
そして、またマットに投げ落とされた。
幸子の長い指が、仰向けになって倒れている太一の制服のボタンを、上から順番に器用に外していく。太一の胸が激しく上下している。「や……め……ろ……っ」激痛で過呼吸になった喉からは、まともな声が出ない。喘鳴のような掠れた拒絶を、幸子は意に介さなかった。
「何って、私のしたいことをするに、きまってるじゃん」
幸子の指先が、太一の縮小した胸元に触れる。腹部から下腹部へ降りていく。指一本の太ささえ、太一にとっては脅威だ。衣服を剥ぎ取られていく。無力な存在に貶められていく。
ズボンのベルトを外された。パンツを下ろされた。
ペニスをつままれていた。
「さあ、もっと泣いてよ、太一くん。私の名前を、呼んで。どうして、黙っているの。もう少し、お仕置きが必要かな」
 ぴん。睾丸をつま先で弾かれた。衝撃。脳天まで痛みが肉体を貫通した。悶絶した。からだを二つに折った。息ができない。びくびく。痙攣している。そんな様子を、幸子が冷たく見下ろしている。
「あはは、男の子の、急所だというのは、ほんとなんだね」
 紺色のスカートが、天蓋のように翻る。太一の視界を遮る。幸子はすでに下着を脱ぎ捨てていた。太一の顔に座ってきた。湿り気を帯びた熱い性器が、容赦なく顔面に押し当てられた。濡れている。顔はスカートの作る天蓋の影に、すっぽりと覆われている。暗い。幸子が無慈悲に動き始める。巨大な臀部の全重量が、太一の頭部にのしかかる。頭蓋骨が軋む。顔が割れ目に飲みこまれる。鼻がつぶれる。
「ああ、それ、気持ち、いいかも」
幸子は、太一の鼻に、女性自身を、ごりごりと押し当てる。左右に動かす。傍若無人だ。陰毛が痛い。濃密に繁茂している。幸子は毛深いのだ。顔の皮膚を擦られた。迫り来る幸子の大きな質量。抗えない力の奔流。太一は、涙を流した。蹂躙される運命を、受け入れるしかない。
太一の頭の芯は、急速に冷えて麻痺していった。激痛と屈辱が、キャパシティを超えた。防衛本能が、恐怖のスイッチを勝手に切った。これは暴力ではない、ただの激しい愛撫なのだ。脳が現実を書き換えようとしていた。そう思わなければ、精神が狂ってしまう。バラバラになってしまう。幸子は愛液が豊富だ。太一は、舌を出した。喉を鳴らして飲んだ。粘膜の襞を舐めた。
「ああ、太一くん、好き」
 幸子を喜ばせた。
「太一くん、柔らかくて、小さくて、かわいい。お返しよ」
 強制的に口で射精させられた。幸子に飲まれた。



 行為の後で、全身を拭かれた。きれいな新しいタオルだ。アルコール入りのティッシュもある。高橋幸子は、すべてを用意していたのだ。
「さあ、きれい、きれい、しましょうね」
乱暴に引き裂かれたあとに、赤ん坊のように優しく拭き清められている。幸子の手のぬくもりに、太一は、おぞましいほどの安堵を感じた。極限まで痛めつけた捕食者が、母親のように自分をケアしている。巨大な怪物に逆らってはならない。身を委ねてさえいれば、これ以上の痛みは与えられない。奴隷の平穏が太一の胸に染み込こんでいく。
幸子は太一の頭髪に鼻をつけた。くんくん。嗅がれている。
「少し、臭いかな。これ、私の臭いよね」
仕上げとして、最新鋭の消臭剤を太一の髪と身体に、容赦なく吹き付けた。タオルでごしごしと拭く。幸子の生々しい匂いは、無臭の素材で完全に上書きされた。凌辱の痕跡は、きれいに消し去さられた。
「これからは、毎日、放課後は、ここでこうして、遊ぼうね。言うことを聞かないと、クラスのみんなに、太一くんが私の胸を触っている、この新しい写真を見せちゃうからね。『太一くんが、私の胸に抱きついてきた』この証拠写真を見せれば、みんな信じるよ」
幸子が制服のポケットから、スマートフォンを取り出した。太一も同じものを持っている。両手でなければ持てない。幸子が指を滑らせる。太一の顔と同じサイズの画面が、ギラギラと発光する。暗い倉庫内を冷酷に照らし出す。幸子は太一の画面を見せた。幸子の白いブラウスの胸を、小人が両手で鷲掴みにしている。太一は、絶望に打ちのめされていた。
幸子は衣服と髪を整えた。太一は片手を握られている。母親に付き添われた子供だった。倉庫の窓から差しこむ斜陽が、二人の異常な体格差を、克明に照らし出した。
「また明日ね、太一くん。もし学校を休んだら、すてきな写真を、クラスのグループラインに、流しちゃうから」
校門から出る幸子は、小さな同級生を献身的に守る、やさしい女子生徒の役割に徹していた。
「先生、さようなら」
 にこやかに、あいさつをしていく。何事もなかったように、校庭に日が沈んでいった。



次の日からも、教室での高橋幸子は、クラスで二番目の〈ミニちょん〉という役割を、完璧に演じていた。長身の同級生たちの隙間を、優雅にすり抜けていく。自分のステップで自信をもって歩いている。しかし、太一を見下ろす目には、冷酷な光が宿っていた。幸子は唇の動きだけで、太一を呼んだ。〈ミニちょん〉と。気付けるのは、幸子を見上げる太一の目しかなかった。
それどころか、以前よりも、馴れ馴れしくなっている。距離が近い。
「太一くん、教科書、重くない。開いてあげるよ」
クラスメイトの前で、甲斐甲斐しく太一の世話をする。幸子の笑顔は、やさしい同級生そのものだ。
「高橋さんは、太一くんに優しいのね」
周囲の女子生徒たちが、囃し立てる。
太一には分かっている。幸子の指先が、太一の肩に軽く触れる。暗闇で、肩の骨を砕かんばかりに握りつぶしてきた握力。誰も高橋幸子の正体に気づいていない。
しかし、と、太一は、頭の隅で考える。自分は、高橋幸子との間で。ファースト・キスを済ませてしまった。より正確には、奪われた。その上、フェラティオから精飲までを、一気に初体験した。女の子の秘密の部分に口をつけた。舌で舐めた。記憶にないが、ブラウスの胸にも触れた。
高橋幸子は、何度もやろうと断言している。変則的にだが、彼女ができたようなものかもしれない。そうだ、凌辱でも脅迫でもない。太一を熱烈に求める女子に、手ひどく、しかし深く愛されているだけだ。〈ミニちょん〉に成り下がった自分を、男として欲望してくれる。世界中で。この大女しかいない。何か、新しい季節が、巡って来るのかもしれない。太一は目の端で、高橋幸子の三角の白いブラウスの胸元を、盗み見していた。

(了)

 0

trending_up 9

 1

 1

ポエジイ

ポエジイを拾った
わたしはひと粒飲んでみた
一斉に星は消えて真っ暗な空になった
残り何粒かわたしは数えた
それにまた
拾えるだろうか
わたしはポエジイをポケットに
真っ暗な中を歩き始めた
初めて朝の方角に向かって…

 0

trending_up 19

 3

 4

ふれる

かぜのなかをあるく
きせつが
はるなつあきふゆと
きめていたのは
こちらだけなのに

おもいどおりにならないと
くびをかしげて

ふれる
かぜに
ほほとかみとうでと
なでてもらって

そのひを
ちょぴっと つれていって
もらう

できることが
すくなすぎるわたしは

 0

trending_up 17

 2

 1

受けて立つ

✧「っいってぇな、どこ見て歩いてんだコラ。」

✠「あ、すんません。上斜め45度です。」

✧「どこだよ。」

✠「申し訳ないですはい。」

✧「ケンカ売ってんのかこの野郎。」

✠「2500円になります。」

✧「ボッタクリかよっ!!」

ベチィーン!!!!


✧「ヤベ。やり過ぎた。察に通報されちまう。察せられて、察呼ばれてまう。息はしててくれよ。」

✠「うぅ,,,。」

✧「おう大丈夫か。アンちゃん。今ピーポー呼んでやっからよ。」


✠「っいってぇな、どこ見て撃ってんだコラ。」

✧「お前だよ。」

✠「お前、素振りは人のいねぇところでやれよ。」

✧「いや、明らかに当たっただろ。」

✠「いててて,,,くそっ。」

✧「え!?あいつ逃げやがった。俺にぶたれてもまだあんな力があったのか。」

✠ (はは、俺は勇者だ。オヤジくらいのやつを何人もぶってきてそうなやつの拳を受けて、立って、逃げたぞ!ははは、このまま逃げ切ったら俺の勝ちだ。社畜舐めんなよ。)

ドスンッ

❖「てめぇどこ見て歩いてんだコラァ!」

✧「ぷぷぷ笑 あいつそこそこの速さでしっかりぶつかりやがったぞ。」

✠「あぁ、ごめんなさい。南南東に165度ですかね。」

❖「どこだよ,,,」


✧「今年の恵方巻きじゃねぇか。」
(Google情報、根拠なし)

✠「面目ないです。」

 2500

trending_up 28

 1

 6

つきなみ怪談   練りもの

   蒲鉾の話になったのは、仕事で知り合った料理自慢の男と飲んでいたときだ。男は蒲鉾に本気でハマっていて、有名メーカーの工場まで見学に行くほどだという。
   ある地方へ出張したとき、取引先の家に招かれ、そこで出された蒲鉾を食べて言葉を失った。

「今まで食べた中で一番美味かった。ねえ、おばあちゃん、どうやって作るんですか?」
「なんも……ただのコンのすり身と塩を、よう練って蒸しただけじゃ」 

   男は「コン」という魚の名前を初めて聞いた。妙に古めかしい響きで、どこかで聞いたことがあるような、ないような……。

その話を聞いていた蓮中さんが、ふと呟いた。

「……魂、を込めたから、コン、か」

   男は笑ったが、私はなぜか笑えなかった。それから私なりに調べてみたが、その地方の海にはそんな魚はいなかった。

   後日、男に会った時に聞いた。
スーパーの売り場で、白い蒲鉾を見ると、胸の奥がぞわっとするのだという。

「あれが魂の味なのかもって」

コン。

 0

trending_up 21

 2

 4

にげる

にげきれている
みせかけだけとしても
そのいのちが
にくい

きみがきみだけで
いきていくことへの
つうれつなあこがれとしっと

そして おいてけぼりにされた
いない子にされた おさなごのめが
わたしのなかで ひらいて
とじない

にげるにげきれないとしってるくせに
にげたそれしかできないとおもいこませて
にげたいわたしはにげきれないから
にげようここにはいられないものね

ぜったいにいえないことを
ぜったいにいいたいこととして
このめがつきさしくちがだまらなくなる

にげる つながったいのちじゃない
つなげたいのちたちきって
おまえはおまえだと
あくまのとりひき

にげるそれができたひとがうらやましい
だからわたしはきみとはなれていたい
どんなえがおとことばとはなを
きみがたずさえていようとて

 0

trending_up 23

 2

 1

UCC

夜、落ちていたコーヒー缶を見つけた

どれくらい前のだろう
もうずっとずっと浸ってたろう
赤茶色の数十年の我慢に

それを何気なく拾い
しばらく歩き続けると

今度は花が星に照らされて落ちていた

土から離されて
まだそう経ってはいない
その鮮やかさは枯れるためのものか

しばらくする月が出て
池のそばの東屋が見えてきた

僕はそっと缶に水をすくって
そこに花をさしてやると
手に抱えながら椅子にもたれかかった

星はただ静かさに沈み
木々はただ揺れにゆれ

それだけの世界が広がっていた

それだけがただ手放しがたかった

 0

trending_up 36

 4

 3

子殺し

いつしか まっすぐ
みつめられなくなったのに
いっぽうてきな めいれいを
まもらせるときだけ
めをみて
としかりつける

幾千回万回億回
嬲り殺しだろうか
自問自答しかしないくせに
鏡は見ない
深呼吸はしたことがない

いつしか やいばと
おもいこみ むきあうのを
おそれて

きょくたんなはなしではなく
じかくがある
しめころした手の感触

 0

trending_up 19

 2

 1

民生食堂 あじさい 第1話 拳と女

 昭和。
 イギリスのエリザベス女王が来日し、ベトナム戦争が終結した年の頃。
 今日も朝から雨が降り続いていた。
 強くはないが、止む様子もない、じとじとと湿度が身にまとわりつく雨。軒下に溜まった水は澱み、土と古い木材と排煙の匂いが混じって、民生食堂の裏口にこもっていた。
 見上げれば煙をあげる煙突。視線を戻せば工場と壁。灰色の雲を背景にそびえる何本もの煙突と工場の壁。工場から上がる金属を叩く音。それらに囲まれた小ぢんまりした空間。まるで外の人々から忘れ去られたかのような場所にその食堂はあった。

 女は一人で仕込みをする。
 袖をまくり、鍋に水を張り、火を入れる。包丁の刃を軽く拭いてから、野菜を刻む。どれも手慣れた動作だ。毎日素早く規則正しく刻む。

 壁際の板張りは湿気を吸って色が濃くなり、その継ぎ目を、灰色がかったナメクジが一匹、ゆっくりと這っていた。
 女はそれを見つけると、少しだけ眉をひそめたが、声もあげない。近くにあった古い箒の柄で、窓からそっと外へ落とす。踏み潰すでもなく、ただ視界から遠ざけるだけ。

 ふつふつと鍋が静かに鳴り始めた。
 女は蓋を開け、浮いてきたアクをすくい取る。湯気が顔にかかる。頭に巻いた手拭いを巻いた頭からのぞいた前髪が少し額に貼りつく。布巾で手を拭き、次の鍋へ移る。その間にも、流れるような雨音は途切れない。

 民生食堂はまだ開いていない。
 それでも、外にはすでに何人かの人影が見えた。軒下で雨を避けながら、黙って待っている者もいれば、落ち着きなく足踏みをしている者もいる。顔ぶれはだいたい決まっていた。

 女は食堂内の時計を見る。
 開店にはまだ少し早いが、これ以上仕込みを延ばす意味もない。

 包丁を置き、手を洗い、入口の暖簾を手に取る。表に出ると、外から大きな声が聞こえてきた。何か罵るような、湿った怒声。続いて、若い声がそれにかぶさり、言葉が荒くなっていく。

 女は一瞬、手を止めた。
 それから、暖簾を持ち直すと、何事もなかったかのように表へ向かう。女がかけた暖簾は紺地に白で「あじさい」と染め抜かれていた。入り口の傍らには雨に打たれた青いあじさいが重たげに頭を垂れている。

 今日もまた、同じ一日が始まろうとしていた。

 客が暖簾をくぐり始めると、湿った空気がそのまま食堂の中へ流れ込んできた。
 すぐに七、八人が店内に並ぶ。いつもの顔ぶれだ。誰もが口を閉ざし、ただ雨音と、鍋の煮える音と金属製の食器が鳴る音だけが沈黙を埋めていた。

 その沈黙を破ったのは、列の後ろの方に並んでいた老人だった。
 痩せた体を前に突き出し、濡れた作業着のまま、低い声で何事かを呟いていた。最初は独り言のようだったが、次第に音量が上がり、言葉に角が立ち始める。さっき店外で聞こえた声と同じだった。

「おい、どうなってやがる…… 並ばせといてこれか。遅えんだよ。年寄りは後回しかよ、おい!」

 女はまだ厨房にいた。
 老人の声は、店内の湿気をさらに重くする。周囲の客は視線を伏せ、誰も応じない。

 すると、少し後ろにいた若い職工が、苛立ったように顔を上げた。
 油と鉄の匂いが染みついた作業服。まだ若い。二十代半ばか。

「おお、うっせえな。順番だ。文句あんなら外で言ってろ」

 老人はそれを聞くと、はっとしたように顔を上げた。
 血走った目が若者を捉える。

「なんだ、青二才が偉そうに。ろくな仕事も出来ねえくせしてよ。お前らみたいなのが、俺たちの足引っ張んだ」

「冗談言うなよ。てめえみてえなロートルに何ができんだ。あ? 何言ってんだ偉そうに」

 空気が一気に張りつめる。ふたりは近寄って睨みあう。
 リノリウムの床が鳴り、誰かが息を呑む音がした。

 そのとき、最後尾に立っていた男が、一歩前へ出た。
 背は高くない。作業着姿ではないが、シャツもズボンもすっかり色褪せ、袖口が擦り切れている。顔立ちは穏やかだが、どこか疲れが滲んでいた。

「やめてくれ」

 男の声は大きくなかった。

「ここは飯を食う場所だ」

 だが、二人の狙いが逸れるには、充分だった。

 老人が男を睨む。

「なんだ、お前は。関係ないだろ」

「関係ある。これ以上騒がれると、みんなも迷惑だ」

 若い職工も、舌打ちをして男を見る。

「おいあんた、どっちの味方だよ。はっきりしろ」

 男は一瞬、言葉に詰まった。
 どちらの味方でもない。それをどう言えばいいのか、分からなかった。だからそのままを口にしてしまった。

「……どっちでもない。ただ、殴り合うような場所じゃない、と」

 それが、引き金だった。

 老人が立ち上がり、男の胸倉を掴んだ。
 同時に、若い職工も一歩踏み出す。

「若造が!」

「説教すんな!」

 拳が飛ぶ。
 最初に当たったのがどちらの拳だったのか、男には分からなかった。頬に鈍い衝撃が走り、視界が白く弾け星が飛ぶ。続いて腹に衝撃。息が詰まる。

「おい、やめろ!」

 誰かの声がしたが、もう遅い。
 老人の拳は震えていたが、若い職工の拳は重かった。男は反撃しなかった。ただ腕を上げ、耐えるだけだった。

 床が滑る。
 濡れた靴底が踏ん張り切れず、男はよろめいた。

 そのとき、鋭い声が店内を切り裂いた。

「やめなさい!」

 女だった。
 いつの間にか厨房を出て、食堂に立っている。麺棒を握っている。

「二人とも、出て行って。今日で出禁」

 その声に、老人と若い職工の動きが止まる。
 女は二人を等しく見た。憤りも同情も、その顔には浮かんでいない。麺棒を握る手も震えず、力強く握られている。

「ここは殴り合う場所じゃない。この人が言ったみたいに、飯を食う場所」

 沈黙が食堂内に充満する。雨音だけが、やけに大きく聞こえた。

 女は続けた。

「二人とも、もう来ないで」

 老人は何か言い返そうとしたが、言葉にならず、舌打ちして外へ出ていった。若い職工も、悔しそうに男と女を一瞥し、後を追う。

 扉が閉まり、雨の音も遠のいたように聞こえる。

 男はその場に立ち尽くしていた。
 口の中に鉄の味が広がる。唇が切れているのだろう。視界が少し揺れていた。

 女は男を見る。

「……あんたは、そこ座んなさい」

 命令口調だったが、声は穏やかだった。
 男は頷き、椅子に腰を下ろす。手がわずかに震えている。

 女は布巾を取り、水を張った洗面器を持ってくる。
 そして、何も言わずに、男の顔の血を拭き始めた。

 その手つきは荒っぽかったが、悪意は感じなかった。
 男は、礼を言おうとして、痛さで言葉を飲み込んだ。
 雨は、まだ止みそうになかった。

 一通りの手当てが終わると、何も言わずに女は傍らのテレビをつけた。「昼のプレゼント」が流され、軽妙なアナウンサーの声が虚しく響き渡る。そして、布巾と洗面器を持って厨房に戻り黙って配膳を再開する。民生食堂の中に、再び鍋の音が戻ってきた。食堂はいつもより静かだった。

 ようやく注文が始まった。口々に好みの総菜を頼むと、女はそれを手際よくお盆に乗せ、茶碗の飯と、希望があれば味噌汁の代わりに豚汁をつけて渡す。

 最後、先ほど仲裁に入った男がショーウィンドウの前に立つ。女は特に表情を変えずに言った。

「いいご面相ね、お節介さん」

「え?」

「うち帰ってから鏡見てご覧なさいよ」

「ああ……」

 男は痛む顔を押さえた。あざができているのだろう。

「なにがいい?」

「あー、サトイモ、シャケ、お浸し…… それで」

 女はてきぱきと注文の品と、茶碗一杯のご飯とみそ汁を合わせて乗せ、男に渡す。

「はい。余計なことには手を出さない方がいいよ」

「ああ」

 男はその一言こそ余計なお節介だと思ったが、何言わず黙って受け取り、席に着いた。

 ちらちらと自分を覗き見る人々の視線を感じながら、男は黙って飯を食った。

▼用語
民生食堂:
大正七(一九一八)年、暴動化した「米騒動」を契機にして、同年より都市部の貧困層対策として、自治体の直営または補助により「簡易食堂」や「公設食堂」と称する食堂が設営されたのが源流とされる。

昭和十六年(一九四一年)より「外食券食堂」に統合されても「労務食堂」、「罹災者給食」、「食困窮者給食」などと形を変えて運営された。

昭和二十一年(一九四六年)、東京都は再び統合された戦時的な既存の「外食券食堂」の中から指定を行う形で「東京都指定民生食堂」制度を開始した。
安価で栄養価の高い食事の提供を主眼とし、昭和二十五年(一九五〇年)から昭和三十年代にかけて、質素な一汁三菜のおかずを自由に選べるカフェテリア様式の店舗が普及した。

昭和四十四年(一九六九年)、米穀配給制度の緩和により「外食券食堂」としての機能が実質的に終了した後も、自治体の指定制度として存続したが、外食産業の多角化に伴い減少。平成七年(一九九五年)三月三十一日をもって指定制度は完全に廃止され、その公的役割を終えた。

指定終了後も、かつての屋号や看板を掲げ、当時の形態で営業を継続している「元民生食堂」の店舗が、現在も都内にわずかながら現存している。


▼次回  第2話 温もりの理由

 0

trending_up 12

 2

 1

義姉の力

ひさしぶりに見る伯父と伯母と叔母と叔父たちだった
冷え冷えとした神社の大座敷に
大父や大母も座っている
得体の知れない女中も来ている
あいかわらず細い目の能面顔である
むかし行方不明になった犬のマルもいて
せわしなく尻尾を振っている
車座になって族やからは
みんな笑ってニコニコしている
正面に神主の叔父が鎮座ましまして 
飴色に焼けた顔から目を光らせている
神主の娘の三人姉妹も揃っている
そのぐるりを父は一人一人に頭を下げて廻っており
いつものように額縁の中の母も微笑んでいる
その真ん中でいきなり素裸に剥かれたわたしの首を
背後から羽交い締めにした義姉が
ぐいぐいと太い腕で締めつけてくる
逃れようと一瞬もがいたが
これがごく自然のまっとうな正義
心地よくなすがままにされていた
ギリギリと締め上げる義姉の審問はまもなく
ヘッド・ロックからスリーパー・ホールドへとうつり
一生が昏くなり気が遠くなりかけた頃
三人姉妹の笑いさざめく声も聞こえ 
あの娘らのうちの二人はむかしわたしのお嫁になりたいと云っていたのに
みんな笑ってニコニコうなづいている
涎を垂らし、舌を出し、窒息寸前の息子を
父と母は見つづけなければならない
やがてやさしい義姉は後ろから
わたしの腕と脚にたくましい腕と脚をからめるや
えいっ、と万力加えて仰向けになった
大胯びらき、赤ちゃん固めにされて目まで真っ赤になったわたしを
泣き笑いを浮かべて悲しい兄が見ている
首を振って、うんうんうなづく恥ずかしいわたしを
みんな笑ってニコニコ見ている
ようやく会議は果てて万事は解決したようだ 
畳の上に全裸のまま投げ出されていたわたしに
ロープを一本、切符を一枚、義姉はくれたのだ
みんな笑ってニコニコ音もなく万歳をしていた
ロープを入れた紙袋ひとつを提げて
境内の中の駅から独り列車に乗った 
曇った北海の空の下
車窓の沖から
車輪の下まで
蒼黒い海は齒を剥いており
終着駅で引き寄せられるように一本道を                      
なつかしい三角山の方へと歩いて行く
鴉の群れが急ぐ空を仰げば
空は黄昏
森は深くなるばかり
夕闇のしらない土地のしらない森が
鳥たちの目玉でいっぱいになった頃
ああ、兄さん、すっかりわたしは迷ってしまった
義姉さんが地図を付けてくれなかったので弟は
どうにもほとほと困り果ててしまったのです

 0

trending_up 26

 2

 2

問わず語り/鬼の住処に狂う熱隷と齢四十五について、論。

 CWSを始めて、7か月。
 この間、私生活は相変わらず。オンラインの環境は常に出会いと別れを繰り返しています。ここを去って行くユーザーもいるけど、創作の場はここに限らず選択肢が多い。WEB小説投稿サイトなら10以上、そこからの分岐/ジャンル別が細かく存在しているので、どこかしらに居場所をみつけられる。
 小説に限らないテキスト形式のプラットフォームならnoteや、ブログが書けるサイトも根強い人気。

 ・LINE
 ・X(旧Twitter)
 ・Instagram
 ・Tik Tok
 ・Facebook

 上記、日本5大SNS。スマホ画面にアイコンが入ってる人も多いのでは。
 ここを去って行った人の言葉を抜粋すると「サイトは他にもある」これは事実で、例えば現実的なビジネスに繋げたい人や将来のビジョンを想定している作家はネットではなく実際の社会で、同人誌や公募に取り組み筆を執る。昨今ではネオページの契約作家、他。

 ・ココナラで仕事を受注
 ・BOOT/pixivと連携した創作物の総合マーケット
 ・kindle/Amazonが提供する電子書籍関連サービス

 こういったサイトに所属また利用して小説の編集作業や自作の販売ができる。これが「できる」うちはまだいい、問題視されているのは────その先にある。
 最初の数年間はWEB小説投稿サイトを利用してもそのうち小説を書かなくなり、Xで創作論を書き出して、自分の正しさをみつめるようになる元作家が少なくない。その多くが本を売る側に一度回った上でWeb上に居座る。書籍化はステータスだと言わんばかりの創作論を展開。
 その例として、作家としての活動からライターや出版社の編集業へ。Xのプロフィールやココナラで仕事依頼、セミナーに参加。年間の費用を支払い受講。

 フリーランス・・・・・・ 無 職 ・・・・・・この枠で活動してる人達が多すぎる、創作界隈の人々。

 余談ですが、この手の人の実状を直接聞いたことがありまして。ネット小説を書いてることを近く関係の人や、バ先に報告する傾向がある。
 母親という社会的立場でママ友に「ネットでボーイズラブ小説(アダルト要素を含む)を書いてて実は私、書籍化作家なの」という流れから献本を行い、その後関係性が悪化。夫の会社に内容がバレて、作家である妻が確定申告しておらず、夫が解雇。子供の友達が家に遊びに来て、〇〇ちゃんのおうちに男の人のえっちな本がいっぱいある!アウティングによる孤立も、よく聞きます。 
 一方で、バ先に来月の休み申請を提出するにあたり、自分がネット〇〇家であることを職場で公言。
 どうしてもこの日に休みが欲しい旨を「家庭の事情」と言えば済むのに「作家として活動している為、小説を集中して書きたい」「VTuberで配信をやっており・・・・・・以下略・・・・・・」など、誰も知りたくない個人情報を具体的に言われても、他人の理解が必ずとは限りません。
 身バレした時、守秘義務を守っていない。誰かを誹謗中傷をしている。ここら辺だけでもアウトなのに、おじさんが美少女アバター/バ美肉を受肉して可愛い喋り方をして毎日、何時間も配信している。アダルトに関与する作品であったり、内容がR18Gだと一般的な理解を到底得られるものではない。狭いジャンルに寄るほど黙っていた方が賢明なのは、ネットと社会には温度・格差が絶対的にあり、実社会で肩身の狭い思いをするハイリスクは避けたいと思うから、隠す。
 普段そんな素振りも見せず、ミステリアスにしていたら余計に勘繰られ「どのくらい稼げるの?」みんな気になるお金の話になったら最後、一番言われたくない言葉を突きつけられる。

 そして、TLに流れてくるのは、突然の体調不良による緊急入院。
 原因は心筋梗塞。この速報が男性作家のトレンドじゃないかと思うほど急激に増えた。心筋梗塞は高血圧、高コレステロール、糖尿病の生活習慣病がある人がなりやすい。肥満は様々な体の不調が原因と考えられますが、医者に痩せるように促された事が人生で一度も無い私にとっては、なぜ太るのか?まず頭が追い付きません。
 更に『45歳狂う説』様々な説がある中で、一番印象的だった言葉は・・・・・・



 
 一番の問題は年相応に金を稼いでこなかった事




 私ね、あまり弱者男性という言葉を好みません。
 ただ頭も体も若いうちに使える時間はわずかであること。学生という時代を経て社会に出たら体力的にも精神的にもキツくて落ちこぼれドロップアウト。人生に休暇はあってもいい。でも今やりたい事しかやらない、自分の為に長期間を費やしていると、自分を追い越していく人々と先々話が噛み合わなくなる。
 自分の常識を疑わず、昼間に働く社会人を窓の内側から嘲笑い、酔い痴れた分だけ、どんどん他人と考えがズレていく。

 これは自分の話になるけれど、私は10代と20代で子供ができた。
 他人から「失敗した」と言われたくなくて、子供は神様からの授かりものだと心を決めて、今でも大切にしています。
 子どもの学年が上がって高校卒業する頃になると、お父さんなのかおじいちゃんなのか、見た目に判別できない保護者だらけになる。子供が免許取ってバイク買うじゃない?すると兄に間違えられる。
 未成年でローンは組めないから「親御さんの名前と連絡先とか、口座の番号を貰ってきて」いや、私だから。むしろなぜその額をローンで?現金一括払いだろ。
 これが極まって来ると私は「お連れ様」と呼ばれる。
 次第に子供が成長すると誰がお父さん問題に発展。まさかこんな事になるとは思わなかった。
 子供がいるってことは、それなりの出来事が通過点にあるわけで。なぜそうならないのか?恋愛とセックスを誰ともせずにどうやって暮らしているんだ、どうすれば実現できるのか詳しく教えて欲しい。
 避妊してなかったわけじゃないのに、セックスしたら妊娠する。という経験談。

 配偶者を持たないディンクスの方もいて、家庭の事情が背景にある。
 健康に対する不安とハイリスク、社会への不満や金銭的な問題。夫婦二人で暮らす理由はそれぞれにあって、選択肢である事はもう一般的に浸透した感覚だと思いたい。
 妊娠は女性も男性も適齢期がある。望んだ時に苦戦した結果、健康を意識させられ、体の内容を認めなければ進めない出来事が起きると、先の不安が急接近する。それを一人ではなく夫婦で、パートナーシップには大人のマナーがたくさんある。お互いを思いやり尊敬する関係性の構築や、相手の面倒をみる責任感。本当の意味で大人として成熟していくプロセスは家庭にあるのだと私は考えています。
 安心できる場所
 大切な愛する家族と、パートナーの存在。
 そういうの一切ない独身ソロの人生観の行方に『45歳狂う説』自分だけは逃れられる。そうなる筈がないと信じていた自分に裏切られた変化に、更年期障害の陰り。
 男性ホルモン・テストステロンの低下により、体の内側から狂ってくるから恐ろしい。AIによる概要「メンズヘルス外来の受診」メンエスは風俗だけど、メンズヘルスケアは男性特有の疾患や健康問題に焦点をあてた医療です。
 うつと診断される人が増えるのは、本人だけの問題ではなく、社会に要因があるのも頷ける。いつまでも丈夫ではいられないから、適切な医療に繋がって欲しい。
 ただ男として弱い生き物になると、誰からも必要とされなくなるので自身の孤独を癒せる方法を知っておく必要がある。エンタメに寄りかかってしまうのは楽だけど、ずっと消費者になっていると満足度が緩慢になる、そして他人に行動を指摘されると比べない見方を主張。別に自分は困ってないとか、みんなやってると冷静に見せているけど、状況から察した言葉を向けると黙る←狂ってると、こうなります。

 時代に輝く戦国武将の言う通り、人間50年────なんでしょうか。

 私は屈強なので、5080よろこんで。介護保険を払っているんだから社会福祉が使えるようになったら開幕、調べは付いてるので使い倒す気・満・々・です。
 地元の広報誌によると、札幌市は令和8年の予算・一般会計の歳入歳出が1兆3.185億円。結構な金額ですが、ここから雪対策・物価高騰対策・再開発、他。継続可能な観光都市としての発展に使われる予算を私の生活にもあてられる。物価高騰対策臨時給付金は支給対象、その前もなんとか給付金があって子供が18歳以下だと受けられる制度が多い。これが住みやすさに繋がる。
 いいよね。これは生き証人になるしかない。
 狂ってる場合じゃないのよ。それとも私、もう手遅れなのかしら・・・・・・話を聞きつけた鬼顧問・貴之が何か言おうとしているので、今夜はこの辺で。失礼します。

 0

trending_up 239

 5

 16

青空と白

青に白に見下ろされ
歩を散らす
風の音に乗せて
放屁する
音も匂いも
攫われていく

残された
胸騒ぎ
青と白は混ざらないのに
僕と混ざり合い離れない
胸騒ぎ

同じ青と白を見てる
そんなはずなのに
届かない
混濁しない
君の
白と黒

 0

trending_up 29

 2

 3

架空の泥「穴」か「共苦」か 爪の間に挟まる  白い影法師氏の 「穴」を読んで@しろねこ社宛推薦文 

推薦対象


by 白い影法師

わたしはこの作品を読んで
心の穴について描かれているのではないか
と想像します。

一貫して
題名に選ばれた「穴」が
一読者であるわたしを静かに癒しと
徒労の渦の中に巻き込んでいきます。

人は
よく
心に穴があいた、と言うけれど

この作品の前半部分では

"たった一人"

その穴と向かい
格闘している姿が
緻密に描かれています。

同時に
"代償行為"という
言葉も浮かびました。

これは
事情を知らない部外者から
見れば
穴を掘る当人
その人のギリギリの気持ち

居ても立ってもいられない
ジリジリ切迫した
言動や行動

その姿は
滑稽か
異様なものにも映るのかもしれません。

注目すべきはその第三者の視点が
作中で鋭く切り込まれている点です。

危ないじゃないか
なぜそんなことを?

当人はその言葉を聞いて否認するのでもなく即座に謝罪をするのです。

自覚はあるがやめられない

苦しいけどやめられない


朦朧と穴を探し続ける

そこには
憔悴の跡がいまも滲み続けている気がします。


だれかと──────────────────────生きて

過ごして関われば
必ず「穴」を
掘る、埋める、
または、目撃する。

それは
汚れた軍手を
捨てる
瞬間

に立ち会うことかも
しれない。

あなたは
掘る場所を探していないか
まわりに
そんな人を見つけたことはないか

終盤に

仲間の存在が
静かに
そっと
一度限り
示唆される事で

果たしてそれはどのような事情を
抱えた人物なのか。

主人公と
同じ「穴」を掘るのか
違う「穴」を埋めるのか

この作品の
掘る、埋める作業の
描き方の
連続に
わたしは
偽りない孤独の姿と
それでも共苦する
ということの意義を
考えました。 

スコップの音が
止んだあとに

架空の泥が
落ちる


あなたの穴は
どう埋めますか











 400

trending_up 42

 4

 2

直球ボール(B‐REVIEW運営として)

 
 
 前略 今はなき詩の投稿サイトB‐REVIEW運営の田中教平としまして、パブリックに書かせていただたいと思います。まずは、B‐REVIEWを閉鎖させてしまい本当に申し訳ありませんでした。


 私は、最初はミーハーでありましたが、コツコツと自分の詩作品をネットに投稿している内に、いつの間にか詩の魔力に魅了されまして、気づいたらB‐REVIEWの運営になっていた、ってんだから驚いた。
 そうして今現在もその事後処理に追われているってんだから、また驚いた。
 仕事も終わり、冷水シャワーを浴びて、その後、あれやこれやとチャットボイスで終わらぬやり取り、覚めやらぬ夢の如し。



 そうしまして、どうしても最終回に苦しんだ、旧エヴァの如し、B‐REVIEWは終わってしまいました。わたくし、兄貴でありますから、妹がこんな人形さんが欲しいと言いましたら、それは何とか与えてやりたいと思い、奔走し、しかし兄ちゃん、これワタシが欲しいのと色が違うんだけど、なんて言われて泣きました。


 B‐REVIEWが終わって、残念だったよ、どうしてくれるんだ、まだ私の作品は全部回収していないんだぞ!と檄を飛ばされまして、あれやこれやとチャットチャット、もうちゃちゃっと、もーもー朦朦、運営会議。そうしまして



・B‐REVIEWは年内に、短期間ですがアーカイヴ公開致します
・しかし、その公開は、アカウント削除要請後の作品に限ります
・田中責任編集ではありますが、フォーラムを随時更新しできうる範囲で、B‐REVEWに貢献して下さった方の原稿を公開してゆきます



 そうなのだ!ネット詩、ネット詩人はさすらってゆく。そうして、B‐REVIEWが無くなってしまったのだから、次はCWS(Creative Writing Space)を応援してあげる事が、わたしのネット詩への詩への恩返しだ!


 であるからして、B‐REVIEWのフォーラム展開の際には、トップとして、まず花緒さんの痛烈な後期運営の批判、総括
そうして「B‐REVIEWは終わった、そうして次はCWSだ!!」という怒号と共にアーカイヴを公開したいという欲求がある。あります。しかし、そもそも、そんな事はもう、田中、お前がやればいいだろう?兄貴だろ?という気がしないでもない。
だから私はこうして書きました。


 私は朦朦とした日々の中で気がついた。
 「文化事業と白洲次郎、で押韻できるなぁ」なんて。
 のほほんとしていたら

 直球ボールを投げてくれ!というお言葉をとある方から頂いたので「投稿」します!


 0

trending_up 222

 5

 17

批評・論考

v oi d

息づいたものが 声とならずに蒸散するのがわかる
それは どこに行ったのか と 戸棚の方を見遣った 
v と d が 語義通り母のない子のように 
前提を置かれず 黙らせられている

急須の蓋裏の 一つ一つのそれが 
手を取り合って 

次はphraseになりたいな

と思ったかは知らないが 
とびおりた先でのありかたを 諦めた様

まだ 無視への抗議をしていたい といった
vとdのあいだに 

おい 

とこえをかけたのに 
voidが一つできてしまって
piss と呟いた

 0

trending_up 168

 4

 4

……、……

ねえねえ 一番強い、剝き出しの言葉って、なんだろねーーー?



…………おぎゃあ、かな?



じゃあ、二番目は?




……君の名前……

 0

trending_up 181

 12

 8

#じんたま 17 The Cat's Trophies and the Eternal Loop

少し未来の話、大森元貴氏から配信『#じんたま』について訊かれたなら、私は「2026年5月13日のツイキャスを聴いてみて。そこに全てがあるから」と言うだろう。
この日前後にかけては、そもそも色々あった。
まず私自身がそうだ。この掌編の読者にはわからないかもしれないが、私個人のX上で様々なことを試している。元来ものぐさな性格で何もしない方なのだが、今回の『#じんたま』に関しては思うところもあり、思いつく限りのことをやってみようという気持ちになっている。(以下、私個人についての文章は割愛する。これは後々『#じんたま』が有名になった時に、TBSの『情熱大陸』などで語ることにする)
掌編『#じんたま16』で書いた通り、三浦氏はまあまあ変な感じになっていた。過去形なのは、今現在、15日の時点ではそう変でもない感じだからだ。
この掌編を書く間に、クヮン・アイ・ユウさんのツイキャスは一回更新されている。
今週土曜日の雑談回に向けての打ち合わせで、昨日のお昼ぐらいに三人で事務的なことをやっている。その放送は告知こそされていなかったが、録音はアップロードされていたので、もちろん聴いてみた。つつみさんはお子さんの学校の用事があるらしく時間を区切っていたが、それでも一時間以上の放送となっていた。
土曜日の放送には三浦氏が来られないらしく、三浦氏が番組内で行っている様々なことをつつみさんが代わりに行うことになっているらしい。三浦氏が土曜日の『#じんたま』を休むのは初なのだろうか。つつみさんは細々した音源を三浦氏から送ってもらい、それを流すタイミングを練習していた。その練習は10分ほどで終わったが、あとは雑談というか、前日の出来事に対する反省やら何やらを喋っていた。その時には、三浦氏の感じもまともになっていたように聴こえた。
前日、すなわち13日の三浦氏は、やはり個人でも色々動いていたようだ。私のスマホにも事の次第は入っていたのだが、私はビジネス上の関係で一切反応しなかった。で、その後開かれたユウさんのツイキャスで、ユウさんと三浦さんが爆発してしまった。私も内容を精査するためにそのツイキャスを何度か聴いていて、つつみさんも相当な回数を書き直しているらしいのだが、結果的に言うと、とても高度な応酬であったと言える。
お互いに仕事上の似た経験があるのかもしれないが、理性を程よく失いながらもリスペクトは忘れず、それでいて相手を失神させてやるような勢いで30分ほど続いていた。
元々、三浦氏は過去の録音ログの多さから判断するに経験値があり、あれぐらいはやれるだろうと思っていた。だが、ユウさんの頭の回転の速さには正直驚かされた。論的には三浦氏が有利なのだが、ユウさんの手数というか、ロジックの隙を的確に突いてくる明晰さは、少し聴けば理解できるほどの立ち回りであった。
その後、花緒氏が登場したり、キャスが落ちたりしたのだが、それらを含めて情報量が多すぎてお腹いっぱいになってしまっていた。
三浦氏のYouTubeのログの多さについては、私は人間関係に疎い方なので、特にB-REVIEW関係の放送ログが残っているのはありがたい。掌編『#じんたま』を投稿するようになってからはちょくちょく聴いているのだが、結局それらのログは何なのかといえば、「失敗の歴史」なのだと思う。
三浦氏はここ20年ほどの間に様々な試みを行っている。YouTube上に残したそれらの記録が、彼にとって何の意味があるかはわからない。猫がネズミを捕ってきて並べておくような感覚なのかもしれない。
しかし私にとって、それは三浦氏が力及ばず力尽きた「絶望のループ」の詳細に映る。三浦果実氏は、実は未だその円環の中に取り残されているのではないかと感じる。何度目の絶望か感覚がわからなくなって、仕方なく記録を残しているような印象を受けるのだ。
ユウ氏、つつみ氏と組んで再び何かに立ち向かう三浦果実氏。今回はどうなのだろうか?
私もまた、その絶望の円環を外から解析しようとしている。これはつまり、時間遡行のゴールでもある。配信『#じんたま』がその円環を突き破れば、遡及的に三浦氏が辞めた九つの試みも、すべてがそのための軌跡へと昇華することになる。
私はその答えを三浦氏が残した過去に探し、配信『#じんたま』は未来に向かって漕ぎ出している。この連環もまた一つの試みであり、ユウ氏と三浦氏の言葉の応酬も、ようやくそれに耐えうるだけのものを得たということではないだろうか。つつみ氏の勤勉さと、ミニチュア制作から発露する経験値も強力な推進力になっている。三浦氏はネット詩人生の最後に来て、やっと勝負できるカードが巡ってきたのではないかと思っている。
たまに情緒不安定になる感じだが、なんとか頑張ってほしいなと傍からは思うばかりである。

 0

trending_up 159

 2

 5

#じんたま 12 The Cinders of Regolith

先日、初めてツイキャスで配信をしてみた。
何をすればいいのか分からず、数曲歌を歌った後、私は「#じんたま」について語り始めた。CWSに投稿している掌編としての「#じんたま」と、配信プロジェクトとしての「#じんたま」がどのような関係にあるのか。YouTube配信で知られるヒカル氏の在り方を引き合いに出しながら、三十分ほど言葉を紡いだ。
もし、このプロジェクトに関わっていなければ、決して起こさなかった行動だ。文学極道のことにしても、話すつもりはなかった。だが、何かの弾みで、カスケード(連鎖)が起きたのだ。
今、私は旅行中にこの文章を書いている。
昼食の予約を待つ間、周囲は多国籍な客たちで溢れかえっている。予約は並んだ順。色とりどりの言語が飛び交う、まさに人種の坩堝(るつぼ)だ。
ふと思う。クヮン・アイ・ユウ氏や三浦氏、つつみ氏に、私の存在が良い影響を与えているのなら嬉しい。だが同時に、私の書く掌編が、彼らに焦りや戸惑いを生んではいないだろうか。
夜二十時。旅先の不安定な電波を掴みながら、ツイキャスで「#じんたま」の雑談回を聴き始めた。四時間を超える放送は、空を掴むような、それでいて震えるほど濃密な内容だった。
掌編を書くことが私自身の扉を開く契機であったように、その放送もまた、誰かの運命が動き出す兆しのように感じられた。
問題は先送りにされていたわけではない。ただ、息を潜めてその瞬間を待っていたのだ。
テーマは「ルールに頼らず、コミュニティ内で迷惑行為を行う者をも排除せずに共存することは可能なのか」。
その問いを反芻しながら、私はかつて文極のフォーラムで、初代天才詩人・コントラ氏と交わした長いスレッドを思い出していた。
私は進行役として、文学の芸術性を語り尽くした。だが、コントラ氏は最後に、文極とは別のプラットフォーム構築を宣言した。
当時、私はその試みに賛同できなかった。
運営と衝突し、アクセス制限を受けながらも、わざわざ自宅から離れた場所から文極へアクセスし続けていたコントラ氏。運営時代の管理パスワードを用いた掲示板操作や、海外拠点ゆえの法的な危うさ。混沌とする文極の中で、私は後の「四代目代表」を巡る運営との数ヶ月に及ぶ泥沼のやり取りへと引きずり込まれていく。
コントラ氏が中心で立ち上げた新たな場所が「B-REVIEW」だと知ったのは、随分後のことだ。文極で子供扱いされていた赤青黄氏が、百均という名で幹部のように崇められているのを知った時の驚きは覚えている。
誰も真面目に相手にしていなかった子が、新たな地で重要な役割を成している。そこには、言葉にできない感慨があった。
考えてみれば、私は文極において間違いなく「迷惑おじさん」だった。
自分なりに真摯に文学と向き合っていたが、端から見ればただの「荒らし」に映っただろう。作品を投稿せず、苛烈な批評ばかりを繰り返す。あの山田太郎氏でさえ作品を投稿していたのだから、私は「荒らし以下」と認識されていたかもしれない。
「何のためにそんなことをしているのか?」
理解される必要はないと思っていた。批判はすれど、自分なりの一線を守ってきたつもりだ。
迷惑おじさんと呼ばれても仕方がない。だが、自分を恥じるつもりはない。それが私の精一杯の、文学への向き合い方だったのだから。
「#じんたま」の放送でも、それぞれの正義が交錯していた。
錯綜する認識の森の中で、私は陰に潜みながら耳を澄ませていた。その音色は、私には心地よく響いた。
私も、迷惑おじさんだから。
だからこそ、この場が私を受け入れてくれている。
その優しさに対して、私にできることは何か。
旅先の坩堝の中で、私はずっと、それだけを考えていた。

 0

trending_up 167

 2

 4

ナカマ ハズレ ハ ダレ デショ ネ


オマエ ナマイキ ダカラ
ナカマ ニ イレテ ア〜ゲナイ


ここから入っちゃダメだからねって
ある日突然 線を引かれる



エンガチョ 
エンガチョ



子どものときだけかと思ったら大間違い
大人だって社会だって
平気で引くんだから



ここから入ってくんなって線



だからあたしも 引かれる前に
壁を作った
これ以上は入ってくんなって
壁を作った


そしたら
そしたら


だぁ~れもひとりも
ネコ一匹 イヌコロ一匹
近寄ってさえ
こなくなっちゃった



エンガチョ 
エンガチョ



ナカマ ハズレ ハ
ダレ デショ ネ



ハズサレ タ ノカ
ハズシ タ ノカ



スナバ デ ツクッタ 
コンモリ オヤマ
クズレテ キエタ 
スナ ノ シロ



コワシタ ヒト ハ
ダレ デショ ネ


サイショ ニ ヤッタ ノ
ダレ デショ ネ






 0

trending_up 39

 2

 4

いつか

さいていなこと

さいこうなこと

ならべてかいて

さようならする
きがしてる

ペンはいつかおく
かんぜんにきえはてるまえに

 0

trending_up 25

 4

 1

かわいいあの子はどこいった

かわいいあの子はどこいった
優しい瞳のあの子のことさ
からすや夕暮れまで遊び
別れたあの日に帰りたい

なんて考えてはみても
時など前へすすむばかり
ああ戻ること叶わぬのなら
うまれかわってもう一度
学業低迷    不道徳
そんなわたしで構いません
寄こしてあの子の心臓を
蒼い痣だらけあのハート

そんで
かわいいあの子はどこいった
わたしを愛したあの子のことさ
振り返っても道はない
ならば終わらぬこの輪廻


よーいよーい    夏が来るぞー...


かわいいあの子はどこいった
恋も怠惰もない頃に
優しい瞳で笑ってた
夕暮れ小焼け    またあした

 0

trending_up 21

 3

 1

世界への疑い

世界は本当に広いのか
知らなかったことを責められて 視野が狭まっていく

常識さえ知っていればよいのか
それは当たり前だと頷いて 大切なことを知らない

知識と情報は本当に大事か
世間は知ったかぶり争い

努力は本当に報われるのか
競争に負けた時に見つかるものがある

愛情は本当に温かいのか
それは冷たさを併せ持っている

社会のルールにさえあわせてればよいか
マンネリ化した日々を送り年をとっていくだけ

活躍すればヨシとされる社会でよいのか
役に立たなければ仲間はずれにされる社会で

人生楽しければよいのか
なんの苦しみも知らないまま
苦しんでる人のことも知らないまま

未来への希望は本当に大事か
1分先の未来 私がいきているかもわからないのに

この星は本当に美しいのか
空の下は戦、いじめ、争いだらけ

信じることは本当にできるのか
世の中偽りだらけ

幸せになることは本当にできるのか
結局自分のことしか考えていない


自分に対する疑いから、世界に対する疑いへの転換

 0

trending_up 16

 1

 1

その場かぎり

場数カウントは0。
年齢カウントは今も上昇中。

1年賭けて1階ずつ。
上がってくエレベーター。

階段を使えば良かった。
エスカレーター、合間にウォーキング。

止まるボタンは無い。
止まる階も無い。

人生はギャンブル。
アホか、誰がこれ賭けろと言った。神か?

人生はエレベーター。
その場かぎり。動かなかったやつの勝ち。

トコトコと負け組。
ガラス面、下から見下ろす。

あいつらにとっちゃ俺は神?
それも加味して、俺は降りたい。

上層はまだ早い。
下層に残りたい。と仮定(もしも)の言い訳。

いいわけ?神とやら。
このまま天にまで行っちゃっていいわけ、

ねぇだろ。

チカラ
ねぇだろ?
愛想
ねぇだろ?
学歴
ねぇだろ?
発想力
ねぇだろ?
コミュニケーション  でき
ねぇだろ?
彼女 い ねぇだろ、このやろ〜。つんつん。


ま、
大丈夫か。


エレベーター、過信。
下を見て安心?見えなくなってく,,,不安っ!

下ではみんなトコトコ。
「その場」探しにワイワイ、ノロノロ。

あいつらにも迫るカウント。
ダウン願う上級者。

は?なんだって?俺。
自分「上級者」だって?大丈夫か。

人生はどん底気分。
俺の場所はこんなんじゃない。

そう、

ちょっと前まで俺もトコトコ。
仲間たちとゲラゲラ、てくてく。

てか俺らもあとちょいで脱・若者。
そろそろヤバくね。 誰かが言った。

それから仲間たちみんなキビキビ。
結婚は結構?じゃ絶好な。つって酷くね?

嘘つきの未来に投票したくせに、
過去の尻拭いだってするザマス。偉そうな顔。

オホホホと気色悪いおしろい。
俺は塗れなかった。

「仲間」「若者」「結婚」。
うるせぇよ。知るかよ。どっかいけ。

悪魔に人生売った仲間たち。
俺のとの思い出もどっかに出品しちまった。

「その場」壊されたのは、俺。
あいつらとはその場かぎり。

どっかいった俺。
立ち位置も分からない視点で見るビル。

都会の空へ上がってくエレベーター。
スーツ来たやつ、お相手連れたやつ、色々。

あいつらのところは田舎。
みんな同じ塞いだ顔。

俺がいるここは都会。
十人十色。ぶっ飛ぼうがぶっ潰れようがすごいやつはすごい。

俺は乗ってしまった。
エレベーター。

俺は乗れてしまった。
乗れーター。人波に。

俺はノッてしまった。
yeah yeah  

俺はノッてしまった。
Fooo

とアガッたのも束の間。
「掴むな。」今なら言ってやりたい。

調子乗ってた俺。
ビートも凶暴なビーストになってしまってた。

全て上手くいくと思ってた。
全て俺の獲物だと考えてた。

都会に響くその鳴き声。
ヒビに気づかない盲目の怪獣。

教えられた都会に。
分からせられた。怖いやつらに。

俺は逃げるようにエレベーター登った。
誰もいないところへ行きたかった。



















ラップって難しいな。
惜しいな、もっとまともな物語にすりゃよかった。

本当はそんな難しいこと描くつもりなかった。
積もらせた言葉のリズム、次々と降ってきた。

というか実際ノれてるのか?
ノリって何なのか分からず書いた。

詩とCreepy nutsくらいの知識。ラップ、
まずラップってどうやんだ。

お皿にかけるのか?
言葉をかけるのか?

い×え で yeah(イェー)
ふ×う で fooo(フゥー)

Who  ラッパーって誰だ。今の俺か?
Boo    ってなんか文句タラタラ言うやつか?

おい、聞いてるかCreepy nuts。
冗談だぜ。クリーピーパスタ。

お前らの歌は全部発禁。
R-指定なんだってな。

俺も聞いたぜ。Bring bang bang born
アダルトな中毒性。

耳に効いたぜ。Bring bang bang born
頭にクル前に心にクルぜ、涙もストレスも流れるぜ。

って、褒めちぎっちゃたよ。
これが普通か?そうだよな、叱るとハラスメントだしな。

不の感情バネにして、
人気でちゃっても困るしな。

大好きだぜCreepy nuts
もう人気だって?さすがクリーピーだな。

とか言ってクリーピーってなんだよ。
誰か言って。「いつまで続くんだよ」。

知らねぇことばっかだよな。
教えてやるよ、俺もわかんねぇ。

長いあとがき。
次々と出てくる、

二行はあとだし。
ジャンケンもびっくりの

発想パターン。
何通り何文字出てくんだこの韻(ライム)。

心配になってくるぜ。
大丈夫か俺の頭。

おかしくなっちまったか。
お菓子食っちまうみたいにポンポン止まらねぇぞ。

終わらせられるけど終わらせたくない。
ノっちゃたら降りられないエレベーター。

Better  おい、初心者だよな、俺。
おい  たが過ぎるぜ、そろそろ。

軽い気持ちで始めたラップ。
ビートもbitくらい低い解像度で、始めたラップ。

お前の散文ラップみてぇだな。
誰かが言った。

それから俺  yeah yeah
ラップ調、言葉のリズム、始めた意識。

Foo
Foo

何熱くなってんだ。

冷ませよ興奮。
覚ませよチンピラ。

Oh yeah



はい、ごめんなさい。
リズムに乗りすぎました。
何やってんだこいつって言ってやってください。
物語の主人公にも。

 0

trending_up 12

 1

 1

ふいてとぶような

うすっぺらな
かんせいしかないが
そんなにかんたんなみちを
あゆんだつもりはなかった

ムリゲーシニゲー
流行り言葉やスピリチュアルや宗教に
まみれただけで
瞬きな人生だったら良かったのに

ふいてとぶようなありきたりでわらっている
たさくださく

 0

trending_up 36

 5

 3

とこしへ

嘆けとて 
月やは物を思はする
かこち顔なる
わが涙かな 

うつし世に 変若水汲むところもなく

わが愛や誠実ごときにては
君の御身をば収むる範にあらず

今は亡き貴方に なお囚はるる我なり

あしびきの      
山鳥の尾のしだり尾の
ながながし夜を ひとりかも寝む

酔ひ乱れて臥せど 傍に人影も見えず

さながら此処に座し給ふかと思ふほど
かの死拐の気を君は湛へ給へり

幾夜寝ざめつる 物気のたゆたひ

彼方の界の石榴を食みし君は
いかばかり艶に いかばかり美しからむ

貴方は 夜に咲散る花の如く
朧して とかく世の常ならず

露の身はここかしこにて消ゆるとも
心はひとつ 花のうてなのやうに

貴方を求むればこそ
かへって貴方を見失ひぬべし 

戯れごとのごとき 陳き言のさまよ
貴方は これさへ陳腐と言はむか

いつしか干にけり みなの川

君はわが尺度の外へ赴き
人の理さへ跳び越えて
我が手の及ばぬほど遠くなりぬ

夜空の星にわが手 及ばぬがごとし
貴方は生者には見えざる景色を見に往にけり

燃ゆる思ひを夜の水に流しつ

我は君を希ひ
もしや君  黄泉の岩戸を叩かば
ためらふことなく開け放ちてむ

瀬をはやみ
岩にせかるる滝川の
われても末に逢はむとぞ思ふ

いかなる結末の物語ともなりぬとも
ただ今宵 良宵ならばと願ふ

花の色は
移りにけりないたづらに
わが身世にふる
ながめせしまに

 100

trending_up 69

 1

 2

Eye see.

✴「一見同じだけど、よく見ると違うことってよくあるよな。」

✲「あるような,,,」

✳「ないような,,,でも」

✲「よく」

✳「考え」

✲「ると?」



✳「,,,,ないような,,,」

✲「どっちだよ。」

✳「本気で見るとやっぱ同じな時もあるよな。」

✲「ねぇよ。そんなこと。」

✳「あるような気も,,,,」

✲「しねぇわ。何?何これ?洗脳?誰の哲学なの。ってか本気で見るってなんだよ。」

✳「こう、虫眼鏡みたいなやつで見ると,,,あ、やっぱ違うわ。同じじゃないわぁ。みたいな。」

✲「なんかすごいこと言おうとしてない?どこで何が引っ掛かってんの?」

✳「いやぁ、お前みたいなやつに話しても分からないかなって。」

✲「おい、見た目で判断すんなよ。」

✳「いや、中身の話なんですけど。」

✲「なんかショックだわ。」

 0

trending_up 28

 2

 1

断捨離


どんなにいらないからって
捨てることができないものって
な~んだ?




それは自分自身です






 0

trending_up 79

 4

 9

メンヘラ女子は眠れない

リストカットもファッションなら
オーバードーズもまたファッション
スマホで撮ってハッシュタグつけて
今日もブログにうPする

映えるインスタ盛るX
7個のサイトを使い分け
裏垢病み垢自撮り垢
メンヘラ女子は眠れない

彼女は歌舞伎町のホストを刺したあと
その画像をネット上にばら撒いた
人生はフォロワー数や
「いいね!」の数の中だけにある

自分自身を消費せよ
誰もがアピール誰もがジャッジ
もっと可愛くもっと過激に
勝手に拡散勝手に炎上

量産型に地雷系
キーワードは「ぴえん」と「エモい」
迷惑動画もバズればノーカン
メンヘラ女子は眠れない

彼と彼女はSNSへ投稿し
トー横のホテルから飛び降りた
人生はフォロワー数や
「いいね!」の数の中だけにある

(ラップ)
プリン髪して痛バ持って
とてたま気分でバイ活オワコン
キラキラ女子に港区女子
無理ゲーだったらパパ活女子
干物女にはなりとうない
外見スペック超絶ウィケメン
スパダリわかりみキュン死にしてねアピ
パリピギャルサーマジ卍
誰得禿同同担拒否
どーでもよすぎワロタそれなw

メンヘラ女子は眠れない

 0

trending_up 2011

 6

 20

鳴いたのは犬か?

素朴でいることの難しさを
噛み締めて
鳴いたのは犬か?

何度目かの語彙爆発
発芽に耐えうるだけの
強度が足りない
あなたにはなれないわたし
わたしにはなれないあなた

校庭で遊んでいた子供たちが
いっせいに校舎へと戻る
交差点を右に曲がる度に
同じパン屋を見つける
毛先の広がった歯ブラシを
口にくわえている

カーブミラー越しに見つめていたのは
あなたのどの部分だったのか
まだわからないけれど
わたしには(苦すぎる朝だ

階段を一段とばして上がる
手すりをつかむ
腰の骨が軋む
踊り場に陽だまりができている
チャイムと笑い声の響く
廊下には気配のみ住む

ふくつうのくすりや
ずつうのくすり
不眠不休の時という暴力
素朴でいることの難しさを
噛み締めて
鳴いたのは犬か?

 0

trending_up 55

 3

 3

良い子と悪い事

良い子が悪い事をしようとしている。

良い子が悪い子になろうとしている。

良い子はあなたか。

悪い子はお前か。

振り子は首を振る。

社会の視線が追いかける。

CHOOSE

良い子なの?悪い子なの?
邪魔しないから、考えてごらんなさい。

良い事なの?悪い事なの?
しーっ。答えてはダメ。黙りな。

良いの?悪いの?
誰も寄り添っては来ない。どうする笑?


選べないなんて、笑わせてくれるな。
全責任キミが背負うんだ。
示談金を持ってこようが、
服を捨て泣いて土下座しようが、
その罪な顔までキミの財産。倒産間近。

良いフリ、悪いフリは効かない。

嘘は口に出さずとも分かる。

頭を抱えようが足は歩む。

ふらふらと心は揺れる。

止まること止めることはできない。

私の目がしっかり捉えている。

SAY

良い子なの、悪い子なの。
誰にも言わないから、口に出して。

良い事なの、悪いことなの。
とっくに知ってるって。分からないの?

良いの、悪いの。
キミの意見が聞きたいな。


いいね、いいね。
悩むか。早るか。
急かすのはちょっと悪いか 笑。
人間とは面白いものだ。
こんなもので動けず命を絶つ。
罪も罰も無罪も有罪も、
お前のその手にあるというのに。

何に苦しんで、何に期待して、
何を待っているのか。
気付けないのか。
気付きたくないのか。
他人に裁判を任している時点で、
お前は負かされていると。
お許しもお告げもクソもないこと。

DON'T ESCAPE


良い子なの??悪い子なの??
どうなのどうなのどうなのどうなのどうなの

良い事なの??悪い事なの??
早く答えて早く答えて早く答えて早く答えて

良いの??悪いの??
どうなのどうなのどうなのどうなのどうなの
どうかなどうかなどうかなどうかなどうかな
どうするどうするどうするどうするどうする
どうすんの。


あーあ。


わーるいんだ。
わーるいんだ。
せーんせいにいってやろ。
ばかしょうじきにいってやろ。

私は関係ないもん。
やったのはお前だろ?

やった、やった、こいつがやった。
やった、やった、ハマった、ハマった。
わるい子がふえた、わるい子が増えた。
笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑



良い子が悪い事をした。

でも怒られない。
だって良い子だから。
みんなみんな良い子だから。
あなたもお前もみんな良い子。
よしよししてあげる。
良い子でよし。
悪い子でよし。

振り子は頭を揺らす。
誰かの目が回る。



 0

trending_up 48

 1

 5

 0

trending_up 0

 0

 0