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2021/01/01 12:00:00

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投稿作品一覧

証言としての文学

性と死というテーマは安直だと批判されたこともあるが、私はこれらを扱うのが宿命だと思っている。これまで出会い系サイトのこと、女性用風俗のこと、またCSA(チャイルドセクシャルアビューズ,児童性的虐待)のサバイバーとしてのいくつかの作品を書いた。ウェブマガジンあさひてらすに『美しい祖父』の題で掲載された詩もそうだし、このサイトでは『水入らず』や『不眠症の少女の詩』が当てはまる。また『ティーチャーズ・ペット』は成人後受けた師弟関係にからむハラスメントを学校での性被害に置き換えたものだ。
詩の読み書きを教えてくれたのは虐待した祖父だったし、言葉を呪いながら言葉に縋りつくいびつな生き方をしている気がする。それなりに名前の知れた研究者の彼は私を膝に抱いて本を読みながら、私の服の中に手を入れていた。詩を書くたび七歳の自分に戻っている。
いや、不正確だ。身体を触られているときはいつも「私ではないほかの女の子」になっていた。私は後頭から彼女を眺めていて、一連の行為は風景のようだった。書くことは幽体離脱の状態から自分自身の身体に入りなおすことに近い。
言葉の存在と取っ組み合いながら、知を受けわたすさまはどうしてこんなに交接に似ているのだろうと考える。お勉強はできても幼な子の痛みに対しては鈍い"先生"はあれとこれとをまちがえてしまったのか。
私は精緻さを大切にしているから、自己憐憫は邪魔になる。吐露したいわけではない、証言がしたいのだ。
「きみはあの日なにを見たの?」
司法面接でも受けてるみたいに、詩を書く。

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批評・論考

不眠症の少女の詩

一冊の詩集よりも
子ども部屋にバリケードが欲しい
机にうすむらさきの花を飾るよりも
枕の下に折りたたみナイフを置いて
眠ったふりをしていたい
夭折の画家がかいた
ため息の出るような星と月や
寒いですねと言いあえる
名前を知らない人々よりも
暗闇の大きな手を縛めてくれる
まだ会ったことがない人に会いたい

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ラムネを飲もう

イギリス人には
紅茶を飲むという暖かい光景がある
家という一つの宮殿に勝る
その小さな世界の片隅の
サイドテーブルの上を舞う湯気は
誰かに売りつけた阿片の匂いをそっとかき消すのだろう

アメリカ人は
茶壷と港の発音の違いがわからなくて
紅茶をむざむざと失ったけれど
その代わりにコーラ瓶を口に運んでは
季節を選ばない渇きを癒すのだ
ピザとテレビディナーを家族と囲みながら

ドイツ人の歴史書は敗北の二文字だけど
それを分厚くしているのはビールの泡
フランクフルトといえば1848年の理想の中心地だけど
でも普通はビールの御伴でしかなくて
空にはためく黒赤金は今日もそれ以上でもそれ以下でもなく

ロシア人
語るまでもないだろう
砂糖の配給すらないはず時代でさえ
どうやってかウォッカを手に入れて寒さをごまかし
そのせいで雪をちょっとでも掘れば
永遠の安息に浸ってることが発見されるのだから


じゃあ、僕らは何を飲めっていうんだろうか
どのような国民的行為に手を染めろっていうんだ


お茶を飲めって?
やだよイギリスとネタが被るじゃないか
それに君は抹茶に頻繁に手を出すのか?
ミスドに行った君はおおかた他のドーナツを選ぶんだ
わかっているんだからな

日本酒?
よく考えてほしい
ほろ酔いがガチ酔いばかりの民族だ
そんな民族が飲酒を
国民的行為にできるわけないだろ!
いい加減にしろ!


こうして困り果てた僕だけれども
それでも幻想を求める旅に出た
失くしモノを求めるように

紅茶飲んではフォース湾で水漬く屍
そんな民族的幻影が
ひとかけらでも欲しかったから

国民的一家が日曜日の終わりに突撃しては揺れる家
定期的に音響的災害の繰り広げられる土管付きの空き地
疲れ果てたサッカー部員に追突される黒塗りの高級車
空手部員三人が合宿で泊まり込む部屋
何とは言わないけど下北沢の邸宅
それに匹敵するような国民的幻想を
飲むという行為で再現できないかと

僕は必死に探して探して
そしてあの夏の日、あの残花と共にした終末の日
ひまわり畑の前に辿り着いた僕に
白いワンピースに身を纏った青髪の少女
そんな共同幻想が現れたんだ

幻想はにかっと笑うと
一本の冷たい瓶を僕に差し出して
それからふわっと消えてしまった
あんなに咲き誇っていたひまわりも
今ではすっかり俯いてしまって

でも、その喪失とは反対に
僕の手に握られた瓶のその煌きは
千年も八千年も
あるいはきっと苔が生そうとも
僕の脳裏から離れてはくれないのだろう


夕涼み
くいっと口に運べば
夏灯篭の火が揺れる中
舌に寂寞性青春が沁みていくのです

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赤いスカーフ

 机の上の
 赤いスカーフが
 誘ってる

 見つめていると柔らかさに
 惹かれる
 言いたいことはチラシの裏に
 書いてある

 ほんとのことは電子レンジで
 あたためている
 それは目に見えない形で
 僕の前を通り過ぎてくんだ

 気持ちが前に
 出ている
 あとのゴミくずたちは
 ちょこんと
 しょぼくれている

 それをほしいものだと
 叫んでみる

 立ち止まっている人が
 振り向くわけでもないんだ
 ほんの
 触れやできないほどの
 水になる

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水入らず

きのうお風呂に入るときに
洗濯かごに出しておいたショーツが
朝 祖父のベッドルームで見つかる
二階の掃除をすませて居間へ降りていくと
生き物たちは仲良くテレビを観ていた
いひ いひ いひ いひひひひ
えへ えへ えへ えへへへへ
白い頭が二つ 黒い頭が一つ揺れている
また笑うべきではないことで笑っている
私は気づかれないように上へ戻って
書庫兼閲覧室に閉じこもる
不幸せにも地獄耳に生まれついたので
しゃれにならない冗談を交わしている声が
指の隙間から不吉な予言めいて滲む

アノコハアレガキテカラ
カラダガマルウナッテキタッチャナカカ
アタマノクスリバノマセヨーケンタイ
ウチノマゴハミタメハアンナフウヤケド
ブンサイニハメグマレトートヤネ
ヤッパリブスハブンサイガアルトヨ
デモオトーサンオカーサン
アノコハアノオトコノコドモヤケン
ロクナオトナニハナラントオモウヨ

家にいるのに帰りたくない

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公共の空に名前を放つ

アマチュア無線の免許を取った

大して電波も出さないけれど

そもそもおしゃべり苦手だけど

アマチュア無線界の

オールドマンという

言葉に惹かれた

メカニックやエンジニアにも使われる

経験豊富なベテランを指す

ところがアマチュア無線では

ちょっとだけニュアンスが違う

無線通信技術に精通してなくても

人生経験豊富な、尊敬できる人物

そんなニュアンスがある

だから無線免許取り立てでも

他の分野での経験豊富な人物は

無線界ではいつでもオールドマン

そして謙虚に振る舞い、専門分野で貢献できる所は惜しみなく

まあそんなアマチュアコードとは無援の

傍若無人な人もそりゃあ、いる

けどね

紳士であってこその趣味

公共の電波の一部周波集を使える意味

一人一つのコールサイン

国際条約の下にある名前

責任と義務

その緊張感が

ちょっとだけ嬉しい




-------------

アマチュアコード

 アマチュアは、良き社会人であること

 アマチュアは、健全であること

 アマチュアは、親切であること

 アマチュアは、進歩的であること

 アマチュアは、国際的であること

出典
日本アマチュア無線連盟 JARL


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3ページ目(3)

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 凛は照明を落とし、資料室のドアを閉め、鍵をかける。編集部のフロアに戻ると、空調の低い音が続いている。

 ゲラの山はすべて会議室に運ばれているので、凛の机は、めずらしく整っていた。机の上にあるのは、ノートPCと、過去号のバックナンバーが数冊。社内回覧の紙が2枚、角をそろえて置かれている。まだ目を通せていない。ペットボトルの水は半分残っている。冷房の効いた部屋で時間だけが抜けていったせいか、手に取るとすでにぬるい。

 凛はキャップを閉め直し、バッグにしまう。

 奥の席でキーボードを打っていたデザイナーの手が止まる。モニターには、白鷺文学新人賞号の仮レイアウトが開かれている。受賞作の文字はまだダミーだ。フォントも確定していない。
「まだ帰らないんですか」
顔は上げないまま、声だけが届く。
「もう帰ります」
「選考、来週でしたよね」
凛はうなずく。
「ほどほどにしてくださいね」
少し間があって、
「誌面は逃げませんけど、人は倒れますから」
凛は小さく笑う。
「ありがとうございます」
デザイナーはまたキーボードに向き直る。特別な励ましはないが、凛の過度な抱え込みに気づいている。

 白鷺書房は、市ヶ谷の靖国通りから1本入った場所にある。5階建ての自社ビル。外壁は薄いグレーで、ところどころに雨だれの跡が残っている。玄関脇には小さな真鍮の社名プレート。「白鷺書房」とだけ刻まれている。

 エレベーターは1基。凛はボタンを押してから、バッグを肩にかけ直す。到着を告げる低い音。重たい扉がゆっくりと開く。中の鏡は少し曇っていて、LEDの光が白く滲んでいる。外に出ると、夜の湿気がまとわりつく。市ヶ谷の通りは、昼間よりも少しだけ広く感じられた。まだ車が走っているが、昼よりも音が遠い。外濠の水面は見えないが、風に混じってわずかな水の匂いがする。


 朝倉凛は、32歳。文芸誌『灯標』を発行する白鷺書房に勤めて、9年になる。大学を出てそのまま入社し、最初の3年は営業部に配属された。新人はだいたい営業から始まる。書店を回り、棚の幅を測り、返本率の数字を覚えた。

 最初の頃は、うまくいかなかった。
「正直、文芸誌は回転が遅いんです」
 大型店の文芸担当は、棚の前で言った。月刊誌の段は、エッセイと実用書に押されて半分になっている。
担当はバックヤードの小さな机で、平台の予定表をめくっていた。壁に貼られた入れ替え表には、週ごとのタイトルが赤いペンで書き込まれている。段ボールの匂いが、湿った紙の匂いと混ざっている。売り場から、レジの「ピッ」という音が遠く聞こえる。
「正直に言うと、戦争特集は動きが読みにくいですよ」
 担当は予定表に目を落としたまま言う。凛は見本誌を机に置く。モノクロの戦後写真の上に、薄く現代の街の輪郭が重なっている。コピーは短い。

――戦争は、終わったのか――

 灯標にしては珍しく、細いゴシック体。
「ずいぶん印象が違いますね」
 担当が言う。
「はい。いつもの灯標とは少し」
 凛は、そこで言葉を切る。創刊50年目の特集号がよぎる。揺れない明朝体。重心の低いレイアウト。いかにも灯標らしい顔。
「社内でも議論になりました」
 凛は続ける。
「でも今回は、振り返るための号ではありません。古びた記憶にしないための特集です。教科書の延長にするんじゃなくて、いまの読者に伝わりやすくするために組んでいます」

 バックヤードは静かだが、売り場のざわめきが薄く伝わってくる。誰かがカートを押す音。紙袋が擦れる音。しばらく、予定表の紙をめくる音だけがする。

「3日。端でいいですか」
「はい!十分です」
 凛は頭を下げる。売り場へ出ると、空気が明るい。新刊の帯が色を競い、ポップが揺れている。平台の右端に、灯標が7冊並ぶ。他社の話題書の陰に、少しだけ静かに。凛は1冊ずつ背を揃える。角度を整える。客が横を通る。視線は、話題書に流れていく。それでも一瞬、灯標のコピーに触れた気がする。

――戦争は、終わったのか――

 3日後、再び店を訪れる。平台はすでに入れ替わっている。灯標は文芸棚の下段に移されていた。7冊のうち、2冊がない。残りの5冊は、背表紙だけが整然と並んでいる。背中は静かだ。声を上げない。

 担当が言っていた。
「平台で2冊なら、悪くないですよ」
 凛はうなずく。2冊。強い数字ではない。けれど、3日間だけでも顔を見せた。背表紙ではなく、問いを前に出せた。売り場のざわめきの中に、ほんの少しだけ灯標が混ざった。

 正直、通販の数字は伸びてきていた。でも灯標は、検索窓で出会う雑誌ではない。本屋の棚で、背表紙に触れた誰かに見つけてもらう雑誌だ。凛は、それを信じている。通販で1冊売れることと、書店で1冊売れることは、凛の中では同じ重さではなかった。凛がここまでこだわるのには理由があった。

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他山の鶏

黒い雲が空を覆った
鶏(とり)たちが隔離された
一羽残らず億万が迅速に処分された
視界から卵が消えた
豚たちのホロコーストが過ぎて
羊たちは沈黙の塚にあまねく落とされた
厩舎では馬たちの処理が始まった
殺戮するために肥らせた家畜の肉を
美味しくいただいてきたわたしたち
地の牛たちはすでに狂って
血の池で踊りつづけている
蟲食に飽きたわたしたちが
踊りのその輪に入る日がくる

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刹那スキャット

人に言葉を投げる前に背中を見せたら
虹のように軽やかに逝ける
サイバー攻撃みたいにリズムを刻んだら
誰も踏み入れたことのない場所へ行ける
クラクラくる甘いカクテルを蹴っ飛ばせば
今までにない景色に会える

人生を叫ぼう
心なんて後からついてくる
今すぐ飛ぶ

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それで幾分安堵する。生け簀のものは頼りない


よろしいか。
嫌なことがあった?
まあなんていうかいつ時代かもわからない 
しぐれにも やみくもだから こわごわ、
すすめるのだろうけどね。
んでもいまやぐったりげんなりした愛想でしたよ
こういうのが、脳裏で行われていた長年
ヱ昊と雨露がせめぎあう より根本で深淵を

船頭もいないボロ舟に背を預ける
躓いた眼差しと面影に思い巡らす行為として
どこか連れ去ってしまいたい、そんな薄日だ
幻惑と脱力を分け保つ、かんたんな慰めを溢しました
川沿いを下る無駄な目蓋だから
自分だけが知るルートで 困らないですね
理想が低いので、自分自身が自分ではない気がする
自我を捨て 脱兎 暴れ馬
期待する、意表を突かれる、がっかりする
見当たらないねえ。
(弦楽器の凹みを地獄耳で弾く、)
(八頭身の蜩の髭が震える。)
煮えきらない雨のあとに生まれる、不自由に飽和している
あなた というものの 影 がひとりでに歩き出す
生意気で、諦めと踊る螢火は控えめに
何を広げて何を狭めりゃいいのか
なんていうかカンに頼る作業でしかない、散策路へ

  大体のことはグダグダで群れいる羊
   はみ出ないように見ないように
   押し付けるのではなくて、客観的に
  それは重ね合わせることができない事象で
   茶化してるようにしか見えなくて
   まあ暇だから現実逃避だから
  知識も経験もない、あっけらかんとした骨組み
   ただここまで生きてこれただけで
   程度の低さを飛び跳ねて
   枠組みに収まらない構図として

 熟考する処理は逃げ出してしまうことの方が膨大だから

いまはそうだな。
あちこちからひっきりなしに寝言、
忍ばせる潮が満ちてきて、追って重ねる衣服の裾も
暴力的な遊びこごろや、健かな大声の詰まったもの
人骨とレモネードを半畳の幸福に貧する仕掛けを
エゴイズムの沼地にこだまする。
錆びた鉄骨が座標に絡まる。杜撰な勇者の剣だろうな
卑屈さばかり持ち出した不用意な歓声が聞こえるんだ

如何様にも変化に富むものでありたくて
その太陽は過去を寂しさみたいなもので切り取り
自己中でお花畑で、ただ気持ちいいだけで
よく沃土は泥濘むんだよ。なんてな
――怒っていいのか。
   流れ矢にひび割れる
   のうのうと暮らしている我々の
   言葉が意味を持たないうちに 
   裏通りを抜け
   まっとうにほどほどに抵抗して
   それで従える
   茶番劇等

題材としてちょうどいい話題性を持ち出しただけの
より表立って出てくる木々は芽吹き燃える。

今、少し先の未来を予測しながら
今をさかりに先乱れる
物腰の柔らかな若葉のにおいや
悲劇ヒロイン、祈りのようなカタバミさえ
  現実にある問題とは
  ・選んだ道だから
  ・やらざるを得ないことでしかなかった
    胃が痛いのも
    泣きそうなのも
    金が無いのも
    Majiでクソ野郎なのも
    生かした選択も。
ひょいとあらわれるもんだから、警笛だろ
おやおや
ノーテンキなんだよ。
いやいや 人生はデタラメだからね、
機嫌よく黄ばんだ翅音がする、この
キモい地下道を潜りおさめる必要がある。
とすればその飢えを認識し制御出来なければ
根本は解決しない。

 思考整理する より/早く 排出されてしまうか

もはや跨線橋をわたり、懐かしい見返りの夜風に
無理だなとなんとなく察した。海へと下る、朧月
まあ全部気圧のせいだよ(ひどい言いがかり)

そもそも振り返ったところであなたが
今ここにいるのだから、
間違ってないし後悔もない。
できないし、やりたくないし、する必要もない。

今無意識にあなたを操作している。あの軽四は
いつ時代の作法か、半端な感情では、付け焼き刃だもの、
深さもないハリボテだろうな
ロクに疾走らないくせに愛着ばかりがもう鈍臭、
違和感もないんだなと

一歩後ろに引いたところで
この感覚になにか囚えられる
またあんたはどちらからきたのだねと
おのずと羨ましくもなる
『自分で自分を愛すること。』
見合わせたうわ言を煽いで息抜くことを、やめる。
駆けずり回る。なんてことないんだろうなと。
物の道理を馴染ませ、名残惜しくも
この手のひらに掴めるものだけ、与る
率直に、思い残すことも ない

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花粉症

かわく、二つの窓から部屋へ
もつれる、近視の夜明けを迎え
うなだれる、吹きっ曝しになった
始発にもまた、雨が降る

声は躰のように
再び熱を帯びながら
いっしんに喉元を弾く

とける、肩から足元へ
うもれる、モカマタリの匂い
ひざまずく、光の差さない
密林にもまた、雨が降る

それが、花粉症。

意思の嘲笑われるほかない
脳をこねくり回して、弊害
歴史を遡って、出直したい
唐突過ぎた君との巡り合い

とにかくつらい
ただただつらい
それが、花粉症。

***

創造は神秘を伴って
かたい大地へ流れゆく
万物は命である
とでも言いだしそうな気配で
ならばこれは殺戮なのか
答はない
凍えた色をした
やわな首根っこを引き戻し
いくつになっても
差し出さなければならない骨髄
過剰すぎる私とは違う
彼らは れっきとした生命だ

かじかんだ手を頬に当てて
ハウリングする冬の記憶
それでも、
屑籠に集積していくばかりの季節を思えば。
すがすがしい素顔で、傘を開いて
やまない雨があってもよかった
Eをこおりづけにして
Eをこおりづけにして
Eをこおりづけにして
ねがいを
寒の戻りに込める

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切断

何度も
何度も
拳を握り
画面に映る
影たちは
削り引き裂いた
受肉を 
受信し
瞑想する第二頸椎
の奥で
微かに
鳴る音を
拳で
鍛造し続ける

熱く熔け
形を持った
わたしたちは
昨日の靴底を
剝がれた爪で
掻きわける

掌は
とめどない
指紋の中で
腐敗する音響

切断

保護膜はない
指先の叫び声は
癒着し
深く
深く
まだ
影を明日へと
こぼしながら
熔けていく

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電光石⭐️歌

OH 彷徨える旅人の心よ
心地良きと、気高きにお前は包まれ
畦道砂利道田んぼ道
ぬかるみに足を掬われ、時に露頭に迷おうとも
どんな時もお前を励ます 歌 歌 歌
書き留めるスケッチとその切れ端 ネタ ネタ ネタ

OH のしかかる不安と鼠色の雲
時にこの世は、狂気に包まれ
竜巻稲妻暗雲雷鳴
儚い命世の定めと知り、我進むは
無心 無心 無心
善意明朗 疑惑に揺れたる
不信 不信 不信

OH 何故に、この世は魑魅魍魎
魅惑と魔性のフルコース
常に待ちたる罠と、落とし穴
自らの首絞め、骨折るは
自殺 自殺 自殺
他者を貶め、崖に追いやるは
他殺 他殺 他殺

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メッセージ

超個人的な手紙が
詩に化けて
ちがう、ちがうんだよ
1枚足りない 一言余計だ
大騒ぎで 
葉っぱを破く

もう今となっては
ニンゲンじゃあございませんよ
狐狸の類でしょうか

はあ?
語尾上がり疑問系で
質問に答えるのは
日本の学校教育の植え付けた悪癖
求められる
ひとつだけの正解を
導き出したいお利口ちゃん

詩に化けきってますか?
手に負えない感情が
破棄出されて逃げていく
あれ?誤字ですか?
いいえ、それは、、、
「詩」ゆえに

超個人的な手紙など
公開しない後悔ノートに書き付けて
私は航海に出るべきですよね
目の前は紅海じゃなくて
太平洋の大海原

メッセージ
これは詩として完成でしょうか
歓声で返してくれませんか
ええ、ええ わかりやすく
もうね、こうして
馬鹿試合(化かし合い)してるうちに
あっちゅーまに
狸狐の類になっちまったので
葉っぱを破くので忙しいから
にんげんのかんせい みうしなってしまって

これは詩ですよね
超個人的なメッセージには
手紙などには見えないですよね

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私はアホになりたいし神はアホである

賢さはいつも
遅れてやってきて
すべてを説明したあと
何も救わない

正しさは鋭く
世界を切り分けるが
切断面からこぼれる涙の理由までは
測れない

だから私は
少しだけアホになりたい

勝ち負けを数えず
意味を回収せず
夕焼けをただ赤いと
言ってしまえるような

神ならば
きっと計算はしない
誰が得をし
誰が罰を受けるか
帳簿をつけたりはしない

春に花を咲かせ
台風を迷わせ
祈りと無関係に
朝を置いていく

そんな無頓着さを
人は残酷と呼ぶかもしれない
けれど私は
そこに少し救われる

賢さから
一歩だけ出て
うまく生きるより

ただ生きる
私はアホになりたい

そして
神がアホであるなら
笑って
意味もなく朝を迎えるだけでいい

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沙羅の独り言

1990年代は、コギャル全盛期。顔黒(ガングロ)で、目の周りを真っ白にメイクした巻き髪やサラサラストレートの女の子が街を闊歩していた。
 沙羅は18歳。髪の毛は、ピンクがかった銀髪で目は垂れ目。甘えん坊で我儘だけど、渋谷109のギャル服の店の販売員で根性だけは据わっている。
 
 朝、目を覚まして顔を洗う。メイクをする前はいくら整形したとはいえ、淡白な顔をしていて自分でもげんなりする。
「今日の気分はストレートヘアにしよう」沙羅はそう言って、ストレートヘアアイロンの電源を入れて、180度に設定した。髪の毛を整えると眠気も昨日の失敗も全て一緒に流れていく気がする。
 TVからは安室奈美恵の歌が流れている。その歌を口ずさみながら、沙羅は温まったストレートヘアアイロンを髪の毛の裾から毛先に向けて伸ばしていった。熱が髪の毛を整えてくれて、サラサラストレートになった。
 それから、頭頂部の髪の毛をストレートヘアアイロンで挟んで、また毛先に向かって伸ばしていく。少し痛んだ髪の毛がチリチリと熱で音を立てながら伸びていく。
 
 沙羅の耳にはキュービックジルコニアのピアスが6個開いている。中学三年の終わりに、安全ピンで耳たぶの後ろに消しゴムを当ててブスッと刺して開けた。胸元には、彼氏が買ってくれたティファニーのハートモチーフのペンダントをしている。
 
これでも案外真面目に生きてると思う。沙羅は誰に言うでもなく、独り言を言った。だって、高校を出てからすぐ洋服の販売員のアルバイトを始めたし、自分の生活費は自分で稼いでいる。
 他の友達の中には、援助交際をしている子もいるから、高校までに援助交際をするのを辞めた沙羅は自分では結構偉いと思っている。
 
 髪の毛にヘアアイロンをかけ終わって、沙羅はピチピチのミニTを着てストレッチジーンズを履いた。勿論、パンプスは10cmヒールでスタイルも綺麗に見える。
 プラダの黒のリュックを背負えば、出掛ける準備はOKだ。
 
 ドアを開けて階段をカンカンと降りる。お店に向かう道すがら洋服の売り上げの目標について、どうしたら売れるか考えていた。太陽は、そろそろ夏日に近くなってきて5月だというのに眩しい日差しが差し込んでくる。
 まだ、希望はある。この世界で生きる意味はある。そんな風に沙羅は思っていた。友達の中には自殺した子もいた。上手く学校や親と馴染めなくて、屋上から飛び降り自殺をした。呆気なかった。沙羅は前の日にその子と電話で話していた。
「お父さんに殴られたの?」
沙羅が聞くと、
「大丈夫よ、大丈夫」
その子はよくそう答えた。それは彼女の口癖だった。それでも、やっぱり耐えきれなかったんだろう。
 前向きに生きることがどうしてこんなに大変なんだろう。沙羅の頭ではわからなかったけど、ともかく生きなくてはという想いだけは強かった。
 沙羅は母子家庭で、父親のDVから母親が沙羅を連れてシェルターに避難して、それから都営住宅を探して今暮らしている。だから、母親には苦労はかけたくない。そう思っていた。
 
 最寄駅が見えてきた。
今日も頑張るぞ!沙羅はカツカツと颯爽にパンプスの歩みを進めていった。
 

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エレクトラの食卓

冷蔵庫のいちばん奥にある
母が隠した果物
銀色の皮をむくと
父の写真が詰まっていた
キッチンの壁紙は夜ごと書き換えられ
朝には別の記憶が貼られている
私と妹は一つの椅子に座り
少しずつ大人のふりをしていった

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掌編「凪の重力」

 十一月の瀬戸内海は、夕暮れ時になると空も海も区別がつかないほど深い灰色に溶け合う。
 村上家の食卓に家族全員が揃ったのは、由紀が三歳の勇気を連れて戻ってきて、三日目の夜のことだった。それが、家族全員で箸を持った、最後の夜になった。
 食卓の中央には、皿の縁から血が滴るような真鯛の刺身と、砂糖と醤油で真っ黒に炊かれたメバルの煮付けが並んでいる。
「沖の生簀、また網が破れとったぞ。あの潮の速さじゃあ、持たんのう」
 父の丈晴が、酒に焼けた声で言った。視線は常にテレビの気象情報か、手元のコップに向けられている。
「……明日の朝、上げにいくわ。止まっとる間にやらんと間に合わん」
 兄の勝之が、妹の方を一度も見ずに吐き捨てるように言った。三十四歳、独身。潮風に晒されて岩のように固まったその表情には、妹がなぜ都会で挫折し、なぜ夜逃げ同然で戻ってきたのかを問う気配など微塵もない。彼らにとって、世界は海が時化るか、凪ぐか、その二択でしか構成されていなかった。
「勇気くん、ほら。おばあちゃんが剥いたカキよ。栄養つけんと」
 母の清美が、勇気の小さな口に強引に箸を突っ込む。清美の指先は、長年のカキ打ち作業で分厚く硬くなり、黄色く変色していた。
「この子は手が綺麗ねぇ。丈晴さんの若い頃にそっくり。ねぇ、お義母さん」
 清美が、隣に座る姑のあさに顔を向けた。あさは、濁った瞳を勇気に向け、細い指でその頬を執拗に撫で回す。
「ほうね、ほうね。この子は島の子になるんよ。海苔の種付け、見せてやらんといけん。海がこの子を育ててくれるわ」
 由紀は、自分の皿にある鯛の刺身から、目を離せずにいた。
 父と兄は海を語り、母と祖母は子供を語る。
 由紀は、自分が都会で磨いてきたはずの言葉が、砂のように崩れていくのを感じていた。
「……もう、ええね。勇気」
 由紀が絞り出した唯一の言葉に、誰からも返答はなかった。ただ、換気扇の鈍い唸りだけが、不自然なほど大きく響いていた。
 夜、由紀は勇気を抱いて、裏手の堤防に立った。
 波の音はしない。瀬戸内の海は、巨大な水溜まりのように静まり返り、ただ粘り気のある闇を湛えている。
 対岸の街の灯りが、はるか遠くで瞬いている。かつて自分が呼吸していたはずの場所。
 勇気の体温だけが、腕の中で唯一の生々しい現実として伝わってくる。
 ただ、この澱んだ空気の中に、重力に従って沈んでいるだけ。
 由紀は海を見た。
 ここからどこへ行くべきか、何をすべきか。
 決断の欠片も、この暗い海には浮かんでいなかった。
 ただ、勇気を抱きしめる力を、少しだけ強める。
 何も決めないまま、ただ、寄せては返さない静寂を、吸い込み続けた。

午前四時。
 海と空の境界が、ようやく紫がかった灰色に解け始める頃、由紀は清美の背中を追って家を出た。
 勇気はまだ、あさの布団の中で眠っている。その寝顔を確認することさえ、許されないような速度で朝は動き出していた。
 カキ打ち場は、海岸沿いに並ぶプレハブの建物だった。
 扉を開けた瞬間、冷え切った湿気と、えぐみのある潮の匂いが肺の奥まで突き刺さる。
 そこには、二十人ほどの女たちがいた。
 誰も由紀を見ない。挨拶も、紹介もない。
 ただ、ゴム前掛けの擦れる音と、暖房代わりのラジオから流れる古い歌謡曲、そして、コンクリートの床を叩く水の音だけが支配している。
「そこ、座り」
 清美が顎で示したのは、作業台の端だった。
 由紀の前に、山盛りのカキが積まれた籠が置かれる。
 隣の席に座る老婆が、慣れた手つきでカキの殻を剥き始めた。
 カキ打ち用の小さな金具が殻の隙間を抉り、肉を切り離す。
 カツ、カツ、カツ。
 一定の、そして無慈悲なまでのリズム。
 そこには「都会で何をしていたか」を問う言葉も、「三十二歳の人生」を憐れむ視線もない。
「……おはようございます」
 由紀が絞り出した声は、隣の老婆の金具が殻を叩く音にかき消された。
 老婆は顔も上げず、ただ機械のように手を動かし続けている。
 由紀にとって、それは無視よりも残酷な「不在の証明」だった。
 ここでは、言葉を話す口は必要ない。
 必要なのは、泥にまみれた殻を割り、白い肉を取り出す指先だけだ。
 清美から手渡された金具は、驚くほど冷たく、重かった。
 由紀は、都会でキーボードを叩いていた指を、泥と海水の混じった塊に突っ込む。
 軍手越しに伝わる、殻のざらついた感触。
 一粒、二粒と剥いていくうちに、手の感覚は麻痺し、爪の間には消えない黒い汚れが入り込んでいく。
「おい、新入り。水、止めな」
 背後から、主語のない指示が飛んできた。
 由紀は反射的に立ち上がり、蛇口を締める。
 指示を出した女は、由紀の顔を見ることなく、再び自分の作業台に戻っていった。
 由紀という名前は、ここでは一度も呼ばれない。
 「新入り」
 「そこ」
 「あんた」
 記号として処理されるたびに、由紀は自分が一枚ずつ、薄皮を剥がされるように消えていくのを感じていた。
 昼前、作業台に突っ伏したくなるような疲労の中で、由紀はふと自分の手を見た。
 泥と海水で汚れ、生臭い匂いを放つその手は、昨夜、勇気の頬を撫でた手と同じものだ。
 けれど、今のこの手には、何の物語も宿っていない。
 ただ、次から次へと運ばれてくる「死んだ命」を剥き出しにするための、装置。
 ラジオの音が止まり、作業場に一瞬の静寂が訪れる。
 窓の外には、冬の鈍い光を反射する瀬戸内の海が、どこまでも平坦に広がっていた。
 昨夜の食卓で父が語った海。
 祖母が勇気を繋ぎ止めようとした海。
 その巨大な機構の一部として、自分は今、確かに組み込まれている。
 逃げ出したかった都会。
 戻ってきてしまった島。
 そのどちらにも、自分の名前を呼ぶ声はもう届かない。
 由紀は、再び金具を握り直した。
 痛む指先で、次の殻を掴む。
 カツ。
 冷たい金属が、硬い殻を抉る音がした。

 再び、堤防の上に立っていた。
 勇気の体温が、厚くなった軍手越しの手のひらに伝わってくる。
 潮が引いている。
 昼間、カキ打ち場で嫌というほど嗅いだあの匂いが、夜の冷気に混じって鼻を突いた。かつては忌々しかったその匂いが、今はただの、剥がしようのない生活の成分としてそこにある。
 海は、相変わらず動かない。
 瀬戸内の凪は、すべてを飲み込み、すべてを鏡のように跳ね返す。
 対岸の街の灯りは、昨夜よりもさらに遠く、現実味を失って見えた。あそこにはもう、由紀という名前を呼ぶ場所も、由紀という記号を必要とする機構も残っていない。
 腕の中の勇気が、小さく身じろぎをした。
 あさが言った「この子は島の子になる」という言葉が、呪いのように、あるいは祝福のように、暗い水面に浮かんでは消える。
 この子は、この凪いだ海を、何の疑いもなく自分の世界として受け入れていくのだろう。
 由紀の指先には、まだカキの殻を抉ったときの冷たい振動が残っている。
 再出発ではない。
 ここを居場所と定めたわけでもない。
 ただ、重力に従って、ここに留まっている。
 逃げ出すための気力も、留まるための覚悟も、今の由紀には等しく欠落していた。
「……勇気」
 呼んでみたが、答えはない。
 ただ、温かい塊を抱いている。
 その重みだけが、今の由紀がこの地上に繋ぎ止められている、唯一の理由だった。
 明日も、午前四時に起きる。
 家を出て、名前のない手になり、言葉のない時間を過ごす。
 そしてまた、この重苦しい夜がやってくる。
 由紀は海を見た。
 暗い水面は、何も答えない。
 ただ、果てしない静寂が、足元から這い上がってくる。
 由紀は、勇気を抱く腕の力を、変えなかった。
 強くも、弱くもせず、ただそのままの重さを受け入れた。
 何も決めない。
 何も願わない。
 そうして、ただ、次の呼吸が訪れるのを待った。

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ともだちのお父さん

「昔むかし虎がタバコを吸っていたころ」
あなたがしてくれる外国のお話に
夏過ぎの雨音を聴くように夢中になった
とにかくお互いに渇いていた
星のサイダー 表音文字のうるおい
あなたの黒い髪 
懐かしいもののすべて

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即時一杯の飯に如かず②


 第二話「朝ごはん」

 俺は趣味でキッチンに立つ。
 毎日の日課で弁当も作る、大袈裟にいえば料理研究家だ。客人を迎えてもそれは変わらず、冷蔵庫から北海道産大豆使用の白みそを取り出して一言。

 「白鳥、お前なぁ……」
 「お説教はもういいです。ちゃんと責任取ってくださいね」
 「何もしてない」
 「嘘、何もしてない証拠あるんですか?」

 そんなものどこにも無い。
 布団に潜り込んでからの出来事は伏せるとして……ハワイコナが苦くて飲めないと不機嫌をまき散らす白鳥の前に皿を並べる。
 目玉焼き、ショルダーベーコンの素焼き
 ストックしておいた作り置きに、納豆、キムチ。
 無難な朝食を前にして「いただきます」手を合わせてから箸を取る。

 「料理上手いんだね」
 「趣味みたいなもんだ。おい」
 「なに?」
 「納豆はもっと混ぜろ。最低30回、空気を含ませた方がマイルドな味になる」

 手本となる器の中身を覗き込む素直な様子に、反射的に頷いてみせる。
 箸の使い方がなってない。
 握るな、寄せるな。
 現代人の孤食に歯止めが利かないのは親の躾の範囲じゃないとしてもこれは酷い。余所ン家で一晩世話になっておきながら未だお礼の一言も無しに皿に口をつける威勢のいい食べっぷり、俺より頭二つ分小さいのに随分な貫禄だ。
 茶碗に炊飯器の米全部入れたと思われる様子の白鳥が着席、また食べ始める。

 「キムチまだある?」
 「無い。これ食べていいぞ」

 大袈裟にして見せるけど最初から貰う気でいたのか、天然過ぎてもうわからん。

 「いいなぁ、絢斗の彼氏になったら毎日美味しいご飯食べれて」

 あ、絢……下の名前を呼び捨てにされて、視線が合わない。
 ゆとり世代を弊害とは言いたくないが、彼女ではなく彼氏、どうあっても自分基準で何の脈絡もなく話し始めるモンスターは狙った獲物を残さず食べて舌なめずり、米粒を舌で浚っていく。
 見ないようにしたが、不覚にも箸が止まってしまった。

 「洗い物は俺がするよ。一食一泊の恩義、だっけ」
 「いい。片付けは俺がやる」
 「じゃあシャワー浴びてきてもいい?それとも……」

 前に回り込んで胸から下に滑り落ちる指に咳払いをひとつ、逃げ腰でシンクの前に立った。やめろ、そんな目で俺を見るな。キムチ納豆食った男とキスはご免だ。

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小さな夏の牛

ちりちりと刺す日差しが むずがゆく感じる日
とある山荘に いきました
野花が広がる 高原に
ぽつりぽつりと うごめく影
近づいてみると つぶらな瞳でこちらを見てきます

私の目を ただ見る牛や
手のにおいを かぐ牛
私の存在などどうでもよい
そんなふうにいる牛も
いました

私はそんな牛たちをながめ
ただぼんやりと
人のいる現世に戻りたくはないと 感じながら

心地よい関心と無関心の中で
深呼吸をしました

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しらやまさんのこと 4

卒園式ではいつも以上に
園長先生のお話 長いね
と うちの子供が気にかかる
寝てはいないか
ちょっかい出してはいないか
そんな心配もなんのその
みんなちんまりと神妙な面もちで

ときどき奇声を発する子を
とても優しいお母さんがふんわりと
けっしてぎゅっとではなく
ふんわりと

その中でR君は何を思っているんだろう
知らない世界を旅しているようで
窓の向こうの山々は
そろそろ緑支度をはじめるけど
そのまた向こうの白山さんは
五月までは白いままで
ときどきそっちの方を向いてRくんは

おおう

と声を発する
彼の世界は
あそこにも繋がっているのだろう

さてさて
わが子のクラスは
どうしてそんなに神妙な顔をしていたのか
と思ったら

Rくん ぼくたちはみんな
Rくんの わらったかおが
だいすき 
だよ

と特別ではない特別な言葉を
R君に送るためだったようで
そんなときに限って
Rくんは何も言わない
しばらくして
また何ごともなかったように
いくつもの世界に遊びに行ってしまう

そんな子が同じクラスにいたこと
何年も知らなかったとは
パパとしては情けないよな
と思った帰り道で

まんなかぐみさんまで
Rくんはずっと とじこもっとったけど
おおきいぐみになってからは
いっしょにあそんだげん

でも しょうがっこうは
ちがうげん

という息子は
もう用事のなくなってしまった
園を降りかえる
その向こうには
いつもより輝く白山さん


特別ではない特別なこと
みんな小さい胸を痛めながら
大きくなっていくんだろうか

どこからともなく
高い声が聞こえてきた

Rくん またわらっとる

という息子と一緒に
涙をぬぐった


  

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無題

別に詩なんて
書けなくてもよかった
ただ
何気ない出来事を
くだらない冗談を
笑われるような心配事を
しょーもないわがままを
話したいと思える
そんな誰かが
いてほしかった
ただ、それだけ

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生活のメモ

生活のメモ 2025年6月13日 19:22

天気雨が訪れ、男達が脚立を一斉にしまいこんだとき、傘をさすのを省略する男逹の恋愛がにおった。

呟く言葉に、たくさんの責任が含まれる時間、雨が刺繍するものは何か。

一粒ずつ、過去に変えられた虚空に時間がわだかまることを赦されて、

誰の言葉も借りずに、正確な罪の意識で立ち止まると、朗読の予兆が幾筋も通りすぎた。

性への祈りは濃く積み重なる。怖れたい。その一筋の個性を。

誰もが物語になりたかったとしても、鼓動のような無意識でしか、たしかにそこにいた自分を置くことが、ゆるされなかった人々がいたことを。

封を、切る。

素朴な風が、抜け出せずに、原色の温度を、保っていた。しまわれている空気は、存在しつづける過去の季節で、ふんだんな夜明けで、満ちていた。

自分の、幼かったころの乾いた口には、古い映画が入っていて冷静な、誤解のまま大人になった。

次々新たな妥協を、おぼえる物語をたどっている。

眼裏の憎しみで、何度も他人を死なせる。

言葉はそれを発した瞬間に、言葉の輪郭から、少しずつこぼれている。文脈に支えられながらまだ、脈を打とうとする、その言葉の妥協に似ているもの。

友だちができたら、柿を盗むのを、みせたかった

新しい後悔を味わった後にながめる、湖面の豊かさ。

浅瀬に足を浸していると、いつかの雨台風の名残を、丁寧に感覚する。

白内障に、そっと寄り添った月日がながれた。

悲しいという気持ちで、水底が深くなり、野鳥の排泄物が溶けて、些末な罪が小さく許される時間が訪れる。

後悔は、白鷺の姿で寄り添っている。

鷺の脚は、川原で読書できる水温を、探しながら時間のように静物と反射の間に立ち、肺呼吸からはじまる古典をなぞろうとする。

明日には今よりも軽い吐息の、雨月物語が朗読されるだろう。

夏風邪の、嘔吐の感覚を通り越したさきで、いくつもの古典を読み終えたい。

些細な、生活の音があって、はじめて静寂が完成する。

誰の手紙の文脈にも、流木がはさまれている。年月の、さまざまな死の温もりを内包しながら、とても自由な不完全が、美しいと思えた。

氾濫した河川をながされて流木は、心を込めて溺れていた。流木の、嗚咽の記憶で、今も河川が流れている。

紙の端を擦ってできた切り傷に、少女を置き去りにしたのは、いつの頃だっただろうか。それからはじめて、自分の部屋に、異性を招き入れたのは。

まもなくその部屋に、異性の不在がうまれて、はじめて二つの性が残っていると感じた。本棚に、読み飽きた本を、元と違う場所に戻す手つき。本棚の、その押し出された空間にも、それぞれの性器が、残っていた。

道草してるときの後悔が、青空の色を濃くしていく。自分からはみ出してしまった自分を探す小さな旅。

レーズン嫌いをおもてに出さないようにしながら、騙す、という意味が、女の子の身体に沁みていく。

栞に、していた紙を失くした。目が、脈絡を追う。唐突を奪われて、死体が余計に生々しい

失くしていた栞が見つかる。自分の都合と、文章の意思に挟まれて、呼吸ができなかった

誰の言葉も借りずに、罪の意識と、食欲の狭間で立ち止まる。言葉の私は、自分の身体を、待つことになっている

冬の従姉。朝露。乱視のなかの曖昧

無人駅で扉が開く。止まった時間が吹き込んでくる

そのとき乗客は、来に生きることができない

駅員の、身体から吐息とともに、時計が吐き出されて、身体は少年に変わっている

新しい時計だけ進むたび、眺めてきた古い時計の記憶が、辛うじて時間をつくる

異性の、指紋がまだ身体に、残っているのだろうか

わたしの精神が、その指先に張り付けられて、蜜蜂があおる他家受粉のように、全くの他人に指紋が移されてていく

左利きで、話す人がいる。それだけで詩になる

文庫を読む首の角度。人の黙読の呼吸には、たくさん種類があるのかもしれない

文脈が、詩の看守になる前に、言葉一つ一つの罪を、赦してみる

自分からはみ出そうとする自分へ言葉が追いつかない

木々がなければ森林に虚空の個性は生まれなかった

枝葉が伸びる。希望のかたちが異なる

行間に雨の臭いが入りこむ。哺乳類図鑑に出てくる動物の体毛が、例外なく濡れている

やがて指先でする労働から遺骨になる

紙を、同じ二つに切り離さなければならないときにつける強い折り目のなかに、夏の子どもの声が聞こえる

異性との約束が吐き出されたら、酸素が少なくなった

たくさんの、忘れる

結露した水滴が重なり流れる短い詩集へ、嫌いな理屈が先に行き着いている

水は水を、無くして探している内に、水の中で、溺れてしまう。

日記の脱字のように、わたしのなかだけで零れるだろう。

自分を置き忘れたバスの乗り方。かけ離れた自分自身が、知らない駅に向かってしまう。

文庫本を開いている人々の、その物語の隣にいる

ものがたりで、ひしめいている皮膚に触れる

しろく、ふれる。ひらがなで、起こす。とたんに、ハジケル、

さっきまで他人がしていた手袋のなかの、一人称の温さを覚えている。

他の、金魚の死骸のそばを泳いでいる。死を、自分の身体に紡ぐ金魚は、死体から編まれる刺繍かもしれない。

何もおそれずに、水面に向かい、つぎの季節の星座を、放尿する。

したのなまえでよんでいいですか、の一文が咽で留まり永遠に声にならない。

瑞々しく、はす向かいの家、と説明するときの気恥ずかしさを、身体に取り入れたばかり

夏の寝息で、無人駅が佇む

幾人もの甥が電車をおりると、まるで水みたいに眼鏡を失くしている

夏の終わりは忘れものを、律儀に存在させていることを知る。忘れんぼうの記憶からも独立して誰の所有格も、はりつかずに漂泊しながら。

やがて存在が、輪郭からしだいにずれる季節がおとずれる

次の駅まで切符を、きつく持ちつづける汗ばんだ指先の、記憶がそのまま残されている。

レーズン嫌いだという本質を、おもてにださないようにしている。

例えば、空想に大きく覆われた微かな実在であるわたしは、中耳炎のおもい痛みのなかでも、自分が自分であることを妥協している。

切り傷の遅れてくる痛みを思う。最適な述語は、書き終えてから見つかる

夕刊は、砂の香りをさせて乾いていた。皆、生きているのさえ忘れている。

この大声の無言を誰に耳打ちすれば良いか

図鑑でうぐいすの種類を調べたくなる静寂に満ちたこの近眼の動物にとって、死が穏やかであるはずがない

男の、架空の子宮のなかに、想像の離島が、身ごもられている。男は産まれかわり、何度も溺死する。

離島の雨季の水たまりは、地上からかけ離れている。

男は、水底のように読書をする。

男は、他人と交わらない透明水彩を、薄く重ね続ける。孤独が温められる。続けざまに孵化する。

その水はいかなるものの腎臓も、透過していない。

比喩が、流動する。とどまらないこと。呼吸と空気が繋がる。肺に森林を採り入れて微睡む。

初夏を、身体に塗りたくった甥達の集団が日向に、自分の輪郭を借りようとしている。

誰の所有もない椅子が置かれて、その場所をひろげている。

この手から、ひと続きにつながる異性にもある臓器のなかに、内包する時間を、砂鉄の原理で集める

偏頭痛を、水に浮かべる

水中から見る、空中は現実があり余り過ぎる。異性特有の病気にばかりみとれる

散文にすると、現実の生が、数歩前を歩いているとわかる。言葉は常に完了している

カーディガンから、月が大量に生まれる。

昨日の雪の、森林のなかにも、新しい童話が、生まれているに違いない。

小さな果物泥棒たちの生命が、地上と近い。✢飲み残しのコーヒーには、昨日が溶けすぎて、鍵束のように冷めている。

ボビンをつけかえるとき、微風みたいに唇が薄くなる。気をつかった嘘でさえも、ゆるしたくない。

無人駅から乗った男が、都市の駅に近づくにつれ、男性に変わっていく

良いお葬式になりますように、と祈られる。ハンカチの用意を、怠れない。幸せな死に方の幾つかを、皆が知っている。

道の上で、迷っている。道を踏んでも、道なりであり、道の先でも道なりであり、道なりが続いている

森林の冷気は、その手のひら全体で子どものお腹を、時計回りに円を描くようにさする母の記憶を、想起させた

雨の日の小窓に、鹿を結露させる

クレヨンのにおいがまだ、押し入れに残っている。正しいことであれば他人を傷つけても良い

涼しくても汗疹が広がっていた。湧き水を見せてくれた父

違う学校だから、クーピーの中身の配列もわずかに違う。

女の子の、髪の毛の一筋にも、虐待が絡まり、美しかった。

桃の、果肉を切る。中心を避けるやり方。結論が出ない前に、飲む

言葉が、鳥の形で歩いているのか。鳥が、言葉を啄んでいるのか

移動動物園がこの街に来たことがあった。わたしは街中の人の、年下になった

奇数を射抜く。偶数をかき分ける

少年の頃、口紅をつけた。言葉にない経験がある

身体が、硬くなっていた。言葉に、政治が入り込んだのだとわかった

手紙は、風の金縛りかもしれなかった。未来の誰かに向けて、過去のわたしが、さらに過去の自分を手離し、ものがたり、とよんでみる

きっと、わたしだけが、殺していい沢蟹だった

出窓の光からそっと、読書を引き入れる

蝶を所有するということは、虚空に骨を通すことだ

11月が、木の根に残っている。掘り起こして触れてみると11月が散り、一瞬で今になる。去年のような人に会う

蹴られた石ころのように諦めている。妥協の仕方だけ、忘れることがない。

犬について、考える。空き巣がいないと成立しない。一度、わたしが、空き巣になってみる。

多くの人が死んだことが、薄くなった地名に滲んでいる

男の人達の労働が、山道に消えていく

古い机の傷で思い出す。自分の手も、単純な暴力に繋がっているということ

探す、行為を見つけていた。空を、揺り籠からのぞく。胃のなかまで空で満たされる

明け方の雨で、梨の花がおちました

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海になればいい


陽が昇るのを待って 僕らはあてもなく電車に乗った
まだ人気はなく静かで 
ただ薄く空を覆った雲だけが車内を包み込んでいた


僕らは互いに黙って 流れていく景色を呆然と眺めていた
この景色の中に なにもかも捨てることが出来たなら
そんなことを考えてみたりしたけど
多分それはとても無意味なことだと 
ひとりごちて 
小さなため息をひとつ 
窓が一瞬だけ白く曇った




僕にとって毎日は ただ消費していくだけの
退屈極まりないものだった
特に何か取り柄があるわけでもない僕は
与えられる仕事を淡々と こなしていくだけで
それで褒められるわけでもなければ 
決して怒られるわけでもない

毎朝ギュウギュウ詰めの電車に押し込まれ
痴漢に間違われないように 細心の注意を払い
残業を頼まれれば いやな顏もせずにひきうけて

帰りの電車 またもギュウギュウ詰めに揺られながら
スーパーによって弁当と缶酎ハイを買って帰る
テレビをつけてみても 面白くもない番組ばかりだし
ネットを開けば 芸能人の不倫かスキャンダル
誰かの誹謗中傷ばかりだ
缶酎ハイの蓋を開け 弁当に箸をつける
味なんかよくわからない ただ胃に流し込んでるだけ

明日も明後日も 日々は続くから
風呂入るのめんどくさいな
朝起きたら入るか

今日も疲れた 昨日も一昨日もずっと疲れてる
生きがいってなんだろうな
昔はそんなことも真剣に悩んだ時期もあったけど
いまはもう どうでもいい
それより早く寝るとしよう




初めて君と出逢ったのは
同僚に連れられて行った 
クラシック音楽と香しい珈琲の香り漂う
大正浪漫漂う喫茶店だった
ステンドグラスが嵌め込まれた窓際の隅の席で
なにやら難しそうな本を
君は読みふけっていたね

どこか他人を拒絶しているかのような
君の周りには見えない膜のようなものが張り巡らされてるような
何故だかわからないけど そんな気がしたのをよく覚えてる

僕は何を思ったか そんな君に声を掛けたんだったね
いつもこの店に来てるの? 
ずいぶん難しそうな本を読んでるねって

君はニッコリと微笑みながら
本を読んでいるときは 生きてることを忘れられるのよ
あなたは生きてるってことを忘れることはあって?

僕はてっきり 君は何かの宗教にでも入ってるのかと思ったし
いきなりそんな質問するから 驚いてしまって
咄嗟に うん、まあそうだね 
なんて適当にごまかしたら

君は大層がっかりしたように
そう それは残念だわ
生きてるってこと忘れるくらい 
生きてられるなんてしあわせねって

君はしあわせじゃないの? 
何か悩みごとがあるとか?

悩みのない人間なんていやしないわ
いまの生活に満足している人間だってきっと
産まれたばかりの赤ん坊は欲のかたまりだって説もあるらしいわよ

愛欲性欲食欲睡眠欲金銭欲独占欲
この世の中 誰も彼もみんな
自分の欲望を満たしたくてたまらないニンゲンばかり
人生なんて所詮 しあわせの奪い合いじゃない
ねえ ニンゲンって生きてるうちは不完全で未完成な生き物なの
死んで初めて完全に完成されるのよ




僕はいつの間にか 完全に君のペースに巻き込まれてしまっていた
人生なんてしあわせの奪い合い、か
たしかにそうかもしれないな

うちは他と比べれば まあまあフツーの家だったと思うし
両親も決して仲が悪いわけでもなかったし 
けど

父親は他に若い女がいたのを 僕は知っていたし
母親はなにに使うんだかよくわからないものを次々買いまくって
山のような請求書 督促状が届いてて
それでよく 二人が夜中に言い争っていた声は 
いまでも耳にこびりついて離れない

大人ってしょうもないくだらないって 
子どもながらそう感じていたっけ
けど 大人の言うことに逆らったことなんか
ただの一度もなかったし
逆らったって何もいいコトなんかないっていうのも 
なぜだろうか よくわかっていた




将来なりたいものはなんですか
僕には将来なりたいものなんてなにもなかった
友だちたちはそれぞれ 
サッカー選手に宇宙飛行士に
医者に弁護士に 
漫画家 芸能人と
目をキラキラ輝かせながら語っていたけど
夢とか希望とか未来とかそういうの
僕にはちょっとよくわからなかった
解らないままに こんな大人になってしまった




思えば 全くもってつまらない人生
自分でも笑えてくるな
日々 会社と家を往復するだけ
最近笑ったのはいつだったっけ
泣いたのはいつだったかな
生きてることを忘れるくらい
僕には生きてる実感がまるでなかった
云わば 生きる屍そのもの

そんな日々をどうにか変えたくて
資格の勉強してみたり
慣れない料理にチャレンジしてみたり
普段 自分からはなかなか開けない心の扉を
勇気を振り絞って 開けてみたりしていたあの頃
まだなにか変えられるんじゃないかと
柄にもなく



はじめて本気で好きになった女の人があった
でも その人にはもう別の相手がいて
それが 同期入社のアイツだった
アイツは顔もいいしオシャレだし
愛嬌もよく ユーモアのセンスも抜群で
人望も厚く 仕事もできる
本当にいい奴だ
いい奴過ぎて むしろキライになりそうなくらい

そうだよな そうだよな
人に選ばれるニンゲンてのは
愛されるニンゲンてのはきっと
こういう奴のことを云うのだろう
別に嫉妬するだとか羨ましいだとか
そんなことは思わないよ
思えるはずもない
ただ静かに いつものように
しょうがない しょうがないと
自分を納得させるクセを
発動させるだけ



あるとき 今日で人生ログアウトするからと
突然 古い友人からLINE
もう耐えられない
ログアウトすることで
あの人を後悔させてやりたい


話を聞くことくらいしか出来なかったし
それだけの意思を止める力も
もちろん持ち合わせていない僕には
どうすることも出来ず
それでも ケーサツに電話した方がいいだろうか
どこか相談出来るところはないか など
心がザワついて離れず

数日後 その友人からまたLINE
お金貸してくれない?

人生ログアウトの話はどこへ行ったのやら
そして こうも続く
今度引っ越すことにしたから
緊急連絡先をお願い

あゝ アレは僕からお金を引っ張るための芝居だったのか
切羽詰まってる体にすれば
どうにかなるとでも?

なにか頼みごとがあるときばかり
まるで砂糖に群がる蟻ん子みたいに
街灯に群がる虫たちみたいに
なぜだかいつも 僕に近寄ってくる
用済みとあらば サッサと何処かへ消えて行ってしまう




いい人っていうのはね
「どうでもいい」人っていう意味なのよ


くだらない
全くもってくだらない




あなた 死んでしまいたいとは思わない?
君の口からそんな言葉が出てきたのは
ある意味 必然なことだったかもしれない
僕ももう この世界に未練なんかとっくに失っていたし
行きずりの女と心中なんて
昔の文豪みたいでちょっとカッコいいじゃないか
僕は君の提案に乗っかることにした
そうしたら 不思議なことに
いままでに感じたことのないワクワクした気持ちが
心の奥底から湧いてくるのがわかって少し困った




君も僕も精神科に通院歴があった
クスリの処方が変わるたびに 
余ってしまったクスリをひそかに溜め込んでいたのだが
彼女はどうやら複数の病院をドクターショッピングしており
かなりの量のクスリを溜め込んでいることがわかった
それから 度数のキツい酒をたくさん買い込んだ
万が一生き残ってしまうことのないように なんて笑う君が
ゾッとするほど恐ろしく 美しく見えた




君はチョコレートを齧りながら 過ぎてゆく景色を眺めている
こんなふうに電車に揺られるのも
流れていく景色を眺めているのも
これが最後だと思うと なんだか無性に愛おしくも感じられた
ふいに君が 後悔してない?って訊くから
僕は何も言わず ただかぶりを横に振った






冷たい冬の海がいい
ただ波の音しか聞こえない 
きれいな海の町へ行こう
そして暗くなるまで 波の音の中で眠ろう
霧雨が降ればいいね
僕らのもろくこわれそうな命のような
やさしい雨が降ればいいね
風は冷たい方がいい
ふたり疲れた躰寄せ合って
海の中で飽和しよう
やさしく そっと







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色無潤雨

やまをもかくす しろいあめ
かわいたはだは めぶくまえ
いろなきからだ かたいめを
わずかにひらく みずをえて

うぶげのあいだ あおいきり
こまかなたまの つらなりに
かぜなきゆれの ふるえさえ
まもなくひらく いろをえて


(2/26 二連八行に改稿)

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へんしんじゅつ


                 昨日は男の子だった。
 今日は女性になるの
   
      おまえは蝙蝠か  渇きを嫌うのような蛇の目か

それでも 明日はこころを変えない
 
                       

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主張強めの文芸投稿サイト運営者日記(2月25日分)B-REVIEWの消滅について


現代詩投稿サイトB-REVIEWが突如、機能を停止した。投稿できなくなっただけでなく、アーカイブすら閲覧できない。7〜8年前、立ち上げに関わった人間として、何も思うところがないと言えば嘘になる。アーカイブが見られなくなったこと自体は残念だ。しかし正直に言えば、どこかホッとしている自分もいる。


もともとB-REVIEWは、マナー重視の場として設計され、ナイーブな人を包摂することにこそ存在意義があり、代々それを引き継いできたはずだった。それが、乗っ取った運営者によって方針が大きく変更され、いつの間にか「罵倒上等」「好き放題やれる」ことが訴求点のようになった。屋号は同じ。しかし中身は正反対。私に至っては、かなりの誹謗中傷を受け殺害予告まで出されたが、サイト内では当然のごとく不問に付されていた。正反対の運営をやりたいなら、別のサイトを一から作るのが筋ではないだろうか。おそらくはシステムやアーカイブを使いたかったのだろう。私から言わせれば、それは窃盗に近い。


サイトが停止してから、この数日で新規登録者が急増している。まだ投稿を始めていない人も含め、相当数がこちらへ流れてきているのだと思う。運営としてはありがたい。同時に、一定の負荷とチャレンジがあることも覚悟しなければいけない。


B-REVIEWの終末期では、放言や罵倒、喧嘩を含め「好き放題やれる」こと自体が魅力として語られていた側面がある。そうした文化を出自とする人がこちらに来た場合、物足りなく感じるかもしれない。あるいは、周囲にストレスを与えるコミュニケーションを選ぶかもしれない。私はなるべく多くの方を包摂し楽しんで頂きたいと思っている。
しかし、頭を下げて「荒らしてもいいですから、他の方々に迷惑をかけていいですので、入ってきてください」と言うつもりはない。


私は、知る人は知っていると思うが、決して柔和なタイプではない。むしろ罵倒体質と言われれば否定はしない。粘着的にしつこく批判することもあるし、喧嘩っ早いところもある。私の描く「田伏正雄」は確実に私の人格の一面を表象している。だが、C-SPACEの書き手を罵倒して荒らして楽しみたいと思ったことは一度もない。運営だから我慢しているのではない。そもそもそういう欲求が湧かないのだ。荒れ野にして内輪で盛り上がるよりも、外に向かって広がる場を作るほうが、私には面白い。結局のところ、自分の場所だと思っていないからこそ、荒らして楽しめるのだと思う。


荒らすタイプの人間にはいくつかのパターンがある。長年この界隈で荒らしアカウントを続けてきた人には、奇妙な共通点がある。それは「荒らしてあげますよ」という謎の上から目線だ。好き放題書く人がいないと場は停滞する。退屈になる。風通しが悪くなる。だから私が罵倒も誹謗も含めて好き放題書いてあげますよ、というわけだ。当たり前だが、おととい来やがれ、としか言いようがない。無視して放置する者はいても、その上から目線に迎合して、頭を下げる運営者などいるはずがないではないか。


ちなみに、「私はときどき自分をコントロールできなくなるかもしれませんが、そのときは事前に注意いただけたら何とか修正しますので、BANしないでくださいね」などと事前に書く人はいない。もしそういう姿勢で望まれる方がいたら、その時点でその人は荒らしではなくなるだろう。場への挑戦や揺さぶりと判断すれば、基本は即BAN。ただし、対話や謝罪があれば、BANはすぐ解く。それ以外は、できるだけ参加者の自主性に委ねる。基本的にはこれまで通りのスタンスでやるつもりである。


B-REVIEWが消えた。狭い界隈の話ではあるが、一つの時代が終わったと言っていいのかもしれない。詩投稿機能のある掲示板を核とするサイトはもはや私たちしかいない。私たちは詩投稿サイトを標榜してはいない。ジャンルに縛られない文芸投稿サイトと自らを定義している。しかし、ネット詩の歴史はC-SPACEにバトンが手渡され、私たち以外には更新できるプレーヤーは他に見当たらない。

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批評・論考

まわる、まわる

冬芽ばかりの並木道を
蜂蜜色の髪の
少女が歩く
影踏みしながら
春色のコートで
くるりと回る
陽を浴びた芽は
すこし、背伸びする

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途方にくれる

むかしむかしあるところに
じいさんがこの世を去って
ばあさんが途方にくれていた
ばあさんもこの世を去って
犬のここあは途方にくれた
犬のここあが引き取られて
家は途方にくれた

遺品を片付けようと
じいさんとばあさんの家族が
家に訪れるようになって
家は余計に途方にくれた

その家も
今は更地になって
空き地には
不動産の看板が立てられた
看板は途方にくれていた
新しい家が建つと決まったからだ

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問わず語り/褐色の恋人はバラ色の夜に、穿つ。

 23th Feb 2026

 ああ、悩ましい。

 CWS利用を始めたのは昨年9月、わずか2カ月余りで運営からイエローカードが出た。
 ここにはここのルールがあって「コメントには気を付ける」これができないとサイト理由はできない。過去CWSを利用していた創作界隈のユーザーが離れて行った背景には、コメント等の不適切さが原因だったことは、まだ記憶に新しい。
 サイトの利用規約とは別に、運営/お知らせの欄に何点か利用する上での必要事項が記載されています。
 ここを読まないでサイト理由するのはトラブルの原因になるので、ご一読を。


 その内容を踏まえて、今日のエッセイは『お酒の話』にします。


 私はお酒をよく飲みます。
 病院や健康診断では飲酒について書く項目があるけど、ほぼ正確に埋める。しかも飲んでるお酒に関して「単式蒸留焼酎、本格焼酎乙類」など、ひらかながひとっつも出てこない字ずらと詳細を余白にびっちり書くキモい男。思えば初めてのバイトはカットモデルでした。

 美容業界のイベントに最年少として参加。
 衣装を着て、メイクをして、ステージの上で実際にカットした後にランウェイ。15の夜はその道のプロである多くの大人と関わり、教えられながら過ごした。
 最高に楽しかった一生の思い出を携えて、私は夜の世界で働きます。

 小さな町の繁盛店。

 最初は開店準備の掃除と配達の受け取り、滅多に鳴らない電話番でした。
 1か月ほどで、手順を覚えたらチャーム作りと板氷を割る作業。
 未成年がお酒を扱う店で働く上で、表(店)には出ないことを親から約束させられた。厨房から繋がるカウンターの中を通る作業は仕事上、仕方ないと許されたのでカウンターの中でオーダーを取って、顔馴染みの常連客からチップを貰う、ハートフルな接客を少しだけ。
 カウンターの向こう側、暗いホールで手が上がると反射神経で爪先立ちになる。
 まず、テーブルの配置を覚えて、今差し出されている指の数は何を意味しているのか。人の数なのか、酒の数なのか、客の入りを把握できないとカウンターの立ち位置は難しかったけどオーダーを覚えきることで解消された。
 例えば指が3本で「モスコ、ファジー、スクリュー、オールワンで。」と言われたら3番テーブルのオーダーが、モスコミュール、ファジーネーブル、スクリュードライバーを一杯ずつ。食べ物もこちらで用意するので、棚の上に決まった数のバスケットは常備しておくこと。ポッキーやスナック、乾物の補充をしつつ、先程のオーダーに合わせたグラスを予め並べておく。
 カクテルで使うグラスはショート、ロング、ロックの3種類。
 お酒の割合までは教えて貰えなかったけど、混雑時に会計など重なるとチーママが一瞬離れる際に作業の引継ぎとしてステアするくらいはやった。
 18になればシェイカーを扱えるようになり、カウンターは私の持ち場。
 フルーツを絞りながら、グラスに注いで提供。お酒の飲み方がわからないBAR初心者の言う曖昧さにも、具体的なニュアンスでお伝えして、接客しながらコースターを置いてからグラスを置く。お客様をみつめながら。
 大学に入ってすぐ、高時給のBAR勤務を選んだ。
 初手から黒いロングサロンの紐を、手元を見ないで綺麗に結べる制服の着こなし「飲食やってたの?」聞かれても、初めてだと笑って誤魔化してた。小さな頃から着物の角帯を結んでいたので、できない人が多い事に衝撃を受けたものです。
 新人バイトの中で群を抜いて、声が出る・接客が丁寧・混雑時に間違えずオーダーを捌けることからすぐカウンターに立って時給アップ。繁忙期はシフトを増やして、マネージャーとペアでフロア管理、会計で過不足無し。お客様はお酒が入っているので金額を間違えたり、大きな声を出すこともある。カード払いの機械トラブルによりお客様にご迷惑おかけすることもある中で、ケアレスミスを防ぐアイディアはコミュニケーションだと熟知していた私は、どうすればお客様が不快な思いをしないかに着目して接客を心掛けていました。対応の速さだけでは凌げない際は、間を作らないで簡単な質問を繋いで会話する。
 感謝の気持ちを込めて、エレベーターまでお見送り。
 その際、特定のお客様にはキスして「今度はいつ逢えるんだろう。でもすぐに逢えるよ、夢の中で。気を付けて」これが言えるようになると確変リピ率が激アツ。おじさんばっかり来るから「いい加減にしろよ」と注意されたけど、私は毎日が誕生日。お祝いに皆さん高級なお酒を飲んでくれる。有難いことに。
 店の知名度は当時の繁華街でも名の知れたもの、いわゆる『従業員が全員イケメン』カウンターに立てるのは顔採用された精鋭たちばかり。飲み屋って、そういう風潮あるよね。
 
 22歳で、歴5年。

 働く側が感じる忙しさ、お酒の知識と接客のクオリティを身に着けましたが、あくまでも働く為の術でお酒が好きで働いてるわけではなかった。
 飲み物として、美味しいお酒はある。
 当時、好きだったのは日本酒・新潟の雪椿。現代の日本酒はキレイなタイプが好まれるけど、昔の日本酒は甘くてまっ濃い。古酒にも果敢に挑戦するのは蒸留酒と比較して、醸造酒は「甘くて美味しい」ジャンルだと思っている、今でも。

 種類別に説明すると

 蒸留酒:ウイスキー・ブランデー・焼酎/40度前後の高アルコール
 醸造酒:ワイン・ビール・日本酒/15~20度

 リキュールも醸造酒に含まれます。
 これ、何が違うかというと「発酵させる」のが醸造酒。日本酒やワインの多くはタンクの中で造られるのをご存じですか?タンク内で発酵させるからです。ワインも瓶内発酵などの種類があります。
 そして「加水して」飲みやすいアルコール度数まで下げられていることが、醸造酒の特徴。
 日本酒も加水してアルコール度数が調整されているので私にとって、醸造酒は全て低アルコール類という認識です。

 日本酒についてもう少し詳しく説明すると、純米酒・吟醸酒・本醸造種の3種類。
 
 純米酒:米(酒造好適米)、米麹、水で造られたお酒。
 吟醸酒、本醸造種:米(酒造好適米)、米麹、水、醸造アルコールで造られたお酒。

 アル添が入ってると悪酔いするなど云われがちですが、原料は主にサトウキビで、日本酒において香りやキレなどの香味調整と品質を保つための要素。含有量によって名前が変わります。
 私が若い頃に好きだった雪椿は純米酒。
 最も純粋な日本酒と比較して、カクテルに使用するリキュールに含まれるアル添は凡そ6割。3割しか純粋なアルコールではない代物、を・・・・・・ですよ?
 蒸留酒ベースで、アルコールを継ぎ足していく。
 それがカクテルの正体です。
 想像してみてください。ウォッカのアルコール度数は40度以上、氷点下でも凍らない(冷えてとろみがつきなめらかな口当たりに変わる)ので冷凍庫保存が可能。話を戻して、先程のバ先のオーダーで、モスコミュールとスクリュードライバーの名前が出てきましたが、これはウォッカベースのカクテル代表格。
 アルコール度数がとても高いので、モスコ/ジンジャエールとライム。苦味のある炭酸とライムの香りでスッキリ。
 スクリュードライバー/オレンジジュース。カクテルの割合は酒1:ジュース3~4が基本なので、オレンジジュースの甘さで緩和されるキュートなバカンスハイが楽しめる一杯。
 ジュースで割らないと、ウォッカなんて飲めたものじゃない。

 しかし、私がウォッカベースで一番好きなカクテルの名前は「カミカゼ」スーパーユーロビートの曲でお馴染みのアイツでございます。

 ・ウォッカ
 ・コアントロー
 ・ライムジュース

 これを全て同じ量で氷を入れてシェイク。振り過ぎると泡立つので程よくスピード調整。ショートグラスに注ぎ、ライムを添えるのが一般的なレシピですが、自分で飲む時は氷を入れたグラスにウォッカとコアントロー同量を入れて軽くステア。仕上げにグラスの上から生のライム2/1個を手で握り潰して、そのままライムをグラスに突っ込む・・・・・・完成・・・・・・

 特攻野郎で、ご承知おきいただけますと幸いです。

 オレンジのビタースィートな風味が特徴的なコアントローは洋菓子作りにも使うので、常備。
 貴人グラスに少量入れて香りを愉しみ、消毒液のような刺激に舌が鋭く反応して、体内が活性化される。コアントローのアルコール度数は40度。サヴァランはラム酒やキッシュもいいけどコアントローをシロップに入れるのもおすすめ、お酒に弱い人は控えてください。

 BAR飲みするようになったのは、ここ数年。
 オーセンティックバーを営む方との出会いが始まりでした。彼は仕事に関してはプロフェッショナル、寡黙で正確な身のこなしから、生きている芸術品と讃えられていますが、最初はそんなこと知らなくて私は純粋にお酒を話しを楽しみました。別れ際、名刺を差し出され・・・・・・見覚えのある名前・・・・・・え?ご本人ですか。
 私と一緒にいる時は、饒舌でご機嫌。
 いつも楽しませてくれるけど、きっと気を使っているのでしょうね。
 私に特別を与えてくれて、自分が「いい男」である演出に事欠かない。
 それが彼の充実した満足感。褒めると疑ってかかる気質があるので大袈裟に喜ばない塩対応とロマンスを引き換えに、ザマッカラン12年シェリーオークを醸す。シェリー樽が好みなので、そうなるとなかなか種類が限られてくる。必然的にシングルモルトのロールスロイスに辿り着くのは、運命としか言いようがない。
 アメリカンなバニラ、キャラメルも好きだけどたまにでいいかな。そんな私が余市ニッカの竹鶴をフロートで飲んだ夜の罪深さは計り知れない、伝説だ。

 ウイスキーフロートは氷を入れたグラスに水や炭酸水を注ぎ、マドラーに沿わせてゆっくりウイスキーを注ぎ層にする作り方。
 これを竹鶴17年ピュアモルトで飲んだら、どうなるか。

 竹
 鶴
 う
 ま
 い
 べ
 や

 グラスから唇を話すことができず、ゴクゴク飲んだら、ただの炭酸水になってしまいマスターが気の毒そうに見ていた。
 これは気まずい。と、さすがの私も「喉が焼けた」なんて嘘つきながらワンチャン竹鶴17年を足し入れたらフローと復活するのでは。

 さて、チャージ料金がかさむ前にチェックするよ。
 私はとってもリアリスト。作家は経験したことしか書けないという命題があるけれど、私は体験型の作家で想像された物語を描く機会は少ない。書き心地でいうと、体験談の方が筆が進むからね。ただ想像で筆を進める人もいて、鮮度こそ違えど、書く側と読者が物語という媒体を通して心が近くなったらそれは成功に限りなく近づけている証拠。
 その接点は輝ける価値観であり、伝える喜びに他ならないのでは。
 
 どうか勇気が、宿りますように。

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 それではこの後「即時一杯の飯に如かず」を続けて更新します。

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大和路のための祈り

どうか祈らせてください
僕がそこを訪れてないだけで
そこのために死ぬ権利を
どうか奪わないでください

心の迸るままに
死ぬがために生きるを見出す
そんな簡単なことを
どうして叫べなかったのか
どうして誰も許してくれなかったのか


たった一つの夜を見ました
その星の下で
草生す骸となった僕に
誰かがそっと花を供えました

”高潔”の刻まれた花弁は
やがて昇りゆく旭日と共に
世界を満たしていくのでしょう


讃美に、ひとり静かに咽ました
薄明が人間の中に
ぼぅっと燃えていた日のことを
誰にも知られぬまま抱いたまま

暁の空は
この世界が見た
最も美しい夢だと確信します

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終わりを考える|習作 v1

26,27歳頃から、人生の終わりを考えるようになりました。あと10年は残されていないだろうと直感していた、という方が近いかもしれません。

というのも、わたしのスペックでできることは、ひととおりやりおえてしまったからです。そんなことはないと思われるかもしれません。しかし、大枠ではそうだと思うのです。

時々国内旅行をしました。時々外食もしました。わたしには海外旅行をする金はありません。きっとこれからもないでしょう。趣味として歌も楽しみました。そろそろ歴8年ほどになります。どうやらわたしには、さほど素質がないとわかってきました。絵を描いたり文章を書いたりもしました。どうやらこちらもさほど素質がないとわかってきました。

世間一般に、結婚し子を成すのは、これが理由でしょう。人生が同じことの繰り返しになってゆく年頃なのです。特別な何者かになれないという、まぎれもない事実が明らかになるのです。そして「家庭を持つ」ことが、人生におけるいまだ未開拓の出来事、父あるいは母という「何者かの成り先」を与えるのだと、わたしは気づきました。

わたしは結婚もできそうにありません。いや、この手紙が読まれているということは、少なくとも30歳までにはできなかったのです。わたしは、これまでの人生を、いわゆる「非モテ」として、所得が上がる見込みもなく生きてきました。そんな女が30歳以降に結婚、というのは、なかなかに期待が薄いものです。

わたしだけの問題ではありません。実家は細く、きょうだいは障害者です。詳細は省きますが、遺伝疾患の素因を持っている可能性があり、子供が病弱に生まれるリスクもあります。なおのこと異性がわたしを選ぶ理由がなくなってしまいました。

という現実を前に、疑問が生じたのです。この人生を、これ以上生きる意味はあるだろうかと。何も人並みにできない。かといって創作のような何か変わったことを、人並み以上に成す才能もない。わたしは、「わたしの人生」という欠陥品に、いま以上の労力を払う意図を失ってしまいました。

これでも、ギリギリまで足掻きはしたのです。最後の2年弱、職を探し、異性にアタックもしました。けれど、すべてが無駄に終わったのです。

もはや残りの人生は、ただ衰えてゆくばかりです。わたしに与えられた人生最後の幸福は、死に時と死場所を決めることでした。

朝焼けの海が好きです。だから太平洋で死にたいと思いました。晴れた日に、さわやかな海辺で錠剤をいくつか服用し、薬が効く前に、なるべく沖へ出るのです。

はたして、苦しまずに済んだのか。それはわかりません。しかし、酸素を失うまでの、ごくいっときであったことには間違いないでしょう。生きながらえ、病床で孤独に痛みに耐えるよりも、みじかな時間であった。そこに疑いの余地はなかろうと思っています。

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プロ😎ハラスメンター ~だったったver.~  📚ただいま読書実況用に調整を加えております





📚読書実況用の紹介💭


 絶対に捕まらない犯人と 正体不明の指示役たちが 暗躍闊歩の大都市で、日夜 振り回されている者たちにスポットを当てた問題作。世界の裏に切り込んでいく 斬新なストーリーが 読者の倫理観にメスを入れる。
 そして繰り返される、実行犯がわかっているのに 誰も防ぐことが出来ない悪質な嫌がらせとは……。

 まさかの推理小説かと思いきや、まさかのあらゆる小説書きに向かってファイティングポーズを取っている超(当社比)話題(予定)作品。


















 僕は天才コロシ屋だ。
 それも飛び切りセンスが良くて、この国で一番華麗な技術を持っている。

 この国の首都の真ん中に、どんな悪事も見逃さない 切れ者刑事が集まっている 天下無双の警察署がある。この国に巣くう悪党どもは、彼らが広げる捜査網を すこぶる恐れて 警戒していて、びくびくおどおど暮らしてる。
 老人を騙す詐欺師のアツシも、怪しい薬を売ってるカズキも、泥棒猫のキャッシュ姉妹も、ギャングの親玉バーボンだって、ひとたび刑事がパトカーに乗れば トッピンパラリと逃げ出す始末さ。

 それでも僕は捕まらない。見つけることさえ不可能だろう。どんな凄腕刑事だろうと 僕のコロシは止められないのさ。
 今夜は月がとっても綺麗。仕事道具を右手に握り、カリカリささっとヤっちゃおう。

 連続連夜のコロシは4日目。今夜はホテルの最上階で、麗しレディーを密室サツジン。右往左往しているスタッフ、怒りで真っ赤な警察官達、恐怖におののく野次馬連中。みんなの感情豊かな顔は、僕が残らずメモしてあるよ? 疑心暗鬼がうごめく街角、こんなに楽しい夜はないよね。
 真犯人はそこにいないのに、誰も彼もが犯人探しだ。

 そして翌朝、急展開。
 密室トリック見事に破られ、電光石火の犯人逮捕。
 どのチャンネルもトップニュースで、犯人の顔を晒してる。
 イケメン犯人 レディーの元彼。異性交友関係の歪みが生んだ、悲劇の事件。

 実行犯は捕まったけど、あ~愉快爽快。真犯人は僕なんだよね。
 そうさ! 僕が命令を下し、彼の身体を操って 密室サツジンをさせたのさ。
 彼は泣いて嫌がってたよ。
 だけどこれは命令なんだ。
 あの方々が望んでいるから。僕に生きがいを下さっている●●様が望まれたこと。世界が求めるジャンルのために彼はやらなきゃいけなくなった。
 コロシをしなくちゃいけなくなった。

 このサツジンは必要なことさ。
 世の中にとって。
 僕にとって。
 ●●様にとっても、ね。


 次の獲物は誰にしようか?
 別荘に暮らすタレントのジョー?
 それとも花屋のミルチルさん?
 車を売ってるクドウもいいかも。彼はあちこちそっちで恨みを買ってる。なにせ壊れた車を売っては、各地で事故を招いてきたから。

 クドウは今夜、海辺をドライブしちゃうらしい。これなら楽にコロシができる?
 よし決めた!
 右手に狂気を握りしめ、白紙の未来に書き連ねていく。
 次のシタイは車屋クドウ。サツジン犯は、そうだな~。中華飯店で鍋を振るってる 有能学生アルバイト君。
 犯行動機はありがちだけど、みんな大好き親の敵だ。
 僕が右手で彼を操り、彼は右手で鉄鍋を振り、クドウの頭をゴッチンと。


『プルルー プルルー』

 NO! こんな時分に誰やねんって。はーいはいはい、もしも……うげッ……ゲフンゲフン。いつもお世話になっております。はいはい。ええ締め切りですよね。もちろん、大丈夫です。2週間後には必ず。え、10日後でしたっけ? あ、いや、全然ピーポー大丈夫! もちろんですよ。間に合わせますとも。そんなそんな、読者様をお待たせするなんて、やだな~担当さん。えっと、それで、お電話の用件はそれだけ……え? 新刊のタイトルが決まったんですか?
 首都 直下 型 連続 殺人 事件~爆 誕 卵のプリン 刑事 カラメルルの魔法 事件簿~
 ……え……ぇえぇ?
 魔法? あの、この話に魔法なんかこれっぽっちも出てこないんですが? はぁ、魔法少女のコスプレ……。ステッキ持ってるだけ……。女装の子と書いてジョシと読ませる……は、はあ。最近は魔法女装子がブームなんすね。いや、いや! 不服なんて! すみません、最近のトレンドとか見てなくて、はい、わかりました。適当に主人公の容姿を書き換えておきます、はい。進捗状況……ですか? えっと、さっき7日分のうちの4日目のコロシの犯人が捕まりまして、これから5日目のサツジンを書くところで……いやいや、間に合いますって。もちろん。はい、はーい、失礼します、はーい、は~~~~い。


 ……ふう。
 何にゃねん、プリン刑事って。女装子なんか聞いたことねぇ。存在するのか?
 おっと、だめだだめだ。読者様がそういうのを望まれているんだから文句を言ったら罰が当たる。

 よーし。アルバイト君、やれ。
 コロシをしろ。
 ひと思いにクドウの頭に鍋を振り下ろせ。
 ああん? やりたくないだ?
 何を甘っちょろいことを言ってるんだ。泣くんじゃない! 喚くんじゃない! 僕の仕事をなめるなよ?
 いいか? 君がやらなきゃ話が進まないんだよ。小説が次章に進まないんだ。わかるだろ?
 こんなところで話を終わらせるわけにはいかない。首都直下ぁなんとかぁ爆散プリプリン刑事を落とすわけにはいかないんだよ。
 登場人物が全員消えちまおうが、捕まろうが、ヤられちまおうが、作者のこっちは痛くも痒くもないんだからな。
 さっさとやれ、やっちまえ、君には親の敵を探してるという過去をくれてやる、ついでに名前もくれてやる。チッ、それなら出血大サービスだ! 今までのサツジン犯の濡れ衣までくれてやる!
 出番を与えてやったんだから、ありがたいと感謝しなさい。言われたとおりに活躍しなさい。そして、思う存分やんなさい!
 ゆけ! 君に決めた!



*******



 反射的に沸き上がってきた吐き気に耐えながら、もう一度目を凝らし、男の顔を確認する。痩けた頬、潰れた鼻、額が薄くなった頭、常に にやついている口元。厨房からは距離があるが間違いない。アイツだ。クドウだ。
 まさか、こんな所で再会してしまうとは思わなかった。もう忘れたいと願って、人口の多い遠い土地へ引っ越したのに。
 芯の冷めた頭で凶器になりそうな物を探す。ああ、探すまでもなかった。手元にあるじゃないか、ちょうど良いものが。
 中華鍋の柄にタオルを巻いて、コンロから取り上げる。これが運命だとでもいうのか。俺は運命という言葉が、この世で一番嫌いだった。だが、ここでの再会は、もはや運命の導きよって繋ぎ合わせられたとしか考えられなかった。再び出会ってしまったんだ。もう、躊躇しない。

 何十もの火柱が立つコンロのつまみをひねり、小さな火に落とす。
 この中華料理屋、好きだったんだけどなぁ。

 事故のあった日は父方の実家から帰省した帰り、うだるような暑い夜だった。小さな車に家族4人で乗っていたけど、それでも、俺たちは楽しく、わいわいと文句を言いながら高速道路を走っていた。
 そんな最中だった、父が慌てて叫んだのは。
 ブレーキが利かない、アクセルが戻らないって。

 真っ赤なテールランプ以外、何一つ覚えていない。あの夜、家族はみんな天国へ旅立った。そして俺だけが生き残った。生き残ってしまったんだ。記憶喪失で生死の境を彷徨っている時に、俺は、この世に居ながら地獄の底を踏んだんだろう。病室で目が覚めたとき、世界の色は、まるで終わっていた。景色は全て、白い霧と黒い影に覆われていた。人は全て、見たことのない生き物に見えた。白黒映画のようだった。三途の川だって、もう少し鮮やかな色をしていたんだけどな。

「くっそ、忙しいな。団体客が入ってなくて良かったぜ。なあ、次の注文なんだって?……なあ……おい! ノダ、どこ行く! ノダ! おい!!」

 親方の言葉を無視したのは初めてだ。火に掛けられていたフライパンを握る手が熱い。中華鍋の柄は鉄、この鈍色がグツグツと煮えたぎる心を応援してくれているかのようだ。
 忙しく包丁を振る同僚の間を抜けて、ホールへと出た。包丁を選ばなくて良かった。包丁をぶら下げていたら、途中で通りすがりの英雄にでも行く手を止められていたことだろう。
 いや、この世に英雄なんか居るのだろうか? もし居るのなら、どうして俺の周りで英雄が生まれなかったんだ? 英雄が悪者を罰してくれないから、だから俺が怪人になるしかなくなったんじゃないか。
 家族の復讐に燃えるのは英雄だろう、だって? 英雄は中華鍋で頭をかち割ったりはしねぇよ。

 あの事故現場には警察と、なぜかクドウが来ていたと聞いた。俺が救急車で病院へと運ばれている間に、俺たちが乗っていた車は漏れ出したガソリンに引火して全て焼けてしまったという。あり得るだろうか? ぶつかったのは前の方だけ。確かに車が潰れはしたが、ガソリンタンクにまで被害が及んだとは考えにくい。そして、警察はろくに調べもせずに、ひしゃげて丸焦げとなった車をクドウに引き渡したという。これで、父が叫んで訴えた整備不良の証拠が無くなってしまった。
 退院してから何度もクドウの元へと通い詰めた。何か知っていることはないか? 車におかしな点は無かったか? 父は確かにブレーキが利かなくなったと言っていたんだ、と。しかし、クドウは聞く耳を持たなかった。運転の腕が悪かったのを車のせいにするなんざ、ろくな人間ではないと言い切って俺を追い出した。
 クドウが廃車寸前の車を買い集めて、ガワだけ綺麗に塗り直し、高く売りつけていることを知ったのはその後のことだ。もっとも、今は警察に目を付けられて、そういう真似は控えているらしいと風の噂で聞いている。クドウの周りでは、警察が嗅ぎ回るぐらいの事故が起こったと言うことだろう。被害者は何人も居るという。
 この世の中は地獄に似ている。
 俺は何もかも投げ出したくて、この街へ引っ越した。それなのに、運命はどうしても俺を再び地獄へ落としたいらしい。
 いいさ、大人しく従ってやるよ。
 そのかわり、道連れぐらいは許して欲しい。



 汚れた前掛けを身につけて、湯気の昇る油をぽたりぽたりと垂らしながらホールを歩く調理人を、周りの客からはどう見るのだろうか。すでに何人もの視線を感じていた。足を止めて驚いた顔を向けてくるグループ客もいる。だが、制止してくる者はもちろん、声を掛けてくる者さえ居ない。案の定、英雄は不在のようだ。
 クドウは熱心な様子でスマホに視線を落とし、周囲の気配の変化に気が付けない。もっとも、気が付いたところで逃がすつもりも無いけどな。

 もう少しで、凶器が届く距離に入る。
 どうせなら、このままやっちまいたい。許しを請うだけの時間も、祈りの言葉を吐く暇さえもコイツにはもったいない。

 さあ、俺と一緒に閻魔に会いに行




♪~~

『トウキョウワンから徒歩5分、立体駐車場完備。全室からフジヤマが見える、まるで映画のような最高の景観を保証致します。周囲360度を24時間防犯監視。どんな怪獣だって見逃しません。安心安全な癒やしの空間を貴方に。
駅前ホテル「進撃の踊る代走ゴジラのホテル」今年5月、堂々のオープン』

『痛車修理に族車の整備、空気入れからバーニングの改造に至るまで、愛車のことなら全て当社にお任せ下さい!安心安全、スピード修理! 高く買います安く売ります
みんなの車屋 クドウ・クルマルク・レヴィオゥサ完璧整備工場♪』

『食材に宿る命をありがたく頂く。素材感謝の精神で 今日も僕らは真っ赤な炎を 天井高く噴き上げます! 油は正義 油は勇気 油が元気に跳ね回る!
炎と油の熱血中華飯店! 「ぃやるっちゅうか屋」 ぜひお越し下さい!』


♪~~




 クドウは熱心な様子でスマホに視線を落とし、周囲の気配の変化に気が付けない。もっとも、気が付いたところで逃がすつもりも無いけどな。
 もう少しで、凶器が届く距離に入る。
 どうせなら、このままやっちまいたい。許しを請うだけの時間も、祈りの言葉を吐く暇さえもコイツにはもったいない。

 さあ、俺と一緒に閻魔に会いに行こう。その時も、いや、地獄に落ちたその先でも、俺はお前を殺してやる。

 鶏油で滑りそうになる手をきつく握り直し、息を止める。

 最後に見る景色は何だ? クドウ。
 俺の景色は、あの時の、真っ赤なままで止まってるぞ。




 握った中華鍋を、俺は高々と振り上





♪~~

『はい!新年おめでとうございますみなさま、こんばんはおはようございますこんにちはみなさま、朝晩の冷え込みが厳しくなってきましたね~みなさま元気に過ごされていますか?みなさま、冬はどうしても体調を崩しやすいんです、朝になると目が覚める、昼にはお腹が空いてくる、夜になるとなんだか眠い、こんな症状に悩まされてはいませんか?みなさま、その症状、善良タンパク質が足りていない証拠かもしれませんみなさま、そんなわけで、始まりました銭箱がぽがぽテレフォンショッピングのお時間ですみなさま、本日ご紹介するのはこちら!丸々と太った鶏!裏表の無い善良タンパク質と、天然由来のカロリーを同時に摂取できると話題の、高品質な新鮮肉がたっぷり付いた無頭鶏1羽!なんと!1羽丸ごとのご紹介です!頭を落として血を抜いただけの安心安全な1羽をなんと、爪の先から五臓六腑に至るまでカチンコチンに冷凍してのお届けですよみなさま、しかも!米国生まれの欧州育ちで頭を切るのはジャパニーズという三拍子揃った格式高い一品でございますよみなさま、春は上司の出世祝いに、夏は打ち上げ花火のお供に、秋は図書館読書のおやつに、冬はアイドルライブのペンライト代わりに、春夏秋冬丸鶏1羽!ですよみなさま、食べ方は簡単明快、まずは解凍ついでにバーナーで羽毛を焼いて、内臓を取り出し――









おわり。

題名
『プロ😎ハラスメンター ~あらゆる真犯人はどう考えても僕しかいない~ 
ウェブ小説の収益向上のためCMを差し込んだったったver.』












2025/11/10 少し書き換え。
2025/12/07 読書実況用に大きく追加。
2026/02/24 少々書き換え

ちとせもり の みちしるべ(ジャンル別一覧ページに飛びます)
  

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Astrocyte drei

小浦宗次郎の右掌に、「田伏正雄正17面体」は静かに収まっていた。触れるたびに伝わるのは、世界という巨大な法的文書の、冷たい重み。それは彼が背負う「地獄」の秩序であり、同時に、彼の魂に深く刻まれた現実への不可解な罪悪感の証左であった。
斑目・Das Gesetz(法則)との死闘の後、夜霧は一時引いたものの、今は再び、宗次郎の周囲を無関心を装った鉛のように濃く取り巻いていた。
宗次郎の左目が、再び異形の光を放つ。それは、この世の不完全さを正確に測り続ける、悲劇的な「秤(はかり)」の光。その網膜が捉えたのは、音もなく、あらゆる光の粒子を吸収する黒点のように立つ、新たな人影であった。
男は、斑目のような過剰な厳密さとは対照的に、まるで世界が彼に触れることを諦めたかのような、絶対的な「不在」をまとっていた。全身を包む黒い外套は、ただの布ではなく、虚無そのものの織物に見える。
「当該物件の返却義務を確認した。……小浦宗次郎、その絡繰を返せ」
声は、冷たかった。数万ページの帳簿を読み終えた後の、疲れ切った官僚のそれだ。
男もまた、「玉座の支配機構」の頂点、「Die Zwölf Axiome(十二の公理)」の一人。その名は、鹿島・Die Grenze(境界)。その執行において『無相の証明』と称され、いかなる干渉も許さない絶対的な境界線を構築する異能者。
鹿島の腰に、刃物と呼べるものはなかった。彼の武器は、物理的な実体を持たない、純粋な概念の壁。
「貴様らが求める『零の世界』とは、世界から不完全さを削ぎ落とし、不確かな現実を閉ざすこと。だが、それは単なる『生温い地獄』だと、師は言われた」
宗次郎は、自身の内に溜まる熱を、押し殺した声に乗せた。
鹿島は動かない。彼は宗次郎と背後の闇との間に、見えない、しかし絶対的な線――「不可侵の境界」を敷いた。
「それは感傷だ。不完全さとは、帳簿を汚すインクの染みに過ぎない。我らの陛下の世界に、余剰は不要である」
鹿島の指先が僅かに動いた。その瞬間、路地の石畳は光の屈折を拒絶し、物理法則の版図から切り離される。宗次郎の左目の秤が、境界の向こう側を「誤差0」と断罪した。いかなる質量も速度も、その座標に触れた瞬間に「零」へと還元される、絶対的な論理の壁。
「ならば、お前には片鱗も見せられぬな。この境界線は、展開された正17面体の内宇宙すらも分断する」
鹿島の声には嘲りも焦燥もない。ただ、淡々と「処理」を待つ事務的な報告があるのみだ。
宗次郎は右掌の異形を強く握りしめた。田伏正雄正17面体の冷たさが、彼の肌を焼く。
(師は言われた。温い地獄を押し戻すのは、至難であると。ならば――)
宗次郎は、抜刀した。皆伝を受けた太刀は夜の闇を裂く光芒となったが、その切っ先が境界に触れる寸前、彼は太刀筋を「自らの肉体」へと反転させた。
柄を握る手に、全ての力を込める。それは「不完全さの許容」という奥義の極地。世界が内包する悲しみと矛盾、そして「不可解な罪悪感」そのものを、自らの肉体にねじ込む異形な動作。
――境界を、内側から汚染する。
太刀が宗次郎の左肩を浅く斬り裂いた。その瞬間に噴き出した一筋の血潮が、鹿島の築いた完璧な論理の帳簿に、計算不可能な「負債」を塗りつけていく。
境界線が、微細な「揺らぎ」を見せた。完璧だったはずの壁に、宗次郎の罪悪感から生まれた血のシミが、消えない汚れのように付着したのだ。
その一瞬の揺らぎを、宗次郎は見逃さない。
「地獄の熱は、自らに負債を負うことでしか、押し戻せぬ!」
宗次郎の太刀は、もはや物理的な刃ではない。それは、世界が彼に課す不条理の目録。彼自身の悲劇的な秤の光が具現化した、「自傷の熱」。
ガチンッ。
音は、硬質な衝突音ではない。それは、世界という整合性がひび割れる、不吉な軋み。完璧な境界の概念が、予期せぬ不完全な血の熱に触れ、論理の限界を超えて崩壊する断末魔だ。
鹿島の黒い外套が、静かに霧の中に溶け始めた。彼の体は両断されたわけではない。宗次郎の血が塗りつけた「不完全さ」によって、彼が体現する「境界」の法則そのものが内側から瓦解し、存在の領域から拒絶されたのだ。
「……余剰が……余剰が、発生して……」
鹿島は最後にそう呟いた。彼の肉体は、シュレッダーにかけられた機密文書のように、端から虚無へと裁断され、夜霧の中に消滅した。
宗次郎は、深く息を吐いた。左肩の傷から流れる血は、もはや痛みよりも、不可解な満足感を伴っている。
夜霧は、相変わらず鉛のように重い。宗次郎は、腰にぶら下げた正17面体を見つめた。その冷たい金属は、彼の体温に触れ、わずかに、しかし確実に熱を帯びていた。
そして、宗次郎は、再び吠えた。
その声は、己の欲望かもわからない熱を紛らわせるためであり、田伏正雄が統べる世界の柩を背負い続ける、悲劇的な決意の証明であった。

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寒花晩節 ーー 俳句十五句 ーー

寒花晩節 ―― 俳句十六句 ――


笛地静恵





冬ごもり骨の不在を嘆くのみ



足もとをすくわれ金の金魚玉



アスファルト皮膚ひび割れぬ小鳥網



雪煙おとこの肌を神あさり







東京と夜店と海とつばくらめ



精米の小屋の匂いの夜長し



花火師はもう帰れない神の留守



天ぷら屋ふりむけば十六夜の月







キンキンと杉板の眼の除夜の鐘



菊根分問題はなし容姿のみ



東北の森の祭りへもろこし屋



同類の家焼き払いシャクナゲだ







貧窮の問答はせずカラスの巣



イオカステ荒れ野に剣のイオマンテ



ザクザクと雨風は打て氷湖まで



とりいそぎヨモギの市へ二輪車で





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ユビキタス、雑念

詩を詠む欲望があるとすれば、それ以外の欲求がなくては言葉もなかなか生まれない。はずだ。ほとんどの場合、地下鉄から吹き出てくる生温い風、スモーキィな空模様を呈する早稲田駅前交差点、みっともない、よれた通学路に挟まった笑い声。有刺鉄線の向こうに桃色の春。街は歩く、街は衒う、青春のくせに、間違わないからこうなる。しかし、冬の残り香をしずかに吸い込んで、マイヤーループから氷点下の視界、網膜に光を閉じ込めて、私は何も見ていないのに、遊具の剥奪された公園の真ん中で、どうして知る由もない光景が手に取るように判るのだろう。

季節はずれの鳳仙花が、ここにはたくさん咲いている。触れられる近さに困惑させることになろうとも、私をひた隠しにする、育ちの悪い、十一回目の太陽を両手に包んで、居る。
指からこぼれていく夕方、インモラルに遡っていく脈拍、行き掛けに受け入れてしまうような軽さ、染みつくような朦朧と揺蕩、たとえとりかえしのつかないことなど無いと言われても。流れゆく誕生日を拾い上げて、やっぱり代わりなどいない。耽美な感情は再び世界の戸を叩く。ありきたりな言葉になる前の、ささやかなねがい。
横断歩道を反復横跳びで、ポニーテールは揺れ、重力すら演出のようで、赤信号だけが今起きたような顔をしている。来世はライムライトの朝になって、1/fゆらぎみたいな詩をみんなに書かせたい。
うん、だめだね。すきま風のない家なんかに、間借り罷り通る中に智慧、見栄、にべも無い語彙にひれ伏すだけの。じゃあ、正解なんてどこにあった。皮膚にざらつく罪と罰。からくりのように夜は更ける。
そうは言ってもウィキペディアが無ければ今の半分もものを知っているだろうか、なんてことないと思っていると、知れば知るほど真実と呼ばれるなにかに迫害される。なにか。嘘がいい、どうせ嘘みたいな存在だから。連想ゲームのように、泥沼。それでうわべのまた明日。

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ケモミミ少女 早苗

獣耳と書いてケモミミと発音する。
アニメやゲームなどでは奇矯なキャラが頻繁に登場するが、少女などの頭部に動物の耳を付けた姿を見かける機会は多いと思う。その耳をケモミミと呼ぶ。

最近私が観賞したアニメのうち、印象に残っているケモミミは下に挙げる10キャラである。
いきなりだが、私にはケモミミに執着する性癖がほとんどない。
つまりケモミミを選んでTVアニメや映画を観ているのではない。
また、ケモミミの少女が3次元にはいない、したがってケモミミとは極めて特殊な意匠であるということも重要だ。
それらを考慮すると、たちどころに下記10ケモを私が思いつくということは、これは相当多い数だと言える。
いないんですよ、ケモミミ少女なんて。しかも私は別にケモミミが好きじゃないんです。それでも10キャラですよ!何その呪い、怖い!!!って思いますよね、洗脳かよ!って、仮にあなたが私なら。あなたは私ではないので思わないでしょうけど。
ケモミミは、もはや【呪術】と言ってよいほどの強力な「萌え」を日本国に及ぼしたのであり、社会に深く浸透しているのだろうと思う。思う、というかこれは良いか悪いか、性質ははっきり述べないが、呪いであることは間違いない。私はケモミミなどぜんぜん好きではないので、どうでも良いのではあるけど。
―ちなみに大島弓子の「綿の国星」の諏訪野ちび猫嬢はアニメ化されていない。だが、あまりにも可愛いので下記に混ぜておく。

(ケモミミキャラ)

犬:犬夜叉(犬夜叉)
猫:キャサリン(銀魂)、りつ(ケムリクサ)、諏訪野ちび猫(綿の国星)
狼:ホロ(狼と香辛料)
狸:まめた(うちの師匠はしっぽがない)
狐:子狐(夏目友人帳)、大黒亭文狐(うちの師匠はしっぽがない)
馬:サイレンススズカ(ウマ娘プリティダービー)
不明:ななち、姫(メイドインアビス)

このように列記すると、等しくケモミミキャラでも、容姿も役柄もだいぶ違うことがわかる。
と、いうより、ぱっと見では動物種を超えた共通点が無いように見えるだろうと思う。

たとえば猫については「賢い」という特徴が一応は見て取れる。受験とかIQとかで測れる賢さとは違う意味でだが、人生経験豊かなキャサリン姐さん(銀魂)も、おっとりお姉ちゃんに見えて判断は超絶早い「りつ」さん(ケムリクサ)も、この世の悲しみを地の底まで見通すちび猫嬢(綿の国星)も、とても賢い。
だがその特徴は「しっぽな」のマメタ(狸)や、夏目の友達の子狐には共通しない。逆にマメタはおバカさんだから愛される。子狐は泣き虫なのに健気なのが良い。
ケモミミキャラは賢いから流行っているのではないのだ。

言い方を変えるなら、キャサリン(銀魂)とホロ(狼と香辛料)が役を交換してみたらどうなるか?
想像してみて欲しい。完全にぶち壊しで、荒れ地に草も残らない。
銀ちゃんとホロでは殺し合いしか起きないし、ロレンスとキャサリンならどっちかが泣かされてどっちかは邪悪に笑う。
他のキャラ組み合わせでもそうだ。上記ラインアップは共通点など見当たらない(ように見える)のに、なぜこんなに多くのキャラがケモミミなのか?
その問いに答える目的で、これらをキャラではなく、萌え要素で私なりに分析してみたのが、以下である。


(抽出元:萌え要素)

狐、猫、馬 :様式過剰な服装(しばしば和服)
狐、馬   :第一ボタンをしっかり締め、胸元を開かない
狐、狼、馬 :ストレートの長い髪
狸、犬、猫 :ウエーブの髪かショートヘア
狸、狼、馬 :大食い
狐、狼   :大口
狐、狼   :細目(引き目)
狸、猫   :丸目
猫、馬   :可愛い靴を履いてる
狐、犬、狼 :感情の幅が大きい
狸、猫   :防衛本能が攻撃に転化しやすい
狐、犬、狼 :そもそも獰猛
狐、狼、馬 :愛情が深い
犬     :ご主人様に従う
犬、猫、馬 :眼の色、靴などが左右で違う
狐、猫   :移り気
犬、馬   :いったん着手すると高い集中力でやり遂げる
狸、猫   :すぐ怠ける
狸、犬   :失敗が多い
犬、狼、猫 :性格が明るい

この表の通り、ケモミミであることが何を意味するかは、獣種によって異なるとしか言いようがない。
だがこのラインアップからは、うっすらと人物像が浮かんでくる。

ケモミミ少女はころころと気が変わるが、根が正直なので彼女がどんな気持ちなのかはバレバレである。
目の大きさやルックスは人それぞれ、靴は可愛いのを履いている場合も多い。
感情の起伏は大きく、すぐ怒る。
そして注意力や集中力についてはADHDの傾向を示し、それは欠点ととられることも可愛らしさととられることもある。
だが、その気になれば異常な集中力で、定型発達的な人間キャラには達成できない事を達成する。

そうしたことを「予感」させるのが、ケモミミなのだ、と考える。
そして、それが具体的にどんな物語にどんな影響を与えるのかは、すなわちどんなエピソードとなるかは獣種によって全く方向性違うし、個体差も大きい、違っても構わないのだと考えてみる。
そう考えてみれば、そうか、と思うだろう。
とにかくケモミミが観客をひきつける魅力の一つではあると、概ねは理解できた。

ところで、3次元に目を向けてみると、現在ひろく知られているケモ的なキャラといえば、何と言っても天下のキツネ女こと高市早苗氏であろうと思う。
もちろん、あれはウマずらともいうのだが、アニメのキャラの例に、儚くも美しいスズカをだしてしまった手前、そうは言いにくい。スズカの悪口をいうやつを私はどうしても許せない。たとえそれが自分であってもだ! と、いうような、そんな気持ちになりたくないので、馬ではなくキツネという事にして考察をすすめよう。

高市氏は非常に高い支持率が報じられているが、その人気は政策の支持ではなく、推し活であると言われることがある。おそらくは完全にそうではない。私には高市氏の政策の良さはわからないし、氏の政治信条には反感しかない。だが高市氏の政策や政治思想を支持している人もいるには違いない。しかし、それを論じるのではない手法をここでは試みるので、賢明なる読者は下記をご検討いただきたい。
もしも推し活なのであればどうかと、あくまで仮にだが仮定する。そして思考してみる。これを思考実験とか、実験的批評というだろう。

もしも支持ではなく「推し活」だという言説が多かれ少なかれ誰かには当てはまるのであれば、それならキャラ個性ではなく、キャラの持つ【要素】で推されているはずだ。
そこでここでは高市氏はキツネの一種であると仮定して、まずは上記のケモミミの萌え要素からキツネが当てはまる要素だけをピックアップしてみる。

(上述の表から、狐該当業を再掲すると下表のとおり)

:様式過剰な服装(しばしば和服)
:第一ボタンをしっかり締め、胸元を開かない
:ストレートの長い髪
:大口
:細目(引き目)
:感情の幅が大きい
:そもそも獰猛
:愛情が深い
:移り気

やってみて、なるほど、そういう風に見るとそう見えるか、と思った。
これが政策や人格を見ず、萌え要素だけを見た高市早苗氏だ。
こういう萌え要素をもつ狐キャラは、確かに根強い人気がある(総理大臣に向いているかどうかは別だが)。

なお、多くのアニメで狐はいじめられっ子キャラでもあり、苦労人キャラでもある。
夏目の子狐はいじめられっ子であり、しっぽなの師匠も苦労人だ。だからなのである。これに対抗しようと思って強烈な批判をしてしまうと、観客の手で、いじめっ子席に座らせられる。
それがキツネだ。

さて。ではどうしようか?

冷静に考えてみよう。
あなたはある動物村に住んでいるとします。
投票で王様を決めることになりました。
誰に投票しますか?

狼、狐、狸、犬、猫、馬

キャラは不明のまま、萌え要素で投票するなら、です。

よくよく考えてみてください。ここからは賢明なる読者諸兄にゆだねて手渡します。

狸ですよね?

狸いいと思いません?
狸むすめ、可愛いと思うなあ。

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批評・論考

コタツよな

コタツよな
温もり集う
牛団子
丸くなっては
眠くなってく

焦げるよな
赤熱線に
牛あくび
重なり合って
仲良くイビキ

雪が降る
黒毛の上に
粉砂糖
それでも眠い
ヒーターの下

あぬあむと
眠りなまこで
反芻し
知らず食みたる
となり牛耳

餅のよに
くっつきあって
目をつむり
犇めき合って
また眠り付く





辛うじて
繋ぎとめたる
命あり
祈りと共に
スイッチ入れ

原子力
石油石炭
火を灯し
紡ぎたりたる
子牛の命

温めた
点滴吊るし
牛の中
生食水に
祈りこめたり

夕日よな
ヒーター灯し
朝日よな
ストーブ燃やし
体温上げろ
今 今 生きろ

冬になり
ヒーター縋る
子牛たち
続けよ続け
牛たちの命

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大きな紅葉の木の下で

この舞華町には、大きな大きな紅葉の木がある。その大きさは、街の空を全て覆ってしまうほどだ。だが夏は葉が暑さを和らげ、冬は日光を通して寒さを和らげるため、人々の生活に欠かせないものだった。

そんな紅葉の木の葉が赤くなり始めた頃に、父の危篤の知らせが届いた。
慌てて駆けつけた病室内には、ベッドに横たわる父の姿があった。父に必死に話しかけても、反応はない。もう時間の問題なのだと悟った。
その後ゾロゾロと親族が集まり、皆父のことを見つめていた。
そして、ついにその時が来てしまった。
だんだん生気を失っていく父。頰が黒い粒に変わって、ボロボロと崩れ落ちる。それに続いて、腕や足、肩、太もも、お腹も黒い粒に変わり、崩れ落ちる。その黒い粒は砂のようにサラサラしており、きっと手で掬い上げてもすぐに落ちてしまうだろう。
やがて、父の髪も顔もからだ全て、黒い粒となった。

──父は肥料になってこの世を去ったのだ。

そう思ったが、すぐにその考えを否定した。

──紅葉の木の一部になっても、父は生きているのだ、と。

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春やってきた   真暗な道に
静かに静かに広がった
くらくらするよ   風もないのに
街灯の光ざわめいた

追い抜かれてはかけ離れた
春やってきた   花も咲かせず
気づいたが今   もう挙句
新幹線が   春の音

春やってきた   真暗な道を
君と歩けたらどんなにか
なんて相手も見つからぬけど
くらくらしたまま笑います

春よ広がりどこまでも
わたしは口を開けたまま
草原の一匹羊みたいに
ひとり座ってしまいます

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藍色

情報の大海原が
独りの空間を与えてくれる
海に沈む夕陽を眺めるような
エメラルドグリーンが
オレンジから藍へ移りかわる
グラデーションを追うような

波打ち際
遠浅の浜辺を素足で
バシャバシャと駆けてゆく白い指
待って 待って と
風に乗る帽子に伸ばす腕
間に合わない
届かない
肌が小麦色になる前に
夏は過ぎぬ

燃えるような夕焼け
とんぼ
紅葉の落ちる カサっという音
フレディ

落ち葉を集めたら
パチパチ
焚火はあったかい
静まり返った冬の日に
ふいごの風で息を吹き返す

朝昼夜へ眠る藍
独りの夜に眠る愛

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図書館

缶で飲む赤ワイン
山茶花の濡れるような枯れ方に好意を示す夕陽が黒い靴下か白い靴下を選ぶ日々に延びる
ひなんばしょになる図書館に鯨の化石/猫背の完成形を探す芸術とスポーツが同じ括りならば
BGMにされてしまう音楽たちを殺してあげようね
猫が一匹死んで牛が千匹死んで
どうしても見つからない本が数冊
調子悪くてあたりまえ
進化したら馬鹿にされても良い気分
退化したら馬鹿にされても良い気分
予約制の天国に興味なんかない
みんなが静かに勉強してる
トイレに行きたくなったら行ってる
そのうち覚める夢を見るように
そのうち死ぬいのちを保つだけ

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家業

病みに病んで、記憶のないあいだにボロボロの個展をし、
アーティストとして二度と復帰できない失敗をしたあおいうには、
実家へ強制送還されることになった。

母の運転する車で帰る。
その車すら「家業」仕様に改造されていて、
付き添いの人がドアに手を挟まれかけていた。
安全よりも、機能が優先されている。

実家は変形していた。
はなれは消え、庭は異様に広がり、
無数のこけしが立ち並んでいる。
家の中は迷路のように複雑化していた。
「外敵」から身を守るためだろう。

おじいちゃんもおばあちゃんも生きている。
まずおばあちゃんに会い、抱きしめる。
おじいちゃんを探して、私は長いハシゴを降り、地下へ向かう。

妹は見える場所で着替えている。
それを囃し立てると、逆ギレしてくる。
いつもの挨拶だ。

だが妹は、二歳児ほどに縮んでいた。
姉も十六歳くらいにしか見えない。

「家業」を継いでから、若返ったのだという。

そしてもうひとつ。
姉妹には「うに化現象」が起きていた。
顔立ちも、目の光も、話し方まで、
少しずつ私に似てきている。

私の複製のように。

とりあえず今日は疲れた。
泥のように眠る。

朝四時。ベルが鳴る。

妹と姉は跳ね起き、無言で「修練着」に着替える。
「うにもだよ!」
「えっ、私も?!こんな早く?」

修練着をまとった二人は、
シュタタタ、と異様な速度で
複雑化した家の最上部を目指して駆け上がる。
長い、長いハシゴ。
転びそうになりながら、私は必死で追いつく。

頂上には、まっ白く広大な空間が広がっていた。
そこで「修行」が行われる。

「家業」は、トップレベルのアーティストよりも稼げる。
だが「修行」に失敗すれば、
天災が起きる。
多くの人が死ぬ。

その重さに耐えられず、
私は幼少から「修行」をさぼっていた。
だから東京へ逃げ、アーティストになった。

だが、ひどい個展をしてしまった。
もう干されるだろう。

だから、実家へ帰るしかない。

今後は、「家業」を継ぐ。

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愛情Ⅱ

青春とは望まれない赤ん坊のことだ
海峡の光を抱えきれぬ子の胎にも鯨はいるし
哺乳類の口が月に似てあえぐとき
やっぱり生きているとわかる
螺旋階段はしんと冷え
波間に人がゆれている
それぞれに星を傷痕として負った鳥たちが
男という字で飛んでいて
私たちは手を繋いで降りる
愛でもない 恋でもないのに
指の間の水かきのところに
全宇宙の存亡がかかっていた
(できるだけひどく抱いてね小父さん
もっと奥まで暗い空を突きこんで
あなたの鯨をぜんぶ見せてね
そして生き物の生き物たるゆえんの
水しぶきの国を分かちあって
よく理解できたふりでバイバイね)

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愛情Ⅰ

ラジオの天気予報は雨
とべないアニマとアニムスは
朝の鱗粉にまみれて
合法の幻覚剤のように
森林が熱く湿り
腹いっぱい夏を飲み干すのを見た
羊歯の葉に嬲られるオランピアを
土壌微生物の理性なき繁殖を見た
ふたりはいちじくのジュース 音楽 旅
森の人里近いところで
ばらばらに死んでいる一頭の蝶
やがてみずたまを走ってくるサイレン
(自身という名の恋人よ
野生の宇宙へかえろうよ
きみに処女と童貞をあげて
水晶の船を漕ぎすすむ
まぐわいながらすすもうよ
私たちの翅はもうつかえないから自由だよ)

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いくら名詩と誰が申しましても

長いね

一言の感想

詩を読まぬ母は

わたしに必ず言うのです

なんとなくなふりをして

わたしも深く深く
頷くのでした

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こ、とわり

すべてはかがみ

もういなくなった実姉ではない
姉が残した言葉

「何が足りないと言うんだ?」
一番愛して愛した愛すオトコが
わたしにいって
 
いま
はなれてしまいそな
実妹ではない魂のsisterに
「すべて持ってるじゃない!」
と斬りかかる

わたし(たち)は
かがみのまえにたつ
めぐりめぐるまなびすたるため

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ことばのふりをして

誰を
撃たんかね
鹿でも
撃つた顔をして
あんたも
撃つたのかね  

ことばのふりをして

転がる
薬莢
だらり
目を細めて

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[さ]咲

朝 鳥 声 人
 本 糸 毬 猫
花 頬 君 手
 熱 血 骨 心
恋 言 涙 新
 夜 月 子 光
森 息 傷 金
 羽 影 青 土
星 時 穂 影
 朔 音 窓 僕
愛 愛 ごめん 嘘

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