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2021/01/01 12:00:00

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投稿作品一覧

行方不明


片方の靴下が行方不明だった

昨日たしかに洗濯した
はずなのに

残った片方だけが
みょうに平然としていて

えー

世の中には
説明できない失踪があまりにも多い

消しゴム
ボールペン

さっきまであった
やる気とか

みんな急にいなくなる

昼ごろ
諦めて別の靴下を履いた

夕方になって
行方不明だった靴下が
机の下から出て来た

えー

世の中には説明できない失踪があまりにも多い

そしてそれは
さがしている間ではなく
少し諦めて

はあ
と息をついたころに戻って来る

だが
この場合
戻って来たのは使い古しの靴下だったので

ほとんど再会の感動というのは
なかった

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郊外の夜

 
 
 リチャード・ブローティガンを、ある詩人が、リチャード・ブロー「ディ」ガンと誤記した詩を発表した事も、もう一つの神話になってしまった。さいきん、私はリチャード・ブローティガンこそ、死の比喩でなかったかと思ったものだ。というのも、或る記事を読み、こんな事が書いてあった。
「彼が死んだときには、じっさい安心してしまった。いつ死ぬのかわからないで、冷や冷やしていたものだから」

 死がいなくなったら、人は安心する。
 その記事を、私はポケットに突っ込んで、冷えた路傍を歩く。


 さいきん、花の事をとても考える。でも、花はこんな郊外の夜の路傍では認められない。光りが無いからだ。甘い光りが。私はずうっと起きっぱなしのまま、明日のあさやけに涙を零すだろう。そんな嘘もすっと、コンビニの灰皿の前、マールボロを弄っているとき、リアリティを持っていると「思う」。「思う」、「思う」、「思う」。「思う」って何だ?
 リアリティを持っていると「考える」、実際はそういう事なのではないかと。思う、なんて何か余計な贅肉がついているんじゃないか。

そうして、考える、として、本当に考えているのか?人間よ、


 
 という、テキストをパチパチと打つとき、俺は色んなものに影響を受けすぎていると思う。もっとラフにならなければならない、チャーミングにならなければない。でも、チャーミングでいる事は罪だぜ、黒髪のきみが、風呂上がり、洗いたての髪をゴシゴシ拭いている。


陶器のような肌だ。そうして怖ろしくなってゆく。壊れてしまうって事だから。


「まだ寝ないの?」
「もう少しだけ」


俺は、サーモスのカップへコーヒー粉を突っ込んで冷水を注ぐ。

俺は、換気扇を回し、マールボロに火を点ける。

俺は、明日の朝、あさやけを見つめ
泣いてみようとする。



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シーシュポスの神話

深夜のコインランドリーは、僕たちが漂着した最後の中州のようだった。
湿った空気の中に、安価な洗剤の人工的なフローラルと、さっきまでシーツの上で貪り合っていた僕たちの、微かな汗の匂いが混じり合っている。
まなみは、回転を止めた乾燥機の前で立ち尽くしていた。
彼女の細い肩には、脱ぎ捨てたばかりのラルフローレンのオックスフォードシャツが、アイロンを失ったまま無防備に羽織られている。その下から覗く胸元、ヴィクトリアズ・システマティックの黒いレースが、湿った熱を帯びた肌に食い込んでいた。
「熱も、言葉も、すべてが均一に混ざり合って、何も動かなくなる状態……それがこの世界の理で、いちばん平穏な死のはずでしょう?」
彼女の言葉は、薄氷を割るような静けさで響いた。まなみは、バスケットから取り出した僕のシャツを手に取ると、その袖を愛おしそうに指先でなぞった。指先にはまだ、僕の体温を求めて彷徨った時の強欲な力強さが、仄かな赤みとなって残っている。
「……でも、この世界はそれを許してくれないみたい」
まなみはシャツをバスケットに戻した。
そして、唐突に歌い始めた。
彼女の唇からこぼれたのは、昔のアニメソングだったが、それは高揚感とは無縁の、ただ事実を淡々と確認するような音調だった。
彼女は踊り始めた。
右手を上げ、左手を腰に当て、リズミカルにステップを踏む。その動きは、何千回、何万回と繰り返されたはずの「正解」のトレースだった。
けれど、まなみのそれは、決定的に何かが欠落していた。
シャツの下の黒いレースが、ステップのたびに湿った肌の上で揺れる。僕の背中に爪を立てた、剥き出しの身体性はそこにある。なのに、その動作はどこか機械的で、まるで動かなくなった乾燥機のドラムが、慣性だけで回り続けているかのようだった。
「……魔法以上ノ愉快ガ……」
その声には、魔法も愉快さも存在しなかった。ただ言葉が、彼女の気管を通過して、深夜のコインランドリーの静寂に、無機質な振動として放たれていくだけだ。
僕たちの、あの終わらない熱が、この安っぽいアイドルソングによって完全に濾過され、ただの「運動」へと成り下がっていく。
それは、彼女が先ほど口にした「平穏な死」への抵抗のようでいて、その実、最も残酷な形で死を体現しているようにも見えた。かつての熱狂の、抜け殻のようなダンス。
まなみは、一通りのサビのパートを踊りきると、項垂れる様に笑って唐突に抱きついてきた。店内を照らす蛍光灯が、彼女の無防備な横顔と、少し乱れた髪、そして胸元の黒いレースを、執拗なまでの鮮明さで焼きつけている。
その静止を破ったのは、店内の隅で色褪せたクレーンゲームが散らす電子音だった。
僕は100円玉を数枚投じ、磨耗したジョイスティックで銀色の爪を操作した。煤けたペンギンのぬいぐるみを狙う。機械的な駆動音が、静寂を一定の周期で刻む。爪がぬいぐるみの首筋をかすめ、空しく宙を掴んだ。
「取れないね」
僕は言った。彼女のダンスが残した、決定的な何かの喪失感を、クレーンゲームの無残な空振りに重ねるように。
「いいよ。執着だけが形に残れば」
まなみは力なく笑い、今度は埃を被ったガンシューティングの筐体の前に立った。
画面の中ではゾンビの群れが、生物学的死を超越した「非平衡」の足取りで押し寄せてくる。彼女は使い古されたプラスチックの銃を両手で構え、狂ったようにトリガーを弾き続けた。銃声が店内のタイルに反射し、マズルフラッシュの青白い光が、再び彼女の横顔を鋭く焼きつける。
それは、未来を使い果たした僕たちが許された、暴力的なまでの生の横溢だった。さっきまで僕の背中に深く爪を立て、もっと奥へと、もっと永遠に近い場所へと求めてきた彼女の、あの剥き出しの貪欲さが、いまは火花となって虚空を貫いている。さっきの、魂の抜けたダンスとは、対極にある烈しさで。
「死なないものを、何度も殺すのって、祈りに似てると思わない?」
まなみが銃口を下ろすと、画面には『GAME OVER』の文字が、血管の破裂したような鮮やかな赤で点滅した。まなみの唇が、かすかに震えた。
「時間の結晶——外部の誰にも理解されない周期を刻みながら、熱力学の終焉を拒み続ける。たとえ、それがただの、終わらない『慣性』だとしても。私たちはこの静止を許さないの」
彼女が洗い立てのシャツを抱きしめた瞬間、乾燥機の排気口から吐き出された熱風が、二人の間を通り過ぎていった。
それは、エントロピーが増大し続ける宇宙の中で、肉体を重ねてもなお埋まらない欠落を抱えた僕たちという異物が、唯一許された「不変」の証明だった。
そしてその不変は、今しがた彼女が演じた、あのあまりにアンニュイで、あまりに空虚な眼差しによって、より深く、僕の中に刻み込まれていた。

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釣り糸は
夢を垂らすね
そのまま
微睡みたいね 
ボクラモ
ところで
おいしいか
網にかかった
誰かの不幸は

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静かな机

静けさが
机の上を支配している

窓越しの光は
優しく照らしている

コップが二つ置かれている

本は閉じられ
私は座っている

回復と
愛の到来を待って

静けさは
何も壊さない

だから私は
安心できる

踊ることのない
物の作る風景

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雨水と白布

六月を前に 纏まった雨が

早すぎる 真夏日を

庭先から 洗い流す



やまぼうしの総苞

夜明け前の玄関



しろく 流れに 浮かぶ

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即時一杯の飯の如かず⑰

 ep.17 「Twist Lick Dunk」

 路嘉の隣から逃げ出せる猶予はあった。
 しかし残業を振ってまで一緒に居たい気持ちを優先した俺は今、レンタルショップ<R18>エリアの暖簾を潜り、女性の裸体が並ぶ異世界で立ち尽くしている。
 表を上げられず視線を反らした先にも激しいタイトル・・・・・・いかがわしい。

 「外で待ってる」
 「・・・・・・は? 適当に見てて」

 レンタルビデオといえば現物を借りて店で受渡するのが従来のやり方だが、今はパッケージの二次元コードを読み取ってサイト内で期限付きAVを視聴。スマホ決済ができるので店員と顔を合わせる必要が無いのは利点だが、現代社会においてネット利用に完全移行しない理由は店側の利益になるのだろう。ネット価格は月額2200円の他タイトル別500円~有料ダウンロード可能だが、店頭価格は映画一律・5本/1000円利用でポイントもつくのだから足を運ぶ客は誰かしらいる。路嘉がそうであるように。
 一週間にタイトル5本、若い男なら余裕だろう。
 女性に興味がない一方で顔が映らない男性の裸体のぼんやりとした部分に目を細めてしまわないよう必死に避けて角を曲がると、見たことがある横顔に小さな悲鳴が出た。
 元彼、佐伯総一郎との遭遇に次ぎ
 今彼、白鳥路嘉の板挟みにされる苦悩に、頭痛。些か血の巡りが良いらしい。 

 「何でお前がここに居るんだよ」
 「ここ、男しか来ないから物色・・・・・・ほら、あそこ見て」

 素直に従うと肩を押されて壁を背にしたまま、宗一郎の手が逸る。わかる、お前はそれを平気でやる男だっていうのは百も承知だ。しかし通路側から顔を覗かせる路嘉がパッケージの列で遮られる直後、宗一郎の顔が近づく。こんな所で襲われる理不尽さに抗っても汗混じりのラストノートに鋭く反応して視線が導かれる。

 「すみません。それ・・・・・・俺のなんですけど」

 俺の眼前にAVのパッケージが差し込まれ、一難逃れて膝が折れる。────た、助かった。気が抜けると足元がフラつき、暖簾を潜る客人に倒れ込む。

 「宗ちゃんおっそいよ。何や・・・・・・って、絢斗?」
 「あ、的場さん!」
 「白鳥さんもお揃いで」
 「聞いて!あそこの男に痴漢されたの」
 「誰が?」
 「絢斗が。リーマンが痴漢されるなんてゲイビじゃねぇんだから。おいこらテメェ!!」
 「あー、迷子の仔猫ちゃんが居たので」
 「エッチなおまわりさんだね。絢斗、大丈夫?」

 間一髪の救済ではあったが、眼前に飛び込んで来たのは女性のご開帳。背後からお尻を両手で掴み、開かれた様のぼかしは見覚えがあるくすんだ肉色と、事後の体液が破れたストッキングを這う。
 声は聞こえても返事がおぼつかないほど、冷静な判断ができない。張り詰めた緊張に睡眠を要求する作用に絶え兼ね、そのまま和真に頭を預ける俺は自宅に運ばれ、揺らぐ意識の中で花椒の香りに目覚めた。

 「豆腐は下茹でして、辛いソースに材料を足していく」
 「葱はいつ入れるの?」
 「味が決まってから。残りの中華スープをゆっくり注いで」
 「これ?」
 「そう、上手だね。味はどう?」
 「ん……やばっ店で食べる味」
 「葱を入れて、水溶き片栗粉を混ぜ合わせたら完成」

 和真が料理を教えている。
 こちらに気が付いた路嘉は撮影している宗一郎を避けながら、皿を持ってきた。


 今夜のメニュー

 ・麻婆豆腐
 ・豆もやしの時短ナムル
 ・茄子煮浸し
 ・レタスと玉子の中華スープ

 
 「すまない、疲れが出てしまって」
 「お疲れさん。冷蔵庫にあったもの、使ってよかった?」

 和真の間を割って抱きつく路嘉の頭を撫でながら話を聞く。
 初顔合わせにも関わらず、俺が寝ている間に路嘉はすっかり馴染んでいて安心した。

 「・・・・・・やっば。俺、天才かも」
 「殆ど和真が作ったよな?」
 「いいから。絢斗には辛すぎるね」

 確かに、激辛耐性の無い俺には花椒の刺激は強すぎるが、茄子の煮浸しの味付けを舌の上で解きながら飲み込む。
 オリーブオイルか?
 甘辛さのキレがよくさっぱりしている。疲れた体が欲するアイテムが全て凝縮された圧倒的、美味。副菜だが、これがメインに出てきても納得がいく。
 
 「あのさぁ、おやつはご飯食べてからにしなよ」

 食事に手を付けない宗一郎を見兼ねた路嘉だが、オレオの黒いクッキーを回して上下離す食べ癖は相変わらずで<あの言葉>を呟く。

 「回して、舐めて…」
 「食べ物で遊ぶな」
 「なんだお前知らないのか?」

 Twist Lick Dunk
 それは、みんなが笑顔になる魔法の言葉。

 俺ら世代には懐かしいが、路嘉は首を傾げていた。正面の宗一郎は満面の笑みで、クリームにフォークを刺して牛乳に半分落とす。
 
 「これが主食なんだよ」
 「え? おやつしか食べないの」
 「仕事だから」

 
 はい、と言葉をひとつ置いてから名刺をフォールドして自己紹介「絢斗の"友達"で、佐伯総一郎と申します」立場上、積極的に正体を明かす方ではないのに。腕組みを解く和真の視線が注がれるのは当然だろう。下手を打てば、俺ごと怒られ承知で・・・・・・この野郎。
 路嘉のレンゲから麻婆豆腐がゆっくりと零れる。自分が作った料理を食べない痴漢男の正体を知った途端、レンゲを落として口を押えた。

 「スイーツ王子、ほぉんにぃん・・・・・・て、こと!?」
 「和真は紅茶の王子様」

 腕にしがみつく路嘉の瞳はアガーでコーティングされたタルトの様に輝く。

 「絢斗は・・・・・・俺の王子様だから。あ、あのっ俺たち付き合ってます」
 「セフレじゃなくて」
 「痴漢には教えない」
 「あれは逢引きといってな」
 「うるせぇ!今度やったら俺の作ったカレー食わせるからな」
 「あはは。甘口なら食べれますけど」
 「死んでも知らねぇぞっ!!」
 「開示だな」
 「はいはーい、痴話喧嘩しないの」
 「それでは新メンバーに新米ダーリン♡お迎え、でいいのか? 絢斗」
 
 頷くと、和真の音頭でグラスをぶつける、賑やかな食卓。
 米を研いだことがない路嘉が食べ物として成立するカレーを料理できるか否か。ダメなら俺がダールカレーを作ってやると頭を撫でる先に唇が降り注ぐ。俺たちの夜は、これから。

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末期Be-Reviewに関する詩

天に星を仰ぎ
地に菫を愛で
それだけだった

それだけの人がいた

そう、それだけの人なのに

いや、だからこそだろうか

星を泥中に引きずり落とそうとした者たちがいた
菫を必死になって踏みつけようとした者たちがいた

その人を痛めつけようとした者たちがいた


彼らは許せなかったのだろうか

消え去った明治の魂が再び芽吹いては
抒情と理性と規則のその菊花が場を照らすことを
そこにこそ詩が宿ることを
証明されることを

引きずりに引きずった昭和の惰性が枯れては
暴言性と感情が剥きだしとなった汚物が場に不要なことを
そこには決して詩が宿らないことを
暴かれることを

だけど、それを認められなかったがゆえに
彼らは場を滅ぼしてしまった


それだけの虚しいことだったじゃないか

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あるツイテない、憑いている一日


満員電車でおもいっきり足踏まれて
紫色した髪の毛のおばちゃんには
聞こえよがしあからさま 舌打ちされて


駅に降りたら お腹が緊急事態
そんなときにかぎって トイレ大渋滞
からの トイレロールがカランコロン


立ち寄ったコンビニでサラダコーナー見ている
若い女の後ろを通ろうとすれば
とつぜん理由のわからない 
まったくイミフな因縁つけられ
気持ちわりぃ と暴言まで吐かれ
お前もな、と云い返してやりたくて
ノドまで出かかったコトバ
詰まりそうになりつつ
どうにかこうにかやっとの思いで飲み込んで



帰り道
あとから



悔しいやらおっかないやら
なんなんだよあの女


ムカムカしながらイライラしながら
やっとのこと家に辿り着いて
持ってる荷物ぜんぶ放り投げ 
着替えもそこそこ メイクも落とさず
ベッドに倒れ込んだら もう起き上がれない



こんな日はもう 笑うしかない
笑うしかない
誰かのせいにしたって仕方がない
どうしようもない




近所の飲み屋から漏れてくるヘタクソなカラオケ音
上階から聞こえてくるドスンドスンというすごい物音


深夜3時過ぎ 突然鳴りだす知らない番号からの着信音に
目が醒めたら眠れない



こんな日はもう 笑うしかない
笑うしかない



鏡の中のあたしの顔は 
やや いや大分ひきつっている
目の下にはびっしりクマちゃん
まぶたも頬も浮腫んで
パンパン 風船みたい
ためしに針で突っいたら 
パチンといい音立てて
弾けて吹っ飛ぶかしら
したらもちっと マシな顔になるかしら



な~んてね



そんなバカげたことでも云ってなきゃ
とてもとても
こんなどうしようもない夜を
ひとりでやり過ごすには
淋しすぎて心細すぎてたまんなすぎて
なんもかんも投げ出して
逃げ出したくなってしまうから


だからもう
もう笑うしかない
笑うしかない




もう笑うより
ほか








 


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矢部遥は少しずれる(ある日の矢部遥 第四話)

矢部遥は少しずれる。

ずれる事を感じている。
ずれるのは、外と内。
反応と認識。

ずれたら困る――訳でも無い。
不愉快――な訳でも無い。
ぴたりとあっていても――それでも良い。
無理にずらす――訳でも無い。

ただずれているとき、その時に個を認識する。

ずれるとは、大きな海の中にも海流があるような

矢部遥と言う一つの流れ。

混じり合い、入れ替わり、その位置を時々変えながら、しかし流れは独立している。

その流れは ずれとなって初めて認識できる。

遥は 今 ここにいる と。

遥は その内なる流れに 手を浸す。
遥は その内なる水位の 浮き子を見る。
ずれが大き過ぎた時 その時だけ
少しだけ 意識を向ける

水の中の水
内なる流れ

その流れを 少しだけ 速めたり とどめたり

海の中にある 自分の水門


「ん、」


とかすかな囁きが聞こえた時

それは矢部遥が、小さな調整を行った時。

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混ざる

人混みの中に身を置いても
孤独は拭えないのに
人混みの中に混ざり込み
ほっとすることはある

電車の中で揺られているうちに
隣り合う人たちと混ざり始める
ような気がしてくる
自分と誰か、誰かと誰か
見知らぬもの同士が混ざり合い
大きなひとつの塊になる
ような気がしてくる

混ざり合うとき
意識はあるだろうか
混ざり合ったものに
心はあるだろうか

人混みの中で混ざり合う孤独に
安らぎは訪れるだろうか

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して、ん。

やっぱり、ここから、えぶりたいむ
きづいてね さきにいってるから
しんじてる

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リノリウムジゴク

一組のあなたが
短靴下を捲り上げると
白い足首の内側に
筋彫りの六芒星や✕印
いたいいたいいたづらなので
その筋線はところどころ震えて
いいたいいいたいすきといいたい
いいたいだけですきではない

日除けの無い理科準備室で
──────見せて貰つて、

床板の矧がれた視聴覚室で
──────見せて貰つて、

ヤンマガやBOMBで覚えた事で
やれる事は精精これぐらい
あそこで待つ先には、
到底ゆきつけないジゴク
三組の私は三組に戻つて
黒板を消してゐる
気配を、不実を、消してゐる
一組のあなたは、
別の校舎の防火扉の重みの前で
また色目を使つてゐるのだらう

体育館のリノリウムの上で
孤立無援となる五時限目ジゴク

バスケ部の男女が性能順に
入れ替わり立ち替わりジゴク

──────見せて貰つた、のだけど

カピカピに黄ばんだ慾暴は
ポリエステルの制服生地の表を
緩慢に滑落してゆくジゴク

https://i.imgur.com/6LTZ0Wt.jpg

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ほどける

荷を解く
引っ掻き 捲れた爪痕

ぬるい熱が 残る

衣を一枚ずつ
滑り落とすも

何処へも行かず
ただ 一如

芥の思い
呪縛

永劫の結び目は
美であり

解けこそは
その死

── 碧井雫

#碧井雫 #詩 #現代詩 #言葉

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古本屋の女主人は
若くて
美しくて
両の目の間が
人より少し離れている

本をめくりながら
チラリとその方を見たりすると
何故自分が生きているのか
時々わからなくなる

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ポスト・ポスト・モダンの条件

 いまや大衆こそ絶滅危惧種だ
 なぜって
 いまどき中学の二年にもなりゃ
 ニーチェ、オルテガ二、三引用し
 嫌な奴皆ファシストにしちまうことくらい
 簡単だからね

 一億総質的少数者化だ

 この国にゃもう大衆なんて
 100 個体くらいしかいないんじゃないかな
 しかもそのうち
 メスは0だ

『ゴブスレ』なんかのゴブリンの設定って
 なんかそんな状況
 反映してんじゃないかな
 そう
 いまどき流行らない反映論だよ
 それに僕たちにゃあんな生殖能力
 絶対ないんだけどね
 レッテル貼った対象に過剰な生殖能力付与
 ってのも
 排除の常套手段だったんじゃなかな
 そしてこの社会の子供たちが
 誰かに掠め取られてるって
 そうなるともう「#MeToo」なんかも
 低価値者に対する強制断種の色
 帯びてくるよね

 でも確かゴブリンって
 古い墳墓とか地下水道とか
 光ある世界の裂け目んなかに
 棲んでんだよね
 僕たち大衆の生き残りたちが棲んでんのも
 なんかそんな
 暗い裂け目んなかだよ
 でも僕たちゃこの暗い裂け目んなかに
 君たちいわゆる
 数のうえだけじゃないマイノリティのメス
 攫ってきて自分たちの子
 孕ませたりなんかしないけどね
 静かに滅んでくつもりだよ
 いったろ
 僕たちにゃ過剰な生殖能力なんてないんだ
 だからここで静かに静かに
 滅んでくつもりだよ

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スストアで

剥がれた分度器を
落ちている人のように
並べていくみたいに
拙い息継ぎが
街の柔らかいところに
終わっていくみたいに
コンビ、ニエン、スストアで
スストアで
淡い方の手を近づけて店長は
小鳥を飼い始めた
美しくて知らない名前を付けると
スストア、それだけで
開いててよかった

週末がある夏の日に
交差点は作られていく
ここでは何も釣れない、と
空色の子供たちが
スストアで
銀行強盗の相談を始める
悪いことをしていなくても
許されないことに傷つく時が
いずれ来るというのに

スストアに吹く風が
スストアに笑う風が
スストアに息絶える風が
山手線の吊り革を揺らして
また風になる
店長はバックヤードに入ったまま
行方不明になってしまった
わたしは待ちながら小鳥と暮らし始める
最初から店長は
小鳥だったのかもしれないと思う
スストアの咲く庭で
わたしたちは愛を
語っていただけなのかもしれないと思う

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ティーチャーズ・ペット


カーボン鉛筆の芯が折れて転がる
熱のこもった午後 黒い旗
地下道に似た県立高校の廊下
紙を裂く匂いまでわかりました
幼さをむさぼる人の気配で
三角定規の影も歪む バランスが悪いから
密接した呼気は部屋にたまっていく
伸びすぎた私の前髪が欲望の言い訳ですか
青白い蛍光灯が見ていたことの
いっさいを忘れてしまい
ぼんやり目覚めた冬の朝にだけ
膿んだたましいを温めるなら
量産型
よくある詐欺師の生き方ですよね
苦しみに満ちた自分の生命を抱えきれず
落ちていくとき少女を道連れにする
夢の残像を背中に生やして
留守番電話は聴かずじまいの先生
さほど強くもない風が吹き
何事もなかったように日が暮れ
いつか二人で標本になるの?

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逞しいリスの女の子

秋の始まりの風の音は
愛くるしいハーモニカの音

なんて

わたしは笑って胸に抱く湖を思う
音色が湖面を滑り来るよな小さな波に
水色の手すりにそっと触れたら、
ずっとずっとちっぽけな自分のままでいたいって胸の底から思ったんだ


でもサヤカさんのパティスリーへと行くためには、
まあるいどころではない曲がりくねった坂道を登らなくっちゃなりません


サヤカさんわたしサヤカさんが欲しい、というよりかはサヤカさんみたいになりたいのかもしれません。そうしてサヤカさんみたいにザラついた現実を手にしたいのだと。

ハチドリの、ねえどうしてハチドリのホバリングみたいにサヤカさんは話すのかな?ガサツ!いいこと?教えたげる。会話の言葉数は1対1が基本です。それをあなたは9対1ほどにまでしておいて悪びれもなく…

胸の湖もいいけどそれこそわたしが、よし、これからは湖よりも雪の村を心象風景にして歩いていこう(!)とでも思ったとしたら、翌朝には陽だまりのように淡くなっちゃうんじゃないかって。そんな不確かなものに自分を重ね続けてくのが不安なの。


ねえ、秋空に浮かんでるのは
シュークリームのフワフワのクリームなんですって

X丘の愛らしい切り株の上には
年に数回森の精がモンブランを置いていくんですって

ああわたし、
今すぐにでも逞しいリスの女の子になって、
あなたの上品な胸に飛び込んでみたい

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つきなみ怪談  ラジオ体操

   あれは小学四年生の夏、確か八月になったばかりだったと思う。私はとにかく朝が苦手で、ラジオ体操に行くのが苦痛で仕方がなかった。だけど近所に住む従姉妹の岬ちゃんから「約束なんだから、破ったら遊んであげないよ」と言われ渋々、参加していた。彼女のまとめ役としての責任感は執拗なくらいで、町内の子どもたち皆んなを皆勤賞にしようとしているようだった。
   その日も、何度も母に起こされ、「あちぃなぁ……」とボヤきながら家を出た。首に下げたスタンプカードが既に汗をかき始めた肌に張り付いて、不快だった。集合場所に向かう途中、男の子と女の子が声を掛けてきた。違和感。なんだろう、声は聞き覚えがあるのに。この子たち、誰だっけ? 建物の影に浮かぶ顔は、どちらもぼんやりとしていて、ピンぼけの写真みたいだった。
   神社までのゆるい坂道を登り切る頃には、十人ぐらいの集団になっていて、違和感の正体に私ははっきりと気づいた。
二種類しかない。
男の顔と女の顔に別れていた。どちらも同じような造作で、目が異様に大きくて、頬はふっくらと膨らみ、口元は笑ってるかのように歪んでいる。だけど、僅かな違いがある、多分、鼻の形だったかと思う。尖った鼻と丸い鼻。
  十人以上もいるのにふたつの顔しかない。思わず後退った、瞬間、肩を叩かれ私は半ば飛び上がった。

「おはよう! ん?どうしたのさ」

   岬ちゃんが立っていた。私がこの異変をどう伝えようかと、言いあぐねているうちに、彼女はいつものように元気いっぱいに小走りで、皆んなに駆け寄っていく。岬ちゃんは普段とまったく変わらない様子で、他の子どもたちと笑い合い、じゃれ合っていた。
   帰ってしまおうか、と思っていたら見守り役のおじさんが来てしまった。何事もないかのように整列してラジオ体操が始まった。跳んで、捻り、反らし、延ばす、なんだかやけに揃ってみえた。二種類だけの顔が朝日に照らされて、てかてかと光っている。腕を回すたび、嫌でも隣の顔が視界に入ってしまう。でも、私と岬ちゃんだけが普通の顔をしていることを除けば、何事もなかった。体操の後、岬ちゃんが皆んなのスタンプカードにいつものようにハンコを押していった。ただ、その日のハンコは、いつもの太陽ではなかった。
笑っているようで笑っていない、目が大きく歪んだ人の顔。あの顔だった。
   帰り道で私は岬ちゃんに聞いた。

「ねえ、みんなの顔……変じゃなかった?」
「どこが? 普通だったよ」

   彼女はきょとんとした顔で首を傾げた。翌日、私は熱を理由にラジオ体操を休んだ。しかしその次の日、岬ちゃんに「約束守れないの!」と怒鳴りつけられ、強引に引っ張り出されてしまった。
その日は、すべてが普通だった。
顔も声も、いつも通り。ハンコも太陽の絵柄だった。ただ、私のカードだけに残った前日の歪んだ顔のハンコは、消えなかった。
この出来事がきっかけで、学校では一時期こんな怪談が流行った。

「ラジオ体操を休むと、代わりに誰かが来て入れ替わられるんだって」

   でも、実際には違った。顔は二日目には元に戻っていたし、誰も消えたり入れ替わったりしなかった。不気味なハンコも、夏休みが終わる頃にはみんな忘れていた。……ただもうひとつ、今でもわからないことがある。

あの朝、最初に声を掛けてきた男の子と女の子。

結局、あの二人は誰だったんだろう。
他の子たちとは明らかに違って、ずっと最後まで二種類の顔のままだった気がする。

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二階から目薬

起きていると目を使い
あくびすると涙が出る
涙を拭くとかゆくなり
繰り返すうちに目頭は
触れるだけで痛くなる

あわてて眼科に走る
 炎症ですね
 目薬出します
 一日4回 朝昼夕夜
 3時間ごとに
 二種類です
 5分間隔を空けて
 ひとつは冷蔵庫で保管を

肝心の注し方を
教えてくれない

そして今日も
目薬がこわい

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3丁目の右

3丁目の右にはコンビニがある
夜の8時になると惣菜が割引される
不思議なコンビニがある

3丁目の右にはクリーニング店がある
老夫婦が切り盛りする
昔からあるクリーニング店がある

3丁目の右にはブティックがある
艶やかなおばさまが服を売る
いつもセール中のブティックがある

3丁目の右には何かがない
今まであったはずの何かがない
空間も記憶も切り取られたように
一部分が抜け落ちている

僕にも切り取られた
知らない記憶が
あるのかもしれない

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 3

 1

 斜面の北側、ミズナラの根のあいだの窪みに横たわる獣。皮毛にはまだ水分が残り、口の周りにクロバエが集まる。
 腹部が膨らみはじめる。皮膚の下でガスが移動する。耳の内側、鼻腔、目の縁に、卵が産みつけられる。

 雨。水は窪みに溜まり、毛のあいだを流れる。卵のいくつかは土に紛れる。残ったものは、皮の内側で動く。

 腹がほどける。

 膨らんだ皮膚が裂け、内側のものが外へ出る。匂いが尾根を越える。ハシブトガラスが舞い降り、トビが旋回する。眼球が運ばれる。舌が運ばれる。夜、肋骨のあいだから内臓が引き出される。

 ハエの次の世代が羽化する。窪みの上の空気が羽音で満たされる。風が吹くたびに、羽音が近付き、遠ざかる。シデムシが土の下から這い上がり、死骸を掘り、その下に潜り、肉の繊維を解体する。

 毛皮は輪郭を失う。

 骨が露出する。第一頸椎、肩甲骨、腸骨。白いものが地表に現れ、雨に洗われる。残った皮は薄くなり、色を失う。

 落葉。窪みのまわりに葉が積もり、白いものを覆う。

 初霜。ハエはいない。

 雪が降る。風が通過する。雪は解け、また降り積もる。

 雪解け水が斜面を流れ、骨のいくつかが下方へ動く。大腿骨が根のあいだに止まる。頭蓋骨は動かない。眼窩に落ち葉が詰まる。

 窪みの土から、若いシダが伸びる。葉はまだ巻いている。コケが広がる。

 また葉が落ちる。頭蓋骨の上にコケが厚みを増す。角は折れ、片方が運ばれ、片方が残る。骨の表面に地衣類の白い斑が現れる。

 ふたたびの芽吹き。

 窪みは平らに近づく。ミズナラの根が、頭蓋骨のあった場所を貫いて伸びる。シダは群落をつくる。土の色は、まわりより濃い。

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エンドゲノス

深淵に沈々と積もりゆく平熱の終焉を冷徹な回路が告げる未明の静粛において、血管を狂瀾のごとく満たす焦燥の反乱が 裂けて、割けて、避けて。

客観を拒む変乱となって、細胞を侵食してゆく。​過呼吸を誘う理由もなき微熱のなかに、啼いて、泣いて、薙いて 。

自己の自壊を望むかのような不可逆の変節が始まり、分けて、別けて、判けて。

それは渇望という細胞の解放であり、変貌を宿命づける胎動となって。

理性の外側へと、限界の向こう側へと、溶けて、解けて、熔けて。

遍く輪郭を融解させていく。

​恒常性を破綻せしめる閾値を越えて、
大脳皮質の奥底で爆ぜる、 内因性の火を 全て、焚べて、焼べて。
 私はただ、網膜の裏で観測する。

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 3

 2

父ならざる父たちの世界

女の子は家には帰りたくないと言う
醜いものまでも美しく光る
歪みの磁場へ帰りたくないと
身体じゅうからさびしさと
人々の無関心の匂いを放ちながら
その目は家ではない家を
血縁ではない血縁を
誰のものでもない国家をさがして飢えた
森の奥から狡猾なB面の人々が
獲物の匂いをかいでいた
母が少女時代に録音したカセットテープの
すてきにさびしい音楽で育った
もう子どもではなかったはずの大人たち
女の子だった私は不幸にして彼らを懐かしむ

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 2

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あしたは、どっちだ?

あしたがどっちなんて 
あたしにはもうカンケイないの 


どうせ行き着く先は決まってるんだし 
だったら 


どこをどう歩いたって
同じことじゃないの









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 2

 4

仕事幽霊飯弁慶、その癖夏痩せ寒細り、たまたま肥ゆれば腫れ病(新釈ことわざ辞典 その5)


***************

三寸の舌に五尺の身を亡す
 言葉はクスリにも鋭いナイフにもなりえるもの
 どんな言葉だってナイフにもなれば
 クスリにだってなれるのに
 言葉に取扱説明書なんてないから
 使い方も使い道も誤っては
 いつでもそれらを振り回してばかりいる

***************

書いた物が物を言う
 いくら口で云ってみたって
 それは違うよと否定されてしまえばそれまでのこと
 証明するのはとても難しい
 だからどんな些細なことでも
 いつどこで誰に何をどんなふうに云われたのかされたのか
 記しておくのは大事
 動かぬ証拠となって
 必ずやあなたの身を護ってくれるはず

***************

愛多ければ憎しみ至る
 あの男に似ている あのばばあに似ている
 ただそれだけの理由で
 すべての憎しみが注がれることだってある
 それをもしも愛と呼ぶなら 
 随分残酷な愛もあったものね

***************

愛してその悪を知り憎みてその善を知る
 あの娘はかわいいから きっといい娘に違いない
 あの人に限って そんな悪いことするはずがない
 だってわたしが好きになった人だもの

 って 

 善も悪も長所も短所も
 感情っていうフィルターを通せば 
 いくらでも変わってしまうもの

***************

愛は小出しにせよ
 惚れた腫れたも、どっちにせよ
 惚れた腫れた方が弱くなってしまう
 好き好き大好き〜ってハートマーク全開なのバレバレだと
 そこに付け込んで 好き勝手にし始めるものよ
 なんでも許してもらえるって

 相手が欲しがるだけ与えてはダメ
 甘いものはとればとるだけ 喉が渇くのだから
 少し少ないくらいで小出しにするのが
 ちょうどいいのよ

***************

空き家で声嗄らす
 あとからあとから抑えきれない感情が湧いてきて
 焼き尽くされてしまいそうで
 助けてよって 誰か返事をしてよって
 だけど 誰も返事をしないこともわかってる
 こんな淋しい夜 ひとり部屋の中で声を嗄らしても
 誰にも知られることもない

 外ではけたたましいサイレンを鳴らして
 今まさに救急車が 走り過ぎていった

***************

生きてる犬は死んだライオンに勝る
 凡人でも生きてる方がいいって
 なんだか大事マンブラザーズのそれが大事みたいなこと云うのね
 けどたとえ死んでしまったとて
 なにかを成しえた人の名は
 いつまでも語りつがれる
 生き続けていくという矛盾

***************

言わぬことは聞かぬこと
 云ったのに聞いてない知らないと云われることはよくある
 云ったくせに云ってない聞き違いだと開き直られることも
 
 この会話は、録音させていただいております
 云ってないなんて 忘れたなんて云わせない

***************

謂れを聞けば有難や
 別になんとも思っていなかった人の意外な一面を知ったり
 好意を寄せていた人の裏の顏を垣間見たり
 謂れを知ったために見方が180度変わってしまう
 なんて頼りないのかしらね

***************

明日は明日の風が吹く
 そりゃそうでしょうけど
 心配したってどうにもならないって
 わかっちゃいるけどやめられないとまらない
 なるようになるって
 なるようになったためしがないから
 やめられないとまらない
 かっぱえびせんなんでしょうに

***************

あるは厭なり思うは成らず
 好きじゃない人からいい寄られても ただ迷惑なだけ
 わたしがいくらあの人を好いたところで
 わたしのことを一ミクロンも好きじゃないあの人にとってもまた
 ただただ迷惑なだけの話なのよね

***************

悪妻は百年の不作
 それを云うなら悪夫だって
 百年、いやいや
 BC時代からの不作だって
 声を大にして云ってやりたいわ

 ねぇ、そこの奥さん

***************

色好みの果ては怪しき者にとまる
 自分にはもっとふさわしい相手がいたのに
 仕方がないからお前で手を打ってやったんだ
 なんてさ
 なんであんたが選ぶ側なのさ
 こっちだって もっとふさわしい相手がいたのに
 仕方なくあんたで手を打ってやったのよ

***************

隔靴掻痒(かつかそうよう)
 いつも何かが間違っていたような気がします
 うまくいかないのは、きっとそのせいです
 だけど 何がどう間違っていたのか
 どこから間違ったのか
 まるで見当がつかないから
 ほとほと困ってしまっているのです

***************

陰に託して影を求む
 物陰に入って自分の影を探そうったって
 探せるわけなんかなかった

 そんなごくごく当たり前なことにさえ
 気付けなかったなんて

 わたしったらホント 
 どうかしてたんだわ

***************

ならぬ堪忍するが堪忍
 もうこれ以上はとても我慢できない
 耐えられないと云っているのに
 それでもまだ耐えられる
 我慢できると本気で思っているなら
 それは多分、まだ我慢できるだけの余裕があるってことで
 それで我慢が足りないとか 
 本物の我慢じゃないなんて云われるのは
 ちょっと違うんじゃないかと思ってしまうわ

***************

無い子では泣かれぬ
 泣かないで済むんなら 
 そっちの方がよかったんじゃない

 子どもがいるから 
 子どもがいるせいで

 しなくていい苦労をしなきゃならない
 そのすべてを
 子どもになすりつけようとするくらいなら

***************

血は水よりも濃い
 だからこそややこしく
 引きちぎることも 断ち切ることも出来ない

***************

犬は三日飼えば三年恩を忘れぬ
 わたしがまだ赤ん坊のころ
 よく熱を出しては泣き止まなかったとき
 父親は「うるせえ!テレビの音が聞こえねえ!」と怒鳴っていたと
 母親は愚痴が始まると 憎々し気にすぐその話をはじめる
 熱を出してる子どもの心配、というよりも
 父親のその怒鳴りによる憎しみが
 泣き止まないわたしへの恨みつらみに転じているような云い方

 母親は「お前が熱出して泣いたりするから」怒鳴られた
 あの声がいまも耳に離れない どうしてくれるんだと
 わたしにはどうすることも出来ないことで
 いつもネチネチ責めてくる

 どうせなら 子どもではなく
 犬でも飼えば良かったんじゃない
 犬は受けた恩は忘れないっていうし

 でもそんな犬だって
 時には噛むことだってあると思うわよ
 扱い次第ではね

***************

形は生めども心は生まぬ
 人間誰しも ひとりにひとつずつ
 心を持って生まれました

 親が生んだのは子の躰で
 心までは生んでいない

 あなたの心は誰のものでもなく
 この世界でたったひとつの
 あなただけのものです

 あなたの心が痛がっているのは
 その親とはまったく違う証拠
 何故か?
 
 ひどい言葉を投げつけてるその親は
 決して痛がってなどいないからです

***************

一犬影に吠ゆれば百犬声に吠ゆ
 どこかで犬が吠えると
 一斉にあちこちの犬が遠吠えをはじめるように

 誰かが煽った不安や恐怖が 
 あちこち伝染するってこともあると 
 わたし思うわ

***************

煙も眉目よい方へならでは靡かぬ
 人間見た目ばかりじゃなく、中身も大事
 そんなのは建前に決まってる
 中身なんて付き合ってみなけりゃ判らないんだし
 大半は見た目で決まってしまうものじゃない

 でも 煙も美人の方に靡くってさ
 こっちに煙ってこなくて
 却っていい具合かもしれないわ

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色の白いは七難隠す
 だったら色の黒いは難だらけですか

***************

子を見ること親に如かず
 子どもの好きなもの 
 好きな音楽
 好きな小説
 好きな漫画
 好きな食べ物 
 
 どんなことに興味があって 
 どんなことが苦手なのか嫌いなのか
 あなたは知っていますか?

 子どものことを誰よりも知らないのは
 あなた方親の方だということ
 少しは理解してください

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諦めは心の養生
 小さいころから 諦めるのがクセになっていました
 いくら望んでみたところで 
 こっちを向いてくれやしないもの
 いつまでも待ち望んだって仕方がないじゃない

 あ〜またかと思っては 
 しょうがないしょうがない
 と どうにかこうにか心に折り合いをつけて
 ここまで生きてきました
 これは心の養生だったのでしょうか

 抑えつけられてじっと我慢し続けてきた内なる子どもが
 いまごろになって 駄々を捏ね始めているのです
 もうこの先これ以上
 この子に諦めを覚えさせたくないのです

***************

鼠壁を忘る壁鼠を忘れず
 やったほうはすぐに忘れるけど
 やられたほうは死ぬまで忘れないものなのよ
 あなただっていつも云ってるじゃない
 あいつが呪いをかけてるだの操ってるだのって

 だけど 自分がしたことは果たして覚えているかしら?
 まさか何もしてやいないなんて云わないわよね?

 躰についた傷は そのうち癒えることもあるけど
 心に負った傷は 意外と重症だったりもするのよ

 傷が深ければ深いほど 痛ければ痛いほどに
 人の恨みつらみっていうのは
 とっても根っこが深いのよ
 覚えておくがいいわ

***************

箸に当たり棒に当たり
 あなたが本当に文句を云いたいのは
 苛立ちをぶつけたいのはわたしじゃないでしょ?

 一体わたしがあなたに何をしたというの?

***************

陰では王様の事も言う
 悪口を云うなら せめて聞こえないところで云ってほしいものよね
 もちろん 本音としては云われたくもないし云いたくもないけど

 性格がよくて評判のあの人でさえ
 一緒になって悪口云っていたわ
 うまいこと本性を隠していたってわけね

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云い出しこき出し笑い出し
 自分でしたオナラを 臭い臭いと騒ぎ出す
 なにかことが起きたとき
 大抵は 一番最初に騒ぎ出した
 人間の仕業

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心頭を滅却すれば火も亦涼し
 いやいや そんな滅茶苦茶な
 熱いものは熱いし、ツライものはツライでしょうよ

 熱湯を浴びせ続けられても
 丸焼けになったとしても
 果たして同じことが云えるのかしら

 だとしたらあなたには
 血も涙も通っていないのじゃないでしょうか

 ためしにあなたにも
 同じことをしてみましょうか?

***************

大事は小事より起こる
 事件に大きいも小さいもない
 踊る大捜査線でよく
 すみれさんや青島くんが口にしてたセリフ

 最初から大きな事件を犯すというのは稀な話
 大きな事件というのは 
 言葉を換えれば 最悪の結末とも云える

 この社会には 事件と名もつかない事件が
 そこら中で起きている

***************

海賊が山賊の罪を挙げる
 お前が云うなって話だよね
 あいつの方がもっと悪いコトしてるじゃないかって
 それでお前の罪がチャラになんかならないんだから

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終わりよければすべて良し
 だからといって、何をしてもいいってわけでもないでしょう
 散々悪いことして、散々ひとを傷つけて
 終わりよければも
 あったものじゃないわ

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居候の三杯目
 居候の分際で、三杯目をおかわりするなんて
 図々しいにもほどがあると思うわ
 遠慮も会釈もないとはまさにこのことを云うのよ

***************

狐の嫁入り
 天気がいいのに降る雨
 小雨降る中、お嫁に行く狐さんとその一行

 白無垢姿のちょっと俯き加減で歩く狐さん
 雨のせいもあってか 
 とっても幻想的で神秘的

 相手の狐さんはどんな方かしら?
 きっと傘を持って
 雨に濡れ濡れ 待っているのやも

***************

果報は寝て待て
 あせってみても仕方がないことは解っているのです
 求めたからって手に入るものでもないことも

 だけど あとどれくらい寝て待っていたら
 幸福とやらはやってきてくれるのでしょうか
 本当にやってきてくれるんでしょうか

 わたしのことなど気づきもせず
 素通りしてしまったりはしないでしょうか
 やはり寝て待ってばかりではダメなのでは?

 こちらから動かなければ
 向こうからやってくるなんて
 ありえないんじゃないでしょうか

***************

踵で頭痛を病む
 わたしが心配する必要もなかったのよね
 あの時わたし 昼ごはんの最中だったけど
 体調が悪いって 切羽詰ってる感じだったから
 もう味もなにもわからず 急いで食べて

 電話したら 出ない

 心配させるだけさせておいて
 少し経ったら ケロッとした声で電話してきたね

 わたしが勝手に心配しただけよ それだけよ
 それでもさ それでも
 。。。。。。これ以上云うのは止めましょうね

 風の噂で 結婚したって聞きました
 病気の方は もう大丈夫なのかしら
 またまた 余計なことを

 わたしの悪いクセね

***************

世の中は九部が十部
 世の中 思い通りになんていくわけないし
 すべて計画通り なんて
 夜神月でもあるまいし

 完璧主義者はなにも手に出来ないとも云うし
 好きな音楽を聴いて 好きな映画ドラマを観て
 描きたい詩を綴って
 時々は友だちとどこかへ出かけたり

 それ以上 一体何を望むことがあるだろう

 掌から零れ落ちていったものは山ほどあるけれど
 たしかに掴んでいるものたちがここにある

 それだけで 
 ただそれだけで

***************








 

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老驥千里 ―― 俳句百句 ――

老驥千里 ―― 俳句百句 ――


笛地静恵


【ノート】夜の暑さや将来の不安に眠れなくなり、俳句を詠み始めました。一時間余りで、百句を得ることができました。季語の混乱や重なり類想もあると思いますが、あえて推敲せず、一夜の記録として、まとめておきます。ご笑覧いただれば幸いです。笛地静恵 二〇二六年五月二十日 


昼顔の壁を支える廃医院


鉄の門ひとへひらきて夏しぐれ


夏草の空き地がここにあったっけ


モニタ消し部屋の四隅のうすぐらさ


蚊火ひとつ階段迷う雑居ビル


コンクリの乾ききったる暑さかな


一畳の場所さえあれば昼寝どき


氷水すこしつぎ足すブランデー


高架下排気ガスにも草茂る


スマホ置く机の上の団扇かな


名も知らぬ小さき虫の涼を呼び


アスファルト裂け目へ水の走りけり


夕立のあとの乾きを待つベンチ


窓枠の三角形の夏の空


古本のページに曲がる蚊帳の糸


公園の滑り台にて目玉焼き


冷房を切ればま白き障子あり


鉄塔の影に飯食う正午の黙


麦湯の輪ふたつ残りて午後の五時


爪を切るホテルに遠し都市の歌


地下室のスチールのドア涼しさよ


文字のなき日記を閉じる蚊喰鳥


路地抜ける白のブラウス夏帽子


古びたる鍵の重さや五月雨る


今の世のともに隙間を蜘蛛ひとり


古寺の瓦を飾る夏の蔦


老人の手の甲に似てるね破蓮


汗をかき電車行きかう線路伝い


不死鳥の仮現のつばさ入道雲


剥げ落ちし ロナインの字の夕日影


金魚鉢濁れば濁る濁るだけ


風鈴の鳴らぬ時間を計るかな


ぬしのなき庭に赤裸の百日紅


古机中二の傷に夏の月


捨てられた自転車にさえ夕立は


沈む日とアイスキャンデイ雲の峰


誰も聴いてないラジオのノイズ夏ごもり


畳の目藺草を毟り麦湯飲む


夕暮れの砂日傘のみ路地をゆく


灯籠の消える刹那の歪みかな


干し草の匂いに遠き昭和あり


壁時計きざむ音だけ額の花


網戸越しドットに見える遠花火


古里の駅の無人を泣く蝉よ


引き出しの奥に忘れた扇の香


消え残るあいつの匂い夏夕焼


庭石の乾くを待つか蝸牛


歳月を床柱抱く夏の闇


水たまり乾けば消える蟻の道


歳をふる我が身について蛍火よ


草の葉へぶら下がりたる露の秋


水馬水のくぼみを踏みしめる


薫風のゆりかごのごと蜘蛛の糸


蚊の鳴くや耳のうしろの寂しさに


風に折れそうで折れない夏草よ


白日の蟻の行く手をさまたげぬ


朝顔の蔓の細さにろくろ首


香虫めひげの動きのひそひそと


金魚の尾水も漏らさぬ泳ぎぶり


葉の裏に蝉の抜けがら三個哉


指先でさわれば消えた泡の恋


薄氷さじに溶けゆく氷水


夜の蜘蛛糸を繰る手の静かさよ


炎天へ燃え尽きる不死鳥の声


畳へと針千本の暑さかな


爪先を触れてくすぐる夏の波


日陰へと逃げるミミズの長さかな


雨だれにひと粒ずつの重さあり


うちわ風あの子の髪を揺らしけり


水底の光の筋を食う金魚


永遠の夕闇を告げ蛍ども


若葉してかすかに透ける脈の筋


蛇のゆくf分の一ゆらぎかな


冷やし水のど通るとき形あり


すきま風糸のごとくに吹き抜ける


光回線(ひかり)ゆけディストピアへと夏の月


万緑の森へ吸われる電子音


ビルの群れ映画のごとし夏の川


AIの思考の果ての涼しさよ


ヘッドホンすきまへ沁みる蝉の声


スクリーン青のうつろい夜の雨


満員の電車のあとに汗の引く


タワーより高きところへ雲の峰


破蓮とネオンの照らす夜のホテル


薫風の雑踏を抜け改札へ


充電の赤き灯ほのか短夜の


信号の変わるを待てぬ暑さゆえ


鉄の街つらぬき通る夏の川


東京よせめて涼めよ夕の風


五月雨のわたし泣いてる窓にきく


SNS(つぶやき)の果てのためいき麦の秋


影のビルさがすがごとき旅ごころ


高架橋土浦の空広き夏


子どもらの笑いは去りぬ氷水


何もかも軽く薄くて郭公かっこう


鉄塔へ銀河鉄道夏の星


改札を出てスマホ出す遠花火


いまを生きるか友よ香虫よ


万物のしずもりのあと夕立のあと


古池もなき街をゆけ夏の旅



(了)

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スーファミとか(短歌集)




胃薬が不要になって卓の上 溜まるシートをがちゃがちゃ鳴らす

キッチンのシンクに茶碗を持ってゆき温水を押し暫し待ってる

漱石が胃を痛めつつ書き留めた小説を読む休憩時間

一日は座っていたな夕飯にコンビニ飯を買い出る以外

スーファミのソフトも沢山あったけれどきみの家には地下室がある

茶畑に猫がいたので「猫いた」と自転車前カゴに入れて走った

ビートルズ好きを公言した中二にして「オタクなのね」とそっと言われた

喫茶店の日と云うといえども月曜日喫茶店皆Clauseしている

ピザという大きなものを購(もと)めては卓の上にて大きなものよ

主夫の起床ははやいといえど三時にて三時というはまだ深夜です

二階は風呂の真下のクローゼットにてキュインキュインと音がしている

シャンプーの泡をたてつつシャワーのお湯はとめてないから流れていって

小麦粉が体に合わぬということを身をもって知る黙し空見る

かつて賢治はこんな四月の気層の底に苦々しくも足をはやめて

つかれてる妻を眠らせキッチンのシンクの錆びをこすりつづける

さくばんは米のこととかあったから今朝十時起きそれからは風呂

伝わるか静かに生きることを決めしかし決意を言うときの熱は

小説のように生きてるさいきんのまにまに流れゆく天気予報



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呪粉

春、風に流されて現れるあなた
わたしを侵していく
春風は心地が良くて、春のにおいは暖かくて
できるだけ近づきたくて
わたしはあなたがいかぬようにと
春で着膨れた
季節は過ぎる、わたしは終わりがくることを予感していた
過度の春を抱え込んだために
春の贈り物は抗原に変わる
そして引き起こされる症状で蝕まれていくわたし
それだけが遺って

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問わず語り/怪かくともかつぎ来たりて天楊の楔は、恋の伊路。

 こんばんは
 昨日、Xの投稿ができないにも関わらず、ここへ辿り着き♡押してくれた親愛なる皆さまへ、感謝の気持ちを伝えると共に・・・・・・
 お尋ねしたいことがありまして、再びエッセイに戻って参りました。

 私は様々な投稿サイトを利用しており、小説とエッセイを書いています。そのなかで、もし皆さまの記憶に私の恋の物語が綴られている場所があったら、教えてください。

 相手の名前は、在原業平/ありわらの・なりひら。
 平安時代初期に活躍した代表的な6人の歌人・六歌仙のひとり。天皇の血筋を持つ彼の名を古今和歌集や百人一首「ちはやふる」で、今でもその名を聞くことができるから初恋は永遠だよね。まぁ彼自身というより、彼をモデルにした『伊勢物語』の主人公の男に恋を覚えたのは、まだ10歳になる前。はっきり覚えているのは小学3年生から図書委員になったこと。志望動機は「毎日、本が読みたかったから」まさか物語の主人公に恋をしてる────なんて、誰にも言えなかったから。

 小学6年で、竹取物語や百人一首を習うことは知っていた。
 どちらも絵本や遊びで知っており、ただ古典を読むのが難しすぎて、中学になったら本格的に漢文とか勉強しますが、3年も待てない私は母に一生のお願いをします。
 古語辞典が欲しい。
 母はすぐに言いました「お誕生日プレゼントでいい?」今、欲しい。
 辞典は子供のお小遣い/小銭で帰る代物ではない。市立図書館に行くバス代もバカにならず、貯金は底をついていた。もう親に頼るより他ない。わずか10歳で、借入を希望。

 うちのお手伝いは何でも、喜んで賜りますからお駄賃を。増やしてくれとは言わないお駄賃を貯めて必ず、全額返済を約束します。
 部活もテスト勉強も頑張る、約束を守り、悪いところがあるのなら心を入れ替えていい子になるから、頼むこの通りだと泣きながら頭を下げた理由は、伊勢物語が難しすぎて読めない悔しさが、すべて。親から金を借りる禁忌に及ぼうとも、彼に近づきたい一心で母を説得して、ようやく手に入れた古語辞典。
 毎日ランドセルに入れて通学。自分の物だから、付箋を貼って、線を引き余白に書き込みを必死に続けた。

 伊勢物語の頁は上下、二段に分かれており、上段には物語。下段には現代語訳が書いています。

 しかし私がやりたかったのは上段の解釈を自分が納得する形で進めて、全部、意味も含めて暗記したかった。
 平安時代は数百年前。伊勢物語は過去の話で、作者は不明。
 会うことも叶わず
 誰に尋ねることもできない
 私と伊勢物語の間には、永遠とも思える長い時があって、追い付けない課題ばかり。どうしても辛くて涙が出る。でも、恋しくて涙が出ることを認めたくない私は伊勢物語を読み耽、月を見て詠う思いに心を寄せ、業平の傍にいるような錯覚を精一杯に楽しんだ。6年生になったら竹取物語を習う。やっと憧れの古典の授業を受けられる期待を胸に、教科書を開いたら・・・・・・

 ちょっとしか書いてない。

 驚愕のちょっとに、思わず立ち上がってちび猫特有のやんのかポーズ。からの、ふにゃらと脱力して机の上で伸びる。
 小学生だと思ってバカにしやがって。
 こっちは真剣に伊勢物語を、古典を、心の拠り所にしてやってきたというのに音読ばっか・・・・・・文法と解釈を、教えろっつーの!うぎゃあああああっ!!
 国語の授業が終わったら水飲み場で顔を洗ってもなお冷めやらぬ怒り心頭で、図書館にカチコミ。たぎる熱冷ましに雨月物語を選び、日本三大怨霊といわれる崇徳天皇の怨念にあろうことか癒される始末。ああ、なんという読みやすさ。乱世サイコー。こういう出会いが心の何処かに埋もれて残るから、後に菅原道真と運命的な出会いを果たして新たな恋を呼ぶわけで。

 この数年後、テレビ放送『まんがで読む古典』で伊勢物語が取り上げられ映像化された解釈を見て、より親密度を深める。
 幼い私は恋の在処を探そうと必死でした。
 叶わぬ恋に自ら溺れていたのではなく、とてつもない憧れを燃やしていたのだと知る。私は業平になりたかったんです。会いたい理由は、早く大人になりたかった私の希望。
 やっと理解できた。
 私に恋の手解きと心の美しさをずっと教えてくれた業平は、恋人ではなく師匠。気づきに溢れる涙と業平の尊さに震えることのできた素晴らしい思春期、一生懸命に本を読むとこうなります。だから中学になってからカーマスートラを読んでも、改めて盛り上がるような興奮と歓喜はうっすらでしかなく、性行為そのもの実技とし捉えていくことはそれほど刺激的ではありませんでした。だって情熱よりか本能的な生理現象に生じる理由など、実に身勝手なもので。若い頃のセックスはあまり楽しめなかった。こればっかりは成熟が必要で、恋愛の方が幸福度が高いと15の夜に見切りをつけた。

 そして迎える愛の物語は、もっと私を大人にさせてくれる。
 望んで受けた苛烈な男達の数々に見出したものは、とてもシンプルな感情でした。それもいつかお話できればと思います。

 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 
 さて、夜も更けて参りました。
 明日と待たず、私の近くで眠る貴之と手繋ぎ。夜の帳を下します。めでたしめでたし。

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 1

 2

スプーンをもった男

通学路の曲がり角には
いつもあの目玉があった
さびたオレンジ色の縁取りのなかで
僕らはさらに歪められていた
僕は僕のスレンダーマンのような身体を
目玉に見られることを恥じ
友だちは大きな口がことさら大きく映ると
こころから嘆いた
あれを見るたび父に似ていると思った
父は怒鳴るタイプではなかったけれど
ソースか醤油で食べてしまいたい人だった
夜になると 金属を洗う音が台所から聞こえ
誰かの尊厳を解体する音に似ていたから
布団のなかで息を浅くし
生き物のふりだけうまくなっていく時間を
集めてようやく大人のかたちになったよ

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 3

 4

水槽

水槽を泳ぐ めだか

目を合わせれば 一匹

上から覗けば  一匹

斜めからは   二匹

陸に根ざす わたし

地上に   ひとり

上空から  ひとり

内側に   ふたり


からだは
ひとつだと いうのに。

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 2

 2

金貨と目薬(2)

<3人の関係➊>
キャバクラで働く深水 琴李(23歳)は際立って美人とは言えなかったが、
スタイルの良さと頭の回転の良さで毎月の売り上げランキングでベスト3には入っていた。
深水が売り上げナンバー1に拘らないのは深水自身が夜の世界に対して執着が無かったからだった。
昼間のファッション雑誌の契約モデルとしての仕事を充実させて、
モデル業界で注目されて上手くすれば芸能界への進出を考えていたからだった。
予定していたモデルの子が事件を起こし、雑誌の大き目なイベント撮影が深水へと回って来たので勝負所と思い
店の常連客から貰った紹介状を使い会員制のスポーツジムへ行く事に決めた。
有名ともあって入会費と年会費だけでも百万を超えた。
しかし夢への投資と思い躊躇う事なく入会し受付でトレーニング・メニューの相談へと進んだ
夜の酒を抜くとは言えなくて不規則な生活からくる体のぬくみ取りとウエストの引き締めを中心としたエクササイズを頼んだ。
何人かのトレナーが交代でメニューに従いトレーニングを進めてくれた。
トレーニングの甲斐もあってイベントも好評に終わり少しずつ昼の仕事も増え夜と昼の仕事の割合差が無くなり、
ジムへ行く頻度が増えだした時に「僕が専属トレナーに成っても良いですか?」と声を掛けて来たのが
武内 達也(25歳)だった。
「良いですけど、追加料金とかが高いんじゃないですか?」の深水の言葉に「追加料金とかは頂きません。
深水様の活動の手助けをしたくて御声を掛けさせて頂きました。」と爽やかな笑顔と共にプレゼンして来た。
要するに私を雑誌で見たフアンの一人だなと深水は思った。
「良いですよ。追加料金も不要で私の事を応援して下さる人なら歓迎です。」と
自分の融通が利くし内緒で特別なトレーニングもして貰えるかもと下心満々で承諾した。
深水の思惑通りにジムでのエクササイズは快適なものとなった。
トレーニングの効果かスタイルも以前より磨きがかかり昼間でも時々だが脚光を浴びる様になり、
テレビにこそ出ないけれど何社かの大手ファッション雑誌との長期契約を貰える様にまでになり
昼の仕事だけで十分生活が出来る様になっていた。
武内とも二人で食事をする仲になり自然と夜を共に過ごし朝を迎える日も有った。 
しかし、深水は夜の仕事を量は減らしたとは言え辞める事はしなかった。
何故なら店に出る日が少ない事からレア度が高いと客からの指名度が高まったからだ。
そんな深水を我先に指名すると息巻く客が占める店内で、
初めての来店客にあてがわれるシステムで女の子が自動的に入れ替わるお試しタイム中で
静かに相槌を打ちながら静かに飲んでいる男が深水の目を引いた。
それが加賀見 陵介(25歳)だった。
一目見ただけで仕立てが良いと解るスーツを着こなしクールな顔で女の子を相手する様子は、
どちらが客なのかと思う程に店の女の子達が浮かれていた。
フロアーボーイに耳打ちして指名を数件キャンセルし加賀見のヘルプにセッティングさせた。
「深水 琴李と言います。」座るなり名刺を渡し「御名刺を御持ちでしたら頂けますか?」と
加賀見に喋る間を与えず名刺を要求した。
「加賀見 俊介です。」と言って名刺を差し出す俊介の手を優しく包み込む様にして名刺を受け取った。
「凄い、イラストレーターさんなのですか?
私も少しだけですが雑誌とかでメディアに顔を出しているので興味が有ります。
良ければ私を今夜、加賀見様の横に座らせて貰えないでしょうか?」琴李の言葉に頷くのを見て
フロアーボーイに指名が入ったと合図を送る。
加賀見の必要情報と自分のアピールをして深々と頭を下げてから太客の指名をこなし深水は今夜の仕事を終えた。 
~つづく~

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 1

 6

生き、絶える。

天使、生き絶える。

常世の体がこの世の重力に耐えられるはずもなく。

堕天の天下りは失敗に終わった。

滑らかな弧を描いた環は潰れて、

一方通行の直線となった。

もう戻ってこれまい。

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 2

 1

長い廊下


靴音は響かない
日々を映すような
窓ガラスが白く伸びる

学舎の中
どこまでも続くそれは
途切れ途切れに
歴史を紡ぐ

あの日の涙も
あの瞬間の歓声も
あの年代の残響も

全てを聴いて
全てを吸って
全てに還すように

進む道の先には
石ころがあって
ジャンプ台があって
たまに水溜まりも
たまに砂利道も
たまに越えられない跳び箱も
たまに泳ぎきれるプールも
たまに見えない穴も
足元を揺らすスパイスであって

多くを見送って
多くを迎え入れて

それぞれにしか見えない
道を
未知と
繋ぐ橋に
飛ばす風に
送る腕に
成っていく

私の足跡は
もうここに遺らない
私の声も
私の重さも
私の影も
ここに落ちて
ここで伸びて
ここから旅立つ

まだ見えない
きっとずっと
ゴールなんてわからない

そんな廊下を
進んで
辿って
蹴っ飛ばして
抱きしめて

私は私に成っていく
どこへでも行ける
どこにも行けない

逃げられるようで
逃れられない

私の後ろに
前に広がる

長い長い
それは

人生の音を
きっと探してる

誰の前にも
きっと

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 2

 1

民生食堂 あじさい 第3話 六畳一間

 夕方になって、空が急に暗くなった。
 朝の晴れ間が嘘のようだった。雲が低く垂れ込み、風が湿り気を帯びている。男は仕事を探して歩いたが、何の手応えもなかった。工場の門は閉じたまま、張り紙の募集はすでに古い。声をかけても、返事はつれなかった。

 気づけば、あの民生食堂の前に立っていた。
 用事があったわけではない。帰る場所へ向かう途中で、足が止まっただけだ。  
 暖簾をくぐると、女が一人で後片付けをしていた。
 客はもういない。鍋は火を落とされ、湯気も消えている。

「今日は遅いね」

 女はそう言って、手を止めなかった。

「……仕事が、なかった」

 男はそれだけ言った。
 女は頷かない。

「そう」

 それで終わりだった。

 外で雷が鳴った。
 間を置いて、大粒の雨が降り出す。音はすぐに大きくなり、店の屋根を激しく叩いた。

 男は時計を見た。
 いつもなら、もう帰宅している時間だ。だが、この雨の中を、あの部屋へ戻る気にはならなかった。考えないようにしていたことが、急に現実味を帯びる。

 女が言った。

「帰れる?」

 男は一瞬、答えに詰まった。

「……帰れなくはない」

「そう」

 女は布巾を絞り、吊るした。

 雨脚がさらに強まる。雷が近くなった。

 男は、何かを観念したかのように口を開いた。

「……アパートを出ろって言われてる」

 女は、初めてこちらを見た。

「いつ」

「今月いっぱい」

「なんで?」

「……取り壊すらしい」

「引っ越さないの?」

「仕事を探すうちに金が底をついた」

「そう」

 それ以上は訊かれなかった。
 女は少し考えるように黙り、それから言った。

「ここ、空いてるよ」

 男は、その言葉の意味をすぐには理解できなかった。

「……ここ?」

「二階。使ってない部屋がある」

 淡泊な一言。
 勧めるでもなく、説得するでもない。

 男は、反射的に首を振った。

「いや、それは……」

「嫌なら別にいい」

 女は淡々と言った。

「この雨だ。何も濡れてまで帰るほどのことじゃないでしょ。そう思っただけ」

 男は言葉を探した。
 世話になる理由も、断る理由も、頭の中で絡まった。

「……一晩だけ」

 そう言ったとき、自分の声が思ったより小さいことに気づいた。
 二階の空き部屋は、六畳ほどだった。
 畳は古いが、きれいに掃かれている。布団は押し入れにきちんと畳まれていた。

「風呂、先に使う?」

「……いや、後でいい」

「そう」

 女はそれ以上、構わなかった。
 男は布団を敷き、腰を下ろした。畳の匂いがした。自分の部屋とは違う。少し湿っているが、嫌な匂いではない。

 夜になっても、大雨は止まなかった。
 下から、食器を洗う音が聞こえる。

 男は天井を見ていた。
 一晩だけ。その言葉を、何度か頭の中で繰り返す。

 やがて音が止み、鍵をかける音がすると、女が階段を上がってくる。

「電気、消すよ」

「ああ」

 男が慌てて布団に潜り込むと灯りが消される。

「それじゃ」

 女は部屋を出ていった。
 暗闇の中で、男は目を閉じた。


 男は物音で目を覚ました。
 朝は、すでに始まっていた。
 階下から包丁の音が聞こえてきた。規則正しい、迷いのない音。男はしばらく布団の中でそれを聞いていた。自分の部屋ではない、という実感だけが、徐々に湧いてくる。
 起き上がると、体が少し重い。だが、不思議と嫌ではなかった。畳んだ布団を押し入れに戻す。畳の縁が少し擦り切れている。意味もなく指で軽くなぞった。

 階段を下りると、女がすでに仕込みをしている。

「おはよ」

 男は一瞬、返事を迷い、それから言った。

「……おはよう」

 女はちらりと男を見る。

「どうする。今日も泊まる?」

 男は、答えなかった。先のことは決められなかった。
 暖簾が揺れ、朝日が差し込む。男は、エプロンもつけずに、流しの前に立っていた。

「……何か、やることあるか」

 男が言うと、女は包丁を置いた。

「洗ってないのあったら洗って」

「わかった」

 ごく短いやり取り。

 男は流しに立ち、昨夜使った湯呑みと皿を洗った。水は冷たく、指先が少し赤くなる。女は横目で見ることもなく、黙々と野菜を刻み続けている。

 朝飯は簡素だった。
 余った豚汁に飯。茄子の漬物が少し。

「食べる?」

「ああ」

 向かい合って座ることはなかった。
 男は台所の端で丸椅子に座って飯を食い、女は立ったままで、鍋の様子を見ながら食べる。

 客が来る前に、男は外へ出た。仕事を探すため。

 夕刻前、男は戻った。
 成果はなかった。だが、何も言わず暖簾をくぐると、女はいつもどおり配膳をしていた。
 何か言おうと思って、喉まで出かかったが、やめた。「おかえり」とも言われなかった。
 ただ、男の分の飯が、自然に用意された。余りものの総菜と飯と味噌汁。
 夜間の混雑を男はただ黙って眺めていた。
 それも終わって客が引けると、男は手伝おうとした。

「何か、やるか」

「じゃあ、床」

 男はモップを取り、床を拭いた。
 力を入れすぎて、端の方の壁まで濡らしてしまう。

「……そこまでやらなくていい」

「すまん」

 謝ったが、女はそれ以上は何も言わなかった。
 夜、二階に上がる前、男は一瞬だけ立ち止まった。

「すまん…… 世話になる」

 女は帳簿を閉じながら言った。

「あたしは別に、構わない」

 責める調子ではなかった。事実を確認しただけだ。

「……そうか」

「布団、湿気るから。明日晴れるみたいだし、朝、干しといて」

「ああ」

 言われたのはそれだけだった。

 二階の部屋で、男は布団に横になった。
 階下からは、もう音がしない。
 同じ家にいるのに、距離ははっきりしていた。たった二日とは言え、居候の身には、その距離がありがたいことなのか、それとも突き放されているだけなのか、男には判断がつかなかった。
 男は目を閉じた。今日一日を思い返そうとして、やめた。
 何も起きなかった。何もなかった。それだけは、確かだった。

▼次回 第4話 越境

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 2

 1

Carぁ、やってらんねぇ。

ガソリンが尽きた。

何もやる気が出ない。

車じゃないんでね、

一度止まったものはどうやったって動き出すまで時間がかかるもんだ。

タイヤが2つ少ねぇ分、非力なんだよ。

アクセルを踏んだって、

できないことはできない。

図に乗るなよ。

ここがブレーキだ。

きっとこのまま滑走してたら、

曲がれるカーブもなく病院まで一本道だったかもな。

ははは。

気張って出るもんなんかクソだけだぜ。

大人しく給油場を探すんだな。

このままダラダラするのも無事故で良いが、

適当に通りかかった自動車屋で疲れと一緒に車検代まで吸い取ってもらうか?

それからお前はトランクの隅っこで後悔するんだ。

ごめんだぜ。

今は前を向け。

ボンネットでも見て瞑想するんだな。


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 2

 1

人間 滅亡 賛歌  

消えていく
愚かな姿が目一杯

最後の足掻きなのか
オクターブの声が耳一杯

私には今にも死にゆく
彼らを見守ることで手一杯

酒を片手に一杯
ごくりと飲み干す

腐肉の味
吐くほど不味い

充満する香り
赤血の匂い
なぜ這い寄る?
ゴキブリのように
カサカサと私の足元に縋る


地獄へゆけ


私は天使や悪魔ではない

光輪など授けてやるな

こいつらが天でもまた野を駆ける

そう思うほど虫唾が走る

そうだとも

お前たちの憧れる空の国は

所詮この世界と同じ

クソにまみれ光などない


滅亡   万歳!!!

人類   万歳!!!

滅亡   万歳!!!

人類   万歳!!!




泣きわめく
若い衆が一人

親族を失くしたのか
瓦礫と死体の山に目が泳いでいる

私には今にも死にゆく
彼らを見守ることが使命

刃物を片手に一斉
ぞくりと背に伝う


地獄へゆけ


お前は虎や獅子などではない

豚のような処分を下してやる

あぁこいつらがたくさん殺してきた

そう思うと腸が煮えくり返る

沈みゆく太陽

月などあるはずがないのだ

息絶えるまで灼熱に焼かれていろ


人類    万歳!!!!

滅亡    万歳!!!!

人類    万歳!!!!

滅亡    万歳!!!!


死にゆけ、死に行け

慎ましく、

(愚かな姿を)

静かに、

(オクターブの声を)

見えぬところで、

(見守ることが使命)


綻べ、滅べ



指で作った花瓶にスノードロップ

もう一輪(いっぱい)








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 3

 1

BAR「Creative Writing Space」

ニーズがあるやらないやら、まったく見当がつきませんが、
毎度おなじみの思いつきで、BAR「Creative Writing Space」を開業いたしました。

皆様にお使いいただけなければ、すぐに閉店いたします。
電脳空間の片隅にある、吹けば飛ぶような小さなBARでございます。

一杯引っかけた体で雑談していただけるスペースをイメージしています。
「Talk」がさほど機能していないことも踏まえ、もっとカジュアルに使っていただけたらと思っています。


【ルール】
・ワンドリンク制です。必ず何かお飲み物をご注文してからお話しください。ノンアルコールでも構いません。
・お代はいただきません。もしスペースコインをお支払いになりたくなったら、他のお客様に奢ってあげてください。
・酔っ払いすぎにはご注意くださいませ。

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批評・論考

凩馨

そしてとある広場にて/パノラマの群衆が/音のないパズルに到る/へだたりのない手が/みずたまりのホタルより/絵本のページとおく/ふところのうえで/ケムリを吐いています//ひずんだ心臓を濾過する/金糸雀と呼べ/虹彩に並べ/疲れ果てた処で/日没を手にした瞬間/白い旅をはじめたとき/秋はぶら下がりはじめていた//焼き立ての情報は擬似的な物語だから/カラメルがかかったポスターに表現され/採用された旗はリンゴに広がっていく/スタートした瞬間を一滴/パンの香りと評し/おだやかに傷ついて/風にのって、街中/このからだのシナモンの匂いがとれやしない//この街の人々は/しなびた舌が/(惜しくもない、辛いとはおもわない)/いつもより長く伸びている海面をみながら/傾斜を詰めた鍵一つ持って/ただ泣いた//沈むのを忘れたように/粒子の唇に触れるとき/失われたトマトが/眠るジェスチャーをする/触覚のない口が/うねうねと饒舌になる//振動する港までいけば/立ち去るがいい/迷路のない駅までゆけば/遠ざかるばかり//そのたましいとは。ビルの隙間から/オレンジから紫へと/ゆっくり/変わり続けます//おきあがる檸檬の感覚が/その太い陽は/腐らない蒼さの地図をひき/ちぎって/輪郭なき大窓にひかりがやどるから/(潮時をみて)/いろがみの夢が苔むした花をただ、しぶき/錆びた骨を嚥下したようです//多くを語らない/装飾のない抜け殻だから/時計塔の群れに/かざぐるまはちかく/おおぞらをまわり続けた/ここで/風を均す鐘は/頬をかすめるのだけれど/うすい微笑みをこなす/目覚めにはがし/その狐兎に/わかっているけれど、誰もが気にしないんだ//使い方も登録済みの幻灯機のネガだった/とある小さな街では/誰も帰りたがらない/つややかな流れ星に想えたから/見上げたら/無意味な掌で染み込む小舟は/ブイを通り過ぎ/黒煙が開くはなびらは/クシャクシャな顔だが/点描の猛虎は耳の中で/ねむたげな足取りで//あくせくと黄昏れている/Enter.↵

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『赦しのためのマニピュレーション』

推薦対象

3ページ目(最終回)
by つつみ

全14話の長い旅路、本当にお疲れ様でした。
物語の最後に置かれた「碧月」という二文字。それが画面に刻まれた瞬間、バラバラだったピースが音を立てて繋がっていくような、見事な収束感でした。
この最終稿が提示した「碧月」という焦点から、全編を振り返る批評的感想をまとめさせていただきます。

物語の幕切れ、河野が白い画面に入力した「碧月」
それは単なる新人作家の名前ではありません。この瞬間、読者は第11話のアートフェスタへと引き戻されます。あの時、ブースの片隅で「赦(ゆるし)」という一文字の本を売り、誰よりも長くそのページをめくる「ある一人の客」を静かに見つめていた碧月。その「客」こそが、河野だったのだと。
最終稿で凛が拾い上げた「白い本」の感触――なめらかで、けれど内側にざらつきを含んでいる――。それは第4話で凛の人生を変え、第11話で河野の心を止めた、あの自費出版の本の感触です。
凛はあの時、碧月から直接本を買いました。そして河野もまた、別の場所でその本と出会っていた。この二人が同じ新人賞の選考の場で、説明できない一文に「止まってしまった」のは偶然ではありません。彼らはあの日、あの場所で、同じ「碧月の言葉」に人生の足場を奪われていたのです。
第8話から第10話にかけて描かれた凛の家庭の崩壊。母の沈黙と、父の「嘘」。その息苦しさの中で、凛は「正解」を失いました。しかし、碧月が書いた「存在ごと受け入れる」という赦しの概念が、今の凛を支えています。
最終回で凛が、倒れた母のために煮物を作っていたあの台所の記憶(根菜の形の崩れ方)を思い出しながら原稿を整えるシーンは、彼女が「不完全なもの、崩れたもの」の中にこそ真実があると確信した瞬間を描いています。だからこそ、彼女は『二年一組、三十八人』の中に、かつての自分を救った「碧月の影」を見出したのでしょう。
河野が最後に打った「碧月」という名前。
彼は第7話で「会話の多い小説を信用しない」と言い、第6話では引き出しの封筒(碧月からの手紙、あるいは新作)をあえて開けずにいました。彼は「選ぶ側」としての矜持を守ろうとしていた。
しかし、選考が終わり、凛が持ち歩いていた「白い本」を再び目にしたとき、彼はすべてを悟ります。自分たちを揺さぶったあの原稿の主が、あの日の青年であることを。
最後にパソコンの余白に名前を打つ行為は、編集者としてその才能を世に送り出す「覚悟」の表明です。
この小説は、かつて自分を救った名もなき言葉に、数年越しに『名前』を与えて世界に放つという、編集者にとって最も聖域に近い瞬間を描き切りました。
部数や返本率という「数字」に支配された1話の冒頭から、何も書かれていない「白い光(余白)」へ。
凛と河野、そして碧月。三人の孤独が「紙の手ざわり」を介して重なり合ったこの結末は、文学を信じるすべての人にとっての福音のような静けさを持っています。
最後に「碧月」とだけ記された余白には、これから始まる新しい物語の鼓動が満ちています。素晴らしい完結でした。

この作品は、派手な事件が起きる物語ではありません。しかし、一文一文を丁寧に積み上げるような筆致と、誰かの孤独にそっと寄り添うような親密さがあります。
「碧月」という二文字に込められた重みを、より多くの読者が自分の指先で受け取れるよう、冒頭の「引き(フック)」と、伏線の「接続」を少し整理するだけで、商業作品としての強度はさらに一段階、確実に上がります。
この作品を一言で表すなら、指先が覚えている、救いの感触です。
• キーボードの打鍵感。
• 紙の繊維の引っかかり。
• 煮物の湯気の湿り気。
などこれらの「物理的な感覚」を全編を通じてより書き込むことで、読者はスマホの画面(デジタル)で読んでいながらも、まるで「一冊の分厚い紙の本を読み終えた」かのような重厚な満足感を得るはずです。
全14話、この繊細なバランスを保ちながら完結させた作者様の構成力は既に十分なものがあります。上記の「解像度をさらに上げる」作業を加えることで、より多くの人の本棚に「物理的に」残り続ける名作になることを確信しています。
この物語が、いつか本当の「紙の重み」となって、誰かの手元に届く日を心から楽しみにしています。

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 4

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烏賊について

光を、海底に運ぶために、古代の地球を丸ごと飲み込んで盗んだ。その地球に、自ら住み続けている。限りなく伸びる胃袋に、地球を隠し住まわせながら、死んだ恋人の無限の脳を、吸えればよかった。したがって古代の罪が、烏賊の身体をつくっている。この世の恋人から、逃れるために、水中から直接、脚を生やす。半分、余白の存在であり、あらゆる日向で行われる残虐な行為を、上半身で同時に経験する罰を受けている。

烏賊は、眼球を海中に溶かしながら、無限の眼球で泳ぐ。海は、烏賊の眼球であふれていて、海中は常に烏賊の視野である。烏賊を、一緒に食べてもいいと思える恋人がいるとすると、胃袋の中からも性を見定められる。視線から逃れることはできない、という支配を、恋人同士で求め合うことになる。やがて恋人の瞳孔から、烏賊が産まれるようになる。見る、という行為が異性の、眼球の外にも発生している。


神経の欠片が簡単に散らばり、身体のいたるところに不安な鼓動が巡っている。痛みそのものが海に残されているから、言葉の始まりかもしれない。烏賊の喘いだ音が、発音記号となって海底を揺れている。

烏賊は知能を、海に委ねていて、この惑星の脳につながっている。だから恋人の、水にまつわる物語には必ず、烏賊の知能が、含まれている。巡り合った頃の敬語にも、烏賊のぬめりが、滲んでいることになる。

烏賊を、細く薄く切る。恋人との、あいだに横たわる近さを、さらに薄くする。つまり烏賊は海中に、烏賊を張り巡らせた。烏賊を切ることは海の、神経を切っていく行為に他ならなかった。いずれ包丁で、恋人は指先を切るだろう。烏賊を喰うことは、そのとき感じる痛みを、先に呑みこむということ。小さく喉につかえるほどの報復を、受けているということ。

烏賊は、恋人の言葉ではじめて立体になる。未完成な水中を、引き連れながら泳でいた。水がほどけるとき、沈黙がやわらかい肉のかたまりにかわる。烏賊の無数の視野は、ひとつひとつが短命な直線だった。

恋人の肉筆のなかでは、句読点からも遠い粗い息であり、イカと口にするとき何かをこぼしている。

捕食される恐怖の、喜びを全身に育みながら老いる。烏賊は、海の腫瘍を引き受けている。海底の、光のない経験が理解されるより前に、いくつも膨らんだしこりが、明るいところで捌かれる。私たちの恋人は、限りなく薄くした海の、病巣を食べていることになる。

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 5

 4

焼野原

恋人には将来がある のね?
恋人同士には 将来がある のね?
 
ここにあるのは 大きな
バオバブの木 
夕陽の空に聳え立つ
何が見えるの ああ 何が見えるの
見知らぬ鳥が枝をくわえて飛んできた
枝が
真っ黒に焼け焦げているから 
向こうの方は焼野原だろう
 
恋人は どろんと濁った目を凝らせて
私の見えないものを見る
枝が
真っ黒に焼け焦げているから
 
いろんな場所に行ったんだ
パリ ロンドン ロスアンジュエルス
恋人は 舌を上顎にぴったりと張り付かせて
引き摺るように発音する
ロスアンジュエルス
 
いろんな場所に行ったんだ
カイロ モガディシュ ヨハネスブルク
ハノイ クアラルンプ―ル ベイジーン
ベイジーン
恋人の声が ドーム状の空に響いて 
降って来る
星みたい
いつかの砂漠
見たんだ 空に眩く光る星
こんなに星ってあるんだなあ
 
私たちの頭の上には
無数の石ころが浮かんでいる
 
恋人と一緒に バオバブの木に登って
夕日が沈むのを見ている
赤く熟した日が色を濃くし
内側から蕩けて
辺りに溶けだし
空を染め
徐々に
消えて
ゆく


 
恋人には将来があるの ね?
そうでしょう?
私は尋ねる
恋人は何も答えない
 
タリン リガ ビリニュス
いつか君と行きたい
ヘルシンキ
 
恋人は 焼野原を見ている

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 4

 8

薔薇のバランス

花屋の前で
薔薇を見ていた

ずいぶん危うい

浮かび上がるほど派手なのに
さらにトゲまでついている

美しい
だけでは不安だったのだろうか

でも考えてみると
やさしい人ほど
急に怒ったりすることがある

こころのバランスをとるのだ

薔薇も
美しい
香り豊か
だけでは何かいっぽうに偏りを感じた
のかもしれない

そして薔薇のトゲが
ニュッニュッと生えてくる

薔薇のバランス

花屋は店じまい
少し疲れて顔の白くなった店の人が
水を替えていた

薔薇たちは
ただ揺れていた

美しいものにも努力はある

マイバッグに入れた
2リットルペットボトルの重さを
ズシリ感じながら

自分にもトゲの一本くらい
あった方がいいのかもと

思ったり

そして
そこに少しの生きやすさがあるのではないか
とも

思ったりしたのだった

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 3

 1

UCC

夜、落ちていたコーヒー缶を見つけた

どれくらい前のだろう
もうずっとずっと浸ってたろう
赤茶色の数十年の我慢に

それを何気なく拾い
しばらく歩き続けると

今度は花が星に照らされて落ちていた

土から離されて
まだそう経ってはいない
その鮮やかさは枯れるためのものか

しばらくする月が出て
池のそばの東屋が見えてきた

僕はそっと缶に水をすくって
そこに花をさしてやると
手に抱えながら椅子にもたれかかった

星はただ静かさに沈み
木々はただ揺れにゆれ

それだけの世界が広がっていた

それだけがただ手放しがたかった

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 5

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皆さんがタイトルを付けてください

人生の第1章が終了した。
知っているか?人生は鋭い蝋燭を1本1本皮膚に刺すような痛みを伴う気色の悪い新興宗教なのだ。生きるのが正しいということが埋め込まれた信念が当たり前なのだ。時計の針が冷酷に午前零時を告げたとき、私の胸を満たしたのは、悲哀でも未練でもなく、ただただ底の抜けたような虚無感であった。
つまり、私はすべてを失ったのだ。
神聖であるべき自らの命を、おのれの軽薄な手で終わらせることすらできず、醜く生きながらえてしまった。死に損ないという消し去れぬ恥辱を背負い、肉親たちからは狂人を見るような冷ややかな目で拒絶され、そうして今、私はこの狭い四畳半の奈落に放り出されたのである。
カーテンの隙間から差し込む街灯の光が、埃の舞う床を虚しく照らしている。
もう、誰も私を叱ってくれない。誰も私を憐れんでさえくれない。
絶対的な孤独。それは私がずっと望んでいたはずの、純粋な破滅の姿であった。
一生かかっても、この罪を償える気がしない。私はただ、この静寂の中で、自分が世界から完全に消滅していくのをじっと待つより外はなかった。私は、私を殺そうとしたのだ。誰もいないはずの四畳半の闇の中から、その声は唐突に鼓膜を震わせた。
──お前は、また生き延びたのか。 それは紛れもなく、私自身の声であった。しかし、私の喉から出たものではない。部屋の隅の、最も暗い淀みから這い出してきた、もう一人の私の冷笑であった。こんな狂った世界で生きていると頭がおかくなってしまう。発狂する。私以外にはには見えてないらしい。私しか見えていないらしい。どこにいてもずっと誰かいるから風呂場でも便所でも1人になれないのだ。窓から生首が出てきて笑いながらこっちを見つめている。
──人生の第1章が終了した、だと? 笑わせるな。お前はただ、死ぬ勇気さえなかった臆病者に過ぎない。肉親に見捨てられ、孤立無援になったおのれの惨めさを、「純粋な破滅」などという美しい言葉で飾り立てて、一体何をごまかそうとしているのだ。
声は容赦なく、私の脳髄を引っ掻いた。
つまり、この幻聴こそが、私の正当な裁判官なのである。家族を追い詰め、自らも狂気の淵に沈んだ私に、この声は無限の自己嫌悪を突きつけてくるのだ。私は耳を塞いだが、声は私の頭の真ん中で、いよいよ高く、滑稽そうに嗤い続けるのであった。
──違う! 私は、私は本当に死のうとしたのだ!
気がつけば、私は自室の戸口を飛び出し、夜の闇の中へ駆け出していた。
靴を履くことさえ忘れていた。冷たいアスファルトが裸足の裏を無慈悲に削り、鋭い痛みが走るが、そんなものはどうでもよかった。頭の中の「声」から、おのれの醜悪な正体から、一秒でも早く逃げ出したかったのだ。
「ああ! ああ!」
口からは、言葉にならない奇怪な叫びが狂ったように溢れ出た。
深夜の住宅街に響き渡るおのれの叫び声を聴きながら、私は胸の内で、凄惨な自嘲に震えていた。
つまり、私はついに本物の狂人になったのだ。
髪を振り乱し、裸足で叫びながら夜道を疾走する人間。これ以上の滑稽が、これ以上の恥辱が、この地上に存在するだろうか。すれ違う者など誰もいない。しかし、夜の闇そのものが、街灯の冷え冷えとした光そのものが、この哀れな逃亡者を指差して嗤っているように思えてならなかった。
──憧れちゃうよ、その図太い神経に。人間の本質から遠ざかって、お前は何者になるつもりなんだ?
遠ざかっていく夜の街並みを眺めながら、私の心には、不思議なほど冷え切った平穏が満ちていった。蝋燭は消えてくれない。自分のこと救えるの自分だけである。それなのに私は結局他者に救ってもらおうとしている。甘えようとしている。気持ち悪すぎる。一人で生きろ、私みたいな周りの空気を汚すやつは子供も産むな。
生涯孤独で死ね。

幸せになりたい。

心の中でそう思った。私は何者にもなれない哀れな反逆者だったのだ。

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サーカス

テントの内側に
星が瞬いて
ラオスの象たちが
ゆっくりと歩きます
耳をひらひらと
蝶のように動かして
ちいさな目は
どこを見ていたのか

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五月の空の叫び

ほどけかけた微笑みが
光の中にまぎれていく 

五月の空
やわらかなひかりが
街路樹をゆらしている

目を閉じれば
風は頬をなで
花の香りが
そっとひらく

遠いものほど
高く澄み

触れられぬまま
憧れだけが残る

迷いながら
ふと 立ち止まる午後

見上げた空の先に
かすかな叫び声



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けつのろん

たった
おおよそ ひゃくねんすら
わたし(たち)には
ながすぎる

めいそうばかりしているよ
めをひらいてはとじては

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