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2021/01/01 12:00:00

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ある詩集

ずーっと、ずーっと、
あれは いつだったか。

父方の叔父さんだった。
自費出版で 詩集を出して、
実家に送ってきた。

母は 小説はたくさん読む人だったけど
詩には 興味なくて、
父は 文学そのものに興味がなくて。

わたしも 何ページかめくったけれど
暗い語りに 少し気が滅入って。

立派な装丁の本だったのは 覚えているけど、
次に実家に行ったときには
もう 物置の中で。

そのうち 家族のあいだでも
話題にならなくなって。

ある日、
叔父さんの葬儀の帰りに、
――あんなこと あったよね、
と、やっと話題になった。

そんな父も 亡くなって。

母は元気だけれども、
もう活字読むのは しんどいねえっと、
補聴器越しの大きな声で
般若心経を 写している。
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 尾崎ちょこれーと

 2025/11/05 20:40

あぁ、なんか、そう、わかるわかる。
ってなるのが不思議です。
私には詩集を出したおじなど
いなかったはずなのに。
何故だか、懐かしく、ほの暗く切なくなりました。
わたしも詩集を出すとそうなるのかなあなんて思っちゃったり。。
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 花緒

 2025/11/05 22:48

なんか、めっちゃ上手い感じがしました。
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 筑水せふり

 2025/11/07 19:47

一応母の名誉のために付け加えますと、本棚は宮尾登美子や向田邦子が埋め尽くし、罪と罰や車輪の下だって読んだわよと言う文学少女だったようです。
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 及川まゆら

 2025/11/08 09:47

写実的に読み取るとすれば……

書籍化は作家にとっての思い出。
だけど本は興味がある誰かに読んで貰って語り継がれるもの。その人が生きた歴史やエピソードもそう、振り返ってくれる人がいるからそこで生きていられる。
遺品整理などしてみるとよくわかりますが「当人にとって大切な物は、他人にとってのゴミ」そんな話を、地平線を見るような思いで読むことができました。

私の身内には現代日本文学を代表する作家がいます。
でも身内は誰もいい話をせず「どれのように生きることが正しいのか」を定める一族の中では文学など外れ者もいいところ。昔のことですから、子は親の思いを成就し、世間で認められ、社会に貢献する大人になれた人だけが立派だとされる。
そういう時代に避けられる存在であった私の遠い親戚は「ある詩集」の叔父さんと同じです。思い出してあげることが供養なのかな、と。

何やら、また大切なことに気付かされましたね。せふりさん、お見事!
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 佐藤宏

 2025/11/08 18:42

せふりさんのルーツを何となく感じます。私も若い頃に自費出版して売らなかった(売れなかった)クチでして、いまだ成仏できすに文学界隈をウロウロしている浮遊霊のようなものかもしれま…
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 千才森 万葉

 2025/11/08 22:32

うん、まだ無さそうですね。
ちょっとわたしなりに書かせてもらいましょう。

あの、その、みたいな言葉、指示語って言うんでしたっけ?
読者から見た指示語には欠点、悪い方の特性がありまして。まあ、専門家ではないので、あくまで素人のわたしなりの解釈ですけどね。
指示語を多用すると指し示している元の言葉の印象が薄まってしまうっていう欠点があるんですよ。あくまで、多用すれば、です。
コピーを繰り返すと色が薄くなってしまう、あの感覚ですね。実は、筑水せふりさんの作品には、たま~に指示語の特性が悪く働いている時があるかなって感じていました。でも、書き手として書くのならば、指示語って実に扱いやすいため、わたしもついついたくさん使ってしまいます。

そんな中で、読ませてもらったこの作品。
最初の2行の威力が素晴らしく強い。
扱いにくい指示語の特性を十分に活かして、読者の『印象』を物理的に引っ張るかのような文章になっています。
まず、一行目の

ずーっと、ずーっと、

が方向性やイメージを全く定めないまま、存在しない言葉の濃度だけを濃くしていくんですよ。
そして2行目の

あれは いつだったか。

でフワッと消失させる。いっそ小気味よいほどの消失感で、一行目を良い塩梅で薄めてしまう。そう、この2行の強みは塩梅にあるんですよね。肌感覚で調整する匙加減がいい。
そもそもイメージが存在しない言葉のはずなのに、なまじ濃かった1行目を一瞬で失った感覚は、読み手の心に隙間を作ります。
元々持ってなんかいなかった。にも関わらず、失ったという錯覚に物寂しさを誘い出され、得体の知れない心の隙間を埋めるために次の行へと目を移してしまう。
強制力が発生しているレベルの誘い込み。
2行を読んだ時点で、大抵の人は読書モードになるでしょうね。


続いて特筆するべきは重ね、いや、被せていく技術ですね。詩の重ねる技術はわかんないですけど、この作品で使われているのは散文で見られる技術ですから、わたしでも少しわかります。
文章を被せていく。この被せる技術を上手に扱うのってセンスが必要になるんですよ。下手を打ったら寒く滑ります。そんな被せる文章をとても巧みに使っている印象を受けます。しかも、何度も被せを披露している。にもかかわらず、全てが予想より上の情報で上書きされるんですよ。
これはセンスですね。

さらに何度も、何度も被せて文章を構築しているのに、最後の最後でどんでん返しを組み込んでくる大胆さが良いんですよ。最後の一行が響かせた余韻は、十分に満足のいく読後感へと変わっていくのです。

長くなってしまいましたので内容への感想は割愛しますが、まーそうなるよね、っていう避けられない寂しさと、じゃあそうならないためには何が必要でどうしなければいけないのか? という奮起する気持ちが湧いてきました。
素朴で普通のこと、だからこそ考える余地の大きな作品になっているんだろうなって気がします。


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