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2021/01/01 12:00:00

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小さな星の軌跡 第十八話「新しい春」

 新学期。 いつものバスより一つ早い便に乗って登校。そして朝一番、部室へ行ってみた。

 からから……。
 八女先輩と甘木先輩が私物を置いていた所が空いたままの棚。 スマホのアプリで今も繋がりはあるけど、やっぱりちょっとだけ隙間風。
 さて、明日は新一年生の入学式。誰か天文部に来るだろうか、それだけを願う。 空いた棚に向かって軽くお辞儀をして二年生の教室に向かった。

 わたしとみっちゃんは同じA組。おーちゃんは私学の文系狙いらしく、選択科目がだいぶ違うのでE組。ちょっと離れてしまった。みっちゃんに「離れちゃって残念だね」って言ったら「いつかの日に、一緒にいる為なのよ」って帰ってきた。二人で見ている物がある含みだと思う。たかちゃんは選択科目は同じだけど隣のB組だ。体育なんかの合同授業は一緒になるのであんまり変わらない気もする。

 始業式から学級委員ぎめなんかも一通り終わり今日は昼前でおしまい。学食でパンと飲み物を買ってみっちゃんと二人天文部室に向かう。その途中で耳納先輩とたかちゃんも合流。
 柳川先輩と大川先輩は生物部室かな?今日はお留守のよう。

「じゃあみんな集まったので明後日の新入生への部活紹介で誰がどんな風に喋るかを決めようか?」
と耳納先輩。

「そりゃ耳納先輩でいいのでは?」
とたかちゃん。

「いや、壇上は二人まで良いし、去年は自分一人だったから、二年生から二人で良いのでは?」
と耳納先輩。

そしたらみっちゃんが
「先輩とちーちゃんでいいじゃん。……男女一人づつ平等で」

と来た。
平等は後付だ絶対。

 耳納先輩は「う~ん」と唸っている。わたしは、去年先輩を壇上で見て、天文部に入って見ようと思ったんだよね。あんなふうに輝いてしゃべれるかな?
 でも楽しい事がいっぱいあった一年だったからその事を新入生の前で伝えたいってそんな気持ちも抱いていた。

「じゃあ僕と筑水さんでもいいかな?」

「異議なし」とみっちゃんとたかちゃん。

 それでは喋る内容だけど、と簡単に内容を打ち合わせをして、時間内まで適当にアドリブで喋ることに決まった。


 入学式は在校生の一部が出席するだけなのでわたしたちはお休み、そして翌日、部活紹介の時が来た。
 新入生は午後から講堂に集まって、各部活の紹介を部員たちが演壇で順に喋る。朝倉先輩は二年生のもう一人と写真部で、大川先輩は筥崎君と生物部で喋るようだ。わたしは壇上の端の方に耳納先輩と並んでパイプ椅子に座り順番を待つ。
 どの部も笑わせながら部の特徴を喋るのが上手い。緊張するなぁ……。

「はい、生物部ありがとうございます。お次は天文部、よろしくお願いします」

 生徒会が取り仕切る中、先輩と並んで演壇に向かう、のだけど演壇の後ろだとえっと、わたし背が低いんでかなり隠れちゃうのだけど……。と困っていたら、先輩はマイクをスタンドから外して演壇の横に立ち、わたしも横に出るよう促した。目の前の一年生の一部がくすって笑ったような気がするけど、見逃す事にしよう。

 先輩が最初にマイクを持って喋り出す。

「皆さん入学おめでとう御座います。早速ですが私達、天文部の紹介を始めます」
「今部長をやっている三年の耳納と言います。天文部では三年は早くに楽隠居する伝統がある様で、自分は去年もこの演壇に一人で立たされてですね、なんとか新入部員にアピールせんといかんと、そんなだったですけど、今年はこの通り、次期部長の横に立って、もうちょっとだけ部活動を楽しもうと、という訳で、この後の天文部紹介はこちらの筑水さんにお任せしますのではいどうぞ」

 うにゃ、一昨日の打ち合わせと全然違うし、いきなりアドリブしか無いんですけど!?!?

 覚悟を決めよう。と言うかいつも通りに楽しもう。うん。

 そして、小さく息を吸い込む。

「わたしより大きい一年生の皆さんこんにちは、次期部長予定の筑水です」

 笑い声が聞こえる。よしよし。

「わたし達天文部最大の特徴は、月一回学校に泊まっての宿泊観測会です。三階の渡り廊下、あの屋根のない廊下に望遠鏡を持ち出して思うままに季節の星雲星団、惑星や月を観察し、写真を撮ったりスケッチをしたりしています。普段毎日の活動は天気図の作成です。ラジオから流れる気象通報を聞きながら天気と気圧風力などを書き込んで等圧線を引いてゆく、アナログでマニュアルな天気図です」

「……昨年の文化祭ではプラネタリウムの上映を主に天体写真や天気図の展示、太陽の黒点観察などを行いました。プラネが大入満員で、わたしたち一年生は先輩のナレーションを聴けなかったほどでした。その評判のおかげで、後期は予算が多めについて昨年末に新しい自動制御の望遠鏡も入りました。また他の部活との兼部の人も多く多彩な活動が出来ますので、是非見学だけでもきてくれたら嬉しいです。お待ちしてます、ありがとうございました」

 ぱちぱちぱち

「それでは次の無線部……の前に天文部さん、マイクを演壇に返して欲しいのですが……」

 あ、そのまま持って座っちゃた。笑い声の中、先輩と二人もう一度演壇まで行ってマイクを戻す。なんかかわい〜って聞こえたけど聞かなかったことにしよう💦

 やれやれ、無事に各部活のスピーチが終わり講堂を後にする。
 色々考えていた事、ちゃんと喋れて、そして伝わったかなあ。部室に戻るとみっちゃんとたかちゃん、おーちゃんもいておつかれ様って言ってくれた。

 先輩が一年前に感じた期待と不安、明日以降部室の扉に影が映るたびに感じるんだな。そう思いながら校門から校舎を振り返ると、夕暮れに桜の花びらが、あの日と同じ様に舞っていた。

――つづく
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